説明

印刷装置

【課題】 ミストによる印字物、機内の汚れを防ぐためのミストファンを効率よく制御する。
【解決手段】 湿度センサを記録ヘッドの近くに配置し、ミストの発生・量を、印刷前の湿度との差により検知し、それに応じてミスト吸引ファンの回転数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インクジェットと呼ばれるインクを吐出し印刷媒体上に着弾させることにより画像を形成する印刷装置に関する。特に、インクを吐出した際、主滴とは別にミストと呼ばれる細かいインクの液滴を回収する機能に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の印刷方法では、印刷に寄与するインク液滴の他に、印刷に寄与しない微小インク液滴(ミスト)も記録ヘッドから吐出される。従来、この種の印刷装置では、ミストを回収するために、印刷装置内部に、ファンを設置し、ミストを回収するものがあった。例えば特許文献1には、ファンにより発生したインクミストを分散させ、記録ヘッドの吐出口周辺におけるインクミストの堆積を低減する例が書かれている。特許文献2には、ファンの回転とキャリッジの動きを同期して効率よくミストを回収する例が書かれている。
【特許文献1】特開平6−166173号公報
【特許文献2】特開2004−181704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ファンによる回収をよくしようとすると、ファンの回転を上げる、ファンを大きくするなどの対策が必要である、このためファンの騒音が大きくなったり、ファンの回転に大きな電力が必要になる問題点があった。また印字後も機内に残ったミストを排出するために、一定時間ファンを回転させる必要があり、ミストが少ない場合にも無駄なファンの回転を行なう時もあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するために、本発明では、湿度センサを記録ヘッド近辺に配置し、印字開始からの湿度変化でミストの有無、量を検知し、これによりミスト回収ファンを制御する。
【0005】
例えば、湿度が変化しなければミストが発生していないと判断し、ファンの回転を止める、微小な湿度上昇であればミストが少ないと判断し、ファンを低速で回転させる。例えばCAD図面のような線画の印刷に相当する。湿度上昇が大きければミストの量が多いと判断し、ファンを高速で回転させる。
【発明の効果】
【0006】
上記手段により、ミストの量に応じてファンの回転を制御することにより、ミストが少ない時はファンによる騒音、電力消費を抑えることができ、またミストが多い時は、ミストの回収を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【実施例1】
【0008】
図1に本発明を実現するプリンタの実施例を示す。図1において1−1はインクを吐出するための記録ヘッドを保持するキャリッジ。1−2は印刷用紙を保持するプラテン。1−3は印刷用紙を搬送するためのローラ。1−4はロール状に巻かれた印刷用紙。1−5はキャリッジ、プラテンを覆い、ミストが機外に出ない様にするためのカバー。1−6はミスト吸引ファンで、ファンの後面には、ミストフィルタがとりつけられ、カバー内から機外に空気を排気することによりミストを回収できる様になっている。1−7は1−1のキャリッジに取り付けられた湿度センサである。1−6のミスト吸引ファンは回転数を制御できる機能を持つ、この機能は通常PWM(Pulse Width Modulation)制御で実現できる。また、本プリンタ内には、プリンタの動作を制御するファームウエアが内蔵されているものとする。
【0009】
以上の構成において、まず、通常の印字を説明する。図内の矢印の方向にキャリッジ1−1が移動する時に、1ライン分の印字データに対応する記録ヘッドのノズルからインクを吐出することにより、記録媒体上にヘッドの幅だけ印刷画像を印刷する。次に1−3ローラを用い用紙をヘッドの幅移動させる、これを繰り返すことにより、画像を印刷することが出来る。
【0010】
上記の手順で印刷を行なうと、印刷に寄与しない微小インク液滴(ミスト)も記録ヘッドから吐出される。このミストは大きさも質量も小さく、霧状になって空中を浮遊するため、湿度が上昇する。この湿度変化によりミストの有無・量を判断し吸引ファンを制御する。
【0011】
図2のフローチャートを用いて本発明の動作を説明する。図2のフローチャートは、不図示のコントローラにより実行され、図2のフローチャートをコントローラに実行させるためのプログラムは、ファームウエアとしてROMなどの不図示の記憶手段に記憶されており、コントローラはこれを読み出して実行し、図1に示した各部を制御する。
【0012】
印字が開始されると、ステップS01で、湿度モニタが既に起動されているかをチェックする。この判断の有効性は後述する。既に起動されていればステップS04へ行き印刷処理を行う。起動されていなければステップS02でその時点の湿度を計測し、湿度Aとして保管する。ステップS03で湿度モニタ起動をスタートさせる。湿度モニタは、ある一定間隔で起動される。その後ステップS04で印刷処理を行う。
【0013】
一方、スタートされた湿度モニタは一定間隔で起動され、ステップ11でその時点の湿度Bを計測する。ステップS12で、ステップS01で計測した湿度と比較し、規定の範囲内の上昇であれば、ステップS13へ行き、印刷が完了しているかを判断する。完了しているならばステップS14でファンを停止する。ステップS15で湿度モニタの起動をストップする。これ以降、次に起動スタートされるまで、自動的に起動されない。ステップS12で湿度Aとの差が規定範囲以上である場合、ステップS16へ行く。ステップS16では、湿度の上昇分に応じてファンのPWMを制御する。例えば、微小な上昇であれば少ない回転数でファンを廻す。大幅な上昇であれば回転数を上げる。ほとんど印刷開始時の湿度と同じならば、回転を止める。
【0014】
またステップS13で印刷が完了していない場合は、まだ湿度の変化が起こりうるので、ステップS16へ行き、同様にファンのPWM制御を行う。
【0015】
印刷が完了した後、機内に残ったミストを回収するのは、ステップS12の判断により行われる。すなわち、湿度差が依然あるなら、印刷完了を判断する前にファンのPWM制御を行うからである。印刷完了後にファンを回転させている最中に、次の印刷が始まった場合は、ステップS01で湿度モニタが既に起動済みと判断され湿度Aの計測を行わない。この印刷中に起動される湿度モニタは、一つ前の印刷開始時の湿度Aと比較されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】構成図。
【図2】フローチャート。
【符号の説明】
【0017】
1−1 キャリッジ
1−2 プラテン
1−3 ローラ
1−4 印刷用紙
1−5 カバー
1−6 ミスト吸引ファン
1−7 湿度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を吐出し印刷媒体上に着弾させることにより画像を形成する記録ヘッドを使用した印刷装置において、
機内に浮遊する微小インク滴を機外に排出するファンを持ち、記録ヘッドの近くに湿度センサを持って、印刷中の湿度の変化により、前記ファンの回転を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ファンの回転を制御とは、回転のオン、オフと、回転数を変化させ、微小インク滴の量が少ない時は、回転数を低く、微小インク滴の量が多い時は回転数を高く制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−5908(P2010−5908A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167575(P2008−167575)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】