説明

卵風味付与剤

【課題】卵の使用量を低減化した低コレステロール健康食品として、また、特に、卵アレルギーの人も安心して食することができる食品として用いることができる卵風味付与剤、及び該卵風味付与剤を添加した食品を提供する。
【解決手段】食品に、食品に対して0.001〜0.5重量%の酸化型グルタチオン、特に酸化型グルタチオンを1重量%以上含有した酵母エキス、を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化型グルタチオンを有効成分とする卵風味付与剤、及び該卵風味付与剤を含有した実質的に鶏卵を含まない食品に関し、卵を使用しなくても、卵様の風味を付与できる卵風味付与剤及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品アレルギー患者が著しく増加している。このアレルギーの症状として、例えば、鶏卵、牛乳、大豆等の摂取を刺激として、アトピー性皮膚炎、ぜんそく、鼻炎等が現れる場合がある。更に、鶏卵はコレステロール含有量が高いため、高血圧、動脈硬化等への影響も考えられ、過剰摂取を避ける傾向も見られる。鶏卵は、食味・風味の改善、凝固剤・膨張剤等として広く用いられているため、このアレルギーを抑制、低減化する方法、あるいは使用量を減少した食品、等が種々検討されている。例えば、アレルギーを抑制する方法として、グルコシダーゼ等を作用させて低アレルゲン化卵白とする方法等のアレルゲンを除去する方法が報告されている。しかしながら、これら方法は、タンパク質の低分子量化すること等に基づくために、栄養価が低下したり、風味を損なうという問題点があった。また、鶏卵の使用を避けるため、あるいは鶏卵の使用を低減化するため、他の代替物を使用した食品も数多く報告されているが、どうしても卵様の風味が減少したり風味がなくなる、という欠点があった。
【0003】
そこで、卵様の風味を向上させたり、卵様の風味をもたせる添加物が検討されてきた。
例えば、特許文献1には、シュクラロース、澱粉あるいは馬鈴薯由来のリン酸化糖、α結合ガラクトオリゴ糖、甘蔗由来のエキス・蒸留物、等が、卵を使用した飲食品の、卵様風味の向上、味質の改善等に用いられることが、また、特許文献2には、イソチオシアン酸エステルが卵を実質的に使用していない食品に卵様風味を与えることが、それぞれ開示されている。しかしながら、これらは、卵を必要としたり、風味が不十分であり、更に優れているものが求められていた。
【0004】
酸化型グルタチオンは、グルタチオンがシステイン残基でジスルフィド結合した酸化型であり、水分が多い環境でも安定であり、加熱処理にも比較的安定であるといわれている。グルタチオンを食品に応用した例は多いが酸化型グルタチオンを応用した例はほとんどなく、特許文献3には、酸化型グルタチオンを添加した飲料が記載されているが、その作用もグルタチオンの安定化に関するものであり、食品への応用あるいは酸化型グルタチオン自体が呈味機能を有するかどうか、等については何の開示もない。
【特許文献1】特開平8−196240号公報、特開2002−253141号公報、同2002−253164号公報、同2003−250486号公報、同2003−265135号公報、同2003−274890号公報
【特許文献2】特開平5−317004号公報
【特許文献3】特開平5−146279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、卵の使用量が少ないために卵風味に劣った、あるいは実質的に卵を使用しないために卵風味がない食品に、卵風味を有効に付与できる卵風味付与剤、及び、実質的に卵を使用しないにもかかわらず卵風味を有する食品、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究の結果、酸化型グルタチオンを用いることで課題が解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)酸化型グルタチオンを有効成分とする、卵風味付与剤、
(2)酸化型グルタチオンが、酸化型グルタチオンを1重量%以上含有する酵母エキスである、上記(1)記載の卵風味付与剤、
(3)酸化型グルタチオンが食品に対して0.001〜0.5重量%添加された、実質的に鶏卵を含まない食品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、卵を使用しなくても、卵風味が食品に付与されるため、卵の使用量を低減化した食品、あるいは卵アレルギーのために卵を使用できない食品、等に用いることができ、健康食品として、特に、卵アレルギーの人も安心して食することができる食品として、用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の卵風味付与剤の有効成分である酸化型グルタチオンは、グルタチオンのシステイン残基がジスルフィド結合をしたグルタチオンの酸化型であり、精製品、粗精製品のいずれも用いることができるが、酸化型グルタチオンを1重量%以上含有した酵母エキスが、アミノ酸、ペプチド、タンパク質等を含有しているために卵風味が強く、より好ましい。
【0009】
酸化型グルタチオンを1重量%以上含有した酵母エキスとしては、例えば、グルタチオンを含有した酵母エキスを、pH6〜11で溶存酸素でグルタチオンを酸化した酵母エキス(特開平5−146279号公報)、アスコルビン酸を酸化する酵素でグルタチオンを酸化した酵母エキス(特開平7−177896号公報)、あるいは酸化型グルタチオン高含有酵母を用いた酵母エキス(特開2003−284547号公報、特願2003−81686号)、等が挙げられるが、酸化型グルタチオンを1重量%以上含有した酵母を用いた酵母エキスが、製造が容易であり、特に好ましい。
【0010】
本発明の卵風味付与剤は、食品に添加される。
食品への添加量は、調整される食品によって異なるが、通常、酸化型グルタチオンとして、食品に対して0.001〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%である。添加量がこれ未満であると卵風味が十分でなく、一方、これを超えて用いると食品全体の風味を損なう場合があり、好ましくない。
用いられる食品としては、卵風味が生かされた食品であれば特に制限はなく、コンソメ等のスープ類、ドレッシング等の調味料類、スポンジケーキ、カステラ、クッキー等のケーキ・焼き菓子類、プリン、カスタードクリーム等の冷菓類、などを挙げることができる。これらの中でも、特に、卵アレルギーの人でも安心して食することができる、実質的に鶏卵を含まない食品、中でもベビーフード等が特に好ましい。
【0011】
これら食品は、本発明の卵風味付与剤と必要な原料(小麦粉、油脂、食塩、調味料等)をそれぞれの食品に応じて配合し、従来の方法と同様に調理することにより、得ることができる。
【実施例】
【0012】
以下、本発明に関わる実施例及び比較例を記載し、更に詳細に説明する。
製造例
YPD培地(グルコース2%、ポリペプトン2%、イーストエキス1%)を試験管に8ml分注し、121℃で15分間殺菌したものに、キャンディダ・ウチリス1453B5株を、1白金耳植菌し、24℃で72時間振とう培養し種菌とした。
次にYPD培地の1000mlを5L容の三角フラスコに分注し、121℃で25分間殺菌したものに前述の種菌を接種し、24℃で72時間、ロータリーシェーカーで振とう培養(250rpm)した。これを30L容発酵槽に植菌した。
培地としてはグルコース6.5%、燐酸一アンモニウム0.26%、硫酸アンモニウム0.15%、硫酸マグネシウム0.09%、塩化カリウム0.2%、硫酸マンガン5ppm、硫酸亜鉛5ppm、硫酸銅1ppm、硫酸第一鉄5ppmを用いバッチ培養を行った。培養条件は、培養温度24℃、通気量18L/分、攪拌400rpm、pH4.0にて行った。
培養の終了をグルコースが消失した時点から4時間後とした。
培養終了後、得られた培養液を遠心分離で集菌し、洗浄後、6Lの菌体懸濁液とし、この懸濁液を90℃2分間熱水抽出した。熱水抽出物を遠心分離して上長を集め、30gのデキストリン(日本コーンスターチ製)を加えて溶解後、ロータリーエバポレーターで約1Lに濃縮し、これをスプレードライヤーで噴霧乾燥し、GSSG含有酵母エキスを得た。この酵母エキスのGSSG含量は8%であった。
【0013】
実施例1
表1の組成からなる粉末スープを作製し、その粉末を160mlのお湯にとかし、パネラー10名により官能評価を実施した。10名のパネラーのうち9名は本発明の酸化型グルタチオン含有酵母エキスを使用したスープ(A)の方が卵風味が強く感じられるとの評価であった。
【0014】
【表1】

【0015】
実施例2
表2の配合からなるドレッシングを作製し、パネラー10名により官能評価を実施した。10名のパネラーのうち8名は本発明の酸化型グルタチオン含有酵母エキスを使用したスープ(C)の方が卵風味が強く感じられるとの評価であった。
【0016】
【表2】

【0017】
実施例3
表3の配合からなるケーキミックスを作製した。ボールに卵100g、牛乳100ml、溶かしたバター100gを入れ、泡立て器で混ぜ合わせ、表3のケーキミックス、バニラエッセンスを加え、生地が白っぽくなるまで混ぜ合わせる。紙を敷いた型に流し入れ、生地を平らにして、70℃で40分間焼きケーキを作製し、パネラー10名により官能評価を実施した。最も卵風味を強く感じたケーキを++++とし、卵風味が弱くなる順に+++、++、+と4段階で評価した。その結果を表4に示す。
【0018】
【表3】

【0019】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0020】
以上説明してきたように、本発明によれば、卵を使用しなくても、卵風味が食品に付与されるため、卵の使用量を低減化した低コレステロール健康食品として、また、特に、卵アレルギーの人も安心して食することができる食品として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化型グルタチオンを有効成分とする、卵風味付与剤。
【請求項2】
酸化型グルタチオンが、酸化型グルタチオンを1重量%以上含有する酵母エキスである、請求項1記載の卵風味付与剤。
【請求項3】
酸化型グルタチオンが食品に対して0.001〜0.5重量%添加された、実質的に鶏卵を含まない食品。

【公開番号】特開2006−94809(P2006−94809A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286586(P2004−286586)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】