説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】印刷終了位置がカード後端近傍にあった場合に、サーマルヘッドの落下によって引き出されるインクリボンの弛みを解消し、インクリボンがプラテンローラに巻きついてしまうことのない印刷装置及び印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷装置1は、受信した印刷データの印刷終了位置からカード後端までの距離γと、インクリボンRがカードCから剥離する剥離距離αに応じて設定された距離βとを比較することで、印刷終了位置がカード後端から距離βまでの間にあるか否かを判断する。その結果印刷終了位置がカード後端から距離βまでの間にあると判断された場合は、カードCへの印刷が終了してから少なくとも距離αに距離γを加えた距離だけインクリボンRの巻き取りを行ってからサーマルヘッドを退避位置へ退避させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置に係り、特に、インクリボンを介してサーマルヘッドを圧接してプラテンローラに一面側が支持されたカードに画像を印刷する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクリボンを介してサーマルヘッドを圧接してプラテンローラに一面側が支持された印刷用紙に画像を印刷するものは知られている。上述した印刷装置では、印刷終了後にサーマルヘッドの圧接を解除するとインクリボンが弛み、インクリボンとプラテンローラとが接している状態となる。この状態で印刷用紙の紙送りを行うと、弛んだインクリボンが静電気の影響でプラテンローラに巻きついてしまう場合がある。
【0003】
そこで、この問題を解決するために特許文献1では、複数色の色が面順次に配置されたインクリボンを用いた印刷装置において、インクリボンを巻き取ってインクリボンの弛みを解消し、さらにその後のインクリボンの次色の位置合わせを行う構成を開示している。
【0004】
また上述したような印刷装置には、通常、サーマルヘッドの近傍にインクリボンと印刷用紙(カード)とを剥離させるための剥離板60が設けられている(図10参照)。なお、インクリボンRがカードCから剥離する点を剥離点とし、サーマルヘッド51から剥離点までの距離をαとする。このような印刷装置ではカードCに対する印刷が終了した後、すぐにサーマルヘッド51を上昇させずに、距離α分カードを搬送しながらインクリボンRを巻き取ってから印刷動作を終了する(図11参照)。この構成によると、カードCの全面印刷を行ったときは、カードがサーマルヘッドとプラテンローラとの間を通過すると、サーマルヘッド51がプラテンローラ44に落下してしまう。そこで、サーマルヘッド51が落下した勢いでインクリボンRが供給スプール54から引き出されてしまい、その結果インクリボンRが弛んでしまう(図12参照)。
【0005】
しかし、上述した通り、印刷終了位置(カード後端)から剥離点の位置までカードの搬送とインクリボンの巻き取りを行っているため、その間にインクリボンの弛みは解消される。その後サーマルヘッドを上昇させてインクリボンを巻き取っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−113228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、印刷終了位置がカード後端からαまでの間にある場合は、印刷が終了してから距離α分カードを搬送しながらインクリボンRを巻き取っている途中でカード後端がサーマルヘッド51とプラテンローラ44との間を通過してサーマルヘッド51が落下してしまう。よって、サーマルヘッド51が落下した直後(図14の状態)に印刷動作が終了すると、インクリボンRの弛みが残ったままサーマルヘッド51が上昇し、その後プラテンローラ44を回転させるとインクリボンRがプラテンローラ44に巻きついてエラーを起こしてしまう(図16参照)。
【0008】
本発明は上記事案に鑑み、印刷終了位置がカード後端近傍にあった場合に、サーマルヘッドの落下によって引き出されるインクリボンの弛みを解消し、インクリボンがプラテンローラに巻きついてしまうことのない印刷装置及び印刷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、受信した印刷データの印刷終了位置からカード後端までの距離γと、インクリボンRがカードCから剥離する剥離距離αに応じて設定された距離βとを比較することで、印刷終了位置がカード後端から距離βまでの間にあるか否かを判断している。その結果印刷終了位置がカード後端から距離βまでの間にあると判断された場合は、インクリボンの巻取りを制御する制御手段は、カードへの印刷が終了してから少なくとも距離αに距離γを加えた距離だけインクリボンの巻き取りを行ってからサーマルヘッドを退避位置へ移動させるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、印刷媒体への印刷が終了してからインクリボンの剥離のために距離αカードCを搬送している間にサーマルヘッドが落下することによって一度インクリボンRが弛んでも、インクリボンRが弛んだ状態で印刷動作が終了することがないので、インクリボンがプラテンローラに巻きついてしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用可能な実施形態のプリンタ装置の外観斜視図である。
【図2】実施形態のプリンタ装置の、記録処理前のブランクカードが搬入された状態を示す概略断面図である。
【図3】実施形態のプリンタ装置の、記録処理後のカードを排出する状態を示す概略断面図である。
【図4】巻取リール側のリール本体に係合するプリンタ装置の係合部の外観斜視図である。
【図5】実施形態のプリンタ装置の制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】実施形態の印刷動作の流れを説明するフローチャートである。
【図7】カードと画像データの領域の関係を示した図である。
【図8】リボン位置出し時のインクリボンと画像データとの関係について示した図で、(a)は補正前で、(b)は補正後の位置を示している。
【図9】全面印刷時のインクリボンと画像データとの位置関係を示した図である。
【図10】実施形態の印刷動作を説明する図であり、印刷中の状態を示す。
【図11】実施形態の印刷動作を説明する図であり、印刷終了後にインクリボンがカードから剥離された状態を示す。
【図12】実施形態の印刷動作を説明する図であり、全面印刷終了後にインクリボンが弛んでいる状態を示す。
【図13】実施形態の印刷動作を説明する図であり、全面印刷終了後にインクリボンの弛みが解消された状態を示す。
【図14】実施形態の印刷動作を説明する図であり、印刷終了後にインクリボンが弛んでいる状態を示す。
【図15】実施形態の印刷動作を説明する図であり、印刷終了後にインクリボンの弛みが解消された状態を示す。
【図16】従来の印刷装置で、弛んだインクリボンがプラテンローラに巻きついている状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を、カード状印刷媒体(以下、単にカードCという。)に文字や画像を印刷記録する機能を有するプリンタ装置に適用した実施の形態について説明する。
【0013】
(構成)
<システム構成>
図5に示すように、本実施形態のプリンタ装置1は、図示を省略したインターフェースを介して、上位装置100(例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ)に接続され、上位装置100からプリンタ装置1に印刷データ等を送信して、印刷動作等を指示することが可能である。なお、後述するように、プリンタ装置1は、オペパネ部(操作表示部)5を有しており(図1、5参照)、上位装置100からの印刷動作指示の他、オペパネ部5からの記録動作指示も可能である。
【0014】
上位装置100には、一般に、原稿に記録された画像を読み取るスキャナ等の画像入力装置101、上位装置100に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置102、上位装置100によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタ103が接続されている。
【0015】
<外観構成>
図1に示すように、本実施形態のプリンタ装置1は、装置筐体としてのケーシング2の一側に配置され、記録処理前のブランクな複数のカードを積層状に収納可能(約100枚程度)であってケーシング2に対して着脱自在に取り付けられるカード供給部10と、同じくケーシング2の一側でカード供給部10の下方に配置され、記録処理後のカードを傾斜状に収容可能(約30枚程度)であってケーシング2に対して着脱自在に取り付けられるカード収容部20と、同じくケーシング2の一側でカード供給部10に隣接する位置に、プリンタ装置1のエラー状態を含む動作状態を表示する表示部4を有し、印刷処理や磁気記録処理の各種設定を行うためのオペパネ部5が設けられている。なお、オペパネ部5は、ダイヤル6を回転させることによりこれに同期して回転可能に設けられている。
【0016】
カード収容部20の一部には、収容オーバーとなった記録処理後のカードを装置外部へ放出可能な開口部として形成されたカード放出口21が設けられている。また、プリンタ装置1の一面には、後述する印刷記録に使用されるインクリボンRを内装したカートリッジ52を着脱する際に装置内部にアクセスするための開閉カバー7が設けられており、開閉カバー7はケーシング2の一部を構成している。
【0017】
そして、カード供給部10ないしカード収容部20に対向して、ケーシング2の他側には、第2の記録部としての磁気エンコーダユニット80がその一部をケーシング2から突出する形で配置されている。
【0018】
<内部構成>
次に、図2および図3に基づきプリンタ装置1の内部の各構成要素について説明する。なお、図2はカード供給部10から供給された記録処理前のブランクなカードCが第1の記録部としての印刷部50に向けて搬送されている状態を示し、カードクリーニング機構30のクリーニング部材としてのクリーニングローラ31が搬送中のカードCの表面に当接してその印画される面を清浄にしている状態を示している。
【0019】
また、図3は印刷部50ないし磁気エンコーダユニット80により記録処理されたカードCがカード収容部20に向けて排出される際の状態を示している。このとき、搬送ローラ41、42は、略水平状のカード搬送路を形成する第1の位置から傾斜状のカード搬送路を形成する第2の位置へと移動してカードCをカード排出口23に向けて搬送可能な状態を維持する。
【0020】
カード供給部10は、プリンタ装置1の一側に着脱自在に設けられ、その内部に記録処理前の複数のブランクなカードを積層状に収納可能としており、機体(プリンタ装置1)側に設けられ、図示を省略するモータにより回転駆動する供給ローラ11が最下位(最下層)のカードを装置内部へと繰り出す際にカードCの一枚のみの通過を許容するために、供給コロ12と板状部材からなる分離ゲート13とを有している。供給されるカードCは供給コロ12と分離ゲート13との間を通過して、カード供給部10に連接するようにケーシング2の一側に設けられたカード供給口14へと導かれる。なお、詳述すると、分離ゲート13の下端部には図示しない可撓性のパッドが設けられており、例えば、厚さの異なる薄いカードを供給する場合であっても、一枚ずつの分離を可能としている。
【0021】
一方、カード収容部20は、プリンタ装置1(ケーシング2)の一側であって、カード供給部10の下方に着脱自在に設けられて記録処理後のカードCを傾斜状に収容可能としている。カード収容部20には、その内部の底面が傾斜状に形成された収容トレイ24が設けられており、ケーシング2の一側でカード供給口14の下方に開口を有して配置されたカード排出口23から排出される記録済のカードCが排出ローラ15により収容トレイ24上に順次排出されて収容される(図3参照)。
【0022】
排出ローラ15はプリンタ装置1側に固設されており、上述した供給ローラ11を回転駆動する図示を省略するモータによって回転駆動されるが、供給ローラ11がブランクなカードCを供給するために回転する方向を正転駆動とした場合、図示を省略するモータの逆転駆動により排出されるカードCを収容トレイ24上に排出するように回転駆動される。つまり、図示を省略するモータの正逆転駆動により供給ローラ11および排出ローラ15が回転されるが、供給ローラ11には図示しないワンウェイクラッチが設けられているため、カード供給方向にのみ回転することができる(ワンウェイクラッチの作用により、カード供給方向と逆方向には回転駆動は伝達されない)。一方、排出ローラ15は、図示を省略するモータの正逆転駆動により両方向に回転駆動される。本形態では、記録処理前のブランクなカードCの供給動作と記録処理後のカードCの排出動作とが同時に行われることがなく、排出ローラ15がカードCの排出のための回転とその逆の方向に回転することであっても支障はない。
【0023】
カード供給口14から供給されたカードCは、後述する搬送駆動モータ70から伝達される駆動力を有して回転する搬送ローラ41、42、43へと順次引き継がれて略水平状のカード搬送路P1に沿って搬送される。なお、搬送ローラ42、43はそれぞれ駆動ローラと従動ローラとを有するローラ対で構成されている(以下、特に異なる説明がない限り、ローラ対の従動ローラについての説明を省略し、駆動ローラについてのみ説明する。)。
【0024】
搬送ローラ41の対向側には、追って説明するカードクリーニング機構30の一部を構成するクリーニングローラ31が搬送ローラ41に対峙するようにカード搬送路P1に対して進退可能に設けられている。このクリーニングローラ31が搬送されるカードCに当接するようにカード搬送路P1上に進出しているとき(図2に示す状態)、駆動力を有する搬送ローラ41との間でカードCを挟持して回転することで、印刷部50により印刷記録される印画面からゴミや埃等の異物を除去して清浄にすることができる。
【0025】
また、クリーニングローラ31がその動作位置であるカード搬送路P1上に進出したとき、クリーニングローラ31は、クリーニングローラ31に隣接した位置でカード搬送路P1から離間した所定の位置に配置されるクリーナとしてコロ状クリーナ32と面接触するように位置付けられる。コロ状クリーナ32は、クリーニングローラの外径(ローラ径)より小さい外径(ローラ径)を有しており、印刷部50の一部として構成されるインク媒体としてのインクリボンRを内装するカートリッジ52の所定部位に着脱自在に取り付けられる支持部材53に固着して回転可能に設けられている。
【0026】
本形態では、クリーニングローラ31は表面が粘着性を有するゴム材料などの回転自在のローラ状部材からなり、また、コロ状クリーナ32は、樹脂製の回転自在のコロ状部材にスポンジ層を有する粘着性テープが巻装されており、この粘着性テープはクリーニングローラ31の表面の粘着性より高い粘着性を有しているため、カードCから除去されクリーニングローラ31の表面に付着したゴミや埃等の異物は両者の面接触によりコロ状クリーナ32の表面を形成する粘着性テープへと移行、引き渡されることになる。
【0027】
搬送ローラ43のカード搬送方向下流側には、クリーニングローラ31によって清浄にされたカードCの表面に、所期の文字ないし画像を印刷記録する印刷部50が設けられている。
【0028】
本形態においては、印刷部50は熱転写プリンタの構成が採用されており、カード搬送路P1上の印刷位置に設けられたプラテンローラ44に対して進退可能に設けられたサーマルヘッド51を有している。プラテンローラ44とサーマルヘッド51との間には、インク層Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)、Op(保護層)等の複数色のパネルが面順次に繰り返されたインクリボンRが介在している。このインクリボンRは、上述したようにカートリッジ52に内装されている。カートリッジ52内の供給リール54および巻取リール55はそれぞれインクリボンRが捲回された(保持された)ものであり、供給リール54には未使用のインクリボンRの捲回されており、巻取リール55には既使用の(サーマルヘッド51による熱転写後の)インクリボンRが捲回される。
【0029】
カード搬送路P1に沿って移動するカードCに文字あるいは画像などの情報を熱転写記録する際には、インクリボンRは、リボン供給リール54から供給され、サーマルヘッド51の先端部に略全面を当接させながら搬送され、インクリボンRを巻き取るリボン巻取リール55に巻取られる。リボン供給リール54およびリボン巻取リール55は、巻取リール駆動モータ150により回転駆動される。このとき、カードCの表面にインクリボンRを介在させてサーマルヘッド51を押圧しながらサーマルヘッド51の加熱素子を選択的に作動させることで、カードCに所期の文字、画像が印刷される。インクリボンRの搬送経路には、複数のガイドシャフトと、所定のインク層(本形態ではインク層Y)の位置出しを行うためにインク層Bk(ブラック)を検出する発光素子58、受光素子59からなる透過型センサが配設されている。
【0030】
巻取リール55の係合部55Aに対する装置本体側の係合部は複数の部材で構成されている。すなわち、装置フレームに支持軸154が固定されており、支持軸154は円盤状で外縁部にギヤを有する係合部材152を回転可能に軸支している。係合部材152は巻取リール55の係合部55Aと係合する係合凸部152Aが設けられている。
【0031】
図4は巻取リール55の係合部55Aと装置本体側の係合部材152(係合凸部152A)との係合状態を示したものである。係合部材152のギヤにはギヤ151Cが噛合しており、ギヤ151Cには同軸上にスリット(不図示)が形成された回転板151Aが固着している。また、回転板151Aを挟む位置には、発光素子と受光素子とからなる透過一体型のセンサ151Bが配置されている。従って、回転板151Aとセンサ151Bが、インクリボンRを巻き取る巻取リール55の回転量を検出するエンコーダ151を構成している。また、係合部材23のギヤにはギヤ153が噛合しており、ギヤ153の同軸上には巻取リール駆動モータ150(ステッピングモータ)のモータ軸が嵌着している。
【0032】
よって、巻取リール55に巻取リール駆動モータ150の駆動が伝わり、エンコーダ151によって巻取リール55の回転量を検出することができる。
【0033】
一方、供給リール54と装置本体側との係合関係は、原則として上述した巻取リール55と装置本体側との係合関係と同じであるが、ギヤ153および巻取リール駆動モータ150に代えて、係合部材152のギヤと噛合するギヤ153およびこのギヤ153の同軸上に配置されインクリボンRにバックテンションを与えるトルクリミッタ(不図示)を有している点で異なっている。
【0034】
また、サーマルヘッド51のカード搬送方向上流側(搬送ローラ43側)には、カード搬送路P1に沿って搬送されるカードCの搬送方向先端および後端を検出する発光素子48、受光素子49からなる透過型センサ(以下、第1カード検出センサという。)が配設されている。
【0035】
印刷部50の下方には、上記した一連の搬送ローラ41、42、43、およびプラテンローラ44を正逆転方向に回転駆動する正逆転駆動可能なステッピングモータからなる搬送駆動モータ70が配設されている。なお、プラテンローラ44の回転量は搬送駆動モータ70の回転量(パルスのステップ数)によって検出可能である。また、搬送駆動モータ70による回転駆動力は、搬送駆動モータ70の回転軸に設けられたプーリ71がベルト72によりプーリ73へと伝達され、プーリ73に一端が巻装されたベルト74によりプラテンローラ44の回転軸に設けられたプーリ75を介してプラテンローラ44に駆動が伝達される。なお、プーリ73は2段プーリで構成されており、それぞれの段差部分にベルト72およびベルト74が架け渡されている。
【0036】
プラテンローラ44の回転軸上、搬送ローラ41、42、43の回転軸上、並びに、それぞれのローラの間には図示を省略する複数のギヤが噛合状態で配設されており、プラテンローラ44に伝達された回転駆動力は、これら複数のギヤを介して各搬送ローラ41、42、43へと伝達される。
【0037】
また、プラテンローラ44のカード搬送方向下流側(リボン巻取リール55側)には、カードCを搬送する機能を有し、印刷部50によりカードCに印刷記録を行なうときにカードCを挟持するニップローラ45がカード搬送路P1に沿って設けられており、このニップローラ45のさらにカード搬送方向下流側には、カードCを搬送するための送りローラ46が同じくカード搬送路P1に沿って設けられている。ニップローラ45および送りローラ46の略中央には、カード搬送路P1に沿って搬送されるカードCの搬送方向先端を検出する発光素子56、受光素子57からなる透過型センサ(以下、第2カード検出センサという。)が配設されている。
【0038】
これらのニップローラ45および送りローラ46の回転軸にも図示を省略するギヤがそれぞれ設けられており、また、プラテンローラ44とニップローラ45、ニップローラ45と送りローラ45との間にも図示を省略する複数のギヤが設けられており、これら複数の図示しないギヤが相互に噛合うことにより、搬送駆動モータ70からの回転駆動力は、上述したプーリ、ベルトおよび図示しない複数のギヤを含む駆動力伝達機構を介して、プラテンローラ44の回転軸に設けられたギヤから分岐されてニップローラ45および送りローラ46にも伝達されていくことになる。
【0039】
また、サーマルヘッド51のリボン巻取りリール55側には、インクリボンRをカードCから剥離するための剥離板60が設けられている。これにより、サーマルヘッド51から距離αの位置でインクリボンRがカードCから剥離される。よって、印刷終了から距離α(本実施形態では9.2mm)だけカードCを搬送してインクリボンRを巻き取った時点でインクリボンRとカードCとが剥離された状態となる(図10、11参照)。
【0040】
次に、プリンタ装置1の制御および電気系統について説明する。図2および図3に示すように、プリンタ装置1は、プリンタ装置1全体の動作制御を行う制御部95と、商用交流電源から各機構部および制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部90とを有している。
【0041】
<制御部>
図5に示すように、制御部95は、プリンタ装置1の全体の制御処理を行うマイクロコンピュータ95b(以下、マイコン95bと略称する。)を備えている。マイコン95bは、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、プリンタ装置1の基本制御動作(プログラムおよびプログラムデータ)が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAMおよびこれらを接続する内部バスで構成されている。
【0042】
マイコン95bには外部バスが接続されている。外部バスには、上位装置100との通信を行うための図示を省略したインターフェース、カードCに印刷すべき印刷データやカードCの磁気ストライプ部に磁気記録すべき磁気記録データ等を一時的に格納するバッファメモリ95aが接続されている。
【0043】
また、外部バスには、各種センサからの信号を制御するセンサ制御部95c、各モータに駆動パルスや駆動電力を送出するモータドライバ等を制御するアクチュエータ制御部95d、サーマルヘッド51の熱エネルギーを制御するサーマルヘッド制御部95e、オペパネ部5を制御するための操作表示制御部95f、および、磁気エンコーダユニット80が接続されている。センサ制御部95cは発光素子48、受光素子49からなる第1カード検出センサ、発光素子56、受光素子57からなる第2カード検出センサおよび他の図示を省略するセンサに、アクチュエータ制御部95dはステッピングモータ61、搬送駆動モータ70および他の図示しないモータ、アクチュエータ34等に、サーマルヘッド制御部95eはサーマルヘッド51に、操作表示制御部95fはオペパネ部5にそれぞれ接続されている。
【0044】
なお、電源部90は、制御部95、サーマルヘッド51、オペパネ部5および磁気エンコーダユニット80に作動/駆動電源を供給している(図5参照)。
【0045】
(動作)
次に、本実施形態のプリンタ装置1の動作について、マイコン95bのCPU(以下、単にCPUという。)を主体として説明する。
【0046】
制御部95に電源が投入されると、CPUは、ROMに格納されたプログラムおよびプログラムデータを読み出し(RAMに展開し)、各機構部を作動させるための初期処理を行う。すなわち、初期処理では、外部バスを介してマイコン95bに接続され制御部95を構成するセンサ制御部95c等の各制御部95a、95c〜95f、磁気エンコーダユニット80との接続確認を行った後、各構成部が上述したホーム位置に位置しているか(図2参照)をセンサ制御部95cからの信号等に基づいて判断し、各構成部がホーム位置に位置していない場合には、ホーム位置に移動させる。センサ制御部95cの信号等に基づいて、各構成要素をホーム位置への復帰動作を所定回繰り返してもホーム位置に移動しない場合には、上位装置100に報知するとともに、操作表示制御部95fを介して表示部4にその旨を表示させる。また、初期処理では、センサ制御部95cからの信号等に基づいて、カード供給部10にカードが収容されているか等も併せて判断し、収容されていないと判断したときは、同様に、上位装置100に報知するとともに、表示部4にその旨を表示し、さらに、カード供給部10にカードが収容されるまで待機する。
【0047】
一方、上位装置100にインストールされたプリンタドライバは、オペレータ(ユーザ)の指定した記録指令に基づいて、プリンタ装置1での記録動作を制御するための各種パラメータ値を決定し、その記録指令よりカードへの記録を行うための印刷データおよび磁気記録データを生成して、プリンタ装置1に送信する。制御部95のバッファメモリ95aには、記録制御指令となる各種パラメータ値、印刷データをY、M、C、Bkの色成分ごとに分解して得られた画像データないし文字データ、および、磁気記録データが格納される。なお、本形態では、上位装置100側において色成分(元データは、R、G、B)に分解し、プリンタ装置1でR、G、BからY、M、Cに変換されて画像データとして用いられ、上位装置100側で抽出されたBkデータがプリンタ装置1で同じくBkデータとして用いられて文字データに供される。
【0048】
CPUは、バッファメモリ95aに格納された記録制御指令(各種パラメータ値)を取り込み、これらのパラメータ値とRAMに展開されたプログラムおよびプログラムデータとに従って、以下のように各機構部を制御する。
【0049】
まず、アクチュエータ制御部95dを介して不図示のアクチュエータを駆動させ(ON状態)、クリーニングローラ31を図2に示す動作位置へと移動させて、カードCの受け入れ準備を行なう。このとき、搬送ローラ41、42は、略水平状のカード搬送路を形成するように第1の位置(ホーム位置)に位置付けられている(図2に示す状態)。
【0050】
次に、CPUは、アクチュエータ制御部95dを介して搬送駆動モータ70を作動させ駆動伝達機構を介してカード搬送路P1上に配設された各ローラを駆動させるとともに、アクチュエータ制御部95dを介して供給ローラ11を回転駆動する図示を省略したモータを駆動する。
【0051】
これにより、カード供給部10の最下位のカードCは、供給コロ12と分離ゲート13との間およびカード供給口14を介してケーシング2内に搬入される。カードCは、クリーニングローラ31により印画面が清浄され、カード搬送路P1に沿ってカード搬出口82側に向けて搬送されて一旦停止する(図2参照)。なお、発光素子48、受光素子49からなる第1カード検出センサによってカードCの後端が検出されると、そのカード後端検出をトリガとして、クリーニングローラ31は、図2に示す動作位置から図3に示すホーム位置である退避位置へと移動する。
【0052】
次にCPUは印刷動作を実行する。なお印刷動作の説明に先立って画像判断処理、リボン位置出し、カード位置出しと印刷及び剥離処理について説明する。
【0053】
<画像判断処理>
本実施形態では、インクリボンRをカードCから剥離するために、印刷が終了してから距離αだけカードCの搬送とインクリボンRの巻き取り動作を行っている。しかし、印刷終了位置がカード後端から上述した距離αまでの間にある場合は、画像データを印刷した後に剥離距離α分カードCの搬送とインクリボンRの巻取りを行うと、途中でカードCの後端がサーマルヘッド51を通過してしまうため、サーマルヘッド51がプラテンローラ44に落下してしまう。これによりインクリボンRがリボン供給リール54から引き出されてしまい、インクリボンRが弛んでしまう(図14参照)。この状態でサーマルヘッド51を上昇させて後述するカード位置出しのためにプラテンローラ44を回転させるとインクリボンRがプラテンローラ44に巻きついてしまう(図16参照)。
【0054】
つまり、印刷終了位置がカード後端から距離αまでの間にある場合は、印刷が終了してからインクリボンRを通常よりも多く巻き取る必要がある。そこで、CPUはバッファメモリ95aに格納されている画像データの印刷終了位置がカード後端から距離βまでの間にあるか否かを判断する。なお距離βは、距離αにマージンを持たせて15mmとしているが、距離αに応じて適宜設定可能である。具体的には、画像データの後端からカードCの後端までの距離γを計算し、距離γが距離β以下かどうかで判定する(図7参照)。
【0055】
なお、距離γは後述するリボン位置出しと剥離処理の際のオフセット値として用いられる。本実施形態では、距離γが距離β以下の場合、オフセット値を距離γに設定し、距離γが距離βよりも大きい場合は、オフセット値を0に設定する。
【0056】
<リボン位置出し>
CPUは、アクチュエータ制御部95dを介して巻取リール駆動モータ150を駆動させ、カートリッジ52のインクリボンRをリボン巻取リール55側へ巻き取り、印刷に先立って例えばインク層Y(イエロー)の所定位置が印刷開始位置に位置付けられるようにインクリボンRの位置出しを行う。
【0057】
CPUは、巻取リール駆動モータ150を駆動して、カートリッジ52のインクリボンRをリボン巻取リール55側へ巻き取り、発光素子58、受光素子59からなる透過型センサがインク層Bk(ブラック)の端部を検出した時点(受光素子59がインク層Bkによる発光素子58の発光が不透過状態から透過状態となったことを検出した時点)からインク層Bkの終端部を検出した時点の供給リール54の回転量(つまり巻取リール駆動モータ150のステップ数)をエンコーダセンサ251で検出しRAMに格納して現在のリボン位置と次画面の各色の印刷開始位置を算出する。
【0058】
その後さらにインクリボンRを巻き取り、保護層Opとインク層Yとの間にあるリボン位置出しマークR1を検出してから所定ステップ数、巻取リール駆動モータ150をさらに駆動して、インクリボンRを印刷開始位置まで移動させる。
【0059】
本実施形態では、印刷を行う際はインクリボンRの各パネル(Y/M/C/Bk/Op)のセンターを基準として画像データのセンターを合わせて、インクリボンRを印刷開始位置に位置出しをする(画像データの幅をL1、各パネルの幅をL2として、それぞれのセンターを合わせる)。しかし、上述した画像判断処理の結果、印刷終了位置がカード後端から距離βの間にある場合は、インクリボンRの弛みを取るために印刷が終了してから通常よりも多くインクリボンRを巻き取らなければならない。
【0060】
本実施形態では、印刷終了位置から距離αに加えて距離γ分だけインクリボンを巻き取っている。よって、インクリボンRの各パネルの幅が短い場合は、弛み取りのためにインクリボンRを巻き取ると次パネルの先端がサーマルヘッド51を通過してしまう可能性がある(図8(a)参照)。この問題を解消するために印刷終了位置から本パネルの後端までの距離を長くする必要があるので、印刷開始位置を本パネルの先端側にオフセットする。本実施形態では、画像データの幅L1に上述したオフセット値(距離γ)を加えた幅(L1+γ)を画像データの幅として、そのセンターをインクリボンRのセンターと合わせることによって印刷開始位置をインクリボンRのパネルの先端側に補正している(図8(b)参照)。
【0061】
なお上述したように、全面印刷の場合は、印刷終了位置からカード後端までの距離が0なので、オフセット値は0に設定される。よって、印刷終了位置がカード後端から距離βの間にある場合に、印刷終了後にインクリボンRを距離αに加えて距離γ分だけさらに巻き取っても、最大で全面印刷のときと同じ領域(図9参照)のインクリボンを使用することになる。
【0062】
<カード位置出し>
CPUは、搬送駆動モータ70を正転駆動させ、カードCを、カード搬送路P1上をカード搬出口82側へ向けて搬送するとともに、発光素子48、受光素子49からなる第1カード検出センサによりカードCの先端位置を検出する。その後検出位置から所定ステップ数搬送駆動モータ70をさらに駆動して、カードCの先端を印刷位置に合わせる。
【0063】
また、カードCに次の色の画像を印刷するためには、搬送駆動モータ70を逆転駆動させてカードCを、カード搬送路P1上をカード供給部10の方向へ搬送する。所定位置に達したら、再び搬送駆動モータ70を正転駆動させてカードCを印刷位置へ向けて搬送する。その後カードCを印刷位置に合わせるときは同様の手順で行う。
【0064】
<印刷及び剥離処理>
そして、印刷部50によりカードCの表面に印刷データによる所期の文字、画像を印刷する。すなわち、カードCの表面にインクリボンR(例えばインク層Yの部分)を介在させ、CPUはアクチュエータ制御部95dを介してサーマルヘッド昇降モータ300を駆動させて、サーマルヘッド51を退避位置から印刷位置まで移動させ、カードCにサーマルヘッド51を押圧しながら、Y色の画像データ(RGBデータからY成分が色変換された画像データ)に従ってサーマルヘッド51の加熱素子を選択的に作動させる。これにより、カードCの表面には、インクリボンRに塗着されたY(イエロー)色の熱転写インク成分が直接転写される。
【0065】
Y色の画像データの印刷が完了すると、CPUはカードCからインクリボンRを剥離するために、カードCの印刷終了位置が剥離点に到達するまで(距離α)搬送駆動モータ70と巻取りリール駆動モータ150とを駆動させてカードCを搬送すると共にインクリボンRを巻き取る(図10、11参照)。上述したように、画像データの印刷終了位置がカード後端から距離βまでの間にある場合は、距離γがオフセット値として設定されているため、印刷が終了してから距離αに加えて距離γ分インクリボンRの巻き取りとカードCの搬送を行い、その過程でインクリボンRをカードCから剥離する(図14、15参照)。
【0066】
本実施形態では、印刷及び剥離処理中のインクリボンRの巻取り量はプラテンローラ44の回転量(ステッピングモータ70の駆動量)で管理されている。よって、カードCがサーマルヘッド51とプラテンローラ44との間を通過した後は、インクリボンRがサーマルヘッド51とプラテンローラ44とでニップされ、プラテンローラ44を回転させながらインクリボンの巻取りを行う。その後サーマルヘッド昇降モータ300を駆動させ、サーマルヘッド51を退避位置に移動させて、次色(M色)のリボン位置出しを行う。
【0067】
<印刷動作>
以下に印刷動作の流れを説明する。図6は印刷動作全体の流れを示したものである。まず、上位装置から印刷データを受信し、画像データとしてバッファメモリ95aに格納する(S1)。その後、印刷要求を受信したら(S2)、画像データ(例えばY色)があるか否かを判断する(S3)。もし印刷する画像データがある場合は、その画像データの印刷終了位置からカード後端までの距離γを計算する(S4)。その後、剥離距離αに応じて設定された距離βとS4で計算された距離γを比較して、印刷終了位置がカード後端から距離βまでの間にあるか否かを判断する(画像判断処理S5)。肯定判断の場合は、オフセット値を距離γに設定する(全面印刷の場合は0に設定)(S6)。一方、否定判断の場合はオフセット値を0に設定する(S7)。その後、オフセット値を加味してリボン位置出しを行う(S8)。またリボン位置出しを行っている最中にカード位置出しを行う(S9)。リボン位置出し及びカード位置出しが完了したらサーマルヘッド51を移動して印刷処理を行う(S10)。その際、印刷が終了してから、S6又はS7で設定されたオフセット値に加えて距離α分、カードCを搬送すると共にインクリボンRを巻き取る(剥離処理S11)。剥離処理が終了すると、サーマルヘッド51を退避位置へ上昇させる(S12)。その後S3に戻り、次色(M色)の画像データがあるか否かを判定して、画像データがある場合は同様の処理を行う。
【0068】
一方S3の判定において、印刷する画像データが格納されていない場合(すべての色を印刷した場合)、サーマルヘッド51の上昇に伴うインクリボンRの弛みを巻き取って印刷動作を終了する。その後カードCを搬送してカード収容部20にカードCを排出する。これによりカード1枚に対する印刷処理が終了し、次のジョブがある場合は以上の動作を繰り返す。
【0069】
(効果等)
次に、本実施形態のプリンタ装置1の効果等について説明する。上述したように、本実施形態では、上位装置100から受信した画像データの印刷終了位置からカード後端までの距離γと、インクリボンRがカードCから剥離する剥離距離αに応じて設定された距離βとを比較することで、印刷終了位置がカード後端から距離βまでの間にあるか否かを判断している。その結果肯定判断の場合は距離γの値をオフセット値として設定し、カードCへの印刷が終了してから距離αにオフセット値を加えた距離だけカードCの搬送とインクリボンRの巻き取りを行ってからサーマルヘッド51を退避位置に退避させるように制御している。これによりカードCへの印刷が終了してからインクリボンRの剥離のために距離αカードCの搬送をしている間にサーマルヘッド51が落下することによって一度インクリボンRが弛んでも、インクリボンRが弛んだ状態で印刷動作が終了することがないので、インクリボンRがプラテンローラ44に巻きついてしまうことがない。
【0070】
このとき、インクリボンRの巻取り量はプラテンローラ44の回転量に応じて制御される。つまり、印刷中はインクリボンRとカードCとは同じ量だけ搬送され、カードCの後端がサーマルヘッド51を通過してサーマルヘッド51が落下した後は、サーマルヘッド51とプラテンローラ44とでインクリボンRをニップしてインクリボンRを搬送する。なお、リボン巻取りリール55にも回転量を検出するエンコーダは設けられているが、印刷後のインクリボンRは熱によって伸びてしまうため、正確な巻取り量を管理することはできない。よってCPUはプラテンローラ44の回転量すなわち搬送駆動モータ70の回転量を検出することによって、正確なインクリボンRの巻取り量を制御することができる。なお、プラテンローラ44の回転量を直接検出するセンサを設けてもよい。
【0071】
また、本実施形態では画像データの幅の中心をインクリボンRのパネルの幅の中心に合わせてリボン位置出しを行っているので、単純に印刷が終了してから距離αにオフセット値を加えた距離のインクリボンRを巻き取ってしまうと、インクリボンの次パネルの先端がサーマルヘッド51を通過してしまう場合がある。よってこれを防止するために、リボン位置出しを行う際に、画像データの幅L1にオフセット値(γ)を加えた幅(L1+γ)の中心をパネルの幅L2の中心に合わせるようにリボン位置出しを行う。その結果、印刷開始位置がパネルの先端側にオフセットされるので、インクリボンRを余分に巻き取っても次パネルの先端がサーマルヘッド51を通過してしまうことがない。
【0072】
なお、この制御はインクリボンRのパネルの幅L2が長い場合は行う必要はないが、パネルの幅を長くするとその分無駄な未使用部分が出てしまうのでコスト面にも環境面にも悪い。よって、本実施形態の印刷装置1は、限られた幅のインクリボンを効果的に使用することができる。また、インクリボンRを通常よりも多く巻き取ることで、インクリボンRの次パネルの先端がサーマルヘッド51を通過してしまうことを問題としたが、次パネルの先端ではなく次パネルの全面印刷時の印刷開始位置を越えなければ良い。もしリボン供給リール54に巻き戻す駆動を設ければこの問題は解消できるが、部品点数が多くなってしまう。つまり、リボン供給リール54に駆動を設けない構成において有効である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
上述したように、本発明は印刷終了位置がカード後端近傍にあった場合に、サーマルヘッドの落下によって引き出されるインクリボンの弛みを解消し、インクリボンがプラテンローラに巻きついてしまうことのない印刷装置および印刷方法を提供するものであるため、印刷装置の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0074】
1 プリンタ装置(カード記録装置)
2 ケーシング(装置筺体)
10 カード供給部
14 カード供給口
20 カード収容部
23 カード排出口
31 クリーニングローラ(クリーニング部材)
32 コロ状クリーナ(クリーナ)
41、42 搬送ローラ
45 ニップローラ(ローラ)
50 印刷部
51 サーマルヘッド
52 カートリッジ
54 供給リール
55 巻取リール
58 発光素子
59 受光素子
60 剥離板
70 搬送駆動モータ
95 制御部
95b マイコン(CPU)
150 巻取リール駆動モータ
151 エンコーダセンサ
300 サーマルヘッド昇降モータ
C カード
R インクリボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンを介してサーマルヘッドとプラテンローラとを圧接してカード状の印刷媒体に画像を印刷する印刷装置において、
前記サーマルヘッドを印刷位置と前記印刷位置から離間した退避位置との間で移動させるサーマルヘッド移動手段と、
前記インクリボンの未使用部が巻かれているリボン供給リールと、
前記インクリボンの使用済み部分が巻き取られるリボン巻取りリールと、
前記リボン巻取りリールに駆動を与える巻取りリール駆動手段と、
前記印刷媒体を搬送する搬送手段と、
前記サーマルヘッドに対して前記巻取りリール側に設けられ、該サーマルヘッドから距離αの点で前記印刷媒体から前記インクリボンを剥離するための剥離部材と、
前記巻取りリール駆動手段、前記搬送手段及びサーマルヘッド移動手段の駆動を制御する制御手段と、
印刷データを受信する印刷データ受信手段と、
受信した前記印刷データから、印刷終了位置が印刷媒体後端から所定の距離βの間にあるか否かを判断する判断手段と、を備え、
前記印刷終了位置から前記印刷媒体後端までの距離を距離γとし、
前記距離βは前記距離αに応じて設定され、
前記判断手段によって前記印刷終了位置が前記印刷媒体後端から前記距離βまでの間にあると判断された場合は、前記制御手段は、前記印刷データを印刷し終わった後に少なくとも前記距離αと前記距離γとを加えた距離分だけ前記インクリボンを巻取ってから、前記サーマルヘッドを前記退避位置に移動させるように前記巻取りリール駆動手段と前記サーマルヘッド移動手段とを制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
さらに、前記プラテンローラの回転量を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記サーマルヘッドが印刷位置にいる間の前記巻取りリール駆動手段の駆動量を前記検出手段に応じて制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記インクリボンは複数の色のパネルが面順次に構成され、前記判断手段によって前記印刷終了位置が前記印刷媒体後端から距離βまでの間にあると判断された場合は、印刷開始位置を前記パネルの先端側にずらして印刷を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
インクリボンを介してサーマルヘッドとプラテンローラとを圧接してカード状の印刷媒体に画像を印刷する印刷方法において、
印刷データを受信するデータ受信ステップと、
受信した前記印刷データの印刷終了位置から前記印刷媒体後端までの距離γを計算する計算ステップと、
前記距離γと距離βとを比較する比較ステップと、
前記インクリボンの位置出しをするリボン位置出しステップと、
前記印刷媒体の位置出しをする印刷媒体位置出しステップと、
前記サーマルヘッドを印刷位置に移動させる第1のヘッド移動ステップと
前記印刷媒体に前記印刷データを印刷する印刷ステップと、
印刷終了後に前記インクリボンを巻き取るリボン巻取りステップと、
前記サーマルヘッドを退避位置に移動させる第2のヘッド移動ステップと、を含み
前記サーマルヘッドから前記印刷媒体と前記インクリボンが剥離する点までの距離を距離αとし、
前記距離βは該距離αに応じて設定され、
前記比較ステップにおいて前記距離γが前記距離βよりも小さいと判断された場合は、前記リボン巻き取りステップにおいて、少なくとも距離αと距離γとを加えた分だけ前記インクリボンを巻き取ることを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
前記インクリボンは複数の色のパネルが面順次に構成され、前記比較ステップにおいて前記距離γが前記距離βよりも小さいと判断された場合は、前記リボン位置だしステップにおいて、印刷開始位置を該パネルの先端側に補正することを特徴とする請求項4に記載の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−51142(P2011−51142A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200004(P2009−200004)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】