説明

印刷物に高光沢塗工を施すコーティング加工方法

【課題】光沢コーティング加工における種々の欠点を解消し印刷と同時に印刷物に高光沢コーティングを一工程で短時間に経済的に施すことが可能なコーティング加工方法を提供する。
【解決手段】インラインでコーティング組成物を圧着硬化させる方法として内部に紫外線ランプを装着した表面エネルギーが30mN/m以下の透明な円筒シリンダーと圧胴シリンダーからなる装置を有しシリンダー間をコーティングされた印刷物が通過する際に硬化と同時にプレス加工を行うことを特徴とする高光沢なコーティング印刷物加工を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷物に高光沢なコーティング塗膜を形成する方法に関するものであり、より詳しくは従来オフラインで各種印刷物に水性コーティング組成物を塗工しエンドレスプレス等による手段により鏡面光沢加工を施していたものを平版印刷と同時に紫外線硬化型コーティング組成物をインライン塗工した後に圧力と乾燥を同時に行うことによりワンパスで高光沢なコーティング加工印刷物を得る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙を原反とした印刷物表面へ水性コーティング組成物を塗工した後に加熱乾燥させ引続き鏡面仕上げした加熱ローラーで加圧し高光沢仕上げをする方法はエンドレスプレスと呼ばれ紙面加工業界では公知の技術である。この方法によれば鏡面光沢を有する印刷物が得られるという利点はあるが、印刷工程と光沢加工工程を同時に行うことは出来ず完成するまでに一般には数日を要し、それぞれ印刷機、オフラインコーター及びエンドレスプレス機と装置を個別に保有しなければならず、短納期、小ロットサイズの印刷物を安価で短時間で得ることはできなかった。
【0003】
また、近年紫外線硬化型コーティングワニスをインラインで平版印刷と同時に塗工することが行われてきているが、短時間で光沢加工が可能な反面コーティング組成物が十分にレべリングする前に紫外線により硬化し皮膜を形成するために前述した水性コーティングとエンドレスプレス加工で発現する鏡面光沢には至らず、コーティング材料も高価となり水性エンドレスプレスと比較して高価となる。
【0004】
さらには、紫外線硬化型コーティング組成物をオフラインで塗工した上にポリプロピレンフィルムなどを密着させ硬化させた後にポリプロピレンフィルムを剥離させることによりエンドレスプレス相当の鏡面光沢を得る技術が出てきている。しかし、この方法では印刷と光沢加工が別工程となっており一つの工程で印刷と表面加工を短時間で行うことは出来ない。
【0005】
また、コーティング用ブランケット、シリンダー素材を平滑かつ非接着な低エネルギー表面で構成することにより印刷物に高光沢コーティングを施す手法も提案されているが、現実にはエンドレスプレス加工を施すほど光沢を得ることはできていない。
【特許文献1】特表2003−507204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前述した光沢コーティング加工における欠点を解消し印刷と同時に印刷物に高光沢コーティングを一工程で短時間に経済的に施すことが可能なシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち本発明は平版印刷機において平版印刷とコーティング剤塗工に引続いてインラインでコーティング組成物を圧着硬化させる方法として内部に紫外線ランプを装着した表面エネルギーが30mN/m以下の透明な円筒シリンダーと圧胴シリンダーからなる装置を有しシリンダー間をコーティングされた印刷物が通過する際に硬化と同時にプレス加工を行うことを特徴とする高光沢なコーティング印刷物加工を施すコーティング加工方法を提供する。
また、本発明に使用する印刷インキ及びコーティング組成物が紫外線硬化型素材であることを特徴とする高光沢なコーティング印刷物加工を施すコーティング加工方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高光沢コーティング印刷物加工を施すコーティング加工方法によれば、コーター付き印刷機に組込むことで、従来オフラインで行なわれたエンドレスプレスの装置は必要なく、印刷とコーティングを一工程で行いことが可能であり、鏡面光沢コーティング印刷物加工を短時間に経済的に得ることが可能である。また、従来紫外線硬化型コーティング組成物は水性コーティング組成物よりは光沢は一般に高いものの、エンドレスプレス加工を施すことはできず鏡面光沢のコーティング印刷物加工は不可能であったが、本システムによれば紫外線硬化型コーティングを用いて鏡面光沢加工を施すことが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
一般にコーティング装置を有する平版印刷機での印刷及びコーティング工程は図1に示すように印刷ユニットで4色印刷の後にコーティング装置でニスを塗工し引続き乾燥装置を経て完成する。本発明のシステムとしては、4色印刷並びにコーティング装置による塗工までは従来のシステムと全く同じ工程をたどるが、コーティング組成物を乾燥させる工程の際に図2に示すように2つのシリンダーで圧力をかけると同時に印刷物に塗工したコーティング剤を乾燥させることによりコーティング面を平滑にし鏡面光沢を発現させることで実現できる。
【0010】
コーティング組成物を塗工した後に2つのシリンダーで圧力と乾燥を同時に行う方法としては、2つのシリンダーのニップ間を通過する際に圧力と乾燥を行うことになるがコーティング組成物が塗工されている被塗工面と接触するシリンダー(A)は透明である必要がある。一方コーティング組成物が塗工されていない面と接触するシリンダー(B)は特に透明である必要はない。
【0011】
シリンダー(A)の材質としては、紫外線を効率よく透過する性質のものが好ましく石英、ポリオレフィン、ポリスチレン、PET、硬質PVC、アクリルなどのプラスチック樹脂が使用できる。また、乾燥前のコーティング組成物の付着並びに乾燥後の剥離適性を考慮するとシリンダー(A)表面のエネルギーが30mN/m以下であることが好ましい。このためにシリンダー表面にポリシロキサン等のシリコン素材を塗布することも有効である。さらに鏡面光沢を発現させるために、表面平均粗さRaが3μm以下であることが好ましい。
【0012】
シリンダー(B)の材質としては、一般に平版印刷機に使用されるブランケット胴を充当することが可能であり、ブランケット胴に使用する各種ゴム素材を表面とするブランケットが使用できショアー硬度として70以上が好ましい。
【0013】
シリンダー(A)と(B)間の印圧は0.1〜10MPaが好ましい。通常オフラインでのエンドレスプレスは数十MPaの圧力をかけるが、本発明による鏡面仕様の方法はコーティング組成物が乾燥前の状態をプレスするので従来法による圧力を必要としないことも特徴であり、印刷用紙等の紙厚に応じて必要最小限の印圧で加圧することで所望の光沢を得ることが出来る。
【0014】
またシリンダー(A)の内部には、紫外線ランプを内蔵しており、この紫外線によりシリンダー間で圧力をかけると同時にコーティング組成物を硬化乾燥させる。紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ等が使用できる。また、必要に応じて空冷、水冷方式の冷却装置を備える。紫外線照射ランプから発光される紫外線はシリンダー(A)と(B)のニップに向けて照射されることが必要で、それ以外の方向へは紫外線が拡散しないように遮蔽することが必要である。
【0015】
本システムで使用する印刷インキ並びにコーティング組成物は紫外線硬化型素材で構成することにより一工程で効率よく鏡面光沢を有するコーティング印刷部を得ることが可能となる。紫外線硬化型素材としては、非反応性樹脂(インナート樹脂)、もしくはラジカル重合性オリゴマー、ラジカル重合性モノマー、必要に応じラジカル重合開始剤や光増感剤、顔料、さらに諸種の添加剤からなる。印刷インキを例えば紫外線硬化と酸化重合を兼ね備えるハイブリッド型インキを使うことも可能であり、従来の酸化重合型インキと紫外線硬化型コーティング組成物の組み合わせとしても適用することもできる。
【実施例】
【0016】
以下に本発明の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図2に高光沢コーティングシステムを備えた平版印刷機の概略構成を示す。
本システムでは、印刷ユニット(1)部で印刷された後紫外線硬化型インキを使用した場合は乾燥ユニット(2)でインキを硬化し引続きコーティングユニット(3)で印刷面にコーティングを施し、加圧・乾燥ユニットでシリンダー(A)と(B)間を通過する際にコーティング面を加圧して平滑にすると同時に紫外線ランプでコーティング組成物を硬化させるものである。
【0017】
図3はシリンダー(A)部の一実施形態の側面断面図であり、印刷機と連結した軸(8)でシリンダーが固定される。透明なシリンダー部分はベアリング(9)を介して固定された軸(8)の周りを回転する。シリンダー(A)は、シリンダー(B)との印圧によりシリンダー(B)と連動して回転させることも可能であるし、シリンダー(A)をギア、モーターを連結して回転制御させることもできる。また、ランプハウス(6)からの紫外光を遮蔽する遮光板(7)を設けることで、シリンダー(A)と(B)間を通過する前にコーティング組成物の硬化乾燥を防止する。また、シリンダー(A)の側面にはそれぞれ空気穴とファンを設けそのファンにより外気を吸排気ランプハウス(6)を冷却する。
【0018】
図4はシリンダー(A)部の一実施形態の断面図であり、両側面に設置するファンは一方は外気の吸気、他方は外気の排気を担い矢印で示す空気の流れを発生させて紫外線ランプハウス(6)を空冷する。また、シリンダー(A)の軸(8)は中空構造としてあり、内部に冷却水を循環させて軸に設置されたランプハウスの反射板部を冷却することで間接的にランプハウスの温度上昇を抑制制御する。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明を従来の水性コーティング組成物を使用したエンドレスプレスの代用として、オフラインで印刷物に紫外線硬化型コーティング組成物を塗工し、本システムの2つのシリンダーからなる圧力と乾燥を同時に行うことによって鏡面仕様の高光沢コーティング組成物を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】既存のコーティング装置を備えた平版印刷機の概略構造を示した図面。
【図2】本発明の高光沢コーティングシステムを備えた平版印刷機の概略構成を示した図面。
【図3】シリンダー(A)の側面断面図
【図4】シリンダー(A)の断面図
【符号の説明】
【0021】
1 印刷ユニット
2 紫外線乾燥ユニット
3 コーティングユニット
4 本発明の加圧、乾燥ユニット
5 ファン
6 紫外線ランプハウス
7 遮光板
8 軸
9 ベアリング
A 本発明の透明シリンダー(A)
B 本発明のシリンダー(B)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平版印刷機において、平版印刷とコーティング剤塗工に引続いてインラインでコーティング組成物を圧着硬化させる方法として、内部に紫外線ランプを装着した表面エネルギーが30mN/m以下の透明な円筒シリンダーと圧胴シリンダーからなる装置を有し、シリンダー間をコーティングされた印刷物が通過する際に硬化と同時にプレス加工を行うことを特徴とする高光沢なコーティング印刷物加工を施すコーティング加工方法。
【請求項2】
印刷インキ及びコーティング組成物が紫外線硬化型素材であることを特徴とする請求項1記載の高光沢なコーティング印刷物加工を施すコーティング加工方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−216161(P2007−216161A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40406(P2006−40406)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】