印刷用液体充填済み容器及び画像形成装置
【課題】容器内の残液量を減らす。
【解決手段】軟質材料で構成され気液交換せずに口部94から液体を流出させる液パック130の液体収容部152に、印刷用の液体と気体を充填し、液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を0.059以上とした。
【解決手段】軟質材料で構成され気液交換せずに口部94から液体を流出させる液パック130の液体収容部152に、印刷用の液体と気体を充填し、液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を0.059以上とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用液体充填済み容器及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク等の印刷用の液体を液滴として吐出する記録ヘッドを用いた液滴吐出記録方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
このような液滴吐出記録方式の画像形成装置には、記録ヘッドや当該記録ヘッドに連通するメインタンクに、印刷用液体充填済み容器から液体を送液するものがある。
【0004】
そして、印刷用液体充填済み容器には、大容量の印刷用の液体を収容することが可能な容器が存在する。この容器の本体は、軟質材料で構成されており、口部を下にして画像形成装置に装填される。口部から液体が自然流下すると、排出量に応じて減容するため、気液交換することなくメインタンク等に送液することができる。
【0005】
しかし、このような容器では、送液が進行するに従い容器が潰れるため(減容)、潰れ方によっては、潰れにより形成されるシワの間に液体が取り込まれて、容器内の残液が増大してしまう。
【0006】
そこで、特許文献1には、液体としてのインクを送液する際に、ポリエチレン等の加撓性フィルムからなる容器本体にインクの他に、窒素やアルゴン等の不活性ガスを充填した印刷用液体充填済み容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−136745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成は、インクを排出して空となった容器にインクを再充填する際にその再充填をし易くするために不活性ガスを充填したもので、残液を減らすという記載はない。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、容器内の残液量を減らす印刷用液体充填済み容器及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様に係る印刷用液体充填済み容器は、軟質材料で構成され気液交換せずに口部から液体を流出させる容器に、印刷用の液体と気体を充填し、前記容器の収容可能容量を1としたとき、前記気体の充填容量を0.059以上とした。
【0011】
この構成によれば、口部を下にして容器を画像形成装置に装填したとき、気体が容器の上方へ行き、液体が容器の下方にある口部から流出する。口部から液体が流出するに従い気液交換せずに容器が潰れるが、容器の上方に気体が充填されているため、容器が潰れにくくなっており、一定の姿勢を保つ。このため、気体を充填しない場合よりも、口部から液体をより流出させることができ、もって、容器内の残液量を減らすことができる。
ここで、容器の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を0.059以上とすると、容器内の残液量を最大限減らすことができる。
【0012】
本発明の第2態様に係る印刷用液体充填済み容器は、第1態様において、前記気体の充填容量を0.068以上とした。
【0013】
この構成によれば、容器内の残液量のバラつきを抑制することができる。
【0014】
本発明の第3態様に係る印刷用液体充填済み容器は、第2態様において、前記気体の充填容量を0.091以上とした。
【0015】
この構成によれば、さらに容器内の残液量のバラつきを抑制することができる。
【0016】
本発明の第4態様に係る印刷用液体充填済み容器は、第3態様において、前記気体の充填容量を0.18以下とした。
【0017】
この構成によれば、残液量を減らし、かつ最大量の液体を充填できる。
【0018】
本発明の第5態様に係る印刷用液体充填済み容器は、第1態様〜第4態様の何れか1つの態様において、前記液体はインクであり、前記気体は不活性ガスである。
【0019】
この構成によれば、液体が酸化して劣化するインクであっても、インクと共に充填する気体が不活性ガスであるので、空気を充填する場合に比べ、インクが劣化することを抑制できる。
【0020】
本発明の第6態様に係る画像形成装置は、第1態様〜第5態様の何れか1つに記載の印刷用液体充填済み容器が、その口部が下向きとされて装填される装填部と、前記液体を記録媒体に吐出して画像を形成するヘッド部へ、前記装填部から前記液体を送液する送液部と、を有する。
【0021】
第1態様において印刷用液体充填済み容器の残液量を減らすことで、第6態様に係る画像形成装置では、印刷用液体充填済み容器の口部、装填部、送液部を介してヘッド部へ印刷用液体充填済み容器内の液体をより多く送液することができる。
【0022】
本発明の第7態様に係る画像形成装置は、第6態様において、前記印刷用液体充填済み容器には、前記印刷用液体充填済み容器の少なくとも一部を囲う囲い部材が装着され、前記囲い部材には、前記口部を通す開口部と、前記口部を引っ張り保持する保持部と、が形成されている。
【0023】
この構成によれば、容器の口部の周囲に漏斗状を呈する部位が形成されるため、正確に言えば口部の周囲に設けられた漏斗状部の形状が維持されるため、液パックからの液体の排出性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、容器内の残液量を減らす印刷用液体充填済み容器及び画像形成装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷用液体充填済み容器を含むインクジェット記録装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】液体供給装置を全体的に示す斜視図である。
【図3】図2に示す台座の内部について操作レバーを中心に示す側面図であって、(a)は操作レバーが下方に位置する状態を示し、(b)は操作レバーが上方に位置する状態を示す。
【図4】穿孔部の構成を示す断面図である。
【図5】タンクユニットを示す斜視図であり、(a)(b)(c)のように角度を変えて3方向から見た場合のタンクユニットを示す。
【図6】カートンアダプタを示す斜視図であり、(a)(b)(c)のように角度を変えて3方向から見た場合のカートンアダプタを示す。
【図7】カートンユニットを示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係わる印刷用液体充填済み容器としての液パックを示す3面図である。
【図9】カートン内に液パックを収容したカートンユニットの断面図である。
【図10】カートンユニットをカートンアダプタに装着する様子を示す説明図である。
【図11】穿孔部と液パックの口部の詳細を示す断面図であって、(a)は穿孔部が下方位置にあり、液パックの口部に挿入される前の状態を示す断面図であり、(b)は(a)の状態における液パックの口部に設けられるシール部材の状態を示す説明図である。
【図12】穿孔部と液パックの口部の詳細を示す断面図であって、(a)は穿孔部が上方位置にあり、液パックの口部に挿入されている状態を示す断面図であり、(b)は(a)の状態におけるシール部材の状態を示す説明図である。
【図13】本発明の実施形態に係わる作用の説明図であり、液パック内部の液体を口部から排出する様子を示す図である。
【図14】気体の充填量とインク残液量の関係を示す図である。
【図15】従来技術の説明図であり、液パック内部の液体を口部から排出する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る印刷用液体充填済み容器及び画像形成装置について具体的に説明する。なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0027】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る印刷用液体充填済み容器を含むインクジェット記録装置の全体構成を示す概略図である。
【0028】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、用紙等の記録媒体Pが収容される記録媒体収容部12と、記録媒体Pに画像を記録する画像記録部14と、記録媒体収容部12から画像記録部14へ記録媒体Pを搬送する搬送手段16と、画像記録部14によって画像が記録された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部18と、を備えている。
【0029】
画像記録部14は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの一例として、インク滴を吐出して記録媒体に画像を記録する液滴吐出装置(以下、「インクジェットヘッド」という)10Y、10M、10C、10Kを備えている。なお、インクジェットヘッド10Y、10M、10C、10Kを総称する場合に、「インクジェットヘッド10Y〜10K」と示す場合がある。
【0030】
また、インクジェットヘッド10Y〜10Kは、ノズル(図示省略)が形成されたノズル面22Y〜22Kをそれぞれ有している。このノズル面22Y〜22Kは、インクジェット記録装置1での画像記録が想定される記録媒体Pの最大幅と同程度か、又はそれ以上の記録可能領域を有している。
【0031】
さらに、インクジェットヘッド10Y〜10Kは、記録媒体Pの搬送方向の下流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色の順で並列に並べられており、その各色に対応したインク滴を、圧電方式によって、複数のノズルから吐出し、画像を記録する構成となっている。なお、インクジェットヘッド10Y〜10Kにおいて、インク滴を吐出させる構成は、サーマル方式等の他の方式によって吐出させる構成であっても良い。
【0032】
インクジェット記録装置1には、液体を貯留する貯留部として、各色のインクを貯留するメインインクタンク21Y、21M、21C、21K(以下、21Y〜21Kと示す)が設けられている。このメインインクタンク21Y〜21Kから、各インクジェットヘッド10Y〜10Kへインクが供給される。なお、インクジェットヘッド10Y〜10Kへ供給されるインクとしては、水性インク、油性インク、溶剤系インク等、各種インクの使用が可能である。
【0033】
搬送手段16は、記録媒体収容部12内の記録媒体Pを1枚ずつ取り出す取出ドラム24と、画像記録部14のインクジェットヘッド10Y〜10Kへ記録媒体Pを搬送しその記録面(表面)をインクジェットヘッド10Y〜10Kに対面させる搬送体としての搬送ドラム26と、画像が記録された記録媒体Pを記録媒体排出部18へ送り出す送出ドラム28と、を有している。そして、取出ドラム24、搬送ドラム26、送出ドラム28は、それぞれ記録媒体Pがその周面に静電的吸着手段、或いは吸引や粘着などの非静電的吸着手段によって保持されるように構成されている。
【0034】
また、取出ドラム24、搬送ドラム26、送出ドラム28には、それぞれ記録媒体Pの搬送方向下流側端部を挟んで保持する保持手段としてのグリッパー30が、例えば2組ずつ備えられており、これら3個のドラム24、26、28は、それぞれその周面に記録媒体Pを、グリッパー30によってこの場合は2枚まで保持可能に構成されている。そして、グリッパー30は、各ドラム24、26、28の周面に2つずつ形成された凹部24A、26A、28A内に設けられている。
【0035】
具体的には、各ドラム24、26、28の凹部24A、26A、28A内の予め定められた位置に、各ドラム24、26、28の回転軸32に沿って回転軸34が支持されており、この回転軸34には、その軸方向に間隔をおいて複数のグリッパー30が固定されている。したがって、回転軸34が、図示しないアクチュエーターによって正逆両方向に回転することにより、グリッパー30が各ドラム24、26、28の周方向に沿って正逆両方向に回転し、記録媒体Pの搬送方向下流側端部を挟んで保持したり、離したりするようになっている。
【0036】
つまり、グリッパー30は、その先端部が各ドラム24、26、28の周面から若干突出するように回転することで、取出ドラム24の周面と搬送ドラム26の周面とが対面する受渡位置36において、取出ドラム24のグリッパー30から搬送ドラム26のグリッパー30へ記録媒体Pを受け渡すようになっており、搬送ドラム26の周面と送出ドラム28の周面とが対面する受渡位置38において、搬送ドラム26のグリッパー30から送出ドラム28のグリッパー30へ記録媒体Pを受け渡すようになっている。
【0037】
また、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド10Y〜10Kをメンテナンスするメンテナンスユニット(図示省略)を備えている。メンテナンスユニットは、インクジェットヘッド10Y〜10Kのノズル面を覆うキャップ、予備吐出(空吐出)された液滴を受ける受け部材、ノズル面を清掃する清掃部材、ノズル内のインクを吸引するための吸引装置等を有しており、メンテナンスユニットがインクジェットヘッド10Y〜10Kに対向する対向位置に移動し、各種のメンテナンスを行う。また、メンテナンスユニットには後述する洗浄液が供給される。
【0038】
次に、インクジェット記録装置1の画像記録動作について説明する。
【0039】
記録媒体収容部12から取出ドラム24のグリッパー30により1枚ずつ取り出されて保持された記録媒体Pは、取出ドラム24の周面に吸着されつつ搬送され、受渡位置36において、取出ドラム24のグリッパー30から搬送ドラム26のグリッパー30へ受け渡される。
【0040】
搬送ドラム26のグリッパー30により保持された記録媒体Pは、その搬送ドラム26に吸着されつつインクジェットヘッド10Y〜10Kの画像記録位置まで搬送され、そのインクジェットヘッド10Y〜10Kから吐出されるインク滴により、記録面に画像が記録される。
【0041】
記録面に画像が記録された記録媒体Pは、受渡位置38において、搬送ドラム26のグリッパー30から送出ドラム28のグリッパー30へ受け渡される。そして、送出ドラム28のグリッパー30により保持された記録媒体Pは、その送出ドラム28に吸着されつつ搬送され、記録媒体排出部18へ排出される。以上のように、一連の画像記録動作が行われる。
【0042】
メインインクタンク21Y〜21Kには、本発明に係る液体供給装置40が接続される。液体供給装置40は、メインインクタンク21Y〜21Kやメンテナンスユニットに洗浄液を供給するための液溜めタンクにインクや洗浄液を供給する。
【0043】
(液体供給装置)
図2は、液体供給装置40を全体的に示す斜視図である。
【0044】
液体供給装置40は三段の棚状の筐体41と、筐体41に備えられる5個のタンクユニット42Y,42M,42C,42K,42Wから構成される。尚、タンクユニット42Y,42M,42C,42K,42Wを総称する場合に、「タンクユニット42Y〜42W」と示す場合がある。タンクユニット42Y〜42Wはそれぞれ略立方体を呈する。
【0045】
タンクユニット42Y,42M,42C,42Kはそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクを充填しており、タンクユニット42Wは洗浄液を充填している。タンクユニット42Y〜42Wは筐体41の台座44から着脱自在であり、液体を供給先に供給する交換式の供給タンクである。
【0046】
筐体41の中段の台座44には、タンクユニット42Yとタンクユニット42Mが設けられる(装填される)。筐体41の上段の台座44には、タンクユニット42Cとタンクユニット42Kとタンクユニット42Wが設けられる。タンクユニット42Yはメインインクタンク21Yに、タンクユニット42Mはメインインクタンク21Mに、タンクユニット42Cはメインインクタンク21Cに、タンクユニット42Kはメインインクタンク21Kに、タンクユニット42Wはメンテナンスユニットにそれぞれ対応する配管46(図1では図示省略。後述の図4を参照)を介して接続される。
【0047】
各タンクユニット42Y〜42Wは、それぞれの接続先(供給先)であるメインインクタンク21Y〜21Kやメンテナンスユニットよりも重力方向において上方に設けられ、水頭差によってインクまたは洗浄液を接続先に供給する。
【0048】
筐体41の台座44には、各タンクユニット42Y〜42Wに対応して操作レバー48Y,48M,48C,48K,48Wが設けられる。操作レバー48Y,48M,48C,48K,48Wはタンクユニット42Y〜42Wの交換時に作業者によって上下方向に操作される。
【0049】
筐体41の右側上部付近には操作盤50が取り付けられる。操作盤50には、操作スイッチ52と複数の表示灯54が備えられる。メインインクタンク21Y〜21Kいずれかのインクまたはメンテナンスユニットの洗浄液の液量が予め定められた量まで減少したとき、対応する表示灯54が点灯し、操作者にタンクユニット42Y〜42Wの交換が促さられる。
【0050】
以下、各タンクユニット42Y〜42Wの構成や操作レバー48Y〜48Wの構成は同一であるので、1つのタンクユニット42Y及び操作レバー48Yについて具体的に説明する。尚、符号の添え字「Y」も適宜省略する。
【0051】
(操作レバー)
図3は、図2に示す台座44の内部について操作レバー48を中心に示す側面図である。尚、図3の(a)は操作レバー48が下方に位置する状態を示し、図3の(b)は操作レバー48が上方に位置する状態を示す。
【0052】
操作レバー48は、2つのレバーアーム60を有している(1つは不図示)。各レバーアーム60は回転軸62を介して台座44に支持されており、操作レバー48は回転軸62を中心に回転操作自在とされる。レバーアーム60には、長孔64や後述する係合ピン66と係合するための切り欠き溝68が形成される。この切り欠き溝68は、回転軸62を中心とした円周に沿って形成されており、係合ピン66との係合状態においてタンクユニット42を取り外すことを禁止する構成となっている。
【0053】
以上のような操作レバー48には、台座44の内部であってタンクユニット42に対向する位置に配置された穿孔部70が接続されている。穿孔部70は、操作レバー48の操作位置に応じて上下に動作させられる。具体的には、穿孔部70は2つのレバーアーム60の間に配置されており、穿孔部70の両側端に設けられる側端ピン72をレバーアーム60に形成された長孔64にはめ込む形で操作レバー48に接続されており、穿孔部70は操作レバー48の回転操作に応じて、穿孔部70の側面に設けられた、図示しない2個の門状のガイド部材に沿って上下に移動させられる。
【0054】
この穿孔部70が操作レバー48によって上方に動作されると、タンクユニット42に挿入され(差し込まれ)、穿孔部70によってタンクユニット42が開封され、タンクユニット42から液体(インク)が排出される。
【0055】
図4は、穿孔部70の構成を示す断面図である。
【0056】
穿孔部70は、ベース部材74と、ベース部材74の凹部74Aに設けられると共に上方に向けて開口し、当該開口を囲む囲み部材76と、囲み部材76の内部に設けられる受け部材78と、受け部材78の内部に配置される穿孔具80から構成される。
【0057】
囲み部材76は、ベース部材74に対してねじ82で固定される。囲み部材76の底面の中央には、孔が予め設けられる。また、ベース部材74の凹部74Aの底面の中央にも囲み部材76の孔よりも一回り小さい孔が予め設けられる。
【0058】
受け部材78は、ゴム材からなると共に大略管状を呈し、管部84と、管部84の一端から外方に伸びる受け部86を備える。管部84の他端はベース部材74の凹部74Aの底に密着させられると共に、受け部86は囲み部材76の底に密着させられる。ベース部材74の凹部74Aに形成された孔には、液体の供給先と接続するための配管46の一端が接続される。穿孔具80の基部は配管46の端面に取り付けられ、穿孔具80はその先端部が上方を向いた状態で固定される。
【0059】
(タンクユニット)
図5はタンクユニット42を示す斜視図である。図5では(a)(b)(c)のように角度を変えて3方向から見た場合のタンクユニット42を示す。
【0060】
タンクユニット42はカートンユニット90とカートンアダプタ92から構成される。図中のAで示す面はタンクユニットが台座に装着されるとき前面を向く面(前面)であり、Bで示す面は側面、Cで示す面は背面、Dで示す面は下面、Eで示す面は上面である。下面Dからは液体の出入り口となる口部94及び口部94の鍔部96が突出している。
【0061】
図6は、カートンアダプタ92を示す斜視図である。図6では(a)(b)(c)のように角度を変えて3方向から見た場合のカートンアダプタ92を示す。
【0062】
カートンアダプタ92は肉薄の板金からなり、カートンユニット90の6面の内の前面と両側面と下面の4面を囲うように下板98、側板100、前板102が互いに直角をなすように形成されている。
【0063】
下板98には、カートンユニット90の下面を支持することになる(即ち、液パック130の下面を支持することになる)支持面104と、傾斜部106を介して支持面104に対して下方に段が付くように設けられた段差面108が備えられる。段差面108には液パック130の口部94を通すための開口部110が形成される。
【0064】
開口部110は矩形に開口した部分(以下、「矩形開口部」という)112と半円形に開口した部分(以下、「半円形開口部」という)114からなる。矩形開口部112は液パック130の口部94の鍔部96の断面よりも大きく形成されており、口部94を通すための部分である。半円形開口部114は鍔部の断面よりも小さく形成されており、矩形開口部112から通された口部94の鍔部96を引っ掛けて口部94が開口部110から抜けないように保持するための部分である。また、矩形開口部112と半円形開口部114の間には、2個の爪部116が口部94を通す方向に突出するように形成される。尚、矩形開口部を矩形状としたが、口部94の鍔部96の断面よりも大きければ良く、矩形状以外の形状であっても良い。また、半円形開口部を半円形状としたが、口部の形状に沿った形状であって口部94の鍔部96を引っ掛けて口部94が開口部110から抜けないように保持する形状であれば良く、半円形状以外の形状であっても良い。
【0065】
また、下板98には、外方に向けて先端がやや丸みを帯びた位置決めピン118が2個形成される。位置決めピン118はタンクユニット42を台座44に装着させる際の位置合わせを目的としたものである。また、両側板100には、外方に向けて係合ピン66が1個ずつ形成される。
【0066】
図7は、カートンユニット90を示す斜視図である。
【0067】
カートンユニット90は略立方体状を呈する。カートンユニット90は液体(インク)が充填される本発明の実施形態に係わる印刷用液体充填済み容器としての液パック(液袋)130とその液パック130を収容するカートン(紙箱)132から構成される。液パック130は液体の出入り口となる口部94を備え、カートン132にはその口部94を露出させるための開口134が設けられる。
【0068】
図8は、本発明の実施形態に係わる印刷用液体充填済み容器としての液パック130を示す3面図である。
【0069】
液パック130は、例えばポリエチレン等の軟質材料からなる略立方体状を呈する液体収容部152と、液体収容部152への液体の出入り口となる口部94から構成される。口部94は樹脂材からなり、大略円筒状を呈する。液体収容部152の一部には、口部94に伸びるように漏斗状に形成された漏斗状部154が備えられる。口部94には、漏斗状部154との接続位置において口部94の外周から張り出す鍔部96が形成される。口部94および漏斗状部154は液体収容部152の6面の内の1面において中心から片側(前面側)にオフセットした位置に設けられる。
【0070】
液パック130には口部94以外の空気孔などは設けられておらず、液パック130は液体の排出に伴って潰れるようになっており、気液交換せずに口部94から液体を流出させることができる。
【0071】
図9は、カートン132内に液パック130を収容したカートンユニット90の断面図である。なお、図9は、液パック130輸送時の状態を示し、カートン132にはその口部94を露出させるための開口134が未だ形成されていない。
【0072】
図9に示すように、液パック130輸送時、すなわち配管46への液体の送液開始前までは、液パック130の液体収容部152内に、液体(インク)と気体が収容(充填)されている。
そして、液体収容部152内の残液量を最大限減らすため、液体収容部152内の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を0.059以上としている。また、液体収容部152内の残液量のバラつきを抑制するという観点から、気体の充填容量を0.068以上とすることが好ましく、0.091以上とすることがより好ましい。
また、液体の流出量を十分に確保するという観点から、気体の充填容量を0.18以下とすることも好ましい。
なお、液体収容部152内には、気体の他に、液体が充填されているので、例えば気体の充填容量が0.059とすると、液体の充填容量は0.941である。
【0073】
また、気体の充填圧力は、特に限定されないが、例えば大気圧と同一である。
【0074】
気体の種類は、特に限定されないが、充填される液体がインクである場合、当該インクが酸化して劣化することを防止するため、不活性ガスであることが好ましい。なお、不活性ガスとは、可燃性ガスである副生ガスと酸化反応しない、すなわち副生ガスに混入しても発火の危険性がないガスを意味しており、例えばヘリウムやアルゴン、二酸化炭素、あるいは窒素などが使用できるが、安価な窒素を使用することが好ましい。
【0075】
図10は、カートンユニット90をカートンアダプタ92に装着する様子を示す説明図である。
【0076】
矩形開口部112から口部94を通した後、口部94の鍔部96が爪部116を乗り越えるように口部94を下方に引っ張りつつ半円形開口部114まで移動(スライド)させる。口部94の鍔部96が爪部116を越えきったところで口部94を下方に引っ張るのを止め、口部94の鍔部96を2個の爪部116に押し当てた状態とすることで、口部94は半円形開口部114と2個の爪部116によって保持される。
【0077】
このようにカートンアダプタ92は、支持面104でカートンユニット90の下面(即ち、液パック130の下面)を支持しつつ、支持面104に対して重力方向において下方に設けた段差面108の保持部(半円形開口部114と爪部116)で液パック130の口部94を保持するように構成される。これにより、液パック130の口部94の周囲に漏斗状を呈する部位が形成されるため、正確に言えば液パック130の口部94の周囲に設けられた漏斗状部154の形状が維持されるため、液パック130からの液体の排出性を向上させられる。
【0078】
本実施形態の液パック130では予め漏斗状部154を設けるように構成したが、液パック130に漏斗状部154を積極的に設けない場合であっても、カートンアダプタ92においてカートンユニット90の下面(即ち、液パック130の下面)を支持する支持面104に対して口部94を保持する保持部(半円形開口部114と爪部116)を重力方向において下方に設けたため、液パック130の口部94の周囲に漏斗状を呈する部位が形成され、液パック130からの液体の排出性を向上させられる。
【0079】
また、本実施形態では液パック130をカートン132に収容した上でカートンアダプタ92に装着させるように構成したが、カートン132を用いることなく液パック130を直接カートンアダプタ92に装着させる場合であっても、カートンアダプタ92において液パック130の下面を支持する支持面104に対して口部94を保持する保持部(半円形開口部114と爪部116)を重力方向において下方に設けたため、液パック130の口部94の周囲に漏斗状を呈する部位が形成され、液パック130からの液体の排出性を向上させられる。
【0080】
液パック130をカートン132に収容した上でカートンアダプタ92に装着するのは、液パック130をカートン132に収容した状態の方が液パック130のみの状態よりも取り扱いが平易であり、液パック130のカートンアダプタ92への装着が容易となるからである。また、支持面104と保持部との段差が付き易くなると共にカートン132の開口134から漏斗状となり得る部分のみを突出させるための面を形成し易く、液パック130をカートン132に収容せずに液パック130のみの状態でカートンアダプタ92に取り付ける場合に比べ、より排出性の良い漏斗状を呈する部位が形成されるためである。
【0081】
図11と図12は、穿孔部70と液パック130の口部94の詳細を示す断面図である。図11(a)は穿孔部70が下方位置にあり、液パック130の口部94に挿入される前の状態を示す断面図である。図12(a)は穿孔部70が上方位置にあり、液パック130の口部94に挿入されている状態を示す断面図である。図11(b)は同図(a)の状態における液パック130の口部94に設けられるシール部材200の状態を示す説明図である。図12(b)は同図(a)の状態におけるシール部材200の状態を示す説明図である。
【0082】
液パック130の口部94の内部にはシール部材200が取り付けられる。シール部材200はシリコーンゴムからなり、弾性を有すると共に円盤状を呈する。シール部材200の円状面の中央には一側から他側に貫通する一文字状のスリット(切り込み)202が設けられる。理解し易いように図ではスリット幅を誇張して大きく示したが、実際のスリット幅は微小であってこのスリット202からの液体の流出入は不可とされる。
【0083】
液パック130の口部94の内部であってシール部材200よりも内方側には、液パック130内部の液体を封止するための封止膜204が取り付けられる。
【0084】
図12に示すように、穿孔具80が上方に動作させられて口部94の内部に挿入されると、シール部材200のスリット202は穿孔具80によって矩形状に押し広げられる。
【0085】
穿孔具80によって封止膜204が突き破られると、液パック130内部の液体が下方に流出し始める。液体は穿孔具80の外壁面206と矩形状に押し広げられたスリットの内壁面208によって確保される空間210を通じて配管46まで導かれ、配管46を通って接続先であるメインインクタンク21に供給されることとなる。穿孔具80が注射針のように中空の針から構成され、中空部分を介して液体を排出させる場合に比べると、液体を排出させるための流路(空間210)には液体の排出を阻害するような流路壁が形成されることがなく、液体が口部近傍に溜まることがない。即ち、穿孔具80の外壁面206とスリットの内壁面208によって確保される流路(空間210)は液体の完全なる排出に資する構成と言える。
【0086】
図12(a)の状態から穿孔具80が下方に動作させられて口部94から引き抜かれると、シール部材200のスリット202は図11(b)に示すように一文字状に復帰する。このため、液パック130に液体が残されていたとしても残液が漏れ出ることがない。
【0087】
(作用)
ここで、仮に気体が予め液パック130に充填されていない場合において液パック130内部の液体を口部94から排出する場合を説明する。
【0088】
図15は、従来技術の説明図であり、液パック500内部の液体を口部94から排出する様子を示す図である。なお、液パック500は、液パック130と同様の軟質材料で構成された液体収容部502を備えているが、本実施形態と比べ気体が充填されていない。また、液パック500及び液体収容部502以外のその他の各構成は、本実施形態の各構成と同一であるので、同一の符号を付す。
【0089】
この液パック500は、口部94を下にしてインクジェット記録装置1に装填される。そして、穿孔具80によって口部94の封止膜204等を突き破り、口部94から液体が自然流下する。この際、液パック500の液体収容部502は、軟質材料で構成されており、図15(a)〜(d)に示すように、排出量に応じて減容するため、気液交換することなくメインタンク21等に排出することができる。しかし、このような液体収容部502では、排出が進行するに従い液体収容部502が潰れるため(減容)、潰れ方によっては、潰れにより形成されるシワの間に液体が取り込まれて、液体収容部502内の残液が増大してしまう。
【0090】
そこで、本実施形態では、液パック130の液体収容部152に、印刷用の液体と気体を充填し、液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を0.059以上としている。
【0091】
図13は、本発明の実施形態に係わる作用の説明図であり、液パック130内部の液体を口部94から排出する様子を示す図である。
【0092】
本実施形態の構成によれば、口部94を下にして液パック130をインクジェット記録装置1に装填したとき、気体が液体収容部152の上方へ行き、液体が液体収容部152の下方にある口部94から流出する。そして、口部94から液体が流出するに従い気液交換せずに液体収容部152が潰れるが、液体収容部152の上方に気体が充填されているため、図13(a)〜(d)に示すように、液体収容部152が潰れにくくなっており、一定の姿勢を保つ。このため、気体を充填しない場合よりも、口部94から液体をより流出させることができ、もって、液体収容部152内の残液量を減らすことができる。
ここで、液パック130における液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を0.059以上とすると、液体収容部152内の残液量を最大限減らすことができる。
【0093】
また、本実施形態において、液体と共に充填する気体が不活性ガスである場合、液体が酸化して劣化するインクであっても、空気を充填する場合に比べ、インクが劣化することを抑制できる。
【0094】
また、このような液パック130を有するインクジェット記録装置1は、その口部94が下向きとされて装填される台座44と、液体を記録媒体Pに吐出して画像を形成するインクジェットヘッド10Y〜10Kへ、メインインクタンク21Y〜21Kを介して台座44(口部94)から液体を送液する配管46と、を有する。したがって、液パック130における液体収容部152内の残液量を減らすことで、口部94及び配管46を介してインクジェットヘッド10Y〜10Kへ液体収容部152内の液体をより多く送液することができる。
【0095】
(変形例)
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わされて実施可能である。また、以下の変形例を、適宜、組み合わせてもよい。
【0096】
例えば、本実施形態では液パック130をカートン132に収容した上でカートンアダプタ92に装着させるように構成したが、カートン132を用いることなく液パック130を直接カートンアダプタ92に装着させるようにしてもよい。
【0097】
上記「液体」には、インクに限るものではなく、印刷用の液体であればどのものであってもよい。
また、液体収容部152内の残液量を減らすために、液体収容部152の内壁を滑りやすくコーティングしたり、滑りやすい材料で構成したりするようにしてもよい。
【実施例】
【0098】
以下、本発明に係る実施例について説明する。
【0099】
上述した実施形態の構成において、液パック130の液体収容部152は、ポリエチレンで構成した。また、液体収容部152の収容可能容量を、11Lとした。
【0100】
このような構成の液体収容部152に、液体としてインクジェット用の水性顔料インクを充填し、気体として空気を充填した。空気の充填量は、0〜3Lの範囲(液体収容部152内の収容可能容量を1としたとき、0〜0.273の範囲)とした。また、空気の充填圧力は、大気圧と同一とした。また、液体の充填量は、液体収容部152の収容可能容量から空気の充填量を差し引いた量である。
【0101】
そして、穿孔具80によって封止膜204を突き破り、液パック130の口部94を下にして、液パック130内部の水性顔料インクを下方に流出させた。なお、穿孔した時の、液パック130の口部94の開口面積は約30mm2であった。
【0102】
水性顔料インクが流出し終わった後、液パック130の質量を測定して、インク流出前の液パック130の質量から差し引くことにより、インク残液量を求めた。なお、本実施例では、再現性を調査するため、同じ実施例(気体の充填量が同じ)を4回繰り返した。
【0103】
図14は、気体の充填量とインク残液量の関係を示す図である。
【0104】
同図から、気体の充填量が約0.65Lのところに変曲点があり、この変曲点0.065L以上であると(液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を約0.059以上)、液体収容部152内のインク残液量を最大限減らすことができることを確認した。
【0105】
また、気体の充填容量を0.75L以上(液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を約0.068以上)とすると、液体収容部152内のインク残液量のバラつきを抑制することができることを確認した。
【0106】
また、気体の充填容量を1L以上(液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を約0.091以上)とすると、さらに液体収容部152内のインク残液量のバラつきを抑制することができることを確認した。
【0107】
なお、本実施例では、気体として空気を用いているが、不活性ガスを用いても上記同様の結果が得られる。
【符号の説明】
【0108】
1 インクジェット記録装置(画像形成装置)
10Y 、10M、10C、10K インクジェットヘッド(ヘッド部)
44 台座(装填部)
46 配管(送液部)
80 穿孔具
92 カートンアダプタ(囲い部材)
94 口部
114 半円形開口部(保持部)
116 爪部(保持部)
130 液パック(印刷用液体充填済み容器)
P 記録媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用液体充填済み容器及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク等の印刷用の液体を液滴として吐出する記録ヘッドを用いた液滴吐出記録方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
このような液滴吐出記録方式の画像形成装置には、記録ヘッドや当該記録ヘッドに連通するメインタンクに、印刷用液体充填済み容器から液体を送液するものがある。
【0004】
そして、印刷用液体充填済み容器には、大容量の印刷用の液体を収容することが可能な容器が存在する。この容器の本体は、軟質材料で構成されており、口部を下にして画像形成装置に装填される。口部から液体が自然流下すると、排出量に応じて減容するため、気液交換することなくメインタンク等に送液することができる。
【0005】
しかし、このような容器では、送液が進行するに従い容器が潰れるため(減容)、潰れ方によっては、潰れにより形成されるシワの間に液体が取り込まれて、容器内の残液が増大してしまう。
【0006】
そこで、特許文献1には、液体としてのインクを送液する際に、ポリエチレン等の加撓性フィルムからなる容器本体にインクの他に、窒素やアルゴン等の不活性ガスを充填した印刷用液体充填済み容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−136745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成は、インクを排出して空となった容器にインクを再充填する際にその再充填をし易くするために不活性ガスを充填したもので、残液を減らすという記載はない。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、容器内の残液量を減らす印刷用液体充填済み容器及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様に係る印刷用液体充填済み容器は、軟質材料で構成され気液交換せずに口部から液体を流出させる容器に、印刷用の液体と気体を充填し、前記容器の収容可能容量を1としたとき、前記気体の充填容量を0.059以上とした。
【0011】
この構成によれば、口部を下にして容器を画像形成装置に装填したとき、気体が容器の上方へ行き、液体が容器の下方にある口部から流出する。口部から液体が流出するに従い気液交換せずに容器が潰れるが、容器の上方に気体が充填されているため、容器が潰れにくくなっており、一定の姿勢を保つ。このため、気体を充填しない場合よりも、口部から液体をより流出させることができ、もって、容器内の残液量を減らすことができる。
ここで、容器の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を0.059以上とすると、容器内の残液量を最大限減らすことができる。
【0012】
本発明の第2態様に係る印刷用液体充填済み容器は、第1態様において、前記気体の充填容量を0.068以上とした。
【0013】
この構成によれば、容器内の残液量のバラつきを抑制することができる。
【0014】
本発明の第3態様に係る印刷用液体充填済み容器は、第2態様において、前記気体の充填容量を0.091以上とした。
【0015】
この構成によれば、さらに容器内の残液量のバラつきを抑制することができる。
【0016】
本発明の第4態様に係る印刷用液体充填済み容器は、第3態様において、前記気体の充填容量を0.18以下とした。
【0017】
この構成によれば、残液量を減らし、かつ最大量の液体を充填できる。
【0018】
本発明の第5態様に係る印刷用液体充填済み容器は、第1態様〜第4態様の何れか1つの態様において、前記液体はインクであり、前記気体は不活性ガスである。
【0019】
この構成によれば、液体が酸化して劣化するインクであっても、インクと共に充填する気体が不活性ガスであるので、空気を充填する場合に比べ、インクが劣化することを抑制できる。
【0020】
本発明の第6態様に係る画像形成装置は、第1態様〜第5態様の何れか1つに記載の印刷用液体充填済み容器が、その口部が下向きとされて装填される装填部と、前記液体を記録媒体に吐出して画像を形成するヘッド部へ、前記装填部から前記液体を送液する送液部と、を有する。
【0021】
第1態様において印刷用液体充填済み容器の残液量を減らすことで、第6態様に係る画像形成装置では、印刷用液体充填済み容器の口部、装填部、送液部を介してヘッド部へ印刷用液体充填済み容器内の液体をより多く送液することができる。
【0022】
本発明の第7態様に係る画像形成装置は、第6態様において、前記印刷用液体充填済み容器には、前記印刷用液体充填済み容器の少なくとも一部を囲う囲い部材が装着され、前記囲い部材には、前記口部を通す開口部と、前記口部を引っ張り保持する保持部と、が形成されている。
【0023】
この構成によれば、容器の口部の周囲に漏斗状を呈する部位が形成されるため、正確に言えば口部の周囲に設けられた漏斗状部の形状が維持されるため、液パックからの液体の排出性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、容器内の残液量を減らす印刷用液体充填済み容器及び画像形成装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷用液体充填済み容器を含むインクジェット記録装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】液体供給装置を全体的に示す斜視図である。
【図3】図2に示す台座の内部について操作レバーを中心に示す側面図であって、(a)は操作レバーが下方に位置する状態を示し、(b)は操作レバーが上方に位置する状態を示す。
【図4】穿孔部の構成を示す断面図である。
【図5】タンクユニットを示す斜視図であり、(a)(b)(c)のように角度を変えて3方向から見た場合のタンクユニットを示す。
【図6】カートンアダプタを示す斜視図であり、(a)(b)(c)のように角度を変えて3方向から見た場合のカートンアダプタを示す。
【図7】カートンユニットを示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係わる印刷用液体充填済み容器としての液パックを示す3面図である。
【図9】カートン内に液パックを収容したカートンユニットの断面図である。
【図10】カートンユニットをカートンアダプタに装着する様子を示す説明図である。
【図11】穿孔部と液パックの口部の詳細を示す断面図であって、(a)は穿孔部が下方位置にあり、液パックの口部に挿入される前の状態を示す断面図であり、(b)は(a)の状態における液パックの口部に設けられるシール部材の状態を示す説明図である。
【図12】穿孔部と液パックの口部の詳細を示す断面図であって、(a)は穿孔部が上方位置にあり、液パックの口部に挿入されている状態を示す断面図であり、(b)は(a)の状態におけるシール部材の状態を示す説明図である。
【図13】本発明の実施形態に係わる作用の説明図であり、液パック内部の液体を口部から排出する様子を示す図である。
【図14】気体の充填量とインク残液量の関係を示す図である。
【図15】従来技術の説明図であり、液パック内部の液体を口部から排出する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る印刷用液体充填済み容器及び画像形成装置について具体的に説明する。なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0027】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る印刷用液体充填済み容器を含むインクジェット記録装置の全体構成を示す概略図である。
【0028】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、用紙等の記録媒体Pが収容される記録媒体収容部12と、記録媒体Pに画像を記録する画像記録部14と、記録媒体収容部12から画像記録部14へ記録媒体Pを搬送する搬送手段16と、画像記録部14によって画像が記録された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部18と、を備えている。
【0029】
画像記録部14は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの一例として、インク滴を吐出して記録媒体に画像を記録する液滴吐出装置(以下、「インクジェットヘッド」という)10Y、10M、10C、10Kを備えている。なお、インクジェットヘッド10Y、10M、10C、10Kを総称する場合に、「インクジェットヘッド10Y〜10K」と示す場合がある。
【0030】
また、インクジェットヘッド10Y〜10Kは、ノズル(図示省略)が形成されたノズル面22Y〜22Kをそれぞれ有している。このノズル面22Y〜22Kは、インクジェット記録装置1での画像記録が想定される記録媒体Pの最大幅と同程度か、又はそれ以上の記録可能領域を有している。
【0031】
さらに、インクジェットヘッド10Y〜10Kは、記録媒体Pの搬送方向の下流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色の順で並列に並べられており、その各色に対応したインク滴を、圧電方式によって、複数のノズルから吐出し、画像を記録する構成となっている。なお、インクジェットヘッド10Y〜10Kにおいて、インク滴を吐出させる構成は、サーマル方式等の他の方式によって吐出させる構成であっても良い。
【0032】
インクジェット記録装置1には、液体を貯留する貯留部として、各色のインクを貯留するメインインクタンク21Y、21M、21C、21K(以下、21Y〜21Kと示す)が設けられている。このメインインクタンク21Y〜21Kから、各インクジェットヘッド10Y〜10Kへインクが供給される。なお、インクジェットヘッド10Y〜10Kへ供給されるインクとしては、水性インク、油性インク、溶剤系インク等、各種インクの使用が可能である。
【0033】
搬送手段16は、記録媒体収容部12内の記録媒体Pを1枚ずつ取り出す取出ドラム24と、画像記録部14のインクジェットヘッド10Y〜10Kへ記録媒体Pを搬送しその記録面(表面)をインクジェットヘッド10Y〜10Kに対面させる搬送体としての搬送ドラム26と、画像が記録された記録媒体Pを記録媒体排出部18へ送り出す送出ドラム28と、を有している。そして、取出ドラム24、搬送ドラム26、送出ドラム28は、それぞれ記録媒体Pがその周面に静電的吸着手段、或いは吸引や粘着などの非静電的吸着手段によって保持されるように構成されている。
【0034】
また、取出ドラム24、搬送ドラム26、送出ドラム28には、それぞれ記録媒体Pの搬送方向下流側端部を挟んで保持する保持手段としてのグリッパー30が、例えば2組ずつ備えられており、これら3個のドラム24、26、28は、それぞれその周面に記録媒体Pを、グリッパー30によってこの場合は2枚まで保持可能に構成されている。そして、グリッパー30は、各ドラム24、26、28の周面に2つずつ形成された凹部24A、26A、28A内に設けられている。
【0035】
具体的には、各ドラム24、26、28の凹部24A、26A、28A内の予め定められた位置に、各ドラム24、26、28の回転軸32に沿って回転軸34が支持されており、この回転軸34には、その軸方向に間隔をおいて複数のグリッパー30が固定されている。したがって、回転軸34が、図示しないアクチュエーターによって正逆両方向に回転することにより、グリッパー30が各ドラム24、26、28の周方向に沿って正逆両方向に回転し、記録媒体Pの搬送方向下流側端部を挟んで保持したり、離したりするようになっている。
【0036】
つまり、グリッパー30は、その先端部が各ドラム24、26、28の周面から若干突出するように回転することで、取出ドラム24の周面と搬送ドラム26の周面とが対面する受渡位置36において、取出ドラム24のグリッパー30から搬送ドラム26のグリッパー30へ記録媒体Pを受け渡すようになっており、搬送ドラム26の周面と送出ドラム28の周面とが対面する受渡位置38において、搬送ドラム26のグリッパー30から送出ドラム28のグリッパー30へ記録媒体Pを受け渡すようになっている。
【0037】
また、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド10Y〜10Kをメンテナンスするメンテナンスユニット(図示省略)を備えている。メンテナンスユニットは、インクジェットヘッド10Y〜10Kのノズル面を覆うキャップ、予備吐出(空吐出)された液滴を受ける受け部材、ノズル面を清掃する清掃部材、ノズル内のインクを吸引するための吸引装置等を有しており、メンテナンスユニットがインクジェットヘッド10Y〜10Kに対向する対向位置に移動し、各種のメンテナンスを行う。また、メンテナンスユニットには後述する洗浄液が供給される。
【0038】
次に、インクジェット記録装置1の画像記録動作について説明する。
【0039】
記録媒体収容部12から取出ドラム24のグリッパー30により1枚ずつ取り出されて保持された記録媒体Pは、取出ドラム24の周面に吸着されつつ搬送され、受渡位置36において、取出ドラム24のグリッパー30から搬送ドラム26のグリッパー30へ受け渡される。
【0040】
搬送ドラム26のグリッパー30により保持された記録媒体Pは、その搬送ドラム26に吸着されつつインクジェットヘッド10Y〜10Kの画像記録位置まで搬送され、そのインクジェットヘッド10Y〜10Kから吐出されるインク滴により、記録面に画像が記録される。
【0041】
記録面に画像が記録された記録媒体Pは、受渡位置38において、搬送ドラム26のグリッパー30から送出ドラム28のグリッパー30へ受け渡される。そして、送出ドラム28のグリッパー30により保持された記録媒体Pは、その送出ドラム28に吸着されつつ搬送され、記録媒体排出部18へ排出される。以上のように、一連の画像記録動作が行われる。
【0042】
メインインクタンク21Y〜21Kには、本発明に係る液体供給装置40が接続される。液体供給装置40は、メインインクタンク21Y〜21Kやメンテナンスユニットに洗浄液を供給するための液溜めタンクにインクや洗浄液を供給する。
【0043】
(液体供給装置)
図2は、液体供給装置40を全体的に示す斜視図である。
【0044】
液体供給装置40は三段の棚状の筐体41と、筐体41に備えられる5個のタンクユニット42Y,42M,42C,42K,42Wから構成される。尚、タンクユニット42Y,42M,42C,42K,42Wを総称する場合に、「タンクユニット42Y〜42W」と示す場合がある。タンクユニット42Y〜42Wはそれぞれ略立方体を呈する。
【0045】
タンクユニット42Y,42M,42C,42Kはそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクを充填しており、タンクユニット42Wは洗浄液を充填している。タンクユニット42Y〜42Wは筐体41の台座44から着脱自在であり、液体を供給先に供給する交換式の供給タンクである。
【0046】
筐体41の中段の台座44には、タンクユニット42Yとタンクユニット42Mが設けられる(装填される)。筐体41の上段の台座44には、タンクユニット42Cとタンクユニット42Kとタンクユニット42Wが設けられる。タンクユニット42Yはメインインクタンク21Yに、タンクユニット42Mはメインインクタンク21Mに、タンクユニット42Cはメインインクタンク21Cに、タンクユニット42Kはメインインクタンク21Kに、タンクユニット42Wはメンテナンスユニットにそれぞれ対応する配管46(図1では図示省略。後述の図4を参照)を介して接続される。
【0047】
各タンクユニット42Y〜42Wは、それぞれの接続先(供給先)であるメインインクタンク21Y〜21Kやメンテナンスユニットよりも重力方向において上方に設けられ、水頭差によってインクまたは洗浄液を接続先に供給する。
【0048】
筐体41の台座44には、各タンクユニット42Y〜42Wに対応して操作レバー48Y,48M,48C,48K,48Wが設けられる。操作レバー48Y,48M,48C,48K,48Wはタンクユニット42Y〜42Wの交換時に作業者によって上下方向に操作される。
【0049】
筐体41の右側上部付近には操作盤50が取り付けられる。操作盤50には、操作スイッチ52と複数の表示灯54が備えられる。メインインクタンク21Y〜21Kいずれかのインクまたはメンテナンスユニットの洗浄液の液量が予め定められた量まで減少したとき、対応する表示灯54が点灯し、操作者にタンクユニット42Y〜42Wの交換が促さられる。
【0050】
以下、各タンクユニット42Y〜42Wの構成や操作レバー48Y〜48Wの構成は同一であるので、1つのタンクユニット42Y及び操作レバー48Yについて具体的に説明する。尚、符号の添え字「Y」も適宜省略する。
【0051】
(操作レバー)
図3は、図2に示す台座44の内部について操作レバー48を中心に示す側面図である。尚、図3の(a)は操作レバー48が下方に位置する状態を示し、図3の(b)は操作レバー48が上方に位置する状態を示す。
【0052】
操作レバー48は、2つのレバーアーム60を有している(1つは不図示)。各レバーアーム60は回転軸62を介して台座44に支持されており、操作レバー48は回転軸62を中心に回転操作自在とされる。レバーアーム60には、長孔64や後述する係合ピン66と係合するための切り欠き溝68が形成される。この切り欠き溝68は、回転軸62を中心とした円周に沿って形成されており、係合ピン66との係合状態においてタンクユニット42を取り外すことを禁止する構成となっている。
【0053】
以上のような操作レバー48には、台座44の内部であってタンクユニット42に対向する位置に配置された穿孔部70が接続されている。穿孔部70は、操作レバー48の操作位置に応じて上下に動作させられる。具体的には、穿孔部70は2つのレバーアーム60の間に配置されており、穿孔部70の両側端に設けられる側端ピン72をレバーアーム60に形成された長孔64にはめ込む形で操作レバー48に接続されており、穿孔部70は操作レバー48の回転操作に応じて、穿孔部70の側面に設けられた、図示しない2個の門状のガイド部材に沿って上下に移動させられる。
【0054】
この穿孔部70が操作レバー48によって上方に動作されると、タンクユニット42に挿入され(差し込まれ)、穿孔部70によってタンクユニット42が開封され、タンクユニット42から液体(インク)が排出される。
【0055】
図4は、穿孔部70の構成を示す断面図である。
【0056】
穿孔部70は、ベース部材74と、ベース部材74の凹部74Aに設けられると共に上方に向けて開口し、当該開口を囲む囲み部材76と、囲み部材76の内部に設けられる受け部材78と、受け部材78の内部に配置される穿孔具80から構成される。
【0057】
囲み部材76は、ベース部材74に対してねじ82で固定される。囲み部材76の底面の中央には、孔が予め設けられる。また、ベース部材74の凹部74Aの底面の中央にも囲み部材76の孔よりも一回り小さい孔が予め設けられる。
【0058】
受け部材78は、ゴム材からなると共に大略管状を呈し、管部84と、管部84の一端から外方に伸びる受け部86を備える。管部84の他端はベース部材74の凹部74Aの底に密着させられると共に、受け部86は囲み部材76の底に密着させられる。ベース部材74の凹部74Aに形成された孔には、液体の供給先と接続するための配管46の一端が接続される。穿孔具80の基部は配管46の端面に取り付けられ、穿孔具80はその先端部が上方を向いた状態で固定される。
【0059】
(タンクユニット)
図5はタンクユニット42を示す斜視図である。図5では(a)(b)(c)のように角度を変えて3方向から見た場合のタンクユニット42を示す。
【0060】
タンクユニット42はカートンユニット90とカートンアダプタ92から構成される。図中のAで示す面はタンクユニットが台座に装着されるとき前面を向く面(前面)であり、Bで示す面は側面、Cで示す面は背面、Dで示す面は下面、Eで示す面は上面である。下面Dからは液体の出入り口となる口部94及び口部94の鍔部96が突出している。
【0061】
図6は、カートンアダプタ92を示す斜視図である。図6では(a)(b)(c)のように角度を変えて3方向から見た場合のカートンアダプタ92を示す。
【0062】
カートンアダプタ92は肉薄の板金からなり、カートンユニット90の6面の内の前面と両側面と下面の4面を囲うように下板98、側板100、前板102が互いに直角をなすように形成されている。
【0063】
下板98には、カートンユニット90の下面を支持することになる(即ち、液パック130の下面を支持することになる)支持面104と、傾斜部106を介して支持面104に対して下方に段が付くように設けられた段差面108が備えられる。段差面108には液パック130の口部94を通すための開口部110が形成される。
【0064】
開口部110は矩形に開口した部分(以下、「矩形開口部」という)112と半円形に開口した部分(以下、「半円形開口部」という)114からなる。矩形開口部112は液パック130の口部94の鍔部96の断面よりも大きく形成されており、口部94を通すための部分である。半円形開口部114は鍔部の断面よりも小さく形成されており、矩形開口部112から通された口部94の鍔部96を引っ掛けて口部94が開口部110から抜けないように保持するための部分である。また、矩形開口部112と半円形開口部114の間には、2個の爪部116が口部94を通す方向に突出するように形成される。尚、矩形開口部を矩形状としたが、口部94の鍔部96の断面よりも大きければ良く、矩形状以外の形状であっても良い。また、半円形開口部を半円形状としたが、口部の形状に沿った形状であって口部94の鍔部96を引っ掛けて口部94が開口部110から抜けないように保持する形状であれば良く、半円形状以外の形状であっても良い。
【0065】
また、下板98には、外方に向けて先端がやや丸みを帯びた位置決めピン118が2個形成される。位置決めピン118はタンクユニット42を台座44に装着させる際の位置合わせを目的としたものである。また、両側板100には、外方に向けて係合ピン66が1個ずつ形成される。
【0066】
図7は、カートンユニット90を示す斜視図である。
【0067】
カートンユニット90は略立方体状を呈する。カートンユニット90は液体(インク)が充填される本発明の実施形態に係わる印刷用液体充填済み容器としての液パック(液袋)130とその液パック130を収容するカートン(紙箱)132から構成される。液パック130は液体の出入り口となる口部94を備え、カートン132にはその口部94を露出させるための開口134が設けられる。
【0068】
図8は、本発明の実施形態に係わる印刷用液体充填済み容器としての液パック130を示す3面図である。
【0069】
液パック130は、例えばポリエチレン等の軟質材料からなる略立方体状を呈する液体収容部152と、液体収容部152への液体の出入り口となる口部94から構成される。口部94は樹脂材からなり、大略円筒状を呈する。液体収容部152の一部には、口部94に伸びるように漏斗状に形成された漏斗状部154が備えられる。口部94には、漏斗状部154との接続位置において口部94の外周から張り出す鍔部96が形成される。口部94および漏斗状部154は液体収容部152の6面の内の1面において中心から片側(前面側)にオフセットした位置に設けられる。
【0070】
液パック130には口部94以外の空気孔などは設けられておらず、液パック130は液体の排出に伴って潰れるようになっており、気液交換せずに口部94から液体を流出させることができる。
【0071】
図9は、カートン132内に液パック130を収容したカートンユニット90の断面図である。なお、図9は、液パック130輸送時の状態を示し、カートン132にはその口部94を露出させるための開口134が未だ形成されていない。
【0072】
図9に示すように、液パック130輸送時、すなわち配管46への液体の送液開始前までは、液パック130の液体収容部152内に、液体(インク)と気体が収容(充填)されている。
そして、液体収容部152内の残液量を最大限減らすため、液体収容部152内の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を0.059以上としている。また、液体収容部152内の残液量のバラつきを抑制するという観点から、気体の充填容量を0.068以上とすることが好ましく、0.091以上とすることがより好ましい。
また、液体の流出量を十分に確保するという観点から、気体の充填容量を0.18以下とすることも好ましい。
なお、液体収容部152内には、気体の他に、液体が充填されているので、例えば気体の充填容量が0.059とすると、液体の充填容量は0.941である。
【0073】
また、気体の充填圧力は、特に限定されないが、例えば大気圧と同一である。
【0074】
気体の種類は、特に限定されないが、充填される液体がインクである場合、当該インクが酸化して劣化することを防止するため、不活性ガスであることが好ましい。なお、不活性ガスとは、可燃性ガスである副生ガスと酸化反応しない、すなわち副生ガスに混入しても発火の危険性がないガスを意味しており、例えばヘリウムやアルゴン、二酸化炭素、あるいは窒素などが使用できるが、安価な窒素を使用することが好ましい。
【0075】
図10は、カートンユニット90をカートンアダプタ92に装着する様子を示す説明図である。
【0076】
矩形開口部112から口部94を通した後、口部94の鍔部96が爪部116を乗り越えるように口部94を下方に引っ張りつつ半円形開口部114まで移動(スライド)させる。口部94の鍔部96が爪部116を越えきったところで口部94を下方に引っ張るのを止め、口部94の鍔部96を2個の爪部116に押し当てた状態とすることで、口部94は半円形開口部114と2個の爪部116によって保持される。
【0077】
このようにカートンアダプタ92は、支持面104でカートンユニット90の下面(即ち、液パック130の下面)を支持しつつ、支持面104に対して重力方向において下方に設けた段差面108の保持部(半円形開口部114と爪部116)で液パック130の口部94を保持するように構成される。これにより、液パック130の口部94の周囲に漏斗状を呈する部位が形成されるため、正確に言えば液パック130の口部94の周囲に設けられた漏斗状部154の形状が維持されるため、液パック130からの液体の排出性を向上させられる。
【0078】
本実施形態の液パック130では予め漏斗状部154を設けるように構成したが、液パック130に漏斗状部154を積極的に設けない場合であっても、カートンアダプタ92においてカートンユニット90の下面(即ち、液パック130の下面)を支持する支持面104に対して口部94を保持する保持部(半円形開口部114と爪部116)を重力方向において下方に設けたため、液パック130の口部94の周囲に漏斗状を呈する部位が形成され、液パック130からの液体の排出性を向上させられる。
【0079】
また、本実施形態では液パック130をカートン132に収容した上でカートンアダプタ92に装着させるように構成したが、カートン132を用いることなく液パック130を直接カートンアダプタ92に装着させる場合であっても、カートンアダプタ92において液パック130の下面を支持する支持面104に対して口部94を保持する保持部(半円形開口部114と爪部116)を重力方向において下方に設けたため、液パック130の口部94の周囲に漏斗状を呈する部位が形成され、液パック130からの液体の排出性を向上させられる。
【0080】
液パック130をカートン132に収容した上でカートンアダプタ92に装着するのは、液パック130をカートン132に収容した状態の方が液パック130のみの状態よりも取り扱いが平易であり、液パック130のカートンアダプタ92への装着が容易となるからである。また、支持面104と保持部との段差が付き易くなると共にカートン132の開口134から漏斗状となり得る部分のみを突出させるための面を形成し易く、液パック130をカートン132に収容せずに液パック130のみの状態でカートンアダプタ92に取り付ける場合に比べ、より排出性の良い漏斗状を呈する部位が形成されるためである。
【0081】
図11と図12は、穿孔部70と液パック130の口部94の詳細を示す断面図である。図11(a)は穿孔部70が下方位置にあり、液パック130の口部94に挿入される前の状態を示す断面図である。図12(a)は穿孔部70が上方位置にあり、液パック130の口部94に挿入されている状態を示す断面図である。図11(b)は同図(a)の状態における液パック130の口部94に設けられるシール部材200の状態を示す説明図である。図12(b)は同図(a)の状態におけるシール部材200の状態を示す説明図である。
【0082】
液パック130の口部94の内部にはシール部材200が取り付けられる。シール部材200はシリコーンゴムからなり、弾性を有すると共に円盤状を呈する。シール部材200の円状面の中央には一側から他側に貫通する一文字状のスリット(切り込み)202が設けられる。理解し易いように図ではスリット幅を誇張して大きく示したが、実際のスリット幅は微小であってこのスリット202からの液体の流出入は不可とされる。
【0083】
液パック130の口部94の内部であってシール部材200よりも内方側には、液パック130内部の液体を封止するための封止膜204が取り付けられる。
【0084】
図12に示すように、穿孔具80が上方に動作させられて口部94の内部に挿入されると、シール部材200のスリット202は穿孔具80によって矩形状に押し広げられる。
【0085】
穿孔具80によって封止膜204が突き破られると、液パック130内部の液体が下方に流出し始める。液体は穿孔具80の外壁面206と矩形状に押し広げられたスリットの内壁面208によって確保される空間210を通じて配管46まで導かれ、配管46を通って接続先であるメインインクタンク21に供給されることとなる。穿孔具80が注射針のように中空の針から構成され、中空部分を介して液体を排出させる場合に比べると、液体を排出させるための流路(空間210)には液体の排出を阻害するような流路壁が形成されることがなく、液体が口部近傍に溜まることがない。即ち、穿孔具80の外壁面206とスリットの内壁面208によって確保される流路(空間210)は液体の完全なる排出に資する構成と言える。
【0086】
図12(a)の状態から穿孔具80が下方に動作させられて口部94から引き抜かれると、シール部材200のスリット202は図11(b)に示すように一文字状に復帰する。このため、液パック130に液体が残されていたとしても残液が漏れ出ることがない。
【0087】
(作用)
ここで、仮に気体が予め液パック130に充填されていない場合において液パック130内部の液体を口部94から排出する場合を説明する。
【0088】
図15は、従来技術の説明図であり、液パック500内部の液体を口部94から排出する様子を示す図である。なお、液パック500は、液パック130と同様の軟質材料で構成された液体収容部502を備えているが、本実施形態と比べ気体が充填されていない。また、液パック500及び液体収容部502以外のその他の各構成は、本実施形態の各構成と同一であるので、同一の符号を付す。
【0089】
この液パック500は、口部94を下にしてインクジェット記録装置1に装填される。そして、穿孔具80によって口部94の封止膜204等を突き破り、口部94から液体が自然流下する。この際、液パック500の液体収容部502は、軟質材料で構成されており、図15(a)〜(d)に示すように、排出量に応じて減容するため、気液交換することなくメインタンク21等に排出することができる。しかし、このような液体収容部502では、排出が進行するに従い液体収容部502が潰れるため(減容)、潰れ方によっては、潰れにより形成されるシワの間に液体が取り込まれて、液体収容部502内の残液が増大してしまう。
【0090】
そこで、本実施形態では、液パック130の液体収容部152に、印刷用の液体と気体を充填し、液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を0.059以上としている。
【0091】
図13は、本発明の実施形態に係わる作用の説明図であり、液パック130内部の液体を口部94から排出する様子を示す図である。
【0092】
本実施形態の構成によれば、口部94を下にして液パック130をインクジェット記録装置1に装填したとき、気体が液体収容部152の上方へ行き、液体が液体収容部152の下方にある口部94から流出する。そして、口部94から液体が流出するに従い気液交換せずに液体収容部152が潰れるが、液体収容部152の上方に気体が充填されているため、図13(a)〜(d)に示すように、液体収容部152が潰れにくくなっており、一定の姿勢を保つ。このため、気体を充填しない場合よりも、口部94から液体をより流出させることができ、もって、液体収容部152内の残液量を減らすことができる。
ここで、液パック130における液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を0.059以上とすると、液体収容部152内の残液量を最大限減らすことができる。
【0093】
また、本実施形態において、液体と共に充填する気体が不活性ガスである場合、液体が酸化して劣化するインクであっても、空気を充填する場合に比べ、インクが劣化することを抑制できる。
【0094】
また、このような液パック130を有するインクジェット記録装置1は、その口部94が下向きとされて装填される台座44と、液体を記録媒体Pに吐出して画像を形成するインクジェットヘッド10Y〜10Kへ、メインインクタンク21Y〜21Kを介して台座44(口部94)から液体を送液する配管46と、を有する。したがって、液パック130における液体収容部152内の残液量を減らすことで、口部94及び配管46を介してインクジェットヘッド10Y〜10Kへ液体収容部152内の液体をより多く送液することができる。
【0095】
(変形例)
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わされて実施可能である。また、以下の変形例を、適宜、組み合わせてもよい。
【0096】
例えば、本実施形態では液パック130をカートン132に収容した上でカートンアダプタ92に装着させるように構成したが、カートン132を用いることなく液パック130を直接カートンアダプタ92に装着させるようにしてもよい。
【0097】
上記「液体」には、インクに限るものではなく、印刷用の液体であればどのものであってもよい。
また、液体収容部152内の残液量を減らすために、液体収容部152の内壁を滑りやすくコーティングしたり、滑りやすい材料で構成したりするようにしてもよい。
【実施例】
【0098】
以下、本発明に係る実施例について説明する。
【0099】
上述した実施形態の構成において、液パック130の液体収容部152は、ポリエチレンで構成した。また、液体収容部152の収容可能容量を、11Lとした。
【0100】
このような構成の液体収容部152に、液体としてインクジェット用の水性顔料インクを充填し、気体として空気を充填した。空気の充填量は、0〜3Lの範囲(液体収容部152内の収容可能容量を1としたとき、0〜0.273の範囲)とした。また、空気の充填圧力は、大気圧と同一とした。また、液体の充填量は、液体収容部152の収容可能容量から空気の充填量を差し引いた量である。
【0101】
そして、穿孔具80によって封止膜204を突き破り、液パック130の口部94を下にして、液パック130内部の水性顔料インクを下方に流出させた。なお、穿孔した時の、液パック130の口部94の開口面積は約30mm2であった。
【0102】
水性顔料インクが流出し終わった後、液パック130の質量を測定して、インク流出前の液パック130の質量から差し引くことにより、インク残液量を求めた。なお、本実施例では、再現性を調査するため、同じ実施例(気体の充填量が同じ)を4回繰り返した。
【0103】
図14は、気体の充填量とインク残液量の関係を示す図である。
【0104】
同図から、気体の充填量が約0.65Lのところに変曲点があり、この変曲点0.065L以上であると(液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を約0.059以上)、液体収容部152内のインク残液量を最大限減らすことができることを確認した。
【0105】
また、気体の充填容量を0.75L以上(液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を約0.068以上)とすると、液体収容部152内のインク残液量のバラつきを抑制することができることを確認した。
【0106】
また、気体の充填容量を1L以上(液体収容部152の収容可能容量を1としたとき、気体の充填容量を約0.091以上)とすると、さらに液体収容部152内のインク残液量のバラつきを抑制することができることを確認した。
【0107】
なお、本実施例では、気体として空気を用いているが、不活性ガスを用いても上記同様の結果が得られる。
【符号の説明】
【0108】
1 インクジェット記録装置(画像形成装置)
10Y 、10M、10C、10K インクジェットヘッド(ヘッド部)
44 台座(装填部)
46 配管(送液部)
80 穿孔具
92 カートンアダプタ(囲い部材)
94 口部
114 半円形開口部(保持部)
116 爪部(保持部)
130 液パック(印刷用液体充填済み容器)
P 記録媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質材料で構成され気液交換せずに口部から液体を流出させる容器に、印刷用の液体と気体を充填し、
前記容器の収容可能容量を1としたとき、前記気体の充填容量を0.059以上とした、
印刷用液体充填済み容器。
【請求項2】
前記気体の充填容量を0.068以上とした、
請求項1に記載の印刷用液体充填済み容器。
【請求項3】
前記気体の充填容量を0.091以上とした、
請求項2に記載の印刷用液体充填済み容器。
【請求項4】
前記気体の充填容量を0.18以下とした、
請求項3に記載の印刷用液体充填済み容器。
【請求項5】
前記液体はインクであり、前記気体は不活性ガスである、
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の印刷用液体充填済み容器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の印刷用液体充填済み容器が、その口部が下向きとされて装填される装填部と、
前記液体を記録媒体に吐出して画像を形成するヘッド部へ、前記装填部から前記液体を送液する送液部と、
を有する画像形成装置。
【請求項7】
前記印刷用液体充填済み容器には、前記印刷用液体充填済み容器の少なくとも一部を囲う囲い部材が装着され、
前記囲い部材には、前記口部を通す開口部と、前記口部を引っ張り保持する保持部と、が形成されている、
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項1】
軟質材料で構成され気液交換せずに口部から液体を流出させる容器に、印刷用の液体と気体を充填し、
前記容器の収容可能容量を1としたとき、前記気体の充填容量を0.059以上とした、
印刷用液体充填済み容器。
【請求項2】
前記気体の充填容量を0.068以上とした、
請求項1に記載の印刷用液体充填済み容器。
【請求項3】
前記気体の充填容量を0.091以上とした、
請求項2に記載の印刷用液体充填済み容器。
【請求項4】
前記気体の充填容量を0.18以下とした、
請求項3に記載の印刷用液体充填済み容器。
【請求項5】
前記液体はインクであり、前記気体は不活性ガスである、
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の印刷用液体充填済み容器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の印刷用液体充填済み容器が、その口部が下向きとされて装填される装填部と、
前記液体を記録媒体に吐出して画像を形成するヘッド部へ、前記装填部から前記液体を送液する送液部と、
を有する画像形成装置。
【請求項7】
前記印刷用液体充填済み容器には、前記印刷用液体充填済み容器の少なくとも一部を囲う囲い部材が装着され、
前記囲い部材には、前記口部を通す開口部と、前記口部を引っ張り保持する保持部と、が形成されている、
請求項6に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−131067(P2012−131067A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283433(P2010−283433)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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