説明

印刷版材料

【課題】本発明の目的は、感度、現像性、画像特性が向上した赤外線レーザー露光により画像記録を行う印刷版材料を提供することにある。
【解決手段】基材上に、赤外線レーザー露光により画像記録する機能層を含む構成層を有する印刷版材料において、該基材のJIS−B−0601に準じた三次元粗さ測定での中心線平均粗さRaが0.2〜1.0μmであり、かつ該基材の表面形状パラメータの油溜り面積A2が1〜10の範囲であることを特徴とする印刷版材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版材料に関し、詳しくは、コンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な印刷版材料に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTPが求められている。特に近年、特別な薬剤による現像処理が不要であって、ダイレクトイメージング(DI)機能を備えた印刷機にも適用可能であり、また、PS版と同等の使い勝手を有する、いわゆる汎用タイプのサーマルプロセスレスプレートへの期待が高まっている。
【0003】
金属基材、特に、アルミ砂目上に赤外線レーザー露光で画像記録できる機能層を有する印刷版材料においては、機能層中もしくはその他の層中に含有される光熱変換素材による露光時の発熱と、アルミ砂目への熱拡散のバランスにより画像形成の感度が変化するが、このバランスには機能層を含む基材上の構成層の膜厚構成が大きな影響を与える。
【0004】
しかし、基材となるアルミ砂目表面は、通常、サブミクロンから数十ミクロンにわたる凹凸形状を有しているため、アルミ砂目上に塗布形成した構成層はミクロ的な視野では、基体の凹凸に対応した膜厚分布を有することになり、その結果、ミクロな領域ごとに異なる感度を有しているともいえる。したがって、膜厚分布が大きい印刷版材料では、一方では露光エネルギー不足であるにもかかわらず、他の部分では過剰露光となるような場合も発生し、露光条件のラチチュードが狭くなる傾向にある。
【0005】
また、画像記録した後、現像によって画像形成するタイプの印刷版材料においては、その現像性はアルミ砂目表面の凹凸に左右されるものであり、特に極端に深いピットが存在すると、その部分に入り込んだ構成層は現像されにくくなる。これに対し、深いピット内部の構成層も現像可能となるように、現像性を高めると、今度は画像部の強度が低下するという問題点を招く結果となる。したがって、このような態様の印刷版材料は、現像条件のラチチュード(許容範囲)が狭くなる傾向となる。
【0006】
上記の課題を改良するアルミ砂目として、粗面化処理されたアルミニウム基板であって、幅が8μm以上の凹部、または、幅に垂直方向の最大深さが1.7μm以上の凹部が1mmの間に10カ所以内で、更に、85度光沢度が30以下である基材上に、赤外線吸収剤、水不溶性でかつアルカリ水溶液可溶性高分子化合物を含有して、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液に対する可溶性が向上する記録層を設けた印刷版材料が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。上記で規定する様な表面形状を有するアルミ砂目を用いることで現像時の残膜は改善されるとされてはいるが、基材の表面形状として必要十分な規定がなされているとは言いがたいものである。特に、水で現像可能な構成層を有する印刷版材料、さらには印刷機上で現像可能なプロセスレスプレートに用いるアルミ砂目の表面形状としては、至って不十分なものである。
【0007】
以上のように、従来の技術では、プロセスレスプレートに適したアルミ砂目表面形状の微細な構造条件については検討されていないのが現状である。
【特許文献1】特開2002−99092号公報 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、感度、現像性、画像特性が向上した、露光により画像記録を行う印刷版材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.コンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な、基材上に、露光により画像記録する機能層を含む構成層を有する印刷版材料において、画像記録した後、アルカリ現像液による現像処理を行なわずに、水現像または印刷機上で現像する印刷版材料であり、基材が、アルミニウムまたはアルミニウム合金板で、かつ粗面化処理、陽極酸化処理または表面親水化処理が施されており、該基材のJIS−B−0601に準じた三次元粗さ測定での中心線平均粗さRaが0.2〜1.0μmであり、かつ該基材の表面形状パラメータの油溜り面積A2が1〜10の範囲であることを特徴とする印刷版材料。
【0011】
2.前記基材が、粗面化処理されたアルミニウムまたはアルミニウム合金板で、かつ深いピットが親水性素材または親油性素材で選択的に埋没されていることを特徴とする前記1に記載の印刷版材料。
【0012】
3.前記基材の表面形状パラメータの油溜り面積A2が、2〜8の範囲であることを特徴とする前記1または2に記載の印刷版材料。
【0013】
4.前記構成層が親油性層であり、かつ露光部の該親油性層が機上現像可能なポジ版であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0014】
5.前記親油性層が、熱により極性が疎水性から親水性へ変化するポリマーを含有することを特徴とする前記4に記載の印刷版材料。
【0015】
6.前記露光が、赤外線レーザー露光であることを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、感度、現像性、画像特性が向上した、露光により画像記録を行う印刷版材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の印刷版材料は、コンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能で、アルミニウムまたはアルミニウム合金板で、かつ粗面化処理、陽極酸化処理または表面親水化処理が施されており、JIS−B−0601に準じた三次元粗さ測定での中心線平均粗さRaが0.2〜1.0μmであり、かつ表面形状パラメータの油溜り面積A2が1〜10の範囲である基材上に、露光により画像記録する機能層を含む構成層を有し、画像記録した後、アルカリ現像液による現像処理を行なわずに、水現像または印刷機上で現像する印刷版材料であることを特徴とする。
【0019】
本発明でいう三次元粗さ測定での中心線平均粗さRaは、JIS表面粗さのJIS−B−0601により定義される。すなわち、アナログ測定による中心線平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、カットオフ値0.8mmとして、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸、粗さ曲線をY=f(X)で表したとき、下式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0020】
【数1】

【0021】
また、三次元デジタル測定による中心線(中心面)平均粗さ(Ra)は、特定のサンプリング長で、X方向にM点、Y方向にN点、合計でMN点の高さ測定を行って、粗さ中心面の高さを0とした粗さ曲面を求め、X方向がk点目で、Y方向がj点目の測定点における高さZをf(Zjk)として、下式に従って求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0022】
【数2】

【0023】
三次元デジタル測定による中心線(中心面)平均粗さ(Ra)を測定することのできる測定装置としては、例えば、WYKO社製 RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システム等を挙げることができる。
【0024】
本発明に係る記載においては、中心線平均粗さRaが0.2μm以上であれば、良好な印刷時の水量ラチチュードや耐刷性を確保することができ、また、中心線平均粗さRaが1.0μm以下であれば、構成層の膜厚分布を適切に制御することができ、感度分布や現像性分布の許容範囲を広げることができる。
【0025】
次いで、本発明で定義する基材の表面形状パラメータの油溜り面積A2について、その詳細を以下に説明する。
【0026】
本発明でいう油溜り面積A2とは、上記と同様に三次元表面形状測定データより得られる負荷曲線(Bearing Area Curve)から求められるパラメータであり、下記の手順に従って求めることができる。
【0027】
《1:粗さ曲線の作成》
JIS表面粗さのJIS−B−0601により定義され方法に従って、基材表面の粗さ曲線を測定する。表面粗さの測定に用いることのできる測定装置としては、例えば、前出のWYKO社製 RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システム等を挙げることができる。
【0028】
《2.負荷長さ率tpの測定》
図1は、負荷長さ率の測定に用いる粗さ曲線の一例を示すグラフである。
【0029】
図1において、上記方法で求めた粗さ曲線1から、その平均粗さ線5の方向(横軸)に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の粗さ曲線1を山頂線2に平行な切断線4で切断したときに得られる切断長さbの和(負荷長さηp)を求め、これを基準長さLに対する比として、下式に従って求めたのが負荷長さ率tpである。
【0030】
tp(%)=(ηp/L)×100
ここに、ηp:b1+b2+・・・・+bn、L:基準長
《3:油溜まり面積A2の測定》
次いで、上述の負荷長さ率tpの測定方法に準じて、図1に記載の切断線4を、山頂線2(tp=0%ポイント)から谷底線3(tp=100%ポイント)に向かって順次切断する高さ(μm)を変化させながら、各々の位置で負荷長さ率tpを求め、図2に記載のような縦軸が切断する高さ(DEPTH μm)、横軸が負荷長さ率(tp %)からなる負荷曲線6を作成する。
【0031】
次いで、図2に示すように、負荷曲線6上で、負荷長さ率(tp)の値の差が40%になるような2点(A、B)を通る直線の中で、その傾きが最も小さくなる直線7を求め、この直線7とtp0%の軸、tp100%の軸との交点をそれぞれC、Dとする。Dを通り横軸に平行な直線と負荷曲線の交点をE、負荷曲線とtp100%の軸との交点をFとする。ここで、線分DE、線分DF、曲線EFで囲まれた面積と、三角形DEGの面積とが等しくなるように、tp100%の軸上でGの位置を求める。
【0032】
表面粗さパラメータとして、DGの距離を油溜り深さ〔Rvk(μm)〕、点Eにおけるtp値を負荷長さ率2〔Mr2(%)〕と言い、三角形DEGの面積を油溜り面積A2と定義する。したがって、表面粗さ測定装置での測定で得られる表面粗さパラメータ、Rvk(μm)、Mr2(%)から、油溜まり面積A2は下式で求めることができる。
【0033】
A2=Rvk×(100−Mr2)/2
表面粗さ測定においては、二次元的な計測では基材表面の正しい形状プロファイルが得られないため、三次元的な測定を行うことが必要である。また、測定条件としては、1μm×1μmよりも細かな解像度を有する測定装置で100μm×100μm以上の面積を測定して、油溜まり面積A2を求めることが好ましい。
【0034】
このようにして求められる油溜まり面積A2は、表面形状の中で特に深い部分、すなわち、後述のアルミ砂目で言えば、特定の基準面(Mr2に相当する深さ)よりも深いピットの容積比率を示すパラメータであることがわかる。アルミ砂目基材上に構成層を塗布形成する場合には、深いピット部分で構成層の膜厚が他の部分よりも厚くなる傾向にあることは明白であり、したがって、油溜まり面積A2の値は構成層の膜厚分布の程度と密接に関係していることになる。
【0035】
本発明者が鋭意検討を進めた結果、印刷版材料の感度、現像性及び画像特性を高めるためには、上記で規定した油溜まり面積A2の値として、1〜10の範囲であることが必要であり、より好ましくは2〜8の範囲にあることを見出し、本発明に至った次第である。
【0036】
油溜まり面積A2の値が1以上であれば、印刷性能を発現するのに必要な表面凹凸を得ることができ、また油溜まり面積A2の値が10以下であれば、構成層の膜厚分布が良好な範囲に設定することができる。
【0037】
上記で規定する表面形状を有する本発明に係る基材を用いた印刷版材料の構成層は、画像を記録した後にアルカリ現像を必要とするタイプの構成層であっても、本発明の目的効果を十分に得られることができるが、本発明においては、特に、画像記録後に水現像が可能であるか、もしくは印刷機上で現像可能であるタイプの構成層である態様の構成層を有する印刷版材料において、最も優れた効果を得ることができる。
【0038】
このような態様においては、一般的には、現像可能としたい領域の構成層を水に可溶とするか、もしくは印刷機上で水またはインクを用いて除去可能な程度に構成層の強度を弱める一方、現像不能としたい領域には、湿し水を用いた印刷において数万枚の耐刷性を維持しなければならないために、現像可能/現像不能の差を大きくつけることが困難である。したがって、現像可能としたい領域の現像性における基材表面凹凸の程度の寄与度が大きくなってくるのである。この傾向は、耐刷性を向上させようとした場合に、更に顕著になってくると考えられる。
【0039】
構成層の膜厚としては、その表層を印刷時の非画像部として用いる場合には、その表層が基材表面の凹凸を利用した凹凸形状を有していることが好ましいため、構成層としてはより薄い方が好ましく、構成層全体で5g/m以下であることが好ましく、0.1〜3g/mであることがより好ましい。
【0040】
また、構成層の表層を印刷時の画像部として用いる場合には、非画像部は基材表面を利用することが好ましく、構成層表面の凹凸は特に性能に影響しないが、非画像部の構成層が現像除去されることになるため、その現像負荷を考慮した場合には、構成層の付量は少ない方が好ましく、やはり、構成層全体で5g/m以下であることが好ましく、0.1〜3g/mであることがより好ましい。
【0041】
次いで、本発明で用いられる基材について説明する。
【0042】
本発明で用いる基材は、比重と剛性との関係から、アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下アルミニウムとする)を用い、加えて、公知の粗面化処理、陽極酸化処理、表面親水化処理のいずれかの処理がなされたもの、すなわち、アルミ砂目であることを特徴とする。
【0043】
アルミ砂目としては、表面形状が本発明で規定する表面特性(Ra、A2)にあれば、どのような方法によって製造してもかまわないが、本発明で規定する表面形状が得られる製造方法のひとつとして、特開平10−869号公報に開示されている方法を挙げることができる。ここに示された製造方法にしたがって、適切な電解粗面化条件を選択することで、A2の値を1〜10の範囲とすることができる。
【0044】
本発明に係る基材として用いるアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
【0045】
本発明に係る基材は、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、基材の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。粗面化の方法としては、例えば、機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。
【0046】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。ブラシ研磨法による粗面化は、例えば、直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、基材表面に、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。ホーニング研磨による粗面化は、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、基材表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。又、例えば、基材表面に、粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×10〜10×10個/cmの密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
【0047】
上記の機械的粗面化法で粗面化した後、基材の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/mが好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0048】
電気化学的粗面化法も特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。酸性電解液は、電気化学的粗面化法に通常用いられる酸性電解液を使用することができるが、塩酸系または硝酸系電解液を用いるのが好ましい。電気化学的粗面化方法については、例えば、特公昭48−28123号公報、英国特許第896,563号公報、特開昭53−67507号公報に記載されている方法を用いることができる。この粗面化法は、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dmの範囲を用いることが出来るが、50〜150A/dmの範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000c/dmの範囲を用いることができるが、100〜2000c/dmの範囲から選ぶのが好ましい。この粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることが出来るが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。
【0049】
電解液として硝酸系電解液を用いて電気化学的粗面化を行う場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dmの範囲を用いることができるが、20〜100A/dmの範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000c/dmの範囲を用いることができるが、100〜2000c/dmの範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、しゅう酸等を加えることができる。
【0050】
電解液として塩酸系電解液を用いる場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、2〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dmの範囲を用いることができるが、50〜150A/dmの範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000c/dmの範囲を用いることができるが、100〜2000c/dm、更には200〜1000c/dmの範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。
【0051】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/mが好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0052】
機械的粗面化処理法、電気化学的粗面化法はそれぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、又、機械的粗面化処理法に次いで電気化学的粗面化法を行って粗面化してもよい。
【0053】
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことが好ましい。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、基材上には酸化皮膜が形成される。該陽極酸化処理には、硫酸及び/又は燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dmで電解する方法が好ましく用いられるが、他に、米国特許第1,412,768号公報に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法や、米国特許第3,511,661号公報に記載されている燐酸を用いて電解する方法、クロム酸、シュウ酸、マロン酸等を一種又は二種以上含む溶液を用いる方法等が挙げられる。形成された陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dmが適当であり、好ましくは10〜40mg/dmである。陽極酸化被覆量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸漬し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。
【0054】
陽極酸化処理された基材は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0055】
更に、これらの処理を行った後に、親水化処理として、水溶性の樹脂、例えば、ポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えばホウ酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。更に、特開平5−304358号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
【0056】
本発明においては、基材が、粗面化処理されたアルミニウムまたはアルミニウム合金板であって、かつ深いピットが親水性素材または親油性素材で選択的に埋没されている基材も用いることができる。
【0057】
本発明において、基材の深いピットを埋める素材として、親水性素材とするか親油性素材とするかは、適用する画像形成方式や構成層の構成によって適宜選択することができる。また、これらの素材に光熱変換能や断熱機能、水現像性等の画像形成に係る機能を付与することもできる。
【0058】
深いピットを特定素材で選択的に埋める具体的方法のひとつとしては、目的とする素材の希薄溶液もしくは分散液(0.1〜数質量%程度)を0.01〜1g/m程度の乾燥付量となるように塗布、乾燥させる方法が挙げられる。
【0059】
本発明で用いることのできる親水性素材としては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾルといった金属酸化物ゾル、ケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムといったケイ酸塩、アルコキシシランやシランカップリング剤の加水分解ゾル、公知の親水性ポリマー(適宜公知の方法で架橋させる)等を使用することができる。
【0060】
本発明で用いることのできる親油性素材としては、公知のポリマーのエマルションや、公知の油溶性ポリマー等を使用することができる。
【0061】
本発明における好ましい態様の一つとして、構成層が親油性層であり、かつ露光部の該親油性層が機上現像可能なポジ版である態様を挙げることができる。また、この親油性層が、熱により極性が疎水性から親水性へ変化するポリマーを含有することが好ましい態様である。
【0062】
上記に記載の態様の構成層の具体例としては、例えば、特開2002−174893号公報に開示されているような、表面が親水性の基材上に、特定の官能基を有する疎水性高分子化合物を含有する画像形成層が挙げられる。これは、熱により親油性から親水性へと変化する、いわゆる極性変換高分子化合物を用いた印刷版材料であり、極性変換高分子化合物としては、前出の特開2002−174893号公報に記載の化合物を挙げることができる。本発明の印刷版材料においては、上記構成とすることにより、露光部が水現像ならびに機上現像可能となる。
【0063】
しかしながら、この様な態様においては、基材表面の凹凸の影響による光熱変換剤を含有する画像形成層の膜厚分布によって、露光時に発熱量分布が発生する。この結果、膜厚の薄い部分で親水化が進行しない様な露光エネルギー範囲においては、膜厚の厚い部分では表層付近では、過剰な発熱によってアブレーションを生じる懸念がある。また、基材との界面近傍に位置する画像形成層の下部領域では、基材への熱の放出によって温度上昇がしにくく、特に、膜厚の厚い部分、すなわち深いピットの底部では、到達するレーザー光も減少するため、露光による発熱が低下し、更に温度上昇がしにくくなり、深いピットという形状の効果と相乗して非常に現像されにくくなるため、本発明で規定する表面形状を有する基材との組み合わせで、所望の効果を得ることができる。
【0064】
本発明の別の態様として、構成層が、基材面側に親油性層を有し、表層が親水性層である構成であって、露光部の該親水性層の少なくとも一部が、機上現像可能なネガ版であることが好ましい。
【0065】
この態様の構成層の具体例としては、例えば、特開2002−178657号公報に開示されているような、砂目立てされ、かつ表面が陽極酸化処理されたアルミニウム基板上に、(1)インキ受容層、および(2)ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモンおよび遷移金属から選択される少なくとも一つの元素のコロイド粒子状酸化物または水酸化物を含有する親水層をこの順に有し、インキ受容層および親水層のうち少なくとも一つの層が光熱変換剤を含有する2層からなる構成層が挙げられる。この親水性層の上には、更に水溶性の保護層を有する態様も含まれている。
【0066】
この態様においては、露光による発熱でインキ受容層と親水性層との界面でアブレーション的な破壊を生じて界面の結合力を弱め、露光部の親水性層を機上現像可能とすることで画像を形成するため、インキ受容層、つまりは親油性層に光熱変換剤を含有することが好ましく、かつ、親水性層は薄層であることが好ましい。親水性層の上にさらに水溶性の保護層を設けることで、露光時に親水性層やインキ受容層の一部のアブレーション飛散を防止することができる。この保護層も機上現像される。
【0067】
この態様の場合には、光熱変換剤を含有するインキ受容層が基材表面凹凸の影響を受けて膜厚分布を生じやすい。したがって、インキ受容層の膜厚が薄い領域でのアブレーションが生じない露光エネルギーで膜厚が厚い領域ではアブレーションを生じることになり、画像形成にミクロなムラを生じやすくなる。このように、膜厚分布が大きいほど画像品質が劣化することになるが、本発明で規定する表面形状を有する基材との組み合わせで、所望の効果を得ることができる。
【0068】
また、本発明の他の好ましい態様としては、構成層が、基材面側に親水性層を有し、表層が親油性層である構成であって、露光部の親油性層の少なくとも一部が、機上現像可能なポジ版である態様である。
【0069】
上記の態様は、前述の態様の親水性層と親油性層との配置を逆転した構成であり、膜厚分布が大きいほど画像品質が劣化することになるが、同様に、本発明で規定する表面形状を有する基材との組み合わせで、所望の効果を得ることができる。
【0070】
本発明の他の好ましい態様として、構成層が、熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する機上現像可能な層であり、露光部の構成層が機上現像不能となるネガ版である態様を挙げることができる。
【0071】
上記態様の具体例としては、特許2938397号明細書に記載の親水性基材上に、熱により合体可能な熱可塑性重合体微粒子を含有する画像形成層を有する印刷版材料や、特開平9−171250号公報に記載の親水性基材上に熱により合体可能な熱可塑性重合体微粒子と親水性結合剤と親水性結合剤の架橋剤を含有する画像形成層を有する印刷版材料を挙げることができる。
【0072】
この態様においては、光熱変換剤が画像形成層に含有されることが好ましいが、光熱変換剤を含有する画像形成層が基材表面凹凸の影響を受けて膜厚分布を生じやすい。その結果として、膜厚の薄い領域は発熱量が少ないため画像形成しにくく、一方、膜厚の厚い領域は過剰に発熱して表層近傍がアブレーションしやすくなる。また、露光部の深いピットの底部では上述のように発熱量が減少するため画像形成が不十分となり、耐刷不良を生じる懸念があり、また、未露光部の深いピットの底部では現像不良を生じやすく、地汚れを生じる懸念がある。そのため、本発明で規定する表面形状を有する基材と組み合わせることにより、所望の効果を得ることができる。
【0073】
次いで、本発明の印刷版材料で用いることのできる各構成要素について説明する。
【0074】
本発明の態様の一つとして挙げられる画像形成層においては、熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を用いることができる。
【0075】
(熱溶融性微粒子)
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が150℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0076】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0077】
これらの中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0078】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な構造を有する親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0079】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0080】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0081】
(熱融着性微粒子)
一方、本発明で用いることもできる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。
【0082】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0083】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0084】
又、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱融着性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した場合には、熱融着性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱融着性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0085】
又、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0086】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0087】
本発明に係る画像形成層やその他に設けられる層には、光熱変換素材を含有することができる。
【0088】
光熱変換素材としては下記のような素材を添加することができる。
【0089】
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号、特開平11−240270号、特開平11−309952号、特開平11−265062号、特開2000−1060号、特開2000−309174号、特開2001−162965号、特開2002−144750号、特開2001−219667号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
(顔料)
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0091】
(グラファイト)
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0092】
(金属)
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0093】
(金属酸化物)
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者とては、例えば、SbをドープしたSnO(ATO)、Snを添加したIn(ITO)、TiO、TiOを還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。又、これらの金属酸化物で芯材(BaSO、TiO、9Al・2BO、KO・nTiO等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0094】
これらの光熱変換素材のうち、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号、特開平9−25126号、特開平9−237570号、特開平9−241529号、特開平10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0095】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0096】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。したがって、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0097】
これらの複合金属酸化物の添加量としては、各層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0098】
(水溶性素材)
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、さらに水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成機能層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0099】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成機能層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。オリゴ糖は水に速やかに溶解するため、印刷装置上での未露光部の画像形成機能層の除去も非常に速やかとなり、特別な除去操作を意識することなく、通常のPS版の刷出し操作と同様の操作で刷出すことで除去可能であり、刷出しの損紙が増加することもない。また、オリゴ糖は親水性層の親水性を低下させる懸念もなく、親水性層の良好な印刷適性を維持することができる。オリゴ糖は水に可溶の一般に甘みを有する結晶性物質で、数個の単糖がグリコシド結合によって脱水縮合したものである。オリゴ糖は糖をアグリコンとする一種のo−グリコシドであるから、酸で容易に加水分解されて単糖を生じ、生成する単糖の分子数によって二糖、三糖、四糖、五糖などに分類される。本発明におけるオリゴ糖とは、二糖〜十糖までのものをいう。
【0100】
これらのオリゴ糖は、還元基の有無によって、還元性オリゴ糖と非還元性オリゴ糖とに大別され、又単一の単糖から構成されているホモオリゴ糖と、2種類以上の単糖から構成されているヘテロオリゴ糖にも分類される。オリゴ糖は、遊離状又は配糖類として天然に存在し、又多糖の酸又は酵素による部分加水分解によっても得られる。この他酵素によるグリコシル転移によっても種々のオリゴ糖が生成する。
【0101】
(露光及び画像形成方法)
本発明は、また印刷版材料を露光して画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を含む印刷方法も提供するものである。
【0102】
本発明の印刷版材料の画像形成は熱により行うことができるため、感熱プリンタで用いられるようなサーマルヘッドによっても画像形成が可能であるが、特にサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0103】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外および/または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0104】
本発明の走査露光に好適な装置としては、該半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0105】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0106】
本発明に関しては特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0107】
このようにして画像形成がなされた印刷版材料は、現像処理を行うことなく印刷を行うことができる。画像形成後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付けるか、あるいは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けた後に画像形成を行い、版胴を回転させながら水供給ローラーおよびまたはインク供給ローラーを印刷版材料に接触させることで画像形成層の非画像部を除去することが可能である。
【0108】
本発明の印刷版材料における上記の画像形成層非画像部の除去工程は、PS版を使用した通常の印刷シークエンスで行うことができるため、いわゆる機上現像処理による作業時間の延長の必要がないため、コストダウンにも有効である。
【0109】
さらに、本発明の印刷方法において、画像形成後から、印刷機上で印刷版材料表面と水供給ローラーまたはインク供給ローラーとが接触するまでに印刷版材料の表面を乾燥させる工程を有することが好ましい。
【実施例】
【0110】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
実施例1
《基材の作製》
(基材1の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/mになるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0112】
次いで、このアルミニウム板を塩酸10g/L、アルミを0.5g/L含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が50A/dmの条件で電解粗面化処理を行なった。この際、電極とアルミニウム板表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は12回に分割して行い、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dmとし、合計で480C/dmの処理電気量(陽極時)とした。また、各回の粗面化処理の間に4秒間の休止時間を設けた。
【0113】
電解粗面化した後、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマットを含めた溶解量が2g/mになるようにエッチング、次いで水洗した後、25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。次いで、20%硫酸水溶液中で、20Vの定電圧条件で電気量が150C/dmとなるように陽極酸化処理を行い、さらに水洗した。
【0114】
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、70℃に保たれた0.5質量%の3号ケイ酸ナトリウム水溶液に30秒間浸漬し、水洗を行った後に80℃で5分間乾燥し、基材1を得た。
【0115】
(基材2の作製)
上記基材1の作製において、電解粗面化条件として電解粗面化処理を10回に変更し、合計で400C/dmの処理電気量(陽極時)とした以外は同様にして基材2を得た。
【0116】
(基材3の作製)
上記基材2の作製において、ピーク電流密度を70A/dmとした以外は同様にして基材3を得た。
【0117】
(基材4の作製)
前記基材1の作製において、一回の処理電気量(陽極時)を50C/dmとし、合計で600C/dmの処理電気量(陽極時)に変更した以外は同様にして基材4を得た。
【0118】
(基材5の作製)
前記基材1の作製において、電解粗面化処理を分割せずに1回で行った以外は同様にして基材5を得た。
【0119】
(基材6の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、研磨剤として400メッシュの火山灰とナイロンブラシとを用いて、公知の方法でブラシ研磨した。次いで、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/mになるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0120】
その後の電解粗面化処理以降の工程及び条件は、基材1と同様にして基材6を作製したが、電解粗面化処理は分割せずに1回で行い、処理電気量(陽極時)は200C/dmとした。
【0121】
(基材の各表面形状パラメータの測定)
上記作製した各基材の表面形状パラメータとして、中心線平均粗さRa、負荷長さ率Mr2、油溜まり深さRvk及び油溜まり面積A2について、WYKO社製 RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システムを用いて40倍で測定し、得られた結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
《印刷版材料の作製》
(画像形成層塗布液の調製)
特開2002−174893に記載の方法に従って合成した極性変換高分子化合物1を用いて、下記の組成からなる画像形成層塗布液を調製した。この画像形成層は、赤外線レーザー露光により親水性に変化し、水現像もしくは機上現像可能となる親油性層である。
【0124】
〈画像形成層塗布液組成〉
極性変換高分子化合物1 3.40質量部
赤外線吸収色素:YKR−2900(山本化成社製) 0.60質量部
1−メトキシ−2−プロパノール 48.00質量部
メタノール 48.00質量部
上記画像形成層塗布液の固形分濃度は、4.0質量%である。
【0125】
【化1】

【0126】
(印刷版材料11〜16の作製)
前記作製した基材1〜6上に、上記調製した画像形成層塗布液を乾燥付量が1.2g/mとなるように公知の方法で塗布し、80℃で3分間乾燥して、本発明の印刷版材料11〜14及び比較例の印刷版材料15、16を作製した。
【0127】
《印刷版材料の画像形成及び評価》
〔画像形成〕
画像形成は、赤外線レーザー露光により行った。露光は波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、レーザービームの焦点を各印刷版材料表面に合わせて、露光エネルギーを150mJ/cmから、順次25mJ/cm刻みで300mJ/cmまで変化させた各条件で、2400dpiでベタ露光部を含む画像を形成した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。
【0128】
〔形成画像の評価〕
(露光による装置汚染の評価)
上記ベタ露光部(機上現像されて非画像部となる領域)に対し、赤外線露光時に、試料表面を厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムでカバーし、PETフィルム上への付着物の有無、着色の程度を目視観察し、下記の基準に則り露光アブレーション(露光装置汚染)の評価を行った。
【0129】
○:実技上、全く問題のないレベル
△:着色した付着物が認められるが、実用上許容される品質
×:多量の付着物が認められ、実用上問題となる品質
(機上現像性の評価)
〈印刷方法〉
印刷機として三菱重工業社製のDAIYA1F−1を用い、版胴に各印刷版材料を取り付け、コート紙、湿し水(アストロマーク3 日研化学研究所製)2質量%、インク(東洋インク社製 トーヨーキングハイエコーM紅)を使用して印刷を行った。印刷開始のシーケンスはPS版の印刷シーケンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。
【0130】
〈機上現像性の評価〉
500枚連続して印刷した時点で、地汚れを目視観察し、下記の基準に則り機上現像性を評価した。
【0131】
○:地汚れの発生がなく、良好な品質
△:わずかに地汚れが認められるが、実用上許容される品質
×:地汚れの発生が明らかに認められ、実用上問題となる品質
以上により得られた各評価を表2に示す。
【0132】
【表2】

【0133】
表2より明らかなように、本発明で規定する表面形状パラメータを有する基材を用いた本発明の印刷版材料は、露光エネルギーを変化させても、露光アブレーションの発生が低減され、露光装置を汚染することのない露光エネルギー範囲で、良好な機上現像性が得られる露光条件を選択することができる、すなわち露光条件のラチチュードが極めて広いことが分かる。
【0134】
実施例2
《印刷版材料の作製》
〔塗布液の調製〕
(親油性層塗布液の調製)
下記の各添加剤を順次混合して、親油性層塗布液を調製した。
【0135】
〈親油性層塗布液組成〉
コロイダルシリカ(スノーテックス−XS 日産化学社製、固形分20質量%)
11.25質量部
アクリルエマルション(AE986A JSR社製、固形分35.5質量%)
4.23質量部
赤外線吸収色素(ADS830WS American Dye Source社製)
1.25質量部
純水 83.27質量部
上記親油性層塗布液の固形分濃度は、5.0質量%である。
【0136】
(親水性層塗布液の調製)
下記の各添加剤を順次混合して、親水性層塗布液を調製した。
【0137】
〈親水性層塗布液組成〉
オルガノシリカ(IPA−ST 日産化学社製、IPA中の固形分30質量%)
22.67質量部
ポリアクリル酸(ジュリマーAC−10H 日本純薬社製、固形分20質量%)
4.00質量部
アミノプロピルトリエトキシシラン 0.40質量部
純水 72.93質量部
上記親水性層塗布液の固形分濃度は、8.0質量%である。
【0138】
(保護層塗布液の調製)
カルボキシメチルセルロースナトリウムの2質量%水溶液を調製し、これを保護層塗布液とした。
【0139】
〔印刷版材料21〜29の作製〕
実施例1で作製した各基材上に、上記調製した親油性層塗布液、親水性層塗布液及び保護層塗布液を、表3に記載の乾燥付量となるように塗布して、本発明の印刷版材料21〜26及び比較例の印刷版材料27〜29を作製した。なお、各層の乾燥条件は100℃で3分間で行い、次いで60℃で24時間のエイジング処理を行った。
【0140】
【表3】

【0141】
《印刷版材料の画像形成及び評価》
〔画像形成〕
画像形成は、赤外線レーザー露光により行った。露光は波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、レーザービームの焦点を各印刷版材料表面に合わせて、露光エネルギーを300mJ/cmから、順次50mJ/cm刻みで600mJ/cmまで変化させた各条件で、2400dpiで画像を形成した。評価用の画像として、ベタ画像と2400dpiのライン&スペース画像(露光時のビーム進行方向に対して平行(タテ)、垂直(ヨコ)の二種)を用いた。
【0142】
なお、露光終了後に、保護層を形成していない試料については、露光部の親水性層の少なくとも一部が、アブレーション除去されずに残存していることを確認した。
【0143】
〔形成画像の評価〕
(印刷方法)
印刷機として三菱重工業社製のDAIYA1F−1を用い、版胴に各印刷版材料を取り付け、コート紙、湿し水(アストロマーク3 日研化学研究所製)2質量%、インク(東洋インク社製 トーヨーキングハイエコーM紅)を使用して印刷を行った。印刷開始のシーケンスはPS版の印刷シーケンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。
【0144】
(ベタ画像部の着肉性評価)
ベタ画像部に残存する親水性層が完全に機上現像されて、適正なベタ濃度(1.5)が得られるまでの印刷枚数を測定した。
【0145】
(細線画像1の評価)
刷り出しから100枚目でのライン&スペース画像の細線品質を目視観察し、下記の基準に則り細線画像1の評価を行った。
【0146】
○:タテ、ヨコとも連続した線画像となっている
△:タテもしくはヨコの一方の線画像に、一部不連続な部分が認められるが実用上許容範囲にある
×:タテ、ヨコとも不連続な画像となっており、実用上問題がある
(細線画像2の評価)
刷り出しから100枚目でのライン&スペース画像のスペース部分の品質を目視観察し、下記の基準に則り細線画像2の評価を行った。
【0147】
○:タテ、ヨコとも連続したスペース(白線)画像となっている
△:タテもしくはヨコの一方のスペース画像に一部つぶれている部分が認められるが、実用上許容範囲にある
×:タテ、ヨコともスペース画像につぶれてしまっている部分があり、実用上問題がある
以上により得られた結果を、表4に示す。
【0148】
【表4】

【0149】
表4より明らかなように、本発明で規定する表面形状パラメータを有する基材と、アブレーションタイプの構成層との組み合わせた本発明の印刷版材料は、比較例に対して、画像品質を満足する幅広い露光条件ラチチュードを有していることが分かる。
【0150】
実施例3
《印刷版材料の作製》
〔塗布液の調製〕
(熱融着層1塗布液の調製)
下記の各添加剤を順次混合して、熱融着層1塗布液を調製した。
【0151】
〈熱融着層1塗布液組成〉
カルナバワックスエマルション(A118 岐阜セラック社製、固形分40質量%)
14.00質量部
トレハロース粉体(林原商事社製 商品名トレハ、融点97℃)の水溶液固形分10質量% 7.00質量部
赤外線吸収色素(ADS830WS American Dye Source社製)
0.70質量部
純水 78.3質量部
上記熱融着層1塗布液の固形分濃度は、7.0質量%である。
【0152】
(熱融着層2塗布液の調製)
下記の各添加剤を順次混合して、熱融着層2塗布液を調製した。
【0153】
〈熱融着層2塗布液組成〉
PMMAエマルション(エポスターMX−030W 日本触媒社製、固形分10質量%) 56.00質量部
ポリアクリル酸(ジュリマーAC−10S 日本純薬社製、固形分40質量%)
1.75質量部
赤外線吸収色素(ADS830WS American Dye Source社製)
0.70質量部
純水 41.55質量部
上記熱融着層2塗布液の固形分濃度は、7.0質量%である。
【0154】
〔印刷版材料31〜39の作製〕
実施例1で作製した各基材上に、上記調製した熱融着層1塗布液または熱融着層2塗布液を、表5に記載の乾燥付量となるように塗布して、本発明の印刷版材料31〜36及び比較例の印刷版材料37〜39を作製した。なお、各熱融着層の乾燥条件は55℃で3分間で行い、次いで40℃で72時間のエイジング処理を行った。
【0155】
《印刷版材料の画像形成及び評価》
〔画像形成〕
画像形成は、赤外線レーザー露光により行った。露光は波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、レーザービームの焦点を各印刷版材料表面に合わせて、露光エネルギーを350mJ/cmとし、2400dpi、175線で画像を形成した。評価用の画像として、50%と90%の網点画像を用いた。
【0156】
〔形成画像の評価〕
(印刷方法)
印刷機として三菱重工業社製のDAIYA1F−1を用い、版胴に各印刷版材料を取り付け、コート紙、湿し水(アストロマーク3 日研化学研究所製)2質量%、インク(東洋インク社製 トーヨーキングハイエコーM紅)を使用して印刷を行った。印刷開始のシーケンスはPS版の印刷シーケンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。
【0157】
(機上現像性の評価)
上記条件で刷り出しから何枚の印刷で機上現像が完全に終了するかを評価した。評価は、未露光部(=非画像部)、50%網点画像、90%網点画像の三箇所について行った。なお、機上現像終了の判定は、非画像部については地汚れがなくなる状態、網点画像については網が完全に抜けた状態とした。
【0158】
以上により得られた結果を表5に示す。
【0159】
【表5】

【0160】
表5より明らかなように、本発明で規定する表面形状パラメータを有する基材と、熱融着タイプの構成層とを組み合わせた本発明の印刷版材料は、比較例に対して、非常に良好な機上現像性を有していることが分かる。
【0161】
実施例4
《基材7の作製》
実施例1で作製した基材6に、コロイダルシリカ(スノーテックス−XS 日産化学社製)を固形分で98質量部と、モンモリロナイト(ミネラルコロイドMO Southern Clay Products社製)2質量部とをホモジナイザで十分に攪拌、混合して固形分5質量%の親水充填層塗布液を、乾燥付量として0.4g/mとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥した後、55℃で72時間のエイジング処理を施して基材7を作製した。
【0162】
この基材7は、親水充填層によって、深いピットが選択的に埋められており、表面形状を測定すると、A2値は6.73であった。
【0163】
《印刷版材料の作製と特性評価》
上記作製した基材7を用いて、実施例3と同様にして熱融着層1塗布液を、0.6g/m塗布して、印刷版材料41を作製した。これを、実施例3に記載の方法と同様にして、露光及び機上現像性を評価した結果、機上現像性は非画像部:10枚、50%網点:10枚、90%網点:15枚と非常に良好な結果を確認することができた。このように、深いピットを選択的に埋めることでA2の値を目標範囲内とした基材であっても良好な性能が得られることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明に係る負荷長さ率の測定に用いる粗さ曲線の一例を示すグラフである。
【図2】本発明に係る油溜り面積A2を求める負荷曲線の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0165】
1 粗さ曲線
2 山頂線
3 谷底線
4 切断線
5 平均粗さ線
6 負荷曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な、基材上に、露光により画像記録する機能層を含む構成層を有する印刷版材料において、画像記録した後、アルカリ現像液による現像処理を行なわずに、水現像または印刷機上で現像する印刷版材料であり、基材が、アルミニウムまたはアルミニウム合金板で、かつ粗面化処理、陽極酸化処理または表面親水化処理が施されており、該基材のJIS−B−0601に準じた三次元粗さ測定での中心線平均粗さRaが0.2〜1.0μmであり、かつ該基材の表面形状パラメータの油溜り面積A2が1〜10の範囲であることを特徴とする印刷版材料。
【請求項2】
前記基材が、粗面化処理されたアルミニウムまたはアルミニウム合金板で、かつ深いピットが親水性素材または親油性素材で選択的に埋没されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料。
【請求項3】
前記基材の表面形状パラメータの油溜り面積A2が、2〜8の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料。
【請求項4】
前記構成層が親油性層であり、かつ露光部の該親油性層が機上現像可能なポジ版であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【請求項5】
前記親油性層が、熱により極性が疎水性から親水性へ変化するポリマーを含有することを特徴とする請求項4に記載の印刷版材料。
【請求項6】
前記露光が、赤外線レーザー露光であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の印刷版材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−101694(P2009−101694A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319502(P2008−319502)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【分割の表示】特願2003−348020(P2003−348020)の分割
【原出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】