説明

印刷装置およびプログラム

【課題】印刷装置を大型化することなく複数のユーザからの親展印刷にスムーズに対応する。
【解決手段】プリンタの内部に二つの第1トレイと第2トレイの二つのトレイを配置し、親展印刷指示を伴って印刷された印刷済みの用紙を第1トレイに他の用紙に重ねて保管しておき、用紙の排紙指示がなされてユーザ認証されたときに(S400〜420)、排紙対象に重ねられた他の用紙の累積枚数を示す退避枚数kが値0であれば第1トレイから排紙対象の用紙n枚を排紙し(S480)、退避枚数kが値0でなければk枚の用紙を第2トレイに搬送して退避させた後に第1トレイから排紙対象の用紙n枚を排紙し排紙後にk枚の用紙を第1トレイに搬送するから(S470〜490)、二つのトレイを用いて複数のユーザからの親展印刷にスムーズに対応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の印刷装置としては、複数のユーザ端末に接続され、印刷物を保管してロックできる三つの保管トレイを備えるものが提案されている(特許文献1参照)。この装置では、ユーザ端末から親展印刷指示を伴った印刷指示を受け付けたときには、印刷した印刷物を保管トレイにロックを掛けて保管しておきユーザ認証ができたときに保管トレイのロックを解除して印刷物を取り出し可能とすることにより、認証されたユーザ以外に印刷物が取得されるのを防止できるとしている。
【特許文献1】特開2004−338295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した印刷装置では、保管トレイのロックが解除されると、ロックが解除された保管トレイに保管されている印刷物をすべて取り出すことができるため、一つの保管トレイ内に複数のユーザの印刷物を同時に保管することができない。このため、四人以上のユーザからの親展印刷指示に対応するときには、保管トレイに空きが出るまで印刷待ちが生じることがある。一方で、四人以上の複数のユーザからの親展印刷指示にスムーズに対応するためには、ユーザの数に応じた保管トレイを備える必要があり、印刷装置が大型化してしまう。
【0004】
本発明の印刷装置およびプログラムは、印刷装置を大型化することなく複数のユーザからの親展印刷にスムーズに対応することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷装置およびプログラムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の印刷装置は、
通信が可能に接続されたユーザ端末から印刷ジョブを受け付けて印刷を実行する印刷装置であって、
装置内部に印刷済みの用紙を保管する第1および第2の保管手段からなる二つの保管手段と、
給紙された用紙に対して印刷を実行すると共に印刷済みの用紙が前記第1の保管手段に保管済みの用紙に重ねて保管されるよう搬送する印刷手段と、
前記第1の保管手段に保管されている用紙を最上位の用紙から取り出すと共に前記第2の保管手段に保管済みの用紙に重ねて保管されるよう搬送し、前記第2の保管手段に保管されている用紙を最上位の用紙から取り出すと共に前記第1の保管手段に保管済みの用紙に重ねて保管されるよう搬送する搬送手段と、
前記二つの保管手段のうちの少なくとも一方に保管されている用紙を最上位の用紙から取り出して排紙する排紙手段と、
データを記憶する記憶手段と、
前記印刷ジョブが受け付けられたとき、該受け付けられた印刷ジョブに基づいて印刷が実行されて前記第1の保管手段に保管されるよう前記印刷手段を制御し、前記受け付けられた印刷ジョブで指定された印刷枚数と保管済みの用紙の枚数とに基づく保管位置情報を該印刷ジョブの識別情報と関連付けて保管情報として前記記憶手段に記憶する印刷制御手段と、
前記印刷ジョブの識別情報を用いた認証を伴って印刷済みの用紙の排紙が指示されたとき、該識別情報に基づいて前記記憶されている保管情報から保管位置情報を取得し、該取得した保管位置情報に基づいて排紙対象の用紙が前記排紙手段で排紙可能な保管手段に保管される用紙の最上位に位置するよう前記搬送手段を制御すると共に該制御した後に前記排紙対象の用紙が排紙されるよう前記排紙手段を制御し、前記排紙が指示された印刷ジョブの識別情報に対応する保管情報を削除すると共に他の印刷ジョブの識別情報に対応する前記保管位置情報を更新する排紙制御手段と
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の印刷装置では、印刷ジョブが受け付けられたとき、受け付けられた印刷ジョブに基づいて印刷が実行されて装置内部に印刷済みの用紙を保管する第1の保管手段に保管されるよう印刷手段を制御し、受け付けられた印刷ジョブで指定された印刷枚数と保管済みの用紙の枚数とに基づく保管位置情報を印刷ジョブの識別情報と関連付けて保管情報として記憶手段に記憶し、印刷ジョブの識別情報を用いた認証を伴って印刷済み用紙の排紙が指示されたとき、識別情報に基づいて記憶されている保管情報から保管位置情報を取得し、取得した保管位置情報に基づいて排紙対象の用紙が排紙手段で排紙可能な保管手段に保管される用紙の最上位に位置するよう搬送手段を制御すると共に制御した後に排紙対象の用紙が排紙されるよう排紙手段を制御し、排紙が指示された印刷ジョブの識別情報に対応する保管情報を削除すると共に他の印刷ジョブの識別情報に対応する保管位置情報を更新する。これにより、複数のユーザの数に応じた数の保管手段を用意することなく二つの保管手段を用いて認証されたユーザからの印刷済みの用紙の排紙指示に対応することができる。この結果、印刷装置を大型化することなく複数のユーザからの親展印刷にスムーズに対応することができる。
【0008】
こうした本発明の印刷装置において、前記排紙手段は、前記第1の保管手段に保管されている用紙のみの排紙が可能な手段であり、前記排紙制御手段は、前記第1の保管手段に前記排紙対象の用紙よりも上位に用紙が保管されているときには、該上位に保管されている用紙が前記第2の保管手段に移動するよう前記搬送手段を制御した後に前記排紙対象の用紙が前記第1の保管手段から排紙されるよう前記排紙手段を制御し、該制御した後に前記第2の保管手段に移動した用紙が前記第1の保管手段に戻されるよう前記搬送手段を制御し、前記排紙が指示された印刷ジョブの識別情報に対応する保管位置情報の削除に伴って用紙が前記排紙対象の用紙よりも下位に保管されている印刷ジョブにおける前記保管位置情報を上位側に繰り上げることにより更新する手段であるものとすることもできる。こうすれば、二つの保管手段にそれぞれ排紙手段を設ける必要がなく印刷装置をよりコンパクトなものとすることができる。
【0009】
また、本発明の印刷装置において、前記印刷制御手段は、前記保管位置情報として印刷ジョブ毎に自身よりも上位の印刷ジョブの印刷枚数を積算することにより上位側用紙枚数を演算して前記記憶手段に記憶し、前記排紙が指示された印刷ジョブの識別情報に対応する上位側用紙枚数の数だけ前記第2の保管手段に移動するよう前記搬送手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、上位側用紙枚数の数だけ用紙を移動させれば排紙対象が保管手段の最上位となるので、処理が容易となる。
【0010】
さらに、本発明の印刷装置において、前記搬送手段は、反転を伴って用紙を搬送する手段であり、前記排紙手段は、反転を伴わずに前記排紙対象の用紙を排紙する手段であるものとすることもできる。こうすれば、排紙時に反転する必要がないので、よりスムーズに排紙することができる。この態様の本発明の印刷装置において、前記印刷手段は、給紙された用紙に対して両面印刷を実行可能な手段であり、前記印刷制御手段は、両面印刷指示を伴って前記印刷ジョブを受け付けたとき、前記保管手段に保管される用紙が偶数ページが下で奇数ページが上になると共に偶数ページまたは奇数ページのいずれか一方に着目したときにページ数の小さいものから順に重ねられるよう前記印刷手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、保管手段に保管された用紙が排紙手段によって排紙されたときに、ページの並び順を整列したものとすることができる。
【0011】
本発明のプログラムは、コンピュータを上述した印刷装置として機能させることを要旨とする。したがって、本発明の印刷装置が奏する効果、例えば、インデックス画像におけるユーザの画像の検索性を向上させることができる効果などを奏することができる。なお、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の印刷装置の一実施形態であるレーザプリンタ10の構成の概略を示すブロック図であり、図2は、レーザプリンタ10の内部の部分的な構成の概略を示す構成図である。
【0013】
本実施形態のレーザプリンタ10は、図1および図2に示すように、装置全体の制御を司るコントローラ20と、ネットワーク90(例えば、ローカルエリアネットワークなどの電気通信回線網)に接続された複数のコンピュータ92A〜92Eとデータの入出力を司るネットワークボード26と、プリンタ機能を実現するプリンタ機構31やこのプリンタ機構31を制御するプリンタASIC32を含んで構成されるプリンタ部30と、レーザプリンタ10の内部に外部からアクセスできないよう構成されプリンタ部30で印刷された印刷済みの用紙p(以下、単に用紙pという)を保管する第1トレイ40および第2トレイ50と、第1トレイ40および第2トレイ50の間で一方に保管されている用紙pを取り出して他方に搬送する搬送機構60と、第1トレイ40から用紙pを取り出してレーザプリンタ10の外部に構成された図示しない排紙トレイに排紙する排紙機構70と、ユーザによる指示の入力や各種情報の表示を行なう操作パネル80とを備えている。
【0014】
コントローラ20は、CPU21を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムなどを記憶したROM22と、一時的にデータを記憶するRAM23と、電気的に書き換え可能で電源を切ってもデータは保持されるフラッシュメモリ24と、印刷ジョブを保存するジョブメモリ25とを備えている。このコントローラ20は、バス29を介してプリンタASIC32や搬送機構60,排紙機構70,操作パネル80と電気的に接続され、プリンタASIC32や搬送機構60,排紙機構70からの各種動作信号や操作パネル80のボタン類84の操作に応じて発生する操作信号を入力したり、プリンタASIC32への印刷指令信号や搬送機構60,排紙機構70への動作指令信号、操作パネル80の表示部82への表示指令信号を出力したりする。なお、「ASIC」は、Application Specific Integrated Circuitの略である。
【0015】
プリンタ部30は、プリンタ機構31とプリンタASIC32と図示しない両面印刷ユニットとを備えている。このプリンタ機構31は、単一感光体方式と中間転写方式とを採用したフルカラーの電子写真方式のプリンタ機構として構成され、シアン(C),マゼンタ(M),イエロ(Y),ブラック(K)の4色に色分解された各色ごとの画像の静電潜像が図示しない帯電・露光器によりその上に形成される感光体33と、装着された各色のトナーカートリッジ34C,34M,34Y,34Kから供給される各色のトナーを用いて感光体33上に形成された静電潜像をトナー像として現像する現像器34と、現像したトナー像を重ね合わせるよう一次転写する中間転写体としての転写ベルト35と、図示しない搬送ユニットにより搬送された用紙に転写ベルト35上に形成された4色のトナー像を二次転写する二次転写ユニット36と、用紙上に転写された4色のトナー像を用紙に溶融し定着させる定着ユニット37と、用紙pを排紙トレイ側に搬送する経路38aと第1トレイ40側に搬送する経路38bとを切り替える経路切替部38と、経路38a上に配置された複数の搬送ローラ39を備えている。また、プリンタASIC32は、プリンタ機構31を制御する機能を備えたICチップであり、ジョブメモリ25内の印刷ジョブを1ページごとにビットマップイメージに展開した展開データが用紙に印刷されるようにプリンタ機構31を制御する。また、両面印刷ユニットは、印刷ジョブに両面印刷指示が含まれるときに、プリンタ機構31により一方の面が印刷された用紙を他方の面が印刷されるよう反転してから再びプリンタ機構に給紙できるよう構成されている。
【0016】
第1トレイ40は、前方にプリンタ機構31側から用紙pが出入りする用紙出入り口41aと後方に排紙トレイ側に用紙pが排紙される用紙排出口41bとが形成され用紙pを収容可能な収容部41と、収容部41の後方側の底面に一端を支点として回動可能に支持されて用紙pが載置される載置板42と、載置板42の両側面から載置板42の回動方向に対して直交する方向に突出し載置板42の回動に伴って円弧状に移動するピン43と、ピン43が移動可能に挿入されピン43の移動軌跡に合わせて屈曲した長孔46aが形成されて載置板42の両側に配置された扇形状のプレート46と、一端を支点とする載置板42の他端側を上方に付勢するスプリング47と、収容部41の用紙排出口41bを開閉可能な平板状の蓋部材48とを備えている。プレート46は、扇形状の円弧の中心近傍に設けられた回転軸46aが図示しないモータに接続され、回転軸46aを中心として回動可能となっている。このため、プレート46が長孔46aの縁でピン43を下方に押し下げるときには載置板42はスプリング47の付勢に抗して収容部41の底面に押し付けられ、ピン43への押し下げを解除したときには長孔46aの範囲内でピン43の自由移動を許容して載置板42はスプリング47の付勢力により上方に押し出される。このスプリング47の付勢力により押し出された載置板42は、載置されている用紙pが搬送機構60の搬出ローラ62に当接する位置で停止する。蓋部材48は、平板状の一端に形成された回転軸48aが図示しないモータに接続され、回転軸48aを中心として回動可能となっている。蓋部材48は収容部41の底面と略垂直とされたときには用紙排出口41bを塞ぎ、収容部41の底面と略水平とされたときには用紙排出口41bを開放して排紙手段70による用紙pの排紙を可能とする。また、第2トレイ50は、第1トレイ40の下方に配置され、収容部51が排紙トレイ側に開放されていない以外は第1トレイ40と同様の構成であり、その説明を省略する。
【0017】
搬送機構60は、第1トレイ40の用紙出入り口41aと第2トレイ50の用紙出入り口51aとを結ぶトレイ間搬送経路61と、トレイ間搬送経路61上に配置され正逆両方向に回転可能な搬送用モータからの動力がベルトにより伝達されて回転駆動するトレイ間搬送ローラ62と、第1トレイ40の収容部41の上部の前方側に取り付けられ載置板42上の用紙pを取り出す取出ローラ64と、第2トレイ50の収容部51の上部の前方側に取り付けられ載置板51上の用紙pを取り出す取出ローラ66と、用紙pがトレイ間で搬送されないときにはプリンタ部31側から第1トレイ40に繋がる経路を開放し用紙pがトレイ間で搬送される搬送処理がなされるときにはその経路を遮断する経路遮断部68とを備えている。取出用ローラ64,66は、図示しない取出用モータからの動力がベルトによって伝達されることにより回転駆動される。搬送機構60による搬送処理は、第1トレイ40から第2トレイ50に用紙pを搬送する場合は、スプリング57の付勢力により載置板42上の用紙pを取出用ローラ64に押し付けると共に第2トレイ50の載置板52を収容部51の底面に押し付けてから、取出用ローラ64を回転させると共にトレイ間搬送ローラ62を用紙pを下方に送る方向に回転させることにより行なわれる。このとき、載置板42に最上位に重ねられている用紙pから順に第2トレイ50に搬送され、用紙pはトレイ間搬送経路61を通る間にその上下面が反転される。なお、第2トレイ50から第1トレイ40への用紙pの搬送処理についても同様である。
【0018】
排紙機構70は、第1トレイ40の収容部41の上部の後方側に取り付けられ載置板42上の用紙pを排紙トレイに排紙するために取り出す排紙用取出ローラ72と、用紙pを排紙トレイまで搬送する複数の排紙用搬送ローラ74とを備えている。排紙用取出ローラ72と排紙用搬送ローラ74は、図示しない排紙用モータからの動力がベルトによって伝達されることにより回転駆動される。排紙用取出ローラ72は、図示しない昇降機構により昇降し、排紙するときに用紙pに押し付けられる位置まで下降される。排紙機構70による排紙処理は、載置板42を収容部41の底面に押し付けて蓋部材48により用紙排出口41bを開放させ且つ排紙用取出ローラ72を用紙pに押し付ける位置まで下降させてから、排紙用取出ローラ72と排紙用搬送ローラ74とを回転させることにより行なわれる。このとき、載置板42に最上位に重ねられている用紙pから順に反転されることなくそのまま排紙される。
【0019】
操作パネル80は、表示部82とボタン類84とを備える。表示部82は、液晶ディスプレイであり、選択可能なメニューを表示するメニュー画面や各種選択設定を行なう操作画面などが表示される。ボタン類84は、ユーザからの指示を入力可能なテンキーやカーソルキー,OKボタンなどの各種の入力ボタンを備えている。
【0020】
次に、こうして構成された本実施形態のレーザプリンタ10の動作、特に、印刷時や第1トレイ40に保管された用紙pの排紙時の動作について説明する。まず、印刷時の動作について説明する。図3は、コントローラ20により実行される印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、ネットワーク90に接続されたコンピュータ92A〜92Eから印刷ジョブを受信したときに実行される。
【0021】
印刷処理ルーチンが実行されると、コントローラ20のCPU21は、まず、印刷ジョブを入力し(ステップS100)、入力した印刷ジョブに親展印刷指示が含まれるか否かを判定する(ステップS110)。親展印刷指示は、ユーザ認証されない限り用紙pを取得できないよう指示するものであり、ユーザIDやユーザが予め設定したパスワードなども含まれる。なお、入力した印刷ジョブはジョブメモリ25に格納される。親展印刷指示がないときには、プリンタASIC32に用紙pを排紙トレイに排紙する搬送経路に切り替える切替指示を送信すると共に(ステップS120)、印刷ジョブに基づいて通常時の印刷処理を実行する印刷指令を送信して(ステップS130)、本ルーチンを終了する。
【0022】
一方、ステップS110で親展印刷指示があると判定したときには、プリンタASIC32に用紙pを第1トレイ40に保管する搬送経路に切り替える切替指示を送信すると共に(ステップS140)、親展印刷時の印刷処理を実行する印刷指令を送信する(ステップS150)。通常時と親展印刷時との印刷処理の違いについては後述する。印刷指令を送信すると、印刷ジョブや親展印刷指示からユーザIDやパスワード、印刷枚数nなどの情報を入力し(ステップS160)、入力した情報を保管リストに登録する(ステップS170)。この保管リストの一例を図4に示す。図示するように、本実施例ではフラッシュメモリ24に記憶するものとし、保管トレイNo(本実施例では第1トレイ)やユーザID,パスワード,枚数n,退避枚数kが印刷ジョブ毎に付された管理番号と共に登録されている。保管リスト24aでは、新たに印刷された用紙pが重ねて保管される第1トレイ40と同様に新たに登録するものほど上位に登録するものとした。ここで、退避枚数kとは、印刷ジョブ毎に自身の用紙pに重ねて保管されている他の印刷ジョブの用紙pの累積枚数であり、退避枚数kが値0のときにはその印刷ジョブの用紙pが最上位に位置することを示し、値0以外のときには退避枚数kに相当する枚数の用紙を第2トレイ50に搬送することによりその印刷ジョブの用紙pが最上位の位置となることを示している。入力した情報を登録すると、既に保管リストに登録されている下位の対象があるか否かを判定し(ステップS180)、下位の対象があるときには最も管理番号の大きなものを更新対象に選定し(ステップS190)、登録されている更新対象の退避枚数kに新たに保管した用紙pの枚数nを加えた値を新たな退避枚数kとして更新する(ステップS200)。例えば、図4の保管リスト24aでは、管理番号5が登録されるまでは管理番号4の退避枚数kは値0であるが、管理番号5が登録されると管理番号4の退避枚数kは元の値0に管理番号5の枚数nの値3を加えた値3に更新される。こうして下位の対象がなくなるまで退避枚数kの更新処理を行なってから、本ルーチンを終了する。
【0023】
ここで、通常印刷時と親展印刷時との印刷処理の違いについて両面印刷処理を例として説明する。図5は、親展印刷時の両面印刷処理の一例を示すフローチャートである。この処理では、まず、印刷対象値Nに値1を設定し(ステップS300)、N枚目(ここでは1枚目)の用紙Pをプリンタ機構31に給紙する(ステップS310)。次に、N枚目の用紙Pの表面に2Nページ目の展開データを印刷し(ステップS320)、用紙Pを反転してから(ステップS330)、用紙Pの裏面に(2N−1)ページ目の展開データを印刷する(ステップS340)。ここで、用紙の表裏は、例えば、図2の用紙p中の左側の面を表面、右側の面を裏面とする。印刷すると、用紙pを第1トレイ40へ保管して(ステップS350)、印刷対象値Nを値1だけインクリメントして(ステップS360)、印刷対象値Nが印刷ジョブの枚数nを超えるまで(ステップS370)、ステップS310以降の処理を繰り返してから本ルーチンを終了する。一方、通常印刷時の両面印刷処理では、ステップS320でN枚目の用紙Pの表面に(2N−1)ページ目の展開データを印刷し、ステップS340でN枚目の用紙Pの裏面に2Nページ目の展開データを印刷し、ステップS350で用紙pを排紙トレイに直接排紙する。このように、通常印刷時と親展印刷時とで印刷順を変えて表面と裏面に印刷されるページが異なるようにしている。トレイに搬送された用紙pの並び順を図6に示す。図6では、3枚の用紙Pに計6ページの両面印刷がなされた場合を例示し、図6(a)に通常印刷時,図6(b)に親展印刷時,図6(c)に比較例として通常印刷時と同じ印刷順で印刷した用紙pを第1トレイ40に保管した様子を示す。通常印刷時には、奇数ページが下で偶数ページが上になると共に下方からページ順が整列した状態で排紙トレイに排紙される。一方、親展印刷時には、通常時と印刷順が異なるため、第1トレイ40に保管された状態では奇数ページが上で偶数ページが下となってページ順が整列した状態とはならない。しかし、第1トレイ40から排紙トレイに排紙したときには、前述したように、最上位の用紙pから反転することなく排紙するため、奇数ページが上で偶数ページが下になると共に上方からページ順が整列した状態で排紙トレイに排紙される。これに対して、比較例では、第1トレイ40に保管された状態ではページ順が整列するものの排紙トレイに排紙された状態ではページ順が整列した状態とはならない。このように、親展印刷時においては、第1トレイ40に一時的に保管した後の排紙トレイに排紙されたときにページ順が整列した状態となるよう通常印刷時と印刷順を変更するのである。
【0024】
次に、第1トレイ40に保管された用紙pの排紙処理について説明する。図7は、コントローラ20により実行される親展印刷排紙処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、ユーザによるボタン類84の操作により、表示部82に表示されたメニューから親展印刷排紙処理が選択されたときに実行される。また、第1トレイ40と第2トレイ50の間の用紙pの移動の一例を図8に示す。図8では、前述の両面印刷の場合を例示し、図中四角で囲んだ数字は保管リスト24aの管理番号を示し管理番号1,2の用紙pについては図示を省略した。親展印刷排紙処理ルーチンが実行されると、コントローラ20のCPU21は、まず、ユーザにユーザIDとパスワードの入力を促す図示しない認証画面を表示部82に表示し(ステップS400)、入力操作がなされると(ステップS410)、ユーザ認証を行なう(ステップS420)。ユーザ認証は、入力されたユーザIDおよびパスワードと保管リストに登録されたユーザIDおよびパスワードとが一致するか否かを判定することにより行なわれる。認証できないときには、図示しないエラー画面を表示して(ステップS430)、再びステップS400に戻る。なお、入力エラーが複数回繰り返されたときには、本ルーチンを終了する。
【0025】
一方、ステップS420で認証できたときには、ユーザIDおよびパスワードが一致した管理番号を排紙対象に選定すると共に(ステップS440)、排紙対象の用紙枚数nと退避枚数kを入力し(ステップS450)、退避枚数kが値0であるか否かを判定する(ステップS460)。枚数kが値0でない、即ち排紙対象の上に他の用紙pが重ねられているときには、退避枚数kに相当する枚数の用紙pを第2トレイ50へ搬送して退避させる搬送処理を実行する(ステップS470,図8(b)参照)。いま、管理番号4を排紙対象とすると、管理番号5の用紙pが第2トレイ50に搬送される。このとき、用紙pは反転を伴って搬送されるため、第2トレイ50における用紙pの並び順は第1トレイ40とは逆になる。搬送処理を実行すると、排紙対象のn枚の用紙pを排紙する排紙処理を実行する(ステップS480,図8(c)参照)。これにより、複数のユーザの親展印刷指示を伴った用紙pが第1トレイ40に一括して保管されているときでも、排紙対象の上に保管されている用紙pを第2トレイ50に搬送して退避させてから排紙対象の用紙pを排紙することができる。排紙処理を実行すると、第2トレイ50内のk枚の用紙pを第1トレイ40に戻す搬送処理を実行する(ステップS490,図8(d)参照)。このとき、用紙pは反転を伴って搬送されるため、元の並び順と同じ順で第1トレイ40に保管される。このように、トレイ間の搬送処理を繰り返しても第1トレイ40内の並び順が変化しないよう反転を伴って搬送するのである。一方、ステップS460で枚数kが値0、即ち排紙対象が最上位のときには、そのまま排紙処理を実行する(ステップS480)。なお、排紙処理は用紙pの反転を伴わないので速やかに排紙トレイに排紙することができる。
【0026】
次に、保管リストから排紙対象のデータを削除して(ステップS500)、保管リスト中に排紙対象よりも下位の対象があるか否かを判定する(ステップS510)。対象があるときには、下位の対象のうち最も管理番号の大きなものを更新対象に選定し(ステップS520)、登録されている更新対象の退避枚数kから排紙対象の枚数nを減じた値を新たな退避枚数kとして更新する(ステップS530)。管理番号4が排紙対象のときには、それよりも下位の管理番号1〜3の退避枚数kが更新され、例えば、管理番号3の退避枚数kは、元の値5から管理番号4の枚数2を減じた値3に更新される。こうして下位の対象がなくなるまで退避枚数kの更新処理を行なってから、本ルーチンを終了する。
【0027】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。第1トレイ40が「第1の保管手段」に相当し、第2トレイ50が「第2の保管手段」に相当し、プリンタ機構31が「印刷手段」に相当し、搬送機構60が「搬送手段」に相当し、排紙機構70が「排紙手段」に相当し、フラッシュメモリ24が「記憶手段」に相当し、図3の印刷処理ルーチンのステップS100〜110,S140〜200の処理および図5の親展印刷時両面印刷処理を実行するコントローラ20やプリンタASIC32が「印刷制御手段」に相当し、図8の親展印刷排紙処理ルーチンを実行するコントローラ20が「排紙制御手段」に相当する。
【0028】
以上説明した本実施形態のレーザプリンタ10によれば、レーザプリンタ10の内部に二つの内部トレイとして第1トレイ40と第2トレイ50とを配置して親展印刷がなされた用紙pを第1トレイ40に保管しておき、用紙pの排紙指示がなされたときに排紙対象の用紙に重ねて保管されている他の用紙の累積枚数である退避枚数kが値0でなければ他の用紙pを第2トレイ50に搬送して退避させてから排紙対象の用紙pを排紙し、退避枚数kが値であればそのまま排紙するから、二つの内部トレイとして第1トレイ40と第2トレイ50とを用いて複数のユーザからの親展印刷にスムーズに対応することができる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0030】
上述した実施形態では、第1トレイ40から第2トレイ50に搬送された用紙pを排紙後に第1トレイ40に戻すものとしたが、次回の排紙指示があるまでそのまま第2トレイ50に保管しておくものとしてもよい。その場合、第2トレイ50に保管されている用紙pについて、保管リストにおけるトレイNoを第2トレイとすると共に第2トレイ50における退避枚数kを登録するものとすればよい。
【0031】
上述した実施形態では、第1トレイ40からのみ排紙可能としたが、両方のトレイから排紙可能としてもよい。この場合、第2トレイ50に保管されている用紙pについて、保管リストにおけるトレイNoを第2トレイとすると共に第2トレイ50における退避枚数kを登録しておき、排紙対象の用紙pを保管されているトレイ内で最上位としてから排紙するものとすればよい。
【0032】
上述した実施形態では、保管リスト24aに退避枚数kを登録するものとしたが、登録しないものとしてもよい。この場合、例えば、新たな用紙pが第1トレイ40に保管されるたびに第1トレイ40内における順位を更新しておき排紙指示がなされたときに排紙対象よりも上位の順位のものの用紙の枚数nを積算して退避が必要な用紙の枚数を求めて第2トレイ50に搬送するものとしてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、パスワードによりユーザ認証を行なうものとしたが、パスワードに代えて指紋などの生体情報を用いてユーザ認証を行なうものとしてもよい。この場合、例えば、レーザプリンタ10に指紋の読み取りや指紋の一致を判定可能な指紋読取装置を備えると共に予め各ユーザの指紋をユーザIDと関連付けてフラッシュメモリ24などに登録しておき、指紋読取装置で読み取った指紋が登録されている指紋と一致すると判定されたときにユーザ認証できたものとすればよい。
【0034】
上述した実施形態では、印刷処理として両面印刷処理を例示したが、片面印刷処理であってもよい。
【0035】
本実施形態では、本発明の印刷装置を印刷機能のみを備えるレーザプリンタに具体化した例を示したが、スキャナ機能などを備えたプリンタとしてもよいし、インクジェットプリンタなどに本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】レーザプリンタ10の構成の概略を示すブロック図。
【図2】レーザプリンタ10の内部の部分的な構成の概略を示す構成図。
【図3】印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図4】保管リストの一例を示す説明図。
【図5】親展印刷時の両面印刷処理の一例を示すフローチャート。
【図6】トレイに搬送された用紙pの並び順を示す説明図。
【図7】親展印刷排紙処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図8】第1トレイ40と第2トレイ50の間の用紙pの移動の一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0037】
10 レーザプリンタ、20 コントローラ、21 CPU、22 ROM、23 RAM、24 フラッシュメモリ、25 ジョブメモリ、26 ネットワークボード、29 バス、30 プリンタ部、31 プリンタ機構、32 プリンタASIC、33 感光体、34 現像器、34C,34M,34Y,34K トナーカートリッジ、35 転写ベルト、36 二次転写ユニット、37 定着ユニット、38 経路切替部、39 搬送ローラ、40 第1トレイ、41,51 収容部、41a,51a 用紙出入り口、41b 用紙排出口、42,52 載置板、43,53 ピン、46,56 プレート、46a,56a 回転軸、46b,56b 長孔、47,57 スプリング、48 蓋部材、48a 回転軸、50 第2トレイ、60 搬送機構、61 トレイ間搬送経路、62 トレイ間搬送ローラ、64,66 取出ローラ、68 経路遮断部、70 排紙機構、72 排紙用取出ローラ、74 排紙用搬送ローラ、80 操作パネル、82 表示部、84 ボタン類、90 ネットワーク、92A,92B,92C,92D,92E コンピュータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信が可能に接続されたユーザ端末から印刷ジョブを受け付けて印刷を実行する印刷装置であって、
装置内部に印刷済みの用紙を保管する第1および第2の保管手段からなる二つの保管手段と、
給紙された用紙に対して印刷を実行すると共に印刷済みの用紙が前記第1の保管手段に保管済みの用紙に重ねて保管されるよう搬送する印刷手段と、
前記第1の保管手段に保管されている用紙を最上位の用紙から取り出すと共に前記第2の保管手段に保管済みの用紙に重ねて保管されるよう搬送し、前記第2の保管手段に保管されている用紙を最上位の用紙から取り出すと共に前記第1の保管手段に保管済みの用紙に重ねて保管されるよう搬送する搬送手段と、
前記二つの保管手段のうちの少なくとも一方に保管されている用紙を最上位の用紙から取り出して排紙する排紙手段と、
データを記憶する記憶手段と、
前記印刷ジョブが受け付けられたとき、該受け付けられた印刷ジョブに基づいて印刷が実行されて前記第1の保管手段に保管されるよう前記印刷手段を制御し、前記受け付けられた印刷ジョブで指定された印刷枚数と保管済みの用紙の枚数とに基づく保管位置情報を該印刷ジョブの識別情報と関連付けて保管情報として前記記憶手段に記憶する印刷制御手段と、
前記印刷ジョブの識別情報を用いた認証を伴って印刷済みの用紙の排紙が指示されたとき、該識別情報に基づいて前記記憶されている保管情報から保管位置情報を取得し、該取得した保管位置情報に基づいて排紙対象の用紙が前記排紙手段で排紙可能な保管手段に保管される用紙の最上位に位置するよう前記搬送手段を制御すると共に該制御した後に前記排紙対象の用紙が排紙されるよう前記排紙手段を制御し、前記排紙が指示された印刷ジョブの識別情報に対応する保管情報を削除すると共に他の印刷ジョブの識別情報に対応する前記保管位置情報を更新する排紙制御手段と
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記排紙手段は、前記第1の保管手段に保管されている用紙のみの排紙が可能な手段であり、
前記排紙制御手段は、前記第1の保管手段に前記排紙対象の用紙よりも上位に用紙が保管されているときには、該上位に保管されている用紙が前記第2の保管手段に移動するよう前記搬送手段を制御した後に前記排紙対象の用紙が前記第1の保管手段から排紙されるよう前記排紙手段を制御し、該制御した後に前記第2の保管手段に移動した用紙が前記第1の保管手段に戻されるよう前記搬送手段を制御し、前記排紙が指示された印刷ジョブの識別情報に対応する保管位置情報の削除に伴って用紙が前記排紙対象の用紙よりも下位に保管されている印刷ジョブにおける前記保管位置情報を上位側に繰り上げることにより更新する手段である
印刷装置。
【請求項3】
前記印刷制御手段は、前記保管位置情報として印刷ジョブ毎に自身よりも上位の印刷ジョブの印刷枚数を積算することにより上位側用紙枚数を演算して前記記憶手段に記憶し、前記排紙が指示された印刷ジョブの識別情報に対応する上位側用紙枚数の数だけ前記第2の保管手段に移動するよう前記搬送手段を制御する手段である請求項1または2記載の印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の印刷装置であって、
前記搬送手段は、反転を伴って用紙を搬送する手段であり、
前記排紙手段は、反転を伴わずに前記排紙対象の用紙を排紙する手段である
印刷装置。
【請求項5】
請求項4記載の印刷装置であって、
前記印刷手段は、給紙された用紙に対して両面印刷を実行可能な手段であり、
前記印刷制御手段は、両面印刷指示を伴って前記印刷ジョブを受け付けたとき、前記保管手段に保管される用紙が偶数ページが下で奇数ページが上になると共に偶数ページまたは奇数ページのいずれか一方に着目したときにページ数の小さいものから順に重ねられるよう前記印刷手段を制御する手段である
印刷装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1ないし5いずれか1項に記載の印刷装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−128148(P2010−128148A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302291(P2008−302291)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】