説明

印鑑照合装置、印鑑照合方法およびプログラム

【課題】迅速かつ正確に印鑑照合を行うことができる印鑑照合装置、印鑑照合方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】顧客番号等に関連付けて、外周枠データと印鑑特徴データとを合わせた識別データを印鑑サーバに登録する。照合を行う際には、照合を申し出た顧客の顧客番号に対応付けて登録されている登録印に対応するデータを印鑑サーバから読み出す。そして、顧客番号に関連付けて登録された登録印の識別データを、照合印の印影データと角度があうように調整し、比較を行う。角度調整された識別データと照合印の印影データが一致するか否かを判別し、一致した場合には、登録印と照合印が同一のものであると判別することにより、上記課題の解決を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印鑑照合装置、印鑑照合方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関等において、顧客が届出た印鑑票は、顧客番号や口座番号毎に画像データ化されて登録され、管理されている。例えば、顧客から住所変更や改姓の申請を受けた場合等には、金融機関では、顧客が持参した印鑑が登録された印鑑のどれかに合致するか否かを印鑑照合することにより、本人確認をする。
【0003】
印鑑照合の方法としては、例えば、印鑑の外周形状情報、外周成分と文字成分との交点の座標、文字成分同士の交点の座標、文字成分の端点から該文字成分に添って引いた直線と他の文字成分との交点の座標等の特徴点情報を抽出して登録し、照合印について同様に抽出した外周形状情報および特徴点情報と登録済みの情報とを用いて照合を行う方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、印鑑の印影を印鑑サーバに登録し、登録された印影の中から予め照合に用いる印影をオペレータが選択し、照合を行う例がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
文字などの画像を認識する例として、認識対象の画像を同心円で領域分割し、各分割領域の部分画像の集まりとして認識対象の画像の特徴を定義し、定義した特徴を用いて画像を認識する装置も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−105703号公報
【特許文献2】特開2002−245460号公報
【特許文献3】特開平11−296677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような印鑑照合は、迅速かつ正確に行わなければならない。しかしながら、例えば金融機関等の係員が印鑑を照合するため、登録された印鑑票の画像データを画面等に表示させる際には、まず、顧客番号や口座番号を入力する。そして、入力した番号に関連付けられて登録された印鑑の画像データを表示させ、顧客が持参した印鑑の印影と照合する。印鑑が異なれば、入力した番号とは別の、例えば普通預金の口座番号等をさらに入力し、対応して登録されている画像データと顧客が持参した印鑑の印影とを照合する。このように、顧客の本人確認などの際には、何回か登録された印鑑と持参した印鑑との照合を実施しなければならない場合がある。さらに、このように一人の顧客に対し届出印が複数存在するような場合、印鑑の照合操作を何回か実施しなければならないことになると、照合に時間がかかるという問題もある。
【0007】
そこで本発明は、登録印が複数ある場合にも、迅速かつ正確に印鑑照合を行うことができる印鑑照合装置および印鑑照合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る印鑑照合装置は、印鑑枠内の印影を読み取り前記印影に基づく印影データを取得する読取部と、前記読取部が取得した前記印影データに基づき、前記印影と、前記印鑑枠内の任意の形状を有する基準図形との交点を示す印鑑特徴データを抽出する印鑑特徴抽出部と、2つの印鑑の印影にそれぞれ基づくデータが一致するか否かに基づき、前記2つの印鑑が同一のものであるか否かを判別する照合部と、を有し、前記照合部は、第1の印鑑の印影に基づく前記印鑑特徴データと、第2の印鑑の印影に基づく印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別することを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る印鑑照合方法は、印鑑枠内の印影を読み取り前記印影に基づく印影データを取得する読取工程と、前記読取部が取得した前記印影データに基づき、前記印影と、前記印鑑枠内の任意の図形である基準図形との交点を示す印鑑特徴データを抽出する印鑑特徴抽出工程と、2つの印鑑の印影にそれぞれ基づくデータが一致するか否かに基づき、前記2つの印鑑が同一のものであるか否かを判別する照合工程と、を有し、前記照合工程において、第1の印鑑の印影に基づく前記印鑑特徴データと、第2の印鑑の印影に基づく印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別することを特徴としている。
【0010】
なお、上述した印鑑照合方法をコンピュータに行わせるためのプログラムであっても、このプログラムを当該コンピュータによって実行させることにより、上述した印鑑照合方法と同様の作用・効果を奏するので、前述した課題が解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明による印鑑照合装置、印鑑照合方法およびプログラムによれば、迅速かつ正確に印鑑照合を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態による印鑑照合装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態による印鑑照合装置の印鑑登録の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態による印鑑照合装置の印鑑照合の機能を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施の形態による印鑑登録処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施の形態による入力画面の一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態による外周枠データおよび印鑑特徴データを抽出する動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施の形態による外周枠データの抽出方法の詳細な動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施の形態による外周枠データの抽出方法の説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態による印鑑特徴データの抽出方法の詳細を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施の形態による印鑑特徴データの抽出方法を説明する概念図である。
【図11】本発明の一実施の形態による印鑑特徴データの抽出方法を説明する概念図である。
【図12】本発明の一実施の形態による印鑑特徴データの抽出方法を説明する概念図である。
【図13】本発明の一実施の形態による印鑑特徴データの抽出方法を説明する概念図である。
【図14】本発明の一実施の形態による印鑑特徴データの抽出方法を説明する概念図である。
【図15】本発明の一実施の形態による印鑑照合の動作を説明するフローチャートである。
【図16】本発明の一実施の形態による照合印の印影データの読取動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の一実施の形態による照合印の印影データ読取時の処理を説明する図である。
【図18】本発明の一実施の形態による印鑑照合の詳細な動作を示すフローチャートである。
【図19】本発明の一実施の形態による登録印の識別データと照合印の印影データとの照合動作の詳細を表すフローチャートである。
【図20】本発明の一実施の形態による印影データの角度回転処理の動作を説明する図であり、(a)は、登録印の印影について示す図、(b)は、照合印の印影について示す図である。
【図21】本発明の一実施の形態による類似した印影データの表示動作の詳細を示すフローチャートである。
【図22】本発明の一実施の形態による結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施の形態による印鑑照合装置、印鑑照合方法およびプログラムについて説明する。本実施の形態においては、金融機関の印鑑照合を例にして説明する。図1は、本発明の一実施の形態による印鑑照合装置の構成を示す図、図2は、本実施の形態による印鑑照合装置の印鑑登録の機能を示すブロック図、図3は、本実施の形態による印鑑照合装置の印鑑照合の機能を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態による印鑑照合装置1は、印鑑照合端末3と、印鑑照合端末3と有線または無線のネットワークにより接続された印鑑サーバ15を有している。印鑑照合端末3には、スキャナ5、ディスプレイ7、キーボード9、マウス装置11などが接続されている。印鑑サーバ15は、データベース17を有している。
【0015】
印鑑照合端末3は、印鑑登録と印鑑照合との機能を有する演算処理装置であり、例えば汎用コンピュータである。スキャナ5は、印鑑の印影を画像データとして取り込むための読取装置である。ディスプレイ7は、読み込んだ印影、データベース17に記憶されている印影等や、印影が関連付けられている顧客番号等、および照合結果を表示する表示装置である。キーボード9は、文字入力などを行う入力装置である。マウス装置11は、ディスプレイ7上に表示されるポインタやアイコンを操作するために用いられるポインティングデバイスである。印鑑サーバ15は、印鑑照合端末3で読取った印影および印影に基づいて抽出されるデータなどを印鑑照合端末3から受け取り、データベース17に記憶するためのコンピュータである。データベース17は、印鑑サーバ15により制御され、印鑑照合端末3から送信されたデータを記憶する記憶装置である。
【0016】
印鑑照合端末3は、印鑑登録を行う印鑑登録部3Aと、持参した印鑑と登録済みの印鑑とを照合する印鑑照合部3Bの機能を有している。図2に示すように、印鑑登録部3Aは、読取部21、読取結果表示部23、登録データ編集部25、登録部27などの機能を有している。読取部21は、スキャナ5で読取られた登録用の印影の画像データを取得する。読取結果表示部23は、読取部21が取得したデータをディスプレイ7に送り、ディスプレイ7は、読取結果表示部23からのデータにより表示を行う。登録データ編集部25は、読取部21により取得したデータに基づいて演算などを行い、画像データを編集し、印鑑サーバ15に登録するデータを作成する。登録部27は、登録データ編集部25が作成したデータを印鑑サーバ15に送信し、図1のキーボード9などから入力された顧客番号等の識別情報と関連付けて登録する。
【0017】
図3に示すように、印鑑照合部3Bは、読取部31、読取データ編集部33、検索部35、照合処理部37、照合結果処理部39などの機能を有している。読取部31は、スキャナ5から読取った照合用の印影の画像データを取得する。読み取りデータ編集部33は、読取部31が取得したデータに基づいて演算などを行い、画像データを編集する。検索部35は、検索対象とする顧客番号や読取データ編集部33で編集されたデータに基づき、印鑑サーバ15のデータベース17から印影に関するデータを取得する。照合処理部39は、読取部31が取得した印影と、印鑑サーバ15から取得した印影に関するデータとを照合する。照合結果処理部39は、照合した結果をディスプレイ7に表示する。
【0018】
次に、図4を参照しながら、本実施の形態による印鑑照合装置1による印鑑登録処理について説明する。図4は、印鑑照合装置1による、印鑑登録処理の動作を示すフローチャートである。まず、印鑑登録を受け付ける(S101)。例えば図5に示すように、ディスプレイ7の表示部41に表示された表示枠40内の入力枠44に、例えば顧客番号(CIF;Customer’s Infomation Files)を入力する。続いて、スキャナ5は登録印の印影が記された印鑑票を読取り、読取部21は、印鑑票の画像データを取得する(S102)。印鑑票が読取られると、キーボード9などにより、例えば支店の番号である店番、口座の種類である科目、その口座の口座番号等、印鑑に対応する識別情報の入力を行う。また、印影が押印されている印鑑枠、署名がされている署名枠の部分に相当する画像データをそれぞれ切り出し、顧客番号(CIF)および口座番号等と関連付けて登録する(S103)。このとき、例えば図5のように、表示部41に印鑑枠46の内部に印鑑の印影48を含んだ画像50が表示される。また、登録印が複数ある場合も、同様に顧客番号(CIF)および口座番号等と関連付けて登録する。
【0019】
続いて、登録した上記データから、外周枠データおよび印鑑特徴データを作成する(S104)。S104の詳細については後述する。作成した外周枠データおよび印鑑特徴データは、印鑑サーバ15に印鑑枠、署名枠のそれぞれに対応するデータと関連付けて登録される(S105)。以下、印鑑枠に対応するデータを印影データといい、外周枠データと印鑑特徴データとを合わせたデータを識別データという。
【0020】
次に、図6〜図14を参照しながら、図4のS104の外周枠データと印鑑特徴データを作成する動作の詳細について説明する。図6は、図4のS104のサブルーチンであり、外周枠データおよび印鑑特徴データを抽出する動作を示すフローチャートである。図7は、図6のS110のサブルーチンであり、外周枠データの抽出方法の詳細な動作を示すフローチャート、図8は、外周枠データの抽出方法の説明図である。
【0021】
まず、図6に示すように、登録した印影データの外周枠を抽出する(S110)。以下、例えば図5に示す印影48を含む印鑑枠46に対応する画像データを印影データ48といい、以下同様に、画像とその画像に対応する画像データに同じ参照番号を用いることにする。図7、図8に示すように、まず、登録データ編集部25は、印影データ48のビットマップの左上から1ドットずつ矢印53のように検索し、「黒」のドットを検出する(図7、S115)。登録データ編集部25は、「黒」のドットを検出すると、次の段の左から順次同様の検索を行い、図8の外枠52を抽出する。次に同様の処理を右の上から矢印55のように行い(図7、S116)、同様に外枠54を抽出する。登録データ編集部25は、外枠52と外枠54とを合わせ、外周枠56とする。この外周枠56に対応する「黒」画素の集合が、外周枠データ56として抽出される(S117)。外周枠データ56は、印影48の外周枠の形状を示すデータである。
【0022】
図6の処理に戻って、S111で登録した印影データから印鑑特徴データを抽出する。ここで、図9から図14を参照しながら、印鑑特徴データの抽出方法の詳細について説明する。図9は、図6のS111のサブルーチンであって、印鑑特徴データの抽出方法の詳細を示すフローチャート、図10から図14は、印鑑特徴データの抽出方法を説明する概念図である。本発明においては、印鑑特徴データは、印影データと、その印影データと対応する印鑑枠内の任意の図形との交点の画像データである。本実施の形態においては、任意の図形として正方形を例にして説明する。
【0023】
図9に示すように、まず、登録した印影データ48における印影48の中心点を求める(S121)。このとき、例えば印影データ48において印影48を含む最小の矩形を求め、その矩形の2組の対角線の交点を中心点とする。次に、中心点から外周枠までの最短距離を抽出する(S122)。例えば、図10に示すように、印影48の外周枠が外周枠56として求められているとき、S121で求めた中心点58から外周枠56までの最短の線分60の長さを最短距離61とする。次に、図11に示すように、線分60の中点63を求める(S123)。そして、中心点58から中点63までの距離mを求める(S124)。図12に示すように、この中点63を通り、線分60に平行な辺を持ち、一辺が2mの長さを持つ点PQRSを結ぶ正方形65を、印鑑特徴データ抽出のための基準図形として抽出する(S125)。正方形65と印影48とを重ね合わせたときに、重なる部分の画像データを、印影48の印鑑特徴データとして抽出する(S126)。印鑑特徴データを図示したものが、図13に示す印鑑特徴データ65である。
【0024】
図6の処理に戻って、S112において、図14に示すように、印影48に基づいて外周枠データ56と印鑑特徴データ65とを足し合わせて識別データ70として作成する。さらに、図4の処理に戻り、S105において、登録部27は、顧客番号等の顧客に応じて決められた識別情報、場合によっては、さらに口座の種別および口座番号等と、上記印鑑枠、署名枠に応じたデータおよび識別データ70とを関連付けて印鑑サーバ15に記憶する。以上の処理により、印影48の登録処理は完了である。
【0025】
続いて、図15から図22を参照しながら、本実施の形態による印鑑照合の動作について説明する。図15は、本実施の形態による印鑑照合の動作を説明するフローチャートである。図15に示すように、顧客から、住所変更、改姓などの申請を受け付ける場合を考える(S201)。まず、ディスプレイ7に表示された例えば図5の表示枠40などが表示された画面において、キーボード9により入力枠44に顧客番号(CIF)が入力される(S202)。スキャナ5は、照合印の押印された申請書等の印影を含む画像を読み取り、読取部31は、読取った印影の印影データを取得する(S203)。このS203の処理の詳細は後述する。
【0026】
さらに、照合印の印影データと、入力された顧客番号(CIF)に関連付けて登録されている登録印の識別データとの照合を行う(S204)。照合の結果、照合印と類似していると判別された登録印の印影データを画面表示する(S205)S204、S205の動作の詳細は後述する。
【0027】
ここで、S203の照合印の印影データ読取処理の詳細を、図16および図17を参照しながら説明する。図16は、照合印の印影データの読取動作を示すフローチャート、図17は、照合印の印影データ読取時の処理を説明する図である。図16に示すように、読取部31は、まず、スキャナ5上に置かれた帳票において、照合印の印影148を含む印鑑枠46の画像220を取り込む(S210)。図17に示すように、画像220には、印鑑枠46の中に、印影148と、「お届け印」という文字列217の一部、印鑑の押印場所を示す点線219、および罫線221が含まれている。読取データ編集部33は、まず、読取部31が取り込んだ画像220の下方にある罫線成分221を検出し(S211)、罫線を削除した画像225とする(S212)。読取データ編集部33は、さらに、所定サイズ以下の例えば矩形218で囲まれた微小サイズ画像を検出し、文字列217や点線219を削除し(S213)、印影148のみの画像229を抽出し、印影データとして読取る。ここで、画像229に対応する画像データを印影データ148ということとする。
【0028】
図15のS204に戻って、照合印の印影データと登録印の識別データとの照合を行う。図18は、S204の動作の詳細を示すフローチャートである。図18に示すように、S231において、検索部35は、図15のS202で入力された顧客番号に関連付けて記憶された登録印の外周枠データと印鑑特徴データとを含む識別データを照合印の印影データと照合する(S231)。
【0029】
図19は、S231の動作の詳細を示すフローチャート、図20は、印影データの角度回転処理の動作を説明する図である。図19に示すように、まず、照合処理部37は、図15のS202で入力された顧客番号に関連付けて記憶されている登録印の例えば印影データ230を読み出す(S241)。照合処理部37は、読み出した登録印の印影データ230および照合印の印影データ148をそれぞれ例えば中心線で代表させた細線化処理を行い、印影データ250および印影データ262とする(S242)。照合処理部37は、細線化処理を行った画像に対しそれぞれハフ変換を行うことにより、グラフ252およびグラフ264を作成する。グラフ252上の図形254とグラフ264上の図形266と横軸方向のずれを検出し、ずれの分を横軸方向にずらすことにより図形255を示すグラフ256を得る。このようにして登録印の印影データと照合印の印影データの角度差を検出し(S243)、検出した角度差分、登録印の印影データを回転させ、角度修正した印影データ258を得る(S245)。同時に、照合印の印影と角度を合わせた登録印の識別データを得ることになり、この角度を合わせた識別データと照合印の印影データ148とを照合する(S246)。
【0030】
図18の処理に戻って、照合の結果、登録印の識別データが、照合印の印影データの対応部分と一致していると判別されれば(S231、Yes)、登録印と照合印が類似していると判断し、類似した登録印の印影データを抽出し、画面表示を行う(S232)。なお、2つの画像データが「一致している」とは、照合対象の画像データのビットマップにおいて同一座標の画素同士を比較した場合に、画素が「黒」であるか否かが一致している割合が所定割合以上であることをいう。 図18のS232の処理の詳細を、図21、図22を参照しながら説明する。図21は、類似した印影データの表示動作の詳細を示すフローチャート、図22は、結果の表示例を示す図である。図21に示すように、まず、照合結果処理部39は、類似していると判断された登録印の角度調整済みの印影データと照合印の印影データを取得する(S270)。照合結果処理部39は、取得した登録印と照合印の印影データを上下(S271)、左右(S272)に調整し、重ねて表示する(S273)。このとき例えば、図22に示すように、ディスプレイ7の表示部275には、印鑑枠46と照合印の印影148、印鑑枠46と登録印の印影258、印鑑枠46と、印影258と印影148との位置を調整して重ねた重ね合わせ印280を並べて表示する。
【0031】
図18のS231において、登録印の識別データと照合印の印影データとが類似していないと判別される場合がある。この場合には、図15のS202で入力された顧客番号に関連付けて登録されている別の印鑑があるか否かを判別し(S233)、ある場合には、S231に戻る。別の登録印がない場合には(S233、No)、印鑑照合処理を終了する。この場合、照合印により顧客の本人確認ができないことをディスプレイに表示するようにしてもよい。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態による印鑑照合装置1によれば、顧客番号等に関連付けて、登録印の印影データ、外周枠データと印鑑特徴データとを合わせた識別データを印鑑サーバ15に登録する。照合を行う際には、照合を申し出た顧客の顧客番号に対応付けて登録されている登録印について行う。まず、顧客番号に関連付けて登録された登録印の識別データを、照合印の印影データと角度があうように調整し、比較を行う。角度調整された識別データと、照合印の印影データの対応する部分とが一致するか否かを判別し、一致した場合には、登録印と照合印が同一のものであると判別する。また、角度調整された登録印の印影データと照合印の印影データとを重ね合わせて表示する。一致しないと判別された場合には、同一の顧客番号に関連付けて登録された別の登録印について、同様の判別を行う。別の登録印がない場合には、処理を終了する。
【0033】
なお、本実施の形態において、読取部21、31は、本発明の読取部の一例である。また、登録データ編集部25は、外周枠抽出部および印鑑特徴抽出部の一例であり、照合処理部37は、照合部、入力部の一例であり、印鑑サーバ15は、記憶部の一例であり、検索部35は検索部の一例である。
【0034】
以上のように本発明の一実施の形態による印鑑照合装置1によれば、登録印の外周枠データ56および印鑑特徴データ65、さらには両者を合わせた識別データ70を自動的に抽出することができる。また、識別データ70を用いて、顧客番号に関連付けて登録された印鑑から照合印と類似のものを迅速かつ正確に検出することが可能である。このとき、照合印については、印影データを取得するのみでよい。判別の際には、登録印の識別データ70と、照合印の印影データの識別データ70と同一座標部分の画素についてのみを比較すればよい。このような本実施の形態による印鑑照合装置1によれば、例えば、従来の印影データ全体の各画素について照合する照合方法に比べて、20%の時間短縮が達成される。これにより、金融機関等の顧客の待ち時間を減少させることができ、サービスの向上に寄与することが可能となる。
【0035】
なお、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を採ることができる。例えば、上記実施の形態においては、登録印は顧客番号に関連付けて登録されている登録印を対象とする照合に限ったが、これに限定されない。より数の多い登録印について照合を行なう場合についても適用が可能である。
【0036】
外周枠データ、または印鑑特徴データのいずれかについてまず判別を行い、合致すると判別されたものについて、他方のデータについて判別を行うこともできる。この場合、印鑑登録部3Aの登録部27は、外周枠データ56と印鑑特徴データ65とをそれぞれ顧客番号に関連付けて登録する。例えば、先に外周枠データについて判別を行なう場合には、印鑑照合部3Bにおいて、読取データ編集部は、読取った照合印の印影データから自動的に外周枠データを抽出する。このとき、照合印の外周枠データは、印鑑登録処理動作において説明した図7と同様の処理を用いて抽出することができる。検索部35は、照合印に関する顧客番号と抽出した照合印の外周枠データとを印鑑サーバ15に送信する。印鑑サーバ15では、照合印に関する顧客番号に関連付けて登録されている登録印の外枠データを検索し、判別を行い、合致する場合には、さらに印鑑特徴データを検索して判別を行う。
【0037】
外周枠データおよび/または印鑑特徴データについて判別を行って登録印の母数を限定した後に、従来の全ドットの一致する割合を算出する判別方法や、重ね合わせ印の表示による視覚による判別などを共用するようにしてもよい。
【0038】
照合結果の表示方法は、類似した印であると判別された印影のみを表示する例について説明したが、これに限定されない。例えば、外枠データのみが一致すると判別された複数の登録印の印影を表示する方法や、外周枠データまたは印鑑特徴データについて判別を行い、その時点で一致していると判別された登録印と照合印の印影同士を重ねて表示する方法など、他の形態も可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 印鑑照合装置
3 印鑑照合端末
3A 印鑑登録部
3B 印鑑照合部
5 スキャナ
7 ディスプレイ
9 キーボード
11 マウス装置
13 ネットワーク
15 印鑑サーバ
17 データベース
21、31 読取部
23 読取結果表示部
25 登録データ編集部
27 登録部
33 読み取りデータ編集部
35 検索部
37 照合処理部
39 照合結果処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印鑑枠内の印影を読み取り前記印影に基づく印影データを取得する読取部と、
前記読取部が取得した前記印影データに基づき、前記印影と、前記印鑑枠内の任意の形状を有する基準図形との交点を示す印鑑特徴データを抽出する印鑑特徴抽出部と、
2つの印鑑の印影にそれぞれ基づくデータが一致するか否かに基づき、前記2つの印鑑が同一のものであるか否かを判別する照合部と、
を有し、
前記照合部は、
第1の印鑑の印影に基づく前記印鑑特徴データと、第2の印鑑の印影に基づく印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別する、
ことを特徴とする印鑑照合装置。
【請求項2】
前記読取部が取得した前記印影データに基づき前記印影の外周の形状を示す外周枠データを抽出する外周枠抽出部をさらに有し、
前記照合部は、
前記印鑑特徴データに加え、前記第1の印鑑の印影に基づく外周枠データと、前記第2の印鑑の印影に基づく印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別する、
ことを特徴とする印鑑照合装置。
【請求項3】
前記基準図形は、前記印影の形状とは独立して決定される図形であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印鑑照合装置。
【請求項4】
前記外周枠データは、前記印鑑枠内の印影の最外縁に位置する画素の集合であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の印鑑照合装置。
【請求項5】
前記外周枠抽出部は、前記第1の印鑑の印影に基づく第1の外周枠データと、前記第2の印鑑の印影に基づく第2の外周枠データとを抽出し、
前記照合部は、前記第1の外周枠データと前記第2の外周枠データとが一致すると判別すると、前記第1の印鑑に基づく第1の印鑑特徴データと、前記第2の印鑑の前記印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印鑑照合装置。
【請求項6】
印鑑を識別する識別情報を入力する入力部と、
前記印鑑の印影に基づくデータを前記識別情報と関連付けて記憶する記憶する記憶部と、
前記入力部に入力された前記識別情報に関連付けて記憶された前記データを読み出す検索部と、
をさらに有し、
前記記憶部は、少なくとも前記識別情報に関連付けて前記第1の印鑑特徴データを記憶し、
前記検索部は、前記入力部に前記識別情報が入力されると、少なくとも前記識別情報に関連付けて記憶された前記第1の印鑑の印影に基づく前記第1の印鑑特徴データを読み出し、
前記照合部は、少なくとも前記検索部により読み出された前記第1の印鑑特徴データと、前記第2の印鑑の前記印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印鑑照合装置。
【請求項7】
前記記憶部は、前記印鑑特徴データに加え、前記識別情報に関連付けて前記第1の印鑑の印影に基づく第1の外周枠データを記憶し、
前記検索部は、前記入力部に前記識別情報が入力されると、前記識別情報に関連付けて記憶された前記第1の印鑑の印影に基づく前記第1の印鑑特徴データに加え、前記第1の印鑑の印影に基づく第1の外周枠データを読み出し、
前記照合部は、前記検索部により読み出された前記第1の印鑑特徴データおよび前記第1の印鑑の印影に基づく第1の外周枠データと、前記第2の印鑑の前記印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別する、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印鑑照合装置。
【請求項8】
前記記憶部は、識別情報に関連付けて第3の印鑑の印影に基づく第3の印鑑特徴データを記憶し、
前記検索部は、前記入力部に前記識別情報が入力されると、少なくとも前記第3の印鑑特徴データを読み出し、
前記照合部は、少なくとも前記検索部により読み出された前記第3の印鑑特徴データと、前記第2の印鑑の前記印影データとに基づき前記第3の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別する、
ことを特徴とする請求項6から請求項7のいずれか一項に記載の印鑑照合装置。
【請求項9】
前記照合部が、前記第1の外周枠データと前記第2の外周枠データとが一致しないと判別すると、前記検索部は、前記識別情報に関連付けられた前記第3の印鑑に基づく第3の外周枠データを読み出し、
前記照合部は、前記第3の外周枠データと前記第2の外周枠データとが一致するか否かを判別することを特徴とする請求項7から請求項8のいずれか一項に記載の印鑑照合装置。
【請求項10】
前記照合部の照合結果を表示する表示部をさらに有し、
前記表示部は、前記照合部が同一であると判別した2つの印鑑の印影に基づくそれぞれの印影データを重ねて表示することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の印鑑照合装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記照合部が同一であると判別した2つの外周枠データに対応する印鑑の印影に基づくそれぞれの印影データを重ねて表示することを特徴とする請求項5,請求項7,請求項9のいずれか一項に記載の印鑑照合装置。
【請求項12】
印鑑枠内の印影を読み取り前記印影に基づく印影データを取得する読取工程と、
前記読取部が取得した前記印影データに基づき、前記印影と、前記印鑑枠内の任意の図形である基準図形との交点を示す印鑑特徴データを抽出する印鑑特徴抽出工程と、
2つの印鑑の印影にそれぞれ基づくデータが一致するか否かに基づき、前記2つの印鑑が同一のものであるか否かを判別する照合工程と、
を有し、
前記照合工程において、
第1の印鑑の印影に基づく前記印鑑特徴データと、第2の印鑑の印影に基づく印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別する、
ことを特徴とする印鑑照合方法。
【請求項13】
前記読取部が取得した前記印影データに基づき前記印影の外周の形状を示す外周枠データを抽出する外周枠抽出工程をさらに有し、
前記照合工程において、
前記印鑑特徴データに加え、前記第1の印鑑の印影に基づく外周枠データと、前記第2の印鑑の印影に基づく印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別する、
ことを特徴とする印鑑照合方法。
【請求項14】
前記外周枠抽出工程において、前記第1の印鑑の印影に基づく第1の外周枠データと、前記第2の印鑑の印影に基づく第2の外周枠データとを抽出し、
前記照合工程において、前記第1の外周枠データと前記第2の外周枠データとが一致すると判別すると、前記第1の印鑑に基づく第1の印鑑特徴データと、前記第2の印鑑の前記印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別する、
ことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の印鑑照合方法。
【請求項15】
印鑑を識別する識別情報を入力する入力工程と、
前記印鑑の印影に基づくデータを前記識別情報と関連付けて記憶する記憶する記憶工程と、
前記入力工程において入力された前記識別情報に関連付けて記憶された前記データを読み出す検索工程と、
をさらに有し、
前記記憶工程において、少なくとも前記識別情報に関連付けて前記第1の印鑑特徴データを記憶し、
前記検索工程において、前記入力工程において前記識別情報が入力されると、少なくとも前記識別情報に関連付けて記憶された前記第1の印鑑の印影に基づく前記第1の印鑑特徴データを読み出し、
前記照合工程において、少なくとも前記検索工程において読み出された前記第1の印鑑特徴データと、前記第2の印鑑の前記印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別する、
ことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の印鑑照合方法。
【請求項16】
印鑑枠内の印影を読み取り前記印影に基づく印影データを取得する読取処理と、
前記読取部が取得した前記印影データに基づき、前記印影と、前記印鑑枠内の任意の図形である基準図形との交点を示す印鑑特徴データを抽出する印鑑特徴抽出処理と、
2つの印鑑の印影にそれぞれ基づくデータが一致するか否かに基づき、前記2つの印鑑が同一のものであるか否かを判別する照合処理と、
をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記照合処理において、
第1の印鑑の印影に基づく前記印鑑特徴データと、第2の印鑑の印影に基づく印影データとに基づき前記第1の印鑑と前記第2の印鑑とが同一のものであるか否かを判別する、
ことを特徴とするプログラム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図1】
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【図20】
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