説明

印刷装置およびその制御方法

【課題】データの異常検出を低コストで実現することができる印刷装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】グラフィックデータまたはキャラクタデータを含む印刷データに基づいて印刷処理を実行する印刷装置2であって、印刷モードをグラフィックデータを処理するためのグラフィックモードに設定、およびグラフィックモードの設定を解除するモード切替手段53と、印刷データを送信する外部装置3から、印刷データを受信するデータ受信手段51と、受信した印刷データがキャラクタデータである場合、現在の印刷モードが、グラフィックモードであるか否かを判別するモード判別手段57と、モード判別手段57による判別の結果、現在の印刷モードが、グラフィックモードに設定されている場合、異常が発生したと判別する異常判別手段58と、異常判別手段58による判別結果に基づいて、その旨を報知する報知手段60と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データの異常を検出することができる印刷装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プログラマブルロジックリソース(汎用集積回路)上にエラー検出回路を設け、データのエラー検出を行うものが知られている。このプログラマブルロジックリソースは、チェックサム計算回路と比較回路とを含むCRCモージュールを備えており、チェックサム計算回路により、対象となるデータ(プログラマブルロジックリソース構成データ)のチェックサムを計算する。その後、比較回路により計算されたチェックサムと、予め記憶されている期待値とを比較し、その比較結果に基づいて当該データのエラーの有無を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2005−505827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、印刷装置でグラフィックデータを印刷処理する場合、グラフィックデータが欠落することによりグラフィックデータのデータ数がずれると、以降の大量のグラフィックデータがグラフィックデータとして認識されず、意図しない文字列を印字することが考えられる。このため、グラフィックデータが正常なデータか否か(データのエラーの有無)をチェックする必要がある。
しかしながら、このようなデータのエラー検出を上述のようにハードウェア回路で行う場合、製品に対して新たにハードウェア回路を追加しなければならず、コストがかかるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みたものであり、データの異常検出を低コストで実現することができる印刷装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷装置は、グラフィックデータまたはキャラクタデータを含む印刷データに基づいて印刷処理を実行する印刷装置であって、印刷モードをグラフィックデータを処理するためのグラフィックモードに設定、およびグラフィックモードの設定を解除するモード切替手段と、印刷データを送信する外部装置から、印刷データを受信するデータ受信手段と、受信した印刷データがキャラクタデータである場合、現在の印刷モードが、グラフィックモードであるか否かを判別するモード判別手段と、モード判別手段による判別の結果、現在の印刷モードが、グラフィックモードに設定されている場合、異常が発生したと判別する異常判別手段と、異常判別手段による判別結果に基づいて、その旨を報知する報知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の印刷装置の制御方法は、グラフィックデータまたはキャラクタデータを含む印刷データに基づいて印刷処理を実行する印刷装置の制御方法であって、印刷データを送信する外部装置から、印刷データを受信するデータ受信工程と、印刷モードをグラフィックデータを処理するためのグラフィックモードに設定、およびグラフィックモードの設定を解除するモード切替工程と、受信した印刷データがキャラクタデータである場合、現在の印刷モードが、グラフィックモードであるか否かを判別するモード判別工程と、モード判別工程による判別の結果、現在の印刷モードが、グラフィックモードに設定されている場合、異常が発生したと判別する異常判別工程と、異常判別工程による判別結果に基づいて、その旨を報知する報知工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の印刷装置において、グラフィックデータの前後には、グラフィックモード設定コマンドおよびグラフィックモード解除コマンドが付加されており、グラフィックデータとして処理されたデータ量をカウントするデータ量カウント手段をさらに備え、モード切替手段は、外部装置から受信したグラフィックモード設定コマンドをトリガとして、印刷モードをグラフィックモードに設定し、グラフィックモード解除コマンドをトリガとして、グラフィックモードの設定を解除し、モード判別手段は、データ量カウント手段によりカウントされたデータ量と、処理対象となるグラフィックデータの実データ量と、が一致した直後に処理する印刷データがキャラクタデータである場合に、現在の印刷モードがグラフィックモードであるか否かを判別することが好ましい。
【0008】
これらの構成によれば、キャラクタデータ処理時に現在のモードがグラフィックモードであると判定された場合(つまり、グラフィックモードであるにも拘らず、キャラクタデータが処理された場合)、モードと処理内容が一致していないため、印刷データの処理、あるいは印刷データそのものになんらかの異常が発生したと判別し、その旨を報知することができる。
例えば、一般的にグラフィックデータの処理では、処理済データ量が実データ量と一致するまで処理を行う。したがって、処理対象となるグラフィックデータが欠落していた場合、後続のグラフィックモード解除コマンドの一部(欠落したデータ量と同じデータ量)が、グラフィックデータとして処理される。このため、本来なら、グラフィックデータの処理後に、グラフィックモードの設定を解除すべきコマンドとして認識されるはずのグラフィックモード解除コマンドが、コマンドではなくキャラクタデータとして認識され、処理が開始される。この場合、グラフィックモードであるにも拘らず、キャラクタデータの処理が開始されることとなるため、印刷装置は異常が発生したと判別する。これにより、グラフィックデータに欠落があった場合、これを異常として検出することができる。
また、データ欠落などの異常の検出をソフトウェアにより行うことで、例えば、ハードウェア回路を用いて行う場合に比べ、低コストで実現することができる。
なお、グラフィックモード解除コマンドは、想定される欠落データのバイト数より、バイト数の多いコマンドとして構成することが好ましい。これにより、グラフィックデータが欠落した場合でも、グラフィックモード解除コマンドの全てがグラフィックデータとして処理されることがないため(つまり、コマンドの一部は残ることになるため)、必ずキャラクタデータとして処理されることとなり、グラフィックデータの欠落が発生した場合、これを確実に異常として判別することが可能となる。
【0009】
本発明の印刷装置において、報知手段は、異常が発生したことを示すメッセージ、および異常発生時の連絡先を示すメッセージの少なくとも一方を印刷媒体に印刷して報知することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、印刷装置に異常が発生した旨を示すメッセージおよび/または異常発生時の連絡先を示すメッセージを印刷媒体に印刷する。これにより、利用者は、現在の状況(異常が発生した旨)や、どこに連絡すれば良いのかを容易に把握することができ、異常発生時における利用者の不安を軽減することができる。
【0011】
本発明の印刷装置において、報知手段は、外部装置に対して、異常が発生したことを示すステータスを送信することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、異常が発生した場合、外部装置で適切な処理を行うことができる。例えば、外部装置に報知手段を備えることで、管理者は印刷装置の異常を迅速に把握することができ、その後の復旧対応を迅速に行うことができる。
【0013】
本発明の印刷装置において、異常判別手段により異常が発生したと判別された場合、装置の動作を停止する動作停止手段をさらに備えたことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、異常が発生した場合、印刷装置の動作を停止することで、被害を最小限に抑えることができる。例えば、その異常が、大量の文字化け印字を伴うようなものである場合、異常発生直後に印刷装置の動作を停止することで、無駄な印刷媒体(用紙)の排出を抑えることができる。また、印刷装置がインクジェットプリンタの場合、無駄なインクの消費を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る印刷装置およびその制御方法について説明する。なお、本実施形態では、印刷装置と、印刷装置と連携するホストコンピュータと、から構成される印刷システムを例に挙げて説明する。
【0016】
図1は、本発明の印刷システム1の制御ブロック図である。同図に示すように本実施形態の印刷システム1は、印刷データに基づいて印刷処理を行う印刷装置2と、印刷データを生成し、当該印刷データを印刷装置2に対して送信するホストコンピュータ3(外部装置)により構成されている。
【0017】
ホストコンピュータ3は、CPU11(Central Processing Unit)、ROM12(Read Only Memory)、RAM13(Random Access Memory)、HDD14(Hard Disk Drive)、およびインターフェース15の他、一般的なパーソナルコンピュータに搭載されるハードウェア構成を有している。
【0018】
ROM12は、CPU11が各種処理を実行するための制御プログラムや制御データを記憶する。また、RAM13は、CPU11が各種処理を実行する際の作業領域として利用される。インターフェース15は、印刷装置2と接続するものである。
【0019】
HDD14には、文字や図形を印刷するアプリケーションプログラム14aが記憶されている。CPU11は、このアプリケーションプログラム14a上で印刷命令を実行することにより、インターフェース15を介して印刷装置2にキャラクタデータ、グラフィックデータ23(図2参照)、制御コマンド等の印刷データを送信する。
【0020】
この印刷データとしてグラフィックデータ23を送信する場合、図2に示すように、ホストコンピュータ3は、送信する印刷データがグラフィックデータ23であることを示すグラフィックコマンド22(制御コマンド)を送信し、これに続けてグラフィックデータ23を送信する。また、ホストコンピュータ3は、グラフィックコマンド22の前に、印刷装置2の印刷モードをグラフィックモードに設定するためのグラフィックモード設定コマンド21を付加して送信し、グラフィックデータ23の後に、グラフィックモードの設定を解除するためのグラフィックモード解除コマンド24を付加して送信する。つまり、グラフィックデータ23の印刷処理を行う場合、ホストコンピュータ3は印刷装置2に対して、グラフィックモード設定コマンド21、グラフィックコマンド22、グラフィックデータ23、グラフィックモード解除コマンド24の順に印刷データを送信する。
【0021】
図1の説明に戻る。印刷装置2は、CPU31、ROM32、RAM33、キャラクタジェネレータROM34(CG−ROM)、インターフェース35、データ受信部36、DMAコントローラ37(Direct Memory Access Controller)、印刷部38、および切断部39を備え、これらは互いに内部バス40により接続されている。
【0022】
ROM32は、CPU31が各種コマンドの解析および各種処理を実行するための制御プログラムや制御データを記憶する。CG−ROM34は、キャラクタ(文字や記号等)のフォントデータを記憶するものであり、キャラクタを特定するコードデータが与えられると、対応するフォントデータを出力する。
【0023】
RAM33は、CPU31が各種処理を実行する際に使用されるワークエリアブロック41の他、データ受信部36で受信した印刷データを一時的に記憶する受信バッファ42と、実際に印刷を行うため印刷イメージを記憶するプリントバッファ43と、印刷モードの設定を記憶するモード記憶ブロック44と、を有し、作業領域として使用される。
【0024】
インターフェース35は、ホストコンピュータ3と接続するためのものである。データ受信部36は、インターフェース35を介して、ホストコンピュータ3から印刷データを受信する。受信した印刷データは、CPU31により受信バッファ42を介してプリントバッファ43へ転送(格納)される。あるいは、後述のDMAコントローラ37によりプリントバッファ43へ転送される。
【0025】
DMAコントローラ37は、データ受信部36からプリントバッファ43に直に印刷データを転送する(具体的には、印刷データを印刷イメージに展開してプリントバッファ43に転送する)。このDMAコントローラ37は、CPU31とは独立して動作し、CPU31からの指示により、データ受信部36からプリントバッファ43へ、予め設定された転送回数だけ印刷データをDMA転送する(つまり、所定のデータ量の印刷データをDMA転送する)。そして、DMA転送終了後、DMAコントローラ37はCPU31に信号を送信し、CPU31はこの信号に基づいてDMA転送が完了した旨を認識する。
【0026】
印刷部38は、印刷ヘッド45や紙送りモータ46などで構成されている。CPU31は、プリントバッファ43に記憶された印刷イメージに基づいて、印刷ヘッド45を制御して連続用紙上(印刷媒体)に文字や図形の印刷を行い、紙送りモータ46を駆動して、連続用紙を排紙口(図示省略)に搬送する。切断部39は、排紙口の内側に配置されたカッタにより、印刷済みの連続用紙を切断分離する。
【0027】
ここで、本実施形態の印刷装置2のデータ転送方式について説明する。本実施形態の印刷装置2は、上述のデータ受信部36で受信した印刷データをプリントバッファ43へ転送するデータ転送方式として、2つの方式を有している。すなわち、第1の転送方式は、DMAコントローラ37がデータ受信部36で受信した印刷データをプリントバッファ43へ直に転送するDMA転送方式である。第2の方式は、データ受信部36で受信した印刷データを受信バッファ42に格納(蓄積)し、この受信バッファ42の印刷データを解析してプリントバッファ43へ転送する通常転送方式である。
【0028】
DMA転送方法は、グラフィックデータ23をプリントバッファ43に転送する際に利用される。例えば、CPU31により受信バッファ42に格納した印刷データがグラフィックコマンド22であると解析された場合、その後に続く印刷データをグラフィックデータ23として、受信バッファ42を介さずに直にプリントバッファ43へDMA転送する。そして、DMAコントローラ37は、予め設定された転送回数のデータ転送を終えると(グラフィックデータ23の実データ量に相当するデータ量の印刷データの転送を終えると)、DMA転送を終了し、通常転送方式へ戻る。すなわち、印刷装置2は、グラフィックコマンド22を受信したときに、自動的にDAM転送方式に移行する。そして、設定された転送回数だけ印刷データをDAM転送すると、DMA転送を自動的に抜け、通常転送方式へ戻る。
【0029】
次に、図3の機能ブロック図を参照して、印刷装置2の機能構成について説明する。図3に示すように、印刷装置2は、データ受信手段51、コマンド解析手段52、モード切替手段53、グラフィック処理手段54、DMA転送手段55、キャラクタ処理手段56、モード判別手段57、異常判別手段58、展開処理手段59、報知手段60、動作停止手段61、印刷手段62、および切断手段63を備えている。
【0030】
データ受信手段51は、ホストコンピュータ3から印刷データを受信する。そして、CPU31は、受信した印刷データを受信バッファ42に記憶する。コマンド解析手段52は、受信バッファ42に記憶した印刷データを1バイトずつ読み込んで解析する。
【0031】
モード切替手段53は、コマンド解析手段52により解析された印刷データが、グラフィックモード設定コマンド21である場合、印刷装置2の印刷モードをグラフィックモードに設定し(例えば、モード記憶ブロック44にフラグ「1」を設定する)、グラフィックモード解除コマンド24である場合、グラフィックモードを解除する(例えば、モード記憶ブロック44にフラグ「0」を設定する)。
【0032】
グラフィック処理手段54は、コマンド解析手段52により解析された印刷データが、グラフィックコマンド22の場合の処理を実行するものである。このグラフィック処理手段54では、CPU31は、受信済みのグラフィックデータ23が受信バッファ42にある場合(受信バッファ42にグラフィックデータ23の一部が格納されている場合)、これを受信バッファ42からプリントバッファ43に転送し、これ以降にデータ受信部36で受信する印刷データ(グラフィックデータ23)をDMA転送するように設定する。この時、CPU31は、コマンド解析手段52により解析したグラフィックコマンド22の情報に基づき、DMA転送の転送回数を設定する。
【0033】
DMA転送手段55は、DMAコントローラ37により、グラフィック処理手段54で設定された転送回数だけデータ受信部36からプリントバッファ43へ印刷データを直に転送する。そして、設定された転送回数のDMA転送が済むと、DMA転送が終了したことを示す信号をCPU31に送信し、制御をCPU31に戻す。このDMA転送手段55により、設定された転送回数だけ印刷データをDMA転送することで、所定のデータ量の印刷データが転送されることとなり、結果的にグラフィックデータ23として処理された印刷データのデータ量をカウントすることになる。つまり、DMA転送手段55は、請求項におけるデータ量カウント手段の役割を担うこととなる。
【0034】
キャラクタ処理手段56は、コマンド解析手段52により解析された印刷データがキャラクタデータの場合の処理を実行するものである。このキャラクタ処理手段56は、モード判別手段57、異常判別手段58、展開処理手段59から構成されており、まず、モード判別手段57により現在の印刷モードがグラフィックモードか否かを判別する。現在の印刷モードがグラフィックモードでない場合は、展開処理手段59により当該キャラクタデータをCG−ROM34を用いて印刷イメージに展開し、その結果をプリントバッファ43に格納する。一方、現在の印刷モードがグラフィックモードである場合、異常判別手段58により異常が発生したと判別する。
【0035】
報知手段60は、異常判別手段59により異常が発生したと判別された場合、その旨を通知するものである。具体的には、異常が発生した場合、ホストコンピュータ3にその旨を示すステータス(エラーステータス)を送信する(例えば、自動状態情報通知機能を用いる)。これにより、例えば、ホストコンピュータ3に報知部(ブザー等)を備え、エラーステータスを受信して異常発生を通知することで、管理者は印刷装置2の異常を迅速に把握することができ、その後の復旧対応を迅速に行うことができる。
【0036】
また、報知手段60は、異常が発生したことを示すメッセージ、および異常発生時の連絡先を示すメッセージの少なくとも一方を連続用紙に印刷することで、印刷装置2の利用者に対して異常の発生を通知する。これにより、利用者は、現在の状況(異常が発生した旨)や、どこに連絡すれば良いのかを容易に把握することができ、異常発生時における利用者の不安を軽減することができる。
【0037】
動作停止手段61は、異常判別手段59により異常が発生したと判別された場合、印刷装置2の動作を停止させる。これにより、異常が発生した場合、印刷装置2の被害を最小限に抑えることができる。例えば、その異常が、大量の文字化け印字を伴うようなものである場合、異常発生直後に印刷装置2の動作を停止することで、無駄な印刷媒体(用紙)の排出を抑えることができる。また、印刷装置2がインクジェットプリンタの場合、無駄なインクの消費を抑えることができる。
【0038】
印刷手段62は、プリントバッファ43に格納された印刷イメージが所定の量になった場合(例えば、プリントバッファ43に1行分の印刷イメージが格納された場合や、プリントバッファ43が一杯になった場合)、あるいは印刷命令が発行された場合に、当該印刷イメージに基づいて連続用紙への印刷処理を行う。切断手段63は、印刷済みの連続用紙を切断分離する。
【0039】
ここで、図4を参照して、印刷装置2に異常が発生したことを検出する手順について説明する。なお、ここでは、ホストコンピュータ3から受信したグラフィックデータ23の一部が、印刷装置2での処理過程において欠落(データ落ち)した場合を異常として検出する手順について説明する。また、グラフィックモード解除コマンド24は、欠落したグラフィックデータ23のバイト数よりも大きいバイト数で構成されているものとする。
【0040】
まず、CPU31は、ホストコンピュータ3から印刷データを受信する(S01)。ここでは、グラフィックデータ23の処理を行うことが前提であるため、上記の印刷データとしては、グラフィックモード設定コマンド21、グラフィックコマンド22、グラフィックデータ23、グラフィックモード解除コマンド24を順次受信することとなる。
【0041】
続いて、CPU31は、受信した印刷データを受信バッファ42に格納する(S02)。そして、CPU31は、受信バッファ42に格納された印刷データを1バイトずつ読み出して解析する(S03)。この解析の結果、CPU31は、グラフィックモード設定コマンド21を検出し(S04)、このコマンド検出をトリガとして、印刷モードをグラフィックモードに設定する(S05)。
【0042】
続いて、CPU31は、グラフィックモード設定コマンド21に続いて受信し、受信バッファ42に格納された印刷データを解析し(S01〜S03)、グラフィックコマンド22を検出する(S06)。そして、このグラフィックコマンド22の検出をトリガとして、CPU31は、グラフィック処理を開始する(S07)。グラフィック処理では、CPU31は、グラフィックコマンド22以降に受信するグラフィックデータ23をDMA転送するために、DMA転送の転送回数等の設定を行い、DMAコントローラ37に制御を移す。そして、DMAコントローラ37は、受信したグラフィックデータ23のDMA転送を開始する(S08)。なお、グラフィックコマンド22の解析後に、まだ受信バッファ42にグラフィックデータ23の一部が残っている場合、CPU31は、そのグラフィックデータ23を印刷イメージに展開してプリントバッファ43に格納した後、DMAコントローラ37に制御を移し、以降に受信するグラフィックデータ23のDMA転送を開始する。
【0043】
DMA転送では、DMAコントローラ37が、CPU31により設定された転送回数だけ、グラフィックデータ23をプリントバッファ43へ直に転送する。つまり、処理対象となるグラフィックデータ23の実データ量に相当するデータをプリントバッファ43に転送する。そして、DMAコントローラ37は、設定された転送回数のDMA転送が完了すると、CPU31に制御を戻す(S09)。
【0044】
このDMA転送では、転送対象となる印刷データがグラフィックデータ23か否かの判別は行わず、設定された転送回数だけ、つまり、所定のデータ量だけの印刷データをグラフィックデータ23として転送するため、グラフィックデータ23が欠落している場合、グラフィックデータ23に続くグラフィックモード解除コマンド24の一部が、グラフィックデータ23の欠落バイト数分だけグラフィックデータ23としてDMA転送される。
【0045】
次に、CPU31は、プリントバッファ43に格納された印刷イメージに基づいて印刷処理を実行する(S10)。そして、CPU31は、グラフィックデータ23として処理した印刷データに続いて受信した印刷データを受信バッファ42に格納し、この受信バッファ42に格納された印刷データを読み出して解析する(S01〜S03)。
【0046】
この時、グラフィックデータ23に異常がない場合は、CPU31はグラフィックモード解除コマンド24を検出し(S11)、これをトリガとしてグラフィックモードを解除した後(S12)、続く印刷データの処理を開始する。しかしながら、ここでは、グラフィックデータ23が欠落しているため、本来ならグラフィックモード解除コマンド24として判別されるコマンドの一部が、上記のDMA転送時にグラフィックデータ23として処理されている。このため、グラフィックモード解除コマンド24はコマンドとして成立せず、キャラクタデータとして認識され(S13)、キャラクタデータ処理が開始される(S14)。
【0047】
キャラクタデータ処理では、CPU31は、印刷モードがグラフィックモードか否かを判別する(S15)。ここで、グラフィックモードが解除されている場合(S16;No)、CPU31は、キャラクタデータを印刷イメージに展開してプリントバッファ43に格納し、当該印刷イメージに基づいて印刷処理を実行する(S10)。しかしながら、ここでは、グラフィックモード解除コマンド24がコマンドとして処理されていないため、CPU31は、グラフィックモードが設定されていると判別する(S16;Yes)。このため、CPU31は、グラフィックモードであるにも拘らず、キャラクタデータの処理が開始されているため、異常が発生したと判別する(S17)。つまり、CPU31は、グラフィックデータ23が欠落したことに起因する異常の発生を検出する。
【0048】
次に、CPU31は、異常が発生した旨を通知するために、ホストコンピュータ3に対して異常が発生した旨を示すステータスを送信すると共に、連続用紙に異常が発生した旨および異常発生時の連絡先を印刷する(S18)。そして、CPU31は、自身の動作を停止する(S19)。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、キャラクタデータの処理時に現在の印刷モードがグラフィックモードであると判定された場合(つまり、グラフィックモードであるにも拘らず、キャラクタデータが処理された場合)、モードと処理内容が一致していないため、印刷データの処理、あるいは印刷データ(グラフィックデータ23)の欠落などの異常が発生したと判別し、その旨を報知することができる。
【0050】
また、印刷データ(グラフィックデータ23)の欠落などの異常の検出をソフトウェアにより行うことで、例えば、印刷データの異常検出をハードウェア回路を用いて行う場合に比べ、低コストで実現することができる。
【0051】
なお、グラフィックモード解除コマンド24は、想定される欠落データのバイト数より、バイト数の多いコマンドとして構成することが好ましい。これにより、グラフィックデータ23が欠落した場合でも、グラフィックモード解除コマンド24の全てがグラフィックデータ23として処理されることがないため(つまり、コマンドの一部は残ることになるため)、必ずキャラクタデータとして処理されることとなり、グラフィックデータ23の欠落が発生した場合、これを確実に異常として判別することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、DMAコントローラ37を用いて、グラフィックデータ23をプリントバッファ43へ直に転送する構成を例示しているが、これに限るものではない。例えば、DMAコントローラ37を用いず、グラフィックデータ23を受信バッファ42を介してプリントバッファ43へ転送するようにしても良い。この場合、グラフィックデータ23として転送されたデータ量をカウントするデータ量カウント手段を新たに設け、当該データ量カウント手段によりカウントされたデータ量と、処理対象となるグラフィックデータ23の実データ量と、が一致した直後の印刷データを解析する。そして、解析の結果、当該印刷データがキャラクタデータとして認識され、且つ現在の印刷モードがグラフィックモードであると判別された場合に、グラフィックデータ23の欠落などの異常を検出することができる。
【0053】
また、本発明は、図5に示すように、1つのグラフィック(画像)を複数のグラフィックデータ23(グラフィックコマンド22を含む)の集合体(以下、集合体の各要素を「バンド71(71a〜71e)」と称す。)で形成する場合にも適用可能である。この場合、最初のバンド71aのデータ送信前にのみグラフィックモード設定コマンド21を送信し、最後のバンド71eのデータ送信後にのみグラフィックモード解除コマンド24を送信するようにしても良い。この場合、途中のバンド71bのグラフィックデータ23bが欠落した時には、次のバンド71cのグラフィックコマンド22cの一部が、バンド71bのグラフィックデータ23bとして処理される。このため、グラフィックコマンド22cはコマンドとして成立しなくなり、グラフィックモード中にも拘らずキャラクタデータとして認識されるため、グラフィックデータ23bの欠落を起因とする異常の発生を検出することができる。
【0054】
また、印刷装置2に、印刷モードをグラフィックモードに固定設定する機能およびグラフィックモードの固定設定を解除する機能を備えるようにしても良い。これにより、例えば、印刷装置2でグラフィックデータ23の印刷のみを行う場合(キャラクタデータを扱わない場合)、常にグラフィックモードに固定設定しておき、ホストコンピュータ3から受信した印刷データがキャラクタデータとして処理された場合、異常が発生したと判別することができる。つまり、グラフィックモード設定コマンド21やグラフィックモード解除コマンド24によるモード切替が不要となる。このため、例えば、ホストコンピュータ3(アプリケーションプログラム14a)に、グラフィックモード設定コマンド21およびグラフィックモード解除コマンド24の送信機能が無い場合でも対応することが可能となる。なお、これらの機能は、ディップスイッチなどにより実現することが考えられる。
【0055】
また、本実施形態では、グラフィックデータ23の欠落を異常として検出することを例に挙げて説明しているが、これに限らず、何らかの原因でグラフィックデータ23が増加した場合も、異常として検出することが可能である。
【0056】
また、上述した実施例によらず、印刷システム1の装置構成や処理工程、および印刷装置2の機器構成、処理工程および制御方法等について、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの制御ブロック図である。
【図2】グラフィックデータの処理に際して送信する印刷データのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】印刷装置の機能ブロック図である。
【図4】印刷装置に異常が発生したことを検出する手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】1つのグラフィックを複数のバンドで形成する場合の印刷データのデータ構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1…印刷システム 2…印刷装置 3…ホストコンピュータ 21…グラフィックモード設定コマンド 23…グラフィックデータ 24…グラフィクモード解除コマンド 51…データ受信手段 53…モード切替手段 55…DMA転送手段 57…モード判別手段 58…異常判別手段 60…報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフィックデータまたはキャラクタデータを含む印刷データに基づいて印刷処理を実行する印刷装置であって、
印刷モードを前記グラフィックデータを処理するためのグラフィックモードに設定、および前記グラフィックモードの設定を解除するモード切替手段と、
前記印刷データを送信する外部装置から、前記印刷データを受信するデータ受信手段と、
受信した前記印刷データが前記キャラクタデータである場合、現在の前記印刷モードが、前記グラフィックモードであるか否かを判別するモード判別手段と、
前記モード判別手段による判別の結果、前記現在の印刷モードが、前記グラフィックモードに設定されている場合、異常が発生したと判別する異常判別手段と、
前記異常判別手段による判別結果に基づいて、その旨を報知する報知手段と、を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記グラフィックデータの前後には、グラフィックモード設定コマンドおよびグラフィックモード解除コマンドが付加されており、
前記グラフィックデータとして処理されたデータ量をカウントするデータ量カウント手段をさらに備え、
前記モード切替手段は、
前記外部装置から受信した前記グラフィックモード設定コマンドをトリガとして、前記印刷モードを前記グラフィックモードに設定し、前記グラフィックモード解除コマンドをトリガとして、前記グラフィックモードの設定を解除し、
前記モード判別手段は、
前記データ量カウント手段によりカウントされたデータ量と、処理対象となるグラフィックデータの実データ量と、が一致した直後に処理する前記印刷データが前記キャラクタデータである場合に、前記現在の印刷モードが前記グラフィックモードであるか否かを判別することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記報知手段は、
異常が発生したことを示すメッセージ、および異常発生時の連絡先を示すメッセージの少なくとも一方を印刷媒体に印刷して報知することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記報知手段は、
前記外部装置に対して、異常が発生したことを示すステータスを送信することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記異常判別手段により異常が発生したと判別された場合、装置の動作を停止する動作停止手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
グラフィックデータまたはキャラクタデータを含む印刷データに基づいて印刷処理を実行する印刷装置の制御方法であって、
前記印刷データを送信する外部装置から、前記印刷データを受信するデータ受信工程と、
印刷モードを前記グラフィックデータを処理するためのグラフィックモードに設定、および前記グラフィックモードの設定を解除するモード切替工程と、
受信した前記印刷データが前記キャラクタデータである場合、現在の前記印刷モードが、前記グラフィックモードであるか否かを判別するモード判別工程と、
前記モード判別工程による判別の結果、前記現在の印刷モードが、前記グラフィックモードに設定されている場合、異常が発生したと判別する異常判別工程と、
前記異常判別工程による判別結果に基づいて、その旨を報知する報知工程と、を備えたことを特徴とする印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−105230(P2010−105230A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277816(P2008−277816)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】