卵の分配整列装置
【課題】 ランダムな配向状態で供給される卵を所定列に分配整列する過程でロックが発生しても、人手に頼ることなく短時間でロックを解除することが可能な卵の分配整列装置を提供する。
【解決手段】 無端コンベア１は、バーコンベアで構成されており、前記無端コンベア１の無端チェーン１ｂには、摩擦力が異なるステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとが９本ずつ交互に支持されている。これにより、無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力を周期的に変化させることができ、短時間でロックを解除することが可能になる。
【解決手段】 無端コンベア１は、バーコンベアで構成されており、前記無端コンベア１の無端チェーン１ｂには、摩擦力が異なるステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとが９本ずつ交互に支持されている。これにより、無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力を周期的に変化させることができ、短時間でロックを解除することが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、供給コンベアによりランダムな配向状態で供給される卵を所定列に区分けし、前記卵を規則正しく整列させて下流側の処理装置へ送り込む卵の分配整列装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、供給コンベアによりランダムな配向状態で供給される卵を所定列に区分けし、前記卵を規則正しく整列させて下流側の処理装置へ送り込む卵の分配整列装置は公知である（例えば、特許文献１および特許文献２参照。）。
【０００３】
特許文献１に記載の卵の分配整列装置は、ほぼ水平に配置された平らな搬送面を有する少なくとも１つの無端コンベアからなり、少なくとも１つのコンベア上に各々１つの物品（卵）の幅を有する多数の規則的流れに物品（卵）の不規則的流れを配列する案内部材を設け、２つの対向案内部材と該案内部材間に延伸する搬送面の一部分とにより搬送溝を形成し、前記搬送溝には溝底部および溝壁部を有する断面形状を備え、溝底部を搬送面によって形成し、かつ、溝壁部を２つの対向案内部材によって形成した構成となっている。
【０００４】
また、特許文献２に記載の卵の分配整列装置は、卵を１個ずつ通過させる複数列の通過路を形成するため、無端コンベアに、搬送方向と平行に、かつ、交互に搬送方向の上流側端を前後させて前側区分板と後ろ側区分板とを設けるとともに、区分板の延長線上で前記上流側端に近接する位置に、前側区分板では搬送方向と直交して揺動し、後ろ側区分板では搬送方向の前後に揺動する揺動棒をそれぞれ卵に当接可能に設けた構成となっている。
【０００５】
したがって、前記特許文献１および特許文献２に記載されている卵の分配整列装置は、当該装置の卵を所定列に区分けする工程において、しばしば発生するロック（特定の列で卵が互いに絡み合って進行方向下流側に移動できずに渋滞する現象）等の卵の渋滞現象を未然に防止して、次工程の処理装置の稼働率を高めることを目的としたものである。
【０００６】
【特許文献１】特開平１０−１４７４２５号公報（第１−５頁（請求項１）、第１―２図）
【特許文献２】特許第２５６８４５１号公報（第１−３頁（請求項１）、第１―３図）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、前記特許文献１および特許文献２に記載されている卵の分配整列装置においては、前記ロックの発生頻度が低下するという効果はあるものの、前記ロックを完全に防止するまでには至っていなかった。そして、いったんロックが発生してしまうと、当該卵の分配整列装置を停止させて作業員の手によって前記ロックを解除しなければならなかった。
【０００８】
具体的に説明すると次のとおりである。卵には、搬送手段（無端コンベア）の搬送面と卵との接触抵抗、すなわち、搬送面と卵との間で生じる摩擦力並びに該搬送手段（無端コンベア）が搬送方向に所定速度で搬送するという作用によって所定の搬送力が伝達される。
【０００９】
一般的に、前記搬送手段（無端コンベア）の搬送部材は単一の部材で構成され、また、該搬送手段（無端コンベア）は一定の搬送速度で駆動しているので、前記搬送手段（無端コンベア）から卵に伝達される搬送力は一定である。
【００１０】
したがって、仮に、当該分配整列装置の卵を所定列に区分けする手段の近傍でロックが発生してしまうと、一定の搬送力で次々と送り込まれてくる後続の卵が前記ロックしている付近で滞留してしまい、前記卵を所定列に区分けする手段の近傍で滞留している多数の卵が組み合ったまま時間的に変化しない状態、すなわち、ロックの定常状態に陥ってしまう。その結果、進行方向下流側への卵の進行が妨げられる。
【００１１】
このような状態になると、前述のように、当該卵の分配整列装置を停止させて作業員の手によって前記ロックを解除しなければならなかった。
【００１２】
したがって、本発明は、前記問題点を解決することを課題としてなされたものであり、その目的とするところは、ランダムな配向状態で供給される卵を所定列に分配整列する過程でロックが発生しても、人手に頼ることなく短時間でロックを解除することが可能な卵の分配整列装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
前記課題を解決するために、請求項１に記載の卵の分配整列装置における発明では、ランダムに供給される卵を所定方向に搬送する無端コンベアと、前記無端コンベアの搬送面上に設けられ、ランダムに搬送される卵を所定列に区分けする区分け手段とから構成された卵の分配整列装置であって、前記無端コンベアの搬送面は、摩擦力の異なる複数の領域で構成されていることを特徴としたものである。
【００１４】
請求項２に記載の卵の分配整列装置における発明では、請求項１に記載の発明において、前記無端コンベアの摩擦力の異なる複数の領域は、該無端コンベアの周方向に、摩擦力の高い領域と摩擦力の低い領域とで構成されていることを特徴としたものである。
【００１５】
請求項３に記載の卵の分配整列装置における発明では、請求項１または請求項２に記載の発明において、前記無端コンベアは、該無端コンベアの周方向に、摩擦力の異なるバー部材とメッシュベルト部材とで構成されていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【００１６】
本発明にかかる卵の分配整列装置は、ランダムに供給される卵を所定方向に搬送する無端コンベアと、前記無端コンベアの搬送面上に設けられ、ランダムに搬送される卵を所定列に区分けする区分け手段とから構成された卵の分配整列装置であって、前記無端コンベアの搬送面は、摩擦力の異なる複数の領域で構成されている。
【００１７】
また、前記無端コンベアの摩擦力の異なる複数の領域は、該無端コンベアの周方向に、摩擦力の高い領域と摩擦力の低い領域とで構成されている。
【００１８】
したがって、無端コンベアから卵に伝達される搬送力を周期的に変化させることができるので、仮に区分け手段の特定の搬送溝近傍で卵が絡み合ってロックが形成されたとしても、短時間でロックを解除することができるという効果を奏する。
【００１９】
このように、ロックを短時間で解除することができるので、下流側の処理装置に卵を円滑に供給することができ、当該処理装置の稼働率を大幅に高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
つぎに、本発明にかかる卵の分配整列装置の実施形態を添付図面に従って説明する。
【実施例１】
【００２１】
図１は、本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔを説明する概略平面図であり、図２は概略側面図ある。
【００２２】
図１に示すように、この卵の分配整列装置Ｔは、大略、図示しない供給コンベアによりランダムな配向状態で供給されてくる卵をＹ方向に搬送する少なくとも１つの無端コンベア１と、前記無端コンベア１の排出端近傍の搬送面Ｆ上に設けられ、前記無端コンベア１にてランダムな状態で搬送される卵を所定列に区分けする区分け手段２と、前記無端コンベア１の搬送面Ｆ上の両側部に設けられたガイド部材３とから構成されている。
【００２３】
図２に示すように、前記無端コンベア１には、搬送方向（Ｙ方向）の前後に設けられた一対のスプロケット１ａと、前記スプロケット１ａに巻回され、搬送幅方向の両側に設けられた一対の無端チェーン１ｂとが備えられている。また、前記一対のスプロケット１ａのうち、一方のスプロケット１ａには前記無端コンベア１を駆動するためのモータ（図示せず）が減速機（図示せず）を介して連結されている。
【００２４】
図３は、前記無端コンベア１の詳細を説明する部分拡大図である。図３に示すように、前記一対の無端チェーン１ｂの間には断面が矩形状の多数のバーＢが支持されている。
【００２５】
そして、前記バーＢの両端面には当該バーＢを支持するための取り付け孔Ｈが形成されている。一方、無端チェーン１ｂのリンク部分Ｌには前記取り付け孔Ｈに挿入するためのピンＰが固着されている。これにより、バーＢは、前記一対の無端チェーン１ｂに確実に支持される。そして、卵は前記一対の無端チェーン１ｂに支持されたバーＢの上に載置された状態で搬送される。
【００２６】
図１および図２に示すように、前記無端コンベア１の排出端近傍の搬送面Ｆ上には、上流側からランダムな状態で搬送されてくる卵を所定列に区分けする区分け手段２が設けられている。
【００２７】
具体的には、無端コンベア１の搬送面Ｆ上に近接してＹ方向（搬送方向）に平行に区分け板２ａが所定間隔をもって設けられている。対向する区分け板２ａ間には、搬送溝２ｂが形成されており、この搬送溝２ｂは卵が１個ずつ通過できるようになっている。本実施例では、前記搬送溝２ｂが６本形成されている。
【００２８】
前記構成により、上流側からランダムな状態で搬送されてくる卵は、区分け手段２の作用により６列に区分けされるとともに、前記区分けされた卵が規則正しく整列されて下流側の処理装置（図示せず）に送り込まれる。
【００２９】
つぎに、本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔの特徴的な構成について説明する。図１に示すように、前記無端コンベア１の無端チェーン１ｂ（図示せず）には、摩擦力が異なる異種材質のバーＢが所定本数ずつ交互に支持されている。具体的には、ステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとが９本ずつ交互に支持されている。
【００３０】
このように、前記無端コンベア１は、摩擦力が異なるステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとが９本ずつ交互に連結された構成となっている。したがって、当該無端コンベア１から卵に伝達される搬送力を周期的に変化させることができるので、前述のロックの定常状態を短時間に解除することが可能になる。
【００３１】
これまでの説明では、無端チェーン１ｂに支持する異種材質のバーＢについて、隣接するバーＢとバーＢとの間隔を特に限定せずに説明してきたが、前記無端コンベア１を構成する前記異種材質のバーＢを次のように支持してもよい。例えば、ステンレス製のバーＢｍは、隣接するバーＢｍとバーＢｍとの間を所定距離離間させて無端チェーン１ｂに支持するようにし、樹脂製のバーＢｐは、隣接するバーＢｐを近接させて無端チェーン１ｂに支持するようにしてもよい。
【００３２】
また、例えば、ステンレス製のバーＢｍについては、隣接するバーＢｍとバーＢｍとのピッチをＬとし、樹脂製のバーＢｐについては、隣接するバーＢｐとバーＢｐとのピッチをＬ／２としてこれらを無端チェーン１ｂに支持するようにしてもよい。
【００３３】
このような構成とすることで、ステンレス製のバーＢｍと卵との間で生じる摩擦力と、樹脂製のバーＢｐと卵との間で生じる摩擦力との差がより顕著になる。したがって、卵に周期的に伝達される搬送力の差がより顕著になるので、前述のロックの定常状態をさらに短時間に解除することが可能になる。
【００３４】
つぎに、本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔ（以下、単に分配整列装置Ｔと記す。）の作動例について、図４を参照して説明する。（なお、前記図４は、説明に必要な個数の卵Ｅを表示するようにしている。）
【００３５】
図示しない供給コンベアにより、上流側から卵Ｅがランダムな配向状態で前記分配整列装置Ｔに送り込まれてくる。
【００３６】
そして、前記分配整列装置Ｔの無端コンベア１に移し替えられた卵Ｅには、無端コンベア１の搬送面Ｆと卵Ｅとの間で生じる摩擦力並びに該無端コンベア１がＹ方向（搬送方向）に所定速度Ｖで搬送する作用によって所定の搬送力が伝達され、前記卵ＥはＹ方向へランダムな状態で搬送される。
【００３７】
その後、前記無端コンベア１によりランダムな状態で搬送される卵Ｅは、該無端コンベア１の排出端近傍に設けられた区分け手段２により６列に区分けされ、下流側の処理装置（図示せず）に送り込まれる。
【００３８】
ここで、当該分配整列装置Ｔにおける区分け手段２の特定の列でロックが発生し、その後、ロックが解除されるまでの作用について説明する。
【００３９】
図４に示すように、例えば、前記無端コンベア１のステンレス製のバーＢｍ上に載置された状態でＹ方向に搬送されている卵Ｅが、前記区分け手段２の特定の搬送溝２ｂ近傍で絡み合ってロックし始めると、一定の搬送力で次々と送り込まれてくる後続の卵Ｅが２点鎖線で囲った領域Ａ付近で滞留してしまい、前記搬送溝２ｂ内への卵Ｅの進行が妨げられる。
【００４０】
しかしながら、その後、後続の樹脂製のバーＢｐが前記ロックの発生している領域Ａに差し掛かると、前記無端コンベア１の搬送面Ｆと卵Ｅとの接触抵抗、すなわち、前記搬送面Ｆと卵Ｅとの間で生じていた摩擦力が急激に変化することになる。
【００４１】
したがって、前記無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力が急激に変化する結果、ロックが解除されることになる。
【００４２】
その後、仮に、樹脂製のバーＢｐにて搬送されてきた卵Ｅが区分け手段２の特定の搬送溝２ｂ近傍でロックしたとしても、これまで説明してきたように、摩擦力の異なるステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとを９本ずつ交互に連結した無端コンベア１の構成により、卵Ｅに伝達する搬送力を周期的に変化させることができるので、前述のロックを短時間に解除することができる。
【００４３】
なお、本実施例の構成に加えて、無端コンベア１の搬送速度Ｖを周期的に変化するようにすれば、無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力をさらに変化させることができ、ロックをさらに短時間で解除できることが発明者の実験で確認されている。
【００４４】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔは、前記無端コンベア１の構成を、少なくとも搬送面Ｆ側において該無端コンベア１の周方向に摩擦力の高い部材と、摩擦力の低い部材とで形成するようにした。したがって、無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力を周期的に変化させることができるので、仮に区分け手段２の近傍でロックが発生しても、ロックの定常状態を短時間に解除することができる。
【００４５】
前記構成により、ロックを短時間で解除することができるので、下流側の処理装置に卵Ｅを円滑に供給することができ、当該処理装置の稼働率を大幅に高めることができる。
【００４６】
本実施例では、摩擦力が異なるステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとを９本ずつ交互に連結して無端コンベア１を構成した例を説明したが、本実施例に限定するものではなく、無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力を周期的に変化させることができれば、例えば、ステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとを６本ずつ交互に連結して無端コンベア１を構成してもよい。また、例えば、ステンレス製のバーＢｍを６本、樹脂製のバーＢｐを３本用意してこれらを交互に連結するという形式であってもよい。
【００４７】
さらに、例えば、ステンレス製のバーＢｍの本数と樹脂製のバーＢｐの本数とを適宜変更し、無端コンベア１の摩擦力の高い面と摩擦力の低い面との比率を変更するようにしてもよい。
【００４８】
なお、前記ステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとを１本ずつ交互に連結して無端コンベア１を構成すると、無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力を変化させる周期が極端に短くなり過ぎ、ロックを解除させることが困難になるという結果が発明者の実験で確認されている。
【００４９】
本実施例では、無端コンベア１の構成をバーコンベアで構成したが、本実施例に限定するものではなく、前記無端コンベア１をメッシュベルトコンベアで構成してもよい。具体的には、摩擦力の低い面を例えば、開口率が３８％のプラスチック樹脂製メッシュベルトで構成し、摩擦力の高い面を例えば、開口率が６０〜７０％のプラスチック樹脂製メッシュベルトで構成し、これらを交互に連結させたメッシュベルトコンベアであってもよい。
【００５０】
さらに、前記摩擦力の低いプラスチック樹脂製メッシュベルトあるいは摩擦力の高いプラスチック樹脂製メッシュベルトの長さを適宜変更し、無端コンベア１の摩擦力の高い面と摩擦力の低い面との比率を変更するようにしてもよい。
【００５１】
また、前記無端コンベア１は、該無端コンベア１の周方向に、所定本数のバーＢと所定長さのメッシュベルトとを交互に連結して構成された無端コンベア１であってもよい。
【００５２】
本実施例では、前記無端コンベア１の構成を、少なくとも搬送面Ｆ側において該無端コンベア１の周方向に摩擦力の高い部材と、摩擦力の低い部材とで形成する例を説明したが、本実施例に限定するものではなく、例えば、無端コンベア１の幅方向の半分を摩擦力の高い部材で形成し、残りの半分を摩擦力の低い部材で形成するとともに、前記摩擦力の高い面と摩擦力の低い面とが搬送面上で互いに千鳥配置となるよう形成した無端コンベア１であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【００５３】
【図１】本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔを説明する概略平面図である。
【図２】本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔを説明する概略側面図である。
【図３】無端コンベア１の詳細を説明する部分拡大図である。
【図４】ロックの発生から解除までのプロセスを説明する概略平面図である。
【符号の説明】
【００５４】
１ 無端コンベア、２ 区分け手段、３ ガイド部材、Ａ 領域、Ｂｍ ステンレス製のバー、 Ｂｐ 樹脂製のバー、Ｅ 卵
【技術分野】
【０００１】
本発明は、供給コンベアによりランダムな配向状態で供給される卵を所定列に区分けし、前記卵を規則正しく整列させて下流側の処理装置へ送り込む卵の分配整列装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、供給コンベアによりランダムな配向状態で供給される卵を所定列に区分けし、前記卵を規則正しく整列させて下流側の処理装置へ送り込む卵の分配整列装置は公知である（例えば、特許文献１および特許文献２参照。）。
【０００３】
特許文献１に記載の卵の分配整列装置は、ほぼ水平に配置された平らな搬送面を有する少なくとも１つの無端コンベアからなり、少なくとも１つのコンベア上に各々１つの物品（卵）の幅を有する多数の規則的流れに物品（卵）の不規則的流れを配列する案内部材を設け、２つの対向案内部材と該案内部材間に延伸する搬送面の一部分とにより搬送溝を形成し、前記搬送溝には溝底部および溝壁部を有する断面形状を備え、溝底部を搬送面によって形成し、かつ、溝壁部を２つの対向案内部材によって形成した構成となっている。
【０００４】
また、特許文献２に記載の卵の分配整列装置は、卵を１個ずつ通過させる複数列の通過路を形成するため、無端コンベアに、搬送方向と平行に、かつ、交互に搬送方向の上流側端を前後させて前側区分板と後ろ側区分板とを設けるとともに、区分板の延長線上で前記上流側端に近接する位置に、前側区分板では搬送方向と直交して揺動し、後ろ側区分板では搬送方向の前後に揺動する揺動棒をそれぞれ卵に当接可能に設けた構成となっている。
【０００５】
したがって、前記特許文献１および特許文献２に記載されている卵の分配整列装置は、当該装置の卵を所定列に区分けする工程において、しばしば発生するロック（特定の列で卵が互いに絡み合って進行方向下流側に移動できずに渋滞する現象）等の卵の渋滞現象を未然に防止して、次工程の処理装置の稼働率を高めることを目的としたものである。
【０００６】
【特許文献１】特開平１０−１４７４２５号公報（第１−５頁（請求項１）、第１―２図）
【特許文献２】特許第２５６８４５１号公報（第１−３頁（請求項１）、第１―３図）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、前記特許文献１および特許文献２に記載されている卵の分配整列装置においては、前記ロックの発生頻度が低下するという効果はあるものの、前記ロックを完全に防止するまでには至っていなかった。そして、いったんロックが発生してしまうと、当該卵の分配整列装置を停止させて作業員の手によって前記ロックを解除しなければならなかった。
【０００８】
具体的に説明すると次のとおりである。卵には、搬送手段（無端コンベア）の搬送面と卵との接触抵抗、すなわち、搬送面と卵との間で生じる摩擦力並びに該搬送手段（無端コンベア）が搬送方向に所定速度で搬送するという作用によって所定の搬送力が伝達される。
【０００９】
一般的に、前記搬送手段（無端コンベア）の搬送部材は単一の部材で構成され、また、該搬送手段（無端コンベア）は一定の搬送速度で駆動しているので、前記搬送手段（無端コンベア）から卵に伝達される搬送力は一定である。
【００１０】
したがって、仮に、当該分配整列装置の卵を所定列に区分けする手段の近傍でロックが発生してしまうと、一定の搬送力で次々と送り込まれてくる後続の卵が前記ロックしている付近で滞留してしまい、前記卵を所定列に区分けする手段の近傍で滞留している多数の卵が組み合ったまま時間的に変化しない状態、すなわち、ロックの定常状態に陥ってしまう。その結果、進行方向下流側への卵の進行が妨げられる。
【００１１】
このような状態になると、前述のように、当該卵の分配整列装置を停止させて作業員の手によって前記ロックを解除しなければならなかった。
【００１２】
したがって、本発明は、前記問題点を解決することを課題としてなされたものであり、その目的とするところは、ランダムな配向状態で供給される卵を所定列に分配整列する過程でロックが発生しても、人手に頼ることなく短時間でロックを解除することが可能な卵の分配整列装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
前記課題を解決するために、請求項１に記載の卵の分配整列装置における発明では、ランダムに供給される卵を所定方向に搬送する無端コンベアと、前記無端コンベアの搬送面上に設けられ、ランダムに搬送される卵を所定列に区分けする区分け手段とから構成された卵の分配整列装置であって、前記無端コンベアの搬送面は、摩擦力の異なる複数の領域で構成されていることを特徴としたものである。
【００１４】
請求項２に記載の卵の分配整列装置における発明では、請求項１に記載の発明において、前記無端コンベアの摩擦力の異なる複数の領域は、該無端コンベアの周方向に、摩擦力の高い領域と摩擦力の低い領域とで構成されていることを特徴としたものである。
【００１５】
請求項３に記載の卵の分配整列装置における発明では、請求項１または請求項２に記載の発明において、前記無端コンベアは、該無端コンベアの周方向に、摩擦力の異なるバー部材とメッシュベルト部材とで構成されていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【００１６】
本発明にかかる卵の分配整列装置は、ランダムに供給される卵を所定方向に搬送する無端コンベアと、前記無端コンベアの搬送面上に設けられ、ランダムに搬送される卵を所定列に区分けする区分け手段とから構成された卵の分配整列装置であって、前記無端コンベアの搬送面は、摩擦力の異なる複数の領域で構成されている。
【００１７】
また、前記無端コンベアの摩擦力の異なる複数の領域は、該無端コンベアの周方向に、摩擦力の高い領域と摩擦力の低い領域とで構成されている。
【００１８】
したがって、無端コンベアから卵に伝達される搬送力を周期的に変化させることができるので、仮に区分け手段の特定の搬送溝近傍で卵が絡み合ってロックが形成されたとしても、短時間でロックを解除することができるという効果を奏する。
【００１９】
このように、ロックを短時間で解除することができるので、下流側の処理装置に卵を円滑に供給することができ、当該処理装置の稼働率を大幅に高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
つぎに、本発明にかかる卵の分配整列装置の実施形態を添付図面に従って説明する。
【実施例１】
【００２１】
図１は、本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔを説明する概略平面図であり、図２は概略側面図ある。
【００２２】
図１に示すように、この卵の分配整列装置Ｔは、大略、図示しない供給コンベアによりランダムな配向状態で供給されてくる卵をＹ方向に搬送する少なくとも１つの無端コンベア１と、前記無端コンベア１の排出端近傍の搬送面Ｆ上に設けられ、前記無端コンベア１にてランダムな状態で搬送される卵を所定列に区分けする区分け手段２と、前記無端コンベア１の搬送面Ｆ上の両側部に設けられたガイド部材３とから構成されている。
【００２３】
図２に示すように、前記無端コンベア１には、搬送方向（Ｙ方向）の前後に設けられた一対のスプロケット１ａと、前記スプロケット１ａに巻回され、搬送幅方向の両側に設けられた一対の無端チェーン１ｂとが備えられている。また、前記一対のスプロケット１ａのうち、一方のスプロケット１ａには前記無端コンベア１を駆動するためのモータ（図示せず）が減速機（図示せず）を介して連結されている。
【００２４】
図３は、前記無端コンベア１の詳細を説明する部分拡大図である。図３に示すように、前記一対の無端チェーン１ｂの間には断面が矩形状の多数のバーＢが支持されている。
【００２５】
そして、前記バーＢの両端面には当該バーＢを支持するための取り付け孔Ｈが形成されている。一方、無端チェーン１ｂのリンク部分Ｌには前記取り付け孔Ｈに挿入するためのピンＰが固着されている。これにより、バーＢは、前記一対の無端チェーン１ｂに確実に支持される。そして、卵は前記一対の無端チェーン１ｂに支持されたバーＢの上に載置された状態で搬送される。
【００２６】
図１および図２に示すように、前記無端コンベア１の排出端近傍の搬送面Ｆ上には、上流側からランダムな状態で搬送されてくる卵を所定列に区分けする区分け手段２が設けられている。
【００２７】
具体的には、無端コンベア１の搬送面Ｆ上に近接してＹ方向（搬送方向）に平行に区分け板２ａが所定間隔をもって設けられている。対向する区分け板２ａ間には、搬送溝２ｂが形成されており、この搬送溝２ｂは卵が１個ずつ通過できるようになっている。本実施例では、前記搬送溝２ｂが６本形成されている。
【００２８】
前記構成により、上流側からランダムな状態で搬送されてくる卵は、区分け手段２の作用により６列に区分けされるとともに、前記区分けされた卵が規則正しく整列されて下流側の処理装置（図示せず）に送り込まれる。
【００２９】
つぎに、本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔの特徴的な構成について説明する。図１に示すように、前記無端コンベア１の無端チェーン１ｂ（図示せず）には、摩擦力が異なる異種材質のバーＢが所定本数ずつ交互に支持されている。具体的には、ステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとが９本ずつ交互に支持されている。
【００３０】
このように、前記無端コンベア１は、摩擦力が異なるステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとが９本ずつ交互に連結された構成となっている。したがって、当該無端コンベア１から卵に伝達される搬送力を周期的に変化させることができるので、前述のロックの定常状態を短時間に解除することが可能になる。
【００３１】
これまでの説明では、無端チェーン１ｂに支持する異種材質のバーＢについて、隣接するバーＢとバーＢとの間隔を特に限定せずに説明してきたが、前記無端コンベア１を構成する前記異種材質のバーＢを次のように支持してもよい。例えば、ステンレス製のバーＢｍは、隣接するバーＢｍとバーＢｍとの間を所定距離離間させて無端チェーン１ｂに支持するようにし、樹脂製のバーＢｐは、隣接するバーＢｐを近接させて無端チェーン１ｂに支持するようにしてもよい。
【００３２】
また、例えば、ステンレス製のバーＢｍについては、隣接するバーＢｍとバーＢｍとのピッチをＬとし、樹脂製のバーＢｐについては、隣接するバーＢｐとバーＢｐとのピッチをＬ／２としてこれらを無端チェーン１ｂに支持するようにしてもよい。
【００３３】
このような構成とすることで、ステンレス製のバーＢｍと卵との間で生じる摩擦力と、樹脂製のバーＢｐと卵との間で生じる摩擦力との差がより顕著になる。したがって、卵に周期的に伝達される搬送力の差がより顕著になるので、前述のロックの定常状態をさらに短時間に解除することが可能になる。
【００３４】
つぎに、本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔ（以下、単に分配整列装置Ｔと記す。）の作動例について、図４を参照して説明する。（なお、前記図４は、説明に必要な個数の卵Ｅを表示するようにしている。）
【００３５】
図示しない供給コンベアにより、上流側から卵Ｅがランダムな配向状態で前記分配整列装置Ｔに送り込まれてくる。
【００３６】
そして、前記分配整列装置Ｔの無端コンベア１に移し替えられた卵Ｅには、無端コンベア１の搬送面Ｆと卵Ｅとの間で生じる摩擦力並びに該無端コンベア１がＹ方向（搬送方向）に所定速度Ｖで搬送する作用によって所定の搬送力が伝達され、前記卵ＥはＹ方向へランダムな状態で搬送される。
【００３７】
その後、前記無端コンベア１によりランダムな状態で搬送される卵Ｅは、該無端コンベア１の排出端近傍に設けられた区分け手段２により６列に区分けされ、下流側の処理装置（図示せず）に送り込まれる。
【００３８】
ここで、当該分配整列装置Ｔにおける区分け手段２の特定の列でロックが発生し、その後、ロックが解除されるまでの作用について説明する。
【００３９】
図４に示すように、例えば、前記無端コンベア１のステンレス製のバーＢｍ上に載置された状態でＹ方向に搬送されている卵Ｅが、前記区分け手段２の特定の搬送溝２ｂ近傍で絡み合ってロックし始めると、一定の搬送力で次々と送り込まれてくる後続の卵Ｅが２点鎖線で囲った領域Ａ付近で滞留してしまい、前記搬送溝２ｂ内への卵Ｅの進行が妨げられる。
【００４０】
しかしながら、その後、後続の樹脂製のバーＢｐが前記ロックの発生している領域Ａに差し掛かると、前記無端コンベア１の搬送面Ｆと卵Ｅとの接触抵抗、すなわち、前記搬送面Ｆと卵Ｅとの間で生じていた摩擦力が急激に変化することになる。
【００４１】
したがって、前記無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力が急激に変化する結果、ロックが解除されることになる。
【００４２】
その後、仮に、樹脂製のバーＢｐにて搬送されてきた卵Ｅが区分け手段２の特定の搬送溝２ｂ近傍でロックしたとしても、これまで説明してきたように、摩擦力の異なるステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとを９本ずつ交互に連結した無端コンベア１の構成により、卵Ｅに伝達する搬送力を周期的に変化させることができるので、前述のロックを短時間に解除することができる。
【００４３】
なお、本実施例の構成に加えて、無端コンベア１の搬送速度Ｖを周期的に変化するようにすれば、無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力をさらに変化させることができ、ロックをさらに短時間で解除できることが発明者の実験で確認されている。
【００４４】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔは、前記無端コンベア１の構成を、少なくとも搬送面Ｆ側において該無端コンベア１の周方向に摩擦力の高い部材と、摩擦力の低い部材とで形成するようにした。したがって、無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力を周期的に変化させることができるので、仮に区分け手段２の近傍でロックが発生しても、ロックの定常状態を短時間に解除することができる。
【００４５】
前記構成により、ロックを短時間で解除することができるので、下流側の処理装置に卵Ｅを円滑に供給することができ、当該処理装置の稼働率を大幅に高めることができる。
【００４６】
本実施例では、摩擦力が異なるステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとを９本ずつ交互に連結して無端コンベア１を構成した例を説明したが、本実施例に限定するものではなく、無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力を周期的に変化させることができれば、例えば、ステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとを６本ずつ交互に連結して無端コンベア１を構成してもよい。また、例えば、ステンレス製のバーＢｍを６本、樹脂製のバーＢｐを３本用意してこれらを交互に連結するという形式であってもよい。
【００４７】
さらに、例えば、ステンレス製のバーＢｍの本数と樹脂製のバーＢｐの本数とを適宜変更し、無端コンベア１の摩擦力の高い面と摩擦力の低い面との比率を変更するようにしてもよい。
【００４８】
なお、前記ステンレス製のバーＢｍと樹脂製のバーＢｐとを１本ずつ交互に連結して無端コンベア１を構成すると、無端コンベア１から卵Ｅに伝達される搬送力を変化させる周期が極端に短くなり過ぎ、ロックを解除させることが困難になるという結果が発明者の実験で確認されている。
【００４９】
本実施例では、無端コンベア１の構成をバーコンベアで構成したが、本実施例に限定するものではなく、前記無端コンベア１をメッシュベルトコンベアで構成してもよい。具体的には、摩擦力の低い面を例えば、開口率が３８％のプラスチック樹脂製メッシュベルトで構成し、摩擦力の高い面を例えば、開口率が６０〜７０％のプラスチック樹脂製メッシュベルトで構成し、これらを交互に連結させたメッシュベルトコンベアであってもよい。
【００５０】
さらに、前記摩擦力の低いプラスチック樹脂製メッシュベルトあるいは摩擦力の高いプラスチック樹脂製メッシュベルトの長さを適宜変更し、無端コンベア１の摩擦力の高い面と摩擦力の低い面との比率を変更するようにしてもよい。
【００５１】
また、前記無端コンベア１は、該無端コンベア１の周方向に、所定本数のバーＢと所定長さのメッシュベルトとを交互に連結して構成された無端コンベア１であってもよい。
【００５２】
本実施例では、前記無端コンベア１の構成を、少なくとも搬送面Ｆ側において該無端コンベア１の周方向に摩擦力の高い部材と、摩擦力の低い部材とで形成する例を説明したが、本実施例に限定するものではなく、例えば、無端コンベア１の幅方向の半分を摩擦力の高い部材で形成し、残りの半分を摩擦力の低い部材で形成するとともに、前記摩擦力の高い面と摩擦力の低い面とが搬送面上で互いに千鳥配置となるよう形成した無端コンベア１であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【００５３】
【図１】本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔを説明する概略平面図である。
【図２】本発明にかかる卵の分配整列装置Ｔを説明する概略側面図である。
【図３】無端コンベア１の詳細を説明する部分拡大図である。
【図４】ロックの発生から解除までのプロセスを説明する概略平面図である。
【符号の説明】
【００５４】
１ 無端コンベア、２ 区分け手段、３ ガイド部材、Ａ 領域、Ｂｍ ステンレス製のバー、 Ｂｐ 樹脂製のバー、Ｅ 卵
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ランダムに供給される卵を所定方向に搬送する無端コンベアと、
前記無端コンベアの搬送面上に設けられ、ランダムに搬送される卵を所定列に区分けする区分け手段とから構成された卵の分配整列装置であって、
前記無端コンベアの搬送面は、摩擦力の異なる複数の領域で構成されていることを特徴とする卵の分配整列装置。
【請求項２】
前記無端コンベアの摩擦力の異なる複数の領域は、該無端コンベアの周方向に、摩擦力の高い領域と摩擦力の低い領域とで構成されていることを特徴とする請求項１に記載の卵の分配整列装置。
【請求項３】
前記無端コンベアは、該無端コンベアの周方向に、摩擦力の異なるバー部材とメッシュベルト部材とで構成されていることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の卵の分配整列装置。
【請求項１】
ランダムに供給される卵を所定方向に搬送する無端コンベアと、
前記無端コンベアの搬送面上に設けられ、ランダムに搬送される卵を所定列に区分けする区分け手段とから構成された卵の分配整列装置であって、
前記無端コンベアの搬送面は、摩擦力の異なる複数の領域で構成されていることを特徴とする卵の分配整列装置。
【請求項２】
前記無端コンベアの摩擦力の異なる複数の領域は、該無端コンベアの周方向に、摩擦力の高い領域と摩擦力の低い領域とで構成されていることを特徴とする請求項１に記載の卵の分配整列装置。
【請求項３】
前記無端コンベアは、該無端コンベアの周方向に、摩擦力の異なるバー部材とメッシュベルト部材とで構成されていることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の卵の分配整列装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００７−５５８０８（Ｐ２００７−５５８０８Ａ）
【公開日】平成１９年３月８日（２００７．３．８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−２４６４７７（Ｐ２００５−２４６４７７）
【出願日】平成１７年８月２６日（２００５．８．２６）
【出願人】（５９７０１７８１２）株式会社ナベル (56)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年３月８日（２００７．３．８）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年８月２６日（２００５．８．２６）
【出願人】（５９７０１７８１２）株式会社ナベル (56)
【Ｆターム（参考）】
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