説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】不活性ガスを印刷装置の設置された空間全体に行き渡らせることなく、基板上に塗布された印刷材料の劣化を抑えることができる印刷装置及び印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷装置1は、基板Wを載置するとともに搬送するステージ22を有している。ステージ22は、印刷処理時における基板Wの搬送方向であって、基板Wよりも下流側に、不活性ガスを噴射可能なスリットノズル2221を有している。このようなスリットノズル2221が、パターン形成処理が行われている基板Wに対して、基板Wの搬送方向の下流側から基板Wの表面近傍に向けて不活性ガスを噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に所定のパターンを形成する技術に関する。特に、印刷版から印刷材料が有機ELディスプレイ用基板、有機EL照明用基板又はカラーフィルタ用基板など(以下、基板と称する)に転写されることで、基板上にパターンを形成する印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイスが照明又はディスプレイに利用される機会が増えてきている。有機EL材料は、ポリマー状の分子を用いた高分子材料とそれ以外の分子を用いた低分子材料とに分けられる。いずれの発光材料も下地膜の制約などからフォトリソグラフィ法を用いたパターン形成が困難である。従って、低分子材料を用いたパターン形成は、基板上に低分子材料を真空蒸着させる方法を用いて行われる。また、高分子材料を用いたパターン形成は、凸版印刷法、又は凹版印刷法などの各種印刷法を用いて行われる。
【0003】
これらの有機EL材料は、水分又は酸素に曝露されることによって、発光特性の劣化、及び寿命の低下など、性能の劣化が生じやすい。
【0004】
一般的に、低分子材料の蒸着によるパターン形成は真空チャンバなどによって実現された減圧環境下で行われる。従って、低分子材料が大気中の水分又は酸素から受ける影響はわずかである。
【0005】
しかしながら、高分子材料は、大気中で基板上に塗布されるため、大気中の酸素又は水分の影響を受けやすい。特に、基板上に塗布された高分子材料は超薄膜を形成するため、全体積に対する表面積の割合が大きくなる。従って、高分子材料の性能劣化の度合いは顕著に現れる。
【0006】
このような問題を解決する技術として、有機EL材料の塗布装置が載置されたエリア全体の雰囲気を不活性ガスに置換する技術が提案されている。特許文献1では、チャンバに設けられた供給口から不活性ガスが供給される。そして、不活性ガスをチャンバ内に行き渡らせた状態で、有機EL材料の塗布が基板に対して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−211734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、以下に示す問題点を有する。
【0009】
1つ目は、作業者の作業性に関する問題である。不活性ガスはチャンバの内部に充満している。このため、製造トラブルが印刷装置に生じた場合、又はメンテナンスの必要が印刷装置に生じた場合に、作業者はガスマスク、又は呼吸器などを装着してチャンバ内に入らなければならない。つまり、作業者はチャンバに入るために入室準備作業を行う必要があり、手間がかかる。
【0010】
2つ目は、印刷処理に係るコストの問題である。チャンバの内部を不活性ガスで満たす必要があるため、不活性ガスの使用量が多大となり、印刷処理を行うにあたってランニングコストが増大する。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、印刷装置の設置された空間全体に不活性ガスを行き渡らせることなく、基板上に塗布された印刷材料の劣化を抑えることができる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明に係る印刷装置は、基板を保持するステージと、所定のパターンが形成されるとともに印刷材料が塗布された印刷版が、印刷材料を前記基板に転写してパターン形成を行う転写部と、前記ステージを前記転写部に対して相対的に移動させる移動機構と、不活性ガスを噴射する噴射部から、相対的に移動する前記ステージが保持する前記基板の表面近傍に向けて、前記不活性ガスを供給するガス供給部と、を備える。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に係る印刷装置であって、前記噴射部が前記ステージに設置されている。
【0014】
第3の発明は、第2の発明に係る印刷装置であって、前記噴射部が、前記パターン形成が行われるときの前記基板の相対的な移動方向に沿って、前記基板の載置位置よりも下流側の前記ステージに設けられている。
【0015】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかに係る印刷装置であって、前記噴射部と向かい合わせの位置に設けられるとともに前記ガス供給部から供給された前記不活性ガスを捕集する捕集部を有しており、前記捕集部が捕集した前記不活性ガスを排気する排気部をさらに備える。
【0016】
第5の発明は、第3の発明に係る印刷装置であって、前記噴射部を、前記噴射部の上端が前記ステージにおける前記基板の載置面よりも下方に配置される退避位置と、前記噴射部が前記基板の表面近傍に前記不活性ガスを噴射する噴射位置と、に移動させる噴射部移動機構をさらに備える。
【0017】
第6の発明は、第4の発明に係る印刷装置であって、前記捕集部を、前記捕集部の上端が前記ステージにおける前記基板の載置面よりも下方に配置される退避位置と、前記退避位置よりも上方で、前記捕集部が前記不活性ガスを捕集する上方捕集位置と、に移動させる捕集部移動機構をさらに備える。
【0018】
第7の発明は、第1ないし第6の発明のいずれかに係る印刷装置であって、前記転写部が前記基板への前記印刷材料の転写の開始に同期して、前記ガス供給部が前記不活性ガスの供給を開始し、少なくとも前記転写部が前記基板への前記印刷材料の転写を終了するまで前記不活性ガスの供給を維持するように制御する制御部をさらに備える。
【0019】
第8の発明は、第1ないし第7の発明のいずれかに係る印刷装置であって、前記印刷材料が有機EL材料である。
【0020】
第9の発明は、基板を保持するステージと版胴とを相対的に移動させつつ印刷材料を前記基板に塗布する印刷装置を用いた印刷方法であって、前記版胴の外周面に装着された印刷版に対して、前記基板が保持されたステージを相対的に移動させる移動工程と、前記移動工程によって相対的に移動する前記基板に対して、前記印刷材料が塗布された前記印刷版が、所定のパターンを前記基板に転写する転写工程と、前記転写工程に並行して、前記基板の表面近傍に不活性ガスを供給するガス供給工程と、を備える。
【0021】
第10の発明は、第9の発明に係る印刷方法であって、前記ガス供給工程にて供給される前記不活性ガスは、前記転写工程において相対的に移動する前記基板の下流方向から供給される。
【0022】
第11の発明は、第9又は第10の発明に係る印刷方法であって、前記ガス供給工程にて供給された前記不活性ガスを排気する排気工程をさらに備える。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明によれば、ガス供給部が、噴射部から基板の表面近傍に向けて不活性ガスを供給する。このため、印刷装置が設置された空間全体に不活性ガスを行き渡らせることなく、基板上の印刷材料が大気中の水分及び酸素に曝露されることを抑えられる。
【0024】
第2の発明によれば、噴射部が印刷装置のステージに設けられている。このため、不活性ガスは周囲に拡散する間もなく、基板の表面近傍に供給される。従って、基板の表面はより確実に大気との接触を遮られる。
【0025】
第3の発明によれば、噴射部が、パターン形成が行われるときの基板の相対的な移動方向に沿って基板の載置位置よりも下流側のステージに設けられている。従って、不活性ガスは、転写部によってパターンが形成された直後の基板に対して直接噴射される。このため、基板の乾燥を促進させることができる。
【0026】
第4の発明によれば、排気部が捕集部で捕集された不活性ガスを排気するため、ガス供給部から供給された不活性ガスが周囲に拡散することを確実に抑えられる。このため、作業者は、ガスマスク、又は呼吸器などを装着する手間を要さずして、印刷装置に近づくことが可能である。
【0027】
第5の発明によれば、噴射部は、噴射部移動機構によって、噴射部の上端がステージにおける基板の載置面よりも下方に配置される退避位置に移動されるため、ステージが移動するときに、噴射部が転写部と干渉することを防ぐことができる。
【0028】
第6の発明によれば、捕集部は、捕集部移動機構によって、捕集部の上端がステージにおける基板の載置面よりも下方に配置される退避位置に移動されるため、ステージが移動するときに、捕集部が転写部と干渉することを防ぐことができる。
【0029】
第7の発明によれば、制御部は、転写部が基板への印刷材料の転写の開始に同期して、ガス供給部が不活性ガスの供給を開始し、少なくとも転写部が基板への印刷材料の転写を終了するまで不活性ガスの供給を維持するように制御する。このため、不活性ガスの使用量は少なく抑えることができる。
【0030】
第9の発明によれば、パターンを基板に転写する転写工程に並行して、基板の表面近傍に不活性ガスが供給される。従って、印刷装置が設置された空間全体に不活性ガスを行き渡らせることなく、基板上の印刷材料が大気中の水分及び酸素に曝露されることを抑えられる。
【0031】
第10の発明によれば、ガス供給工程にて供給される不活性ガスは、転写工程において相対的に移動する基板の下流方向から供給される。従って、不活性ガスは、転写工程にてパターンが形成された直後の基板に対して直接噴射される。このため、基板の乾燥を促進させることができる。
【0032】
第11の発明によれば、ガス供給工程にて供給された不活性ガスが排気工程によって排気される。従って、不活性ガスが周囲に拡散することは確実に抑えられる。このため、作業者は、ガスマスク、又は呼吸器などを装着する手間をかけず、不活性ガスが噴射されている基板に近づくことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置1の斜視図である。
【図2】印刷装置1の概略側面図である。
【図3】制御部90の構成が示された図である。
【図4】印刷処理時における印刷装置1の各部分の連動の様子を表したタイムチャートである。
【図5】ステップ1における印刷装置1の各部分の配置状態が示された図である。
【図6】ステップ2における印刷装置1の各部分の配置状態が示された図である。
【図7】ステップ3における印刷装置1の各部分の配置状態が示された図である。
【図8】ステップ4における印刷装置1の各部分の配置状態が示された図である。
【図9】ステップ5における印刷装置1の各部分の配置状態が示された図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0035】
<1.実施形態>
<1−1.印刷装置1>
まず、本発明に係る印刷装置1について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る印刷装置1全体の斜視図である。また、図2は、印刷装置1の要部構成を示す概略側面図である。印刷装置1において、版胴14の外周面に装着された印刷版17が有機ELの発光材料を基板W(有機ELディスプレイのパネル)に転写して、パターンが基板Wに形成される。
【0036】
図1に示される印刷装置1は、主たる構成として、基台20、液供給スリットノズル11、塗布液供給ローラ12、版胴14、及びステージ22を備える。また、印刷装置1は、装置の各動作機構を制御して印刷処理を実行させる制御部90を備える。この実施形態では制御部90は印刷装置1の一部となっているが、印刷装置1とは別体に構成されたコンピュータであってもよい。その場合には印刷データはオンラインまたはオフラインで当該コンピュータから印刷装置1に転送される。制御部90に予めインストールされたプログラムに従って、後述する一連のシーケンスが実行される。
【0037】
図1に示すように、一対の直動ガイド32、これらの直動ガイド32の間に配設されたリニアモータ31、及び図示しないリニアスケールが基台20上に設置されている。直動ガイド32及びリニアモータ31はその長手方向が版胴14の回転軸に直交する方向に沿うように配設されている。また、直動ガイド32及びリニアモータ31には、アライメントテーブル51が連結されており、アライメントテーブル上にステージ22が配設されている。このため、アライメントテーブル51は、リニアモータ31の駆動を受けてステージ22とともに版胴14の回転軸に直交する方向に沿って直線移動する。また、アライメントテーブル51にはステージ22の位置調整を行う位置調整機構(図示省略)が内蔵されている。位置調整機構が、ステージ22をアライメントテーブル51に対してX方向及びY方向にスライド移動、又は回転移動させる。
【0038】
支持側板24は基台20の左右側面に固設されている。そして、一対のガイド部材25が、このような支持側板24に対して、鉛直方向(Z方向)に沿って配設されている。昇降テーブル21は、このような計4本のガイド部材25に案内されて昇降可能とされている。
【0039】
昇降テーブル21は、液供給スリットノズル11、塗布液供給ローラ12、及び版胴14を支持している。これらの各部分は、昇降モータ26の駆動によって昇降テーブル21とともに一体的に昇降する。また、液供給スリットノズル11、塗布液供給ローラ12、及び版胴14が本実施形態における転写部に相当する。
【0040】
版胴14は、円筒形状を有するローラであり、X方向に延設された回転軸を中心にして、モータ15の駆動によって回転可能である。版胴14は時計回り及び反時計回りのいずれの方向にも回転可能である。
【0041】
このような版胴14の外周面の一部に、印刷版17が装着されている。印刷版17は、凸部がパターン領域を構成する図示しない樹脂層と、樹脂層を支持する図示しないベース層とを有する凸版である。なお、樹脂層は、ポリエステル系樹脂又はゴムなどの樹脂材料で構成される。印刷版17は、図示しないクランプ機構によって版胴14の外周面に固定される。
【0042】
塗布液供給ローラ12が版胴14の側方に設置されている。塗布液供給ローラ12は、版胴14と同様に円筒形状を有するローラである。塗布液供給ローラ12は、塗布液供給ローラ12の回転軸が版胴14の回転軸と平行で、版胴14に装着された印刷版17の表面が塗布液供給ローラ12の表面と当接する様にして、設置されている。
【0043】
液供給スリットノズル11は、図示しない塗布液供給源と連結されており、塗布液供給ローラ12の上方に設けられている。液供給スリットノズル11は、塗布液供給ローラ12の回転軸方向(X方向)に延びるスリットを有しており、スリットから塗布液供給ローラ12の表面に塗布液として印刷材料である有機ELの高分子材料を吐出する。
【0044】
ここで、転写部による基板Wの表面へのパターン形成処理について説明する。図2において、版胴14が反時計回り、かつ塗布液供給ローラ12が時計回りに回転する。この状態で、塗布液が液供給スリットノズル11から塗布液供給ローラ12の表面に供給され、塗布液の薄膜が塗布液供給ローラ12の表面に形成される。
【0045】
版胴14及び塗布液供給ローラ12は回転しているため、塗布液供給ローラ12が版胴14に装着された印刷版17に接触し、塗布液が印刷版17のパターン領域に供給される。そして、印刷版17が一定速度で直線移動する基板Wの表面に接触することによって、印刷版17のパターン領域が基板Wに転写される。このようにして、パターン領域が基板Wの表面に形成される。
【0046】
次に、ステージ22について説明する。ステージ22は、基板載置部221、ガス供給部222、ノズル昇降機構223、排気部224、及びダクト昇降機構225を備えている。
【0047】
基板載置部221は、平板状の外形を有し、その上面に基板Wを水平姿勢に載置して保持する。基板載置部221の上面には複数の図示しない吸引孔が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を形成することによって、基板載置部221上に載置された基板Wが固定保持される。
【0048】
ガス供給部222は、スリットノズル2221、配管2222、電磁弁2223を主たる構成として有する。
【0049】
スリットノズル2221は、基板Wの表面近傍に不活性ガスを噴射する噴射部に相当する部分である。なお、基板Wの表面近傍とは、基板載置部221の表面から、版胴14の回転軸の高さまでの範囲内を指すものとする。このようなスリットノズル2221が、印刷処理時におけるステージ22の移動方向(+Y方向)に沿って、基板載置部221よりも下流側(+Y側)に設けられている。
【0050】
なお、スリットノズル2221の設置位置は必ずしも上述の形態に限らない。スリットノズル2221は、印刷処理時におけるステージ22の移動方向(+Y方向)に沿って、基板載置部221よりも上流側に設けられていてもよい。また、スリットノズル2221は、ステージ22において、印刷処理時におけるステージ22の搬送方向における側方の位置に設けられていてもよい。
【0051】
スリットノズル2221が備えるスリット供給口2224は、長手方向が基板Wの移動方向に直交する幅方向(X軸方向)に沿っており、幅方向における基板Wの端縁部と同等、又はそれ以上の長さを有する。また、スリットノズル2221が備えるスリット供給口2224は、基板載置部221の方向、すなわち印刷処理時における基板Wの移動方向の上流側を向いて設けられている。従って、スリットノズル2221から供給される不活性ガスは、基板Wの下流側(+Y側)から上流側(−Y側)に向かう気流を形成して、基板Wの表面近傍を覆う。
【0052】
スリットノズル2221は、処理室に備え付けられた別体の不活性ガス供給源500に、配管2222を介して連結されている。配管2222には電磁弁2223が介挿されており、後述する制御部90からの信号に応じて、電磁弁2223は開閉する。このような電磁弁2223の開閉に応じて、不活性ガスの供給のオン/オフが切り替えられる。なお、不活性ガスとしては、例えば窒素、又は希ガスなどが用いられる。また、不活性ガスは気体単体で供給される場合のみならず、例えば有機溶媒の蒸気が幾分含まれていても構わない。この場合、含まれる有機溶媒は微量であるため、有機溶媒の蒸気を含む不活性ガスが、印刷材料の劣化を引き起こす程の水分及び酸素を有することはない。
【0053】
スリットノズル2221は、その下部において、ノズル昇降機構223と連結されている。ノズル昇降機構223は、制御部90からの指示に応じて昇降し、スリットノズル2221の高さ方向(Z軸方向)における位置を移動させる。具体的に、スリットノズル2221は、スリットノズル2221の上端が基板載置部221の載置面よりも下方に配置される退避位置と、退避位置よりも上方であって、スリットノズル2221が基板Wの表面近傍に向けて不活性ガスを噴射する噴射位置と、の間を移動する。噴射位置は、例えば、スリットノズル2221のスリット供給口2224が基板載置部221の載置面よりも上方に配置されている状態を実現できる位置である。
【0054】
ノズル昇降機構223としては、例えばエアシリンダなどが採用される。また、スリットノズル2221に連結されるノズル昇降機構223の数及び設置位置は、スリットノズル2221のサイズ及び重量に応じて適宜決定される。なお、図1に示される印刷装置1ではノズル昇降機構223が2つ設けられている。
【0055】
排気部224は、排気ダクト2241、排気用ファン2242、配管2243を主たる構成として有する。
【0056】
排気ダクト2241は不活性ガスを捕集する捕集部に相当する部分である。排気ダクト2241は、スリットノズル2221の設置位置に応じて、スリットノズル2221と向かい合わせの位置に設けられる。従って、本実施形態では、排気ダクト2241は、印刷処理時におけるステージ22の移動方向において、基板載置部221の上流側に設けられている。
【0057】
排気ダクト2241が備える排気口2244は、長手方向が基板Wの幅方向に沿っており、幅方向における基板Wの端縁部と同等、又はそれ以上の長さを有する。また、排気部224が備える排気口2244は、基板載置部221の方向を向いて、即ち基板Wの搬送方向の下流側を向いて設けられる。このように、スリットノズル2221のスリット供給口2224と排気ダクト2241の排気口2244とは向かい合わせでほぼ同じ高さに配置される。
【0058】
排気ダクト2241は、配管2243によって排気用ファン2242と連結されている。後述する制御部90からの信号に基づいて、排気用ファン2242のオン/オフは切り替えられる。排気用ファン2242がオンの状態になると、配管2243を介して排気ダクト2241周囲の雰囲気は吸引される。そして、吸引された気体は、排気用ファン2242を介して、印刷装置1が載置された処理室外に排気される。なお、不活性ガスの種類によっては、排気された気体は後処理を施される。
【0059】
排気ダクト2241は、その下部において、ダクト昇降機構225と連結されている。ダクト昇降機構225は、制御部90からの指示に応じて昇降し、排気ダクト2241の高さ方向(Z軸方向)における位置を移動させる。具体的に、排気ダクト2241は、排気ダクト2241の上端が基板載置部221の載置面よりも下方に配置される退避位置と、退避位置よりも上方で、排気ダクト2241が不活性ガスを捕集する上方捕集位置と、の間を移動する。より具体的に、上方捕集位置は、排気ダクト2241の排気口2244が基板載置部221の載置面よりも上方に配置された状態を実現できる位置である。
【0060】
ダクト昇降機構225としては、例えばエアシリンダなどが採用される。また、排気ダクト2241と連結されるダクト昇降機構225の数及び設置位置は、排気ダクト2241のサイズあるいは重量に応じて適宜決定される。
【0061】
なお、排気部224及びダクト昇降機構225は、必ずしも本実施形態のように印刷装置1に設置されていなくてもよい。処理室内の雰囲気を排気する排気部が、印刷装置1が設置された処理室に備え付けられていてもよい。
【0062】
図3には、制御部90のハードウェア構成が示されている。制御部90のハードウェアとしての構成は、一般的なコンピュータと同様である。即ち、制御部90は、各種演算処理を行うCPU91、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるRОM92、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM93及び制御用ソフトウェア、又はデータなどを記憶しておく磁気ディスク94をバスライン99に接続して構成されている。また、入力手段としてキーボード95及びマウス96がバスライン99に接続されている。さらに、バスライン99には、モータ15、昇降モータ26、リニアモータ31、リニアスケール(図示省略)、電磁弁2223、排気用ファン2242、ノズル昇降機構223、ダクト昇降機構225、ステージ22の位置調整を行う位置調整機構(図示省略)などが電気的に接続されている。
【0063】
上記の構成以外にも印刷装置1は、版胴14及び塗布液供給ローラ12をそれぞれ洗浄する洗浄機構、ならびに、液供給スリットノズル11と塗布液供給ローラ12との距離、塗布液供給ローラ12と印刷版17との距離および印刷版17と基板Wとの距離をそれぞれ調整する機構等を備えている。
【0064】
<1−2.処理の流れ>
次に、上述の構成を有する印刷装置1の処理動作を説明する。
【0065】
図4に示されるタイムチャートは、基板Wが連続処理されている状況で、印刷装置1の各部分の連動の様子を表している。なお、図4には、印刷装置1が搬送されてきた1枚の基板Wに対して、印刷処理が一度実施される形態が示されている。
【0066】
基板Wの連続処理は第1ステップから第5ステップの段階に分けられる。これらのステップは、版胴14の下方(以下において、「版胴下方部」と称する場合がある。)と、ステージ22及びステージ22上に載置された基板Wの各部位と、の位置関係に応じて決定される。具体的に版胴下方部は、版胴14における最下端の部分の直下に位置する。なお、以下において、印刷処理時における基板Wの搬送方向の下流側で、ステージ22の端部をステージ前端部22A、基板Wの端部を基板前端部WAと称する。また、印刷処理時における基板Wの搬送方向における上流側で、ステージ22の端部をステージ後端部22B、基板Wの端部を基板後端部WBと称する。具体的に、各ステップ時における印刷装置1の各部分の動作の様子を説明する。
【0067】
<第1ステップ>
図5は、第1ステップにおける印刷装置1の各部分の状態が概略的に示された図である。第1ステップは、ステージ22が有するステージ前端部22Aが版胴下方部に到達するまでの段階である。
【0068】
第1ステップにおいて、塗布液が液供給スリットノズル11を介して塗布液供給ローラ12の外周面に供給される。また、塗布液供給ローラ12及び版胴14が回転を始める。
【0069】
洗浄等の処理が前工程で施された基板Wは、基板載置部221に載置された状態で直動ガイド32に沿って搬送される。このとき、スリットノズル2221及び排気ダクト2241は、版胴14との干渉を防ぐため各々退避位置に退避している。なお、第1ステップでは、電磁弁2223は閉鎖されているとともに、排気用ファン2242はオフの状態である(図4参照)。
【0070】
<第2ステップ>
図6は、第2ステップにおける印刷装置1の各部分の状態が概略的に示された図である。第2ステップは、ステージ前端部22Aが版胴下方部に到達し、ステージ前端部22Aから基板前端部WAまでが版胴下方部を通過する段階である。
【0071】
制御部90は、図示しないリニアスケールから送信されたステージ22の位置信号に基づいて、スリットノズル2221が版胴14と干渉しないことを検出すると、ノズル昇降機構223に信号を送信する。信号を受けたノズル昇降機構223の駆動によって、退避位置に退避していたスリットノズル2221が噴射位置に昇降移動する(図4参照)。
【0072】
スリットノズル2221が噴射位置に移動したことをノズル昇降機構223が備える図示しない高さ位置検出センサが検出すると、制御部90は電磁弁2223を開放する。これによって、スリットノズル2221から不活性ガスの供給が開始される。この不活性ガスの供給開始は、版胴14による転写の開始タイミングに同期しており、この実施の形態のように、転写開始よりも所定時間だけ前の時刻で不活性ガスの供給が開始されることが好ましい。
【0073】
なお、第2ステップにおいて、排気ダクト2241は退避位置に配置された状態が維持される。制御部90は、排気用ファン2242に信号を送信して、排気用ファン2242の駆動を開始させる。これによって、退避位置の排気ダクト2241周囲の雰囲気が排気ダクト2241の排気口2244に向かって流れだし、気流が形成される。すなわち、排気用ファン2242の駆動によって、排気ダクト2241周囲の雰囲気が排気ダクト2241に捕集される。このような気流は、基板Wの表面に沿って流れ、上方空間への拡散をあまり生じさせずに水平に流れる。
【0074】
このように、排気ダクト2241の排気口2244に向かう吸い込み流れが形成されることによって、スリットノズル2221から供給された不活性ガスは周囲に拡散することなく、排気ダクト2241に向かって流れる。
【0075】
<第3ステップ>
図7は、第3ステップにおける印刷装置1の各部分の状態が概略的に示された図である。第3ステップは、基板前端部WAから基板後端部WBまでが、版胴下方部を通過する段階である。この段階では、塗布液供給ローラ12から塗布液の供給を受けた印刷版17が、版胴下方部において、搬送される基板Wの表面に接触する。これによって、パターン領域が基板Wの表面に転写される。
【0076】
第2ステップから引き続き、スリットノズル2221からの不活性ガスの供給は第3ステップにおいても継続されている。印刷版17と基板Wとが接触しているため、スリットノズル2221から印刷版17と基板Wとの接触部(版胴下方部)までの空間は、特に不活性ガス濃度の高い気相空間となる。基板W上に形成された転写直後のパターンは、このような気相空間中を進行する。
【0077】
印刷処理時における基板Wの搬送方向に逆行する不活性ガスの気流は、パターンが転写された基板W上を覆って流れる。このとき、不活性ガスは長手方向を有するスリット供給口2224から供給されるため、気流は幅方向における基板Wの端縁部と同程度の幅を有している。つまり、パターンが転写された基板Wは、確実に不活性ガスの気流に覆われる。このように、基板Wは不活性ガスの気流に覆われて大気との接触を遮られる。パターンが形成された直後の基板Wは、幅方向に沿って均等に不活性ガスの気流を直接受けるため、基板Wに形成されたパターンは幅方向に沿って一様な乾燥状態となる。
【0078】
なお、スリットノズル2221が、印刷処理時におけるステージ22の移動方向に沿って、基板載置部221の上流側に設置されている場合、不活性ガスの気流は印刷版17と基板Wとの接触部に遮られるため、転写された直後のパターンが不活性ガスの気流を直接受けることはない。しかしながら、不活性ガスは、基板Wと版胴14との接触部の幅方向における両側方から回り込んで流れる。このため、パターンが転写された基板Wの表面近傍は不活性ガス雰囲気下に置かれる。
【0079】
不活性ガスの供給は、少なくとも基板Wへの印刷材料の転写が終了するまで維持される。好ましくは、基板W上の有機EL層の劣化を極力抑制する目的で、印刷材料の転写が終了した後も、所定時間だけ不活性ガスの供給を続けることが望ましい。
【0080】
また、退避位置に配置された排気ダクト2241は、退避位置に配置された状態で不活性ガスの吸引を行い続ける。従って、スリットノズル2221から供給された不活性ガスの気流は、そのまま排気部224で形成される気流によって排気ダクト2241にて捕集されるため、不活性ガスが周囲に拡散することは抑えられる。
【0081】
<第4ステップ>
図8は、第4ステップにおける印刷装置1の各部分の状態が概略的に示された図である。第4ステップは、基板後端部WBからステージ後端部22Bまでが、版胴下方部を通過する段階である。印刷版17によるパターンの転写は終了しているが、スリットノズル2221からの不活性ガスの供給は継続して行われている。従って、基板Wは、パターンの全域が不活性ガスに覆われた状態で直動ガイド32に沿って搬送される。
【0082】
また、退避位置に配置された状態の排気ダクト2241は、引き続き、不活性ガスを捕集し、処理室の外部に排気する。
【0083】
<第5ステップ>
図9は、第5ステップにおける印刷装置1の各部分の状態が概略的に示された図である。第5ステップは、ステージ後端部22Bが版胴下方部を通過した後の段階である。
【0084】
リニアスケールからステージ22の位置信号を受けた制御部90は、ダクト昇降機構225に信号を送信する。これを受けたダクト昇降機構225が上昇して、排気ダクト2241は上方捕集位置に移動する。
【0085】
このように、第5ステップにおいて、スリットノズル2221及び排気ダクト2241は、基板載置部221の載置面よりも上方である、噴射位置と上方捕集位置とに配置される。このため、スリットノズル2221から供給され、基板Wの表面全面を覆って流れる不活性ガスの気流は、流れ方向を保ちつつ排気ダクト2241に向かって流れる。
【0086】
ステージ22が所定の受け渡し位置まで基板Wを搬送すると、基板Wは次工程の処理が行われる、図示しない装置に受け渡される。リニアスケールから位置信号を受信した制御部90は、電磁弁2223を閉鎖させて、スリットノズル2221からの不活性ガスの供給を停止させる。また、同様に、制御部90は、排気用ファン2242の駆動も停止させて、不活性ガスの排気を停止させる。
【0087】
なお、不活性ガスの供給は、ステージ22が所定の受け渡し位置に到達するまで実施される形態に限られない。制御部90が、塗布液が基板Wに供給される直前から、塗布液の供給が終了した直後まで、スリットノズル2221からの不活性ガスの供給を維持するように制御することも可能である。つまり、不活性ガスが第3ステップから第4ステップの間、供給される形態であってもよい。これによって、不活性ガスの使用はより抑えられるため、印刷処理にかかるランニングコストの増大を抑えられる。
【0088】
基板Wを降ろしたステージ22は、次処理予定の基板Wを載置させるために、直動ガイド32の原点位置に向かって移動する。つまり、ステージ22は、印刷処理が実行される際の基板Wの搬送方向とは逆方向に移動する。このとき、スリットノズル2221及び排気ダクト2241は、版胴14との干渉を避けるために退避位置に退避した状態である。
【0089】
なお、印刷装置1が版胴14の位置を移動させることが可能な機構を有しているならば、ステージ22が直動ガイド32の原点位置に移動する際、版胴14を上方に移動させておくことも可能である。これによって、ステージ22の搬送は、スリットノズル2221及び排気ダクト2241が噴射位置及び上方捕集位置に配置された状態で可能である。
【0090】
以上のように、本実施形態に係る印刷装置1は、印刷装置1が備えるガス供給部222が基板Wの表面近傍に窒素ガスなどの不活性ガスを供給しながら、基板Wの表面にパターンを形成する。従って、処理室内全体に不活性ガスを行き渡らせることなく、基板Wの表面に形成された塗布液(印刷材料)のパターンが大気中に含まれる酸素及び水分に曝露されることを抑えることができる。
【0091】
また、本実施形態では、不活性ガスが基板Wの表面近傍のみに供給されるため、不活性ガスの供給量が少なくて済む。従って、不活性ガスが印刷処理時に供給されるにあたって、ランニングコストは抑えられる。
【0092】
また、不活性ガスは基板Wの表面近傍のみに供給されるため、印刷装置1が設置された空間全体に対する不活性ガス濃度は低くなる。このため、作業者は、緊急に処理室内に入らなければならない状況であっても、マスク装着などの煩雑な入室準備作業を要さずして、処理室内に入ることができる。
【0093】
さらに、印刷処理中の所定の期間にのみ不活性ガスは吐出されるため、予め処理室全体に不活性ガスを充満させる必要がなく、印刷の準備時間が短くて済む。従って、印刷処理にかかる処理時間を短くすることができる。
【0094】
また、本実施形態では、スリットノズル2221がステージ22に設けられている。このため、不活性ガスは周囲に拡散する間もなく、基板Wの表面近傍に供給される。従って、基板Wの表面はより確実に大気との接触を遮られる。
【0095】
また、本実施形態では、スリットノズル2221が、パターン形成が行われるときの基板Wの相対的な移動方向に沿って基板載置部221よりも下流側のステージ22に設けられている。従って、不活性ガスは、パターンが形成された直後の基板Wに対して直接噴射されるため、基板Wの乾燥を促進させることができる。
【0096】
また、本実施形態では、スリットノズル2221の向い合わせの位置であって、スリットノズル2221から供給される不活性ガスの気流を受ける位置に排気ダクト2241が設けられている。従って、スリットノズル2221から供給された不活性ガスが周囲に拡散することを確実に抑えられる。
【0097】
また、本実施形態では、ガス供給部222はノズル昇降機構223を有している。ノズル昇降機構223がスリットノズル2221を退避位置に移動させることによって、ステージ22が搬送される際に、スリットノズル2221が版胴14と干渉することを防ぐことができる。
【0098】
また、本実施形態では、排気部224がダクト昇降機構225を有している。ダクト昇降機構225が排気ダクト2241を退避位置に移動させることによって、ステージ22が搬送される際に、排気ダクト2241が版胴14と干渉することを防ぐことができる。さらに、排気ダクト2241は、上方捕集位置にて、スリットノズル2221と同程度の高さ位置で、スリットノズル2221から供給される不活性ガスを捕集できる。このため、供給された不活性ガスの捕集は効率的に行われる。
【0099】
<2.変形例>
本願発明は、上記実施形態に限られるものではなく、種々の変形が施された形態であっても構わない。
【0100】
上記実施形態では、スリットノズル2221及び排気ダクト2241はステージ22に設置されていたが、このような形態には限られない。スリットノズル2221及び排気ダクト2241は印刷装置1の基台20に取り付けられていてもよい。この場合、スリットノズル2221及び排気ダクト2241は、版胴14に干渉することがないので、ノズル昇降機構223及びダクト昇降機構225が印刷装置1に設けられる必要はない。
【0101】
また、上記実施形態では、印刷処理のために搬送される1枚の基板に対して、印刷装置1が印刷処理を1度だけ実施する形態、即ち基板Wが片道搬送される形態であったが、このような形態に限られない。印刷装置1が印刷処理のために搬送される1枚の基板Wに対して、印刷処理を複数回行う形態であってもよい。即ち、基板Wが往復搬送される形態であっても対応可能である。この場合、基板Wが印刷方向に逆行する方向に搬送されても、不活性ガスの供給は基板Wに対して継続して行われる。排気ダクト2241及びスリットノズル2221が版胴14と干渉する直前に順次退避位置に移動することによって、版胴14と排気ダクト2241及びスリットノズル2221との接触は妨げられる。
【0102】
往復塗布を行う装置の他の態様として、スリットノズル2221と排気ダクト2241とは別個に、ステージ22の(+Y)側に図示しない排気ダクトと、ステージ22の(−Y)側に図示しないスリットノズルとを設けてもよい。なお、これらの図示しないスリットノズルおよび排気ダクトは、独立して昇降可能な機構を有する。また、スリットノズル2221及び排気ダクト2241が、図示しないスリットノズル及び排気ダクトと互いに干渉することのないようにY軸方向に沿って前後に設けられていてもよい。
【0103】
基板Wが(+Y)方向へ搬送される際には、(+Y)側のスリットノズル2221と(−Y)側の排気ダクト2241とがステージ22の上に移動されて、図2と同様の処理が行われる。また、基板Wが逆向きの(−Y)方向へ搬送される際には、(−Y)側のスリットノズルと(+Y)側の排気ダクトとがステージ22の上に移動されて、不活性ガスの吐出と吸引とが行われる。このようにすれば、往復塗布のいずれの搬送方向についても対称的な不活性ガス流が得られる。
【0104】
また、上述のように、印刷装置1が版胴14の位置を昇降移動させることが可能な機構を有している場合、版胴14を上方に移動させることが可能である。これによって、排気ダクト2241及びスリットノズル2221が上方捕集位置及び噴射位置に配置された状態で、ステージ22を直動ガイド32の原点位置に移動させることも可能である。
【0105】
また、上記実施形態では、第2ステップにて、排気ダクト2241が退避位置に配置された状態で、不活性ガスの捕集が開始されていたが、このような形態には限られない。不活性ガスの捕集は、例えば、第4ステップで、排気ダクト2241が上方捕集位置に移動してから開始される形態であっても構わない。なお、排気用ファン2242の駆動はいずれのタイミングで行われても構わない。
【符号の説明】
【0106】
1 印刷装置
14 版胴
17 印刷版
20 基台
22 ステージ
31 リニアモータ
32 直動ガイド
51 アライメントテーブル
90 制御部
221 基板載置部
222 ガス供給部
223 ノズル昇降機構
224 排気部
225 ダクト昇降機構
2221 スリットノズル
2241 排気ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するステージと、
所定のパターンが形成されるとともに印刷材料が塗布された印刷版が、印刷材料を前記基板に転写してパターン形成を行う転写部と、
前記ステージを前記転写部に対して相対的に移動させる移動機構と、
不活性ガスを噴射する噴射部から、相対的に移動する前記ステージが保持する前記基板の表面近傍に向けて、前記不活性ガスを供給するガス供給部と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記噴射部が前記ステージに設置されている、印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記噴射部が、前記パターン形成が行われるときの前記基板の相対的な移動方向に沿って、前記基板の載置位置よりも下流側の前記ステージに設けられている、印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記噴射部と向かい合わせの位置に設けられるとともに前記ガス供給部から供給された前記不活性ガスを捕集する捕集部を有しており、前記捕集部が捕集した前記不活性ガスを排気する排気部をさらに備える印刷装置。
【請求項5】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記噴射部を、
前記噴射部の上端が前記ステージにおける前記基板の載置面よりも下方に配置される退避位置と、前記噴射部が前記基板の表面近傍に前記不活性ガスを噴射する噴射位置と、に移動させる噴射部移動機構をさらに備える印刷装置。
【請求項6】
請求項4に記載の印刷装置であって、
前記捕集部を、
前記捕集部の上端が前記ステージにおける前記基板の載置面よりも下方に配置される退避位置と、前記退避位置よりも上方で、前記捕集部が前記不活性ガスを捕集する上方捕集位置と、に移動させる捕集部移動機構をさらに備える印刷装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記転写部が前記基板への前記印刷材料の転写の開始に同期して、前記ガス供給部が前記不活性ガスの供給を開始し、少なくとも前記転写部が前記基板への前記印刷材料の転写を終了するまで前記不活性ガスの供給を維持するように制御する制御部をさらに備える印刷装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記印刷材料が有機EL材料である印刷装置。
【請求項9】
基板を保持するステージと版胴とを相対的に移動させつつ印刷材料を前記基板に塗布する印刷装置を用いた印刷方法であって、
前記版胴の外周面に装着された印刷版に対して、前記基板が保持された前記ステージを相対的に移動させる移動工程と、
前記移動工程によって相対的に移動する前記基板に対して、前記印刷材料が塗布された前記印刷版が、所定のパターンを前記基板に転写する転写工程と、
前記転写工程に並行して、前記基板の表面近傍に不活性ガスを供給するガス供給工程と、
を備える印刷方法。
【請求項10】
請求項9に記載の印刷方法であって、
前記ガス供給工程にて供給される前記不活性ガスは、前記転写工程において相対的に移動する前記基板の下流方向から供給される、印刷方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の印刷方法であって、
前記ガス供給工程にて供給された前記不活性ガスを排気する排気工程をさらに備える印刷方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−209155(P2012−209155A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74541(P2011−74541)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】