説明

印刷装置、印刷システム、ニアエンド通知方法、および制御プログラム

【課題】ニアエンドをユーザに知らせつつ、第三者がニアエンドの通知を不快に感じる事がないようにする。
【解決手段】ロール紙7のニアエンドが検出された場合に、前記ロール紙への印刷時に広告77を印刷し、或いは、前記ロール紙7への印刷時に広告77を所定の印刷色で共に印刷し、前記ニアエンドが検出された場合に前記広告77の印刷色を変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙が残り少なくなった状態であるニアエンドをユーザに通知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール紙に文字や図形をライン状のサーマルヘッドを用いて印刷して、その印刷したロール紙を切断して排出口から排出する記録装置が知られている。この種の記録装置は、例えばレシートや領収書を印刷するPOSシステムや、現金自動支払機(ATM)、キャッシュディスペンサー(CD)などに組み込まれて使用されている。
また、一般に、ロール紙の残りが少なくなった状態であるニアエンドをユーザに通知しロール紙の補充を促すために、ロール紙の製造工程において、終端から所定の長さまで赤インクなどでニアエンドマークを予め付すことが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−59233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ロール紙への印刷物をレシートや領収書、クーポンとして受け取る第三者にとっては、ニアエンドの通知は不要なものであり、ロール紙にニアエンドマークが付されると不快に感じられることがある、という問題がある。特に、利用価値があるクーポンとして発行される場合、クーポンにニアエンドマークが付されていると、クーポンの価値が低下し、或いは損なわれた印象を与えてしまう。
【0004】
また近年、台紙(剥離紙)なし(ライナーレス:Liner-less)のラベル用紙がロール紙として用いられることがある。このラベル用紙においては、ロール紙の裏面に全域に亘り糊(粘着材)が塗布され、この糊をラベル表面から剥がれ易くするために、ロール紙のラベル表面にはリリースコート剤が全面に塗布されている。このリリースコート剤には、ニアエンドマークのマーキングに使用されている塗料との親和性が低いものがあり、このため、ラベル表面にニアエンドマークを付してのニアエンドの通知ができない場合がある、という問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ニアエンドをユーザに知らせつつ、第三者がニアエンドの通知を不快に感じ難くする印刷装置、印刷システム、ニアエンド通知方法、および制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、受信した印刷データをロール紙に印刷する印刷手段と、前記ロール紙のニアエンドを検出するニアエンド検出手段と、広告情報を記憶する記憶手段と、前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に、前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を印刷し、或いは、前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を所定の印刷色で共に印刷しつつ、前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に前記広告の印刷色を変える印刷制御手段と、を備えたことを特徴とする印刷装置にある。
【0006】
第1の態様によれば、ニアエンドが検出された場合に、ロール紙への印刷時に広告が共に印刷され、或いは、ロール紙への印刷時に所定の印刷色で共に印刷されていた広告の印刷色が変わる。
これにより、ユーザは、ロール紙への広告の印刷の出現、或いは、広告の印刷色の変化からロール紙のニアエンドを把握することができる。また、ユーザ以外の第三者にとっては、あくまでも広告として認識されるから、ニアエンドの通知を不快に感じることが無く、寧ろ有益な情報として受け取ることができる。
さらに、広告の印刷によってロール紙のニアエンドを通知するから、生産工程においてロール紙にニアエンドマークを予め付しておく必要がない。これにより、ロール紙の生産性が高められ、また、従来のニアエンドマーク付与用の塗料との親和性が低くニアエンドマークを予め付すことが困難な、例えば台紙なしのラベル紙をロール紙に用いる場合でも、ニアエンドを確実にユーザに通知することができる。
【0007】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記印刷制御手段は、前記広告の印刷色を変える場合、前記ロール紙の残量に応じて前記印刷色を決定することを特徴とする。
第2の態様によれば、ニアエンドが検出された後においては、ロール紙の残量に応じて広告の印刷色が変わることになるから、広告の印刷色に基づいてロール紙の残量をユーザが把握することができる。これにより、ユーザは、ロール紙の紙不足を生じさせない程度に、十分にロール紙を使い切ったタイミングで、ロール紙の交換を行うことも可能になる。
【0008】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記印刷手段は、前記ロール紙の印刷面にインクを吐出するインクジェットヘッドと、複数の色ごとにインクを貯留し、該インクを前記インクジェットヘッドに供給するインクカートリッジとを備え、前記印刷制御手段は、前記広告の印刷色を変える場合、前記インクカートリッジに貯留されている各色のインクの残量に応じて前記印刷色を決定することを特徴とする。
第3の態様によれば、ニアエンドが検出された後は、複数のインクのそれぞれの残量に応じて広告の印刷色が変わることになる。したがって、残量の多いインクの色に広告の印刷色を変更することで、残量の多いインクの消費が増えつつ、他のインクの消費が減らされるため、各インクの残量の均一化を図ることができる。これにより、各インクを十分に使いきって、インクカートリッジを交換することができる。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第4の態様は、印刷データを生成するホスト装置と、前記ホスト装置から送信された印刷データをロール紙に印刷を行う印刷装置と、を備え、前記印刷装置は、広告情報を記憶する記憶手段と、前記ロール紙のニアエンドを検出するニアエンド検出手段と、前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に、前記ロール紙への印刷時に前記広告情報を印刷し、或いは、前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を所定の印刷色で共に印刷しつつ、前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に前記広告情報に基づく広告の印刷色を変える印刷制御手段と、を備えたことを特徴とする印刷システムにある。
第4の態様によれば、第1の態様と同様な作用、効果を奏する。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第5の態様は、受信した印刷データをロール紙に印刷する印刷装置のニアエンド通知であって、前記ロール紙のニアエンドが検出された場合に、前記ロール紙への印刷時に広告を印刷し、或いは、前記ロール紙への印刷時に広告を所定の印刷色で共に印刷しつつ、前記ニアエンドが検出された場合に前記広告の印刷色を変える、ことを特徴とするニアエンド通知方法。
第5の態様によれば、第1の態様と同様な作用、効果を奏する。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第6の態様は、受信した印刷データをロール紙に印刷する印刷手段と、前記ロール紙のニアエンドを検出するニアエンド検出手段と、を備えた印刷装置を、広告情報を記憶する記憶手段、前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に、前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を印刷し、或いは、前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を所定の印刷色で共に印刷しつつ、前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に前記広告の印刷色を変える印刷制御手段として機能させることを特徴とする制御プログラムにある。
第6の態様によれば、第1の態様と同様な作用、効果を奏する。
【0012】
なお、本発明の第7の態様として、受信した印刷データをロール紙に印刷する印刷手段と、前記ロール紙のニアエンドを検出するニアエンド検出手段と、を備えた印刷装置を、広告情報を記憶する記憶手段、前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に、前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を印刷し、或いは、前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を所定の印刷色で共に印刷しつつ、前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に前記広告の印刷色を変える印刷制御手段として機能させる制御プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体もある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ニアエンドが検出された場合に、ロール紙への印刷時に広告が共に印刷され、或いは、ロール紙への印刷時に所定の印刷色で共に印刷されていた広告の印刷色が変わるため、ユーザは、ロール紙への広告の印刷の出現、或いは、広告の印刷色の変化からロール紙のニアエンドを把握することができる。また、ユーザ以外の第三者にとっては、あくまでも広告として認識されるから、ニアエンドの通知を不快に感じることが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は本発明の実施形態に係る印刷システム100の構成を示す図である。
印刷システム100は、ホスト装置としてのホストコンピュータ102と、このホストコンピュータ102に通信ケーブル103を介して接続されたプリンタ1とを備えて構成されている。この印刷システム100は、スーパーマーケット等の小売店や飲食店等に導入されたPOSシステムにおけるレシートやクーポンの発行に好適に用いら得るものである。
【0015】
ホストコンピュータ102は、プリンタ1に対し、通信ケーブル103を介して印刷データや制御データを送信し、このプリンタ1を制御することによって記録媒体に画像を印刷させる。印刷システム100をPOSシステムに用いる場合には、例えば購入商品名や購入金額等の決済情報を含む印刷データがホストコンピュータ102からプリンタ1に送信される。
このホストコンピュータ102は、画像や映像等を表示するディスプレイ102a(表示画面)やユーザにより操作されるキーボード102b等を備えたコンピュータシステムにより構成される。
プリンタ1は、ロール状に巻かれたロール紙7を記録媒体として用い、このロール紙7の印刷面にインクを吐出して印刷する、いわゆるインクジェット式のロール紙プリンタとして構成されている。
【0016】
本実施形態のプリンタ1は、全体としてほぼ直方体形状をした外装ケース1aを備えており、その前面には所定幅の記録紙排出口2が形成されている。記録紙排出口2の下側には排紙ガイド3が前方に突出しており、当該排紙ガイド3の側方には蓋開閉レバー4が配置されている。外装ケース1aにおける排紙ガイド3および蓋開閉レバー4の下側には矩形の開口部1bが形成されており、この開口部1bは前方に開く開閉蓋5で封鎖されている。
【0017】
図2はプリンタ1の開閉蓋を全開にした状態の外観斜視図である。
蓋開閉レバー4を操作して不図示の蓋ロック機構を解除して、排紙ガイド3を前方に引くと、図2に示すように、開閉蓋5が下端部を中心として前方にほぼ水平となるまで開く。開閉蓋5を開くと、プリンタ内部に形成されているロール紙収納部6が開放状態となり、プリンタ前方からロール紙7の交換作業などを行うことができる。ここで、ロール紙収納部6の右側の側壁部分61には、ロール紙7の残りが少なくなった状態(以下、「ニアエンド」と称する)を検出するためのニアエンド検出器30が取り付けられている。
【0018】
図3はプリンタ1の内部構造を示す概略縦断面図であり、外装ケース1aを取り外した状態で示してある。プリンタ内部に形成されているロール紙収納部6は、ロール紙7を転動可能な状態で保持するロール紙ホルダ8を備えている。ロール紙収納部6の上方における後側の部位にはプリンタ前後方向に水平に記録紙ガイド9が配置されている。記録紙ガイド9の前側には、一段高い位置においてプリンタ前後方向に水平に、プラテンガイド10が配置されている。プラテンガイド10の真上には、インクジェットヘッド11が配置されている。インクジェットヘッド11のノズル面11aは、プラテンガイド10の上面10aに対して一定のギャップで対峙しており、当該上面10aによって印字位置が規定されている。
【0019】
印字位置を規定しているプラテンガイド10と、記録紙ガイド9との間には、第1紙送りローラ12がプリンタ幅方向に水平に架け渡されている。第1紙送りローラ12には下側から所定幅の第1紙押さえローラ13が所定の押圧力で押し付けられている。第1紙押さえローラ13は、ベルト・プーリ式の伝達機構を介して紙送りモータ48(図4)によって駆動される。プラテンガイド10における前端側の部位には、第2紙送りローラ16が配置されている。第2紙送りローラ16には、上側から第2紙押さえローラ17が押し付けられている。
【0020】
インクジェットヘッド11はキャリッジ18に搭載されており、キャリッジ18は、プリンタ幅方向に水平に延びるキャリッジガイド19に沿ってプリンタ幅方向(印字幅方向)に移動可能な状態で支持されている。キャリッジ18はプリンタ幅方向に架け渡したタイミングベルト20に連結されており、タイミングベルト20はキャリッジモータ21によって駆動される。キャリッジモータ21を駆動すると、キャリッジ18に搭載されているインクジェットヘッド11がプリンタ幅方向に移動し、この移動に同期してインクジェットヘッド11が駆動されて、ロール紙7から繰り出されて印字位置を通過する記録紙7aの表面(印刷面)に印字が行われる。
【0021】
インクジェットヘッド11には、ロール紙収納部6の側方に配置されているインクカートリッジ収納部に収納されているインクカートリッジ37(図2)からインクチューブを介してインクが供給されるようになっている。インクカートリッジ37は、複数の色ごとにインクを貯留するものであり、例えば黒色のインクを貯留する黒インクタンク37Aおよび赤色のインクを貯留する赤インクタンク37Bを備えている。
【0022】
一方、図3に示すように、記録紙排出口2には、鋏式の記録紙切断装置22が配置されている。記録紙切断装置22の固定刃23は上向き状態で垂直に配置されており、その可動刃24は下向きで垂直に配置されている。可動刃駆動機構25によって可動刃24がプリンタ幅方向の一方の端を支点として上下方向に旋回すると、固定刃23との接触点がプリンタ幅方向に移動して、これらの間に位置する記録紙7aを幅方向に切断できる。
【0023】
このように構成されているプリンタ1では、図3において太い一点鎖線で示すように、ロール紙収納部6に収納されているロール紙7から引き出された記録紙7aが、記録紙ガイド9によってガイドされ、第1紙送りローラ12および第1紙押さえローラ13の間からプラテンガイド10の上面10a(印字位置)を経由して第2紙送りローラ16および第2紙押さえローラ17の間を通って記録紙排出口2から外部に引き出された状態にセットされる。
【0024】
この状態で第1紙送りローラ12および第2紙送りローラ16が回転すると、記録紙7aの搬送が開始される。記録紙7aの搬送に同期させてインクジェットヘッド11が駆動され、印字位置を通過する記録紙7aの表面に印字が行われる。例えば、印字後の記録紙7aが記録紙排出口2から排出された状態で搬送が停止し、記録紙切断装置22によって記録紙7aが切断され、所定長さの印字済みの記録紙片が、レシートあるいはクーポンとして発行される。
【0025】
ニアエンド検出器30は、図2に示すように、プリンタ上下方向に延びる回動レバー31と、リミットスイッチ32を備え、これらが検出器保持具33に取り付けられている。回動レバー31は、その上端部に取り付けた回動ピン34を中心としてプリンタ幅方向に回動可能な状態で、検出器保持具33によって支持されている。回動レバー31の下端部にはロール紙収納部内に突出している検出突起35が形成されている。
【0026】
充分な残量のロール紙7がロール紙収納部6に収納されている状態では、検出突起35および突起36がロール紙7における巻き芯71(図3)より下側の側面部分に当たっており、回動レバー31が側方に押し出された状態となっている。ロール紙7の使用量が増加するのに伴って、ロール紙7の外径も小さくなり、その巻き芯71の位置も徐々に低下する。巻き芯71の高さ位置が検出突起35の高さ位置まで下がると、検出突起35が巻き芯71に入り込み、回動レバー31が全体としてロール紙収納部側に回動する。
【0027】
ここで、検出器保持具33に取り付けられているリミットスイッチ32の検出ロッド32aは、内蔵のばね力によって回動レバー31をロール紙収納部側に付勢している。ロール紙7を収納すると、回動レバー31が側方に押し出されるので、検出ロッド32aが押し込まれた状態になる。この状態が例えばリミットスイッチ32のオフ状態であり、上記のように、ロール紙7の残量が少なくなり、その巻き芯71が検出突起35の高さ位置まで下がると、検出ロッド32aによって押されている回動レバー31が内側に回動して、検出突起35が巻き芯71に入り込む。この結果、リミットスイッチ32がオン状態に切り替わり、ロール紙7がニアエンドになったことを表す検出信号が出力される。検出突起35は高さ位置が調整可能に構成されており、ユーザは高さ位置を調整することにより、ニアエンドとして検出を開始するときのロール紙7の残量を調節できる。
【0028】
図4は印刷システム100の機能的構成を示すブロック図である。
プリンタ1は、CPU、ROM、RAM41を備えた制御部40を備えて構成されている。制御部40にはインターフェース42を介して、ホストコンピュータ102から印刷データなどが供給される。制御部40の入力側には、ニアエンド検出器30及びインク残量検出器50が接続されている。制御部40は、ニアエンド検出器30からの入力信号に基づきロール紙7のニアエンドを検出する。インク残量検出器50は、インクカートリッジ37のインクの残量を色ごとに示す検出信号を制御部40に入力する。すなわち、インク残量検出器50からは、インクカートリッジ37が備える黒インクタンク37Aおよび赤インクタンク37Bのそれぞれのインク残量が入力される。また、制御部40には、制御プログラムとしてのファームウェア64を記憶する不揮発性メモリ43が接続されている。制御部40の出力側には、ヘッドドライバ45、モータドライバ46、47を介して、インクジェットヘッド11、キャリッジモータ21および紙送りモータ48が接続されている。
【0029】
制御部40は、ロール紙7への印刷動作を中枢的に制御するものであり、RAM51と、ロール紙残量監視部52と、ニアエンド印刷制御部53とを備えている。RAM51には、広告情報60が予め記憶されている。広告情報60は、プリンタ1が設置されている小売店や飲食店等における商品の広告やキャンペーンなどの情報であり、ホストコンピュータ102から入力される。この広告情報60は、レシートやクーポンの発行時に印刷面の空きスペースに印刷される。
なお、RAM51或いは不揮発性メモリ43には、広告情報の代替となり得る、例えば店名等の広告代替情報が予め格納されており、広告情報60がホストコンピュータ102から入力されていないときには、広告代替情報が使用される。
【0030】
ロール紙残量監視部52は、ニアエンド検出器30によってニアエンドが検出された後におけるロール紙7の紙送りの量を監視するものであり、紙送りカウンタ62を備えている。紙送りカウンタ62は、紙送りモータ48を送り出し方向に駆動制御するステップをカウントし、その総ステップ数(累積値)を算出することで、ロール紙7の紙送りの総量を監視する。
【0031】
ニアエンド印刷制御部53は、ニアエンド検出器30によってニアエンドが検出された場合、それ以降に発行されるレシートにおいて、決済情報と共に印刷する広告情報60の印刷時の色を変えるものであり、広告印刷色決定部63を備えている。広告印刷色決定部63は、広告情報60の色を変える際に、どのような色に変えるかを決定する。
より具体的には、広告印刷色決定部63は、広告情報60の印刷色を他色に変更したり、同一色で濃淡を変更したり、或いは色彩を変更することで、色を変えている。他色への変更は、例えば黒色から赤色といった色相の変更である。同一色での濃淡変更は、例えば濃い黒色から薄い黒色といった明度の変更である。色彩の変更は、例えば鮮やかな赤色から濁った赤色といったような変更である。
このとき、広告印刷色決定部63は、広告情報60の印刷色を、どのような色に変えるかをロール紙7の残量、及び、インクカートリッジ37の各色のインク残量に基づいて決定し、ロール紙7の残量を広告情報60の印刷色からユーザが把握可能にすると共に、各色のインクの使用量を均一にしている。
【0032】
次に図5を参照してプリンタ1の印刷動作について説明する。
制御部40は、電源が投入されると待機状態となり(ステップS1)、ホストコンピュータ102から印刷データを受信するまで待ち受ける(ステップS2:No)。ホストコンピュータ102からプリンタ1への広告情報60の入力は、この待機状態の間を利用して行われる。その後、待機状態の間に印刷データをホストコンピュータ102から受け取った場合(ステップS2:Yes)、制御部40は、ニアエンド検出器30によってロール紙7のニアエンドが検出されているか否かを判断する(ステップS3)。
【0033】
ニアエンドが検出されていない場合には(ステップS3:No)、ロール紙7の残量が十分であることから、印刷データにしたがった通常通りの印刷が行われる。すなわち、制御部40は、印刷データに含まれる文字データや画像データに基づいて、ロール紙7に印刷を行うと共に、RAM51に記憶されている広告情報60に基づいて、広告を印刷面の空きスペースに印刷する(ステップS4)。このとき、広告は予め設定された所定色で印刷される。
【0034】
一方、ニアエンドが検出されている場合(ステップS3:Yes)、広告印刷色決定部63によって決定された色に、広告の印刷色が変更される(ステップS5)。具体的には、図6に示すように、広告印刷色決定部63は、広告の印刷色の所定色として使用しているインクと、インクカートリッジ37のインクのうち残量が最多のインクとが同じか否かを判断する(ステップS10)。
同じでない場合には(ステップS10:No)、広告印刷色決定部63は、残量が最多のインクの色に印刷色を変更することで、他のインクとの間で残量が均一化されるようにする(ステップS11)。例えば広告の所定色が黒色であり、赤色のインクの残量が黒色のインクよりも多い場合、広告の印刷色が赤色に変更される。
【0035】
一方、同じである場合には(ステップS10:Yes)、広告印刷色決定部63は、所定色のインクと次に残量が多いインクとを使用した混合色に印刷色を変更することで、色を変更しつつ、他のインクとの間で残量が均一化されるようにする(ステップS12)。例えば、広告の所定色が赤色であり、この赤色のインクの残量が黒色のインクよりも多い場合、広告の印刷色が赤色及び黒色の混合色に変更される。なお、インクカートリッジ37が3色以上のインクを貯留している場合には、残量が多い3つ以上のインクを混合した色に変更しても良いし、インクを混合するのではなく、残量が2番目に多いインクに印刷色を変更しても良い。
【0036】
次いで、広告印刷色決定部63は、ニアエンドが検出された後に印刷されたロール紙7の総量(紙送りの総量)の検出値をロール紙残量監視部52から受け取り、この総量が所定量に達したか否かを判断する(ステップS13)。この所定量は、ロール紙7の残量が僅かであり、2、3回のレシート発行によりロール紙7が使い切られると予測される量を基準にして決定される。例えば、ニアエンドとして検出開始されるときのロール紙7の残量(長さ)に対して所定割合(例えば8割や9割など)に相当する量が設定される。
広告印刷色決定部63は、ニアエンド検出後に印刷されたロール紙7の総量が所定量に達していない場合には(ステップS13:No)、広告の印刷色の濃淡を予め設定された所定の濃淡に決定する(ステップS14)。一方、所定量に達している場合には(ステップS13:Yes)、広告の印刷色の濃淡を所定の濃淡から変更し、本実施形態では濃淡を薄くする(ステップS15)。
そして、図5に示すように、制御部40は、広告印刷色決定部63によって決定された印刷色で広告を、レシートの決済情報等と一緒に印刷する(ステップS6)。
【0037】
このような動作の結果、図7に示すように、決済情報の他に、例えばレシート75の左右両縁に沿って広告77を印刷している場合、ニアエンドが非検出状態であるとき、つまり、ロール紙7の残量が十分であるときは、予め設定された所定色(図示例では「黒色縁の中抜き無色」)で広告77が印刷される(図7(A))。その後、ニアエンドが検出された場合、図6に示した処理で決定された印刷色に、広告77の印刷色が所定色から変更される(図7(B))。そして、ニアエンドが検出された以降のロール紙7の紙送りの総量が所定量に到達すると、広告77の濃淡がさらに変化する(図7(C))。
【0038】
このような本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本実施形態によれば、ロール紙7への印刷時に広告77を所定の印刷色で共に印刷しつつ、ニアエンド検出器30によってニアエンドが検出された場合に広告77の印刷色を変える構成とした。この構成により、プリンタ1のユーザは、広告77の印刷色の変化によってロール紙7のニアエンドを把握することができる。また、ユーザ以外の第三者にとっては、あくまでも広告77として認識されるから、不快感を与える事もない。寧ろ、第三者にとっては広告77から有益な情報を得ることができる。
【0039】
さらに、広告77の印刷によってロール紙7のニアエンドを通知するから、従来のように製造工程において、ロール紙7にニアエンドマークを予め付しておく必要がない。これにより、ロール紙の生産性が高められ、また、従来のニアエンドマーク付与用の塗料との親和性が低くニアエンドマークを予め付すことが困難な、例えば台紙なしのラベル紙をロール紙7に用いる場合でも、ニアエンドを確実にユーザに通知することができる。
【0040】
また本実施形態によれば、ニアエンドの検出後に、広告77の印刷色を変える場合、ロール紙7の残量に応じて印刷色を決定する構成とした。これにより、ユーザは、ニアエンドが検出された後においては、広告77の印刷色に基づいてロール紙7の残量を把握することができる。したがって、ロール紙7の紙不足が生じない程度に、十分にロール紙を使い切ったタイミングで、ユーザがロール紙の交換を行うことができる。
【0041】
また本実施形態によれば、ニアエンドの検出後に、広告77の印刷色を変える場合、インクカートリッジ37に貯留されている各色のインクの残量に応じて印刷色を決定し、特に、残量の多いインクの色に広告77の印刷色を変更する構成とした。これにより、残量の多いインクの消費が増えつつ、他のインクの消費が減らされるため、各インクの残量を均一にすることができ、また、各インクを十分に使いきってから、インクカートリッジを交換することができるようになる。
【0042】
[第2実施形態]
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。
第1実施形態では、広告77をロール紙7に常に印刷する構成としたが、本実施形態では、ロール紙7のニアエンドが検出された場合に、通常の決済情報等の印刷と共に広告77を印刷する構成としている。なお、本実施形態のプリンタ1の構成は、第1実施形態とほぼ同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
図8は、本実施形態に係る印刷動作を示す図である。この図において、第1実施形態で説明した図5と同様のステップについては同一の符号を付している。
この図に示すように、本実施形態において、制御部40は、ニアエンドが検出されていない場合(ステップS3:No)、広告77を付さずに、印刷データに含まれた決済情報等の通常の情報のみを印刷する(ステップS20)。
一方、ニアエンドが検出されている場合(ステップS3:Yes)、制御部40は、印刷データに含まれた情報に、広告情報60を付加し(ステップS21)、決済情報等の通常の情報と共に広告情報60に基づく広告77を印刷する。このとき、広告77の印刷色は、第1実施形態と同様にして、ロール紙7の残量、およびインクカートリッジ37の各色のインクの残量に応じて広告印刷色決定部63によって決定され(ステップS5)、この決定された印刷色で広告77が決済情報の通常の情報と一緒に印刷される(ステップS6)。
【0044】
このように本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加え、次のような効果を奏する。すなわち、ニアエンドが検出された場合に、ロール紙7への印刷時に広告77を一緒に印刷する構成としたため、ユーザは、ロール紙への広告の印刷の出現からロール紙のニアエンドを把握することができる。また、ユーザ以外の第三者にとっては、あくまでも広告として認識されるから、第三者に不快感を与えることなく、ユーザにだけニアエンドを通知することができる。
【0045】
なお、上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した各実施形態では、ロール紙に印刷する印刷装置として、インクジェットヘッドを備える印刷装置を例示したが、これに限らず、サーマルヘッドを備える印刷装置としても良い。この印刷装置の場合には、ロール紙7として、熱により発色する各色対応の発色層が予め形成されたものが使用され、サーマルヘッドによりロール紙7に与える熱を制御することで、広告77の印刷色を可変する。
また本発明に係る印刷装置や印刷システムは、POSシステムに限らず、現金自動支払機(ATM)、キャッシュディスペンサー(CD)などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態に係る印刷システムの構成を示す図である。
【図2】プリンタの開閉蓋を全開にした状態の外観斜視図である。
【図3】プリンタの内部構造を示す概略縦断面図である。
【図4】印刷システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図5】プリンタの記録動作のフローチャートである。
【図6】広告の印刷色変更動作のフローチャートである。
【図7】広告が印刷されたレシートの一態様を示す図である。
【図8】第2実施形態に係るプリンタの記録動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1…プリンタ(印刷装置)、7…ロール紙、11…インクジェットヘッド、30…ニアエンド検出器(ニアエンド検出手段)、37…インクカートリッジ、40…制御部、53…ニアエンド印刷制御部(印刷制御手段)、60…広告情報、63…広告印刷色決定部、75…レシート、77…広告、100…印刷システム、102…ホストコンピュータ(ホスト装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した印刷データをロール紙に印刷する印刷手段と、
前記ロール紙のニアエンドを検出するニアエンド検出手段と、
広告情報を記憶する記憶手段と、
前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に、前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を印刷し、或いは、
前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を所定の印刷色で共に印刷しつつ、前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に前記広告の印刷色を変える印刷制御手段と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷制御手段は、前記広告の印刷色を変える場合、前記ロール紙の残量に応じて前記印刷色を決定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷手段は、
前記ロール紙の印刷面にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
複数の色ごとにインクを貯留し、該インクを前記インクジェットヘッドに供給するインクカートリッジとを備え、
前記印刷制御手段は、前記広告の印刷色を変える場合、前記インクカートリッジに貯留されている各色のインクの残量に応じて前記印刷色を決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
印刷データを生成するホスト装置と、前記ホスト装置から送信された印刷データをロール紙に印刷を行う印刷装置と、を備え、
前記印刷装置は、
広告情報を記憶する記憶手段と、
前記ロール紙のニアエンドを検出するニアエンド検出手段と、
前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に、前記ロール紙への印刷時に前記広告情報を印刷し、或いは、
前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を所定の印刷色で共に印刷しつつ、前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に前記広告情報に基づく広告の印刷色を変える印刷制御手段と、
を備えたことを特徴とする印刷システム。
【請求項5】
受信した印刷データをロール紙に印刷する印刷装置のニアエンド通知方法であって、
前記ロール紙のニアエンドが検出された場合に、前記ロール紙への印刷時に広告を印刷し、或いは、
前記ロール紙への印刷時に広告を所定の印刷色で共に印刷しつつ、前記ニアエンドが検出された場合に前記広告の印刷色を変える、
ことを特徴とするニアエンド通知方法。
【請求項6】
受信した印刷データをロール紙に印刷する印刷手段と、
前記ロール紙のニアエンドを検出するニアエンド検出手段と、を備えた印刷装置を、
広告情報を記憶する記憶手段、
前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に、前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を印刷し、或いは、
前記ロール紙への印刷時に前記広告情報に基づく広告を所定の印刷色で共に印刷しつつ、前記ニアエンド検出手段によってニアエンドが検出された場合に前記広告の印刷色を変える印刷制御手段
として機能させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−36373(P2010−36373A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199162(P2008−199162)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】