説明

印刷用紙

【課題】 パルプスラリーに白色顔料を添加した非塗工又は微塗工用の印刷用紙において、日常に用いられる蛍光灯の下でも高白色であり、不透明性かつ風合いを備えた印刷用紙を提供することを目的とする。
【解決手段】 白色顔料として酸化チタン及び/又は炭酸カルシウムを含む、木材パルプを主成分とし、塗工層を設けない印刷用紙であって、JIS P−8148に準拠した測光器の光路に420nmカットオフフィルタを設けて測定した白色度が90%以上であり、JIS P−8251に準拠して測定した灰分が6〜30質量%であり、かつ、前記印刷用紙を、固形分濃度が1.5質量%となるようにJIS−P8220に準拠して離解した離解物を、目開き100μm〜150μmのフィルタを使用してろ過して得られたろ液のカチオン要求量が−0.1〜0.1meq/Lの印刷用紙とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線量の少ない日常の光源下において、高白色であって、不透明性及び風合いに優れる印刷用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カタログ、ポスター、写真集、書籍やチラシ等の多くの分野において、画像部と非画像部との色のコントラストが要求されるようになっている。
この画像部と非画像部との色のコントラストは、非画像部を高白色にすると明確になるため、これらの分野に使用する印刷用紙としては、高白色であることが望まれている。
このため、印刷用紙においては、例えば特許文献1などに開示されるように、一般的に蛍光増白剤を用いて、白色性を向上させている。
【0003】
また、印刷用紙は、透明性を有すれば文字等の裏面写りが生じるため、不透明性を備えていることが要求されている。
このため、パルプスラリーに白色顔料を添加して、定着させることにより、不透明性を向上させることが通常行われている。また、上記白色顔料は、白色性を向上させる手段として一般的に使用することが知られている。
【0004】
さらに、印刷用紙は、手に触れた際に紙の主原料である繊維を感じることで柔らかい触感といった風合いを、白色性とともに合わせ持つことにより高級感を得ることができる。
ところが、塗工法を採用した場合には、不透明性を向上させるために添加した白色顔料が、無機的な冷たさを奏するため風合いを阻害する。
このため、風合いを追求する場合には、非塗工や微塗工を採用している。なお、上述の白色顔料を添加しても、紙質を柔らかくして風合いを出すことができる。
この風合いとは、紙本来の繊維を感じるといった手触り感のほかに、紙の腰といった紙全体の紙質の柔らかさも含むものである。
【0005】
上述したように、従来の印刷用紙においては、白色顔料や蛍光増白剤の添加が一般になされている。
特に蛍光増白剤は、400nm以下の紫外領域において紫外線を吸収し、これより長波長の青色領域で反射する性質があることから、増白効果が非常に高いが、反面、紫外線量により蛍光放射が異なり、見た目の白さが異なるため、白さの評価方法として、紫外線量を規定したJIS P−8148におけるISO白色度が採用されている。しかしながら、この測定方法は一定の光源における白さの評価方法としては有効であるが、日常の光源としては、青、緑、赤の三波長蛍光灯に代表されるような、ISO白色度の測定に用いる光源よりも、紫外線量が十分ではない光源が用いられており、用紙のISO白色度が高くてもこのような光源においては、見た目に高白色と感じるとは限らないという問題がある。
【0006】
また、抄紙系内には、パルプ、紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、顔料、染料といったカチオン性、アニオン性の物質が多くあり、いかにアニオン性であるパルプに効果的に目的の物質を定着させるかが重要である。
【0007】
ところで、上述の不透明性を向上させるための白色顔料の定着に関しては、白色顔料のパルプへの定着を著しく阻害するアニオントラッシュ(浮遊アニオン物質)が、パルプの微細繊維や損紙由来の内添薬品、サイズプレス薬品、塗工塗料等のアニオン性有機物から発生する。特に、表面強度を高めるために使用される酸化澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、スチレンブタジエンラテックス等の接着剤は、溶解性や分散性を高めるためにカルボキシル基が導入されており、アニオントラッシュを増加させる原因物質となる。
【0008】
通常の中性抄紙系においては、カチオン澱粉等のカチオン性定着剤を必要十分にパルプスラリーに添加し、紙力増強および白色顔料の定着を向上させる。ところが、上述のアニオントラッシュは抄紙系内に多量に存在すると、同じイオン性であるパルプより強力にカチオン性定着剤に定着して、カチオン性定着剤における、白色顔料の定着機能を低下させてしまうばかりか、分散剤として働くことで、パルプと白色顔料との接触機会を低下させてしまう。これを解決する方法として、顔料定着剤添加以前にあらかじめ低分子のカチオン性物質を添加して中和する方法が、例えば特許文献2などに開示されるように、白色顔料を添加する前に、パルプスラリー中のアニオン性の物質をカチオン性物質の添加により中和する方法が提案されている。
【0009】
さらに、白色顔料における歩留まり向上剤として、上述の低分子のカチオン性物質より高分子のカチオン性物質、すなわち、ポリアクリルアミド、ポリアミンポリエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミド、ポリビニルイミド等が抄紙機のヘッドボックス付近で用いられている。
【0010】
しかしながら、上述の低分子又は高分子カチオン性物質は、必ずしもアニオントラッシュのみに定着するとは限らず、パルプの電荷も中和する。このため、低分子又は高分子カチオン性物質を多量に添加すると、強い分散剤になり、白色顔料の定着を阻害してしまうばかりか、ワイヤーにおける濾水性を低下させてしまい、添加量の制御が困難な上、著しい効果が得られていない。
また、カチオン性物質は、蛍光増白剤と併用すると、蛍光増白剤と凝集して増白効果が低減する。その上、多量に添加すると、蛍光増白剤を含まない場合においても黄変が見られるため、白色顔料を定着させるためのカチオン性物質の使用については制限がある。したがって、白色顔料の定着は、その制御が繁雑で白色性に影響を及ぼすものであり、日常の光源において、高白色に感じる印刷用紙を提供することは極めて困難であった。
【0011】
【特許文献1】特開平3−294598号公報
【特許文献2】特開昭55−12868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明は、パルプスラリーに白色顔料を添加した非塗工又は微塗工用の印刷用紙において、日常に用いられる蛍光灯の下でも高白色であり、不透明性かつ風合いを備えた印刷用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、日常に用いられる蛍光灯などの光源下で見た目でも高白色であると感じられる指標として、JIS P−8148に規定される測光器において、420nmカットオフフィルタを光路に置き、紫外線をカットして測定した白色度(以下、「UV−CUT白色度」という)に着目した。そしてこのUV−CUT白色度が90%以上であるような印刷用紙が、日常に用いられる蛍光灯などの光源下でも見た目において高白色であると感じられることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0014】
請求項1に記載の発明は、白色顔料として酸化チタン及び/又は炭酸カルシウムを含む、木材パルプを主成分とし、塗工層を設けない印刷用紙であって、JIS P−8148に準拠した測光器の光路に420nmカットオフフィルタを設けて測定した白色度が90%以上であり、JIS P−8251に準拠して測定した灰分が6〜30質量%であり、かつ、前記印刷用紙を、固形分濃度が1.5質量%となるようにJIS−P8220に準拠して離解した離解物を、目開き100μm〜150μmのフィルタを使用してろ過して得られたろ液のカチオン要求量が−0.1〜0.1meq/Lの印刷用紙である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の印刷用紙の少なくとも片面に、白色顔料及び接着剤を主成分とする塗料を固形分質量で1〜6g/m2塗工した印刷用紙であって、JIS P−8251に準拠して測定した灰分が6.1〜35質量%の印刷用紙である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の印刷用紙に蛍光増白剤が含有されている印刷用紙である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、印刷用紙のUV−CUT白色度を90%以上としたことにより、紫外線量が多い光源下に限らず、紫外線量の少ない日常に用いられる蛍光灯などの光源下で見た場合においても、印刷の色コントラストを高めることができる高白色の印刷用紙を得ることができる。従来は、JIS P−8148で規定されるような紫外線量の多い光源でのISO白色度に着目し、蛍光増白剤による増白効果をより高める検討がなされていたが、かような印刷用紙製造の常法により得られた印刷用紙においては、UV−CUT白色度は90%未満となる。
【0018】
また、印刷用紙として必要な不透明性に優れ、繊維を感じる触感や紙の腰といった風合いに優れ、その抄紙の際に不可欠となる損紙を使用できる印刷用紙を提供することができる。
更に、微塗工することにより印刷発色性が高められた印刷用紙を提供することができる。更にまた、蛍光増白剤との併用によって、紫外線量の多い光源下においては、非常に高白色な印刷用紙を提供することができる。従って、本発明における印刷用紙は、印刷物に高級という付加価値を与えることができ、美術的価値が極めて高い。更に、本発明における印刷用紙は、高白色で不透明性に優れるため、塗工原紙として汎用的に使用でき、工業的価値が極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る印刷用紙の一実施形態について説明する。
本発明の印刷用紙に使用する木材パルプとして、クラフトパルプ、サルファイトパルプ、ソーダパルプ、溶解パルプ等の針葉樹及び広葉樹の化学パルプの中から少なくとも1種類以上のものを用いることができる。好ましくは、上記パルプの中から充分に漂白の進んでいるパルプ、すなわちアルカリ処理、塩素漂白、次亜塩素酸漂白、二酸化塩素漂白、過酸化水素漂白、酸素漂白、オゾン漂白や、二酸化チオ尿素漂白等の単独若しくは併用による漂白過程が多段階のものを選定する。さらに好ましくは、JIS P−8148又はJIS−8212に規定される測光器を用いて、420nmカットオフフィルタを光路に置き、紫外線をカットして測定した白色度(以下、「パルプUV−CUT白色度」と称する。)が90%以上であるものを用いる。これにより、得られた印刷用紙の白色度を一層向上させることができる。
さらには、コットン、リンター、竹、バンブー、ケナフ、楮、三椏、雁皮、麻灯の非木材パルプや、SWP、レーヨン、ポリエステル等の合成繊維や、セミケミカルパルプ、ケミメカニカルパルプ、サーモメカニカルパルプ、砕木パルプ、古紙等を適宜併用することができるが、化学パルプと混合し、これらパルプを複合したUV−CUT白色度が充分高い必要がある。
【0020】
白色顔料としては、不透明性及び紙腰の柔らかさを向上させることを目的として、酸化チタン及び/又は炭酸カルシウムを使用し、カオリン、焼成カオリン、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、合成非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、プラスチックピグメント等を適宜併用することができる。
【0021】
添加する白色顔料の割合としては、得られた印刷用紙をJIS P−8251に準拠して測定した灰分が6〜30質量%になるように調整する。6質量%より低い場合には、不透明性や紙腰の柔らかさ等の風合いを備えた印刷用紙を得られず、30質量%を超える場合には、紙質は柔らかくなるが、印刷時における断裁紙粉、ブランケットの汚染、紙剥け等のトラブルが発生し易いためである。
【0022】
また、得られた印刷用紙中の灰分を上述の範囲に収めるためには、内添した白色顔料の歩留まりが十分高い必要があり、60%以上が好ましい。歩留まりが悪い場合、白色顔料を多量に使用しなければならないことによるコストアップ、水質汚濁、製造上のバラツキの増大といった弊害があり、工業的には、極めて問題が多い。
【0023】
さらに、白色顔料は、抄紙後の印刷用紙のUV−CUT白色度が90%以上になるように、その使用割合と種類とを選定する必要がある。
【0024】
酸化チタンとしては、粒径、結晶構造、形状等の種類を限定せずに用いることができ、例えばアナターゼ型、ルチル型等の酸化チタンを使用することができる。
炭酸カルシウムについても、同様に種類を限定せずに用いることができ、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸を使用することができる。
【0025】
本発明に使用する抄紙薬品は、白色顔料の外、公知の酸性抄紙又は中性抄紙に用いる薬品を使用することができ、例えば澱粉、ポリアクリルアミド、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン等の紙力増強剤又は定着剤、ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤、強化ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸等のサイズ剤、染料、濾水性向上剤、耐水化剤、消泡剤、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、硫酸バンド、アニオントラッシュ封鎖剤、嵩高剤及び不透明化剤等を使用することができる。
【0026】
このとき、抄紙薬品には、アニオン性やカチオン性のものがあるため印刷用紙を固形分濃度1.5質量%となるようにJIS P−8220に準拠して離解し、この離解物を目開き100μm〜150μmのフィルタを使用してろ過して得られたろ液のカチオン要求量が、−0.1〜0.1meq/Lの範囲になるように添加する必要がある。カチオン要求量が−0.1〜0.1meq/Lの範囲から外れる場合には、分散効果が機能して白色顔料の定着が著しく阻害されるためである。ここで、離解後の資料におけるイオン性を示すカチオン要求量がマイナスということは、アニオンリッチになっていることを意味し、プラスということは、カチオンリッチになっていることを意味する。
なお、カチオン性物質には、例えばカチオン性及び/又は両性ポリアクリルアミド、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、カチオン澱粉、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられるが、UV−CUT白色度を低下させやすいため90%以上となるように使用量等に留意する必要がある。特に、ポリエチレンイミンは、黄色に着色し易いために内添薬品として使用することは好ましくない。
【0027】
本発明の印刷用紙を抄紙するに際しては、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップツインワイヤー抄紙機、長網及び円網のコンビネーションによる抄紙機、各種フォーマー等、公知の抄紙機を使用することができる。
【0028】
本発明の印刷用紙に対しては、印刷適性や印刷文字等の発色性をより一層向上させることを目的として、白色顔料及び接着剤を主成分とする塗料を、片面あたり固形分質量で1〜6g/m2の範囲で塗工してもよい。塗工量が1g/m2未満の場合には、上述の塗料を塗工することの目的を達することができず、6g/m2を超える場合には、印刷用紙の繊維が完全に被覆されて、紙本来の繊維感を有するという風合いが悪くなるためである。
なお、印刷用紙に塗工した場合の上述の灰分は、6.1〜35質量%になるように抄紙原料の白色顔料及び塗工原料を調整する。6.1質量%より低い場合には、不透明性や風合いのある印刷用紙を得られず、35質量%を超える場合には、風合いのある印刷用紙であっても、印刷時における断裁紙粉、ブランケットの汚染、紙剥け等のトラブルが発生し易いためである。
【0029】
本発明に使用する白色顔料及び接着剤は、表面紙力増強剤として使用することができ、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カゼイン、大豆タンパク質類、ポリアクリルアミド及びその誘導体類、ポリビニルアルコール及びその誘導体類、スチレン−ブタジエン系、スチレン−アクリル系、アクリル系、酢酸ビニル系等の各種共重合体からなるラテックス樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等を本発明のUV−CUT白色度及びカチオン要求量の範囲内で使用することができる。しかし、これら表面紙力増強剤や白色顔料接着剤は紙に占める含有量が多く、溶解性や分散性を高めるために、アニオン性もしくはカチオン性に変性していることが多いため、アニオントラッシュもしくはカチオントッシュの原因物質となりやすい。従って、ノニオン性のものを使用することが好ましい。
【0030】
本発明に使用する塗工助剤は、表面サイズ剤、セルロース誘導体類、保水剤、架橋剤、硬化剤、消泡剤、増粘剤、耐水化剤、離形剤、滑剤等、本発明のUV−CUT白色度及びカチオン要求量の範囲内で使用することができる。
【0031】
塗料を塗工するに際しては、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、グラビアコーター等の塗工機を使用することができる。これらの塗工は、オンマシン、オフマシンのいずれの方法であってもよい。
【0032】
本発明の印刷用紙には、上述のパルプ原料、白色顔料及び内添薬品の外に、好ましくは蛍光増白剤を使用することもできる。この蛍光増白剤としては、スチルベン系、クマリン系、ピラゾリン系、ナフタルイミド系、ベンゾオキサゾール系、イミダゾール系、チアゾール系、ジスチリルビフェニル系等の従来から慣用されているものを用いることができる。
また、この蛍光増白剤の使用方法としては、パルプスラリーに添加する方法、塗工液に添加して塗工する方法、あるいはこれらを併用する方法等の公知の方法を使用することができるが、いずれの方法であっても用紙表面に蛍光増白剤を存在させることが蛍光増白効果を高める。
【0033】
この蛍光増白剤の使用量は、パルプスラリーに添加する方法を採用した場合には、パルプ固形分質量に対し0.1〜3質量%、塗工液に添加して塗工する方法を採用した場合には、クリアコートの場合、塗工液の濃度として0.1〜3質量%、さらに白色顔料及び接着剤を含む塗工液である場合には、白色顔料質量に対し、0.1〜7質量%の範囲で使用することができる。上述の使用量の下限値未満となる場合には、蛍光増白効果が得られず、上限値を超えた場合には、蛍光増白剤の色が着色してUV−CUT白色度を低下させてしまうためである。
【0034】
また、本発明の印刷用紙は、片面又は両面に塗工して用いることができる。塗工により、印刷適性が向上するためである。よって、両面印刷するために使用する場合には、両面塗工された印刷用紙を用いることが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例について説明する。実施例及び比較例で抄造した印刷用紙におけるUV−CUT白色度(%)、灰分(%)、カチオン要求量(meq/L)、不透明度(%)、風合い(腰)、風合い(手触り)、印刷発色性、表面強度、歩留まり及びISO白色度(%)及び表面強度(%)は、下記に示す方法で評価した。また、実施例及び比較例における質量%は、明記した場合を除き固形分濃度を示す。
【0036】
UV−CUT白色度(%)は、エルレホ分光光度計(ローレンツェン アンド ベットレー(株)製 SE070R)を使用して、JIS P−8148に準拠して測定した。
灰分は、灰化温度を525℃としてJIS P−8251に準拠して測定した。
カチオン要求量は、抄造後の印刷用紙を、標準パルプ離解機(熊谷理機工業(株)製)により、固形分濃度が1.5質量%となるようにJIS P−8220に準拠して離解し、目開き125μmのフィルタによりろ過して得られたろ液について、PCD−03型((株)ミューテック製)を使用して測定した。
【0037】
不透明度(%)は、エレルホ分光高度計(ローレンツェン アンド ベットレー(株)製 SE070R)を使用し、JIS P−8149に準拠して測定した。
風合い(腰)は、得られた印刷用紙を210mm×210mmの大きさに切り取り、印刷用紙の流れ(MD)方向及び幅(CD)方向の2方向から素手で直接印刷用紙を触り、紙全体の紙質の柔らかさを、(5;優)、(4;良)、(3;可)、(2;不可)、(1;不可)の5段階で評価し、3以上を本発明の印刷用紙とした。
さらに、風合い(手触り)は、得られた印刷用紙を210mm×210mmの大きさに切り取り、印刷用紙のMD(流れ)方向、CD(幅)方向の2方向から、素手で直接印刷用紙を触り、その触感を(5;優)、(4;良)、(3;可)、(2;不可)、(1;不可)の5段階で評価し、3以上を本発明の印刷用紙とした。
【0038】
印刷発色性は、藍色のインキ(東洋インキ製造(株)製 ハイユニティ藍MZ)0.6gをRIテスターによって紙に印刷し、1日後の印刷濃度にて5段階で評価した。
表面強度は、タック値20の墨インク(東洋インキ製造(株)製)0.6gを、RIテスターによって紙に印刷した場合の紙剥けの程度を、視覚的に(5;優)、(4;良)、(3;可)、(2;不可)、(1;不可)の5段階で評価し、3以上を本発明の印刷用紙とした。
【0039】
また、歩留まりについては、長網抄紙機において、種箱の紙料が抄造した印刷用紙となるようにそれぞれ時間差でサンプリングし、それぞれの灰分を測定して、下記の式にて歩留まりを算出した。
歩留まり(%)=印刷用紙灰分(%)/原料中の灰分(%)
【0040】
ISO白色度は、エレルホ分光光度計(ローレンツェン アンド ベットレー(株)製 SE070R)を使用し、JIS P−8148に準拠して測定した。
【0041】
[実施例1]
パルプUV−CUT白色度91.5%の高漂白NBKP20質量%及び高漂白LBKP80質量%を、ダブルディスクリファイナーにて400mLcsfに叩解した。次いで、叩解後の紙料固形分に対し白色顔料として軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業(株)製 TP−121)20質量%及び酸化チタン(堺化学工業(株)製 TITONE A―110)5質量%を添加した。さらに、カチオン化澱粉(敷島スターチ(株)製 マーメイドC−50H)1.0質量%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(荒川化学工業(株)製 サイズパインK−931)0.2質量%、ヘッドボックスにてカチオン性ポリアクリルアミド(三井化学(株)製 ホープロン650M)0.05質量%を添加して、紙料を調製した。
なお、高漂白NBKPは、塩素漂白、アルカリ処理、次亜塩素酸漂白、二酸化塩素漂白、アルカリ処理、次いで二酸化塩素漂白を順に行う6段階漂白により、漂白が充分に進んだパルプを選定した。また、高漂白LBKPは、二酸化塩素漂白、アルカリ処理、二酸化塩素漂白を2段、アルカリ処理、次いで二酸化塩素漂白を順に行う6段階漂白により、漂白が充分に進んだパルプを選定した。
【0042】
調製された紙料を、長網抄紙機にて抄速120m/分で抄造し、オンマシンサイズプレコーターにて3.5質量%濃度のノニオン系ポリビニルアルコール(日本合成化学工業 ゴーセノールN−300)のサイズプレス液を塗工し、坪量105.0g/m2の印刷用紙を得た。
【0043】
[実施例2]
白色顔料として、炭酸カルシウムの添加量を26質量%とし、酸化チタンの添加量を6.5質量%とした以外は、実施例1と同様にして、印刷用紙を得た。
[比較例1]
パルプUV−CUT白色度86.8%のNBKP20質量%及びLBKP80質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして、印刷用紙を得た。
[比較例2]
炭酸カルシウムの添加量を26質量%とし、酸化チタンの添加量を6.5質量%とした以外は、比較例1と同様にして、印刷用紙を得た。
【0044】
実施例1及び2並びに比較例1及び2の印刷用紙のUV−CUT白色度(%)、灰分(%)及びカチオン要求量(meq/L)を測定して、表1に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
表1からわかるように、実施例1及び2は、十分なUV−CUT白色度及び灰分が得られており、カチオン要求量も規定値の範囲内である。このため、実施例1及び2の印刷用紙は、白色性、不透明度及び風合いともに良好であった。
一方、比較例1は、UV−CUT白色度が88.3%と劣り、白色顔料が高配合である比較例2においてもUV−CUT白色度が88.5%と良好な結果が得られなかった。
【0047】
[実施例3]
白色顔料として、炭酸カルシウムの添加量を15質量%とし、酸化チタンの添加量を0質量%とした以外は、実施例1と同様にして、印刷用紙を得た。
[実施例4]
白色顔料として、炭酸カルシウムの添加量を25質量%とした以外は、実施例1と同様にして、印刷用紙を得た。
【0048】
[比較例3]
白色顔料として、炭酸カルシウムの添加量を8質量%とし、酸化チタンの添加量を0質量%とした以外は、実施例1と同様にして、印刷用紙を得た。
[比較例4]
白色顔料として、炭酸カルシウムの添加量を70質量%とし、酸化チタンの添加量を17.5質量%とした以外は、実施例1と同様にして、印刷用紙を得た。
【0049】
実施例3及び4並びに比較例3及び4の印刷用紙のUV−CUT白色度(%)、灰分(%)及びカチオン要求量(meq/L)の外、不透明度(%)、風合い(腰)及び表面強度について測定して、表2に示した。
【0050】
【表2】

【0051】
表2からわかるように、実施例3及び4は、十分なUV−CUT白色度及び灰分が得られており、カチオン要求量も規定値の範囲内である。このため、不透明度及び風合いの評価からもわかるように、実施例3及び4の印刷用紙は、不透明度及び風合いともに良好であった。また、表面強度の評価も高いものであった。
一方、比較例3は、灰分が5.3及び風合いが2と低く、比較例4は、表面強度2と低い。このため、比較例3の印刷用紙は、不透明度及び風合いについて劣っており、比較例4の印刷用紙は、表面強度が弱く、印刷時に紙剥け等が発生した。
【0052】
[実施例5]
重質炭酸カルシウム((株)ファイマテック製 FMT−90)を50質量%、軽質炭酸カルシウム(白石工業(株)製 Brilliant−S15)を50質量%として混合し、顔料スラリーを得た。
この顔料スラリー100質量%に対して、リン酸エステル化澱粉(日本食品化工(株)製 MS−4600)を5質量%、スチレンーブタジエン共重合ラテックス(日本エイアンドエル(株)製 SN−307)を12質量%、ステアリン酸カルシウム((株)日新化学研究所製 DEF−922)を1質量%、炭酸ジルコニウムアンモニウム(サンノプコ(株)製 AZコート5800MT)を0.5質量%添加し、固形分濃度20質量%の塗料を得た。
【0053】
この塗料を実施例1で得られた印刷用紙を原紙として、エアーナイフコーターにて片面当たり、5.5g/m2(固形分質量)の塗工量で両面塗工し、印刷用紙を得た。
【0054】
[比較例5]
実施例5の塗料を、固形分濃度42質量%に調整して、実施例1で得られた印刷用紙を原紙として、エアーナイフコーターにて片面当たり11.0g/m2(固形分質量)の塗工量で両面塗工し、印刷用紙を得た。
【0055】
実施例5及び比較例5の(両面塗工した)印刷用紙のUV−CUT白色度(%)、灰分(%)、カチオン要求量(meq/L)、不透明度(%)、風合い(手触り)及び表面強度について測定し、実施例1の測定結果とともに表3に示した。
【0056】
【表3】

【0057】
表3からわかるように、実施例1及び5は、十分なUV−CUT白色度及び灰分が得られており、カチオン要求量も規定値の範囲内である。このため、不透明度、印刷発色性及び風合い(触感)の評価からもわかるように、実施例1及び5の印刷用紙は、白色性、不透明度及び風合い(触感)ともに良好であった。また、表面強度の評価も高いものであった。
一方、比較例5は、UV−CUT白色度が89.8%と劣っており、また印刷発色性が5と良好であるが、風合い(触感)が1と低い。よって、比較例5の印刷用紙は、白色性に劣り、塗工量が多いため繊維を被覆し、印刷発色性が優れているが、その反面、触感に劣るものであった。
【0058】
[実施例6]
2.5質量%濃度のノニオン系ポリビニルアルコール及び2.5質量%濃度の酸化デンプン(日本食品化工(株)製 MS−3800)のサイズプレス液を用いた以外は、実施例1と同様にして、印刷用紙を得た。
[実施例7]
5質量%濃度の酸化澱粉であるサイズプレス液を用いた以外は、実施例3と同様にして、印刷用紙を得た。
[実施例8]
実施例1により得られた印刷用紙を損紙として30質量%、高漂白NBKPを14質量%、及び、高漂白LBKPを56質量%用意して、ダブルディスクリファイナーにて400mLcsfに叩解した。これにより得られた紙料の固形分に対し、炭酸カルシウムを18質量%、酸化チタンを4.5質量%添加した以外は、実施例1と同様にして印刷用紙を得た。
[実施例9]
実施例5により得られた印刷用紙を損紙として5質量%、高漂白NBKPを19質量%、及び、高漂白LBKPを76質量%用意して、ダブルディスクリファイナーにて400mLcsfに叩解して、紙料を得た。この紙料を、実施例1と同様にして抄紙し(歩留まり68.8%)、得られた印刷用紙を原紙として、実施例5と同様にして両面塗工した印刷用紙を得た。
[実施例10]
実施例6により得られた印刷用紙を損紙として30質量%、高漂白NBKPを14質量%、及び、高漂白LBKPを56質量%用意して、ダブルディスクリファイナーにて400mLcsfに叩解した。これにより得られた紙料の固形分に対し、炭酸カルシウムを18質量%、酸化チタンを4.5質量%添加した以外は、実施例6と同様にして印刷用紙を得た。
【0059】
[比較例6]
3質量%濃度のアニオン性ポリアクリルアミド(ハリマ化成(株)製 ハーマイドC−10)のサイズプレス液を用いた以外は、実施例4と同様にしてカチオン要求量0.395meq/Lの印刷用紙を得た。この印刷用紙を損紙として30質量%、高漂白NBKPを14質量%及び高漂白LBKPを56質量%用意して、ダブルディスクリファイナーにて400mLcsfに叩解し、紙料とした以外は、実施例4と同様にして印刷用紙を得た。
[比較例7]
3.5質量%濃度のアニオン系ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製 ゴーセナールT−330)のサイズプレス液を用いた以外は、実施例1と同様にして、カチオン要求量0.358meq/Lの印刷用紙を得た。この印刷用紙を損紙として30質量%、高漂白NBKPを14質量%及び高漂白のパルプ原料を56質量%用意して、ダブルディスクリファイナーにて400mLcsfに叩解し、紙料とした以外は、実施例4と同様にして印刷用紙を得た。
[比較例8]
損紙使用後の白色顔料の添加前に、紙料固形分に対しp−DADMAC系低分子カチオン性物質(ハイモ(株)製 SC−100)を、0.05質量%添加した以外は、比較例6と同様にして印刷用紙を得た。
[比較例9]
長網抄紙機のヘッドボックスにて、紙料固形分に対し、ポリエチレンイミド(バーディシェ・アニリン・ウント・ソーダ・ファブリク社(BASF社)製 ポリミンSN)を0.1質量%添加した以外は、実施例1と同様にして印刷用紙を得た。
【0060】
実施例6〜10及び比較例6〜9の印刷用紙のUV−CUT白色度(%)、灰分(%)、カチオン要求量、不透明度(%)及び歩留まり(%)を、表4に示した。
なお、UV−CUT白色度(%)、灰分(%)、カチオン要求量(meq/L)及び不透明度は、上述と同様の方法にて測定した。
【0061】
【表4】

【0062】
表4からわかるように、実施例6〜10は、充分なUV−CUT白色度及び灰分が得られており、カチオン要求量も既定値の範囲内である。このため、不透明度、歩留まりが良好であった。この結果は、表面処理剤、すなわちサイズプレス液あるいは白色顔料を主とした塗料に使用するバインダーのイオン性を考慮し、規定内のカチオン要求量に制御することで、損紙を使用した安定的な工業生産が可能であることを示唆している。
一方、比較例6〜8は、カチオン要求量が規定外であり、イオン性に偏りがあり、歩留まりが非常に悪いものとなった。特に比較例8においては、低分子のカチオン性物質を多量に添加することによりカチオンリッチになり、歩留まりが悪化している。この歩留まりの悪化は、白色顔料を多量に使用しなければならないコストアップ、水質汚濁を悪化させる損紙の使用制限、製造上のバラツキが大きくなるといった弊害があり、工業的には極めて問題が大きい。
比較例9においては、UV−CUT白色度が89.7%と劣っており、カチオン性物質によるUV−CUT白色度の低下が見られる。
【0063】
[実施例11]
紙料固形分に対し、蛍光増白剤(日本化薬(株)製 カヤホールS−L)を0.8質量%添加した以外は、実施例1と同様にして印刷用紙を得た。
[実施例12]
サイズプレス液として、2質量%濃度の蛍光増白剤(日本槽達(株)製 ケイコールSPL)及び3.5質量%濃度のノニオン系ポリビニルアルコールを添加した以外は、実施例11と同様にして、印刷用紙を得た。
【0064】
【表5】

【0065】
表5からわかるように、実施例11及び12は、十分なUV−CUT白色度、灰分及びISO白色度が得られており、カチオン要求量も規定値の範囲内である。このため、実施例11及び12の印刷用紙は、白色性、不透明度及び風合いともに良好であった。
充分なUV−CUT白色度、灰分及び極めて高いISO白色度が得られており、カチオン要求量も規定値の範囲内であった。このため、実施例11及び12の印刷用紙は、白色度、不透明度及び風合いともに良好であり、とりわけ紫外線量の多い光源においては極めて高白色なものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明における印刷用紙は、高白色で不透明性が高いため少なくとも片面に塗工する塗工原紙として有用であり、例えば、塗工印刷用紙、インクジェット印刷用紙、電子写真記録用紙、画像部と非画像部を有する記録方式の塗工原紙として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料として酸化チタン及び/又は炭酸カルシウムを含む、木材パルプを主成分とし、塗工層を設けない印刷用紙であって、
JIS P−8148に準拠した測光器の光路に420nmカットオフフィルタを設けて測定した白色度が90%以上であり、
JIS P−8251に準拠して測定した灰分が6〜30質量%であり、かつ、
前記印刷用紙を、固形分濃度が1.5質量%となるようにJIS−P8220に準拠して離解した離解物を、目開き100μm〜150μmのフィルタを使用してろ過して得られたろ液のカチオン要求量が−0.1〜0.1meq/Lであることを特徴とする印刷用紙。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷用紙の少なくとも片面に、白色顔料及び接着剤を主成分とする塗料を固形分質量で1〜6g/m2塗工した印刷用紙であって、JIS P−8251に準拠して測定した灰分が6.1〜35質量%であることを特徴とする印刷用紙。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷用紙に蛍光増白剤が含有されていることを特徴とする印刷用紙。

【公開番号】特開2006−183192(P2006−183192A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379039(P2004−379039)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)
【Fターム(参考)】