説明

印刷用版及びその製造方法、機能性膜の形成方法、インクジェットヘッド並びにインクジェット記録装置

【課題】所期の寸法通りの凹凸パターンの印刷用版が得られる印刷用版の製造方法を提供する。
【解決手段】成形型原板14kから作製される凹凸パターン基板14の凹凸パターン形成面とは反対面に補強基板15を接合して成形型16とする成形型作製工程(1a)〜(1d)と、成形型16の凹凸パターン形成面に、液体状樹脂13aを塗布する塗布工程(2a)と、液体状樹脂13aの層を挟んで、支持基板52を成形型16に押圧させ、その状態で加熱により液体状樹脂13aを硬化させて硬化樹脂層13とする硬化工程(2b),(2c)と、成形型16を硬化樹脂層13から剥離して、前記凹凸パターンが転写された硬化樹脂層13と支持基板52からなる印刷用版50を得る剥離工程(2c)と、を有し、硬化工程の加熱、冷却処理の温度範囲における補強基板15と支持基板52の熱膨張係数の差は支持基板52と凹凸パターン基板14の熱膨張係数の差よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロコンタクトプリントに用いられる印刷用版及びその製造方法、前記印刷用版を用いた機能性膜の形成方法、インクジェットヘッド並びにインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電素子を用いたインクジェットヘッドを高密度化する技術として、特許文献1等に示されるように、MEMS(マイクロ エレクトロ メカニカル システム)を応用した技術が開示されている。すなわち、半導体デバイス製造技術を応用し、アクチュエータ,液体流路を微細に形成することにより、ノズル密度を高密度にすることができるため、ヘッドの小型化,高集積化が可能になる。
【0003】
このようなMEMS技術を採用したインクジェットヘッドでは、薄膜技術で形成された振動板上に、薄膜形成技術で形成した電極,圧電体をフォトリソグラフィでパターニングし、圧電素子を形成することでアクチュエータとすることができる。
【0004】
圧電素子の形成に関して、例えばインクジェット方式によりチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の前駆体を基材に塗布、焼成することによって圧電素子を形成する技術が既に知られている。この方式は、所望の領域に選択的にPZT前駆体を塗布することが可能であり、鉛を含有するPZT前駆体の消費量を抑制することが可能であるため、環境面において有利である。
【0005】
しかしながら、インクジェット方式は、複数ノズル、非接触手段による液体の塗布方法であり、さらにインクジェットヘッドが搭載されたキャリッジと基材間の相対移動手段の位置ばらつきによって、パターン形成精度に数μm〜数十μm程度のばらつきが発生するため、圧電素子の形状がばらつき、圧電素子の電気特性に不具合を生じる要因となる。
【0006】
この不具合を解消する方法として、基材の表面に親水性の領域と撥水性の領域からなる表面エネルギーの差をパターニングする技術があり、このパターニング方法の一つとしてマイクロコンタクトプリント(μCP)法という技術が既に知られている。この技術は、ナノメートル乃至マイクロメートルオーダの凹凸パターンを形成したミリメートル乃至マイクロメートルオーダの厚みを有するPDMS(ポリジメチルシロキサン)樹脂を印刷用版として用い、インクとして撥水性(あるいは親水性)を有する溶液を用いて、高解像度の撥水性(あるいは親水性)パターンを接触方式により印刷することを特徴としている(特許文献2,3参照。)。
【0007】
μCP法のプロセスは、印刷用版に機能性溶液を付着させる工程(インキング工程)、印刷用版に付着させた機能性溶液を基材に転写させる工程(転写工程)からなり、これらの工程を行う印刷装置(μCP装置)が既に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のμCP法で用いる印刷用版における凹凸パターンが、所期の寸法通りではなく、印刷品質が悪いことがあった。
【0009】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、所期の寸法通りの凹凸パターンの印刷用版が得られる印刷用版の製造方法、該印刷用版の製造方法により得られる印刷用版、該印刷用版を用いた機能性膜の形成方法、該機能性膜の形成方法により製造されるインクジェットヘッド並びに該インクジェットヘッドを用いたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者が前述した問題の原因を調査したところ、印刷用版は、液状のPDMS樹脂を凹凸パターンを形成した成形型(凹凸パターン基板)に塗布した後に支持基板で圧接された状態で加熱処理により硬化させたPDMS樹脂(硬化樹脂層)に成形型の凹凸パターンが転写されて作製されるが、成形型の全面に設けられたマイクロメートルオーダ乃至ナノメートルオーダの微細な凹凸パターンをPDMS樹脂に転写させるものであるため、印刷用版の加熱硬化工程中における凹凸パターン基板と支持基板とのわずかな熱膨張の差でも、支持基板上の硬化樹脂層における凹凸パターンの水平方向の寸法精度が悪化することとなり、印刷品質を低下させていることが判明した。そこで、発明者はその知見に基づいて前記問題を解決すべく鋭意検討を行い、本発明を成すに至った。
【0011】
すなわち、前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。なお、カッコ内に本発明を実施するための形態において対応する部位及び符号等を示す。
〔1〕 マイクロコンタクトプリントに用いる印刷用版の製造方法であって、成形型原板(成形型原板14k)の主面に凹凸パターンを形成して凹凸パターン基板(凹凸パターン基板14)とし、ついで該凹凸パターン基板の凹凸パターン形成面とは反対側の主面に前記凹凸パターン基板を補強する補強基板(補強基板15)を接合して成形型(成形型16)とする工程(図1(1a)〜(1d))、または成形型原板(成形型原板14k)の主面に補強基板(補強基板15)を接合し、ついで該成形型原板の前記補強基板を接合した面とは反対側の主面に凹凸パターンを形成して成形型(成形型16)とする工程からなる成形型作製工程と、前記成形型の凹凸パターン形成面に、液体状樹脂(液体状樹脂13a)を塗布する塗布工程(図1(2a))と、前記成形型の凹凸パターン面に塗布された前記液体状樹脂の層を挟んで、支持基板(支持基板52)を前記成形型に押圧させ、その状態で加熱により前記液体状樹脂を硬化させて硬化樹脂層(硬化樹脂層13)とする硬化工程(図1(2b),(2c))と、前記成形型を前記硬化樹脂層から剥離して、前記凹凸パターンが転写された硬化樹脂層と前記支持基板からなる印刷用版(印刷用版50)を得る剥離工程(図1(2c))と、を有し、前記硬化工程の加熱、冷却処理の温度範囲における前記補強基板と支持基板の熱膨張係数の差は、前記支持基板と凹凸パターン基板の熱膨張係数の差よりも小さいことを特徴とする印刷用版の製造方法(図1)。
〔2〕 前記硬化工程における加熱、冷却処理の温度範囲における前記補強基板と支持基板の熱膨張係数の差の最大値が絶対値として0.8×10−6−1未満であることを特徴とする前記〔1〕に記載の印刷用版の製造方法。
〔3〕 前記補強基板及び支持基板は、珪酸系ガラスからなることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の印刷用版の製造方法。
〔4〕 前記補強基板及び支持基板は、同一の材料からなることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の印刷用版の製造方法。
〔5〕 前記成形型原板は、フォトリソグラフィにより前記凹凸パターンが形成可能な材料からなることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の印刷用版の製造方法。
〔6〕 前記液体状樹脂は、ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂のいずれかであることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の印刷用版の製造方法。
〔7〕 前記成形型における前記凹凸パターン基板と補強基板は、陽極接合されていることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の印刷用版の製造方法。
〔8〕 前記支持基板の前記液体状樹脂の層と接する表面が表面改質されていることを特徴とする前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の印刷用版の製造方法。
〔9〕 前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の印刷用版の製造方法により製造されてなることを特徴とする印刷用版(印刷用版50、図1(2d))。
〔10〕 前記〔9〕に記載の印刷用版(印刷用版50)の前記凹凸パターン形成面に有機分子含有溶液を塗布し、該凹凸パターン面を被印刷面に接触させて、該被印刷面上に有機分子膜を転写することにより、撥液部(撥液性領域301)で区分される所定パターンの親液部(親液性領域302)を形成する第1の工程(図2(a))と、前記被印刷面上に形成された前記親液部に所定の液体塗布手段(液体塗布手段400)を用いて選択的に機能液(機能液401)を供給する第2の工程(図2(b))と、前記親液部に供給された機能液にエネルギーを付与して所定パターンの機能性膜(機能性膜500)を形成する第3の工程(図2(c))と、を有することを特徴とする機能性膜の形成方法(図2)。
〔11〕 隔壁(隔壁部503a)により区画されてなり、それぞれが液滴吐出孔(ノズル孔505)を有する複数の個別液室(個別液室506)と、前記複数の個別液室の前記液滴吐出孔が設けられる板面とは別の面に設けられる振動板(振動板540)と、前記振動板上の前記複数の個別液室それぞれに対応する位置に設けられ、該振動板側から共通電極となる下部電極(下部電極500a)、圧電体(圧電体500b)、個別電極となる上部電極(上部電極500c)の順に積層されてなる複数の圧電素子(圧電素子501)と、前記下部電極と接続される共通電極配線と、前記複数の圧電素子それぞれの上部電極と個別に導通し駆動信号が入力される個別電極配線と、を備えるインクジェットヘッドにおいて、前記下部電極、圧電体、上部電極の少なくともいずれかが、前記〔10〕に記載の機能性膜の形成方法により形成されてなることを特徴とするインクジェットヘッド(インクジェットヘッド1、図4,図5)。
〔12〕 前記〔11〕に記載のインクジェットヘッド(インクジェットヘッド1)を備えることを特徴とするインクジェット記録装置(インクジェット記録装置90、図8,図9)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の印刷用版の製造方法によれば、凹凸パターン基板に補強基板が接合されるので、成形型の熱膨張は該補強基板により規制され、かつ硬化工程の加熱、冷却処理の温度範囲における補強基板と支持基板の熱膨張係数の差は、補強基板と凹凸パターン基板の熱膨張係数の差よりも小さいので、硬化工程における成形型の膨張収縮の挙動は支持基板の膨張収縮とほぼ同じものとなり、硬化樹脂層に設計寸法通りの凹凸パターンを形成することができ、良好な印刷品質が得られる印刷用版を製造することが可能となる。またその結果、前記印刷用版を用いた機能性膜の形成方法では、機能性膜を精度よく形成することが可能となり、引いては安定した吐出性能を有するインクジェットヘッドを得ることができる。
また本発明のインクジェット記録装置によれば、本発明のインクジェットヘッドを有し、該インクジェットヘッドの液滴吐出孔からインク滴を安定して吐出するので、良質な画像を安定して形成することが可能となるとともに製造不良が減少して低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る本発明に係る印刷用版の製造工程図である。
【図2】本発明に係る機能性膜の形成方法に関する工程図である。
【図3】本発明に係る機能性膜の形成方法に用いる印刷装置の構成を示す概略図である。
【図4】本発明に係るインクジェットヘッドの構成を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るインクジェットヘッドの幅方向の構成を示す断面概略図である。
【図6】図5のインクジェットヘッドにおける圧電素子の製造工程図である。
【図7】本発明のインクジェットヘッドを用いた液体カートリッジの外観図である。
【図8】本発明に係る画像形成装置であるインクジェット記録装置の外観図である。
【図9】図8のインクジェット記録装置の機構部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る印刷用版の製造方法について説明する。
図1は、本発明に係る本発明に係る印刷用版の製造方法を示す製造工程図である。このうち、図1(1a)〜(1d)は成形型に関する製造工程であり、図1(2a)〜(2d)は印刷用版に関する製造工程である。
【0015】
(S1a)エッチングマスク形成(図1(1a))
成形型原板14kの表面にフォトレジストを塗布・ベーク・露光することにより、所定パターンの開口部(図中、白抜き部分)を有するエッチングマスク17を形成する。ここで、成形型原板14kは、フォトリソグラフィにより所定の凹凸パターンが形成可能な材料からなることが好ましく、例えばシリコン基板を用いることが好適である。
(S1b)エッチング(図1(1b))
つぎに、エッチングマスク17の開口部を通して成形型原板14kをドライエッチングすることにより、その表面にエッチングマスク17の開口部のパターンに対応した凹凸パターンを形成する。
(S1c)エッチングマスク除去(図1(1c))
成形型原板14kに凹凸パターンを形成した後、フォトレジストから成るエッチングマスク17を剥離することにより凹凸パターン基板14を得る。
(S1d)補強基板接合(図1(1d))
凹凸パターン基板14の凹凸パターン形成面とは反対側の面(図中、下側の面)に、補強基板15の主面を接合し、成形型16とする。
【0016】
ここで、補強基板15は、凹凸パターン基板14よりも剛性が高く、該凹凸パターン基板14を補強するものであり、これにより後述する剥離工程(S2d)において硬化樹脂層13から剥離させる際に凹凸パターン基板14の破損を防止することができる。また、補強基板15は、この後行われる硬化工程(S2c)の加熱硬化−冷却処理の温度範囲(例えば、20〜200℃)における凹凸パターン基板14との熱膨張係数の差ができるだけ小さいことが好ましく、例えば温度範囲20〜200℃における凹凸パターン基板14との熱膨張係数の差の最大値が±0.8×10−6−1以内であることが好適である。これにより、成形型16において凹凸パターン基板14と補強基板15との熱膨張の差に起因して発生する歪みが抑えられ、硬化樹脂層13における凹凸パターンについて高い寸法精度を保つことができる。
【0017】
また、硬化工程(S2c)の加熱、冷却処理の温度範囲における、補強基板15と支持基板52(後述)の熱膨張係数が同一または略同一となるように、補強基板15の材料選定を行う。ここでいう、両者の熱膨張係数が略同一とは、硬化工程(S2c)の加熱、冷却処理の温度範囲における補強基板15と支持基板52の熱膨張係数の差が、補強基板15と凹凸パターン基板14の熱膨張係数の差よりも小さくなる程度に、ごくわずかであるということを意味する。例えば、温度範囲20〜200℃における補強基板15と支持基板52の熱膨張係数の差の最大値が絶対値として0.8×10−6−1未満であることが好ましい。
【0018】
このような補強基板15に好適な材料としては、珪酸系ガラスが挙げられ、例えば耐熱強化ガラスであるパイレックス(コーニング社登録商標)、テンパックス(ショット社登録商標)のようなホウ珪酸ガラスやSWガラス基板(旭硝子社製)のようなアルミナ珪酸ガラスが好適である。なお、補強基板15、支持基板52それぞれが成分の異なる珪酸系ガラスからなるものとしてもよい。
【0019】
また、凹凸パターン基板14と補強基板15との接合は、印刷用版の製造の際に行われる樹脂の加熱硬化−冷却処理のときに凹凸パターン基板14の膨張収縮が補強基板15により規制されるように、凹凸パターン基板14、補強基板15それぞれの主面同士が強固に固着するように行われる。また、その接合方法は、接着剤を用いた樹脂接合、陽極接合等を挙げることができるが、このうち補強基板15が凹凸パターン基板14を強固に拘束できるようになる陽極接合が好ましい。
【0020】
(印刷用版の製造方法)
次に、印刷用版の具体的な製造工程について、図1(2a)〜(2d)を参照しながら説明する。
(S2a)液体状樹脂塗布工程(図1(2a))
まず、前述のように得られた成形型16の凹凸パターン形成面(図中、上面)において、その水平方向の端部に成形型支持部材12を立設した後、微細な凹凸パターン表面を埋めるように液体状樹脂13aを塗布する。
【0021】
ここで、液体状樹脂13aとしては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂のいずれかを用いることができ、特に弾性、耐溶剤性、溶液に対する版離れ性の観点からPDMS樹脂が好適である。
【0022】
また、その塗布方法としては、塗布する樹脂の物性、塗布面積に応じて適宜選択することができ、具体的には、スピンコート、バーコート、スキージコート、スリットコート、ロールコート、ブレードコート、ディスペンス等の各種の塗布方法を用いることができる。
【0023】
(S2b)加圧工程(図1(2b))
次に、未硬化状態の液体状樹脂13aの上方から、硬化後に該樹脂層(硬化樹脂層)を支持する支持基板52を貼り合わせた。ここで、本発明の印刷用版を構成する支持基板52は、加圧された状態で樹脂を硬化させる加熱処理を受けるため、ある程度の強度と耐熱性が必要である。また、後述する印刷装置において、印刷用版の上方から光を出射して該印刷用版の下方にある被印刷体に照射するようにして、印刷用版と被印刷体の位置を調整する機能を付与しているため、支持基板52は硬化樹脂層とともにこの光に対する透過性を有する必要がある。これらのことから、支持基板52は、珪酸系ガラスのような透明なガラス材料からなることが好ましく、耐熱強化ガラス、例えばパイレックス(コーニング社登録商標)、テンパックス(ショット社登録商標)のようなホウ珪酸ガラスやSWガラス基板(旭硝子社製)のようなアルミナ珪酸ガラスからなることが好適である。
【0024】
なお、該支持基板52は、PDMS樹脂等の液体状樹脂13aが硬化した後の樹脂(硬化樹脂層13)との密着性を向上させる目的で予め表面改質処理を行うことができる。具体的には、該支持基板52の液体状樹脂13aの層と接する表面(密着面)に酸素プラズマを照射するか、あるいはUV光を照射して表面改質処理を行うことができる。
【0025】
本工程では、液体状樹脂13aに支持基板52を貼り合わせた後に、荷重および温度制御可能な加圧加熱装置(図示せず)を用いて成形型16と支持基板52とを液体状樹脂13aを介して加圧する(図1(2b))。
【0026】
(S2c)硬化工程(図1(2c))
引き続き、前記加圧加熱装置を用いて、成形型16と支持基板52とを液体状樹脂13aを介して加圧した状態で、所定の加熱条件で加熱することにより、前記液体状樹脂13aを完全硬化させて硬化樹脂層13とし、ついでそのまま成形型16、支持基板52、および硬化樹脂層13を徐冷する。
【0027】
このとき、仮に成形型16において補強基板15がなく凹凸パターン基板14のみとした場合には、支持基板52(例えば、ホウ珪酸ガラス)は凹凸パターン基板14(例えば、シリコン)よりも熱膨張係数が若干大きいため、まず加熱処理の段階で、支持基板52は凹凸パターン基板14よりもわずかに大きく膨張し、この状態で液体状樹脂13aが硬化して硬化樹脂層13となり支持基板52と固着するようになる。ついで、冷却処理の段階で、凹凸パターン基板14、支持基板52はそれぞれ収縮し、硬化樹脂層13が固着している支持基板52とともに収縮するが、凹凸パターン基板14よりも支持基板52の方が収縮する割合が大きいため、硬化樹脂層13における凹凸パターン寸法(例えば、凹凸パターンの水平方向外端を結ぶ外寸、あるいはアライメントパターンの間隔)は当初の凹凸パターン基板14における凹凸パターン寸法(すなわち、設計された凹凸パターン寸法)よりも縮むようになり、この印刷用版を用いた印刷品質が劣化してしまう。
【0028】
これに対して、本発明の印刷用版の製造方法によれば、凹凸パターン基板14に補強基板15が接合されているので、成形型16の熱膨張は該補強基板15により規制され、かつ硬化工程(S2c)の加熱、冷却処理の温度範囲における補強基板15と支持基板52の熱膨張係数の差は、支持基板52と凹凸パターン基板14の熱膨張係数の差よりも小さいので、硬化工程における成形型16の膨張収縮の挙動は支持基板52の膨張収縮とほぼ同じものとなり、最終的に硬化樹脂層13における凹凸パターン寸法は当初の凹凸パターン基板14における凹凸パターン寸法通りのものとなる。
【0029】
(S2d)離型工程(図1(2d))
成形型16、支持基板52、および硬化樹脂層13を徐冷した後、完全硬化状態の硬化樹脂層13から成形型16を離型させることにより、表面に凹凸パターンを有する硬化樹脂層13と支持基板52とからなる印刷用版50を得る。このとき、成形型16における凹凸パターン基板14は補強基板15により補強されているので破損することはない。
【0030】
以上のように、硬化樹脂層13に設計寸法通りの凹凸パターンを形成することができ、良好な印刷品質が得られる印刷用版50を製造することが可能となる。
【0031】
(機能性膜の形成方法)
次に、本発明に係る機能性膜の形成方法について説明する。
図2は、本発明に係る機能性膜の形成方法に関する工程図である。
本発明に係る機能性膜の形成方法は、図2に示すように、前述した印刷用版50の凹凸パターン形成面に所定の機能性溶液(例えば、有機分子含有溶液)を塗布し、該凹凸パターン面を被印刷面(印刷基材53の主面)に接触させて、該被印刷面上に有機分子膜を転写することにより、撥液部(撥液性領域301)で区分される所定パターンの親液部(親液性領域302)を形成する第1の工程(図2(a))と、前記被印刷面上に形成された前記親液部に所定の液体塗布手段(液体塗布手段400)を用いて選択的に機能液(機能液401)を供給する第2の工程(図2(b))と、前記親液部に供給された機能液にエネルギーを付与して所定パターンの機能性膜(機能性膜500)を形成する第3の工程(図2(c))と、を有することを特徴とする。
以下、各工程について後述する圧電素子における圧電体を形成する場合を例にとり説明する。
【0032】
(第1の工程)
図3に示す印刷装置を用いて、印刷基材53の表面に機能性溶液として撥液性化合物を塗布し、所定パターンの撥液性領域301及び親液性領域302を形成する(図2(a))。
【0033】
ここで、図3は、本発明に係る本発明に係る機能性膜の形成方法に用いられる印刷装置の構成を示す概略図である。
図3に示すように、印刷装置20は、前述のように得られた印刷用版50を硬化樹脂層13の凹凸パターン形成面が下方を向くように保持する保持手段22と、印刷用版50を保持した保持手段22をインキング部23、転写部24それぞれの直上に搬送する搬送機構21と、印刷用版50に機能性溶液を付着させるインキング部23と、印刷用版50から印刷基材53に機能性溶液を転写させる転写部24と、搬送機構21、インキング部23、転写部24それぞれを制御する制御装置25と、を備えている。
【0034】
インキング部23は、該インキング部23直上に配置された印刷用版50の凹凸パターン形成面(図中、下方に向いている面)に前記機能性溶液を塗布する溶液塗布手段23aと、溶液塗布手段23aに機能性溶液を供給する溶液供給手段23bと、を備える。ここで、溶液塗布手段23aとしては、塗布する前記機能性溶液の物性、塗布面積に応じて適宜選択することができ、具体的には、バーコート、スキージコート、スリットコート、ロールコート、ブレードコート、ディップコート等の塗布手段を用いることができる。
【0035】
転写部24は、該転写部24直上に配置された印刷用版50の凹凸パターン形成面(図中、下方を向いている面)に対向する位置に、印刷基材53を保持するステージ(図示せず)と、該ステージの下部に設けられ印刷基材53を印刷用版50側に移動させて、該印刷用版50に接触させるための駆動部24aと、を備える。
【0036】
印刷装置20を用いた印刷工程(第1の工程)は、制御装置25の制御によりつぎの手順で行われる。
(S11) まず印刷用版50を保持手段22にセットし、搬送機構21により保持手段22とともに印刷用版50をインキング部23に移動する。
(S12) 溶液塗布手段23aが前記機能性溶液を印刷用版50の凹凸パターン形成面に付着させる。
(S13) 次に、搬送機構21により保持手段22とともに印刷用版50を転写部24に移動する。
(S14) 駆動部24aにより印刷基材53を保持するステージを上昇させ、印刷用版50の凹凸パターン形成面における機能性溶液を保持した凸部と印刷基材53の対象面とを接触させることにより、機能性溶液を所定のパターンで印刷基材53に転写する(印刷工程終了)。
【0037】
ここで用いられる機能性溶液は、印刷基材53に撥液性または親液性を付与するための有機分子含有溶液である。このうち、印刷基材53に撥液性を付与する材料としては、C2n+1SHで示されるアルキルチオール化合物やC2n+1(CHSHで示されるフルオロアルキルチオール化合物等の撥液材料を用いることができ、所望の撥液性、あるいは印刷基材53の材料に対する反応性にしたがって材料種、あるいは濃度を適宜選択することができる。これらの化合物はアルコール、アセトン、トルエン、キシレン等の有機溶媒に溶解することにより、機能性溶液とされる。
【0038】
(第2の工程)
つぎに、ゾルゲル法により電気−機械変換膜(圧電体)の前駆体を含有する金属有機化合物溶液である機能液401を、液体塗布手段400を用いて、印刷基材53の親液性領域302に塗布する(図2(b))。
【0039】
ここで、ゾルゲル法とは、金属アルコキシド等の金属有機化合物を溶液系で加水分解、重縮合させて金属−酸素−金属結合を成長させ、最終的に焼結することにより完成させる無機酸化物の作製方法である。ゾルゲル法の特徴は低基板温度で均一大面積な膜が得られることである。さらに溶液から製膜するため基板との密着性に優れる。具体的には、対象の基板上に金属有機化合物を含む溶液を塗布し、無機酸化物からなる厚膜を積層したあと、次工程(第3の工程)で焼結を行うものである。
【0040】
用いられる金属有機化合物としては、無機酸化物を構成する金属のメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシドやアセテート化合物等が挙げられる。硝酸塩、しゅう酸塩、過塩素酸塩等の無機塩でもよい。
【0041】
またこれら化合物から無機酸化物を作製するには、加水分解及び重縮合反応を進める必要があるため、塗布溶液中には水の添加が必要となる。その添加量は系により異なるが、多すぎると反応が速く進むため得られる膜質が不均一となり易く、また反応速度の制御が難しい。水の添加量が少なすぎても反応のコントロールが難しく、適量がある。一般的には加水分解される結合数に対して0.5等量モルから5倍等量モルが好ましい。
【0042】
さらに、加水分解触媒を添加すると、反応速度及び反応形態の制御が可能である。触媒としては一般の酸および塩基が用いられる。
添加用溶媒としては、上記材料が沈澱しないもの、すなわち相溶性に優れたものが望ましい。
【0043】
溶液濃度は塗布方法にもよるが、スピンコート法の場合、溶液粘度が数cP〜十数cPとなるように調整するとよい。アセチルアセトン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンやキレート剤等を添加してもよい。
【0044】
また、液体塗布手段400として、具体的には、微細な領域に塗布可能な液体塗布手段であるインクジェット方式が好ましい。
【0045】
本工程において、親液性領域302に塗布された機能液401は、印刷基材53上の表面エネルギー差により親液性領域302に対して濡れ拡がり、撥液性領域301に対しては濡れ拡がりが抑制されるため、高解像度のパターニングが可能である。
【0046】
(第3の工程)
印刷基材53に塗布された機能液401を乾燥、焼結処理することにより、膜状の圧電体である機能性膜500を形成する(図2(c))。
【0047】
以上のように、本発明の機能性膜の形成方法によれば、印刷基材53上に、印刷用版50の凹凸パターン(詳しくは、凸部のパターン)に対応した微細パターンの機能性膜を印刷基材53全面に精度よく形成することが可能である。
【0048】
(インクジェットヘッド)
つぎに、本発明に係るインクジェットヘッドの構成について説明する。
図4に、本発明に係るインクジェットヘッドの一部を断面にて示した分解斜視図を示す。また図5に、本発明に係るインクジェットヘッドの幅方向の断面概略構成を示す。なお、図5では単一の個別液室506を示しているが、インクジェットヘッドは図4に示すとおり液室基板503の隔壁部503aで区画されることにより、図5中では左右方向に個別液室506が配列する構造をとる。
【0049】
インクジェットヘッド1は、インクを吐出する液滴吐出孔であるノズル孔505を有するノズル板504と、複数の個別液室506、振動板540(不図示)、圧電素子501が形成され、圧電体500bの駆動のための駆動回路が搭載されたフレキシブルプリント基板(FPC)573を有する液室基板503と、圧電素子保護空間574を配した保持基板572との3枚の基板を重ねた積層構造となっている。
【0050】
液室基板503は、Si基板上に積層膜により振動板540が形成されている。本実施形態における振動板540はSOI基板を用いてSi基板の片側面にシリコン酸化膜、シリコン活性膜、シリコン酸化膜を堆積させたものである。また、その上に複数の圧電素子501を設けており、更に該複数の圧電素子501それぞれに対応する個別液室506、該個別液室506に液体を供給する為の流体抵抗部(供給路)532、共通液室533を形成している。
【0051】
ノズル板504は、例えばニッケル高速電鋳法を用いて厚さ20μmに形成したニッケル基板であり、液室基板503の面部に個別液室506それぞれに対応して連通するように設けられたノズル孔505を有する。
【0052】
保持基板572は、圧電素子501の保護及び変位を妨げないための圧電素子保護空間574と液滴であるインクが外部から共通液室533へ供給するためのインク供給部533aを形成した基板である。
【0053】
なお、個別液室506は、振動板540と、液室基板503の壁面(隔壁部503a)と、ノズル孔505が設けられるノズル板504と、で囲まれた空間である。
【0054】
また、振動板540の個別液室506とは反対面側に、下部電極500a,圧電体500b,上部電極500cが積層されてなる圧電素子501が形成されている。また、個別液室506の振動板540に対向する板面がノズル板504となっている。
【0055】
このように構成されたインクジェットヘッド1において、各個別液室506内に液体、例えば記録液(インク)が満たされた状態で、図示しない制御部から画像データに基づいて、発振回路により、記録液の吐出を行いたいノズル孔505に対応する上部電極500cに対して、20Vのパルス電圧を印加する。この電圧パルスを印加することにより、圧電体500bは、電歪効果により圧電体500bそのものが振動板540と平行方向に縮むことにより、振動板540が個別液室506側に凸となるように撓むことになる。これにより、個別液室506内の圧力が急激に上昇して、個別液室506に連通するノズル孔505から記録液が吐出されるようになる。次に、パルス電圧印加後は、縮んだ圧電体500bが元に戻ることから撓んだ振動板540は、元の位置に戻るため、個別液室506内が共通液室533内に比べて負圧となり、共通液室533から流体抵抗部532を通って記録液が個別液室506に供給される。
以上の動作制御を繰り返すことにより、インクジェットヘッド1は液滴を連続的に吐出でき、インクジェットヘッド1に対向して配置された被記録媒体(用紙)に画像を形成することが可能となる。
【0056】
図5に示すように、インクジェットヘッド1は、Si基板上に形成された振動板540と、該振動板540上に、下部電極500a,圧電体500b,上部電極500cがこの順番で積層されてなる圧電素子501と、を備え、圧電素子501及び振動板540からなる圧電アクチュエータを用いてノズル板504の基板面部に設けた液滴吐出孔であるノズル孔505から液滴を吐出させるサイドシュータータイプのものである。
【0057】
ここで、ノズル板504は、SUS、Ni、Siなどの金属または無機材料、PI(ポリイミド)などの樹脂材料にノズル孔505を形成して構成され、図示していない接着剤または陽極接合等の他の接合手段によって液室基板503に接合されるものである。
【0058】
液室基板503は、必要とされる機械的強度および化学的耐性を備えた加工しやすい材料であるSi基板で作られる。Si基板を用いる場合、フォトリソグラフィとエッチング法による加工に、いわゆる半導体プロセスを用いることができるため、液室配列の高集積化が可能となる。
【0059】
振動板540は、圧電素子501による変位の範囲内で弾性変形する材質とすることが必要である。材質としては、無機材料、有機材料の薄膜が用いられるが、電極との密着性を考慮すると無機材料を用いることが好ましい。無機材料としては、金属、合金、半導体、誘電体等の任意の材料を用いることができる。材料は加工方法から最適のものを選定することができ、液室基板503にSiを用いた場合は、SiO,Si,他結晶Siを用いることが好ましい。一般にはSiの熱酸化膜とするケースが多い。また、これらの積層膜とすることで、残留応力を相殺する構造をとることができる。また、SiO,Si等の誘電体材料は化学的に安定であり、吐出するインクに接触しても、インクによる腐食による振動板540の破壊を防止することができる。さらに、これらの薄膜の成膜技術は半導体プロセスで確立された技術であるため、安定した振動板540を得ることができる。
【0060】
振動板540の厚さは、材料の剛性や形成方法から最適化することが好ましいが、前述の無機材料(SiO,Si)を用いた場合、1〜5μmの範囲とすることが好ましい。例えばまず、Si基板上に振動板540となる絶縁物を形成し、その後個別液室506などの液室となる空洞をエッチングにより形成後、必要な厚みに研磨される。エッチングの際は絶縁物層がストップ層となる。
【0061】
下部電極500aは、複数の圧電素子501における共通電極であり、共通電極配線(不図示)と接続している。
【0062】
また、下部電極500aは、例えば圧電体500bの配向性を制御するために(111)結晶配向した薄膜であり、下部電極500aを構成する材料としては、任意の導電性材料を用いることができる。導電材料としては、金属、合金、導電性化合物等を用いることができるが、圧電体500bの成膜方法により耐熱性の高い電極材料を用いることが好ましい。通常圧電体500bは成膜後に結晶化させるプロセスが必要であり、一般的な圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた場合、結晶化プロセス温度は500℃〜800℃となることが一般的である。そのため、圧電素子に用いられる材料は高融点であると同時に高温で隣接する振動板540や圧電材料と化合物を形成しない安定性の高い材料であることが必要である。これらの材料としてはPt,Ir,Pd,Au等の反応性が低く高融点である金属やその合金を用いることが好ましい。このうち、一般的に圧電体500bを構成する代表的材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)と格子定数が近く酸化しにくい貴金属であるPtが最も多く使用されている。また、高温安定性の高い化合物導電材料を用いても良い。これらの化合物導電材料としては、任意の複合酸化物を用いることができる。例えば、IrO、RuO、SrO、SrRuO、CaRuO、BaRuO、(SrCa1−x)RuO等の白金族金属含有導電性酸化物やLaNiOなどが挙げられる。
【0063】
下部電極500aの膜厚は電極に必要とされる電気抵抗により任意に設定することができるが、100nmから1μmの範囲が好ましい。
【0064】
圧電体500bを構成する材料としては、ペロブスカイト型結晶構造を有し化学式ABOで示すことのできる複合酸化物を用いることができる。ここで、Aサイトの元素としてはPb、Ba、Nb、La、Li、Sr、Bi、NaおよびKなどである。また、Bサイトの元素としてはCd、Fe、Ti、Ta、Mg、Mo、Ni、Nb、Zr、Zn、WおよびYbなどである。この中でも、Aには鉛(Pb)、Bにジルコニウム(Zr)とチタン(Ti)の混合を適用したチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が多く用いられている。この材料は、温度特性,圧電特性に優れているため、高信頼性、高安定性の圧電素子501を得ることができる。PZTの他には、鉛を使用しないという環境的な利点があり変位量が大きく原料が安価であり使用実績が多いものとしては、チタン酸バリウム(BaTiO)を用いることができる。
【0065】
圧電体500bの膜厚は所望の特性により最適値を設定することができるが、0.1μmから5μmの範囲とすることが好ましい。
【0066】
さらに圧電体500bは個別液室506ごとに個別に形成される必要があり、個別液室幅よりも圧電体幅を狭くする必要がある。それにより、剛性の高い圧電体500bの膜が形成されない部分が個別液室506上に形成され、振動変位する領域を確保することができる。そのため、後述する圧電体500bのパターニング(個別液室506ごとの分離)が重要である。
【0067】
上部電極500cは、個別液室506ごとに形成される圧電体500bの上方に形成される。また上部電極500cは、複数の圧電素子501ごとに設けられる個別電極であり、個別電極配線(不図示)と接続している。該個別電極配線は複数の圧電素子501それぞれの上部電極500cと個別に導通しており、駆動信号入力部(不図示)から個別電極配線を通じてそれぞれの圧電素子501に駆動信号が入力される。
【0068】
上部電極500cを構成する材料としては、下部電極500aの場合と同じ材料群のいずれかを用いることができる。すなわち、上部電極500cの材料は任意の導電性材料を用いることが可能である。導電材料としては、金属、合金、導電性化合物等が挙げられるが、金属または合金を用いることが好ましい。その際、圧電体500bとの密着性を考慮した材料を選定する必要がある。また、圧電材料に含まれるPb等の材料と反応・相互拡散し合金を形成する材料は好ましくない。さらに、圧電材料に含まれる酸素等と反応する材料も好ましくない。従って、反応性の低い安定した材料を用いるのが好ましい。これらの材料としては、Au,Pt,Ir,Pdまたはこれらの合金,固溶体を例として挙げられる。
【0069】
また、上部電極500cの幅は圧電体500bの幅より狭くすることが好ましい。圧電体500b端部まで上部電極500cを形成した場合、圧電体500b端部の電界集中により、下部電極500a−上部電極500c間の放電現象に繋がる可能性があり、圧電素子2の信頼性を著しく損なう可能性がある。
【0070】
ここで、本発明のインクジェットヘッド1は、下部電極500a、圧電体500b、上部電極500cの少なくともいずれかが、前述した本発明の機能性膜の形成方法により形成されてなることを特徴とするものである。
【0071】
図6を参照しながら、下部電極500a、圧電体500b、上部電極500cすべてを本発明の機能性膜の形成方法で形成する場合を説明する。
(S21) まず、印刷装置20のインキング部23において、溶液塗布手段23aにより機能性溶液である有機分子含有溶液608を下部電極500aを形成するために作製した印刷用版50の凹凸パターン形成面に塗布する。
(S22) ついで、印刷装置20の転写部24において有機分子含有溶液608が塗布された印刷用版50の凹凸パターン形成面と、印刷基材である振動板540(液室基板503等は省略)とを接触させて接触状態を保持する(図6(A1))。これにより、印刷用版50の凹凸パターンの凸部において、有機分子300と振動板540とを化学結合させて所望の撥液性領域301a、親液性領域302aからなるパターンを形成する(図6(A2))。
(S23) 次に、液滴吐出ヘッドなどの液体塗布手段400aを用いて、電極材料含有溶液401aを親液性領域302aに選択的に塗布する(図6(A3))。親液性領域302aに塗布された電極材料含有溶液401aは、振動板540上の表面エネルギー差により親液性領域302aに対して濡れ拡がり、撥液性領域301aに対しては濡れ拡がりが抑制されるため、高解像度のパターニングを行うことができる。ここで、電極材料含有溶液401aとしては、白金微粒子をエタノール溶媒中に分散させた溶液を用いているが、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム等の白金系金属微粒子を、アルコール等の有機溶媒中に分散させた金属微粒子分散液や、ゾルゲル法により金属アルコキシド等の金属有機化合物を溶媒中に溶解、分散した所謂ゾルゲル液を用いてもよい。
(S24) 次に、エネルギー付与手段700を用いて、振動板540上の電極材料含有溶液401aにエネルギーを加えて下部電極500aを形成する(図6(A4))。ここで、エネルギー付与手段700としては、ホットプレート、オーブンを用いているが、ハロゲンランプ、キセノンランプ、赤外線ランプ等の加熱手段や、YAGレーザ、COレーザ、Arレーザ等のレーザ照射手段を用いてもよい。
以上、ステップS21〜S24の工程を下部電極500aの膜が所望の膜厚となるまで複数回実施する。
【0072】
(S31) 次に、印刷装置20のインキング部23において、溶液塗布手段23aにより機能性溶液である有機分子含有溶液608を圧電体500bを形成するために作製した印刷用版50の凹凸パターン形成面に塗布する。
(S32) ついで、印刷装置20の転写部24において有機分子含有溶液608が塗布された印刷用版50の凹凸パターン形成面と、振動板540(液室基板503等は省略)の下部電極500a形成面とを接触させて接触状態を保持する(図6(B1))。これにより、印刷用版50の凹凸パターンの凸部において、有機分子300と振動板540及び下部電極500a上における外縁部とを化学結合させて所望の撥液性領域301b、親液性領域302bからなるパターンを形成する(図6(B2))。
(S33) 次に、液滴吐出ヘッドなどの液体塗布手段400bを用いて、圧電体前駆体溶液401bを親液性領域302b(下部電極500a)に選択的に塗布する(図6(B3))。ここで、圧電体前駆体溶液401bとしては、ゾルゲル法により成膜される圧電体材料、具体的には酢酸鉛、イソプロポキシドジルコニウム、イソプロポキシドチタンを出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の材料を用いる。
(S34) 次に、エネルギー付与手段700を用いて、下部電極500a上の圧電体前駆体溶液401bにエネルギーを加えて圧電体500bを形成する(図6(B4))。
以上、ステップS31〜S34の工程を圧電体500bの薄膜が所望の膜厚となるまで複数回実施する。
【0073】
(S41) 次に、印刷装置20のインキング部23において、溶液塗布手段23aにより機能性溶液である有機分子含有溶液608を上部電極500cを形成するために作製した印刷用版50の凹凸パターン形成面に塗布する。
(S42) ついで、印刷装置20の転写部24において有機分子含有溶液608が塗布された印刷用版50の凹凸パターン形成面と、振動板540(液室基板503等は省略)の下部電極500a及び圧電体500b形成面とを接触させて接触状態を保持する(図6(C1))。これにより、印刷用版50の凹凸パターンの凸部において、有機分子300と振動板540、下部電極500a上における外縁部及び圧電体500b上における外縁部とを化学結合させて所望の撥液性領域301c、親液性領域302cからなるパターンを形成する(図6(C2))。
(S43) 次に、液滴吐出ヘッドなどの液体塗布手段400cを用いて、電極材料含有溶液401cを親液性領域302c(圧電体500b)に選択的に塗布する(図6(C3))。ここでは、電極材料含有溶液401cと前述した電極材料含有溶液401aは同一の材料である。
(S44) 次に、エネルギー付与手段700を用いて、圧電体500b上の電極材料含有溶液401cにエネルギーを加えて上部電極500cを形成する(図6(C4))。
以上、ステップS41〜S44の工程を上部電極500cの膜が所望の膜厚となるまで複数回実施する。
【0074】
以上のように、本発明の機能性膜の形成方法を用いたステップS21〜S24,S31〜S34,S41〜S44の工程により、振動板540上に下部電極500aと、圧電体500bと、上部電極500cからなる圧電素子501を精度よく形成することが可能となり、引いては安定した吐出性能を有するインクジェットヘッド1を得ることができる。
【0075】
ところで、前述した本発明のインクジェットヘッドに対してインクなどの液体を供給する液体タンクを一体化して液体カートリッジとしてもよい。
図7に、その液体カートリッジであるインクカートリッジの外観図を示す。このインクカートリッジ80は、ノズル孔505等を有する前述した本発明に係るインクジェットヘッド1と、このインクジェットヘッド1に対してインクを供給する液体タンクであるインクタンク82とを一体化したものである。このようにインクタンク82が一体型のインクジェットヘッド1の場合、アクチュエータ部を高精度化、高密度化、および高信頼化することで、インクカートリッジ80の歩留まりや信頼性を向上することができ、インクカートリッジ80の低コスト化を図ることができる。
【0076】
つぎに、本発明に係る画像形成装置について説明する。
本発明に係る画像形成装置は、液滴を吐出させて画像を形成する画像形成装置であって、前述した本発明のインクジェットヘッド又は図7の一体型インクジェットヘッドユニットである液体カートリッジを備えていることを特徴とする。
ここでは、図8及び図9を用いて、本発明のインクジェットヘッド1を搭載した画像形成装置であるインクジェット記録装置を実施例として説明する。なお、図8は同記録装置の斜視説明図、図9は同記録装置の機構部の側面説明図である。
【0077】
このインクジェット記録装置は、記録装置本体の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ98、キャリッジ98に搭載した本発明のインクジェットヘッド(記録ヘッド)1、インクジェットヘッド1へインクを供給するインクカートリッジ99等で構成される印字機構部91等を収納し、装置本体の下方部には前方側から多数枚の用紙92を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)93を抜き差し自在に装着することができる。また、用紙92を手差しで給紙するために開かれる手差しトレイ94を有し、給紙カセット93あるいは手差しトレイ94から給送される用紙92を取り込み、印字機構部91によって所要の画像を記録した後、後面側の装着された排紙トレイ95に排紙する。
【0078】
印字機構部91は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド96と従ガイドロッド97とキャリッジ98を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ98には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッド1を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ98にはインクジェットヘッド1に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ99を交換可能に装着している。
【0079】
インクカートリッジ99は、上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッド1へインクを供給する供給口が設けられ、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッド1へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、インクジェットヘッド1としては各色のインクジェットヘッド1を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の液出ヘッドでもよい。
【0080】
ここで、キャリッジ98は後方側(用紙搬送下流側)を主ガイドロッド96に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送上流側)を従ガイドロッド97に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ98を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ101で回転駆動される駆動プーリ102と従動プーリ103との間にタイミングベルト104を張装し、このタイミングベルト104をキャリッジ98に固定しており、主走査モータ101の正逆回転によりキャリッジ98が往復駆動される。
【0081】
一方、給紙カセット93にセットした用紙92をインクジェットヘッド1に下方側に搬送するために、給紙カセット93から用紙92を分離給装する給紙ローラ105及びフリクションパッド106と、用紙92を案内するガイド部材107と、給紙された用紙92を反転させて搬送する搬送ローラ108と、この搬送ローラ108の周面に押し付けられる搬送コロ109及び搬送ローラ108からの用紙92の送り出し角度を規定する先端コロ110とを有する。搬送ローラ108は副走査モータによってギア列を介して回転駆動される。
【0082】
そして、キャリッジ98の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ108から送り出された用紙92をインクジェットヘッド1の下方側で案内するため用紙ガイド部材である印写受け部材111を設けている。この印写受け部材111の用紙搬送方向下流側には、用紙92を排紙方向へ送り出すための回転駆動される搬送コロ112と拍車113を設け、さらに用紙92を排紙トレイ95に送り出す排紙ローラ114と拍車115と排紙経路を形成するガイド部材116,117とを配設している。
【0083】
このインクジェット記録装置90による記録時には、キャリッジ98を移動させながら画像信号に応じてインクジェットヘッド1を駆動することにより、停止している用紙92にインクを吐出して1行分を記録し、その後、用紙92を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙92の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙92を排紙する。
【0084】
また、キャリッジ98の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、インクジェットヘッド1の吐出不良を回復するための回復装置118を配置している。回復装置118はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ98は印字待機中にはこの回復装置118側に移動されてキャップ手段でインクジェットヘッド1をキャッピングして吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係ないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出状態を維持する。
【0085】
また、吐出不良が発生した場合等には、キャップ手段でインクジェットヘッド1の吐出出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともの気泡等を吸出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0086】
このように、このインクジェット記録装置90においては本発明のインクジェットヘッド1を搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク吐出特性が得られ、画像品質が向上する。なお、ここではインクジェット記録装置90にインクジェットヘッド1を使用した場合について説明したが、インク以外の液滴、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する装置にインクジェットヘッド1を適用してもよい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明に係る成形型及び印刷用版の製造方法に関する実施例を説明する。
(1)成形型16
本発明の成形型16を以下の手順で作製した。
(S51a)エッチングマスク形成(図1(1a))
外径150mm、厚さ625μmのシリコン基板である成形型原板14kの表面にフォトレジストを塗布・ベーク・露光することにより所定パターンの開口部を有するエッチングマスク17を形成した。
(S51b)エッチング(図1(1b))
つぎに、エッチングマスク17の開口部を通して成形型原板14kをドライエッチングすることにより、その表面にエッチングマスク17の開口部のパターンに対応した凹凸パターンを形成した。
(S51c)エッチングマスク除去(図1(1c))
成形型原板14kに凹凸パターンを形成した後、フォトレジストから成るエッチングマスク17を剥離することにより凹凸パターン基板14を得た。
(S51d)補強基板接合(図1(1d))
凹凸パターン基板14の凹凸パターン形成面とは反対側の面(図中、下側の面)に、ホウ珪酸ガラス(パイレックス(登録商標))からなる厚さ10mmの補強基板15の主面を接触させた状態で、300℃に加熱するとともに両者の間に電圧500Vを印加して陽極接合を行い、成形型16とした。
なお、比較例として、ステップS51dを行わず、それ以外は実施例と同じ条件で凹凸パターン基板14のみからなる成形型を作製した。
(2)印刷用版50
本発明の印刷用版50を以下の手順で作製した。
(S52a)液体状樹脂塗布工程(図1(2a))
本実施例においては、主剤と硬化剤からなる二液混合型のPDMS樹脂(標準硬化条件:70℃×60分+150℃×30分)の主剤と硬化剤とを10対1の重量比となるように秤量したのち、遊星回転機構を有する攪拌装置(図示せず)によって混合することによって、未硬化状態のPDMS樹脂(液体状樹脂13a)を調製し、成形型16の上部に設けた成形型支持部材12を用いたスキージコートにより成形型16表面の凹凸部の全領域を埋めるようにPDMS樹脂(液体状樹脂13a)を層状に塗布した。
(S52b)加圧工程(図1(2b))
次に、未硬化状態の液体状樹脂13aの上方から、ホウ珪酸ガラス(パイレックス(登録商標))からなる支持基板52を貼り合わせた。なお、事前にUV光を照射することにより、該支持基板52の表面改質を施している。
ついで、加圧加熱装置(図示せず)を用いて成形型16と支持基板52とを液体状樹脂13aを介して所定の圧力で加圧した。
(S52c)硬化工程(図1(2c))
引き続き、前記加圧加熱装置を用いて、成形型16と支持基板52とを液体状樹脂13aを介して加圧した状態で、70℃で60分間および150℃で30分間加熱することにより、前記液体状樹脂13aを完全硬化させ、PDMS樹脂からなる硬化樹脂層13とし、ついで成形型16、支持基板52、および硬化樹脂層13を徐冷した。
(S52d)離型工程(図1(2d))
成形型16、支持基板52、および硬化樹脂層13を徐冷した後、完全硬化状態の硬化樹脂層13から成形型16を離型させることにより、表面に凹凸パターンを有する硬化樹脂層13と支持基板52とからなる印刷用版50の実施例サンプルを得た。
また、比較例の成形型を用いて、実施例と同じ条件で印刷用版の比較例サンプルを作製した。
【0088】
(3)評価結果
以上の製造工程ステップS51a〜S51d及びS52a〜S52dにより作製した印刷用版50の実施例サンプルの凹凸パターンとして、間隔100mmのアライメントパターンについて、設計値に対する寸法変形率を2次元寸法測定器を用いて測定したところ、0.7×10−3%の収縮率であった。すなわち、外径150mmの印刷用版50においては外径として1.0μmの収縮となることが確認された。
一方、凹凸パターン基板14に補強基板15を接合していない成形型を用いて作製した印刷用版(比較例サンプル)について同様に測定したところ、寸法変形率は3.6×10−3%の収縮率であり、外径150mmの印刷用版においては外径として5.5μmの大きな収縮となることが確認された。
【0089】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0090】
例えば、本発明の印刷用版の製造方法に関して、本実施形態では、成形型作製工程では、凹凸パターン基板14の凹凸パターン形成面とは反対側の主面に、支持基板52と同一材料からなる補強基板15の主面を接合して成形型16とする工程を説明したが、この手順に限定されるものではない。例えば、成形型作製工程として、まず成形型原板14kの凹凸パターンを形成する予定面とは反対側の主面に、支持基板52と同一材料からなる補強基板15の主面を接合しておき、ついで成形型原板14kの主面に所定の凹凸パターンを形成して成形型16とする工程であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の活用例として、圧電素子を用いた、マイクロアクチュエータを搭載するMEMSデバイス、例えばマイクロミラーを搭載したプロジェクタ等の光学デバイス,微小流路に流体を供給するマイクロポンプ等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 インクジェットヘッド
12 成形型支持部材
13 硬化樹脂層
13a 液体状樹脂
14 凹凸パターン基板
14k 成形型原板
15 補強基板
16 成形型
17 エッチングマスク
20 印刷装置
21 搬送機構
22 保持手段
23 インキング部
23a 溶液塗布手段
23b 溶液供給手段
24 転写部
24a 駆動部
25 制御装置
50 印刷用版
52 支持基板(ガラス基板)
53 印刷基材
80,99 インクカートリッジ
82 インクタンク
90 インクジェット記録装置
91 印字機構部
92 用紙
93 給紙カセット
94 手差しトレイ
95 排紙トレイ
96 主ガイドロッド
97 従ガイドロッド
98 キャリッジ
101 主走査モータ
102 駆動プーリ
103 従動プーリ
104 タイミングベルト
105 給紙ローラ
106 フリクションパッド
107,116,117 ガイド部材
108 搬送ローラ
109,112 搬送コロ
110 先端コロ
111 印写受け部材
113,115 拍車
114 排紙ローラ
118 回復装置
300 有機分子
301,301a,301b,301c 撥液性領域
302,302a,302b,302c 親液性領域
400,400a,400b,400c 液体塗布手段
401 機能液
401a,401c 電極材料含有溶液
401b 圧電体前駆体溶液
500 機能性膜
500a 下部電極
500b 圧電体
500c 上部電極
501 圧電素子
503 液室基板
503a 隔壁部
504 ノズル板(ヘッド基板面)
505 ノズル孔
506 個別液室
532 流体抵抗部
533 共通液室
533a インク供給部
540 振動板
572 保持基板
573 フレキシブルプリント基板(FPC)
574 圧電素子保護空間
608 有機分子含有溶液
700 エネルギー付与手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】特開2011−000714号公報
【特許文献2】特開2005−72473号公報
【特許文献3】特開2009−28947号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロコンタクトプリントに用いる印刷用版の製造方法であって、
成形型原板の主面に凹凸パターンを形成して凹凸パターン基板とし、ついで該凹凸パターン基板の凹凸パターン形成面とは反対側の主面に前記凹凸パターン基板を補強する補強基板を接合して成形型とする工程、または成形型原板の主面に補強基板を接合し、ついで該成形型原板の前記補強基板を接合した面とは反対側の主面に凹凸パターンを形成して成形型とする工程からなる成形型作製工程と、
前記成形型の凹凸パターン形成面に、液体状樹脂を塗布する塗布工程と、
前記成形型の凹凸パターン面に塗布された前記液体状樹脂の層を挟んで、支持基板を前記成形型に押圧させ、その状態で加熱により前記液体状樹脂を硬化させて硬化樹脂層とする硬化工程と、
前記成形型を前記硬化樹脂層から剥離して、前記凹凸パターンが転写された硬化樹脂層と前記支持基板からなる印刷用版を得る剥離工程と、を有し、
前記硬化工程の加熱、冷却処理の温度範囲における前記補強基板と支持基板の熱膨張係数の差は、前記支持基板と凹凸パターン基板の熱膨張係数の差よりも小さいことを特徴とする印刷用版の製造方法。
【請求項2】
前記硬化工程における加熱、冷却処理の温度範囲における前記補強基板と支持基板の熱膨張係数の差の最大値が絶対値として0.8×10−6−1未満であることを特徴とする請求項1に記載の印刷用版の製造方法。
【請求項3】
前記補強基板及び支持基板は、珪酸系ガラスからなることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷用版の製造方法。
【請求項4】
前記補強基板及び支持基板は、同一の材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷用版の製造方法。
【請求項5】
前記成形型原板は、フォトリソグラフィにより前記凹凸パターンが形成可能な材料からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷用版の製造方法。
【請求項6】
前記液体状樹脂は、ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の印刷用版の製造方法。
【請求項7】
前記成形型における前記凹凸パターン基板と補強基板は、陽極接合されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の印刷用版の製造方法。
【請求項8】
前記支持基板の前記液体状樹脂の層と接する表面が表面改質されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の印刷用版の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の印刷用版の製造方法により製造されてなることを特徴とする印刷用版。
【請求項10】
請求項9に記載の印刷用版の前記凹凸パターン形成面に有機分子含有溶液を塗布し、該凹凸パターン面を被印刷面に接触させて、該被印刷面上に有機分子膜を転写することにより、撥液部で区分される所定パターンの親液部を形成する第1の工程と、
前記被印刷面上に形成された前記親液部に所定の液体塗布手段を用いて選択的に機能液を供給する第2の工程と、
前記親液部に供給された機能液にエネルギーを付与して所定パターンの機能性膜を形成する第3の工程と、を有することを特徴とする機能性膜の形成方法。
【請求項11】
隔壁により区画されてなり、それぞれが液滴吐出孔を有する複数の個別液室と、前記複数の個別液室の前記液滴吐出孔が設けられる板面とは別の面に設けられる振動板と、前記振動板上の前記複数の個別液室それぞれに対応する位置に設けられ、該振動板側から共通電極となる下部電極、圧電体、個別電極となる上部電極の順に積層されてなる複数の圧電素子と、前記下部電極と接続される共通電極配線と、前記複数の圧電素子それぞれの上部電極と個別に導通し駆動信号が入力される個別電極配線と、を備えるインクジェットヘッドにおいて、
前記下部電極、圧電体、上部電極の少なくともいずれかが、請求項10に記載の機能性膜の形成方法により形成されてなることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項12】
請求項11に記載のインクジェットヘッドを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−158026(P2012−158026A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18067(P2011−18067)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】