説明

印刷装置

【課題】 普通紙とコート紙の判別のような場合でも、正確に安定して被記録媒体の種類を判別できる被記録媒体種類検出装置を備えた印刷装置を提供する。
【解決手段】 照明手段に紫外光とこれより波長の長い他の光を用い、光電変換手段に紫外光より波長の長い他の光による拡散光を受光する拡散光受光部と正反射光を受光する正反射光受光部を設け、紫外光による拡散光は前記拡散光受光部で受光でき、紫外光の一部は前記正反射光受光部で受光できる様に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体種類検出装置を備えた印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から記録用紙などの被記録媒体にインクで記録を行うプリンタや印刷機等の機器が一般に普及している。
【0003】
近年、被記録媒体の種類は市場の要求及び記録機器の発達とともに多様化し、用紙表面にインク受容層を設けて画質向上を実現した記録用紙やハガキ等の厚紙、あるいはプリンタで記録可能な布地など多種多様な被記録媒体が実用化されている。
【0004】
これら多様な被記録媒体に対応した機器として代表的なものにインクジェットプリンタがある。
【0005】
インクジェットプリンタにおいては、被記録媒体の種類によって吐出したインクの媒体上でのにじみ具合や発色の状態が異なる。したがって最良の画質を得るため、媒体に応じたインク吐出量やインクの吐出数を設定しており、ホストコンピュータあるいはプリンタの指示手段からユーザが媒体種類を指示することによりこの設定を行っている。
【0006】
被記録媒体の種類増加とともにこの指示の選択肢は増え、ユーザに操作上の煩雑さを与えている上、間違った指示をしてもプリンタからユーザに警告することが出来ないため、高画質で出力できる専用紙を用いたにもかかわらず、画質の劣った記録物を出力してしまうこともありえる。
【0007】
また、複数の人員で共有使用するネットワークプリンタ等でユーザの近くにプリンタがない場合、被記録媒体収納部にどのような種類の記録媒体が収納されているかを確認するためにプリンタ存在位置までわざわざ確認しに行った後、媒体種類を指示する必要があり非効率的である。
【0008】
このような欠点を解決するため、被記録媒体の種類を検出する考案がなされており、代表的なものは、特開平2−138805号公報にあるように被記録媒体表面の反射率の差異を測定し、しきい値法によって種別を判定する方法である。
【0009】
しかし、この判別方法では、普通紙とOHP用シートあるいは光沢紙との判別は出来ても、例えば普通紙とコート紙のように非常に小さな反射率の差異による判別を要求される場合には、測定値がオーバーラップすることもあったりして、正確な判別は困難であった。
【0010】
そこで、被記録媒体の種類をもっと詳細に判別するための考案がなされており、代表的なものの一つは、特開2004−107753号公報にあるように発光部に紫外光とこれより波長の長い他の光を用いて判別精度を上げる方法である。
【特許文献1】特開平2−138805号公報
【特許文献2】特開2004−107753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特開2004−107753号公報に記載された方法で、紫外光とこれより波長の長い他の光の発光部を別個に設けた場合、大きさやコストの問題から、拡散光受光部を兼用とし、正反射光受光部は紫外光より波長の長い他の光用のみとする構成が考えられる。この場合、紫外光による出力データがミストや紙粉といった汚れや温度変化、素子の寿命等による光量や感度の変化に対応できず、判別性能が不安定になったりして不都合を感じることがあった。
【0012】
本発明は、上述事情に鑑みてなされたものであり、普通紙とコート紙の判別のような場合でも、正確に安定して被記録媒体の種類を判別できる被記録媒体種類検出装置を備えた印刷装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このため、本発明においては、紫外光の一部を紫外光より波長の長い他の光による被記録媒体表面での正反射光を受光する正反射光受光部で受光できる様に構成したことにより、前記目的を達成しようとするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によると、印刷される被記録媒体を複数枚収納可能な被記録媒体収納部と、この被記録媒体収納部から1枚ずつ被記録媒体を給送する給送手段と、照明手段に紫外光とこれより波長の長い他の光を用い、光電変換手段に紫外光より波長の長い他の光による拡散光を受光する拡散光受光部と正反射光を受光する正反射光受光部を設け、紫外光による拡散光は前記拡散光受光部で受光でき、紫外光の一部は前記正反射光受光部で受光できる様に構成した被記録媒体種類検出手段を設けることにより、普通紙とコート紙の判別のような場合でも、正確に安定して被記録媒体の種類を判別できる被記録媒体種類検出装置を備えた印刷装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面において、同一の符号を付したものは、同様の構成又は作用を有するものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。
【0016】
<実施の形態1>
図1に、本発明に係る被記録媒体種類検出装置を備えた印刷装置1の斜視図を示す。ここで、2は被記録媒体収納部、3は被記録媒体収納部2に収納されている被記録媒体である。
【0017】
図2は、被記録媒体種類検出装置を備えた印刷装置1の縦断面図である。
【0018】
この図を用いて印刷を行う場合を説明する。まず被記録媒体種類検出ユニット4により被記録媒体収納部2上で一番上にある被記録媒体3の種類を判別し、最適の印刷が出来る条件を整えておく。次に印刷の指示が出た時点で被記録媒体収納部2に収納されている被記録媒体3は、給紙ローラ(不図示)の回転により被記録媒体収納部2から一枚ずつ給紙口21から搬送ローラ22、23間のニップ部に挿通され、指定された印刷が行われる位置まで搬送された後、キャリッジ(不図示)上のプリントヘッド24による印刷が被記録媒体3の行送りとともに続けられて排紙ローラ25と押さえ部である拍車26を経てZ方向に排出される。
【0019】
ここで、被記録媒体種類検出ユニット4は印刷装置1のシャーシ(不図示)に点Pで回転可能に取り付けられ、バネ(不図示)によりA方向に付勢されている支持部材5及び支持部材5と被記録媒体種類検出ユニット4の間で被記録媒体3の残量の違いに対応して被記録媒体種類検出ユニット4の位置を調節するバネ6により被記録媒体収納部2上で一番上にある被記録媒体3表面に密着できているものとし、被記録媒体3が給紙される場合には、給紙ローラ(不図示)の回転に連動してB方向に動くシャフト7により支持部材5がC方向に回転させられるため、被記録媒体3表面に対する付勢が解除され、スムーズな給紙を行うことが出来る。
【0020】
また、被記録媒体3を被記録媒体収納部2にセットするときも、被記録媒体種類検出ユニット4の斜面部4cを利用して下に入り込んだ被記録媒体3をセットする力でバネ6を縮ませることが出来る上、被記録媒体種類検出ユニット4に軸支され、被記録媒体3の動きに従動して回転するコロ47、48が設けられているため、セットはスムーズに行うことが出来る。
【0021】
図3に、被記録媒体3の種類を検出中の被記録媒体種類検出ユニット4を示す。
【0022】
ここで、紫外光より波長の長い他の光として、例えば赤外光LEDからなる発光部41から出た光は図のように被記録媒体3表面を照明する。
【0023】
43は被記録媒体3から拡散反射してくる光を受光するフォトダイオードやフォトトランジスタからなるセンサで、入射した光量に応じて光電変換を行い、電気信号を出力する。
【0024】
44は被記録媒体3から正反射してくる光を受光するフォトダイオードやフォトトランジスタからなるセンサで、入射した光量に応じて光電変換を行い、電気信号を出力する。
【0025】
また、紫外光として、例えば紫外光LEDからなる発光部42から出た光は図のように被記録媒体3表面を照明する。
【0026】
この場合の被記録媒体3から拡散反射してくる光も43のセンサで受光することができ、入射した光量に応じて光電変換が行われ、電気信号が出力される。
【0027】
この赤外光を基にした拡散反射光による電気信号出力と正反射光による電気信号出力、及び紫外光を基にした拡散反射光による電気信号出力を組み合わせて、予めデータとして保存しておいた各被記録媒体での値と比べることにより被記録媒体3の種類を詳細に判別することが出来る。
【0028】
また、図4に示すように、ライトガイド8を用いて紫外光LED42の光の一部を正反射光受光部44で受光できる様に構成することにより、紫外光による正反射光センサ出力データも入手でき、赤外光の場合と同様に拡散光センサ出力を正反射光センサ出力で除算した値等も判別に用いることができるため、ミストや紙粉といった汚れや温度変化、素子の寿命等による光量や感度の変化にも対応できる判別性能の安定した紙種判別を行うことができる。
【0029】
ここで、ライトガイド8は透明のプラスチック部材からできており、紫外光LED42の光の一部を取り込み、反射部81で向きを変え、正反射光受光部44で受光できるように構成されている。発光孔45及び受光孔46の一部を使用するが、拡散光センサ出力値や正反射光センサ出力値に特に影響は与えない構成になっている。
【0030】
<実施の形態2>
上述の実施の形態1においては、紫外光LED42の光を正反射光受光部44で受光できる様にするため、ライトガイド8という導光体を用いたが、被記録媒体種類検出装置4内に設けた導光孔(不図示)を用いて実現されたものでもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る被記録媒体種類検出装置を備えた印刷装置の斜視図である。
【図2】本発明に係る被記録媒体種類検出装置を備えた印刷装置の縦断面図である。
【図3】本発明に係る被記録媒体種類検出ユニットの説明図である。
【図4】本発明に係る被記録媒体種類検出ユニットの説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 被記録媒体種類検出装置を備えた印刷装置本体
2 被記録媒体収納部
21 給紙口
22,23 搬送ローラ
24 プリントヘッド
25 排紙ローラ
26 拍車
3 被記録媒体
4 被記録媒体種類検出ユニット
4c 斜面部
41 赤外光発光部
42 紫外光発光部
43 拡散光用受光部
44 正反射光用受光部
45 発光孔
46 受光孔
47,48 コロ
5 支持部材
6 バネ
7 シャフト
8 ライトガイド
81 反射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷される被記録媒体を複数枚収納可能な被記録媒体収納部と、
この被記録媒体収納部から1枚ずつ被記録媒体を給送する給送手段と、
一番上にある被記録媒体の種類を判別できる被記録媒体種類検出手段と、
を設けた印刷装置において、
前記被記録媒体種類検出手段は被記録媒体を照射する照明手段と、
被記録媒体からの反射光を受光して光電変換する光電変換手段からなり、
前記照明手段に紫外光とこれより波長の長い他の光を用い、
前記光電変換手段に紫外光より波長の長い他の光による被記録媒体表面での拡散光を受光する拡散光受光部と正反射光を受光する正反射光受光部を設け、紫外光による被記録媒体表面での拡散光は前記紫外光より波長の長い他の光による拡散光を受光する拡散光受光部で受光できるように構成されている場合に、
前記紫外光の一部を前記紫外光より波長の長い他の光による正反射光を受光する正反射光受光部で受光できる様に構成したことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記紫外光の一部を前記紫外光より波長の長い他の光による正反射光を受光する正反射光受光部で受光できる様に構成した場合において、
透明プラスチックによる導光体を用いたことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記紫外光の一部を前記紫外光より波長の長い他の光による正反射光を受光する正反射光受光部で受光できる様に構成した場合において、
被記録媒体種類検出装置内に設けた導光孔を用いたことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−33069(P2007−33069A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212898(P2005−212898)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】