説明

印刷用インキ及び該インキを用いた塗膜の製造方法

【課題】凹版オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減し得る。
【解決手段】無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分をそれぞれ含有したインキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写する凹版オフセット印刷法に使用する印刷用インキの改良であり、溶剤成分は溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜12.0の溶剤を少なくとも1種以上含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスに微細でかつ高精度の電極パターンを形成する凹版オフセット印刷での使用に好適な印刷用インキ及び該インキを用いた塗膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板や表示デバイス等の半導体デバイスにおける電極等の形成には従来よりフォトリソグラフィー法が用いられてきたが、このフォトリソグラフィー法は製造工程が複雑であり、また材料ロスが多く、パターン形成に必要な露光装置等の製造設備に莫大な費用がかかるため、製造コストが極めて高くなるという問題があった。更に、パターン形成時の現像処理等にて生じる廃液を処理するコストも高く、しかもこの廃液については環境保護の観点からも問題があった。
【0003】
そこで、低コストでかつ有害な廃液等を生じることのないパターン形成方法に関する研究が種々なされている。なかでも、凹版オフセット印刷法は、微細パターンを高い精度で形成することが可能であることから、フォトリソグラフィー法の代替法として注目されている。凹版オフセット印刷法では、印刷用ブランケットからガラス基板などの被転写体に印刷用インキを100%転写させるため、印刷用ブランケット表面にはシリコーンゴムシートを用い、印刷用インキには印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムに溶解し易い、例えば溶剤を加え、この溶剤をシリコーンゴムに溶解させ、印刷用インキとシリコーンゴム界面の界面張力を低下させることでシリコーンゴムから印刷用インキを剥離し易くして印刷用インキを印刷用ブランケットから被転写体上に転写させている。印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムに溶解し易い溶剤としては、α−テルピネオールのようなアルコール類やブチルカルビトールアセテートのようなアルキルエーテル類が使用されていた。しかし、長時間連続印刷を行うと、印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに印刷用インキに含まれる溶剤が徐々に浸透し、シリコーンゴムシートが膨潤してしまうため、印刷パターンの形状が変動して、印刷の再現性が低下する問題点があった。
【0004】
上記問題を解決する方策として、導電性インキ組成物を印刷用ブランケット表面からガラス基板の表面に転移させた後に印刷用ブランケットの表面を加熱し、次いで、印刷用ブランケットの表面を冷却する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、印刷用ブランケット表面にシリコン系エラストマーを用いたものを使用し、印刷用インキとして、インキ中に低分子量ポリシロキサンを含有させたものを使用し、かつ印刷用インキを印刷用ブランケットから被転写体へ転写した後、印刷用ブランケットの表面を加熱して印刷用ブランケットに吸収された印刷用インキの溶剤を蒸散させ、次いで、印刷用ブランケットの表面を冷却する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献1及び2に示される方法により、インキの溶剤によって印刷用ブランケットが膨潤する問題を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−245931号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2004−66804号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び上記特許文献2に示される方法では、通常の凹版オフセット印刷に加熱及び冷却の工程が付加されているため工程が煩雑であり、また印刷により印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートにインキ中の溶剤が浸透するのを防止することはできておらず、根本的な問題解消とはなっていない。
【0007】
本発明の目的は、凹版オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減し得る印刷用インキ及び該インキを用いた塗膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分をそれぞれ含有したインキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写する凹版オフセット印刷法に使用する印刷用インキにおいて、溶剤成分は溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜12.0の溶剤を少なくとも1種以上含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の観点では、溶解度パラメータ(SP値)が上記範囲内の溶剤は、印刷用ブランケット表面に入り込み難く、印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートを膨潤させることがないため、本発明の印刷用インキを使用することで、凹版オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができる。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に無機粉末が金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はこれらを混合した混合粉末であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に印刷版がライン幅100μm、深さ25μm、ピッチ360μmの複数の凹状パターンを有する平面凹版からなり、印刷用ブランケットが表面にシリコーンゴムシートが取り付けられたブランケットロールからなり、被転写体がガラス基板からなり、印刷用インキを平面凹版に充填し、充填したインキをブランケットロールへ転写した後、ブランケットロールからガラス基板へインキを転写することにより、ガラス基板表面に所定のパターンを有する塗膜を印刷する凹版オフセット印刷をガラス基板500〜1000枚について連続印刷したとき、得られた各500〜1000枚の印刷されたガラス基板について、各ガラス基板の所定位置における9〜16箇所の線幅をそれぞれ測定したときの測定値の平均値が90〜100μmの範囲内であり、かつ測定値の標準偏差値が1〜7μmの範囲内であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の観点は、第1ないし第3の観点に基づく印刷用インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写することを特徴とする塗膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷用インキは、無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分をそれぞれ含有したインキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写する凹版オフセット印刷法に使用する印刷用インキの改良である。その特徴ある構成は、溶剤成分は溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜12.0の溶剤を少なくとも1種以上含むところにある。溶解度パラメータ(SP値)が上記範囲内の溶剤は、印刷用ブランケット表面に入り込み難く、印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートを膨潤させることがないため、本発明の印刷用インキを使用することで、凹版オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】凹版オフセット印刷法の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明者らは、凹版オフセット印刷に使用する印刷用インキについて、溶剤が印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに及ぼす影響に関して鋭意検討した結果、溶解度パラメータ(SP値)が所定の範囲内にある溶剤は、印刷用ブランケット表面に入り込み難く、印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートを膨潤させることがないことを確認し、本発明に至った。なお、本発明でいう溶解度パラメータ(SP値)とは、物性の極性を示す指標であり、液体の1molあたりの蒸発熱をΔH[cal]、モル体積をV[cm3]とするとき、δ=(ΔH/V)1/2[(cal/cm31/2]により定義される量をいう。溶解度パラメータ(SP値)の値が近い物質同士は互いに溶けやすい性質を有する。
【0017】
本発明の印刷用インキは、無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分をそれぞれ含有したインキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写する凹版オフセット印刷法に使用する印刷用インキの改良である。その特徴ある構成は、溶剤成分は溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜12.0、好ましくは8.5〜10の溶剤を少なくとも1種以上含むところにある。インキ100重量%とするとき、樹脂成分5〜20重量%、溶剤成分7.5〜30重量%の割合で配合することが好ましい。溶解度パラメータ(SP値)が上記範囲内の溶剤は、印刷用ブランケット表面に入り込み難く、印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートを膨潤させることがないため、本発明の印刷用インキを使用することで、凹版オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができるという利点がある。溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜12.0の溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール−2−ヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコール−2−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3,5,5−トリメチルヘキサノール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、γ−ブチルラクトン、ポリエステルポリオール(脂肪族多塩基酸(C2〜12)・芳香族多塩基酸(C8〜15)・脂肪族多価アルコール(C2〜12))、OH基含有液状アクリル樹脂等が挙げられる。
【0018】
本発明の印刷用インキに含有する粉末成分は、無機粉末又は有機粉末である。具体的には有機顔料、無機顔料、光輝性顔料、有機染料が挙げられる。また金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はそれらの混合粉末は導電性パターンの印刷に使用できるため特に好適である。有機顔料としては、アゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、キナクリドン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、フタロシアニン系、ペリレン系、DPP系、蛍光顔料等が挙げられる。無機顔料としては、アセチルカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイトのような炭素粉末、合成シリカ、酸化クロム、酸化鉄、酸化チタン、チタンブラック、酸化コバルト、酸化銅、これらの複合酸化物、焼成顔料、硫化亜鉛等が挙げられる。光輝性顔料としては、パール顔料、フレーク顔料、アルミニウム顔料、ブロンズ顔料等が挙げられる。有機染料としては、アルコール可溶性染料、油溶性染料、蛍光染料、集光性染料等が挙げられる。金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はそれらの混合粉末の平均粒径は、印刷適性等を考慮すると、0.1〜1.0μmが好ましく、0.3〜0.6μmがより好ましい。
【0019】
本発明の印刷用インキに含有する樹脂成分は、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上が含まれる。アクリル樹脂としては、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレートが挙げられる。メタクリル樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレートが挙げられる。また、上記列挙したアクリル樹脂やメタクリル樹脂の共重合体を単独又は併用してもよい。
【0020】
また、本発明の印刷用インキは分散剤を更に含んでもよい。分散剤を更に含むことで塗工した層表面が平滑になる効果が得られる。インキ100重量%とするとき分散剤を3〜10重量%の割合で配合することが好ましい。また、形成するラインのエッジ部におけるシャープネスさが高くなる。分散剤としては、カルボン酸系やリン酸エステル系、ポリカルボン酸高分子アニオンアリルエーテルコポリマー、ポリアミン−脂肪酸縮合物、高分子界面活性剤、高分子脂肪酸、脂肪酸エステル縮合体を使用することが好適である。
【0021】
本発明の印刷用インキを用いた凹版オフセット印刷法を説明する。
【0022】
先ず、図1(a)に示すように、所望の凹状パターン10aを有する平面凹版10を印刷版として用意し、この平面凹版10表面に本発明の印刷用インキ11を所定量供給する。供給した印刷用インキ11は、スキージ12を平面凹版10表面にあててスライドさせることにより、凹状パターン10aに埋め込む。次に、図1(b)に示すように、表面にシリコーンゴムシート13aが取り付けられたブランケットロール13を印刷用ブランケットとして用意し、このブランケットロール13をインキ11が凹状パターン10aに埋め込まれた平面凹版10上に圧接し、この状態でブランケットロール13を回転させ、平面凹版10上でスライドさせることにより、平面凹版10の凹状パターン10aに埋め込まれたインキ11の一部をブランケットロール13のシリコーン樹脂シート13a表面に転写する。このときの転写率は平面凹版の凹状パターンやインキに含まれる成分やその比率、ブランケットの圧接の強弱によっても異なるが、ほぼ50〜60%程度の割合である。最後に、図1(c)に示すように、インキ11を転写したブランケットロール13をガラス基板14のような被転写体に圧接し、この状態でブランケットロール13を回転させ、ガラス基板14上でスライドさせることにより、図1(d)に示すように、ガラス基板14表面に所望のパターンが転写される。なお、ブランケットロール表面にはシリコーンゴムシートの代わりにシリコーン樹脂シートを取り付けてもよい。溶剤成分として溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜12.0の溶剤を含む本発明の印刷用インキ11は、溶剤がブランケットロール13表面に使用したシリコーンゴムシート13aに浸透しにくく、シリコーンゴムシート13aを膨潤させることがないため、連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができる。
【0023】
本発明の印刷用インキは、印刷版がライン幅100μm、深さ25μm、ピッチ360μmの複数の凹状パターンを有する平面凹版からなり、印刷用ブランケットが表面に厚さ0.1〜3mmのシリコーンゴムシートが取り付けられたブランケットロールからなり、被転写体がガラス基板からなるとき、インキを平面凹版に充填し、充填したインキをブランケットロールへ転写した後、ブランケットロールからガラス基板へインキを転写することにより、ガラス基板表面に所定のパターンを有する塗膜を印刷する凹版オフセット印刷をガラス基板500〜1000枚について連続印刷したとき、得られた各500〜1000枚の印刷されたガラス基板について、各ガラス基板の所定位置における9〜16箇所の線幅をそれぞれ測定したときの測定値の平均値が90〜100μm、好ましくは92〜97μmの範囲内であり、かつ測定値の標準偏差値が1〜7μm、好ましくは2〜5μmの範囲内となることが好適である。印刷パターンの形状変動が上記範囲内であれば、凹版オフセット印刷による長時間連続印刷での使用に適し、印刷の再現性に優れたインクを提供することができる。
【実施例】
【0024】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0025】
<実施例1>
先ず、溶解度パラメータ(SP値)が8.6であるジプロピレングリコールモノメチルエーテルを13質量部、エチルセルロース樹脂を1.5質量部及び分散剤としてジカルボン酸系分散剤を0.5質量部とを混合してビークルを得た。次いで、導電性粉末として平均粒径0.4μmのAg粉末を82.5質量部と、ビスマス系ガラスフリットとして平均粒径0.7μmのBi23−B23を2.5質量部とを、ビークル15質量部に混合した後、三本ロールで混練し、Ag粉末及びガラス粉末を分散させた導電性ペーストを得た。次に、印刷版がライン幅100μm、深さ25μm、ピッチ360μmの複数の凹状パターンを有する平面凹版と、印刷用ブランケットが表面に厚さ0.5mmのシリコーンゴムシートが取り付けられたブランケットロールとを有するオフセット印刷装置を用い、上記得られた導電性ペーストで1000枚のガラス基板に連続印刷を行った。
【0026】
<実施例2>
溶解度パラメータ(SP値)が9.3であるエチレングリコールモノブチルエーテルを13質量部、エチルセルロース樹脂を1.5質量部及び分散剤としてジカルボン酸系分散剤を0.5質量部とを混合してビークルを得た。次いで、導電性粉末として平均粒径0.4μmのAg粉末を82.5質量部と、ビスマス系ガラスフリットとして平均粒径0.7μmのBi23−B23を2.5質量部とを、ビークル15質量部に混合した後、三本ロールで混練し、Ag粉末及びガラス粉末を分散させた導電性ペーストを調製した。次に、実施例1と同様にして上記得られた導電性ペーストで1000枚のガラス基板に連続印刷を行った。
【0027】
<実施例3>
溶解度パラメータ(SP値)が10.8であるジエチレングリコールモノメチルエーテルを13質量部、エチルセルロース樹脂を1.5質量部及び分散剤としてジカルボン酸系分散剤を0.5質量部とを混合してビークルを得た。次いで、導電性粉末として平均粒径0.4μmのAg粉末を82.5質量部と、ビスマス系ガラスフリットとして平均粒径0.7μmのBi23−B23を2.5質量部とを、ビークル15質量部に混合した後、三本ロールで混練し、Ag粉末及びガラス粉末を分散させた導電性ペーストを調製した。次に、実施例1と同様にして上記得られた導電性ペーストで1000枚のガラス基板に連続印刷を行った。
【0028】
<実施例4>
溶解度パラメータ(SP値)が11.3であるエチレングリコールモノフェニルエーテルを13質量部、エチルセルロース樹脂を1.5質量部及び分散剤としてジカルボン酸系分散剤を0.5質量部とを混合してビークルを得た。次いで、導電性粉末として平均粒径0.4μmのAg粉末を82.5質量部と、ビスマス系ガラスフリットとして平均粒径0.7μmのBi23−B23を2.5質量部とを、ビークル15質量部に混合した後、三本ロールで混練し、Ag粉末及びガラス粉末を分散させた導電性ペーストを調製した。次に、実施例1と同様にして上記得られた導電性ペーストで1000枚のガラス基板に連続印刷を行った。
【0029】
<比較例1>
溶解度パラメータ(SP値)が7.3であるヘキサンを13質量部、エチルセルロース樹脂を1.5質量部及び分散剤としてジカルボン酸系分散剤を0.5質量部とを混合してビークルを得た。次いで、導電性粉末として平均粒径0.4μmのAg粉末を82.5質量部と、ビスマス系ガラスフリットとして平均粒径0.7μmのBi23−B23を2.5質量部とを、ビークル15質量部に混合した後、三本ロールで混練し、Ag粉末及びガラス粉末を分散させた導電性ペーストを調製した。次に、実施例1と同様にして上記得られた導電性ペーストで1000枚のガラス基板に連続印刷を行った。
【0030】
<比較例2>
溶解度パラメータ(SP値)が14.6であるグリセリンを13質量部、エチルセルロース樹脂を1.5質量部及び分散剤としてジカルボン酸系分散剤を0.5質量部とを混合してビークルを得た。次いで、導電性粉末として平均粒径0.4μmのAg粉末を82.5質量部と、ビスマス系ガラスフリットとして平均粒径0.7μmのBi23−B23を2.5質量部とを、ビークル15質量部に混合した後、三本ロールで混練し、Ag粉末及びガラス粉末を分散させた導電性ペーストを調製した。次に、実施例1と同様にして上記得られた導電性ペーストで1000枚のガラス基板に連続印刷を行った。
【0031】
<比較試験及び評価>
実施例1〜4及び比較例1,2でそれぞれ得られた各500〜1000枚の印刷されたガラス基板について、各ガラス基板の所定位置における16箇所の線幅について、各々測定を行い、測定値の平均値と測定値の標準偏差値を求めた。その結果を次の表1に示す。
【0032】
【表1】

表1から明らかなように、実施例1〜4にあっては、線幅が90〜100μmの範囲内、且つ、標準偏差が1〜10μmの範囲内にある。これに対して、比較例1〜2では、線幅及び標準偏差が、前記範囲外にあることが判る。
【0033】
よって、溶剤の溶解度パラメーター(SP値)が8.0以上、12.0以下である印刷用インクを用いることにより、ガラス基板500〜1000枚の所定の位置に印刷された線幅の平均値及標準偏差が範囲内に収めることができ、本発明が有効に成立することが判る。
【符号の説明】
【0034】
10 平面凹版
10a 凹状パターン
11 印刷用インキ
12 スキージ
13 ブランケットロール
13a シリコーンゴムシート
14 ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分をそれぞれ含有したインキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、前記充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、前記印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写する凹版オフセット印刷法に使用する印刷用インキにおいて、
前記溶剤成分は溶解度パラメータ(SP値)が8.0〜12.0の溶剤を少なくとも1種以上含むことを特徴とする印刷用インキ。
【請求項2】
無機粉末が金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はこれらを混合した混合粉末である請求項1記載の印刷用インキ。
【請求項3】
印刷版がライン幅100μm、深さ25μm、ピッチ360μmの複数の凹状パターンを有する平面凹版からなり、印刷用ブランケットが表面にシリコーンゴムシートが取り付けられたブランケットロールからなり、被転写体がガラス基板からなり、
印刷用インキを前記平面凹版に充填し、前記充填したインキを前記ブランケットロールへ転写した後、前記ブランケットロールから前記ガラス基板へインキを転写することにより、前記ガラス基板表面に所定のパターンを有する塗膜を印刷する凹版オフセット印刷をガラス基板500〜1000枚について連続印刷したとき、
得られた各500〜1000枚の印刷されたガラス基板について、各ガラス基板の所定位置における9〜16箇所の線幅をそれぞれ測定したときの測定値の平均値が90〜100μmの範囲内であり、かつ測定値の標準偏差値が1〜7μmの範囲内である請求項1記載の印刷用インキ。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の印刷用インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、前記充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、前記印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写することを特徴とする塗膜の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−235780(P2010−235780A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85488(P2009−85488)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】