危険物探知装置及び試料採取装置
【課題】操作性が優れた危険物探知装置を提供する。
【解決手段】検査対象を収納する容器と、容器を乗せるステージ14と、容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源を具備する採取部1と、試料ガスのイオンを生成するイオン源部2と、イオンの質量分析を行なう質量分析部4と、質量分析の結果に基づいて、検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置5と、排気部3、10と、装置の各部のための電源部8と、装置の各部の制御部9と、装置の各部の制御条件を入力し、データ処理の結果を表示する操作パネル7とを有する。
【効果】危険物質の検出感度が高い。
【解決手段】検査対象を収納する容器と、容器を乗せるステージ14と、容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源を具備する採取部1と、試料ガスのイオンを生成するイオン源部2と、イオンの質量分析を行なう質量分析部4と、質量分析の結果に基づいて、検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置5と、排気部3、10と、装置の各部のための電源部8と、装置の各部の制御部9と、装置の各部の制御条件を入力し、データ処理の結果を表示する操作パネル7とを有する。
【効果】危険物質の検出感度が高い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析法を用いた危険物探知技術に関り、危険物質の探知を行なう危険物探知装置及び危険物探知方法、試料採取装置及び試料採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基本的にスピード、感度、選択性に優れた質量分析法に、試料ガスを導入する技術を付加した質量分析の技術が提案されている。これらの技術には、検査対象のサンプリング表面を赤外線ランプ、レーザによって加熱する技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−304760号公報
【0004】
【特許文献2】特開2000−028579号公報
【特許文献3】特開平07−006729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、爆発事件が発生した際、どのような爆薬が使用されたかを迅速に把握することは、被疑者を追跡する犯罪捜査上非常に重要である。そのため、爆発残渣に極めて僅かに残留している爆薬成分の分析が要求される。爆発残渣から僅かな爆薬成分を取り出すに要する時間は、より短時間が要求される。爆発残渣から高感度に極微量の爆薬成分を質量分析装置を用いて検査するには、爆発残渣から僅かな爆薬成分を効率よく気化させて試料ガスを発生させて、他の爆発残渣、又は、同じ爆発残渣の注目する領域以外から発生するガスで汚染されないように、試料ガスをイオン源部に送りイオン化して、質量分析計でイオンの分析を行なうことが要求される。即ち、加熱部、配管部、イオン源、質量分析計等の質量分析装置の各部に吸着した、以前に分析された爆発残渣に起因するガスが離脱して生じる汚染を抑制することが、要求される。
【0006】
本発明は、これらの要求に鑑みなされたものであり、本発明が解決しようとする代表的な課題は、(1)検査対象に残留している試料を短時間に高濃度で気化させ、気化した試料をイオン源部に導入してイオン化して検出感度を上げること、(2)複数の検査対象を短時間に連続で分析できること、(3)任意の場所で複数の検査対象から試料をフィルタに採取した後、試料が採取されたフィルタを交換して連続して検査できること、等にある。これらの課題は、従来技術では殆ど配慮されていなかったものである。
【0007】
本発明では、衣服、金属、プラスチック、ガラス、土砂、有機物等の、爆発事故の現場から採取された破片を、爆薬あるいは爆薬の分解生成物が付着した、被疑者の衣服、手袋、持ち物等から採取した破片を、被疑者の衣服、手袋、荷物等を拭き取った試験紙、試験布、フィルタ等を、検査対象の例とする。加熱により検査対象から発生する試料ガス(爆薬由来ガス又は爆薬成分由来ガス)を分析して、検査対象に微量に残留している爆薬物質を特定する。以下の説明では、検査対象の代表例として爆発残渣そのものをとって説明する。従って、以下の説明では、「爆発残渣」、「爆薬そのもの」、「爆薬の分解生成物」の記載は、それぞれ一般の、「検査対象」、「検査対象そのもの」、「検査対象の分解生成物」と読み替えることができるものとする。また、以下の説明では、「危険物質」、「危険物」は、一般に、人体に悪影響を及ぼすと想定される物質を意味し、例えば、爆発性の物質、覚醒剤、麻薬、人体に悪影響を与える化学物質や薬剤、人体に悪影響を与える細菌、ウイルス等の微生物、劇薬、有害ガス、有害植物等を含むものとする。
【0008】
本発明の目的は、危険物質の検出感度が高く操作性が優れた危険物探知装置及び危険物探知方法、及び、他の検査対象又は同じ検査対象の他の領域から発生した試料により汚染されることなく、注目する検査対象又は同じ検査対象の注目する領域から発生する試料を捕集できる、危険物探知装置及び危険物探知方法のための試料採取装置及び試料採取方法(あるいは、試料採取のための加熱装置及び試料採取のための加熱方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
爆発残渣に残留している爆薬成分は、爆薬そのもの、あるいは、爆薬の分解生成物を含む。容器(例えば、ガラス製容器)に収納した爆発残渣は、容器に対向して配した抵抗加熱手段を具備した導入管の内部を通して、赤外線(波長帯0.7μmから2μmに最大のエネルギー分布をもつ)により照射され加熱される。赤外線により爆発残渣の表面は加熱されるため、爆発残渣に残留している爆薬成分も加熱され、気化される。
【0010】
導入管はイオン源部に接続されており、気化された爆薬成分は、導入管を通ってイオン源部に輸送され、イオン源部でイオン化され、イオンは質量分析部で質量分析される。導入管の内部を通して照射する赤外線の使用によって、爆発残渣の限られた面積の表面を短時間で高温度に加熱できるので、気化した高濃度の試料ガスを、短時間で生成でき、効率良く生成したガスをイオン源部に輸送できるので、爆薬成分の検出感度を向上できる。
【0011】
本発明の危険物探知装置は、爆発残渣の限定された面を加熱するので、爆発残渣から気化する夾雑成分が少なくできる。従って、導入管や、イオン源部の夾雑成分による汚染を少なくできるので、爆薬成分の検出感度を向上できる。また、容器は加熱されないため、容器を安全に交換でき、複数の爆発残渣を連続して分析できる。
【0012】
また、本発明の危険物探知装置では、導入管をイオン源部に接続しないで、導入管にガス捕集用のフィルタを接続し、任意の場所で大量の爆発残渣から、爆薬成分の採取ができる。従って、爆薬成分の採取場所へ、イオン源部及び質量分析部を運搬する必要がない。
本発明の危険物探知方法は、以下の工程による。
【0013】
(方法1)
容器(例えば、ガラス製の容器)に収納した検査対象を、抵抗加熱により加熱された導入管の内部を通して照射される赤外線により加熱して、検査対象から試料ガスを発生させる気化工程と、試料ガスのイオンを生成するイオン化工程と、イオンの質量分析を行なう分析工程と、質量分析の結果に基づいて、検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定する判定工程とを有する。導入管は、円錐形状又は円筒形状の中空部をもつ。容器は、導入管に対向して配置され、赤外線光源から発する赤外線は光学窓を介し、導入管の内部を通して、検査対象に照射される。検査対象から発生する試料ガスの流れる方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、即ち、試料ガスの進行方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含む。
【0014】
(方法2)
容器(例えば、ガラス製の容器)に収納した検査対象を、抵抗加熱により加熱された導入管の内部を通して照射される赤外線により加熱して、検査対象から試料ガスを発生させる気化工程と、試料ガスをフィルタに液化して試料を捕集する捕集工程と、抵抗加熱により加熱された加熱炉に、試料が捕集された側の面を露出させてフィルタを収納する収納工程と、試料が捕集された側のフィルタの面を、赤外線により加熱して試料ガスを発生させる気化工程と、試料ガスのイオンを生成するイオン化工程と、イオンの質量分析を行なう分析工程と、質量分析の結果に基づいて、検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定する判定工程とを有する。容器は、赤外線を発する赤外線光源に対向して配置され、検査対象は加熱炉の内部で赤外線により照射される。検査対象から発生する試料ガスの流れる方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、即ち、試料ガスの進行方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含む。
【0015】
本発明の危険物探知装置及び危険物探知方法では、選択された爆発残渣の限定された領域を赤外線で加熱するので、爆発残渣に付着している様々な物質から気化する夾雑成分を少なくでき、検査対象から発生する試料ガスの流れる方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、即ち、試料ガスの進行方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、試料ガス採取部、イオン源部、及び、試料ガス採取部からイオン源部に至る試料ガスの径路は、加熱されているので、爆発残渣(検査対象)に付着している様々な物質から発生する夾雑成分のガス、試料ガスが吸着することがなく、汚染を防止できるので、爆薬成分を高感度で検出でき、正確に危険物質の同定判別ができる。
【0016】
本発明の試料採取装置は、検査対象を収納する容器と、容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、導入管の中空部を排気する排気手段と、導入管の中空部と排気手段とを結ぶ配管(試料ガスを流出させる流出配管)と、この配管の途中に配置されるフィルタとを有し、排気手段により試料ガスを吸引してフィルタに試料ガスを捕集する。
【0017】
本発明の試料採取装置の別の構成では、検査対象を収納する容器と、容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、導入管の中空部から試料ガスを流出させる流出配管とを有し、導入管の中空部を排気手段により及び/又は導入管の中空部に清浄なガスを送流する手段により、流出配管に導く。
【0018】
本発明の試料採取装置の更に別の構成では、検査対象を収納して抵抗加熱により加熱する加熱部と、この加熱部の内部で、検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、加熱部の内部から試料ガスを流出させる流出配管とを有し、加熱部の内部を排気手段により及び/又は加熱部の内部に清浄なガスを送流する手段により、流出配管に導く。
【0019】
上記の本発明の各試料採取装置では、検査対象から発生する試料ガスの流れる方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、即ち、試料ガスの進行方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、流出配管の少なくとも一部(例えば、導入管の中空部と排気手段とを結ぶ流出配管の途中に配置されるフィルタの近傍までの、流出配管の一部の部分、加熱部の内部から試料ガスを流出させる流出配管の全ての部分)は、加熱されているので、爆発残渣(検査対象)に付着している様々な物質から発生する夾雑成分のガス、試料ガスが流出配管に吸着することがなく、汚染を防止できるので、爆薬成分を高感度で検出できように、試料ガスを採取ができる。従って、本発明の各試料採取装置により採取された試料ガスを、一般的に使用されている、質量分析装置、ガスクロマトグラフ、イオンモビリティ方式の分析装置(放射性同位体で試料ガスをイオン化した後、ドリフトチューブに導入してイオンの易動度を検出して分析する)等により、危険物質の同定判別ができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、危険物質の検出感度が高く操作性が優れた危険物探知装置及び危険物探知方法、及び、他の検査対象又は同じ検査対象の他の領域から発生した試料により汚染されることなく、注目する検査対象又は同じ検査対象の注目する領域から発生する試料を捕集できる、危険物探知装置及び危険物探知方法のための試料採取装置(あるいは、試料採取のための加熱装置及び試料採取のための加熱方法)を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下で説明する本発明の危険物探知装置は、可搬型の装置、据置型の装置の何れの形態でも使用可能である。本発明の危険物探知装置は、検査対象を収納する容器と、容器を乗せるステージと、容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源を具備する採取部と、試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、イオンの質量分析を行なう質量分析部と、質量分析の結果に基づいて、検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置と、排気部と、装置の各部のための電源部と、装置の各部の制御部と、装置の各部の制御条件を入力し、データ処理の結果を表示する操作パネルとを有する。本発明の実施例では、危険物質の検出感度が高い、操作性が優れた危険物探知装置を提供する。
【0022】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。以下の実施例の説明では、衣服、金属、プラスチック、ガラス、土砂、有機物等の、爆発事故の現場から採取された破片を、爆薬あるいは爆薬の分解生成物が付着した、被疑者の衣服、手袋、持ち物等から採取した破片を、代表的な検査対象としているが、この他、爆発性の物質、覚醒剤等の薬剤、人体に悪影響を与える化学物質、人体に悪影響を与える細菌、ウイルス等の微生物、その他、一般に、人体に悪影響を及ぼすと想定される物質を含む危険物を、検査対象とできる。
【0023】
図1は、本発明の実施例の危険物探知装置の主要構成を示すブロック図である。
容器に収納された爆発残渣(検査対象)は、採取部1の外側に置かれたステージ14に載置される。採取部1で、赤外線を発生する光源からの赤外線が爆発残渣の面に照射され、爆発残渣から爆薬由来の成分が加熱され気化され試料ガスが生成される。採取部1はイオン源部2に接続されている。気化した爆薬由来の成分(試料ガス)は、吸引ポンプ3によりイオン源部2に導入され、イオン化される。イオン源部2で生成したイオンは、質量分析部4で質量分析される。イオン源部2と質量分析部4は排気部10により排気されている。
【0024】
データ処理装置5の記憶手段には、複数の爆薬物質を同定するために必要な標準質量分析データ(m/e(イオンの質量数/イオンの価数)の値と相対強度)を含むデータベースが記憶されている。質量分析部4の質量分析計の検出器の出力信号は、データ処理装置5に送られ、記憶手段から読み出されたデータベースと爆薬成分由来のイオンの質量分析の結果とを照合する等のデータ処理がされて、爆薬物質の特定がなされる。
【0025】
特定された爆薬物質及び/又は質量分析の結果は、操作パネル7、あるいは、データ処理装置5の表示装置に表示される。装置の各部、装置の各部の動作に要する電源を供給する電源部8は、制御部9により制御される。装置の各部の動作条件は、操作パネル7から入力され、制御部9は、入力された動作条件に基づいて、装置の各部の動作を制御する。
【0026】
(第1の実施例)
図2は、本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の外観を示す斜視図である。第1の実施例では、採取部1は危険物探知装置本体と結合されて使用される。
採取部1、操作パネル7、ステージ14を除く各部は、装置の筐体21の内部に収納されている。筺体21には、扉55が設けてあり、筺体21内部の各部の点検が可能である。また、装置には3又は4個の車輪11が設けられており、容易に移動が可能である。尚、採取部1、操作パネル7、ステージ14の相対的配置は、適宜変更できる。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の構成を説明する一部断面を含む側面図である。図3において、断面は、針電極26の中心を通る断面であり、側面図は、Y軸の負方向から見た図である。
【0028】
図4は、本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の採取部の構成を説明する一部断面を含む側面図である。図4において、断面は、導入配管16の中心を通る断面であり、側面図は、Y軸の負方向から見た図である。
【0029】
採取部1は、ガラス窓13を保持した断面が円錐型の導入管12と、ガラス窓13に対向する位置に配置した赤外線を発生する光源から構成される。
採取部1は、半透明のカバー23で覆われ、断熱、遮光されており、スタンド37で筺体21に固定されている。赤外線を発生する光源として、150Wのハロゲンランプ20を用いている。ハロゲンランプ20は、基本的に、石英ガラス管と、タングステンフィラメントと、反射鏡から構成される。石英ガラス管内には、タングステンフィラメント、ハロゲンガスが封入される。タングステンフィラメントに電流が流れると、タングステンフィラメントが白熱し、光を放射する。放射される光は、主に0.7μmから2μmの波長帯に最大のエネルギー分布を有する赤外線である。放射された光は反射鏡で一方向に、所定の位置に集光するように反射される。
【0030】
ハロゲンランプ20は導入管12の上部にガラス窓13を介して支持されている。ガラス窓13には、赤外線領域の波長の透過率に優れたコバール製のガラスを使用している。第1の実施例では、ガラス窓13を使用しているが、ハロゲンランプ20を直接導入管12の上部に接続することで、ガラス窓13は不要となる。
【0031】
検査対象は、容器(例えば、ガラス製容器)15に収納され、容器15は導入管12の下部に配したステージ14に載置される。ステージ14はトップテーブル17と、移動台56で構成され、トップテーブル17は、図2に示す座標系のX、Y、Z軸方向に移動可能である。導入管12は、導入配管16を介してイオン源部2に接続されており、吸引ポンプ3によって吸引されている。
【0032】
導入管12、導入配管16には、熱源18、温度計19を配置する。ここでは、熱源18として、抵抗加熱を使用する。熱源18への電力の供給は、温度計19の出力信号に基づき、制御部9により制御され、導入管12、導入配管16の温度は、室温から250度の間の所望の温度に加熱、保持できる。導入管12、導入配管16を、熱源18、温度計19によって所望の温度に保持することで、爆発残渣を加熱して得られる爆薬成分や、その他の成分のガスが、導入管12、導入配管16の内壁に吸着することを防ぎ、また、吸着しているガスが脱離できる。
【0033】
採取部1の操作条件は、装置の各部に指定する動作条件の一部として、操作パネル7から入力され、採取部1を含む装置の各部は、操作パネル7から入力される動作条件に基づいて、制御部9により制御される。
【0034】
容器15に収納された検査対象の所望の領域は、導入管12の内部を通した赤外線で所望の面積でスポット状に照射され加熱される結果、検査対象の所望の領域から試料ガスが発生され、試料ガスは、赤外線の照射方向と逆方向に移動し導入管12の内部の一部を通り、即ち、試料ガスの移動経路は、赤外線の照射経路の一部を共有し、導入配管16に移動しイオン源部2に導かれる。
【0035】
以下、第1の実施例の危険物探知装置を用いる検査として、爆発残渣の検査手順について説明する。
操作者は、爆発残渣を容器15に乗せて、ステージ14のトップテーブル17に置いた後、ハロゲンランプ20に電力を供給しハロゲンランプを発光させる。ハロゲンランプ20の発光の開始と共に、爆発残渣の面が急速に加熱され、爆薬成分の気化が急速に促進される。ここで、供給した電力量は約100W、照射時間は15secであり、この時の爆発残渣の到達温度は約110度である。
【0036】
吸引ポンプ3により、気化した爆薬成分(試料ガス)は、導入配管16を通り、イオン源部2の、第1の細孔付電極29と対向電極27との間の空間に運ばれる。イオン源部2には針電極26が配置され、針電極26と対向電極27との間に高電圧が印加されている。針電極26の先端付近にコロナ放電が発生し、まず、窒素、酸素、水蒸気等がイオン化される。これらイオンは一次イオンと呼ばれる。一次イオンは、電界により対向電極27の側に移動する。第1の細孔付電極29と対向電極27との間の空間に運ばれてきた気化した爆薬成分は、対向電極27に設けられた開口部28を介して、針電極26が配置される空間に流れ、一次イオンと反応してイオン化される。大気中のコロナ放電を利用して1次イオンを生成し、この1次イオンとガスとの化学反応を利用してガス中の化学物質をイオン化する方法は、大気圧化学イオン化法と呼ばれている。
【0037】
イオン源部2には、熱源(図示せず)と温度計(図示せず)が設けられている。この熱源への電力の供給は、温度計の出力信号に基づき、制御部9により制御され、気化した爆薬成分がイオン源部2の内部に吸着しないように、イオン源部2は、常時、所望の温度に保持されている。
【0038】
対向電極27と第1の細孔付電極29との間には1kV程度の電位差があり、イオンは第1の細孔付電極29の方向に移動して、第1のイオン導入細孔30を介して差動排気部31に取り込まれる。差動排気部31では断熱膨張が起こり、イオンに溶媒分子等が付着する、いわゆるクラスタリングが起きる。クラスタリングを軽減するため、第1の細孔付電極29、第2の細孔付電極32をヒーター等で加熱するのが望ましい。
【0039】
大気圧化学イオン化法により生成された試料イオンは、第1の細孔付電極29の第1のイオン導入細孔30、排気系10により排気された差動排気部31、第2の細孔付電極32の第2のイオン導入細孔33を介して、質量分析部4に導入される。質量分析部4は、排気系10により排気されている。イオン源部2と質量分析部4は、1つの容器36を構成している。なお、対向電極27、第1の細孔付電極29、第2の細孔付電極32は、絶縁材57により保持されている。
【0040】
質量分析部4に導入された爆薬成分のイオンは、四重極質量分析計によって質量分析される。装置には、予め検出しようとする単数又は複数の危険物質を同定するために必要なm/eの値が設定されている。質量分析計の検出器の出力信号は、爆薬成分のイオンの質量分析結果(マススペクトル)として、所定の時間間隔で連続してデータ処理装置5に送られ、データ処理される。マススペクトルのデータ処理結果である、質量分析データ(m/eの値と相対強度)の計測値は、データベースに記憶される標準質量分析データと比較照合される。このデータベースは、爆薬物質の同定判断の基準となる信号強度の判定閾値データも含んでおり、データ処理装置5の記憶手段に記憶されている。
【0041】
質量分析データの計測値は記憶手段から読み出された標準質量分析データと照合され、ある爆薬物質が同定され、計測値の信号強度が、判定閾値よりも大きい時、同定された爆薬の種類と、データ処理された質量分析計の出力信号が操作者に知らされる。
【0042】
イオン源部2に送られる爆発残渣から気化する爆薬成分が多ければ多いほど、イオン源部2で生成される爆薬物質のイオン濃度は高くなるため、より強い信号強度が質量分析部4で得られる。従って、データ処理装置5に設定されている判定閾値より強い信号強度が得られ、爆薬物質の同定判断が容易となり、確実な爆薬物質の有無を検査できる。また、直接データ処理装置5から、所定の範囲で、横軸をm/e、縦軸を信号の強度として、計測されたマススペクトルをグラフ状に表示することも可能である。
【0043】
図5は、本発明の第1の実施例の危険物探知装置において、ダイナマイトが残留した爆発残渣にハロゲンランプを照射して計測されたエチレングリコールジニトロナイトライド(EGDN)のm/e=214の信号強度の時間変化を示す図である。図5において、記号Eはexpを示し、横軸はsecである。
【0044】
図5に示すように、ハロゲンランプ20の照射開始と殆ど同時に、エチレングリコールジニトロナイトライドの存在を示すm/e=214の信号強度が急激に増加している。その後、信号強度が低下したため、ステージ14のトップテーブル17を移動させ、ハロゲンランプ20から爆発残渣に照射する赤外線の照射位置を変えた結果、再び強い信号強度が得られている。爆発残渣に残留している爆薬成分は、爆発残渣の全ての表面に付着していることは少なく、爆発残渣のある一部分の面に付着している場合が多い。第1の実施例の危険物探知装置は、ステージ14のトップテーブル17を、操作パネル7に表示される質量分析の結果を見ながらX、Y軸に走査できるので、爆発残渣上に爆薬成分が残留している個所を探すことができる。
【0045】
第1の実施例では、爆発残渣の限定された面の領域を選択して、赤外線で加熱するので、爆発残渣に付着している様々な物質から気化する夾雑成分を少なくできる。従って、採取部1、イオン源部2の、夾雑成分による汚染を少なくできるので、爆薬成分の検出感度を向上できる。
また、爆発残渣を収納する容器15は加熱されないため、火傷などの問題が無く、迅速に容器15を交換可能であり、操作性に優れ、連続して複数個の爆発残渣の検査が可能となる。
【0046】
第1の実施例では、ハロゲンランプを使用して赤外線加熱しているが、レーザ照射により加熱しても良い。一般にレーザは、赤外線よりも集光性が良く、また、照射密度が大きい特徴がある。従って、収束したレーザによる加熱により、取捨する爆発残渣の表面位置を選択して、スポット的に加熱できる。
また、第1の実施例では、移動台56は手動で動かすが、制御部9からの制御信号で自動で動かすことも容易である。この場合、トップテーブル17に置いた容器15の全面の各位置(領域)を加熱するように、移動台56をX、Y軸で間欠的に動かす。
【0047】
トップテーブル17が停止した時の移動台56のX、Y軸の座標と、前述した方法で得られる爆発残渣表面からの爆薬成分の信号を、データ処理装置5に記憶する。操作パネル7には、データ処理装置5によって、検査が終了した各位置(領域)の爆薬成分の信号の強度を3次元的に表示させる。以上の操作を容器15の全面の各位置について自動で行う。この操作が終了すると、容器15上の爆発残渣から発生する爆薬成分の信号強度の分布を3次元で把握できる。
【0048】
なお、爆発残渣そのもの、被疑者の衣服、手袋、荷物等を拭き取った試験紙、試験布、フィルタ等の検査対象が小さい場合には、検査対象を小さい外径をもつ容器15に収納して、容器15を導入管12の下部の開口部から導入管12の内部に配置しても良い。
【0049】
(第2の実施例)
第1の実施例では、爆発残渣を容器15に収納しているが、予め耐熱性の採取袋に爆発残渣を採取することで、爆発残渣を容器15に収納することなく、採取袋に採取された爆発残渣を直接検査することも可能である。採取袋24は、密封性の高いシール機能を有した、例えば、内面がアルミ製の袋が望ましい。
【0050】
図6は、本発明の第2の実施例の危険物探知装置の採取部の構成を説明する一部断面を含む正面図であり、耐熱性の採取袋24を用いた危険物探知装置の構成例を示している。図6に示す断面は、図2に示すようにxyz座標をとる時、導入管12の中心を通るyz面に平行な断面であり、正面図は、X軸の負方向から見た図である。第1の実施例と同様に、第2の実施例では、採取部1は危険物探知装置本体と結合されて使用される。危険物探知装置本体は、図2に示す装置の構成と同様に可搬型にできる。
【0051】
導入管12の外周に断熱材からなる保持台22を磁石25の吸着力で結合している。保持台22は、保持台22に固定した円錐形状の固定リング34と、固定リング34の円錐形状部が一致するように内径側が円錐形状をした移動可能な押えリング35から構成している。
【0052】
保持台22への採取袋24の固定は、以下の手順で行う。保持台22を導入管12から取り外す。爆発残渣を入れた採取袋24を開口し、固定リング34の円錐形状部に被せた状態で、押えリング35を図6に示すz座標の負方向に移動する。採取袋24は、押えリング35と固定リング34の円錐形状部で挟み込まれるので、保持台22に保持される。この後、保持台22を磁石25の吸着力で導入管12と結合し、第1の実施例で説明したの同様の手順で、採取袋24内の残渣から爆薬成分を取り出す。
【0053】
第2の実施例によれば、採取袋24から爆発残渣を取り出すことなく、操作性良く採取袋24を交換して、連続で検査可能となる。また、検査後は、爆発残渣をそのまま採取袋24自体で密封、保管できるので、作業効率を高くできる。
採取袋24に収納された検査対象(爆発残渣)の所望の領域は、導入管12の内部を通した赤外線で所望の面積でスポット状に照射され加熱される結果、検査対象の所望の領域から試料ガスが発生され、試料ガスは、赤外線の照射方向と逆方向に移動し導入管12の内部の一部を通り、即ち、試料ガスの移動経路は赤外線の照射経路の一部を共有し、導入配管16に移動しイオン源部2に導かれる。
【0054】
高電力を必要とするハロゲンランプ20を付加した本発明の危険物探知装置の総消費電力を極力低く抑えることは、必要不可欠である。
図7は、本発明の第1の実施例の危険物探知装置による危険物探知の各工程での加熱電力の供給と温度変化の例を説明する図である。
図8は、本発明の第1の実施例の危険物探知装置による危険物探知の各工程での加熱電力の供給と温度変化の他の例を説明する図である。
【0055】
図7、図8は、ハロゲンランプ20と導入管12の熱源18への電力供給の制御の異なる例を示している。図7、図8に示す電力供給の制御に共通する特徴は、ハロゲンランプ20と導入管12の熱源18への電力の供給を同時に行なわない点にある。即ち、ハロゲンランプ20への電力の供給と、導入管12の熱源18への電力の供給とを交互に行なう点にある。
【0056】
図7、図8では、残渣導入工程、検査工程、残渣排出工程における、導入管12の熱源18への電力供給、ハロゲンランプ20への電力供給の状態と、各工程における導入管の温度変化を示している。残渣導入工程は、爆発残渣が収納された容器15、又は、爆発残渣が収納された採取袋24を、採取部1に導入する工程である。検査工程は、爆発残渣を加熱して爆薬成分を気化させて、気化した爆薬成分(試料ガス)をイオン化し質量分析して、質量分析計の出力信号に基づいて、爆薬成分の種類を同定する工程である。残渣排出工程は、採取部1から、容器15、又は、採取袋24を取り出す工程である。
【0057】
図7に示す検査工程では、導入管12の熱源18への電力供給をOFFとし、ハロゲンランプ20への電力供給をONとする。検査工程へ移る際に、一時的な大電力の消費を防止するため、導入管12の熱源18への電力供給をOFFとした後に、ハロゲンランプ20への電力供給をONとする。検査工程の終了と同時に、ハロゲンランプ20への電力供給をOFFとし、次いで、導入管12の熱源18への電力供給をONとする。
【0058】
図5に示した爆発残渣の検査結果が示すように、爆発残渣にハロゲンランプ20で赤外線を十数sec照射することにより、爆薬成分を高濃度で気化させ、イオン化できるので、ハロゲンランプ20を照射する極く短時間、導入管12の熱源18への電力の供給を停止しても、導入管12の温度は、不純物や爆薬物質等の吸着を誘発するような温度に低下することはない。
【0059】
第1の実施例の可搬型の危険物探知装置は、図7に示す電力供給の制御により、総電力量の増加を伴わずに、基本的に、国内外の任意の地域に移動して、移動先で稼動させて、危険物質の検知試験が可能である。各国毎に異なるが、一般的に得られる家庭用電力(日本国内では100V、15A)の枠の中で、危険物探知装置を稼動できる。設置場所を選ばず、また、別途、電源、電源の付属機器を携帯する必要がないので、より機動性を向上できる。
【0060】
図8では、ハロゲンランプ20への電力の供給を段階的に行なう。以下、図7に示す電力供給の制御との相違点について説明する。
図8に示す電力供給の制御の特徴は、検査工程で、ハロゲンランプ20への電力供給をステップ状に順次増加させている点、ハロゲンランプ20への電力供給開始前に、検査工程を開始する点にある。ステップ状にハロゲンランプ20へ電力を供給するので、爆発残渣の温度もステップ状に上昇できる。
【0061】
一般に、物質はその種類によって大気圧における蒸発温度が異なる。従って、爆発残渣の温度を順次ステップ状に上昇させれば、爆発残渣の温度に応じて爆発残渣から蒸発する危険物質が異なるため、検査工程で、爆発残渣が加熱されている温度毎に検知される危険物質を同定できる。また、検査対象が複数の危険物質を含む場合にも、図8に示す電力供給の制御では、異なる種類の危険物質を順次検出、特定することも可能となる。また、爆発残渣の温度を所望の温度に順次上昇できるので、導入管12の温度を不純物が吸着しない程度の低い温度に保持できる。従って、各種の蒸発温度をもつ危険物質を効率良く、確実に検出可能な危険物探知装置を構築できる。
【0062】
例えば、図8において、検査工程(1)では、ハロゲンランプ20に電力を供給しない状態で、第1回目の検査を行う。検査工程(1)では、導入管12の壁からの対流熱伝達、接触熱伝達によって爆発残渣の温度はゆるやかに上昇する。検査工程(1)で、蒸発温度の低い危険物質、例えば、ニトログリセリン等の有無を検査する。検査工程(1)に要する時間は、例えば、5sec〜10secである。
【0063】
検査工程(2)では、ハロゲンランプ20に電力を供給して、爆発残渣の面の温度を約150度に加熱する。検査工程(2)で、蒸発温度が比較的高い爆薬物質、例えば、トリニトロトルエン(TNT)等の有無を検査する。検査工程(3)では、ハロゲンランプ29への電力を更に増加して、爆発残渣の面の温度を約200度に加熱する。
検査工程(3)で、蒸発温度がより高い爆薬物質、例えば、トリメチレントリニトロアミン(RDX)等の有無を検査する。検査工程(2)、(3)に要する時間は、例えば、10sec〜20secである。
【0064】
図8に示す電力供給の制御の例では、検査工程で、温度を3段階に変化させているが、更に、複数の段階に温度を変化させて、爆発残渣に付着した複数種類の爆薬物質を検出できる。図8に示すように、検査工程を分割することにより、検査できる爆薬物質の数を増加できる。図8の例では、検査工程を3分割しているので、図7に示す一度の検査工程で検査できる3倍の数の爆薬物質を検査できる。また、各検査工程で検出した信号を、検査工程(3)の後に、データ処理装置5によって、検出した信号の組み合わせから、爆薬物質の種類を特定できるようになるので、更に多くの種類の爆薬物質の検査が可能となる。
【0065】
図8に示すように、検査工程を分割することにより、各検査工程でのデータ処理装置5の同定判断処理に要する時間を短縮できる。各検査工程の爆発残渣の表面温度で効率良く蒸発する爆薬物質を予め把握できるので、各検査工程では、データ処理装置5は、把握されている爆薬物質を同定するために必要な標準質量分析データを同定判断処理の対象とすれば良い。各検査工程で、同定判断処理を行う場合、想定される全ての爆薬物質に関する標準質量分析データを同定判断処理の対象とする必要はない。
図7、図8に示す電力供給の制御において、ハロゲンランプへの電力の供給を完全に停止せず、数W程度の低い待機電力の供給を継続する構成としてもよく、問題は生じない。
【0066】
(第3の実施例)
図9は、本発明の第3の実施例であり、可搬型の試料採取装置の外観を示す斜視図である。第3の実施例では、爆発残渣から爆薬物質を気化させて試料を採取する試料採取装置は、危険物探知装置本体とは独立して使用される。
図9では、電源部8’(図示せず)、制御部9’(図示せず)は、筐体21’内に収納されている。第3の実施例の試料採取装置の大きさは、幅35cm、奥行き30cm、高さ30cmであり、総重量は約5kgであり、取手6によって、容易に運搬が可能である。尚、採取部1’、操作パネル7’の相対的配置は、適宜変更できる。
【0067】
図10は、本発明の第3の実施例の試料採取装置の構成を説明する一部断面を含む正面図である。図10において、断面は、導入管12’の中心を通るyz軸に平行な断面であり、x軸の負方向から見た正面図である。
【0068】
導入管12’はフィルタ39を介して吸引ポンプ3’に接続している。採取部1’は、ガラス窓13’が設けられた円筒型の導入管12’と、ガラス窓13’に対向する位置に配置され赤外線を発生する光源とから構成される。採取部1’は、カバー23’で覆われ、断熱、遮光されている。赤外線を発生する光源として、150Wのハロゲンランプ20を用いた。ハロゲンランプ20は導入管12’の上部にガラス窓13’を介して支持している。ガラス窓13’には、赤外線領域の波長の透過率に優れたコバール製のガラスを使用している。
【0069】
第3の実施例では、ガラス窓13’を使用しているが、ハロゲンランプ20を直接導入管12’の上部に接続することで、ガラス窓13’は不要となる。導入管12’はスタンド37’で筺体21’に固定されている。導入管12’、導入配管16’には、熱源18’、温度計19’(図示せず)が配置されている。熱源18’による加熱により、導入管12’、導入配管16’の内壁への、気化した爆薬成分や汚染物質の吸着を防止し、あるいは、導入管12’、導入配管16’の内壁に吸着した爆薬成分や汚染物質の脱離を促進させる。ここでは、熱源18’として、抵抗加熱を使用する。熱源18’への電力の供給は、温度計19’(図示せず)の出力信号に基づき、制御部9’(図示せず)により制御され、導入管12’、導入配管16’の温度は、室温から250度の間の所望の任意温度に加熱、保持できる。導入管12’の端面には、フィルタ39を保持するフランジ38が取り付けられている。
【0070】
容器15に収納された検査対象(爆発残渣)の所望の領域は、導入管12’の内部を通した赤外線で所望の面積でスポット状に照射され加熱される結果、検査対象の所望の領域から試料ガスが発生され、試料ガスは、赤外線の照射方向と逆方向に移動し導入管12’の内部の一部を通り、即ち、試料ガスの移動経路は赤外線の照射経路の一部を共有し、導入配管16’に移動しフィルタ39に導かれ、フィルタ39に試料は捕集される。
【0071】
図11は、本発明の第3の実施例の試料採取装置の採取部1’のフィルタの保持方法を説明する一部断面を含む斜視図であり、図10に示すフランジ38の端面をY軸の負方向から見た斜視図である。フランジ38の端面にはフィルタ39の外縁が入るポケット40を設けてある。また、フランジ38の外周は断熱材から成る雄ねじ41が固定してあり、断熱性に優れた材質から成るナット42と噛み合う。ナット42はベアリング43を介してフランジ44と接続している。フランジ44の断面はフランジ38に設けたポケット40の内径より小さい外径のパイプ状の凸形状をしており、凸部の端面でフィルタ39と接する。
【0072】
また、フランジ44の一端は、伸縮自在なベローズ配管45と接続している。ベローズ配管45の他端は吸引ポンプ3’に接続している別のフランジ46と結合している。フランジ46の端面にはフランジ44の内径に接しフランジ46の移動する際のガイドの機能をする円筒状のガイド管47が接続している。
【0073】
採取部1’の操作条件は、各部に指定する動作条件の一部として、操作パネル7’から入力され、制御部9’(図示せず)により制御される。爆発残渣は、容器15に収納され、容器15は導入管12’の下部に置かれる。
なお、容器15と導入管12’の組合わせを、第1の実施例に関する図6で説明した、採取袋24と導入管12の組合わせを用いる構成とすることもできる。
【0074】
以下、第3の実施例の試料採取装置を用いる、爆発残渣から爆発残渣の採取手順ついて説明する。導入管12’の熱源18’への電力供給、ハロゲンランプ20への電力供給の状態、各工程における導入管の温度変化の制御は、第1の実施例に関して説明した図7、図8と同様になされる。但し、残渣導入工程は、爆発残渣が収納された容器15又は、爆発残渣が収納された採取袋24を、採取部1’に導入する工程である。検査工程は試料の捕集工程であり、爆発残渣を加熱して爆薬成分を気化させて、フィルタ(試験紙)39に試料を採取する工程である。残渣排出工程は、採取部1’から、容器15、又は、採取袋24を取り出す工程である。以下の説明では、容器15と導入管12’の組合わせを用いる構成を例にとって説明する。
【0075】
操作者は、フィルタ39をフランジ38のポケット40に挿入した後、ナット42を持ってフランジ44をガイド管47に沿ってフランジ38の方向に移動させる。ナット42を回転して、フランジ38に固定してある雄ねじ41と結合させる。この操作で、フィルタ39はフランジ44の凸部の端面でフランジ38に押し付けられる。また、ナット42はベアリング43でフランジ44に保持されているので、ナット42の回転は滑らかに行われる。
【0076】
使用するフィルタ39は、通気性のある清浄なフィルタであれば、材質は限定されない。第3の実施例では、繰り返し使用が可能なステンレススチール製の2000番のフィルタを使用している。
爆発残渣を入れた容器15を導入管12’の下部に置く。フランジ38とフランジ44を雄ねじ41とナット42で結合した後、操作パネル7’を操作し吸引ポンプ3’を駆動する。第3の実施例で使用した吸引ポンプ3’の吸入流量は、1600L/min(リットル/分)である。
【0077】
次に、ハロゲンランプ20に所定の電力を供給し、発光させる。第3の実施例では、照射時間は30秒、ハロゲンランプ20に供給した電力は120Wであり、この条件での爆発残渣の表面到達温度は120度であった。ハロゲンランプ20の照射と同期して、爆発残渣に残留している爆薬成分は気化し、気化した爆薬成分は、吸引ポンプ3’の動作によって形成されている、導入管12’の内部の気流に沿って、フィルタ39に運搬され、フィルタ39に衝突することで液化し捕集される。
【0078】
この後、ハロゲンランプ20の発光を停止し、前述したフィルタ39の挿入と逆の手順で、試料として爆薬成分が捕集されたフィルタ39を、フランジ38のポケット40から取り出し、別の清浄なフィルタ39を、フランジ38のポケット40に挿入する。取り出したフィルタ39は、密封できる保管容器に入れ保管するのが望ましい。保管容器には、ラベルが貼られ、爆発残渣の採取場所等の情報を記載する。
【0079】
採取後のフィルタ39は、イオン源部2にフィルタ加熱部49(図12)が結合された危険物検査装置で、試料が捕集されたフィルタ39から試料が気化、イオン化され、イオンの質量分析がなされ、爆薬物質の同定判断が、第1の実施例と同様にして行われる。
また、試料が捕集されたフィルタ39の少なくとも一部を、第1の実施例における容器15又は採取袋24に収納しても、第1の実施例と同様にして、爆薬物質の同定判断が可能であることは言うまでもない。
【0080】
(第4の実施例)
図12は、本発明の第4の実施例であり、イオン源部と結合したフィルタ加熱部49を有する危険物探知装置の構成の一例を説明する一部断面図である。図12において、断面は、イオン源部2に接続される導入配管52の中心を通る断面である。第4の実施例の危険物探知装置は、第1の実施例の構成と同様に、可搬型にできる。
【0081】
フィルタ39を、スライド式の容器48に置く。フィルタ39が置かれた容器48は、抵抗加熱されるフィルタ加熱部49に挿入される。容器48がフィルタ加熱部49の所定の位置に押し込まれたことをセンサー50が感知し、フィルタ加熱部49の上部に設けられたハロゲンランプ20が点灯する。ハロゲンランプ20からの赤外線により、フィルタ39は加熱され、フィルタ39に付着していた試料は気化する。加熱温度は200度以上が望ましい。フィルタ39から発生した試料ガスは、空気取り入れ管51から取り込まれた空気と一緒に、導入配管52を介してイオン源部2(図示せず)に送られる。
【0082】
空気取り入れ管51には、ホコリなどを除去するための除塵フィルタ53を設けると良い。また、フィルタ加熱部49は高温になるため、安全のため断熱を施したカバー54や取手6’を設けると良い。試料が捕集されたフィルタ39から試料が気化され、イオン源部2イオン化され、イオンの質量分析がなされ、爆薬物質の同定判断がなされる手順は、第1の実施例と同様にして行われるので、詳細な説明は省略する。
【0083】
なお、(a)試料が捕集された面を上にしてフィルタ39が収納された容器48を搭載する容器48を、フィルタ加熱部49に導入する残渣導入工程、(b)フィルタ39を加熱して爆薬成分を気化させて、気化した爆薬成分をイオン化し質量分析して、質量分析計の出力信号に基づいて、爆薬成分の種類を同定する検査工程、(c)フィルタ加熱部49から容器48を引出して、容器48を取り出す残渣排出工程、の各工程における、フィルタ加熱部49の熱源(図示せず)への電力供給、ハロゲンランプ20への電力供給の状態、各工程におけるフィルタ加熱部49の温度変化の制御は、第1の実施例に関する図7、図8の説明と同様にして行う。任意の場所で複数のフィルタ39に試料を採取した後、第4の実施例の危険物探知装置を用いて、操作性良くフィルタ39を順次交換して連続して、迅速に検査を実行できる。
【0084】
容器48に収納されたフィルタ(検査対象)39の所望の領域は、フィルタ加熱部49の内部を通した赤外線で所望の面積でスポット状に照射され加熱される結果、フィルタ39のの所望の領域から試料ガスが発生され、試料ガスは、赤外線の照射方向と逆方向に移動しフィルタ加熱部49の内部の一部を通り、即ち、試料ガスの移動経路は赤外線の照射経路の一部を共有し、導入配管52に移動しイオン源部2(図示せず)に導かれる。
【0085】
図13は、本発明の第4の実施例の危険物探知装置において得られたエチレングリコールジニトロナイトライド(EGDN)のm/e=214の信号強度の時間変化を示す図である。図13において、記号Eはexpを示し、横軸はsecである。図13に示す信号強度の時間変化は、第3の実施例の試料採取装置を用いて、ダイナマイトが残留した爆発残渣から採取したフィルタ39を、図12に示す構成のフィルタ加熱部19を用いて加熱し、測定して得られたものである。
【0086】
図13に示すように、ハロゲンランプ20の照射開始と殆ど同時に、エチレングリコールジニトロナイトライドの存在を示すm/e=214の信号強度が、急激に増加していることから、爆発残渣に残留していたダイナマイトが第3の実施例の試料採取装置によってフィルタ39に捕集されていることが明らかとなった。
【0087】
以上説明した各実施例では、四重極質量分析を使用しているが、質量分析計として、イオントラップ型質量分析計も使用できる。
また、検査対象に付着している試料(微粒子)を、赤外線により加熱気化させることにより、高濃度の試料蒸気を発生できるので、この蒸気をガスクロマトグラフで分離し、発光試薬と反応させて発光を検出することにより、危険物質の有無を検査する周知の化学発光方式の危険物探知装置にも、本発明を適用できる。また、この蒸気をイオン源部の内部の放射性同位体でイオン化した後、ドリフトチューブに導入してイオンの易動度を検出することにより、危険物質の有無を検査する周知のイオンモビリティ方式の危険物探知装置にも、本発明を適用できる。
【0088】
本発明の危険物探知装置によれば、消費電力を増加させることなく、各種の蒸発温度をもつ危険物質を効率良く、確実に検出可能な危険物探知装置を構築できる。また、大型の危険物探知装置本体を運搬することなく、広範囲に渡る現場から迅速に、検査対象から試料の採取が可能であり、危険物探知装置から離れた任意の場所で、複数のフィルタに採取した後、各フィルタに採取された試料を、イオン源部と結合したフィルタ加熱部49を有する危険物探知装置を用いて、順次フィルタを交換して計測を行うことにより、操作性良く効率良く短時間に詳細に検査可能となる。
【0089】
本発明の危険物探知装置によれば、複数種類の試料ガスを短時間で検査可能である他、任意の蒸発温度の危険物質を効率良く、確実に検出可能となる。
また、試料採取装置と危険物探知装置本体の組合わせにより、危険物探知装置本体から離れた任意の場所で試料採取装置により複数のフィルタに試料を採取した後、危険物探知装置本体により、操作性良くフィルタを順次交換して、効率良く高速に検査可能となる。
本発明の危険物探知装置は、可搬型の装置、据置型の装置の何れの形態でも使用可能であることは言うまでもない。
【0090】
以下、本発明の危険物探知装置の特徴を纏めておく。
(危険物探知装置−1)
検査対象を収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有する。
【0091】
(危険物探知装置2)
検査対象から試料を気化させた該試料が捕集されたフィルタを収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記フィルタの前記試料が捕集された面を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有する。
装置−1又は−2は、更に、以下の特徴を有する。
【0092】
(1)前記容器が上部が開口するガラス製の容器である。
(2)前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接する。
(3)前記試料ガスの前記イオン源部への導入方向は、前記赤外線の照射方向と反対方向を含む。
【0093】
(4)前記導入管の加熱と、前記赤外線による前記検査対象の加熱とを異なる期間で行なう。
(5)(4)の装置において、前記赤外線による前記検査対象の加熱温度を段階的に複数の温度で行なう。
【0094】
(6)前記容器を移動させる手段と、前記検査対象の面の選択された領域に収束させる手段とを有し、前記赤外線は、前記選択された領域を照射する。
(7)前記イオン源部は、電圧が印加されコロナ放電を発生する針電極を有し、前記コロナ放電を発生する領域への前記試料ガスの導入方向と、前記イオンの前記質量分析部への引き出し方向が対向する。
【0095】
以下、本発明の試料採取装置の特徴を纏めておく。
検査対象を収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記導入管の中空部を排気する排気手段と、前記導入管の中空部と前記排気手段とを結ぶ配管と、該配管の途中に配置されるフィルタとを有し、前記排気手段により前記試料ガスを吸引して前記フィルタに前記試料を捕集する。
【0096】
上記試料採取装置は、更に、以下の特徴を有する。
(1)前記容器が上部が開口するガラス製の容器である。
(2)前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接する。また、本発明の危険物探知装置−3の特徴を以下に纏めておく。
【0097】
上記の試料採取装置により、前記試料が捕集された前記フィルタと、前記フィルタを収納し加熱する加熱部と、前記加熱部の内部で前記フィルタを照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有する。
【0098】
以下、本発明の危険物探知方法の特徴を纏めておく。
(危険物探知方法−1)
検査対象を容器に収納する工程と、前記容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象に赤外線を照射し加熱して試料ガスを発生させる工程と、イオン源部で前記試料ガスのイオンを生成する工程と、質量分析部で前記イオンの質量分析を質量分析部で行なう工程と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理工程とを有することを特徴とする危険物探知方法。
【0099】
(危険物探知方法−2)
検査対象から試料を気化させた該試料が捕集されたフィルタを容器に収納する工程と、前記容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記フィルタの前記試料が捕集された面に赤外線を照射し加熱して試料ガスを発生させる工程と、イオン源部で前記試料ガスのイオンを生成する工程と、質量分析部で前記イオンの質量分析を行なう工程と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理工程とを有する。
【0100】
(危険物探知方法−3)
試料が捕集されたフィルタを収納し加熱する加熱部の内部で、前記フィルタを赤外線で照射し加熱して試料ガスを発生させる工程と、前記試料ガスをイオン源部に送流する工程と、前記イオン源部で前記試料ガスのイオンを生成する工程と、前記イオンを質量分析部に送流する工程と、前記質量分析部で前記イオンの質量分析を行なう工程と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理工程とを有する。
【0101】
方法−1又は−2は、更に、以下の特徴を有する。
(1)前記試料ガスの前記イオン源部への導入方向は、前記赤外線の照射方向と反対方向を含む。
(2)前記導入管の加熱と、前記赤外線による前記検査対象の加熱とを異なる期間で行なう。
(3)(2)において、前記赤外線による前記検査対象の加熱温度を段階的に複数の温度で行なう。
【0102】
(4)前記容器を移動させる工程と、前記検査対象の面の選択された領域に収束させる工程とを有し、前記赤外線は、前記選択された領域を照射する。
(5)前記イオン源部に配置された針電極に印加される電圧により発生するコロナ放電が発生される領域への前記試料ガスの導入方向と、前記イオンの前記質量分析部への引き出し方向が対向する。
【0103】
以下、本発明の試料採取方法−1の特徴を纏めておく。
検査対象を容器に収納する工程と、前記容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象を赤外線により照射し加熱して試料ガスを発生させるる工程と、排気手段により前記導入管の中空部を排気する工程と、前記排気手段の吸引により、前記導入管の中空部と前記排気手段とを結ぶ配管の途中に配置されるフィルタに前記試料を捕集する工程とを有する。
【0104】
試料採取方法−1は、更に、以下の特徴を有する。
(1)前記容器が上部が開口するガラス製の容器である。
(2)前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接する。以下、本発明の試料採取方法−2の特徴を纏めておく。
【0105】
検査対象を収納し加熱する加熱部の内部で、前記検査対象を赤外線により照射し加熱して試料ガスを発生させる工程と、排気手段により前記加熱部を排気する工程と、前記排気手段の吸引により、前記加熱部と前記排気手段とを結ぶ配管の途中に配置されるフィルタに前記試料を捕集する工程とを有する。
また、本発明の危険物探知方法−4の特徴を以下に纏めておく。
【0106】
試料採取方法−2により、前記試料が捕集された前記フィルタを加熱部に収納して加熱する工程と、前記加熱部の内部で前記フィルタを赤外線により照射し加熱して試料ガスを発生させる工程と、イオン源部で前記試料ガスのイオンを生成する工程と、質量分析部で前記イオンの質量分析を行なう工程と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理工程とを有する。
【0107】
最後に、本発明の実施例を説明する図面で各部を示す参照番号について纏めておく。
1、1’は採取部、2はイオン源部、3、3’は吸引ポンプ、4は質量分析部、5はデータ処理装置、6、6’は取手、7、7’は操作パネル、8、8’は電源部、9、9’は制御部、10は排気部、11は車輪、12、12’は導入管、13、13’はガラス窓、14はステージ、15、48は容器、16、16’は導入配管、17はトップテーブル、18、18’は熱源、19、19’は温度計、20はハロゲンランプ、21、21’は筐体、22は保持台、23、23’はカバー、24は採取袋、25は磁石、26は針電極、27は対向電極、28は開口部、29は第1の細孔付電極、30は第1のイオン導入細孔、31は差動排気部、32は第2の細孔付電極、33は第2のイオン導入細孔、34は固定リング、35は押えリング、36は容器、37、37’はスタンド、38、44、46はフランジ、39はフィルタ、40はポケット、41は雄ねじ、42はナット、43はベアリング、45はベローズ配管、47はガイド管、49はフィルタ加熱部、50はセンサー、51は空気取入れ管、52は導入配管、53は除塵フィルタ、55は扉、56は移動台、57は絶縁材である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、検出感度、操作性の高い危険物探知装置及び危険物探知方法、及び、他の検査対象又は同じ検査対象の他の領域から発生した試料により汚染されることなく、注目する検査対象又は同じ検査対象の注目する領域から発生する試料を捕集できる、危険物探知装置及び危険物探知方法のための試料採取装置及び試料採取方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施例の危険物探知装置の主要構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の外観を示す斜視図。
【図3】本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の構成を説明する一部断面を含む側面図。
【図4】本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の採取部の構成を説明する一部断面を含む側面図。
【図5】本発明の第1の実施例の危険物探知装置において、ダイナマイトが残留した爆発残渣にハロゲンランプを照射して計測されたエチレングリコールジニトロナイトライド(EGDN)のm/e=214の信号強度の時間変化を示す図。
【図6】本発明の第2の実施例の危険物探知装置の採取部の構成を説明する一部断面を含む正面図。
【図7】本発明の第1の実施例の危険物探知装置による危険物探知の各工程での加熱電力の供給と温度変化の他の例を説明する図。
【図8】本発明の第1の実施例の危険物探知装置による危険物探知の各工程での加熱電力の供給と温度変化の他の例を説明する図。
【図9】本発明の第3の実施例であり、試料採取装置の外観を示す斜視図。
【図10】本発明の第3の実施例の試料採取装置の構成を説明する一部断面を含む正面図。
【図11】本発明の第3の実施例の試料採取装置の採取部のフィルタの保持方法を説明する一部断面を含む斜視図。
【図12】本発明の第4の実施例であり、イオン源部と結合したフィルタ加熱部を有する危険物探知装置の構成の一例を説明する一部断面図。
【図13】本発明の第4の実施例の危険物探知装置において得られたエチレングリコールジニトロナイトライド(EGDN)のm/e=214の信号強度の時間変化を示す図。
【符号の説明】
【0110】
1、1’…採取部、2…イオン源部、3、3’…吸引ポンプ、4…質量分析部、5…データ処理装置、6、6’…取手、7、7’…操作パネル、8、8’…電源部、9、9’…制御部、10…排気部、11…車輪、12、12’…導入管、13、13’…ガラス窓、14…ステージ、15、48…容器、16、16’…導入配管、17…トップテーブル、18、18’…熱源、19、19’…温度計、20…ハロゲンランプ、21、21’…筐体、22…保持台、23、23’…カバー、24…採取袋、25…磁石、26…針電極、27…対向電極、28…開口部、29…第1の細孔付電極、30…第1のイオン導入細孔、31…差動排気部、32…第2の細孔付電極、33…第2のイオン導入細孔、34…固定リング、35…押えリング、36…容器、37、37’…スタンド、38、44、46…フランジ、39…フィルタ、40…ポケット、41…雄ねじ、42…ナット、43…ベアリング、45…ベローズ配管、47…ガイド管、49…フィルタ加熱部、50…センサー、51…空気取入れ管、52…導入配管、53…除塵フィルタ、55…扉、56…移動台、57…絶縁材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析法を用いた危険物探知技術に関り、危険物質の探知を行なう危険物探知装置及び危険物探知方法、試料採取装置及び試料採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基本的にスピード、感度、選択性に優れた質量分析法に、試料ガスを導入する技術を付加した質量分析の技術が提案されている。これらの技術には、検査対象のサンプリング表面を赤外線ランプ、レーザによって加熱する技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−304760号公報
【0004】
【特許文献2】特開2000−028579号公報
【特許文献3】特開平07−006729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、爆発事件が発生した際、どのような爆薬が使用されたかを迅速に把握することは、被疑者を追跡する犯罪捜査上非常に重要である。そのため、爆発残渣に極めて僅かに残留している爆薬成分の分析が要求される。爆発残渣から僅かな爆薬成分を取り出すに要する時間は、より短時間が要求される。爆発残渣から高感度に極微量の爆薬成分を質量分析装置を用いて検査するには、爆発残渣から僅かな爆薬成分を効率よく気化させて試料ガスを発生させて、他の爆発残渣、又は、同じ爆発残渣の注目する領域以外から発生するガスで汚染されないように、試料ガスをイオン源部に送りイオン化して、質量分析計でイオンの分析を行なうことが要求される。即ち、加熱部、配管部、イオン源、質量分析計等の質量分析装置の各部に吸着した、以前に分析された爆発残渣に起因するガスが離脱して生じる汚染を抑制することが、要求される。
【0006】
本発明は、これらの要求に鑑みなされたものであり、本発明が解決しようとする代表的な課題は、(1)検査対象に残留している試料を短時間に高濃度で気化させ、気化した試料をイオン源部に導入してイオン化して検出感度を上げること、(2)複数の検査対象を短時間に連続で分析できること、(3)任意の場所で複数の検査対象から試料をフィルタに採取した後、試料が採取されたフィルタを交換して連続して検査できること、等にある。これらの課題は、従来技術では殆ど配慮されていなかったものである。
【0007】
本発明では、衣服、金属、プラスチック、ガラス、土砂、有機物等の、爆発事故の現場から採取された破片を、爆薬あるいは爆薬の分解生成物が付着した、被疑者の衣服、手袋、持ち物等から採取した破片を、被疑者の衣服、手袋、荷物等を拭き取った試験紙、試験布、フィルタ等を、検査対象の例とする。加熱により検査対象から発生する試料ガス(爆薬由来ガス又は爆薬成分由来ガス)を分析して、検査対象に微量に残留している爆薬物質を特定する。以下の説明では、検査対象の代表例として爆発残渣そのものをとって説明する。従って、以下の説明では、「爆発残渣」、「爆薬そのもの」、「爆薬の分解生成物」の記載は、それぞれ一般の、「検査対象」、「検査対象そのもの」、「検査対象の分解生成物」と読み替えることができるものとする。また、以下の説明では、「危険物質」、「危険物」は、一般に、人体に悪影響を及ぼすと想定される物質を意味し、例えば、爆発性の物質、覚醒剤、麻薬、人体に悪影響を与える化学物質や薬剤、人体に悪影響を与える細菌、ウイルス等の微生物、劇薬、有害ガス、有害植物等を含むものとする。
【0008】
本発明の目的は、危険物質の検出感度が高く操作性が優れた危険物探知装置及び危険物探知方法、及び、他の検査対象又は同じ検査対象の他の領域から発生した試料により汚染されることなく、注目する検査対象又は同じ検査対象の注目する領域から発生する試料を捕集できる、危険物探知装置及び危険物探知方法のための試料採取装置及び試料採取方法(あるいは、試料採取のための加熱装置及び試料採取のための加熱方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
爆発残渣に残留している爆薬成分は、爆薬そのもの、あるいは、爆薬の分解生成物を含む。容器(例えば、ガラス製容器)に収納した爆発残渣は、容器に対向して配した抵抗加熱手段を具備した導入管の内部を通して、赤外線(波長帯0.7μmから2μmに最大のエネルギー分布をもつ)により照射され加熱される。赤外線により爆発残渣の表面は加熱されるため、爆発残渣に残留している爆薬成分も加熱され、気化される。
【0010】
導入管はイオン源部に接続されており、気化された爆薬成分は、導入管を通ってイオン源部に輸送され、イオン源部でイオン化され、イオンは質量分析部で質量分析される。導入管の内部を通して照射する赤外線の使用によって、爆発残渣の限られた面積の表面を短時間で高温度に加熱できるので、気化した高濃度の試料ガスを、短時間で生成でき、効率良く生成したガスをイオン源部に輸送できるので、爆薬成分の検出感度を向上できる。
【0011】
本発明の危険物探知装置は、爆発残渣の限定された面を加熱するので、爆発残渣から気化する夾雑成分が少なくできる。従って、導入管や、イオン源部の夾雑成分による汚染を少なくできるので、爆薬成分の検出感度を向上できる。また、容器は加熱されないため、容器を安全に交換でき、複数の爆発残渣を連続して分析できる。
【0012】
また、本発明の危険物探知装置では、導入管をイオン源部に接続しないで、導入管にガス捕集用のフィルタを接続し、任意の場所で大量の爆発残渣から、爆薬成分の採取ができる。従って、爆薬成分の採取場所へ、イオン源部及び質量分析部を運搬する必要がない。
本発明の危険物探知方法は、以下の工程による。
【0013】
(方法1)
容器(例えば、ガラス製の容器)に収納した検査対象を、抵抗加熱により加熱された導入管の内部を通して照射される赤外線により加熱して、検査対象から試料ガスを発生させる気化工程と、試料ガスのイオンを生成するイオン化工程と、イオンの質量分析を行なう分析工程と、質量分析の結果に基づいて、検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定する判定工程とを有する。導入管は、円錐形状又は円筒形状の中空部をもつ。容器は、導入管に対向して配置され、赤外線光源から発する赤外線は光学窓を介し、導入管の内部を通して、検査対象に照射される。検査対象から発生する試料ガスの流れる方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、即ち、試料ガスの進行方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含む。
【0014】
(方法2)
容器(例えば、ガラス製の容器)に収納した検査対象を、抵抗加熱により加熱された導入管の内部を通して照射される赤外線により加熱して、検査対象から試料ガスを発生させる気化工程と、試料ガスをフィルタに液化して試料を捕集する捕集工程と、抵抗加熱により加熱された加熱炉に、試料が捕集された側の面を露出させてフィルタを収納する収納工程と、試料が捕集された側のフィルタの面を、赤外線により加熱して試料ガスを発生させる気化工程と、試料ガスのイオンを生成するイオン化工程と、イオンの質量分析を行なう分析工程と、質量分析の結果に基づいて、検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定する判定工程とを有する。容器は、赤外線を発する赤外線光源に対向して配置され、検査対象は加熱炉の内部で赤外線により照射される。検査対象から発生する試料ガスの流れる方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、即ち、試料ガスの進行方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含む。
【0015】
本発明の危険物探知装置及び危険物探知方法では、選択された爆発残渣の限定された領域を赤外線で加熱するので、爆発残渣に付着している様々な物質から気化する夾雑成分を少なくでき、検査対象から発生する試料ガスの流れる方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、即ち、試料ガスの進行方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、試料ガス採取部、イオン源部、及び、試料ガス採取部からイオン源部に至る試料ガスの径路は、加熱されているので、爆発残渣(検査対象)に付着している様々な物質から発生する夾雑成分のガス、試料ガスが吸着することがなく、汚染を防止できるので、爆薬成分を高感度で検出でき、正確に危険物質の同定判別ができる。
【0016】
本発明の試料採取装置は、検査対象を収納する容器と、容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、導入管の中空部を排気する排気手段と、導入管の中空部と排気手段とを結ぶ配管(試料ガスを流出させる流出配管)と、この配管の途中に配置されるフィルタとを有し、排気手段により試料ガスを吸引してフィルタに試料ガスを捕集する。
【0017】
本発明の試料採取装置の別の構成では、検査対象を収納する容器と、容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、導入管の中空部から試料ガスを流出させる流出配管とを有し、導入管の中空部を排気手段により及び/又は導入管の中空部に清浄なガスを送流する手段により、流出配管に導く。
【0018】
本発明の試料採取装置の更に別の構成では、検査対象を収納して抵抗加熱により加熱する加熱部と、この加熱部の内部で、検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、加熱部の内部から試料ガスを流出させる流出配管とを有し、加熱部の内部を排気手段により及び/又は加熱部の内部に清浄なガスを送流する手段により、流出配管に導く。
【0019】
上記の本発明の各試料採取装置では、検査対象から発生する試料ガスの流れる方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、即ち、試料ガスの進行方向は、赤外線の照射方向と対向する方向を含み、流出配管の少なくとも一部(例えば、導入管の中空部と排気手段とを結ぶ流出配管の途中に配置されるフィルタの近傍までの、流出配管の一部の部分、加熱部の内部から試料ガスを流出させる流出配管の全ての部分)は、加熱されているので、爆発残渣(検査対象)に付着している様々な物質から発生する夾雑成分のガス、試料ガスが流出配管に吸着することがなく、汚染を防止できるので、爆薬成分を高感度で検出できように、試料ガスを採取ができる。従って、本発明の各試料採取装置により採取された試料ガスを、一般的に使用されている、質量分析装置、ガスクロマトグラフ、イオンモビリティ方式の分析装置(放射性同位体で試料ガスをイオン化した後、ドリフトチューブに導入してイオンの易動度を検出して分析する)等により、危険物質の同定判別ができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、危険物質の検出感度が高く操作性が優れた危険物探知装置及び危険物探知方法、及び、他の検査対象又は同じ検査対象の他の領域から発生した試料により汚染されることなく、注目する検査対象又は同じ検査対象の注目する領域から発生する試料を捕集できる、危険物探知装置及び危険物探知方法のための試料採取装置(あるいは、試料採取のための加熱装置及び試料採取のための加熱方法)を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下で説明する本発明の危険物探知装置は、可搬型の装置、据置型の装置の何れの形態でも使用可能である。本発明の危険物探知装置は、検査対象を収納する容器と、容器を乗せるステージと、容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源を具備する採取部と、試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、イオンの質量分析を行なう質量分析部と、質量分析の結果に基づいて、検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置と、排気部と、装置の各部のための電源部と、装置の各部の制御部と、装置の各部の制御条件を入力し、データ処理の結果を表示する操作パネルとを有する。本発明の実施例では、危険物質の検出感度が高い、操作性が優れた危険物探知装置を提供する。
【0022】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。以下の実施例の説明では、衣服、金属、プラスチック、ガラス、土砂、有機物等の、爆発事故の現場から採取された破片を、爆薬あるいは爆薬の分解生成物が付着した、被疑者の衣服、手袋、持ち物等から採取した破片を、代表的な検査対象としているが、この他、爆発性の物質、覚醒剤等の薬剤、人体に悪影響を与える化学物質、人体に悪影響を与える細菌、ウイルス等の微生物、その他、一般に、人体に悪影響を及ぼすと想定される物質を含む危険物を、検査対象とできる。
【0023】
図1は、本発明の実施例の危険物探知装置の主要構成を示すブロック図である。
容器に収納された爆発残渣(検査対象)は、採取部1の外側に置かれたステージ14に載置される。採取部1で、赤外線を発生する光源からの赤外線が爆発残渣の面に照射され、爆発残渣から爆薬由来の成分が加熱され気化され試料ガスが生成される。採取部1はイオン源部2に接続されている。気化した爆薬由来の成分(試料ガス)は、吸引ポンプ3によりイオン源部2に導入され、イオン化される。イオン源部2で生成したイオンは、質量分析部4で質量分析される。イオン源部2と質量分析部4は排気部10により排気されている。
【0024】
データ処理装置5の記憶手段には、複数の爆薬物質を同定するために必要な標準質量分析データ(m/e(イオンの質量数/イオンの価数)の値と相対強度)を含むデータベースが記憶されている。質量分析部4の質量分析計の検出器の出力信号は、データ処理装置5に送られ、記憶手段から読み出されたデータベースと爆薬成分由来のイオンの質量分析の結果とを照合する等のデータ処理がされて、爆薬物質の特定がなされる。
【0025】
特定された爆薬物質及び/又は質量分析の結果は、操作パネル7、あるいは、データ処理装置5の表示装置に表示される。装置の各部、装置の各部の動作に要する電源を供給する電源部8は、制御部9により制御される。装置の各部の動作条件は、操作パネル7から入力され、制御部9は、入力された動作条件に基づいて、装置の各部の動作を制御する。
【0026】
(第1の実施例)
図2は、本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の外観を示す斜視図である。第1の実施例では、採取部1は危険物探知装置本体と結合されて使用される。
採取部1、操作パネル7、ステージ14を除く各部は、装置の筐体21の内部に収納されている。筺体21には、扉55が設けてあり、筺体21内部の各部の点検が可能である。また、装置には3又は4個の車輪11が設けられており、容易に移動が可能である。尚、採取部1、操作パネル7、ステージ14の相対的配置は、適宜変更できる。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の構成を説明する一部断面を含む側面図である。図3において、断面は、針電極26の中心を通る断面であり、側面図は、Y軸の負方向から見た図である。
【0028】
図4は、本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の採取部の構成を説明する一部断面を含む側面図である。図4において、断面は、導入配管16の中心を通る断面であり、側面図は、Y軸の負方向から見た図である。
【0029】
採取部1は、ガラス窓13を保持した断面が円錐型の導入管12と、ガラス窓13に対向する位置に配置した赤外線を発生する光源から構成される。
採取部1は、半透明のカバー23で覆われ、断熱、遮光されており、スタンド37で筺体21に固定されている。赤外線を発生する光源として、150Wのハロゲンランプ20を用いている。ハロゲンランプ20は、基本的に、石英ガラス管と、タングステンフィラメントと、反射鏡から構成される。石英ガラス管内には、タングステンフィラメント、ハロゲンガスが封入される。タングステンフィラメントに電流が流れると、タングステンフィラメントが白熱し、光を放射する。放射される光は、主に0.7μmから2μmの波長帯に最大のエネルギー分布を有する赤外線である。放射された光は反射鏡で一方向に、所定の位置に集光するように反射される。
【0030】
ハロゲンランプ20は導入管12の上部にガラス窓13を介して支持されている。ガラス窓13には、赤外線領域の波長の透過率に優れたコバール製のガラスを使用している。第1の実施例では、ガラス窓13を使用しているが、ハロゲンランプ20を直接導入管12の上部に接続することで、ガラス窓13は不要となる。
【0031】
検査対象は、容器(例えば、ガラス製容器)15に収納され、容器15は導入管12の下部に配したステージ14に載置される。ステージ14はトップテーブル17と、移動台56で構成され、トップテーブル17は、図2に示す座標系のX、Y、Z軸方向に移動可能である。導入管12は、導入配管16を介してイオン源部2に接続されており、吸引ポンプ3によって吸引されている。
【0032】
導入管12、導入配管16には、熱源18、温度計19を配置する。ここでは、熱源18として、抵抗加熱を使用する。熱源18への電力の供給は、温度計19の出力信号に基づき、制御部9により制御され、導入管12、導入配管16の温度は、室温から250度の間の所望の温度に加熱、保持できる。導入管12、導入配管16を、熱源18、温度計19によって所望の温度に保持することで、爆発残渣を加熱して得られる爆薬成分や、その他の成分のガスが、導入管12、導入配管16の内壁に吸着することを防ぎ、また、吸着しているガスが脱離できる。
【0033】
採取部1の操作条件は、装置の各部に指定する動作条件の一部として、操作パネル7から入力され、採取部1を含む装置の各部は、操作パネル7から入力される動作条件に基づいて、制御部9により制御される。
【0034】
容器15に収納された検査対象の所望の領域は、導入管12の内部を通した赤外線で所望の面積でスポット状に照射され加熱される結果、検査対象の所望の領域から試料ガスが発生され、試料ガスは、赤外線の照射方向と逆方向に移動し導入管12の内部の一部を通り、即ち、試料ガスの移動経路は、赤外線の照射経路の一部を共有し、導入配管16に移動しイオン源部2に導かれる。
【0035】
以下、第1の実施例の危険物探知装置を用いる検査として、爆発残渣の検査手順について説明する。
操作者は、爆発残渣を容器15に乗せて、ステージ14のトップテーブル17に置いた後、ハロゲンランプ20に電力を供給しハロゲンランプを発光させる。ハロゲンランプ20の発光の開始と共に、爆発残渣の面が急速に加熱され、爆薬成分の気化が急速に促進される。ここで、供給した電力量は約100W、照射時間は15secであり、この時の爆発残渣の到達温度は約110度である。
【0036】
吸引ポンプ3により、気化した爆薬成分(試料ガス)は、導入配管16を通り、イオン源部2の、第1の細孔付電極29と対向電極27との間の空間に運ばれる。イオン源部2には針電極26が配置され、針電極26と対向電極27との間に高電圧が印加されている。針電極26の先端付近にコロナ放電が発生し、まず、窒素、酸素、水蒸気等がイオン化される。これらイオンは一次イオンと呼ばれる。一次イオンは、電界により対向電極27の側に移動する。第1の細孔付電極29と対向電極27との間の空間に運ばれてきた気化した爆薬成分は、対向電極27に設けられた開口部28を介して、針電極26が配置される空間に流れ、一次イオンと反応してイオン化される。大気中のコロナ放電を利用して1次イオンを生成し、この1次イオンとガスとの化学反応を利用してガス中の化学物質をイオン化する方法は、大気圧化学イオン化法と呼ばれている。
【0037】
イオン源部2には、熱源(図示せず)と温度計(図示せず)が設けられている。この熱源への電力の供給は、温度計の出力信号に基づき、制御部9により制御され、気化した爆薬成分がイオン源部2の内部に吸着しないように、イオン源部2は、常時、所望の温度に保持されている。
【0038】
対向電極27と第1の細孔付電極29との間には1kV程度の電位差があり、イオンは第1の細孔付電極29の方向に移動して、第1のイオン導入細孔30を介して差動排気部31に取り込まれる。差動排気部31では断熱膨張が起こり、イオンに溶媒分子等が付着する、いわゆるクラスタリングが起きる。クラスタリングを軽減するため、第1の細孔付電極29、第2の細孔付電極32をヒーター等で加熱するのが望ましい。
【0039】
大気圧化学イオン化法により生成された試料イオンは、第1の細孔付電極29の第1のイオン導入細孔30、排気系10により排気された差動排気部31、第2の細孔付電極32の第2のイオン導入細孔33を介して、質量分析部4に導入される。質量分析部4は、排気系10により排気されている。イオン源部2と質量分析部4は、1つの容器36を構成している。なお、対向電極27、第1の細孔付電極29、第2の細孔付電極32は、絶縁材57により保持されている。
【0040】
質量分析部4に導入された爆薬成分のイオンは、四重極質量分析計によって質量分析される。装置には、予め検出しようとする単数又は複数の危険物質を同定するために必要なm/eの値が設定されている。質量分析計の検出器の出力信号は、爆薬成分のイオンの質量分析結果(マススペクトル)として、所定の時間間隔で連続してデータ処理装置5に送られ、データ処理される。マススペクトルのデータ処理結果である、質量分析データ(m/eの値と相対強度)の計測値は、データベースに記憶される標準質量分析データと比較照合される。このデータベースは、爆薬物質の同定判断の基準となる信号強度の判定閾値データも含んでおり、データ処理装置5の記憶手段に記憶されている。
【0041】
質量分析データの計測値は記憶手段から読み出された標準質量分析データと照合され、ある爆薬物質が同定され、計測値の信号強度が、判定閾値よりも大きい時、同定された爆薬の種類と、データ処理された質量分析計の出力信号が操作者に知らされる。
【0042】
イオン源部2に送られる爆発残渣から気化する爆薬成分が多ければ多いほど、イオン源部2で生成される爆薬物質のイオン濃度は高くなるため、より強い信号強度が質量分析部4で得られる。従って、データ処理装置5に設定されている判定閾値より強い信号強度が得られ、爆薬物質の同定判断が容易となり、確実な爆薬物質の有無を検査できる。また、直接データ処理装置5から、所定の範囲で、横軸をm/e、縦軸を信号の強度として、計測されたマススペクトルをグラフ状に表示することも可能である。
【0043】
図5は、本発明の第1の実施例の危険物探知装置において、ダイナマイトが残留した爆発残渣にハロゲンランプを照射して計測されたエチレングリコールジニトロナイトライド(EGDN)のm/e=214の信号強度の時間変化を示す図である。図5において、記号Eはexpを示し、横軸はsecである。
【0044】
図5に示すように、ハロゲンランプ20の照射開始と殆ど同時に、エチレングリコールジニトロナイトライドの存在を示すm/e=214の信号強度が急激に増加している。その後、信号強度が低下したため、ステージ14のトップテーブル17を移動させ、ハロゲンランプ20から爆発残渣に照射する赤外線の照射位置を変えた結果、再び強い信号強度が得られている。爆発残渣に残留している爆薬成分は、爆発残渣の全ての表面に付着していることは少なく、爆発残渣のある一部分の面に付着している場合が多い。第1の実施例の危険物探知装置は、ステージ14のトップテーブル17を、操作パネル7に表示される質量分析の結果を見ながらX、Y軸に走査できるので、爆発残渣上に爆薬成分が残留している個所を探すことができる。
【0045】
第1の実施例では、爆発残渣の限定された面の領域を選択して、赤外線で加熱するので、爆発残渣に付着している様々な物質から気化する夾雑成分を少なくできる。従って、採取部1、イオン源部2の、夾雑成分による汚染を少なくできるので、爆薬成分の検出感度を向上できる。
また、爆発残渣を収納する容器15は加熱されないため、火傷などの問題が無く、迅速に容器15を交換可能であり、操作性に優れ、連続して複数個の爆発残渣の検査が可能となる。
【0046】
第1の実施例では、ハロゲンランプを使用して赤外線加熱しているが、レーザ照射により加熱しても良い。一般にレーザは、赤外線よりも集光性が良く、また、照射密度が大きい特徴がある。従って、収束したレーザによる加熱により、取捨する爆発残渣の表面位置を選択して、スポット的に加熱できる。
また、第1の実施例では、移動台56は手動で動かすが、制御部9からの制御信号で自動で動かすことも容易である。この場合、トップテーブル17に置いた容器15の全面の各位置(領域)を加熱するように、移動台56をX、Y軸で間欠的に動かす。
【0047】
トップテーブル17が停止した時の移動台56のX、Y軸の座標と、前述した方法で得られる爆発残渣表面からの爆薬成分の信号を、データ処理装置5に記憶する。操作パネル7には、データ処理装置5によって、検査が終了した各位置(領域)の爆薬成分の信号の強度を3次元的に表示させる。以上の操作を容器15の全面の各位置について自動で行う。この操作が終了すると、容器15上の爆発残渣から発生する爆薬成分の信号強度の分布を3次元で把握できる。
【0048】
なお、爆発残渣そのもの、被疑者の衣服、手袋、荷物等を拭き取った試験紙、試験布、フィルタ等の検査対象が小さい場合には、検査対象を小さい外径をもつ容器15に収納して、容器15を導入管12の下部の開口部から導入管12の内部に配置しても良い。
【0049】
(第2の実施例)
第1の実施例では、爆発残渣を容器15に収納しているが、予め耐熱性の採取袋に爆発残渣を採取することで、爆発残渣を容器15に収納することなく、採取袋に採取された爆発残渣を直接検査することも可能である。採取袋24は、密封性の高いシール機能を有した、例えば、内面がアルミ製の袋が望ましい。
【0050】
図6は、本発明の第2の実施例の危険物探知装置の採取部の構成を説明する一部断面を含む正面図であり、耐熱性の採取袋24を用いた危険物探知装置の構成例を示している。図6に示す断面は、図2に示すようにxyz座標をとる時、導入管12の中心を通るyz面に平行な断面であり、正面図は、X軸の負方向から見た図である。第1の実施例と同様に、第2の実施例では、採取部1は危険物探知装置本体と結合されて使用される。危険物探知装置本体は、図2に示す装置の構成と同様に可搬型にできる。
【0051】
導入管12の外周に断熱材からなる保持台22を磁石25の吸着力で結合している。保持台22は、保持台22に固定した円錐形状の固定リング34と、固定リング34の円錐形状部が一致するように内径側が円錐形状をした移動可能な押えリング35から構成している。
【0052】
保持台22への採取袋24の固定は、以下の手順で行う。保持台22を導入管12から取り外す。爆発残渣を入れた採取袋24を開口し、固定リング34の円錐形状部に被せた状態で、押えリング35を図6に示すz座標の負方向に移動する。採取袋24は、押えリング35と固定リング34の円錐形状部で挟み込まれるので、保持台22に保持される。この後、保持台22を磁石25の吸着力で導入管12と結合し、第1の実施例で説明したの同様の手順で、採取袋24内の残渣から爆薬成分を取り出す。
【0053】
第2の実施例によれば、採取袋24から爆発残渣を取り出すことなく、操作性良く採取袋24を交換して、連続で検査可能となる。また、検査後は、爆発残渣をそのまま採取袋24自体で密封、保管できるので、作業効率を高くできる。
採取袋24に収納された検査対象(爆発残渣)の所望の領域は、導入管12の内部を通した赤外線で所望の面積でスポット状に照射され加熱される結果、検査対象の所望の領域から試料ガスが発生され、試料ガスは、赤外線の照射方向と逆方向に移動し導入管12の内部の一部を通り、即ち、試料ガスの移動経路は赤外線の照射経路の一部を共有し、導入配管16に移動しイオン源部2に導かれる。
【0054】
高電力を必要とするハロゲンランプ20を付加した本発明の危険物探知装置の総消費電力を極力低く抑えることは、必要不可欠である。
図7は、本発明の第1の実施例の危険物探知装置による危険物探知の各工程での加熱電力の供給と温度変化の例を説明する図である。
図8は、本発明の第1の実施例の危険物探知装置による危険物探知の各工程での加熱電力の供給と温度変化の他の例を説明する図である。
【0055】
図7、図8は、ハロゲンランプ20と導入管12の熱源18への電力供給の制御の異なる例を示している。図7、図8に示す電力供給の制御に共通する特徴は、ハロゲンランプ20と導入管12の熱源18への電力の供給を同時に行なわない点にある。即ち、ハロゲンランプ20への電力の供給と、導入管12の熱源18への電力の供給とを交互に行なう点にある。
【0056】
図7、図8では、残渣導入工程、検査工程、残渣排出工程における、導入管12の熱源18への電力供給、ハロゲンランプ20への電力供給の状態と、各工程における導入管の温度変化を示している。残渣導入工程は、爆発残渣が収納された容器15、又は、爆発残渣が収納された採取袋24を、採取部1に導入する工程である。検査工程は、爆発残渣を加熱して爆薬成分を気化させて、気化した爆薬成分(試料ガス)をイオン化し質量分析して、質量分析計の出力信号に基づいて、爆薬成分の種類を同定する工程である。残渣排出工程は、採取部1から、容器15、又は、採取袋24を取り出す工程である。
【0057】
図7に示す検査工程では、導入管12の熱源18への電力供給をOFFとし、ハロゲンランプ20への電力供給をONとする。検査工程へ移る際に、一時的な大電力の消費を防止するため、導入管12の熱源18への電力供給をOFFとした後に、ハロゲンランプ20への電力供給をONとする。検査工程の終了と同時に、ハロゲンランプ20への電力供給をOFFとし、次いで、導入管12の熱源18への電力供給をONとする。
【0058】
図5に示した爆発残渣の検査結果が示すように、爆発残渣にハロゲンランプ20で赤外線を十数sec照射することにより、爆薬成分を高濃度で気化させ、イオン化できるので、ハロゲンランプ20を照射する極く短時間、導入管12の熱源18への電力の供給を停止しても、導入管12の温度は、不純物や爆薬物質等の吸着を誘発するような温度に低下することはない。
【0059】
第1の実施例の可搬型の危険物探知装置は、図7に示す電力供給の制御により、総電力量の増加を伴わずに、基本的に、国内外の任意の地域に移動して、移動先で稼動させて、危険物質の検知試験が可能である。各国毎に異なるが、一般的に得られる家庭用電力(日本国内では100V、15A)の枠の中で、危険物探知装置を稼動できる。設置場所を選ばず、また、別途、電源、電源の付属機器を携帯する必要がないので、より機動性を向上できる。
【0060】
図8では、ハロゲンランプ20への電力の供給を段階的に行なう。以下、図7に示す電力供給の制御との相違点について説明する。
図8に示す電力供給の制御の特徴は、検査工程で、ハロゲンランプ20への電力供給をステップ状に順次増加させている点、ハロゲンランプ20への電力供給開始前に、検査工程を開始する点にある。ステップ状にハロゲンランプ20へ電力を供給するので、爆発残渣の温度もステップ状に上昇できる。
【0061】
一般に、物質はその種類によって大気圧における蒸発温度が異なる。従って、爆発残渣の温度を順次ステップ状に上昇させれば、爆発残渣の温度に応じて爆発残渣から蒸発する危険物質が異なるため、検査工程で、爆発残渣が加熱されている温度毎に検知される危険物質を同定できる。また、検査対象が複数の危険物質を含む場合にも、図8に示す電力供給の制御では、異なる種類の危険物質を順次検出、特定することも可能となる。また、爆発残渣の温度を所望の温度に順次上昇できるので、導入管12の温度を不純物が吸着しない程度の低い温度に保持できる。従って、各種の蒸発温度をもつ危険物質を効率良く、確実に検出可能な危険物探知装置を構築できる。
【0062】
例えば、図8において、検査工程(1)では、ハロゲンランプ20に電力を供給しない状態で、第1回目の検査を行う。検査工程(1)では、導入管12の壁からの対流熱伝達、接触熱伝達によって爆発残渣の温度はゆるやかに上昇する。検査工程(1)で、蒸発温度の低い危険物質、例えば、ニトログリセリン等の有無を検査する。検査工程(1)に要する時間は、例えば、5sec〜10secである。
【0063】
検査工程(2)では、ハロゲンランプ20に電力を供給して、爆発残渣の面の温度を約150度に加熱する。検査工程(2)で、蒸発温度が比較的高い爆薬物質、例えば、トリニトロトルエン(TNT)等の有無を検査する。検査工程(3)では、ハロゲンランプ29への電力を更に増加して、爆発残渣の面の温度を約200度に加熱する。
検査工程(3)で、蒸発温度がより高い爆薬物質、例えば、トリメチレントリニトロアミン(RDX)等の有無を検査する。検査工程(2)、(3)に要する時間は、例えば、10sec〜20secである。
【0064】
図8に示す電力供給の制御の例では、検査工程で、温度を3段階に変化させているが、更に、複数の段階に温度を変化させて、爆発残渣に付着した複数種類の爆薬物質を検出できる。図8に示すように、検査工程を分割することにより、検査できる爆薬物質の数を増加できる。図8の例では、検査工程を3分割しているので、図7に示す一度の検査工程で検査できる3倍の数の爆薬物質を検査できる。また、各検査工程で検出した信号を、検査工程(3)の後に、データ処理装置5によって、検出した信号の組み合わせから、爆薬物質の種類を特定できるようになるので、更に多くの種類の爆薬物質の検査が可能となる。
【0065】
図8に示すように、検査工程を分割することにより、各検査工程でのデータ処理装置5の同定判断処理に要する時間を短縮できる。各検査工程の爆発残渣の表面温度で効率良く蒸発する爆薬物質を予め把握できるので、各検査工程では、データ処理装置5は、把握されている爆薬物質を同定するために必要な標準質量分析データを同定判断処理の対象とすれば良い。各検査工程で、同定判断処理を行う場合、想定される全ての爆薬物質に関する標準質量分析データを同定判断処理の対象とする必要はない。
図7、図8に示す電力供給の制御において、ハロゲンランプへの電力の供給を完全に停止せず、数W程度の低い待機電力の供給を継続する構成としてもよく、問題は生じない。
【0066】
(第3の実施例)
図9は、本発明の第3の実施例であり、可搬型の試料採取装置の外観を示す斜視図である。第3の実施例では、爆発残渣から爆薬物質を気化させて試料を採取する試料採取装置は、危険物探知装置本体とは独立して使用される。
図9では、電源部8’(図示せず)、制御部9’(図示せず)は、筐体21’内に収納されている。第3の実施例の試料採取装置の大きさは、幅35cm、奥行き30cm、高さ30cmであり、総重量は約5kgであり、取手6によって、容易に運搬が可能である。尚、採取部1’、操作パネル7’の相対的配置は、適宜変更できる。
【0067】
図10は、本発明の第3の実施例の試料採取装置の構成を説明する一部断面を含む正面図である。図10において、断面は、導入管12’の中心を通るyz軸に平行な断面であり、x軸の負方向から見た正面図である。
【0068】
導入管12’はフィルタ39を介して吸引ポンプ3’に接続している。採取部1’は、ガラス窓13’が設けられた円筒型の導入管12’と、ガラス窓13’に対向する位置に配置され赤外線を発生する光源とから構成される。採取部1’は、カバー23’で覆われ、断熱、遮光されている。赤外線を発生する光源として、150Wのハロゲンランプ20を用いた。ハロゲンランプ20は導入管12’の上部にガラス窓13’を介して支持している。ガラス窓13’には、赤外線領域の波長の透過率に優れたコバール製のガラスを使用している。
【0069】
第3の実施例では、ガラス窓13’を使用しているが、ハロゲンランプ20を直接導入管12’の上部に接続することで、ガラス窓13’は不要となる。導入管12’はスタンド37’で筺体21’に固定されている。導入管12’、導入配管16’には、熱源18’、温度計19’(図示せず)が配置されている。熱源18’による加熱により、導入管12’、導入配管16’の内壁への、気化した爆薬成分や汚染物質の吸着を防止し、あるいは、導入管12’、導入配管16’の内壁に吸着した爆薬成分や汚染物質の脱離を促進させる。ここでは、熱源18’として、抵抗加熱を使用する。熱源18’への電力の供給は、温度計19’(図示せず)の出力信号に基づき、制御部9’(図示せず)により制御され、導入管12’、導入配管16’の温度は、室温から250度の間の所望の任意温度に加熱、保持できる。導入管12’の端面には、フィルタ39を保持するフランジ38が取り付けられている。
【0070】
容器15に収納された検査対象(爆発残渣)の所望の領域は、導入管12’の内部を通した赤外線で所望の面積でスポット状に照射され加熱される結果、検査対象の所望の領域から試料ガスが発生され、試料ガスは、赤外線の照射方向と逆方向に移動し導入管12’の内部の一部を通り、即ち、試料ガスの移動経路は赤外線の照射経路の一部を共有し、導入配管16’に移動しフィルタ39に導かれ、フィルタ39に試料は捕集される。
【0071】
図11は、本発明の第3の実施例の試料採取装置の採取部1’のフィルタの保持方法を説明する一部断面を含む斜視図であり、図10に示すフランジ38の端面をY軸の負方向から見た斜視図である。フランジ38の端面にはフィルタ39の外縁が入るポケット40を設けてある。また、フランジ38の外周は断熱材から成る雄ねじ41が固定してあり、断熱性に優れた材質から成るナット42と噛み合う。ナット42はベアリング43を介してフランジ44と接続している。フランジ44の断面はフランジ38に設けたポケット40の内径より小さい外径のパイプ状の凸形状をしており、凸部の端面でフィルタ39と接する。
【0072】
また、フランジ44の一端は、伸縮自在なベローズ配管45と接続している。ベローズ配管45の他端は吸引ポンプ3’に接続している別のフランジ46と結合している。フランジ46の端面にはフランジ44の内径に接しフランジ46の移動する際のガイドの機能をする円筒状のガイド管47が接続している。
【0073】
採取部1’の操作条件は、各部に指定する動作条件の一部として、操作パネル7’から入力され、制御部9’(図示せず)により制御される。爆発残渣は、容器15に収納され、容器15は導入管12’の下部に置かれる。
なお、容器15と導入管12’の組合わせを、第1の実施例に関する図6で説明した、採取袋24と導入管12の組合わせを用いる構成とすることもできる。
【0074】
以下、第3の実施例の試料採取装置を用いる、爆発残渣から爆発残渣の採取手順ついて説明する。導入管12’の熱源18’への電力供給、ハロゲンランプ20への電力供給の状態、各工程における導入管の温度変化の制御は、第1の実施例に関して説明した図7、図8と同様になされる。但し、残渣導入工程は、爆発残渣が収納された容器15又は、爆発残渣が収納された採取袋24を、採取部1’に導入する工程である。検査工程は試料の捕集工程であり、爆発残渣を加熱して爆薬成分を気化させて、フィルタ(試験紙)39に試料を採取する工程である。残渣排出工程は、採取部1’から、容器15、又は、採取袋24を取り出す工程である。以下の説明では、容器15と導入管12’の組合わせを用いる構成を例にとって説明する。
【0075】
操作者は、フィルタ39をフランジ38のポケット40に挿入した後、ナット42を持ってフランジ44をガイド管47に沿ってフランジ38の方向に移動させる。ナット42を回転して、フランジ38に固定してある雄ねじ41と結合させる。この操作で、フィルタ39はフランジ44の凸部の端面でフランジ38に押し付けられる。また、ナット42はベアリング43でフランジ44に保持されているので、ナット42の回転は滑らかに行われる。
【0076】
使用するフィルタ39は、通気性のある清浄なフィルタであれば、材質は限定されない。第3の実施例では、繰り返し使用が可能なステンレススチール製の2000番のフィルタを使用している。
爆発残渣を入れた容器15を導入管12’の下部に置く。フランジ38とフランジ44を雄ねじ41とナット42で結合した後、操作パネル7’を操作し吸引ポンプ3’を駆動する。第3の実施例で使用した吸引ポンプ3’の吸入流量は、1600L/min(リットル/分)である。
【0077】
次に、ハロゲンランプ20に所定の電力を供給し、発光させる。第3の実施例では、照射時間は30秒、ハロゲンランプ20に供給した電力は120Wであり、この条件での爆発残渣の表面到達温度は120度であった。ハロゲンランプ20の照射と同期して、爆発残渣に残留している爆薬成分は気化し、気化した爆薬成分は、吸引ポンプ3’の動作によって形成されている、導入管12’の内部の気流に沿って、フィルタ39に運搬され、フィルタ39に衝突することで液化し捕集される。
【0078】
この後、ハロゲンランプ20の発光を停止し、前述したフィルタ39の挿入と逆の手順で、試料として爆薬成分が捕集されたフィルタ39を、フランジ38のポケット40から取り出し、別の清浄なフィルタ39を、フランジ38のポケット40に挿入する。取り出したフィルタ39は、密封できる保管容器に入れ保管するのが望ましい。保管容器には、ラベルが貼られ、爆発残渣の採取場所等の情報を記載する。
【0079】
採取後のフィルタ39は、イオン源部2にフィルタ加熱部49(図12)が結合された危険物検査装置で、試料が捕集されたフィルタ39から試料が気化、イオン化され、イオンの質量分析がなされ、爆薬物質の同定判断が、第1の実施例と同様にして行われる。
また、試料が捕集されたフィルタ39の少なくとも一部を、第1の実施例における容器15又は採取袋24に収納しても、第1の実施例と同様にして、爆薬物質の同定判断が可能であることは言うまでもない。
【0080】
(第4の実施例)
図12は、本発明の第4の実施例であり、イオン源部と結合したフィルタ加熱部49を有する危険物探知装置の構成の一例を説明する一部断面図である。図12において、断面は、イオン源部2に接続される導入配管52の中心を通る断面である。第4の実施例の危険物探知装置は、第1の実施例の構成と同様に、可搬型にできる。
【0081】
フィルタ39を、スライド式の容器48に置く。フィルタ39が置かれた容器48は、抵抗加熱されるフィルタ加熱部49に挿入される。容器48がフィルタ加熱部49の所定の位置に押し込まれたことをセンサー50が感知し、フィルタ加熱部49の上部に設けられたハロゲンランプ20が点灯する。ハロゲンランプ20からの赤外線により、フィルタ39は加熱され、フィルタ39に付着していた試料は気化する。加熱温度は200度以上が望ましい。フィルタ39から発生した試料ガスは、空気取り入れ管51から取り込まれた空気と一緒に、導入配管52を介してイオン源部2(図示せず)に送られる。
【0082】
空気取り入れ管51には、ホコリなどを除去するための除塵フィルタ53を設けると良い。また、フィルタ加熱部49は高温になるため、安全のため断熱を施したカバー54や取手6’を設けると良い。試料が捕集されたフィルタ39から試料が気化され、イオン源部2イオン化され、イオンの質量分析がなされ、爆薬物質の同定判断がなされる手順は、第1の実施例と同様にして行われるので、詳細な説明は省略する。
【0083】
なお、(a)試料が捕集された面を上にしてフィルタ39が収納された容器48を搭載する容器48を、フィルタ加熱部49に導入する残渣導入工程、(b)フィルタ39を加熱して爆薬成分を気化させて、気化した爆薬成分をイオン化し質量分析して、質量分析計の出力信号に基づいて、爆薬成分の種類を同定する検査工程、(c)フィルタ加熱部49から容器48を引出して、容器48を取り出す残渣排出工程、の各工程における、フィルタ加熱部49の熱源(図示せず)への電力供給、ハロゲンランプ20への電力供給の状態、各工程におけるフィルタ加熱部49の温度変化の制御は、第1の実施例に関する図7、図8の説明と同様にして行う。任意の場所で複数のフィルタ39に試料を採取した後、第4の実施例の危険物探知装置を用いて、操作性良くフィルタ39を順次交換して連続して、迅速に検査を実行できる。
【0084】
容器48に収納されたフィルタ(検査対象)39の所望の領域は、フィルタ加熱部49の内部を通した赤外線で所望の面積でスポット状に照射され加熱される結果、フィルタ39のの所望の領域から試料ガスが発生され、試料ガスは、赤外線の照射方向と逆方向に移動しフィルタ加熱部49の内部の一部を通り、即ち、試料ガスの移動経路は赤外線の照射経路の一部を共有し、導入配管52に移動しイオン源部2(図示せず)に導かれる。
【0085】
図13は、本発明の第4の実施例の危険物探知装置において得られたエチレングリコールジニトロナイトライド(EGDN)のm/e=214の信号強度の時間変化を示す図である。図13において、記号Eはexpを示し、横軸はsecである。図13に示す信号強度の時間変化は、第3の実施例の試料採取装置を用いて、ダイナマイトが残留した爆発残渣から採取したフィルタ39を、図12に示す構成のフィルタ加熱部19を用いて加熱し、測定して得られたものである。
【0086】
図13に示すように、ハロゲンランプ20の照射開始と殆ど同時に、エチレングリコールジニトロナイトライドの存在を示すm/e=214の信号強度が、急激に増加していることから、爆発残渣に残留していたダイナマイトが第3の実施例の試料採取装置によってフィルタ39に捕集されていることが明らかとなった。
【0087】
以上説明した各実施例では、四重極質量分析を使用しているが、質量分析計として、イオントラップ型質量分析計も使用できる。
また、検査対象に付着している試料(微粒子)を、赤外線により加熱気化させることにより、高濃度の試料蒸気を発生できるので、この蒸気をガスクロマトグラフで分離し、発光試薬と反応させて発光を検出することにより、危険物質の有無を検査する周知の化学発光方式の危険物探知装置にも、本発明を適用できる。また、この蒸気をイオン源部の内部の放射性同位体でイオン化した後、ドリフトチューブに導入してイオンの易動度を検出することにより、危険物質の有無を検査する周知のイオンモビリティ方式の危険物探知装置にも、本発明を適用できる。
【0088】
本発明の危険物探知装置によれば、消費電力を増加させることなく、各種の蒸発温度をもつ危険物質を効率良く、確実に検出可能な危険物探知装置を構築できる。また、大型の危険物探知装置本体を運搬することなく、広範囲に渡る現場から迅速に、検査対象から試料の採取が可能であり、危険物探知装置から離れた任意の場所で、複数のフィルタに採取した後、各フィルタに採取された試料を、イオン源部と結合したフィルタ加熱部49を有する危険物探知装置を用いて、順次フィルタを交換して計測を行うことにより、操作性良く効率良く短時間に詳細に検査可能となる。
【0089】
本発明の危険物探知装置によれば、複数種類の試料ガスを短時間で検査可能である他、任意の蒸発温度の危険物質を効率良く、確実に検出可能となる。
また、試料採取装置と危険物探知装置本体の組合わせにより、危険物探知装置本体から離れた任意の場所で試料採取装置により複数のフィルタに試料を採取した後、危険物探知装置本体により、操作性良くフィルタを順次交換して、効率良く高速に検査可能となる。
本発明の危険物探知装置は、可搬型の装置、据置型の装置の何れの形態でも使用可能であることは言うまでもない。
【0090】
以下、本発明の危険物探知装置の特徴を纏めておく。
(危険物探知装置−1)
検査対象を収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有する。
【0091】
(危険物探知装置2)
検査対象から試料を気化させた該試料が捕集されたフィルタを収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記フィルタの前記試料が捕集された面を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有する。
装置−1又は−2は、更に、以下の特徴を有する。
【0092】
(1)前記容器が上部が開口するガラス製の容器である。
(2)前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接する。
(3)前記試料ガスの前記イオン源部への導入方向は、前記赤外線の照射方向と反対方向を含む。
【0093】
(4)前記導入管の加熱と、前記赤外線による前記検査対象の加熱とを異なる期間で行なう。
(5)(4)の装置において、前記赤外線による前記検査対象の加熱温度を段階的に複数の温度で行なう。
【0094】
(6)前記容器を移動させる手段と、前記検査対象の面の選択された領域に収束させる手段とを有し、前記赤外線は、前記選択された領域を照射する。
(7)前記イオン源部は、電圧が印加されコロナ放電を発生する針電極を有し、前記コロナ放電を発生する領域への前記試料ガスの導入方向と、前記イオンの前記質量分析部への引き出し方向が対向する。
【0095】
以下、本発明の試料採取装置の特徴を纏めておく。
検査対象を収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記導入管の中空部を排気する排気手段と、前記導入管の中空部と前記排気手段とを結ぶ配管と、該配管の途中に配置されるフィルタとを有し、前記排気手段により前記試料ガスを吸引して前記フィルタに前記試料を捕集する。
【0096】
上記試料採取装置は、更に、以下の特徴を有する。
(1)前記容器が上部が開口するガラス製の容器である。
(2)前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接する。また、本発明の危険物探知装置−3の特徴を以下に纏めておく。
【0097】
上記の試料採取装置により、前記試料が捕集された前記フィルタと、前記フィルタを収納し加熱する加熱部と、前記加熱部の内部で前記フィルタを照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有する。
【0098】
以下、本発明の危険物探知方法の特徴を纏めておく。
(危険物探知方法−1)
検査対象を容器に収納する工程と、前記容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象に赤外線を照射し加熱して試料ガスを発生させる工程と、イオン源部で前記試料ガスのイオンを生成する工程と、質量分析部で前記イオンの質量分析を質量分析部で行なう工程と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理工程とを有することを特徴とする危険物探知方法。
【0099】
(危険物探知方法−2)
検査対象から試料を気化させた該試料が捕集されたフィルタを容器に収納する工程と、前記容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記フィルタの前記試料が捕集された面に赤外線を照射し加熱して試料ガスを発生させる工程と、イオン源部で前記試料ガスのイオンを生成する工程と、質量分析部で前記イオンの質量分析を行なう工程と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理工程とを有する。
【0100】
(危険物探知方法−3)
試料が捕集されたフィルタを収納し加熱する加熱部の内部で、前記フィルタを赤外線で照射し加熱して試料ガスを発生させる工程と、前記試料ガスをイオン源部に送流する工程と、前記イオン源部で前記試料ガスのイオンを生成する工程と、前記イオンを質量分析部に送流する工程と、前記質量分析部で前記イオンの質量分析を行なう工程と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理工程とを有する。
【0101】
方法−1又は−2は、更に、以下の特徴を有する。
(1)前記試料ガスの前記イオン源部への導入方向は、前記赤外線の照射方向と反対方向を含む。
(2)前記導入管の加熱と、前記赤外線による前記検査対象の加熱とを異なる期間で行なう。
(3)(2)において、前記赤外線による前記検査対象の加熱温度を段階的に複数の温度で行なう。
【0102】
(4)前記容器を移動させる工程と、前記検査対象の面の選択された領域に収束させる工程とを有し、前記赤外線は、前記選択された領域を照射する。
(5)前記イオン源部に配置された針電極に印加される電圧により発生するコロナ放電が発生される領域への前記試料ガスの導入方向と、前記イオンの前記質量分析部への引き出し方向が対向する。
【0103】
以下、本発明の試料採取方法−1の特徴を纏めておく。
検査対象を容器に収納する工程と、前記容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象を赤外線により照射し加熱して試料ガスを発生させるる工程と、排気手段により前記導入管の中空部を排気する工程と、前記排気手段の吸引により、前記導入管の中空部と前記排気手段とを結ぶ配管の途中に配置されるフィルタに前記試料を捕集する工程とを有する。
【0104】
試料採取方法−1は、更に、以下の特徴を有する。
(1)前記容器が上部が開口するガラス製の容器である。
(2)前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接する。以下、本発明の試料採取方法−2の特徴を纏めておく。
【0105】
検査対象を収納し加熱する加熱部の内部で、前記検査対象を赤外線により照射し加熱して試料ガスを発生させる工程と、排気手段により前記加熱部を排気する工程と、前記排気手段の吸引により、前記加熱部と前記排気手段とを結ぶ配管の途中に配置されるフィルタに前記試料を捕集する工程とを有する。
また、本発明の危険物探知方法−4の特徴を以下に纏めておく。
【0106】
試料採取方法−2により、前記試料が捕集された前記フィルタを加熱部に収納して加熱する工程と、前記加熱部の内部で前記フィルタを赤外線により照射し加熱して試料ガスを発生させる工程と、イオン源部で前記試料ガスのイオンを生成する工程と、質量分析部で前記イオンの質量分析を行なう工程と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理工程とを有する。
【0107】
最後に、本発明の実施例を説明する図面で各部を示す参照番号について纏めておく。
1、1’は採取部、2はイオン源部、3、3’は吸引ポンプ、4は質量分析部、5はデータ処理装置、6、6’は取手、7、7’は操作パネル、8、8’は電源部、9、9’は制御部、10は排気部、11は車輪、12、12’は導入管、13、13’はガラス窓、14はステージ、15、48は容器、16、16’は導入配管、17はトップテーブル、18、18’は熱源、19、19’は温度計、20はハロゲンランプ、21、21’は筐体、22は保持台、23、23’はカバー、24は採取袋、25は磁石、26は針電極、27は対向電極、28は開口部、29は第1の細孔付電極、30は第1のイオン導入細孔、31は差動排気部、32は第2の細孔付電極、33は第2のイオン導入細孔、34は固定リング、35は押えリング、36は容器、37、37’はスタンド、38、44、46はフランジ、39はフィルタ、40はポケット、41は雄ねじ、42はナット、43はベアリング、45はベローズ配管、47はガイド管、49はフィルタ加熱部、50はセンサー、51は空気取入れ管、52は導入配管、53は除塵フィルタ、55は扉、56は移動台、57は絶縁材である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、検出感度、操作性の高い危険物探知装置及び危険物探知方法、及び、他の検査対象又は同じ検査対象の他の領域から発生した試料により汚染されることなく、注目する検査対象又は同じ検査対象の注目する領域から発生する試料を捕集できる、危険物探知装置及び危険物探知方法のための試料採取装置及び試料採取方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施例の危険物探知装置の主要構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の外観を示す斜視図。
【図3】本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の構成を説明する一部断面を含む側面図。
【図4】本発明の第1の実施例の可搬型の危険物探知装置の採取部の構成を説明する一部断面を含む側面図。
【図5】本発明の第1の実施例の危険物探知装置において、ダイナマイトが残留した爆発残渣にハロゲンランプを照射して計測されたエチレングリコールジニトロナイトライド(EGDN)のm/e=214の信号強度の時間変化を示す図。
【図6】本発明の第2の実施例の危険物探知装置の採取部の構成を説明する一部断面を含む正面図。
【図7】本発明の第1の実施例の危険物探知装置による危険物探知の各工程での加熱電力の供給と温度変化の他の例を説明する図。
【図8】本発明の第1の実施例の危険物探知装置による危険物探知の各工程での加熱電力の供給と温度変化の他の例を説明する図。
【図9】本発明の第3の実施例であり、試料採取装置の外観を示す斜視図。
【図10】本発明の第3の実施例の試料採取装置の構成を説明する一部断面を含む正面図。
【図11】本発明の第3の実施例の試料採取装置の採取部のフィルタの保持方法を説明する一部断面を含む斜視図。
【図12】本発明の第4の実施例であり、イオン源部と結合したフィルタ加熱部を有する危険物探知装置の構成の一例を説明する一部断面図。
【図13】本発明の第4の実施例の危険物探知装置において得られたエチレングリコールジニトロナイトライド(EGDN)のm/e=214の信号強度の時間変化を示す図。
【符号の説明】
【0110】
1、1’…採取部、2…イオン源部、3、3’…吸引ポンプ、4…質量分析部、5…データ処理装置、6、6’…取手、7、7’…操作パネル、8、8’…電源部、9、9’…制御部、10…排気部、11…車輪、12、12’…導入管、13、13’…ガラス窓、14…ステージ、15、48…容器、16、16’…導入配管、17…トップテーブル、18、18’…熱源、19、19’…温度計、20…ハロゲンランプ、21、21’…筐体、22…保持台、23、23’…カバー、24…採取袋、25…磁石、26…針電極、27…対向電極、28…開口部、29…第1の細孔付電極、30…第1のイオン導入細孔、31…差動排気部、32…第2の細孔付電極、33…第2のイオン導入細孔、34…固定リング、35…押えリング、36…容器、37、37’…スタンド、38、44、46…フランジ、39…フィルタ、40…ポケット、41…雄ねじ、42…ナット、43…ベアリング、45…ベローズ配管、47…ガイド管、49…フィルタ加熱部、50…センサー、51…空気取入れ管、52…導入配管、53…除塵フィルタ、55…扉、56…移動台、57…絶縁材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記容器が上部が開口するガラス製の容器であることを特徴とする危険物探知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記試料ガスの前記イオン源部への導入方向は、前記赤外線の照射方向と反対方向を含むことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項5】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記導入管の加熱と、前記赤外線による前記検査対象の加熱とを異なる期間で行なうことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項6】
請求項5に記載の危険物探知装置において、前記赤外線による前記検査対象の加熱温度を段階的に複数の温度で行なうことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項7】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記容器を移動させる手段と、前記検査対象の面の選択された領域に収束させる手段とを有し、前記赤外線は、前記選択された領域を照射することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項8】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記イオン源部は、電圧が印加されコロナ放電を発生する針電極を有し、前記コロナ放電を発生する領域への前記試料ガスの導入方向と、前記イオンの前記質量分析部への引き出し方向が対向することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項9】
検査対象から試料を気化させた該試料が捕集されたフィルタを収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記フィルタの前記試料が捕集された面を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項10】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記容器が上部が開口するガラス製の容器であることを特徴とする危険物探知装置。
【請求項11】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項12】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記試料ガスの前記イオン源部への導入方向は、前記赤外線の照射方向と反対方向を含むことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項13】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記導入管の加熱と、前記赤外線による前記検査対象の加熱とを異なる期間で行なうことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項14】
請求項13に記載の危険物探知装置において、前記赤外線による前記検査対象の加熱温度を段階的に複数の温度で行なうことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項15】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記容器を移動させる手段と、前記検査対象の面の選択された領域に収束させる手段とを有し、前記赤外線は、前記選択された領域を照射することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項16】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記イオン源部は、電圧が印加されコロナ放電を発生する針電極を有し、前記コロナ放電を発生する領域への前記試料ガスの導入方向と、前記イオンの前記質量分析部への引き出し方向が対向することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項17】
検査対象を収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記導入管の中空部を排気する排気手段と、前記導入管の中空部と前記排気手段とを結ぶ配管と、該配管の途中に配置されるフィルタとを有し、前記排気手段により前記試料ガスを吸引して前記フィルタに前記試料を捕集することを特徴とする試料採取装置。
【請求項18】
請求項17に記載の試料採取装置において、前記容器が上部が開口するガラス製の容器であることを特徴とする試料採取装置。
【請求項19】
請求項17に記載の試料採取装置において、前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接することを特徴とする試料採取装置。
【請求項20】
請求項17に記載の試料採取装置により、前記試料が捕集された前記フィルタと、前記フィルタを収納して加熱する加熱部と、前記加熱部の内部で前記フィルタを照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項1】
検査対象を収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記容器が上部が開口するガラス製の容器であることを特徴とする危険物探知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記試料ガスの前記イオン源部への導入方向は、前記赤外線の照射方向と反対方向を含むことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項5】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記導入管の加熱と、前記赤外線による前記検査対象の加熱とを異なる期間で行なうことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項6】
請求項5に記載の危険物探知装置において、前記赤外線による前記検査対象の加熱温度を段階的に複数の温度で行なうことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項7】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記容器を移動させる手段と、前記検査対象の面の選択された領域に収束させる手段とを有し、前記赤外線は、前記選択された領域を照射することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項8】
請求項1に記載の危険物探知装置において、前記イオン源部は、電圧が印加されコロナ放電を発生する針電極を有し、前記コロナ放電を発生する領域への前記試料ガスの導入方向と、前記イオンの前記質量分析部への引き出し方向が対向することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項9】
検査対象から試料を気化させた該試料が捕集されたフィルタを収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記フィルタの前記試料が捕集された面を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項10】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記容器が上部が開口するガラス製の容器であることを特徴とする危険物探知装置。
【請求項11】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項12】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記試料ガスの前記イオン源部への導入方向は、前記赤外線の照射方向と反対方向を含むことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項13】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記導入管の加熱と、前記赤外線による前記検査対象の加熱とを異なる期間で行なうことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項14】
請求項13に記載の危険物探知装置において、前記赤外線による前記検査対象の加熱温度を段階的に複数の温度で行なうことを特徴とする危険物探知装置。
【請求項15】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記容器を移動させる手段と、前記検査対象の面の選択された領域に収束させる手段とを有し、前記赤外線は、前記選択された領域を照射することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項16】
請求項9に記載の危険物探知装置において、前記イオン源部は、電圧が印加されコロナ放電を発生する針電極を有し、前記コロナ放電を発生する領域への前記試料ガスの導入方向と、前記イオンの前記質量分析部への引き出し方向が対向することを特徴とする危険物探知装置。
【請求項17】
検査対象を収納する容器と、該容器に対向して配置され抵抗加熱により加熱された導入管の中空部を通して、前記検査対象を照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記導入管の中空部を排気する排気手段と、前記導入管の中空部と前記排気手段とを結ぶ配管と、該配管の途中に配置されるフィルタとを有し、前記排気手段により前記試料ガスを吸引して前記フィルタに前記試料を捕集することを特徴とする試料採取装置。
【請求項18】
請求項17に記載の試料採取装置において、前記容器が上部が開口するガラス製の容器であることを特徴とする試料採取装置。
【請求項19】
請求項17に記載の試料採取装置において、前記容器が耐熱性の袋であり、該袋の開口部が前記導入管の下方の外周面を覆うように配置され、前記袋の開口部の少なくとも一部が前記導入管の中空部に連接することを特徴とする試料採取装置。
【請求項20】
請求項17に記載の試料採取装置により、前記試料が捕集された前記フィルタと、前記フィルタを収納して加熱する加熱部と、前記加熱部の内部で前記フィルタを照射し加熱して試料ガスを発生させる赤外線を発生させる赤外線源と、前記試料ガスのイオンを生成するイオン源部と、前記イオンの質量分析を行なう質量分析部と、前記質量分析の結果に基づいて、前記検査対象に含まれる危険物質の有無及び/又は種類を判定するデータ処理装置とを有することを特徴とする危険物探知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−47161(P2006−47161A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230065(P2004−230065)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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