説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】よりラメ調感を有する印刷を行うこと。
【解決手段】媒体に光輝性インクを噴射して光輝性画像を形成するノズルと、前記媒体に透明なクリアインクを噴射して透明画像を形成するノズルと、前記媒体にカラーインクを噴射してカラー画像を形成するノズルと、前記媒体に前記光輝性インクを噴射させ、前記クリアインクを噴射させ、前記カラーインクを噴射させる制御部であって、同じ階調の画素で形成される所定面積のブロックが並べられたパターンを前記透明画像に適用し、該適用後の透明画像を形成するように前記クリアインクを噴射させる制御部と、を備える印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体に印刷を行う際、メタリックインク等を用いて特殊な発色を有する印刷が行われることがある。このような特殊な発色を有するものの中には所謂「ラメ」と言われる独特の金属的な光輝感を有するものも含まれる。ラメ調印刷とは、反射率がその場所毎に異なる光輝感を有する印刷ともいえる。
【0003】
特許文献1には、ラメ印刷層を有するカードが示されている。また、特許文献2には、光輝性塗色用カラーシートが示されている。また、特許文献3には、印刷用メディアと転写シートフィルムとを用いて画像を形成する方法が示されている。特許文献4には、カラーインクの吐出をマスクして所定の質感を有する印刷を行うことが示されている。特許文献5には、メタリックインクのドット集中を変化させることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−200895号公報
【特許文献2】特開2003−245600号公報
【特許文献3】特開2002−254896号公報
【特許文献4】特開2010−52226号公報
【特許文献5】特開2009−233877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクを噴射して印刷を行うインクジェット方式の印刷を行うことによりラメ調の印刷を行うことができれば、領域毎に異なるラメ調感を醸し出すことができ便利である。このように領域毎に異なるラメ調感を実現した場合、よりラメ調感を有する印刷物が望まれる場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、よりラメ調感を有する印刷を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、
媒体に光輝性インクを噴射して光輝性画像を形成するノズルと、
前記媒体に透明なクリアインクを噴射して透明画像を形成するノズルと、
前記媒体にカラーインクを噴射してカラー画像を形成するノズルと、
前記媒体に前記光輝性インクを噴射させ、前記クリアインクを噴射させ、前記カラーインクを噴射させる制御部であって、同じ階調の画素で形成される所定面積のブロックが並べられたパターンを前記透明画像に適用し、該適用後の透明画像を形成するように前記クリアインクを噴射させる制御部と、
を備える印刷装置である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態における印刷システム100のブロック図である。
【図2】本実施形態におけるインクジェットプリンター1の斜視図である。
【図3】本実施形態におけるインクジェットプリンター1の内部側面図である。
【図4】ヘッド41の構造を説明する断面図である。
【図5】ヘッド41のノズルの説明図である。
【図6】本実施形態において形成される画像のレイヤーの説明図である。
【図7】図7A〜図7Cは、本実施形態におけるラメ調印刷に用いるランダムパターンの図である。
【図8】本実施形態におけるラメ調印刷実行のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。すなわち、
媒体に光輝性インクを噴射して光輝性画像を形成するノズルと、
前記媒体に透明なクリアインクを噴射して透明画像を形成するノズルと、
前記媒体にカラーインクを噴射してカラー画像を形成するノズルと、
前記媒体に前記光輝性インクを噴射させ、前記クリアインクを噴射させ、前記カラーインクを噴射させる制御部であって、同じ階調の画素で形成される所定面積のブロックが並べられたパターンを前記透明画像に適用し、該適用後の透明画像を形成するように前記クリアインクを噴射させる制御部と、
を備える印刷装置である。
このようにすることで、光輝性インクの層とカラー画像の層との間に挟まれたクリアインクの層においてパターンを形成するので、クリアインクの透過率・反射率の変化を利用してよりラメ調感を有する印刷をすることができる。また、光輝性インクの層をクリアインクの層が保護するため、光輝性インクに含まれる金属片の化学変化を抑制し、長期にわたり印刷物の光輝性感を維持することができる。すなわち、光輝性インクの層を保護しつつ、クリアインクの層を利用してラメ調感を有する印刷を行うことができる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記ブロックは、前記所定面積の大きさがブロックごとに一定の範囲で変動することが望ましい。
このようにすることで、ブロックの大きさをランダムにしてよりラメ調感のある印刷を行うことができる。
【0012】
また、前記ブロックは不規則に並ぶことが望ましい。
このようにすることで、ブロックを不規則に並べてよりラメ調感のある印刷を行うことができる。
【0013】
また、前記所定面積よりも小さいカラー画像が存在する位置には前記パターンを適用しないことが望ましい。
仮に、パット−案のブロックよりも小さいカラー画像片にパターンを適用した場合、このカラー画像片の濃度が変わるのみでラメ調印刷とはならない場合があるが、このようにすることでこのような不都合を回避することができる。
【0014】
また、前記制御部は、さらに、同じ階調の画素で形成される所定面積のブロックが並べられたパターンを前記カラー画像に適用し、該適用後のカラー画像を形成するように前記カラーインクを噴射させることが望ましい。
このようにすることで、さらにカラーインクによってもラメ調印刷を実行することになるので、よりラメ調を醸し出す印刷を行うことができる。
【0015】
また、前記透明画像に適用されるパターンと前記カラー画像に適用されるパターンは、それぞれ異なることが望ましい。
このようにすることで、同じパターンが透明画像とカラー画像とで重複することを回避してブロックを分散化して適切なラメ調印刷を行うことができる。
【0016】
また、前記透明画像に適用されるパターンと前記カラー画像に適用されるパターンは、何れか一方のパターンを回転移動、平行移動、及び、濃度の反転の少なくともいずれか1つを他方のパターンに適用したものであることが望ましい。
このようにすることで、透明画像に適用されるパターンとかラー画像に適用されるパターンを異ならせて、ブロックを分散化し適切なラメ調印刷を行うことができる。
【0017】
また、本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項も明らかとなる。すなわち、
同じ階調の画素で形成される所定面積のブロックが並べられたパターンを透明画像に適用し、該適用後の透明画像を形成することと、
媒体に光輝性インクを噴射して光輝性画像を形成することと、
前記媒体にクリアインクを噴射して前記適用後の透明画像を形成することと、
前記媒体にカラーインクを噴射してカラー画像を形成することと、
を含む印刷方法である。
このようにすることで、光輝性インクの層とカラー画像の層との間に挟まれたクリアインクの層においてパターンを形成するので、クリアインクの透過率・反射率の変化を利用してよりラメ調感を有する印刷をすることができる。また、光輝性インクの層をクリアインクの層が保護するため、光輝性インクに含まれる金属片の化学変化を抑制し、長期にわたり印刷物の光輝性感を維持することができる。すなわち、光輝性インクの層を保護しつつ、クリアインクの層を利用してラメ調感を有する印刷を行うことができる。
【0018】
===実施形態===
図1は、本実施形態における印刷システム100のブロック図である。以下、これらを参照しつつ、本実施形態における印刷システム100の概略構成について説明する。
【0019】
印刷システム100は、印刷装置としてのインクジェットプリンター1(以下、単に「プリンター1」ということがある)とコンピューター110と、表示装置120と、入力装置130とを有している。プリンター1は、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する。コンピューター110は、インターフェース112を介してプリンター1と通信可能に接続されている。そして、プリンター1に画像を印刷させるため、コンピューター110は、その画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。このコンピューター110は、CPU113、メモリ114、インターフェース112、及び、記録再生装置140を備える。そして、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のコンピュータープログラムがインストールされている。記録再生装置140は、例えば、フレキシブルディスクドライブ装置やCD−ROMドライブ装置である。
【0020】
表示装置120は、例えば液晶モニタである。この表示装置120は、例えば、コンピュータープログラムのユーザーインタフェースを表示するためのものである。入力装置130は、例えば、キーボードやマウスである。
【0021】
インクジェットプリンター1は、用紙搬送ユニット20、記録ユニット40、制御ユニット51、及び、駆動信号生成ユニット52を含む。用紙搬送ユニット20は、ロール紙Rから用紙Sのような媒体を記録ユニット40に供給し、印刷後の用紙Sを排出する。記録ユニット40は、後述するように、ヘッド41を搭載するキャリッジ43を移動させ、ヘッド41からインクを噴射して媒体に画像形成を行う。
【0022】
また、インクジェットプリンター1は、上記各構成機器の動作を統括的に制御する制御ユニット51を備える。制御ユニット51は、演算等を行うCPU51a、プログラム及び演算結果等を記憶するメモリ51b、及び、外部装置と通信を行うインターフェース51cを備える。制御ユニット51は、用紙搬送ユニット20、記録ユニット40、及び、駆動信号生成回路52を制御する。
【0023】
駆動信号生成ユニット52は、記録ユニット40のヘッド41の各ピエゾ素子PZT(後述)に駆動信号COMを供給する。駆動信号生成ユニット52には、制御ユニット51から駆動信号の形状を規定するデジタルデータが送られ、これらデジタルデータに基づいて電圧波形である駆動信号COMを生成する。
【0024】
図2は、本実施形態におけるインクジェットプリンター1の斜視図である。図3は、本実施形態におけるインクジェットプリンター1の内部側面図である。以下の説明では、媒体の搬送方向(排出方向)をX軸方向と、X軸方向と直交する搬送路26の幅方向(図3において紙面垂直方向)をY軸方向と、X軸方向及びY軸方向と直交する鉛直方向をZ軸方向と称して説明する場合がある。
【0025】
図2に示すように、このインクジェットプリンター1は、長手方向が水平に配置された記録ユニット40と、記録ユニット40の端部に装着された筐体90と、記録ユニット40の上側に装着された装填部10と、記録ユニット40および筐体90を下方から支持する脚部70とを備える。
【0026】
記録ユニット40は、搬送路26に沿って搬送されてくる媒体に対してインクを噴射するヘッド41を備える。ヘッド41は、搬送路14の幅方向に移動自在なキャリッジ43に搭載されている。キャリッジ43には、インクを貯留する不図示のインクカートリッジが装着される。ヘッド41は、複数のノズル列を備え、各ノズル列から所定の色(例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、クリア(Cl)、メタリック(Me))のインクをそれぞれ噴射可能な構成となっている。ヘッド41は、媒体の記録面に対してインクを噴射することにより所定の画像や文字等の情報を記録する画像形成を実施する。
【0027】
記録ユニット40にて画像形成を施された媒体は、排出ローラー24から排出される。排出ローラー24は、紙種によってニップするローラーを、ギザローラー25aあるいはコロローラー25bに切り替える機構を備える。
【0028】
排出ローラー24の下流側には、排出された媒体を所定サイズにせん断するカッター装置61が設けられている。カッター装置61は、排出された媒体の高さ位置を規制する規制部材62と、媒体の排出方向(X軸方向)と直交する幅方向(Y軸方向)に移動して媒体をせん断するカッターユニット63とを有する。
【0029】
筐体90の上面には、操作パネル80が配置される。操作パネル80は、ユーザが操作する複数のスイッチ82の他、プリンター1の動作状態を示す表示部84も含む。従って、ユーザは、操作パネル80およびカートリッジホルダが配置された側を前面として、この前面側からプリンター1を操作する。
【0030】
図4は、ヘッド41の構造を説明する断面図である。ヘッド41には、流路416が形成され、インクはこの流路416を通じて供給される。ヘッド41のケース411には、接着用基板412が固定されている。この接着用基板412は、矩形状の板であり、さらに一方の表面にピエゾ素子PZTが接着されている。ピエゾ素子PZTの先端にはアイランド部413が接合され、このアイランド部413の周囲には、弾性膜414による弾性領域が形成されている。
【0031】
ピエゾ素子PZTは、対向する電極間に電位差を与えることにより変形する。この例では、素子の長手方向に伸縮する。この伸縮量は、ピエゾ素子PZTの電位に応じて定まる。そして、ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部413は圧力室415側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部周辺の弾性膜414が変形するので、ノズルNzからインクを効率よく噴射させることができる。
【0032】
このような構造とすることで、ピエゾ素子PZTに印加される駆動信号の振幅を調整することにより複数のサイズのインクを噴射することができる。本実施形態では、小ドット、中ドット、及び、大ドットを形成することができる。
【0033】
図5は、ヘッド41のノズルの説明図である。本実施形態におけるヘッド41からは、イエローインクY、マゼンタインクM、シアンインクC、ブラックインクK、クリアインクCl、及び、メタリックインクMeの6種類のインクが噴射可能である。
【0034】
クリアインクClは、一般に、色インクと対照的に無色透明なインクのことである。ここで、特にこのような無色透明に限らず、有色透明であったり、また有色非透明であっても、媒体Sに印刷されたときに、反射型光学センサなどの各種センサにより検知が難しいインクを広くいう。
【0035】
メタリックインクMeは、金属顔料(メタリック顔料)と有機溶剤を含有する。メタリック顔料は、金属光沢等の機能を有するものであれば特に限定されないが、アルミニウム又はアルミニウム合金、あるいは、銀又は銀合金であることが望ましい。これらの中でも、コストの観点及び高い金属光沢を確保する観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが望ましい。アルミニウム合金を用いる場合、アルミニウムに添加される別の金属元素又は非金属元素としては、金属光沢を有する等の機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等を挙げることができ、これらの単体又はこれらの合金及びこれらの混合物の少なくとも一種が好適に用いられる。本実施形態では、金属顔料として銀が用いられる。なお、メタリックインクは光輝性インクに含まれる。光輝性インクは、含有される顔料が上記のような金属顔料には限られず、金属光沢を発揮するインクであればよい。
【0036】
図には、4つのノズル列が示されている。これらノズルのうち、下流側のノズルはカラーインクを噴射する。上流側のノズルはメタリックインクMeを噴射する。中間のノズルはクリアインクClを噴射する。
【0037】
具体的には、Aノズル列NAのノズル#1〜#60はブラックインクKを噴射する。Aノズル列NAのノズル#61〜#120はクリアインクClを噴射する。Aノズル列NAのノズル#121〜180はメタリックインクMeを噴射する。
【0038】
同様に、Bノズル列NBのノズル#1〜#60はシアンインクCを噴射する。Bノズル列NBのノズル#61〜#120はクリアインクClを噴射する。Bノズル列NBのノズル#121〜180はメタリックインクMeを噴射する。
【0039】
同様に、Cノズル列NCのノズル#1〜#60はマゼンタインクMを噴射する。Cノズル列NCのノズル#61〜#120はクリアインクClを噴射する。Cノズル列NCのノズル#121〜180はメタリックインクMeを噴射する。
【0040】
同様に、Dノズル列NDのノズル#1〜#60はイエローインクYを噴射する。Dノズル列NDのノズル#61〜#120はクリアインクClを噴射する。Dノズル列NDのノズル#121〜180はメタリックインクMeを噴射する。
【0041】
このような構成とすることで、少なくともメタリックインクMeを媒体に噴射し、その上にクリアインクClを噴射し、さらにその上にカラーインクを噴射することができる。
【0042】
図6は、本実施形態において形成される画像のレイヤーの説明図である。本実施形態において、ラメ調の印刷を行うために図6に示すような複数枚のレイヤーからなる画像が作成される。まず、通常の画像と同様にレッドRのレイヤー、グリーンGのレイヤー、ブルーBのレイヤーによるカラー画像が作成される。これら3原色のレイヤーを重ね合わせると1枚のカラー画像が完成する。
【0043】
さらに、このカラー画像のどの領域にラメ調印刷を適用するかを示す画像が任意的にカラーラメレイヤーに作成される。この画像は、後述するランダムパターンによる画像である。ランダムパターンについては後述する。
【0044】
また、本実施形態では、クリアClレイヤーが設けられる。これはクリアインクClが噴射される領域を規定するためのレイヤーである。なお、本実施形態では、クリアClレイヤーにおいて、媒体の全面にクリアインクClが噴射されるように領域が規定される。これは、クリアClインクにより媒体上のメタリックインクMeの層を保護するためである。
【0045】
さらに、本実施形態では、クリアラメレイヤーが設けられ、クリアインクClが噴射される領域のどの領域にラメ調印刷を適用するかを示す画像が作成される。この画像も、後述するランダムパターンによる画像である。
【0046】
また、メタリックインクMeを噴射する領域を規定するためのメタリックMeレイヤーが設けられる。なお、本実施形態では、メタリックインクMeは媒体の全面に噴射されることを前提に説明を行う。
【0047】
図7A〜図7Cは、本実施形態におけるラメ調印刷に用いるランダムパターンの図である。本実施形態において、図7A〜図7Cに示すようなパターンをランダムパターンと呼ぶ。ランダムパターンは、複数のブロック状片が不規則に並ぶパターンである。各ブロックは、同じ階調値を有する複数の画素で形成された所定面積のブロックである。これらブロックは全く同じ大きさのブロックが並ぶのではなく、その大きさがブロックごとに一定の範囲で変動し、形状もそれぞれ異なる。また、ブロックのそれぞれは異なる階調値を有している。これらのブロックの平均的な大きさは任意に変更可能であり、例えば図7Aに示すようなサイズのものであったり、より粗いサイズのブロックで形成された図7Bのようなものであったり、より細かいサイズのブロックで形成された図7Cのようなものであったりする。
【0048】
これら図において、黒色で示された部分ほど多くのインクが噴射され、白色で示された部分ほど少ないインクが噴射されることになる。たとえば、カラーラメパターンのレイヤーにおいて、各画素が256階調(値が0〜255)で表現されていた場合、白色、すなわち階調値0のとき(インク噴射デューティ0%)にはカラーインクは噴射されない。また、黒色、すなわち階調値255(インク噴射デューティ100%)のとき最も多くのインクが噴射される。
【0049】
ブロックの大きさは、カラーラメレイヤーの画像及びクリアラメレイヤーの画像ごとにその大きさを指定することができる。また、媒体の面積に占めるラメ調の領域が大きいほど大きいブロックを採用することとしてもよい。
【0050】
また、クリアラメレイヤーで用いられるランダムパターン(クリア画像のランダムパターン)とカラーラメレイヤーで用いられるランダムパターン(カラー画像のランダムパターン)は、それぞれ異なるものが用意されることが望ましい。この場合、クリア画像用のランダムパターンを回転移動させてカラー画像用のランダムパターンとすることもできる。また、クリア画像用のランダムパターンを平行移動させてカラー画像用のランダムパターンとしてもよい。また、クリア画像用のランダムパターンの濃度を反転させて、カラー画像用のランダムパターンとしてもよい。また、これらの組み合わせによりカラー画像用のランダムパターンとしてもよい。
【0051】
なお、後述するように、クリアインクClの層はメタリックインクMeの層を保護する役割も果たすため、クリア画像用のランダムパターンの画素の最低濃度をデューティ10%(階調値25)とすることが望ましい。
【0052】
図8は、本実施形態におけるラメ調印刷実行のフローチャートである。以下、本フローチャートを参照しつつ本実施形態におけるラメ調印刷を説明する。
【0053】
まず、画像データが入力(S102)される。画像データの入力は、コンピューター110上においてレイヤーを扱うことができる画像ソフトを介して画像が作成されることにより行われる。入力される画像は、前述の図6に示すように複数のレイヤーからなる画像である。
【0054】
次に、入力された画像データの変換処理(S104)が行われる。画像データの変換処理は、コンピューター110にインストールされたプリンタドライバにおいて行われる。画像データの変換処理では、解像度変換処理と色変換処理が行われる。解像度変換処理は、各レイヤーの画像について印刷する際の解像度に変換する処理である。色変換処理は、カラー画像のRGBの各レイヤーの各画素データをCMYK色空間の画像データに変換する処理である。すなわち、本変換処理によりRレイヤー、Gレイヤー、及び、Bレイヤーが、シアンレイヤー、マゼンタレイヤー、イエローレイヤー、及び、ブラックレイヤーに変換される。
【0055】
次に、ラメ調印刷を行う領域があるか否かの判定(S106)が行われる。ラメ調印刷を行う領域が有るか否かの判定は、クリアラメレイヤー及びカラーラメレイヤーにおける画像データを参照することにより行われる。クリアラメレイヤー又はカラーラメレイヤーにおいてラメ調印刷を行う領域が指定されている場合には、ステップS108が実行される。一方、ラメ調印刷を行う領域が指定されていない場合には、ステップS112が実行される。
【0056】
ステップS108では、カラーラメレイヤーに画像が存在する場合において、カラー画像についてランダムパターン処理が行われる。カラー画像についてのランダムパターン処理は、シアンレイヤー、マゼンタレイヤー、イエローレイヤー、及び、ブロックレイヤーの各レイヤーにカラーラメレイヤーの重ね合わせがされる。重ね合わせは、CMYKレイヤーの各画素の階調値にカラーラメレイヤーにおける同じ位置の画素の階調値がデューティ値として乗ぜられることにより行われる。
【0057】
例えば、ある画素におけるイエローの階調値が200であり、カラーラメレイヤーにおける同一画素のブロックの階調値が127(デューティが50%)であるとき、この画素におけるイエローの階調値は100(=200×50%)にされる。このような演算がイエローレイヤー、マゼンタレイヤー、シアンレイヤー、ブラックレイヤーの各画素においても行われる。これにより、カラーラメパターンレイヤーのランダムパターンに応じたイエローレイヤー、マゼンタレイヤー、シアンレイヤー、及び、ブラックレイヤーが生成される。
【0058】
また、クリア画像についてランダムパターン処理(S110)が行われる。クリア画像についてのランダムパターン処理は、クリアレイヤーにクリアラメパターンレイヤーの重ね合わせがされる。重ね合わせは、クリアレイヤーの各画素の階調値にクリアラメレイヤーにおける同じ位置の画素の階調値がデューティ値として乗ぜられることにより行われる。
【0059】
クリアレイヤーにおける画像は一般的に、その画像が形成されている領域において階調値は255とされる(カラー画像が複数階調値によって形成されるのとは対照的ではあるが、勿論、カラー画像のように複数の階調値によって形成されるものとしてもよい)。よって、ある画素におけるクリアの階調値が255であり、クリアラメレイヤーにおける同一画素のブロックの階調値が127(デューティが50%)であるとき、この画素におけるクリアの階調値は127(int(255×50%))にされる。このような演算が各画素について行われ、クリアレイヤーが生成される。本実施形態において特徴的であるのは、このようにクリア画像についてラメ調印刷のためのランダムパターンを適用する点にある。
【0060】
なお、カラー画像における画像片の大きさがクリア画像用のランダムパターンのブロックの大きさよりも小さい場合には、その画像片についてはクリア画像用のランダムパターンを適用しないこととすることもできる。これは、仮に、このような画像片にランダムパターンを適用した場合、その画像片の濃度が変わるだけでラメ調印刷とならないためである。
【0061】
次に、カラー画像についてハーフトーン処理(S112)が行われる。ハーフトーン処理は、CMYK画素データから、プリンター1で表現可能な少段階の階調データに変換する処理である。このハーフトーン処理により、例えば256階調を示すCMYK画素データから、4段階(大ドット、中ドット、小ドット、ドット無し)の階調値を示すデータに変換される。この処理はシアンレイヤー、マゼンタレイヤー、イエローレイヤー、及び、ブラックレイヤーのそれぞれについて行われ、インク色毎に階調値を示すデータに変換されることになる。
【0062】
次に、クリア画像についてハーフトーン処理(S114)が行われる。このハーフトーン処理により、256階調を示すクリア画像の画素データから4段階の階調値を示すデータに変換される。
【0063】
次に、メタリックについてハーフトーン処理(S116)が行われる。このハーフトーン処理により、256階調を示すメタリック画像の画像データから4段階の階調値を示すデータに変換される。
【0064】
以上の処理により、シアンインクC、マゼンタインクM、イエローインクY、ブラックインクK、クリアインクCl、及び、メタリックインクMeのそれぞれについて、どの画素にどのサイズのドットを形成するかが決定されることになる。
【0065】
次にラスタライズ処理(S118)が行われる。ラスタライズ処理は、ハーフトーン処理で得られたドットデータを、プリンター1に転送すべきデータ順に変更する処理である。そして、ラスタライズ処理後のデータに基づいてプリンター1は印刷を実行する(S120)。
【0066】
このようにすることで、メタリックインクMeの層とカラー画像の層との間に挟まれたクリアインクClの層においてランダムパターンを形成するので、クリアインクClの透過率・反射率の変化を利用してよりラメ調感を有する印刷をすることができる。
【0067】
また、メタリックインクMeには前述の通り金属顔料として銀が含有されていた。銀は粒子として含有され、噴射された後も媒体上に粒子状に付着する。粒子状に付着すると、外気に曝される表面積が大きいため、化学変化を生じやすい。化学変化するとメタリックインクの金属感が失われるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、メタリックインクMeの層をクリアインクClの層が保護するため、メタリックインクMeに含まれる金属片の化学変化を抑制し、長期にわたり印刷物のメタリック感を維持することができる。すなわち、メタリックインクMeの層を保護しつつ、クリアインクClの層を利用してラメ調感を有する印刷を行うことができる。
【0068】
<クリアインクについてのみラメを適用する場合>
上記実施形態では、クリアインク及びカラーインクについてランダムパターンを適用してラメ調の印刷を行ったが、クリアインクについてのみランダムパターンを適用してラメ調の印刷を行ってもよい。この場合、図6のカラーラメレイヤーは作成されず、図8においてステップS108のカラーについてのランダムパターン処理は行われない。
【0069】
このようにすることで、よりラメ調感を醸し出す印刷を行うことができる。
【0070】
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、印刷装置としてプリンター1が説明されていたが、これに限られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする液体吐出装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0071】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0072】
<ヘッドについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを噴射していた。しかし、液体を噴射する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 インクジェットプリンター、
10 装填部、
24 排出ローラー、25a ギザローラー、25b コロローラー、26 搬送路、
40 記録ユニット、41 ヘッド、42 トップカバー、
43 キャリッジ、44 フロントカバー、
61 カッター装置、62 規制部材、63 カッターユニット、
70 脚部、
80 操作パネル、82 スイッチ、84 表示部、
90 筐体、
R ロール、
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に光輝性インクを噴射して光輝性画像を形成するノズルと、
前記媒体に透明なクリアインクを噴射して透明画像を形成するノズルと、
前記媒体にカラーインクを噴射してカラー画像を形成するノズルと、
前記媒体に前記光輝性インクを噴射させ、前記クリアインクを噴射させ、前記カラーインクを噴射させる制御部であって、同じ階調の画素で形成される所定面積のブロックが並べられたパターンを前記透明画像に適用し、該適用後の透明画像を形成するように前記クリアインクを噴射させる制御部と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
前記ブロックは、前記所定面積の大きさがブロックごとに一定の範囲で変動する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記ブロックは不規則に並ぶ、請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記所定面積よりも小さいカラー画像が存在する位置には前記パターンを適用しない、請求項1〜3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、同じ階調の画素で形成される所定面積のブロックが並べられたパターンを前記カラー画像に適用し、該適用後のカラー画像を形成するように前記カラーインクを噴射させる、請求項1〜4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記透明画像に適用されるパターンと前記カラー画像に適用されるパターンは、それぞれ異なる、請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記透明画像に適用されるパターンと前記カラー画像に適用されるパターンは、何れか一方のパターンを回転移動、平行移動、及び、濃度の反転の少なくともいずれか1つを他方のパターンに適用したものである、請求項5又は6に記載の印刷装置。
【請求項8】
同じ階調の画素で形成される所定面積のブロックが並べられたパターンを透明画像に適用し、該適用後の透明画像を形成することと、
媒体に光輝性インクを噴射して光輝性画像を形成することと、
前記媒体にクリアインクを噴射して前記適用後の透明画像を形成することと、
前記媒体にカラーインクを噴射してカラー画像を形成することと、
を含む印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−95067(P2013−95067A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240432(P2011−240432)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】