説明

印字装置

【課題】印字装置の設計自由度を確保しつつ、カセット装着部に装着されたテープカセットのテープ種類を適切に検出することが可能な印字装置を提供する。
【解決手段】印字装置のカバーが閉じられるのに伴って、リリースロッド17が左方向に移動する。リリースロッド17が左方向に移動するのに伴って、ローラホルダ18が後方向に回動して、プラテンローラ15がサーマルヘッドに圧接される。リリースロッド17が左方向に移動するのに伴って、センサホルダ19が後方に移動して、スイッチ端子231がテープカセットの指標部に圧接される。ローラホルダ18がプラテンローラ15をサーマルヘッドに圧接させる位置まで回動している場合に、プラテンローラ15をサーマルヘッドに対して所定の圧力で押圧するローラ用バネ186、187が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープカセットに収納されたテープに印字を行う印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カセット装着部に装着されたテープカセットに収納されたテープの種類(テープ幅や印字態様など)を、複数の検出スイッチによって検出する印字装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。詳細には、テープカセットの下面の一部には、テープ種類に対応するパターンで貫通孔が形成されたカセット検出部が設けられている。カセット装着部にテープカセットが装着されると、常には上方に付勢される複数の検出スイッチが、カセット検出部に形成された貫通孔のパターンに応じて選択的に押圧される。印字装置では、複数の検出スイッチにおける押圧または非押圧の組み合わせに応じて、カセット装着部に装着されたテープカセットのテープ種類が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−133756号公報
【特許文献2】特許第3543659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の印字装置では、上記の検出スイッチに加えて、印字ヘッドを支持するヘッドホルダや、テープやインクリボンを搬送する駆動軸などが、カセット装着部の底面から上方に向けて設けられている。そのため、カセット装着部の底面に検出スイッチを設ける場合、検出スイッチの数量や位置などが制限される場合があった。ひいては、印字装置の設計上の制約が多くなる場合があった。
【0005】
本発明の目的は、上述した課題を解決するためになされたものであり、印字装置の設計自由度を確保しつつ、カセット装着部に装着されたテープカセットのテープ種類を適切に検出することが可能な印字装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る印字装置は、上面、底面、前面、および一対の側面を備えたカセットケースと、前記カセットケースに収納されるテープと、前記前面に設けられて少なくとも前記テープの種類を示す指標部とを有するテープカセットが上下方向に着脱されるカセット装着部と、前記カセット装着部に前記テープカセットが装着された場合に、前記テープに印字を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドに対向配置され、前記印字ヘッドに圧接されるプラテンローラと、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの前記前面に沿って延び、前記プラテンローラを支持し、前記上下方向に平行な軸であるホルダ軸を中心に回動し、前記プラテンローラを前記印字ヘッドに所定の圧力で圧接させる第一ローラ位置と、前記プラテンローラを前記印字ヘッドに前記所定の圧力よりも小さい圧力で接触させる第二ローラ位置と、前記プラテンローラを前記印字ヘッドから離間させる第三ローラ位置との間で回動するローラホルダと、前記ローラホルダに設けられ、前記プラテンローラを前記印字ヘッドに向かう方向に弾性付勢し、且つ、前記ローラホルダが前記第一ローラ位置まで回動している場合に、前記プラテンローラを前記印字ヘッドに対して前記所定の圧力で押圧する弾性部と、前記指標部が示すテープ種類を検出するためのセンサと、前記センサを前記ホルダ軸と前記プラテンローラとの間で保持し、前記センサを前記指標部に接近させる第一センサ位置と、前記センサを前記指標部から離間させる第二センサ位置との間で移動するセンサホルダと、前記ローラホルダと前記センサホルダとにそれぞれ連結した状態で移動可能であって、前記ローラホルダを前記第一ローラ位置に移動させ、且つ、前記センサホルダを前記第一センサ位置に移動させる第一ロッド位置と、前記ローラホルダを前記第二ローラ位置に移動させ、且つ、前記センサホルダを前記第二センサ位置に移動させる第二ロッド位置と、前記ローラホルダを前記第三ローラ位置に移動させ、且つ、前記センサホルダを前記第二センサ位置に移動させる第三ロッド位置との間で移動するロッド部と、前記ロッド部が前記第一ロッド位置に移動した場合、前記ローラホルダが前記第一ローラ位置に固定され、且つ、前記センサホルダが前記第一センサ位置に固定されるように、前記ロッド部を前記第一ロッド位置に保持する保持部とを備え、前記弾性部は、前記ロッド部が前記保持部によって保持されている場合、前記プラテンローラを前記印字ヘッドに対して前記所定の圧力で押圧している状態で生じる、前記第一ローラ位置から前記第二ローラ位置まで回動させる弾性エネルギーを蓄積する一方、前記保持部による前記ロッド部の保持が解除された場合、蓄積された前記弾性エネルギーを解放して前記ローラホルダに付与し、前記ローラホルダは、前記弾性部で解放された前記弾性エネルギーが付与された場合、前記第一ローラ位置から前記第二ローラ位置まで回動するのに伴って、前記ロッド部を前記第一ロッド位置から前記第二ロッド位置まで移動させることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、テープカセットの前面に設けられた指標部に対して、センサが接近されることでテープの種類が検出される。この場合、例えばテープカセットの底面に対して接近するセンサを配設する場合と比べて、センサの配設スペースおよび配設位置に対する制約が小さくなる。よって、装置サイズの大型化を抑制して、装置設計の自由度を高めることができる。また、センサホルダは、ローラホルダとは独立して移動可能とした。よって、センサホルダの可動性を向上させて、テープ種類の検出を適切に行うことができる。 また、ロッド部を移動させるだけで、ローラホルダおよびセンサホルダをそれぞれ動作させることができるため、ローラホルダを動作させる部材とセンサホルダを動作させる部材とを別々に設ける必要がない。したがって、印字装置の構成部品数を低減して、装置サイズの大型化を抑制することができる。
【0008】
さらに、ローラホルダが第一ローラ位置まで回動している場合に、プラテンローラを印字ヘッドに対して所定の圧力で押圧する弾性部を設けた。ロッド部の第一ロッド位置での固定が解除された場合には、弾性部に蓄積された弾性エネルギーが解放されることで、ローラホルダが第一ローラ位置から第二ローラ位置まで回動する。これに伴って、ロッド部が第一ロッド位置から第二ロッド位置まで移動し、ひいてはセンサホルダが第一センサ位置から第二センサ位置に移動する。つまり、ロッド部の位置固定を解除するだけで、センサをテープカセットの指標部から離間した位置に退避される。したがって、カセット装着部に着脱されるテープカセットにセンサが干渉してしまうことを抑制でき、ひいてはセンサの破損や故障などが生じるおそれを抑制できる。
【0009】
本態様において、前記ロッド部は、前記ローラホルダと対向する斜面であるローラ押圧部と、所定のカム形状を有するセンサ案内部とを含み、前記ローラホルダは、前記ロッド部が前記第二ロッド位置および前記第一ロッド位置のいずれかに移動している場合に、前記ローラ押圧部と当接する面であるロッド受部を含み、前記センサホルダは、前記センサ案内部に係合し、且つ、前記ロッド部の移動に伴って前記所定のカム形状に沿って移動する係合部を含み、前記センサ案内部は、前記ロッド部が前記第一ロッド位置に移動している場合に、前記係合部が係合して前記センサホルダを前記第一センサ位置に保持する第一保持カムと、前記ロッド部が前記第二ロッド位置に移動している場合に、前記係合部が係合して前記センサホルダを前記第二センサ位置に保持する第二保持カムと、前記第一保持カムと前記第二保持カムとの間に連続して設けられ、前記ロッド部が前記第一ロッド位置と前記第二ロッド位置との間を移動するのに伴って、前記係合部が係合する移動カムとを含み、前記ローラホルダは、前記ロッド部が前記第二ロッド位置から前記第一ロッド位置に移動するのに伴って、前記ローラ押圧部が前記ロッド受部を押圧することで、前記第二ローラ位置から前記第一ローラ位置に回動する一方、前記ロッド部が前記第一ロッド位置から前記第二ロッド位置に移動するのに伴って、前記ロッド受部が前記ローラ押圧部を押圧することで、前記第一ローラ位置から前記第二ローラ位置に回動し、前記センサホルダは、前記ロッド部が前記第二ロッド位置から前記第一ロッド位置に移動するのに伴って、前記係合部が前記移動カムに沿って前記第二保持カムから前記第一保持カムに向けて摺動することで、前記第二センサ位置から前記第一センサ位置に移動する一方、前記ロッド部が前記第一ロッド位置から前記第二ロッド位置に移動するのに伴って、前記係合部が前記移動カムに沿って前記第一保持カムから前記第二保持カムに向けて摺動することで、前記第一センサ位置から前記第二センサ位置に移動してもよい。
【0010】
この場合、ロッド部が第一ロッド位置から第二ロッド位置に移動する場合に、ローラ押圧部がロッド受部を押圧することで、ローラホルダが第二ローラ位置から第一ローラ位置に回動する。同時に、係合部が移動カムに沿って第二センサ位置から第一センサ位置に向けて摺動することで、センサホルダが第二センサ位置から第一センサ位置に回動する。つまり、ロッド部の第一ロッド位置での固定が解除された場合には、弾性部に蓄積された弾性エネルギーが、ローラホルダおよびセンサホルダを第二ローラ位置および第二センサ位置にそれぞれ移動させる機械的な作用を生じる。したがって、ロッド部の位置固定を解除するだけで、センサを正確に退避させることができる。
【0011】
本態様において、前記カセット装着部を開閉するカバーと、前記ロッド部と連結した状態で移動可能であって、前記カバーの開動作に連動して一の方向に移動するのに伴って、前記ロッド部を前記第一ロッド位置、前記第二ロッド位置、前記第三ロッド位置の順に移動させる一方、前記カバーの閉動作に連動して前記一の方向とは反対方向である他の方向に回転するのに伴って、前記ロッド部を前記第三ロッド位置、前記第二ロッド位置、前記第一ロッド位置の順に移動させるレバーとを備えてもよい。
【0012】
この場合、カバーの開閉動作に応じて、レバーがロッド部を移動させる。ロッド部の移動に伴って、ローラホルダが回動し、且つ、センサホルダが移動する。カバーが開かれると、カセット装着部にテープカセットを着脱可能な状態となる。カバーが閉じられると、印字ヘッドによる印字が可能な状態となる。したがって、ユーザがカバーを開閉するだけで、印字装置をカバーの状態に応じた最適な使用状態にすることができ、印字装置の操作性を向上させることができる。
【0013】
本態様において、前記プラテンローラを前記印字ヘッドから離間させる方向の付勢力を、前記ローラホルダに付与する第一付勢部を備え、前記ローラホルダは、前記保持部による前記ロッド部の保持が解除された場合、前記弾性エネルギーによって前記第一ローラ位置から前記第二ローラ位置まで回動したのち、前記第一付勢部から付与される付勢力によって前記第二ローラ位置から前記第三ローラ位置まで回動してもよい。この場合、カバーが開かれた場合に、プラテンローラを印字ヘッドから離間した位置に退避させることができる。
【0014】
本態様において、前記レバーを前記一の方向に付勢する第二付勢部を備えてもよい。この場合、ロッド部が第三ロッド位置まで移動すると、レバーが第二付勢部の付勢力によって、レバーの可動範囲のうちで最も一の方向側の位置まで移動する。これにより、カバーが開かれた場合に、レバーを初期位置に確実に戻すことができる。ひいては、カバーの開閉動作に伴って、レバーをスムーズに移動させることができる。
【0015】
本態様において、前記カセット装着部が前記カバーによって閉じられている場合に、前記カバーの開動作に連動して前記レバーを前記一の方向へ所定量移動させることによって、前記保持部によって保持されている前記ロッド部を前記第一ロッド位置から前記第二ロッド位置に移動させる解除部を備えてもよい。この場合、ユーザはカバーを開くだけで、ロッド部の位置固定を解除することができ、ひいてはセンサを退避させることができる。
【0016】
本態様において、前記センサは、進出および退入が可能なスイッチ端子を有する機械式センサであり、前記スイッチ端子の進出および退入に基づいて、前記テープの種類を判断する判断手段を備えてもよい。この場合、機械式センサを用いて、テープの種類を特定することができる。
【0017】
本態様において、前記センサは、前記センサホルダが前記第一センサ位置に移動した場合に、前記テープの種類に応じて設けられた複数の前記指標部にそれぞれ接近する複数の前記スイッチ端子を含み、前記複数のスイッチ端子は、それぞれ、前記スイッチ端子を挿入可能な孔部である前記指標部に接近した場合、前記孔部に挿入されることによって進出した状態が維持される一方、前記スイッチ端子に当接可能な面部である前記指標部に接近した場合、前記面部に押圧されて退入してもよい。この場合、機械式センサを孔部または面部である指標部に接近させることで、テープの種類を特定することができる。
【0018】
本態様において、前記センサは、受光部を有する光学式センサであり、前記受光部での受光量に基づいて、前記テープの種類を判断する判断手段を備えてもよい。この場合、光学式センサを用いて、テープの種類を特定することができる。
【0019】
本態様において、前記センサは、発光部を有する反射型センサであってもよい。この場合、反射型の光学式センサを用いて、テープの種類を特定することができる。
【0020】
本態様において、前記センサは、前記センサホルダが前記第一センサ位置に移動した場合に、前記テープの種類に応じて設けられた複数の前記指標部にそれぞれ対向する複数の前記受光部を含み、前記複数の受光部は、それぞれ、前記受光部に所定値以上の光量を付与する特定部である前記指標部に接近した場合、前記所定値以上の光量を受光する一方、前記受光部に所定値未満の光量を付与する非特定部である前記指標部に接近した場合、前記所定値未満の光量を受光してもよい。この場合、透過型の光学式センサを用いて、テープの種類を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】カバー6が閉じられた状態にある印字装置1の斜視図である。
【図2】カバー6が開かれた状態にある印字装置1およびテープカセット30の斜視図である。
【図3】テープカセット30の斜視図である。
【図4】上ケース31Aが取り外された状態にあるテープカセット30の平面図である。
【図5】テープカセット30のアーム前面35を拡大した正面図である。
【図6】カバー6が閉じられた状態にある、可動機構100を斜め後方からみた斜視図である。
【図7】カバー6が開かれた状態にある、壁部20が取り除かれた可動機構100を斜め前方からみた斜視図である。
【図8】カバー6が閉じられた状態にある、レバー16およびリリースロッド17が取り除かれた可動機構100を斜め前方からみた斜視図である。
【図9】図8に示す可動機構100の縦断面図である。
【図10】センサホルダ19の左側面図である。
【図11】図10に示すセンサホルダ19の縦断面図である。
【図12】印字装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図13】図7に示す可動機構100の正面図である。
【図14】図13におけるII−II線矢視方向断面、および、テープカセット30とテープ駆動軸11とヘッドホルダ74とを表した底面図である。
【図15】カバー6が開閉される途中の状態にある、壁部20が取り除かれた可動機構100を斜め前方からみた斜視図である。
【図16】図15に示す可動機構100の正面図である。
【図17】図16におけるIII−III線矢視方向断面、および、テープカセット30とテープ駆動軸11とヘッドホルダ74とを表した底面図である。
【図18】カバー6が閉じられた状態にある、壁部20が取り除かれた可動機構100を斜め前方からみた斜視図である。
【図19】図18に示す可動機構100の正面図である。
【図20】図19におけるIV−IV線矢視方向断面、および、テープカセット30とテープ駆動軸11とヘッドホルダ74とを表した底面図である。
【図21】テープカセット30にセンサホルダ19が圧接された状態を示す、図5におけるI−I線矢視方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0023】
図1および図2を参照して、本実施形態に係る印字装置1の概略構成について説明する。本実施形態の説明では、図1および図2の右上側、左下側、右下側、左上側、上側、下側を、それぞれ、印字装置1の後側、前側、右側、左側、上側、下側とする。
【0024】
図1に示すように、印字装置1の上面には、キャラクタ(文字、記号および数字等)のキーボード3が設けられている。キーボード3の後側(紙面右上側)には、電源スイッチ、印字キー、機能キー群4等が設けられている。機能キー群4の後側には、キーボード3から入力されたキャラクタを表示するためのディスプレイ5が設けられている。印字装置1の上面の後部には、開閉可能なカバー6が設けられている。印字装置1の左後角には、カットされた印字済テープ50(図3参照)を受けるテープトレイ7が設けられている。
【0025】
図2に示すように、ディスプレイ5の後側には、カセット装着部8が形成されている。カセット装着部8には、テープカセット30が上下方向に着脱される。カセット装着部8には、リボン巻取軸9が立設されている。リボン巻取軸9は、リボンスプール42(図4参照)から引き出されて文字等の印刷に使用された後のインクリボン60(図4参照)を巻取る。リボン巻取軸9の左前方には、正面視で略矩形状のヘッドホルダ74(図14参照)が立設されている。ヘッドホルダ74の前面には、フィルムテープ59(図4参照)に文字等を印字するサーマルヘッド10(図14参照)が取り付けられている。ヘッドホルダ74の左方には、印字済テープ50を送り駆動するためのテープ駆動軸11(図14参照)が立設されている。
【0026】
カセット装着部8の前側には、後述のローラホルダ18、センサホルダ19、リリースロッド17等が配設されている(図7参照)。ローラホルダ18、センサホルダ19、リリースロッド17等は、板部13によって被覆されている。板部13の右側には、リリースロッド17と連結されたレバー16が設けられている。
【0027】
カバー6は、カバー6の後端部の左右方向を支点として開閉自在である。カセット装着部8は、カバー6が閉位置にあるときにテープカセット30を着脱不能に閉鎖され(図1参照)、カバー6が開位置にあるときにテープカセット30を着脱自在に開放される(図2参照)。カバー6の裏面側前部には、カバー6が閉じられたときにレバー16を押下するレバー押下部61が設けられている。レバー押下部61の右側端部には、カバー6の裏面に対して垂直に保持部材62が延びている。保持部材62の下端部から左側に向けて、板状の突出片63が突出している。突出片63は、レバー押下部61と平行に突出し、カバー6が開かれるときにレバー16を引き上げる。
【0028】
カバー6の裏面における両側端部には、一対の係合片64、64が設けられている。カセット装着部8の平面視外側には、一対の係合部27、27が設けられている。カバー6が閉じられたときには、係合片64、64と係合部27、27とが係合して、カバー6が閉位置に保持される。
【0029】
次に、図3〜図5を参照して、本実施形態に係るテープカセット30の構造について説明する。本実施形態のテープカセット30は、感熱タイプ、レセプタータイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープ種類に実装可能な汎用カセットを、ラミネートタイプに実装している。本実施形態の説明では、図3の左上側、右下側、右上側、左下側、上側、下側を、それぞれ、テープカセット30の後側、前側、右側、左側、上側、下側とする。
【0030】
図3に示すように、テープカセット30は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略直方体状(箱型)の筐体であるカセットケース31を有している。カセットケース31は、カセットケース31の底面30Bを含む下ケース31Bと、カセットケース31の上面30Aを含む上ケース31Aとを有する。上ケース31Aは、下ケース31Bの上部に固定される。本実施形態の説明では、底面30Bから上面30Aまでの距離を、テープカセット30またはカセットケース31の高さ寸法という。
【0031】
カセットケース31は、テープカセット30のテープ種類(例えば、テープ幅や印字態様など)にかかわらず、同一の幅(上下方向の長さが同一)に形成された角部32Aを有する。角部32Aは、平面視で直角をなすように外側方向に突出している。ただし、平面視で左下の角部32Aでは、テープ排出口49が角に設けられているために、直角はなしていない。カセットケース31の上下(高さ)方向において角部32Aと同一の位置、且つ、同一の幅でカセットケース31の側面を全周に亘って取り巻く部位(角部32Aを含む)を、共通部32という。
【0032】
図5に示すように、共通部32は、カセットケース31の上下(高さ)方向における中心線Nに関して、上下方向に対称に形成された部位である。テープカセット30の高さ寸法は、カセットケース31内に収納されるフィルムテープ59や両面粘着テープ58のテープ幅(つまり、印字済テープ50のテープ幅)に応じて異なっている。しかし、共通部32の幅(上下方向の長さ)Tは、印字済テープ50のテープ幅にかかわらず、同一寸法に設定されている。
【0033】
例えば、共通部32の幅Tが12mmである場合、印字済テープ50のテープ幅が大きくなると(例えば、18mm、24mm、36mm)、それに応じてカセットケース31の高さ寸法も大きくなるが、共通部32の幅Tは一定である。なお、印字済テープ50のテープ幅が共通部32の幅T以下である場合は(例えば、6mm、12mm)、カセットケース31の高さ寸法は、共通部32の幅T+所定幅である。この場合、カセットケース31の高さ寸法は最も小さくなる。
【0034】
図3に示すように、上ケース31Aおよび下ケース31Bには、それぞれ後述のスプール類を回転可能に支持する支持孔65、66、67が設けられている。図3には、上ケース31Aに形成された各支持孔65,66,67のみしか図示されていないが、下ケース31Bについても同様に、支持孔65、66、67が形成されている。
【0035】
図4に示すように、カセットケース31内には、第一テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58、第二テープスプール41に巻回された透明なフィルムテープ59、および、リボンスプール42に巻回されたインクリボン60の3種類のテープロールが収納されている。両面粘着テープ58は、一面に剥離紙が貼着された両面テープであり、印字済みのフィルムテープ59の印字面側に貼り合わされる。
【0036】
両面粘着テープ58の剥離紙を外側に向けて巻回した第一テープスプール40は、カセットケース31内の左側後部において、先述の支持孔65を介して回転可能に配置されている。フィルムテープ59が巻回された第二テープスプール41は、カセットケース31内の右側後部において、先述の支持孔66を介して回転可能に配置されている。リボンスプール42に巻回されたインクリボン60は、カセットケース31内の右側前部において回転可能に配置されている。
【0037】
カセットケース31内における第一テープスプール40とリボンスプール42との間には、リボン巻取スプール44が先述の支持孔67を介して回転可能に配置されている。リボン巻取スプール44は、リボンスプール42からインクリボン60を引き出すとともに、文字等の印字にて使用されたインクリボン60を巻き取る。なお、リボン巻取スプール44の下部には、リボン巻取スプール44が逆転することで巻き取ったインクリボン60が緩んでしまうのを防止するためのクラッチバネ(図示せず)が取り付けられている。
【0038】
図3に示すように、カセットケース31の前面には、平面視で断面半円状をなす溝部である半円溝34Kが、カセットケース31の高さ方向(上面30Aから底面30Bまで)に亘って設けられている。半円溝34Kは、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、ローラホルダ18の軸支部であるホルダ軸181(図6参照)がカセットケース31と干渉しないように設けられた逃がし部である。カセットケース31の前面のうち、半円溝34Kから左に延びる部分を、アーム前面35という。アーム前面35と、アーム前面35から後方へ離間した位置に高さ方向に亘って設けられたアーム背面37(図4参照)とで規定される、テープカセット30右側から左方に延びる部位をアーム部34という。
【0039】
図4に示すように、アーム部34内には、第二テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59と、リボンスプール42から引き出されたインクリボン60とが共に案内されている。アーム前面35の先端部は、後方へ向かって屈曲している。アーム前面35とアーム背面37の先端により、開口34Aが形成されている。フィルムテープ59とインクリボン60とは、開口34Aで重ね合わされて、後述する露出部77に向けて排出される。
【0040】
アーム背面37と、アーム背面37から連続して設けられた周壁とにより囲まれた、カセットケース31を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間は、ヘッド挿入部39である。ヘッド挿入部39は、テープカセット30の前面側に設けられた露出部77を介して、テープカセット30の前面側で外部とつながっている。テープカセット30がカセット装着部8(図2参照)に装着された場合、ヘッド挿入部39にはヘッドホルダ74(図14参照)が挿入される。
【0041】
露出部77では、開口34Aから排出されたフィルムテープ59の一面が前方に露出され、且つその他面が後方のサーマルヘッド10(図14参照)に対向する。本実施形態では、フィルムテープ59の他面がインクリボン60を挟んでサーマルヘッド10に対向している。露出部77では、サーマルヘッド10によるフィルムテープ59への印字が、インクリボン60を使用して行われる。
【0042】
図3および図4に示すように、開口34Aからテープ排出口49までのフィルムテープ59およびインクリボン60の搬送方向において、ヘッド挿入部39の下流側にはテープ駆動ローラ46が回転可能に軸支されている。テープ駆動ローラ46は、その内部に挿嵌されるテープ駆動軸11(図14参照)によって回転駆動される。テープ駆動ローラ46は、対向する可動搬送ローラ14(図20参照)と協働して、第二テープスプール41からフィルムテープ59を引き出し、第一テープスプール40から両面粘着テープ58を引き出し、フィルムテープ59の印字面に両面粘着テープ58をガイドして接着させる。
【0043】
テープ駆動ローラ46の上流側には、上下一対の規制部材36が設けられている。規制部材36の基部は、サーマルヘッド10の下流側にて、印字後のフィルムテープ59を上下方向(テープ幅方向)に規制してテープ排出口49に向かって案内する。これにより、フィルムテープ59と両面粘着テープ58とが、位置ズレを生じることなく適正に接着される。規制部材36の近傍には、ヘッド挿入部39を経由して搬送された使用済みのインクリボン60をフィルムテープ59から離間させ、リボン巻取スプール44に向かって案内するための案内壁47が立設されている。案内壁47とリボン巻取スプール44との間には、案内壁47に沿って案内される使用済みのインクリボン60と、第一テープスプール40に巻回して支持された両面粘着テープ58とが互いに接触するのを防止するための分離壁48が立設されている。
【0044】
図3および図5に示すように、アーム前面35には、露出部77の右側に隣接して、テープカセット30のテープ種類を示すアーム識別部800が設けられている。アーム識別部800は、テープ種類に応じた規定のパターンで、非押圧部801と押圧部802とを含む。非押圧部801は、スイッチ端子231(図6参照)を挿脱可能な正面視矩形状の孔である。押圧部802は、スイッチ端子231と接触する面部である。本実施形態のアーム識別部800は、5つのスイッチ端子231に対応する5箇所の位置に、非押圧部801および押圧部802のいずれかを有する。以下では、非押圧部801および押圧部802を総称する場合、または何れかを特定しない場合には、単に識別部という。
【0045】
アーム前面35には、アーム識別部800の右側上方に、係止孔820が設けられている。係止孔820は、後述のセンサホルダ19が識別位置(図20に示す位置)に移動した場合に、後述の係止片192(図6参照)が挿入される孔部である。詳細には、係止孔820は、上ケース31Aと下ケース31Bとの結合部にまたがって、アーム識別部800の最も右側に位置する識別部(図5の例では、最下列の押圧部802)の上方から右方向に延びる、正面視で左右方向に長い略長方形状の貫通孔である。
【0046】
図3に示すように、アーム前面35において、下ケース31Bのアーム識別部800の左側には、正面視で縦長長方形状の貫通孔850が設けられている。貫通孔850は、カセットケース31の成型時の金型の逃がし用に設けられたものであり、特定の機能は有しない。
【0047】
図6および図7を参照して、印字装置1に備えられた可動機構100の概略構成について説明する。本実施形態の可動機構100は、レバー16、リリースロッド17、ローラホルダ18、センサホルダ19、および壁部20を含み、外圧に応じて可動する一連の機構をいう。
【0048】
本実施形態では、図6の右側、左側、手前側、奥側は、それぞれ、可動機構100の左側、右側、後側、前側と対応する。図7の右下側、左上側、右上側、左下側、上側、下側は、それぞれ、可動機構100の前側、後側、右側、左側、上側、下側と対応する。図7は、可動機構100の動作態様を理解容易にするために、壁部20(図6参照)、バネ部材22(図9参照)などを省略して図示している(後述の図13〜図20も同様)。
【0049】
なお、図6は、ローラホルダ18が印字位置(図20に示す位置)にあり、且つ、センサホルダ19が識別位置(図20に示す位置)にある状態を示している。図7は、ローラホルダ18が待機位置(図14に示す位置)にあり、且つ、センサホルダ19が離間位置(図14に示す位置)にある状態を示している。図6および図7では、カバー6に備えられたレバー押下部61、保持部材62および突出片63(図2参照)などを省略して図示している(後述の図13〜図20も同様)。
【0050】
ユーザは、カセット装着部8に対してテープカセット30を着脱するときはカバー6を上方に開く。印字装置1にて印字を行う場合にはカバー6を下方に閉じる。レバー16は、カバー6の開閉動作に伴って、レバー軸部161を中心にして上下方向(図7に示す回動方向D1)に回動する。詳細は後述するが、カバー6が上方に開かれるのに伴って、レバー16が上方向に回動する。カバー6が下方に閉じられるのに伴って、レバー16が下方向に回動する。
【0051】
レバー16の下端には、正面視で左右方向を長手とする板状のリリースロッド17が係合されている。リリースロッド17は、レバー16の回動に伴って左右方向(図7に示す移動方向D2)に移動する。詳細は後述するが、レバー16が下方向(図7の下方向)に回動した場合には、リリースロッド17は左方向(図7の左下方向)に移動する。レバー16が上方向(図7の上方向)に回動した場合には、リリースロッド17は右方向(図7の右上方向)に移動する。
【0052】
リリースロッド17の後側には、後方に開口する箱状体であるローラホルダ18が設けられている。ローラホルダ18の内部には、プラテンローラ15と可動搬送ローラ14とが設けられている。ローラホルダ18は、ホルダ軸181を中心に回動可能に軸支されている。ローラホルダ18の左端縁部には、可動搬送ローラ14がローラ面を後方に露出させつつ回転可能に軸支されている。可動搬送ローラ14の右側には、プラテンローラ15がローラ面を後方に露出させつつ回転可能に軸支されている。可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15は、それぞれテープ駆動ローラ46およびサーマルヘッド10に対向する位置に配置されている(図14参照)。
【0053】
ローラホルダ18は、後述の巻きバネ185によって前方向(図7の右下方向)に常に弾性付勢されている。ローラホルダ18は、リリースロッド17が左右方向(移動方向D2)に移動するのに伴って、ホルダ軸181を中心にして前後方向(図7に示す回動方向D3)に回動する。詳細は後述するが、リリースロッド17が左方向に移動した場合には、ローラホルダ18は巻きバネ185の付勢力に抗って後方(図7の左上方向)に回動する。リリースロッド17が右方向に移動した場合には、ローラホルダ18は巻きバネ185の付勢力によって前方(図7の右下方向)に回動する。
【0054】
ローラホルダ18には、正面視で略矩形状の開口部を形成する第一ホルダ開口部182が設けられている。リリースロッド17の後側、かつ第一ホルダ開口部182の内側には、センサホルダ19が設けられている。センサホルダ19には、後方(図7の左上方向)に突出するスイッチ端子231を備えた機械式センサ23が複数設けられている。
【0055】
複数の機械式センサ23は、アーム識別部800に設けられた複数の識別部にそれぞれ対応する位置に配置されている。センサホルダ19は、リリースロッド17の左右方向(移動方向D2)の移動に伴って前後方向(図7に示す移動方向D4)に移動する。詳細は後述するが、リリースロッド17が左方向に移動した場合には、センサホルダ19は後方(図7の左上方向)に移動する。リリースロッド17が右方向に移動した場合には、センサホルダ19は前方(図7の右下方向)に移動する。センサホルダ19は、ローラホルダ18には固定されていないため、ローラホルダ18とは独立して移動可能である。
【0056】
以上の構成により、本実施形態の可動機構100では、カバー6が下方に閉じられるのに伴って、ローラホルダ18が後方に回動し、且つ、センサホルダ19が後方に移動する。ローラホルダ18が後方に回動すると、プラテンローラ15がサーマルヘッド10に圧接され、且つ、可動搬送ローラ14がテープ駆動ローラ46に圧接される。センサホルダ19が後方に移動すると、機械式センサ23のスイッチ端子231がアーム識別部800に圧接される。これにより、印字装置1では、カセット装着部8に装着されたテープカセット30を用いた印字動作が可能となり、且つ、テープカセット30のテープ種類を特定可能となる。
【0057】
カバー6が上方向に開かれるのに伴って、ローラホルダ18が前方に回動し、且つ、センサホルダ19が前方に移動する。ローラホルダ18が前方に回動すると、プラテンローラ15がサーマルヘッド10から離間され、且つ、可動搬送ローラ14がテープ駆動ローラ46から離間される。センサホルダ19が前方に移動すると、機械式センサ23のスイッチ端子231がアーム識別部800から離間される。これにより、印字装置1では、カセット装着部8にテープカセット30を着脱自在となる。
【0058】
図6〜図9を参照して、可動機構100に含まれる各部材の物理的構成の詳細について説明する。図8は、図7と同一方向から可動機構100を図示している。ただし、図8は、可動機構100の連結構造を理解容易にするために、ローラホルダ18が印字位置(図20に示す位置)にあり、且つ、センサホルダ19が識別位置(図20に示す位置)にある状態を図示している。また、図8では、レバー16およびリリースロッド17を取り除いて図示している。
【0059】
図6および図7を参照して、レバー16の物理的構造について説明する。レバー16は、所定の厚みおよび幅を有し、正面視で右上方向に延びる略円弧を描くように湾曲している。レバー16の下端には、レバー16を回動自在に支持するレバー軸部161が設けられている。
【0060】
レバー16は、第一〜第三屈曲部162,163,164を備える。図7に示すように、カバー6が開位置(図2参照)にある場合には、レバー16は、レバー軸部161から略上方に延び、第一屈曲部162において右上方向に屈曲し、第二屈曲部163において略右方に屈曲し、第三屈曲部164においてやや右下方向に屈曲する。カバー6が開位置にある場合、第三屈曲部164は、最も高い位置にある(図7および図13参照)。第二屈曲部163と第三屈曲部164との間におけるレバー16の上面を接触面165という。第二屈曲部163、第三屈曲部164、および接触面165は、カバー6が閉じられるときにレバー押下部61(図2参照)に接触する部位であるが、詳細は後述する。レバー16の先端部であるレバー先端部169は、カバー6が開かれるときに突出片63(図2参照)に接触する部位である。
【0061】
レバー軸部161には、巻きバネ168のコイル部が装着されている。巻きバネ168のコイル部から径外側に延設された両腕部のうち、一方の腕部はレバー16に固定されており、他方の腕部は壁部20に固定されている。巻きバネ168は、レバー16を上方向(図7では反時計回り方向)に回転させるように、常に弾性付勢している。レバー16が下方向(図7では時計回り方向)に回転するほど、巻きバネ168に蓄積される弾性エネルギー(つまり、上方向への付勢力)が大きくなる。
【0062】
図7、図8および図14を参照して、リリースロッド17の物理的構造について説明する。図14は、印字装置1を底面視した場合の可動機構100の横断面を示し、且つ、テープカセット30を仮想線(二点鎖線)で示している。図14では、理解を容易にするために、壁部20やバネ部材22などを省略している(後述する図17および図20も同様)。
【0063】
レバー16におけるレバー軸部161の下端部には、押圧部171と胴部172とを備えたリリースロッド17が係合されている。胴部172は、左右方向を長手方向として延びる角柱状をなす所定の厚みおよび高さを有する。押圧部171は、胴部172の左端部に形成された頭部である。
【0064】
押圧部171は、ローラホルダ18を前後方向(図14では上下方向)に回動させる。押圧部171は、平面視で胴部172から前後方向に突出した形状を有しているため、胴部172よりも前後方向長さ(すなわち、厚み)が大きい。平面視で胴部172の前後方向位置から後方(図14では下方向)に向けて左右方向長さが漸減するように、押圧部171の左面から後面に亘って傾斜面が形成されている。押圧部171において左右方向と平行をなす背面部位が、後面1711である。押圧部171において後面1711の左側に連設されて左前方に伸びる傾斜面が、傾斜面1712である。
【0065】
胴部172の上面には、凹所176が設けられている。凹所176は、胴部172の左右方向における略中央位置から右方向に延びる所定範囲内に設けられている。凹所176は、高さ位置が上面よりも若干低く形成された凹み部分である。凹所176の上面には、センサホルダ19を前後方向に案内するためのロッドガイド部175が形成されている。ロッドガイド部175は、第一ロッドガイド部1751、ロッドガイド斜部1752、第二ロッドガイド部1753を有する。
【0066】
第一ロッドガイド部1751は、凹所176の前端縁に沿って立設された壁部である。第一ロッドガイド部1751は、凹所176の左端部から中央やや左側にかけて延びる。第二ロッドガイド部1753は、凹所176の後端縁に沿って立設された壁部である。第二ロッドガイド部1753は、凹所176の中央やや右側から右方向に延びる。ロッドガイド斜部1752は、第一ロッドガイド部1751の右端部と第二ロッドガイド部1753の左端部とを平面視で斜めに繋ぐ、凹所176から立設された壁部である。第一ロッドガイド部1751、ロッドガイド斜部1752、第二ロッドガイド部1753は、それぞれ同一の厚み及び高さであり、全体としてレール状の外観を有する。
【0067】
胴部172の前面における、凹所176の右端部からみた右下側には、第一ガイド部174が設けられている。第一ガイド部174は、胴部172の前面から前方向に突出し、且つ、先端が下方向に屈曲された爪部である。押圧部171には、第二ガイド部173が設けられている。第二ガイド部173は、押圧部171の左面および右面に亘って設けられている。第二ガイド部173は、底面から上方に向けて溝状に凹陥する部位である。第二ガイド部173は、胴部172よりも前側に設けられている。第一ガイド部174および第二ガイド部173は、リリースロッド17の左右方向への移動を案内する部位である。
【0068】
図8および図9を参照して、壁部20の物理的構造について説明する。壁部20は、左右方向に長い板状部材であって、印字装置1においてリリースロッド17の前方(図8では右下側)に立設されている。壁部20の上端辺は、壁部20の左側から右側(図8では左下側から右上側)に向けて順に、階段状に連なる第一上辺部201、第二上辺部202、第三上辺部203、第四上辺部204、第五上辺部205を有する。
【0069】
第一上辺部201は、壁部20の左右方向における左端部から中央やや左寄りに亘って形成され、印字装置1の左右方向と平行をなす辺部である。第三上辺部203は、壁部20の中央やや右寄りから右端やや左寄りに亘って形成され、第一上辺部201よりも上方で印字装置1の左右方向と平行をなす辺部である。第五上辺部205は、壁部20の左右方向における右端縁に形成され、第三上辺部203よりも上方で印字装置1の左右方向と平行をなす辺部である。第二上辺部202は、異なる高さ位置にある第一上辺部201と第三上辺部203とを斜めに結ぶ辺部である。第四上辺部204は、異なる高さ位置にある第三上辺部203と第五上辺部205とを斜めに結ぶ辺部である。
【0070】
第三上辺部203、第四上辺部204、第五上辺部205の下側には、長孔206が形成されている。長孔206は、左右方向に延びる溝状に貫通している。第三上辺部203の左下側には、正面視で円形状の孔部である円孔207が設けられている。円孔207の下側には、正面視で横長長方形状の孔部である第一角孔208が設けられている。第一角孔208よりも下方には、正面視で横長長方角形状の孔部である第二角孔209が設けられている。なお、壁部20の右縁部には、レバー16から延びる巻きバネ168の腕部が係止される切欠部であるバネ固定部210(図6参照)が形成されている。
【0071】
リリースロッド17の第一ガイド部174が長孔206に対して摺動可能に係合され、且つ、第二ガイド部173が第一上辺部201に対して摺動可能に係合される。第一ガイド部174が長孔206に沿って案内され、且つ、第二ガイド部173が第一上辺部201に沿って案内されることによって、リリースロッド17が左右方向に移動する。
【0072】
図6〜図9、図14を参照して、ローラホルダ18の物理的構造について説明する。ローラホルダ18は、先述のように可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15を回転自在に保持する部材であって、リリースロッド17の後側に設けられる。可動搬送ローラ14の回転中心軸である軸部141は、ローラホルダ18の上面と底面とに設けられた軸支孔188で回転支持されている。プラテンローラ15の回転中心軸である軸部151は、ローラホルダ18の上面と底面とに設けられた軸支孔189で回転支持されている。軸支孔188,189は、それぞれ、前後方向に長い孔部である。
【0073】
第一ホルダ開口部182は、左右方向において、ホルダ軸181とプラテンローラ15との間に設けられている。第一ホルダ開口部182の左辺に連続して、開口を形成する第二ホルダ開口部183が形成されている。第二ホルダ開口部183は、正面視で第一ホルダ開口部182よりも小さい略矩形状の開口部である。第一ホルダ開口部182および第二ホルダ開口部183がつながって、一つの開口部を形成している。
【0074】
第二ホルダ開口部183の背後には、ホルダ側受部184が設けられている。ホルダ側受部184は、プラテンローラ15の前面側から右側後方(図14では右下方向)に向けて延び、プラテンローラ15のローラ面に沿った湾曲面を有する。ただし、ホルダ側受部184の前縁部は、左右方向に平行な面を形成する位置固定部184Aである。
【0075】
リリースロッド17は、胴部172が第一ホルダ開口部182によって形成される開口部の左右方向に沿って延び、且つ、押圧部171が第二ホルダ開口部183によって形成される開口部に対して右側から挿入されるように配設される。押圧部171がホルダ側受部184から離間しているときは、ホルダ側受部184は押圧部171によって押圧されない。
【0076】
ホルダ軸181の下部には、巻きバネ185のコイル部が装着されている。巻きバネ185のコイル部から径外側に延設された両腕部のうち、一方の腕部はローラホルダ18の下端面から下方に突出するバネ固定部220に固定されており、他方の腕部はカセット装着部8(図2参照)の底板8Aに固定されている。巻きバネ185は、ローラホルダ18を前方向(図7では右下方向)に回動させるように、常に弾性付勢している。ローラホルダ18が後方向(図7では左上方向)に回転するほど、巻きバネ185に蓄積される弾性エネルギー(つまり、前方向への付勢力)が大きくなる。
【0077】
これにより、ホルダ側受部184が押圧されていない状態では、ローラホルダ18が待機位置(図14に示す位置)に保持される。リリースロッド17が左側に移動すると、押圧部171が第二ホルダ開口部183内でホルダ側受部184に接触して押圧する。この場合、ローラホルダ18が待機位置から後方向(図14では下方向)に移動するが、詳細は後述する。
【0078】
ローラホルダ18の内側の面には、ローラホルダ18の上板から下方に突出するバネ保持部221と、ローラホルダ18の下板から上方に突出するバネ保持部222とが、上下に対向するように設けられている。バネ保持部221、222には、上下一対の巻きバネであるローラ用バネ186、187のコイル部がそれぞれ装着されている。ローラ用バネ186、187のコイル部から径外側に延設された両腕部は、それぞれ、ローラホルダ18の上板および下板に沿って左方向(図6では右方向)に延びている。
【0079】
ローラ用バネ186、187のコイル部から径外側に延設された両腕部のうち、それぞれの一方の腕部はローラホルダ18の内側の面に固定されている。ただし、ローラ用バネ186の他方の腕部は、プラテンローラ15の上側で軸部151の前側に接触し、且つ、可動搬送ローラ14の上側で軸部141の前側に接触している。ローラ用バネ187の他方の腕部は、プラテンローラ15の下側で軸部151の前側に接触し、且つ、可動搬送ローラ14の下側で軸部141の前側に接触している。
【0080】
ローラ用バネ186、187は、可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15を後方向(図7では左上方向)に移動させるように、軸部141、151を常に所定の圧力で弾性付勢している。可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15が前方向(図7では右下方向)に移動するほど、ローラ用バネ186、187に蓄積される弾性エネルギー(つまり、後方向への付勢力)が大きくなる。これにより、可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15が押圧されていない状態では、軸部141,151がそれぞれ軸支孔188,189の後端に当接する位置まで、可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15が後方に移動する(図7、図8参照)。
【0081】
なお、バネ保持部221の突出高さ(上下方向長さ)は、ローラホルダ18の上板から第一ホルダ開口部182までの上下方向長さよりも若干小さい。バネ保持部222の突出高さ(上下方向長さ)は、ローラホルダ18の下板から第一ホルダ開口部182までの上下方向長さよりも若干小さい。よって、バネ保持部221、222およびローラ用バネ186、187は、第一ホルダ開口部182に内部に配置されるセンサホルダ19に干渉しない。
【0082】
図6〜図9を参照して、センサホルダ19の物理的構造について説明する。センサホルダ19は、リリースロッド17の後側(図7では左上側)において、第一ホルダ開口部182の内側に設けられている。センサホルダ19は、箱状のユニット本体191、機械式センサ23、係止片192、電気基板193、円筒部194、バネ部材22および回転防止部材195を有している。ユニット本体191、係止片192、円筒部194、および回転防止部材195は、一体に形成されている。
【0083】
ユニット本体191において、カセット装着部8に装着されているテープカセット30に対向する面をカセット対向面191Aという。カセット対向面191Aには、2箇所の開口である第一保護部開口197および第二保護部開口198が設けられている。第一保護部開口197は、背面視で縦長の略長方形に形成されている。第二保護部開口198は、第一保護部開口197の左上側(図6では右上側)において、第一保護部開口197よりも大きい開口面積で矩形状に形成されている。第一保護部開口197には、1つの機械式センサ23が嵌め込まれる。第二保護部開口198には、4つの機械式センサ23を一体に保持するセンサ収納体88が嵌め込まれる。各保護部開口197、198に嵌め込まれた機械式センサ23は、ユニット本体191に配設された電気基板193と電気的に接続される。
【0084】
電気基板193は、ユニット本体191の前側に設けられており、前面が、第一ホルダ開口部182によって形成される開口から前方に露出している。図示しないが、電気基板193の前面には電気配線が接続されている。電気基板193は、この電気配線を介して、印字装置1の内部に備えられた制御回路部400(図12参照)に電気的に接続されている。機械式センサ23のオン・オフの信号は、電気基板193に接続された電気配線を介してCPU401(図12参照)に伝達される。
【0085】
上記の機械式センサ23が各々有するスイッチ端子231は、カセット対向面191Aから後方に突出している。言い換えると、各スイッチ端子231は、カセット装着部8に装着されているテープカセット30のアーム前面35(図3参照)に対向するように突出している。各スイッチ端子231は、先述したアーム識別部800の識別部(非押圧部801または押圧部802)(図5参照)にそれぞれ対応する位置に設けられている。本実施形態では、5つのスイッチ端子231がジグザグに配置されているので、各スイッチ端子231の左右方向の位置がそれぞれ異なっており、上下方向に重なるスイッチ端子231はない。各スイッチ端子231を結ぶ線は、テープカセット30の着脱方向である印字装置1の上下方向と交差する。カセット対向面191Aの右上部(図6の左上部)には、左右方向を長手とする板状突起である係止片192が設けられている。係止片192は、スイッチ端子231よりも後方への突出長さが大きくなっている。
【0086】
電気基板193には、正面視で円形の孔部である電気基板孔196が設けられている。ユニット本体191は、前方(図9では右方向)に延びる円筒状の円筒部194を有する。円筒部194は、電気基板193に設けられた電気基板孔196を貫通して前方に突出している。円筒部194は、前後方向に延びる軸孔を有し、この軸孔に小径の円柱部材21が挿入されている。円筒部194の軸孔は、同軸をなすように連通した第一軸孔1941と第二軸孔1942とを含む。第一軸孔1941は、カセット対向面191Aから前方に、円筒部194の中央付近まで延びている。第二軸孔1942は、第一軸孔1941から円筒部194の前端まで延び、且つ、第一軸孔1941よりも開口径が大きい。円筒部194の軸孔に挿入された円柱部材21は、円柱部材21と略同径の第一軸孔1941に沿って前後方向に摺動可能である。円柱部材21の前方側の先端部には、小径の挿入ピン21Aが設けられている。
【0087】
第二軸孔1942の開口径は、円柱部材21の直径よりも大きい。そのため、円柱部材21と円筒部194との間には、正面視で環状の溝部をなすバネ収容部1943が形成される。バネ収容部1943には、第二軸孔1942の軸長よりも全長が大きいバネ部材22が、バネ部材22の巻回中心に円柱部材21が挿入されて収容されている。バネ収容部1943の内部では、第一軸孔1941と第二軸孔1942との径差によって形成される段差部分に、バネ部材22の後端が接触している。円柱部材21にバネ部材22が巻回された状態で、挿入ピン21Aが円孔207に挿入され、且つ、バネ部材22の前端が壁部20に接触している。これにより、バネ部材22は、弾性圧によってセンサホルダ19を後方(図9では左方向)に付勢する。
【0088】
円筒部194の前部における開口縁下部には、前方に向けて延びるホルダガイド部199が設けられている。ホルダガイド部199の下方に屈曲した先端部が、リリースロッド17のロッドガイド部175に係合されている。図9においては、ホルダガイド部199は、第二ロッドガイド部1753に係合されている。バネ部材22によって後方に付勢されるセンサホルダ19は、ホルダガイド部199とロッドガイド部175との係合によって後方への移動が規制されている。センサホルダ19は、リリースロッド17が左右方向に移動するのに伴って、ロッドガイド部175に案内されつつ前後方向に移動するが、詳細は後述する。
【0089】
ユニット本体191の下端、且つホルダガイド部199の下方には、前方に向けて延びる回転防止部材195が設けられている。回転防止部材195は、壁部20の第二角孔209を貫通し、且つ、下方に屈曲した先端部が壁部20の前面に係合されている。センサホルダ19は、挿入ピン21Aと回転防止部材195との上下方向に並ぶ2点で壁部20にて位置決めされることで、円柱部材21を中心とした回転移動が規制される。
【0090】
図10および図11を参照して、機械式センサ23の詳細について説明する。図11では、5つの機械式センサ23のうちで、最も左上(図6では右上)に位置する機械式センサ23の可動態様を模式的に示している。
【0091】
図10および図11に示すように、機械式センサ23は、前後方向(図10および図11では左右方向)の長さが小さい薄型箱状のセンサ本体(図示外)の内部に、スイッチ端子231が設けられている。スイッチ端子231は、センサ本体の内部で左右方向(図10および図11では奥手前方向)に延びる軸部232を回動中心として、前後方向に回動可能に設けられている。スイッチ端子231は、常にはバネ(図示外)によって後方向(図10および図11では左方向)に回動した進出位置に移動している。スイッチ端子231の先端側に外圧が加えられると、スイッチ端子231は前方向(図10および図11では右方向)に回動した退入位置に移動する。スイッチ端子231の前方には、スイッチ端子231の変位状態を検出する検出体234が設けられている。
【0092】
スイッチ端子231は、全体として側面視で略Uの字状に湾曲した平面部を有する板状部材である。スイッチ端子231は、腕部231Aと、突出部231Bとを有する。腕部231Aは、軸部232から径外方向に延びる。突出部231Bは、腕部231Aの先端から後方に進出する。突出部231Bは、腕部231Aから後方に向けて上下方向長さが漸減して、側面視で略Vの字に突出する形状を有する。スイッチ端子231が突出位置に移動した状態では、突出部231Bがカセット対向面191Aよりも後方に進出している。このとき、腕部231Aは検出体234に対して非接触状態となり、機械式センサ23はオフ状態となる。
【0093】
突出部231Bが有する略Vの字形状の周縁部を押圧するように外圧が加えられると、突出部231Bが前方に向けて退入する。このとき、腕部231Aは検出体234に対して接触状態となり、機械式センサ23はオン状態となる。言い換えると、突出部231Bが後側から水平に押圧された場合のみならず、突出部231Bが上方または下方から垂直に押圧された場合でも、突出部231Bは前方に向けて退入し、機械式センサ23はオン状態となる。
【0094】
図12を参照して、印字装置1の電気的構成について説明する。図12に示すように、印字装置1は、制御基板上に形成される制御回路部400を備えている。制御回路部400は、各機器を制御するCPU401、CPU401にデータバス410を介して接続されたROM402、CGROM403、RAM404、および入出力インターフェース411等から構成されている。
【0095】
ROM402には、CPU401が印字装置1を制御するために実行する各種プログラムが記憶されている。カセット装着部8に装着されたテープカセット30のテープ種類を特定するためのテーブルも、ROM402に記憶されている。CGROM403には、キャラクタを印字するための印字用ドットパターンデータが記憶されている。RAM404には、テキストメモリ、印字バッファ等、複数の記憶エリアが設けられている。
【0096】
入出力インターフェース411には、機械式センサ23、キーボード3、液晶駆動回路(LCDC)405、駆動回路406、407、408等が接続されている。駆動回路406は、サーマルヘッド10を駆動するための電子回路である。駆動回路407は、リボン巻取軸9およびテープ駆動軸11を回転させるテープ送りモータ24を駆動するための電子回路である。駆動回路408は、印字済テープ50を切断する移動刃(図示外)を動作させるカッターモータ25を駆動するための電子回路である。液晶駆動回路(LCDC)405は、ディスプレイ5に表示データを出力するためのビデオRAM(図示外)を有する。
【0097】
図6、図7、および図13〜図20を参照して、可動機構100の動作態様の詳細について説明する。まず、カバー6が下方に閉じられることによって開位置(図2参照)から閉位置(図1参照)に変位する場合の、可動機構100の動作態様を説明する。
【0098】
図7、図13および図14に示すように、レバー16は巻きバネ168(図6参照)によって上方向(図13の回動方向D5)に付勢されている。レバー16の付勢力によってカバー6が開位置にあるとき、第三屈曲部164が最も高い位置となる。このとき、レバー16の下端に連結されたリリースロッド17が、リリースロッド17の可動範囲の右端位置にある。
【0099】
カバー6が開位置から閉位置に移動する場合、レバー押下部61(図2参照)が、第三屈曲部164、接触面165、および第二屈曲部163の順に当接して下方に押圧する。このため、レバー16は、巻きバネ168(図6参照)の付勢力に抗して、レバー軸部161を中心にして下方(図13の回動方向D5の反対方向)に回動する。レバー16の回動に伴って、リリースロッド17は左方向に移動する。そして、カバー6が閉位置(図1参照)に移動すると、図18〜図20に示すように、リリースロッド17は、可動範囲の左端位置である第二位置(図20に示す位置)に移動する。
【0100】
図7、図13および図14に示すように、カバー6が開位置にある状態では、ホルダガイド部199が第一ロッドガイド部1751に係合されている。バネ部材22によって後方(図14では下方向)に付勢されるセンサホルダ19は、第一ロッドガイド部1751によって後方向への移動が制限されて、離間位置(図14に示す位置)に保持される。ローラホルダ18のホルダ側受部184は、リリースロッド17の押圧部171から離間している。ローラホルダ18は、押圧部171によって押圧されることなく、巻きバネ185(図6参照)によって前方に付勢されて、待機位置(図14に示す位置)に保持される。
【0101】
このように、カバー6が開かれた状態(図7、図13および図14照)では、可動搬送ローラ14、プラテンローラ15、スイッチ端子231などが、カセット装着部8(図2参照)から離間した位置に退避しているため、これらの部材はカセット装着部8に着脱されるテープカセット30に対して干渉しにくい。つまり、印字装置1は、カセット装着部8に対してテープカセット30を着脱自在な状態となる。
【0102】
ユーザによってカバー6が閉じられる場合には、開位置にあるカバー6に下方に向けた押圧が加えられる。この押圧に伴ってカバー6が閉位置に向けて移動する過程で、レバー押下部61(図2参照)がレバー16を押圧する。押圧されたレバー16は、巻きバネ168(図6参照)の付勢力に抗して下方向に回動する。レバー16の回動に伴って、リリースロッド17が右端位置から左方向に移動する。リリースロッド17が左方向に移動するのに伴って、押圧部171の傾斜面1712がローラホルダ18のホルダ側受部184に接触する。傾斜面1712がホルダ側受部184を押圧するのに伴って、ホルダ側受部184が傾斜面1712に沿って摺動し、且つ、ローラホルダ18が巻きバネ185(図6参照)の付勢力に抗して後方に回動する。
【0103】
図15〜図17に示すように、リリースロッド17が第一位置(図17に示す位置)に到達すると、ローラホルダ18によってテープカセット30がカセット装着部8内に固定される。具体的には、プラテンローラ15が、露出部77に位置するフィルムテープ59およびインクリボン60を介して、サーマルヘッド10を押圧する。可動搬送ローラ14が、フィルムテープ59と両面粘着テープ58とを介して、テープ駆動軸11が挿入されたテープ駆動ローラ46を押圧する。つまり、図17に示すローラホルダ18の位置が、ローラホルダ18の接触位置である。
【0104】
センサホルダ19は、前後方向にのみ移動可能に構成されており、左右方向には移動しない。そのため、リリースロッド17が左右方向に移動するのに伴って、ロッドガイド部175がホルダガイド部199と係合状態を維持しながら左右方向に摺動する。詳細には、リリースロッド17が右端位置から第一位置まで左方向に移動するときは、第一ロッドガイド部1751がホルダガイド部199と係合した状態を維持しながら左方向に摺動する。第一ロッドガイド部1751は左右方向に平行な壁部であるため、第一ロッドガイド部1751がホルダガイド部199と係合している状態では、リリースロッド17が左右方向に移動してもセンサホルダ19は前後方向に移動しない。
【0105】
このように、カバー6が閉じられる途中の状態(図15〜図17参照)では、リリースロッド17が右端位置から第一位置まで左方向に移動するのに伴って、ローラホルダ18が待機位置(図14参照)から後方向に回動する。ローラホルダ18が接触位置(図17参照)に到達すると、プラテンローラ15がサーマルヘッド10に押圧され、且つ、可動搬送ローラ14がテープ駆動ローラ46に押圧される。センサホルダ19は離間位置に維持されるため、センサホルダ19のスイッチ端子231はテープカセット30のアーム識別部800に接触しない。
【0106】
カバー6が閉じられる途中の状態(図15〜図17参照)から、さらにカバー6が閉位置に向けて移動すると、レバー16がさらに下方向に回動するのに伴って、リリースロッド17が第一位置からさらに左方向に移動する。カバー6が閉位置に到達すると、リリースロッド17は、リリースロッド17の可動範囲の左端位置である第二位置(図20に示す位置)に移動する。
【0107】
リリースロッド17が第一位置(図17参照)よりも左側に移動するのに伴って、ホルダ側受部184が傾斜面1712によってさらに後方向に押圧される。図18〜図20に示すように、リリースロッド17が第二位置(図20参照)に到達すると、押圧部171の後面1711が先述の位置固定部184Aに面接触する。位置固定部184Aは、後面1711の平行に延びる面部であり、後面1711と面接触することでリリースロッド17を第二位置に固定する。位置固定部184Aと後面1711とが面接触した状態でローラホルダ18が保持される位置(図20に示す位置)が、ローラホルダ18の印字位置である。
【0108】
このように、カバー6が開位置から閉位置に向けて移動するのに連動して、ローラホルダ18が徐々に後方向へ移動する。カバー6が閉位置に近づくのに伴って、プラテンローラ15がサーマルヘッド10を押圧する圧力および可動搬送ローラ14がテープ駆動ローラ46を押圧する圧力が徐々に大きくなる。ひいては、ローラ用バネ186、187に蓄積される弾性エネルギー(つまり、プラテンローラ15をサーマルヘッド10に対して所定の圧力で押圧し、且つ、可動搬送ローラ14をテープ駆動ローラ46に対して所定の圧力で押圧している状態で生じる弾性エネルギー)も、徐々に大きくなる。
【0109】
ローラホルダ18が印字位置に移動した状態(図20参照)では、ローラホルダ18が接触位置(図17参照)にあるときよりもテープカセット30がさらに強固にカセット装着部8内で固定される。ローラ用バネ186、187が収縮するのに応じて、軸部141,151がそれぞれ軸支孔188,189における前後方向の中央位置に移動する。このとき、ローラ用バネ186、187に蓄積される弾性エネルギーが大きくなる。
【0110】
また、リリースロッド17が第一位置(図17参照)よりも左方向に移動すると、ホルダガイド部199の係合される対象部位が第一ロッドガイド部1751からロッドガイド斜部1752に変化する。第一ロッドガイド部1751から右側後方に延びる壁部であるロッドガイド斜部1752は、ホルダガイド部199と係合しながら摺動可能な状態となる。この状態でリリースロッド17が左方向に移動すると、ホルダガイド部199はバネ部材22によって押圧されながらロッドガイド斜部1752に沿って後方に移動する。
【0111】
リリースロッド17がさらに左方向に移動して第二位置(図20参照)に到達すると、ホルダガイド部199の係合される対象部位がロッドガイド斜部1752から第二ロッドガイド部1753に変化する。第二ロッドガイド部1753は左右方向に平行をなす壁部であるため、第二ロッドガイド部1753がホルダガイド部199と係合している状態では、リリースロッド17が左右方向に移動してもセンサホルダ19は前後方向に移動しない。ホルダガイド部199が第二ロッドガイド部1753に係合される位置(図20に示す位置)が、センサホルダ19の識別位置である。
【0112】
図21に示すように、テープカセット30がカセット装着部8の適正な位置に装着されている場合は、カバー6(図2参照)が閉じられてセンサホルダ19が識別位置に移動すると、カセット対向面191Aに設けられた係止片192がテープカセット30の係止孔820に挿入される。カセット対向面191Aに設けられた機械式センサ23が、テープカセット30のアーム識別部800に対向する。
【0113】
5つのスイッチ端子231は、それぞれ対向するアーム識別部800の識別部(非押圧部801または押圧部802)によって選択的に押圧される。具体的には、押圧部802に対向したスイッチ端子231は、アーム前面35の面部に押圧され、機械式センサ23がオン状態となる。非押圧部801に対向したスイッチ端子231は非押圧部801に挿入され、機械式センサ23がオフ状態となる。
【0114】
印字装置1に設けられたCPU401(図12参照)は、5つの機械式センサ23のオン・オフの組合せに基づいて、カセット装着部8に装着されているテープカセット30のテープ種類を特定する。詳細には、あらかじめROM402(図12参照)に記憶されているテーブルを参照して、機械式センサ23のオン・オフの組合せに対応するテープ種類が特定される。
【0115】
このように、カバー6が閉じられた状態(図18〜図20参照)では、テープカセット30がカセット装着部8で強固に固定された状態のもと、スイッチ端子231がアーム識別部800に対して圧接される。つまり、印字装置1は、安定的かつ正確に印字可能な状態となり、且つ、テープカセット30のテープ種類を判定可能な状態となる。
【0116】
次に、カバー6が上方に開けられることによって閉位置(図1参照)から開位置(図2参照)に変位する場合の、可動機構100の動作態様を説明する。この動作態様は、カバー6が下方に閉じられる場合と同様であるが、ローラホルダ18およびセンサホルダ19の動作順序が逆になる。
【0117】
図示しないが、カバー6が閉位置にある状態(図18〜図20参照)では、カバー6の突出片63(図2参照)がレバー16のレバー先端部169の下方に位置している。カバー6が閉位置から上方に開かれると、突出片63がレバー先端部169に下方から接触して、レバー16を上方向に押し上げる。押し上げられたレバー16の回動に伴って、リリースロッド17が第二位置(図20参照)から右方向に所定量移動することで、位置固定部184Aと後面1711との面接触が解除され、ひいてはローラホルダ18の印字位置での固定が解除される。
【0118】
ローラホルダ18の印字位置での固定が解除された場合、ローラ用バネ186、187に蓄積された弾性エネルギーが解放されるため、可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15がローラ用バネ186、187によって後方向に弾かれる。このとき、可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15は、それぞれ、サーマルヘッド10およびテープ駆動ローラ46からの反発力を受ける。この反発力によって、ローラホルダ18が印字位置(図20参照)から接触位置(図17参照)まで前方向に移動する。
【0119】
このとき、ホルダ側受部184が傾斜面1712を押圧することで、リリースロッド17が第二位置(図20参照)から第一位置(図17参照)まで移動する。リリースロッド17の移動に伴って、ホルダガイド部199がロッドガイド斜部1752に沿って、第二ロッドガイド部1753から第一ロッドガイド部1751まで摺動する。これにより、センサホルダ19は、識別位置(図20参照)から離間位置(図17参照)まで前方向に移動する。
【0120】
本実施形態では、ローラホルダ18の印字位置での固定が解除された場合に、リリースロッド17が第二位置(図20参照)から第一位置(図17参照)まで移動するのに必要な弾性エネルギーがローラ用バネ186、187に蓄積されるように、ローラ用バネ186、187が付与する圧力の大きさ(つまり、反発力)が規定されている。さらに、ローラ用バネ186、187で解除された弾性エネルギーによって、ホルダガイド部199が第二ロッドガイド部1753から第一ロッドガイド部1751まで摺動するように、ロッドガイド斜部1752の位置、長さ、傾きなどが規定されている。
【0121】
先述したように、ローラホルダ18には、ローラホルダ18を前方向に付勢する巻きバネ185(図6参照)が設けられている。そのため、第二位置(図20参照)から第一位置(図17参照)まで移動したリリースロッド17は、巻きバネ185(図6参照)の付勢力によって前方に移動するローラホルダ18に押圧されて、第一位置(図17参照)よりも右方向に移動する。なお、ローラホルダ18は、巻きバネ185(図6参照)の付勢力によって待機位置(図14参照)まで前方に移動して保持される。
【0122】
また、レバー16には、レバー16を上方向に付勢する巻きバネ168(図6参照)が設けられている。そのため、ローラホルダ18から離間する位置まで移動したリリースロッド17は、巻きバネ168(図6参照)の付勢力によって上方に移動するレバー16に連動して、リリースロッド17の可動範囲の右端位置(図14参照)まで移動する。なお、レバー16は、巻きバネ168(図6参照)の付勢力によって第三屈曲部164が最も高くなる位置(図13参照)まで上方に回動して保持される。
【0123】
このように、カバー6が開かれるとリリースロッド17の第二位置(図20参照)での固定が解除されて、ローラホルダ18が待機位置に移動し、且つ、センサホルダ19が離間位置に移動する(図7、図13および図14参照)。そのため、先述したように、印字装置1は、カセット装着部8に対してテープカセット30を着脱自在な状態となる。
【0124】
以上説明したように、本実施形態の印字装置1では、テープカセット30のアーム前面35にアーム識別部800が設けられる。機械式センサ23のスイッチ端子231が、アーム識別部800に対して前方から圧接されることで、テープ種類が検出される。これにより、テープカセットの底面に対して突出する機械式センサを配設する場合と比べて、機械式センサ23の配設スペースおよび配設位置に対する制約を小さくしつつ、テープカセット30のテープ種類を適切に検出できる。
【0125】
カバー6が閉じられる場合には、センサホルダ19が識別位置に到達するよりも先に、ローラホルダ18が接触位置に到達する。言い換えると、スイッチ端子231がアーム識別部800に圧接される前に、ローラホルダ18によってテープカセット30が固定される。カバー6が開かれる場合には、ローラホルダ18が接触位置から待機位置に向けて移動するよりも先に、センサホルダ19が識別位置から離間位置に向けて移動する。言い換えると、スイッチ端子231がアーム識別部800から離間された後に、ローラホルダ18によるテープカセット30の固定が解除される。
【0126】
つまり、センサホルダ19がテープカセット30に対して圧接または離間されるときは、テープカセット30は常にローラホルダ18によって固定された状態となる。この場合、スイッチ端子231がアーム識別部800に対して圧接または離間されるときに、例えばユーザが手でテープカセット30に触れたり、印字装置1に異常な振動が加えられたりした場合であっても、テープカセット30の位置変動が抑制される。従って、スイッチ端子231の破損等が抑制されて、機械式センサ23を適切に保護することができる。
【0127】
さらに、ローラホルダ18が印字位置(図20参照)まで回動している場合に、プラテンローラ15をサーマルヘッド10に対して所定の圧力で押圧するローラ用バネ186、187を設けた。リリースロッド17の第二位置(図20参照)での固定が解除された場合には、ローラ用バネ186、187に蓄積された弾性エネルギーが解放されることで、ローラホルダ18が印字位置(図20参照)から接触位置(図17参照)まで回動する。これに伴って、リリースロッド17が第二位置(図20参照)から第一位置(図17参照)まで移動し、ひいてはセンサホルダ19が識別位置(図20参照)から離間位置(図17参照)に移動する。
【0128】
つまり、リリースロッド17の第二位置(図20参照)での固定を解除するだけで、機械式センサ23のスイッチ端子231がテープカセット30のアーム識別部800から離間した位置に退避される。したがって、カセット装着部8に着脱されるテープカセット30に機械式センサ23が干渉してしまうことを抑制でき、ひいては機械式センサ23の破損や故障などが生じるおそれを抑制できる。また、ローラ用バネ186、187に蓄積された弾性エネルギーが、ローラホルダ18およびセンサホルダ19をそれぞれ移動させる機械的な作用を生じるため、機械式センサ23を正確に退避させることができる。
【0129】
また、カバー6の開閉動作に応じて、レバー16がリリースロッド17を移動させる。リリースロッド17の移動に伴って、ローラホルダ18が回動し、且つ、センサホルダ19が移動する。カバー6が開かれると、カセット装着部8にテープカセット30を着脱可能な状態となる。カバー6が閉じられると、サーマルヘッド10による印字が可能な状態となる。したがって、ユーザがカバー6を開閉するだけで、印字装置1をカバー6の状態に応じた最適な使用状態にすることができ、印字装置1の操作性を向上させることができる。
【0130】
また、ユーザはカバー6を開くだけで、リリースロッド17の位置固定を解除することができ、ひいては機械式センサ23を退避させることができる。カバー6が開かれた場合に、巻きバネ185の付勢力によって、ローラホルダ18を待機位置(図14参照)まで退避させることができる。カバーが開かれた場合に、巻きバネ168の付勢力によって、レバー16を初期位置に確実に戻すことができる。ひいては、カバー6の開閉動作に伴って、レバー16をスムーズに移動させることができる。
【0131】
上記実施形態において、フィルムテープ59が本発明の「テープ」に相当する。アーム識別部800が、本発明の「指標部」に相当する。サーマルヘッド10が、本発明の「印字ヘッド」に相当する。複数の機械式センサ23が、本発明の「センサ」に相当する。ローラ用バネ186、187が、本発明の「弾性部」に相当する。リリースロッド17が本発明の「ロッド部」に相当し、位置固定部184Aが本発明の「保持部」に相当する。巻きバネ185が本発明の「第一付勢部」に相当し、巻きバネ168が本発明の「第二付勢部」に相当する。
【0132】
印字位置が本発明の「第一ローラ位置」に相当し、接触位置が本発明の「第二ローラ位置」に相当し、待機位置が本発明の「第三ローラ位置」に相当する。識別位置が本発明の「第一センサ位置」に相当し、離間位置が本発明の「第二センサ位置」に相当する。第二位置が本発明の「第一ロッド位置」に相当し、第一位置が本発明の「第二ロッド位置」に相当し、初期位置(図14参照)が本発明の「第三ロッド位置」に相当する。
【0133】
傾斜面1712が本発明の「ローラ押圧部」に相当し、ロッドガイド部175が本発明の「センサ案内部」に相当する。ホルダ側受部184が、本発明の「ロッド受部」に相当する。ホルダガイド部199が、本発明の「係合部」に相当する。第二ロッドガイド部1753が本発明の「第一保持カム」に相当し、第一ロッドガイド部1751が本発明の「第二保持カム」に相当し、ロッドガイド斜部1752が本発明の「移動カム」に相当する。CPU401が本発明の「判断手段」に相当する。
【0134】
なお、本発明の印字装置1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、機械式センサ23の構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、スイッチ端子231は、ゴムや巻きバネなどの弾性体であって、前後方向に進退可能な軸体であってもよい。この場合、例えばスイッチ端子231に上下方向からの外圧が加えられたとしても、その外圧に応じてスイッチ端子231が弾性変形することで破損等が防止される。
【0135】
また、機械式センサ23に代えて、発光部を有する反射型センサを用いてもよい。この場合、例えば、アーム識別部800(図3および図5参照)における押圧部802を、光を反射する反射面に変更し、非押圧部801を、光を反射しない非反射面に変更するとよい。この場合、反射型センサが発した光が、反射面によって反射された場合には、反射型センサの受光部で光が検出され、非反射面によって反射されなかった場合には、反射型センサの受光部で光が検出されない。CPU401(図12参照)は、この光の有無によってテープ種類を特定できる。また、押圧部802が面部、非押圧部801が孔部である場合には、反射率の違いに応じて孔部または面部を検出することで、テープ種類が特定されてもよい。
【0136】
また、機械式センサ23に代えて、受光部を有し、受光部による受光の有無を検出する光学式センサ(いわゆる透過型センサ)を用いてもよい。この場合、例えば、テープカセット30のアーム部34にテープ種類に対応した孔を設け、印字装置1に発光部を設けてもよい。そして、発光部が発した光が、アーム部34に設けられた孔を介して、光学式センサの受光部によって検出されるようにしてもよい。CPU401(図12参照)は、受光部によって検出される光の有無によってテープ種類を特定できる。
【符号の説明】
【0137】
1 印字装置
6 カバー
8 カセット装着部
10 サーマルヘッド
15 プラテンローラ
16 レバー
17 リリースロッド
18 ローラホルダ
19 センサホルダ
23 機械式センサ
30 テープカセット
31 カセットケース
35 アーム前面
59 フィルムテープ
100 可動機構
168 巻きバネ
175 ロッドガイド部
184 ホルダ側受部
184A 位置固定部
185 巻きバネ
186 ローラ用バネ
187 ローラ用バネ
199 ホルダガイド部
231 スイッチ端子
401 CPU
800 アーム識別部
801 非押圧部
802 押圧部
1712 傾斜面
1751 第一ロッドガイド部
1752 ロッドガイド斜部
1753 第二ロッドガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、底面、前面、および一対の側面を備えたカセットケースと、前記カセットケースに収納されるテープと、前記前面に設けられて少なくとも前記テープの種類を示す指標部とを有するテープカセットが上下方向に着脱されるカセット装着部と、
前記カセット装着部に前記テープカセットが装着された場合に、前記テープに印字を行う印字ヘッドと、
前記印字ヘッドに対向配置され、前記印字ヘッドに圧接されるプラテンローラと、
前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの前記前面に沿って延び、前記プラテンローラを支持し、前記上下方向に平行な軸であるホルダ軸を中心に回動し、前記プラテンローラを前記印字ヘッドに所定の圧力で圧接させる第一ローラ位置と、前記プラテンローラを前記印字ヘッドに前記所定の圧力よりも小さい圧力で接触させる第二ローラ位置と、前記プラテンローラを前記印字ヘッドから離間させる第三ローラ位置との間で回動するローラホルダと、
前記ローラホルダに設けられ、前記プラテンローラを前記印字ヘッドに向かう方向に弾性付勢し、且つ、前記ローラホルダが前記第一ローラ位置まで回動している場合に、前記プラテンローラを前記印字ヘッドに対して前記所定の圧力で押圧する弾性部と、
前記指標部が示すテープ種類を検出するためのセンサと、
前記センサを前記ホルダ軸と前記プラテンローラとの間で保持し、前記センサを前記指標部に接近させる第一センサ位置と、前記センサを前記指標部から離間させる第二センサ位置との間で移動するセンサホルダと、
前記ローラホルダと前記センサホルダとにそれぞれ連結した状態で移動可能であって、前記ローラホルダを前記第一ローラ位置に移動させ、且つ、前記センサホルダを前記第一センサ位置に移動させる第一ロッド位置と、前記ローラホルダを前記第二ローラ位置に移動させ、且つ、前記センサホルダを前記第二センサ位置に移動させる第二ロッド位置と、前記ローラホルダを前記第三ローラ位置に移動させ、且つ、前記センサホルダを前記第二センサ位置に移動させる第三ロッド位置との間で移動するロッド部と、
前記ロッド部が前記第一ロッド位置に移動した場合、前記ローラホルダが前記第一ローラ位置に固定され、且つ、前記センサホルダが前記第一センサ位置に固定されるように、前記ロッド部を前記第一ロッド位置に保持する保持部とを備え、
前記弾性部は、前記ロッド部が前記保持部によって保持されている場合、前記プラテンローラを前記印字ヘッドに対して前記所定の圧力で押圧している状態で生じる、前記第一ローラ位置から前記第二ローラ位置まで回動させる弾性エネルギーを蓄積する一方、前記保持部による前記ロッド部の保持が解除された場合、蓄積された前記弾性エネルギーを解放して前記ローラホルダに付与し、
前記ローラホルダは、前記弾性部で解放された前記弾性エネルギーが付与された場合、前記第一ローラ位置から前記第二ローラ位置まで回動するのに伴って、前記ロッド部を前記第一ロッド位置から前記第二ロッド位置まで移動させることを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記ロッド部は、前記ローラホルダと対向する斜面であるローラ押圧部と、所定のカム形状を有するセンサ案内部とを含み、
前記ローラホルダは、前記ロッド部が前記第二ロッド位置および前記第一ロッド位置のいずれかに移動している場合に、前記ローラ押圧部と当接する面であるロッド受部を含み、
前記センサホルダは、前記センサ案内部に係合し、且つ、前記ロッド部の移動に伴って前記所定のカム形状に沿って移動する係合部を含み、
前記センサ案内部は、
前記ロッド部が前記第一ロッド位置に移動している場合に、前記係合部が係合して前記センサホルダを前記第一センサ位置に保持する第一保持カムと、
前記ロッド部が前記第二ロッド位置に移動している場合に、前記係合部が係合して前記センサホルダを前記第二センサ位置に保持する第二保持カムと、
前記第一保持カムと前記第二保持カムとの間に連続して設けられ、前記ロッド部が前記第一ロッド位置と前記第二ロッド位置との間を移動するのに伴って、前記係合部が係合する移動カムとを含み、
前記ローラホルダは、
前記ロッド部が前記第二ロッド位置から前記第一ロッド位置に移動するのに伴って、前記ローラ押圧部が前記ロッド受部を押圧することで、前記第二ローラ位置から前記第一ローラ位置に回動する一方、
前記ロッド部が前記第一ロッド位置から前記第二ロッド位置に移動するのに伴って、前記ロッド受部が前記ローラ押圧部を押圧することで、前記第一ローラ位置から前記第二ローラ位置に回動し、
前記センサホルダは、
前記ロッド部が前記第二ロッド位置から前記第一ロッド位置に移動するのに伴って、前記係合部が前記移動カムに沿って前記第二保持カムから前記第一保持カムに向けて摺動することで、前記第二センサ位置から前記第一センサ位置に移動する一方、
前記ロッド部が前記第一ロッド位置から前記第二ロッド位置に移動するのに伴って、前記係合部が前記移動カムに沿って前記第一保持カムから前記第二保持カムに向けて摺動することで、前記第一センサ位置から前記第二センサ位置に移動することを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記カセット装着部を開閉するカバーと、
前記ロッド部と連結した状態で移動可能であって、前記カバーの開動作に連動して一の方向に移動するのに伴って、前記ロッド部を前記第一ロッド位置、前記第二ロッド位置、前記第三ロッド位置の順に移動させる一方、前記カバーの閉動作に連動して前記一の方向とは反対方向である他の方向に回転するのに伴って、前記ロッド部を前記第三ロッド位置、前記第二ロッド位置、前記第一ロッド位置の順に移動させるレバーとを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記プラテンローラを前記印字ヘッドから離間させる方向の付勢力を、前記ローラホルダに付与する第一付勢部を備え、
前記ローラホルダは、前記保持部による前記ロッド部の保持が解除された場合、前記弾性エネルギーによって前記第一ローラ位置から前記第二ローラ位置まで回動したのち、前記第一付勢部から付与される付勢力によって前記第二ローラ位置から前記第三ローラ位置まで回動することを特徴とする請求項3に記載の印字装置。
【請求項5】
前記レバーを前記一の方向に付勢する第二付勢部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の印字装置。
【請求項6】
前記カセット装着部が前記カバーによって閉じられている場合に、前記カバーの開動作に連動して前記レバーを前記一の方向へ所定量移動させることによって、前記保持部によって保持されている前記ロッド部を前記第一ロッド位置から前記第二ロッド位置に移動させる解除部を備えたことを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の印字装置。
【請求項7】
前記センサは、進出および退入が可能なスイッチ端子を有する機械式センサであり、
前記スイッチ端子の進出および退入に基づいて、前記テープの種類を判断する判断手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の印字装置。
【請求項8】
前記センサは、前記センサホルダが前記第一センサ位置に移動した場合に、前記テープの種類に応じて設けられた複数の前記指標部にそれぞれ接近する複数の前記スイッチ端子を含み、
前記複数のスイッチ端子は、それぞれ、前記スイッチ端子を挿入可能な孔部である前記指標部に接近した場合、前記孔部に挿入されることによって進出した状態が維持される一方、前記スイッチ端子に当接可能な面部である前記指標部に接近した場合、前記面部に押圧されて退入することを特徴とする請求項7に記載の印字装置。
【請求項9】
前記センサは、受光部を有する光学式センサであり、
前記受光部での受光量に基づいて、前記テープの種類を判断する判断手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の印字装置。
【請求項10】
前記センサは、発光部を有する反射型センサであることを特徴とする請求項9に記載の印字装置。
【請求項11】
前記センサは、前記センサホルダが前記第一センサ位置に移動した場合に、前記テープの種類に応じて設けられた複数の前記指標部にそれぞれ対向する複数の前記受光部を含み、
前記複数の受光部は、それぞれ、前記受光部に所定値以上の光量を付与する特定部である前記指標部に接近した場合、前記所定値以上の光量を受光する一方、前記受光部に所定値未満の光量を付与する非特定部である前記指標部に接近した場合、前記所定値未満の光量を受光することを特徴とする請求項9または10に記載の印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−6209(P2012−6209A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143157(P2010−143157)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】