説明

印刷装置および中間転写印刷方法

【課題】規格外の印刷媒体を誤挿入されたことを検知可能にし、それに応じた処理を行う
印刷装置および中間転写印刷方法を提供する。
【解決手段】転写位置出しセンサ307と残留検知センサ1304のセンサ間距離は、A
タイプシールの全長より長く、且つ、Bタイプシールの全長より短く配置している。即ち
、センサ間距離=N、Aタイプシールの全長=L、Bタイプシールの全長=Mとすると、
L<N<Mの関係を満たすように各センサを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体の種別検出機能を備えた印刷装置および中間転写印刷方法に関する

【背景技術】
【0002】
印刷装置では、それぞれ印刷媒体に応じて搬送、印刷、排出等の制御が行われているが
、個人情報等の各種のセキュリティ情報を印刷する印刷装置は、その性質上、印刷装置に
対して1つの決まった印刷媒体を用いている。そのため、その印刷装置が対応していない
印刷媒体が誤挿入された場合には、高価な印刷媒体、インクリボン、転写リボン等を無駄
に消費してしまうことになる。
【0003】
その媒体に合った印刷情報やセキュリティ情報を印刷する冊子類やカード、シール状の
印刷物において、所持人情報などの固有記載情報が印刷された印刷物のセキュリティの確
保は重要性であるため、印刷媒体そのもの自体にセキュリティ情報を埋め込んでいるもの
が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−306321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、1つの印刷装置でセキュリティ情報をもった複数の印刷媒体を取扱うことへ
の対応が望まれている。ところが、複数の印刷媒体を扱う印刷装置では、印刷媒体それぞ
れに印刷される印刷情報は異なる場合が殆どである。本来、印刷装置に設定されている印
刷情報と異なる印刷媒体を誤って挿入した場合、誤った印刷情報を印刷媒体に施してしま
うため、高価な印刷媒体およびインクリボン、転写リボン等を浪費することとなり、シス
テム運用上のコスト面で問題となってしまう。
【0005】
また、バッチ処理等で大量の印刷物を作成する場合、誤った印刷媒体をセットした場合
、大量の不良印刷物を生成してしまう可能性もあり、これもコスト面で問題となる。
【0006】
そこで本発明では、規格外の印刷媒体が誤挿入されたことを検知可能な印刷装置および
中間転写印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、印刷媒体を取り込む取り込み部と、前記取り込んだ印刷媒体
の種別を判別する判別部と、中間転写媒体に、情報を印刷する印刷部と、この印刷部によ
り前記中間転写媒体に印刷された情報を、前記印刷媒体に転写する転写部と、前記判別部
で判別した印刷媒体が正規のものでない場合には、前記印刷媒体の前記転写部への搬送を
行なわないと共に、前記印刷部での印刷動作を開始しないように制御する制御部と、を備
えることを特徴とする印刷装置が提供される。
【0008】
本発明の別の一態様によれば、上位の制御機器で印刷媒体及び印刷情報を設定し、取り
込んだ前記印刷媒体の種別を判定し、前記印刷媒体が設定されたものである場合には、中
間転写媒体に印刷した印刷情報を前記印刷媒体に転写し、前記印刷媒体が設定されたもの
でない場合には、中間転写媒体への印刷情報の印刷を行わない、ことを特徴とする中間転
写印刷方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機体内に取込んだ印刷媒体の種別あるいは状態を判別し、印刷設定外
の誤挿入された印刷媒体を検出するので、印刷媒体だけでなく、印刷に使用する部材の無
駄な消耗を未然に防止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、各図において同
一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0011】
本発明の実施形態に係る印刷装置は、中間転写印刷を用いた印刷装置である。中間転写
印刷は、印刷装置全体の小型化のための一つの技術として、サーマルヘッドでインクリボ
ンに熱を与えることにより画像を中間転写ベルト上に重畳的に一次転写し、その後一括し
て転写材に二次転写する方式を使用するものである。
【0012】
この印刷装置は、例えば印刷媒体として見開きの複数のページから成る冊子と単票のシ
ールの2種類を取扱うことが可能である。印刷装置が、どの印刷媒体に対してどのような
印刷を行うかは、印刷装置を制御する例えば上位の制御用PCからのコマンドによって決
定される。
【0013】
図1は、印刷装置100と制御用PC200の制御関係を示すブロック図である。制御
用PC200は、例えば主制御部201、メモリ202、インターフェース部203、操
作パネル204、画像入力部205から構成されている。主制御部201は、内部バス2
06を介してメモリ202、インターフェース部203、操作パネル204、画像入力部
205を制御するとともに、インターフェース部203を介して印刷装置100をも制御
している。
【0014】
メモリ202には印刷装置100全体の駆動を制御するための制御プログラムなどを記
憶している。画像入力部205は、印刷に必要な印刷情報(印刷データとも言う)を取り
込むものであり、例えばカラーの顔画像データが、印刷データに該当する。操作パネル2
04は、例えば、冊子の所持人のセキュリティ文字情報に対応したデータを入力すること
ができる。操作パネル204や画像入力部205で取得された印刷データは、メモリ20
2に一時的に記憶される。
【0015】
印刷装置100は印刷装置制御部101を有し、制御用PC200のインターフェース
部203と接続して印刷データ及び各種の制御用コマンドの授受が行われる。さらに、印
刷装置100は、印刷装置制御部101と内部バス106を介して中間転写画像処理部1
02、ヒータ温度制御部103、媒体搬送制御部104、画像形成制御部105が接続さ
れ、印刷処理に関する一連の処理が制御されるようになっている。
【0016】
中間転写画像処理部102には、サーマルヘッド108を制御するためのヘッド制御部
107が接続されている。ヘッド制御部107は、印刷データに基づいてサーマルヘッド
108の印刷動作を制御する。
【0017】
ヒータ温度制御部103は、ヒータ109と接続し、ヒートローラ(後述する)の芯部
に設置された温度センサ(図示しない)からの出力信号に基づいて、ヒータ109を駆動
して、ヒートローラを所定の温度に維持するように制御する。また、媒体搬送制御部10
4によって、印刷媒体用の取込口に挿入された印刷媒体の取込を行う媒体取込機構110
、取り込んだ印刷媒体の転写位置までの搬送を司る媒体搬送機構111、転写が完了した
印刷媒体の印刷装置外への排出を制御する排出ゲート制御部112が、それぞれ制御され
るように構成されている。また、画像形成制御部105では、転写リボンの搬送を行う転
写リボン搬送機構113、サーマルヘッドの昇降駆動を行うヘッド昇降機構114、ヒー
トローラを回転駆動するヒートローラ回転機構115をそれぞれ制御するように構成され
ている。
【0018】
図2は、印刷装置100の主要部の全体構成を説明するための概念図である。図2に示
すように、印刷装置100は、大別すると、シール取り出し及び媒体判別部300、中間
転写ユニット400、冊子取込及び媒体判別部500から構成されている。シール取り出
し及び媒体判別部300、冊子取込及び媒体判別部500は、上記した媒体搬送制御部1
04によって概ね制御されることになる。また、中間転写ユニット400は、中間転写画
像処理部102、ヒータ温度制御部103、画像形成制御部105によって概ね制御され
ることになる。本印刷装置100では、印刷媒体としてシールと冊子を取り扱うことがで
きる。
【0019】
(シール取り込み、および媒体判別)
まず、単票のシールを印刷媒体として取り扱う場合について説明する。図3は、ホッパ
のシール取り出し機構の動作を説明する図である。単票のシールSは、印刷装置100の
後部に備えられたシールSを収容するためのホッパ301に収容される。本印刷装置10
0では、例えば最大200枚までのシールSを、ホッパ301の上方に形成されている開口
部から収容することができる。ホッパ301には、収容されたシールの昇降動作を行うエ
レベータ機構301aが組み込まれている。図3(a)に示すように、ホッパ301の開
口部近傍にはシール取り出しローラ302が配設されている。ホッパ301に組み込まれ
たエレベータ機構301aによりシールSの束が上方に持ち上げられ、シール取り出しロ
ーラ302との間に挟持されている。
【0020】
シール取り出しローラ302を図中、反時計周りに回転させることによって、シールS
をホッパ301から繰出すことが可能である。
【0021】
このホッパ301によるシールSの自動供給により、制御用PC200からのバッチ処
理の指令にしたがって、例えば最大50枚分のシールSへの転写作業を自動的に実行するこ
とが可能である。
【0022】
シール取出しローラ302の下流、すなわちシールSの搬送方向に、シール分離ローラ
303、第1搬送ローラ305、第2搬送ローラ306が順に並んで、シール搬送路に対
向して配設されている。また、シール分離ローラ303と第1搬送ローラ305との間に
は、シール後端検知センサ304が配設されている。シール分離ローラ303は一対のロ
ーラから成り、上側ローラは図中反時計周り方向に回転駆動され、シールを搬送方向に送
るように回転し、下側ローラは、シールを搬送方向と逆方向に送るように回転駆動される
。詳しくは後述する。第1搬送ローラ305は、一対のローラから成り、シールを挟んで
搬送するので、図中上側の搬送ローラは反時計周り方向に、図中下側の搬送ローラは時計
周り方向に回転するように駆動される。さらに、第2搬送ローラ306の下流には、転写
位置検出センサ307が配設されている。この転写位置検出センサ307は、シール先端
検知センサを兼用している。
【0023】
シール取出しローラ302によって取り出されたシールSは、複数枚が連なっている状
態にあるため、シール分離ローラ303によって1枚ずつ振り分けられ、さらに下流に配
置されている中間転写ユニット400へと搬送される(図3(b)、(c)参照)。シール分
離ローラ303は、例えばEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)を主原料とし
たものが好適である。シールの繰り返し搬送を行っても、高摩擦係数の維持が可能である
と共に耐摩耗性に優れているからである。さらに、シール分離ローラ303の表面を「象
肌仕上げ」すると摩擦が大きくなり、より好適である。シール分離ローラ303の下側の
ローラは、トルクリミッタ(図示しない)を介して駆動系と接続されている。シールSの
重走がない場合はトルクリミッタが摩擦力に負けて搬送方向へと回転し、2枚以上が重な
った場合、シール間の摩擦力がトルクリミッタの力より弱いため、本来の駆動方向である
逆回転で回転することになり、下のシールが戻される方向に搬送されることになる。
【0024】
本実施形態に係る印刷装置100は、複数種類の単票シールSを取り扱うことができる
。それぞれの単票シールSは、サイズも印刷される情報もそれぞれ異なっている。したが
って、上位の制御用PC200等で設定された通りの単票シールSがホッパ301に装填
される場合には問題ないが、設定された以外の単票シールSが装填された場合には、その
単票シールSに印刷されるべきでない印刷情報を印刷して発行してしまう虞がある。バッ
チ処理により自動印刷する際に、誤って設定外の単票シールSの装填に気づかなかった場
合には、例えば50枚もの所定外のシール印刷を行ってしまう。このような場合には、単票
シールSだけでなく、印刷で使用した転写用材料がまったくの無駄になってしまう。
【0025】
そこで、本実施形態に係る印刷装置100では、単票シールSの種別を判別できるよう
にしている。ここでは、Aタイプシール、Bタイプシールの2種類の単票シールSを例に
して説明する。例えば、AタイプシールとBタイプシールは、図4(a)、(b)に示さ
れるようにBタイプシールの搬送方向での全長がAタイプシールの全長よりも長くなって
いる。
【0026】
本実施形態に係る印刷装置100では、シール取り込み後にシールSの長さをチェック
し、シールの種別を判別する。図5は、シールの種別判別を説明する図である。図5に示
すように、ホッパ301から取出され、シール分離ローラ302によって振り分けられた
シールSは第1搬送ローラ305、第2搬送ローラ306によって中間転写ユニット40
0方向へと搬送され、やがてシールSの先端は転写位置検出センサ307に到達する。こ
の時、シール分離ローラ302直後に配置されている、シール後端検知センサ304のス
テータスを確認する。
【0027】
本実施形態に係る印刷装置100では、転写位置検出センサ307とシール後端検知セ
ンサ304のセンサ間距離は、Aタイプシールの全長より長く、且つ、Bタイプシールの
全長より短く配置している。即ち、センサ間距離=N、Aタイプシールの全長=L、Bタ
イプシールの全長=Mとすると、L<N<Mの関係を満たすように各センサを配置してい
る。一例を挙げると、N=117.2mm,L=102mm,M=124mmと設定する。
【0028】
上記のような関係に設定しているので、シールSの先端が転写位置検出センサ307を
「暗」にしたときに、シール後端検知センサ304のステータスが「暗」であればBタイ
プシール、「明」であればAタイプシールであると判定することができる(図5参照)。
【0029】
上位の制御用PC200で設定された単票シールSがBタイプシールであり、実際に装
填された単票シールSがBタイプシールであると判定した場合は、搬送されてきたシール
Sは搬送方向下流の中間転写ユニット400へと搬送されることになる。一方、実際に装
填された単票シールSがAタイプシールと判定された場合は、装填エラーとして以降の印
刷動作自体を停止し、例えばオペレータに誤った印刷媒体がセットされていることを通知
する。この通知方法としては、例えば別途用意したモニタに、誤った印刷媒体がセットさ
れていることを表示させたり、あるいはアラームを鳴動させることもできる。
【0030】
このようにして、ホッパ301から取込まれた単票シールSが、上位の制御用PC20
0で設定された所定のシールであることを判定してから印刷を開始するので、インクリボ
ンや転写リボンの無駄な消費を抑えることができる。
【0031】
(冊子取込み、および媒体判別)
次に、冊子を印刷媒体として取り扱う場合について説明する。
【0032】
本実施形態に係る印刷装置は、単票シールのほかに冊子類の印刷も可能である。冊子は
、搬送路を介してホッパ301と逆側に備えられた冊子挿入口から、オペレータによって
印刷対象ページを開かれた状態で挿入され、印刷装置内に取込まれる。誤って、印刷対象
ページが開かれずに挿入され、印刷が実行された場合には、インクリボンや転写リボンの
無駄な消費が発生する。
【0033】
そこで、本実施形態に係る印刷装置100では、挿入口から挿入された冊子の長さも検
出できる機能も実装している。
【0034】
図6は、冊子Pの長さ検出の動作を説明する図である。図6に示すように、挿入口501
から印刷対象ページを開いた状態で冊子Pを挿入すると、挿入口501近傍に配設された
取込みローラ503で、装置内に取り込まれる。搬送方向下流に向かって、取込みローラ
503、第3搬送ローラ505、第4搬送ローラ506が、搬送路に沿って順に並んで配
設されている。取込みローラ503と第3搬送ローラ505との間には、搬送路に対向し
て1組の冊子検知センサ504が、配設されている。この冊子検知センサ504は、例え
ば、フォトセンサで構成することができる。
【0035】
図7は、冊子Pの長さを説明する図である。ここで、搬送方向に向かって見開き状態の
冊子の長さ=D、閉じた冊子の長さ=Eとした場合、本印刷装置においては、前述のL、
Mとの関係を、以下のように設定している。
【0036】
E<L<M<D
一例を挙げると、D=176mm、E=88mmと設定する。
【0037】
上記のような関係に設定しているので、挿入口501から挿入された冊子Pの長さがD
より短いと判定される場合は、本来挿入されるべき見開き状態の冊子Pでないことが分か
る(図7参照)。
【0038】
図6に示すように、見開き状態の冊子Pは取込みローラ503によって一定の搬送速度
で搬送され(図6(a))、まず冊子Pの先端が冊子検知センサ504に到達する(図6
(b))。冊子検知センサ504のステータスが「暗」になったら不図示のソフトウェア
タイマカウンタを起動し、タイマカウンタのカウントアップを開始する。その後、一定の
速度で冊子Pが搬送され、冊子P後端が冊子検知センサ504を抜け、「明」になった段
階でソフトウェアタイマカウンタのカウント値を記録し、カウントアップを停止する(図
6(c))。
【0039】
この時、冊子搬送速度=V [mm/sec]、タイマカウンタ周期=d [msec]、タイマカウント
値=t [回]とすると、検出した冊子長さQは、
Q=(V×d×t)/1000 [mm]
であることが分かる。一例として、V=100[mm/sec]、タイマカウンタ周期=1[msec]とす
ることにより、理論上0.1[mm]単位での長さの違いを検出できる。
【0040】
冊子Pが開かれた状態で挿入され、冊子の長さが正常と判定された場合には中間転写ユ
ニット400へと搬送される。一方、冊子Pの長さが正常でないと判定される場合には、
シールSと異なり、冊子Pが開かれずに誤って挿入された場合でもエラー終了とならず、
リジェクト搬送が可能となっている。したがって、検出した冊子長さQがDよりも短い場
合、媒体異常として挿入口501にリジェクト搬送することで、オペレータに印刷媒体の
異常を通知することができる。その場合には、オペレータは印刷対象ページを開いて、改
めて冊子Pを挿入することで、インクリボンや転写リボンの無駄な消費を未然に防ぐこと
ができる。尚、印刷装置の印刷パフォーマンスを上げるため、冊子印刷の場合には、転写
リボン上に形成する画像の印刷を、印刷媒体の挿入に先行して行うことが可能である。
【0041】
続いて、印刷媒体であるシールSあるいは冊子Pが正しく取り込まれた以降の中間転写
動作について説明する。ここでは、中間転写フィルムの転写層にホログラムパターンが付
与される実施形態について説明する。
【0042】
(中間転写フィルムの構成)
図8は、中間転写フィルム層401の構成を示す略断面図である。中間転写フィルムは
、基材としてのPETフィルム表面に剥離層としてのフェノキシ系樹脂、透明樹脂によるホ
ログラム形成層と金属化合物の蒸着層による透明ホログラム層、受像層兼接着層としての
ポリエステル系樹脂を積層したものである。
【0043】
中間転写フィルムにこの他、紫外線によって発光する蛍光発色層などの機能層を設けて
、転写対象への転写と同時にこれらの機能層も転写することが可能である。また、「ベー
ス層、剥離層、受像接着層」や、「ベース層、剥離層、保護層、ホログラム層、受像兼接
着層」など異なる構成でもかまわない。
【0044】
(中間転写ユニットの動作説明)
図9は、中間転写ユニット400の構成を示す概念図である。図9に示すように、中間
転写ユニットは機能的に「情報印刷部(印刷部)」と「オーバーコート転写部(転写部)
」に分けることが出来る。
【0045】
「印刷部」では、例えば熱溶融転写印刷方式で、印刷データを印刷する。熱溶融転写印刷
方式は、サーマルヘッド402とプラテンローラ403にはさまれて配置された、中間転
写フィルム401と溶融インクリボン404によって、中間転写フィルム401の受像兼
接着層表面に情報等を印刷する方式である。熱溶融転写方式の特徴として、画像耐久性が
高いこと、インク材料に機能性材料を適用することが比較的容易なこと(例えば蛍光顔料
、アルミ蒸着薄膜)などがあり、偽造防止を目的とする印刷物に適している。
【0046】
溶融インクリボン404のベースフィルム厚やインク層厚は、印刷ドット再現性に極め
て重要なパラメータであり、インクリボン総厚としては3〜25μmが好適であり、望まし
くは4〜10μmである。一方、中間転写フィルム401のベースフィルム厚や受像兼接着
総厚は、接着性や膜切れ特性に影響を与えるパラメータであり、中間転写フィルム401
の総厚は、10〜100μmが好適であり、望ましくは25〜50μmである。
【0047】
プラテンローラ403は、硬質のゴム材料を表面に用いたローラで、ゴム硬度が上がる
ほどに微小ドットの再現性が向上するが、同時に最適なプラテンローラ403とサーマル
ヘッド402の位置関係を得ることが難しくなる。このため、硬度は75度以上が好適であ
り、望ましくは85〜97度である。同時に研磨したゴム表面の表面粗さも、表面平滑性が上
がるほどに微小ドットの再現性が向上する。このため、表面粗さは中心線平均粗さRaで1
μm以下が好適であり、望ましくは0.5μmである。
【0048】
転写フィルムを搬送する駆動力は、一般的にプラテンローラ403に駆動機構を設ける
ことが多いが、上記の硬度と平滑性から中間転写フィルム401とプラテンローラ403
の摩擦係数が上がらず、また安定しない。このため、プラテンローラ403の下流(ヒー
トローラ側)直近に別途フィルム駆動ローラ405を設けることができる。フィルム駆動
ローラとしては、例えば硬度30〜60度のローラを用い、転写フィルムは駆動ローラに対し
て出来るだけ巻付き角が大きいほうが好ましい。したがって、一例として、90°から130
°の巻き付き角をえられるようにテンショナ406を配置するのが好適である。テンショ
ナ406には図示しないバネ機構が設けられ、限られた可動範囲内でフィルムにテンショ
ンを与えて、フィルム駆動ローラ405と転写フィルムが常に適切に接触する状態を作り
出すのが望ましい。フィルム駆動ローラ405の駆動には、例えば、5相ステッピングモ
ータ、タイミングベルト、プーリによる減速機構の組み合わせを採用することにより、正
確な搬送が行われる。
【0049】
また、サーマルヘッド402としては、例えばはニアエッジ、またはコーナエッジタイ
プのヘッドを用い、熱時剥離による印刷、すなわち溶融熱転写記録で,加熱により軟化あ
るいは溶融したインク層が固化しないうちにインクリボンを記録媒体から引きはがすこと
が望ましい。
【0050】
上記のように構成した印刷部の動作は以下のように行われる。
【0051】
i) 中間転写フィルム401のホログラムパターン位置と印刷位置を制御するため、送
り出し側リールから繰り出された中間転写フィルム401のホログラム位置を示すマーク
をホログラム位置マーク検知センサ407によって検知する。マーク検知結果を用いて、
中間転写フィルム401を印刷開始の位置に合致するように制御する。
【0052】
ii) シールSあるいは冊子Pのそれぞれの印刷位置に、固有印刷情報等を印刷する。
冊子に印刷される情報は、Y,M,Cの三原色に加えて黒の4色重ねあわせによるカラー印刷
である。これら複数色の重ね合わせ印刷は、中間転写フィルム401がサーマルヘッド4
02を色数と同じ回数往復することで、重ね合わせ印刷が行われる。また、印刷される情
報は、反転画像であるという特徴がある。尚、印刷色は上記4色に加えて、蛍光顔料を含
んだインクなど機能性インクを付与してもよい。シールに印刷される情報がモノクロ画像
である場合には、Y,M,Cの三原色の印刷は省かれる。
【0053】
「転写部」では、印刷部で印刷情報が付与された中間転写フィルム印刷面(接着層面)
と冊子の対象ページを重ね合わせて、ヒートローラ408による加圧、加熱を行い、印刷
情報と受像兼接着層、ホログラム層の転写を同時に行う。ヒートローラ408は、例えば
DCサーボモータもしくはステッピングモータで駆動する。これにより、正確に一定速度で
駆動可能になっており、回転自由なバックアップローラ409との間にはコイルバネで発
生された圧力がかかるようになっている。
【0054】
上記のように構成した転写部の動作は以下のように行われる。
【0055】
(シールへの転写動作)
図10は、シールへの転写動作を説明するための図であり、図11は、転写動作の模式
図である。
【0056】
i) 中間転写フィルムの該当転写エリアへの印刷完了後、転写フィルムは順方向(ヒー
トローラ方向)に巻き取られ、経路途中に設けられている転写部マーク検知センサ410
によって、転写フィルムの現在位置が把握される。そして、転写開始位置まで転写フィル
ムが送られる(図10(a))。
【0057】
ii) 一方、シールSは、ホッパ301から取り出された後、中間転写ユニット400
方向に搬送され、シールS後端が転写位置出しセンサ307を通過してから規定量だけ搬
送され、ヒートローラ408に対して決められた位置に送られる(図10(b))。
【0058】
iii) 互いに位置決めが行われた中間転写フィルム401とシールSは、円周の一部
が切り欠かれた形状の金属製ヒートローラ408の回転と共に合わされ、搬送と同時に加
圧、加熱される。その後、シールSに対して60°〜110°の角度をもって転写フィルムベ
ースが引き上げられて、印刷情報と受像兼接着層、ホログラム層の転写が完了する(図1
0(c)、図11)。iv) 転写が完了したシールSは、シール排出口507に搬送さ
れる(図10(d))。
【0059】
(冊子への転写動作)
図12は、冊子への転写動作を説明するための図である。
【0060】
i) 中間転写フィルム401の該当転写エリアへの印刷完了後、転写フィルムは順方向
(ヒートローラ方向)に巻き取られ、経路途中の転写部マーク検知センサ410によって
、転写フィルムの現在位置が把握される。そして、転写開始位置まで転写フィルムが送ら
れる(図12(a))。
【0061】
ii) 一方、冊子Pは印刷対象のページが開かれた状態で取り込まれ、冊子Pの先端が
転写位置出しセンサ307に到達するまで搬送される。その後スイッチバックして、転写
位置出しセンサ307の「明」から規定量だけ搬送され、ヒートローラ408に対して決
められた位置に冊子Pが送られる(図12(b))。なお転写されるページは、表紙見返
しページでも、他の中紙ページでもかまわない。
【0062】
iii) 互いに位置決めが行われた中間転写フィルム401と冊子Pの該当ベージは、
円周の一部が切り欠かれた形状の金属製ヒートローラ408の回転と共に合わされ、搬送
と同時に加圧、加熱される。その後、冊子Pに対して60°〜110°の角度をもって転写フ
ィルムベースが引き上げられて、印刷情報と受像兼接着層、ホログラム層の転写が完了す
る(図12(c)、図11)。
【0063】
iv) 転写が完了した冊子Pは、ページが開かれた状態のまま冊子挿入口兼排出口50
1に搬送される(図12(d))。
【0064】
次に、ゲート動作について説明する。
【0065】
転写動作が完了したシールあるいは冊子から成る印刷媒体は、その媒体の種別により、
排出のための搬送路を切り換えるゲート507で振り分けられ、集積もしくは排出される
。ゲート507は、例えばソレノイドの駆動により上下に動作し、それぞれのポジション
をセンサで検出可能とすることができる。例えば、ゲート507の先端が上向きの状態で
冊子の取込み兼排出口501となり、ゲート507の先端が下向きの状態でシールの集積
庫508への排出口507へと切り替わる。
【0066】
転写動作が完了したシールSは、ゲート507により振り分けられ冊子の排出口501
とは異なるシール集積部508に排出、集積される。例えば、シール集積部508には1
バッチ処理で自動的に行われる印刷数の最大枚数分がストック可能に設計するのが好適で
ある。
【0067】
転写動作が完了した冊子Pは、開かれた状態のまま冊子の挿入口501と同じくゲート
502先端が上向き状態になっており、冊子挿入口501にそのまま排出される。
【0068】
開かれない状態の冊子Pが挿入されてリジェクト搬送される場合も同じく、ゲート50
2先端は上向き状態になっており、冊子挿入口501に排出される。
【0069】
本実施形態によれば、複数種のシールあるいは冊子といった印刷媒体が、上位の制御用P
Cで設定された所定のものがセットされたか否かを判定してから印刷を開始するので、イ
ンクリボンや転写リボンの無駄な消費を抑えることができる。
【0070】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱
しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複
数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に
示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に
わたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】印刷装置と制御用PCの制御関係を示すブロック図である。
【図2】印刷装置の主要部の全体構成を説明するための概念図である。
【図3】ホッパのシール取り出し機構の動作を説明する図である。
【図4】印刷装置で取り扱うシールの種別を説明する図である。
【図5】シールの種別判別を説明する図である。
【図6】冊子の長さ検出を説明する図である。
【図7】冊子の長さを説明する図である。
【図8】中間転写フィルム層の構成を示す略断面図である。
【図9】中間転写ユニットの構成を示す概念図である。
【図10】シールへの転写動作を説明するための図である。
【図11】転写動作の模式図である。
【図12】冊子への転写動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0072】
100 印刷装置
200 制御用PC
101 印刷装置制御部
102 中間転写画像処理部
103 ヒータ温度制御部
104 媒体搬送制御部
105 画像形成制御部
301 ホッパ
302 シール取出しローラ
303 シール分離ローラ
304 シール後端検知センサ
305 第1搬送ローラ
306 第2搬送ローラ
307 転写位置検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を取り込む取り込み部と、
前記取り込んだ印刷媒体の種別を判別する判別部と、
中間転写媒体に、情報を印刷する印刷部と、
この印刷部により前記中間転写媒体に印刷された情報を、前記印刷媒体に転写する転写
部と、
前記判別部で判別した印刷媒体が正規のものでない場合には、前記印刷媒体の前記転写
部への搬送を行なわないと共に、前記印刷部での印刷動作を開始しないように制御する制
御部と、を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
異なる種類の印刷媒体にそれぞれ対応した複数の前記判別部を備えたことを特徴とする
請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷媒体は搬送方向の長さの異なる複数種類の単票シールであることを特徴とする請
求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記判別部は、単票シールの搬送方向に沿って配置され、シールの先端を検知するシール
先端検知センサとシールの後端を検知するシール後端検知センサを備えることを特徴とす
る請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
上位の制御機器で印刷媒体及び印刷情報を設定し、
取り込んだ前記印刷媒体の種別を判定し、
前記印刷媒体が設定されたものである場合には、中間転写媒体に印刷した印刷情報を前
記印刷媒体に転写し、
前記印刷媒体が設定されたものでない場合には、中間転写媒体への印刷情報の印刷を行
わない、ことを特徴とする中間転写印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−23353(P2010−23353A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187695(P2008−187695)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】