説明

厚い誘電体発光ディスプレイに関する改良された厚膜誘電体構造物

厚膜誘電体層と共に使用される改良された平滑層、及び改良された複合材厚膜誘電体構造物が提供される。平滑層は欠陥量が減少した圧電性または強誘電体材料である。平滑層は有機金属前駆体化合物のゾルゲルまたは有機金属溶液に界面活性剤を添加することによって形成される。複合材厚膜誘電体構造物は、その上部にPZT平滑層を有する厚膜誘電体組成物と、界面活性剤を含む処理によって作製される平滑層とを含む。平滑層及び複合材厚膜誘電体構造物の双方は、エレクトロルミネッセントディスプレイに使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広く厚膜誘電体エレクトロルミネッセントディスプレイに関する。より詳細には、本発明は改良された新規複合材厚膜誘電体構造物、それらを作製する方法及びそのような構造を組み込んだ発光ディスプレイである。
【背景技術】
【0002】
厚膜誘電体エレクトロルミネッセントディスプレイは一般的にセラミック、ガラスセラミック、ガラスまたは他の耐熱性基板上に作製され、ガラス基板上に作製された薄膜エレクトロルミネッセント(TFEL)ディスプレイと比較して、作動電圧を減少する一方で、絶縁破壊に対する優れた耐性を提供する。ディスプレイを作製する工程では、第一に基板上に列電極の組を堆積することが必要とされる。次に、厚膜誘電体層が堆積され、その後、一つ以上の薄い発光膜及び一組の光学的に透明な柱状電極を間に挟んだ一つ以上の薄膜誘電体層を含む薄膜構造が堆積される。全体構造は、水分または他の大気中の不純物に起因する劣化から厚膜及び薄膜構造を保護する封止層で覆われる。
【0003】
このようなディスプレイで使われる複合材厚膜誘電体層は高い誘電率を有し、ディスプレイ動作電圧を著しく増加することなしに、ディスプレイにおいて比較的厚い誘電体層の使用を可能にする。これらの物質の絶縁破壊強度が比較的低いため、ディスプレイが作動する間の絶縁破壊を防ぐために、一般的に約10マイクロメータ以上の、比較的厚い誘電体層が使われる。一般的に、厚膜層は、数千の誘電率を有するニオブ酸鉛マグネシウム(PMN)またはマグネシウムチタン酸ジルコン酸鉛(PMN−PT)等の、焼結されたペロブスカイト圧電性または強誘電体材料を含む。薄膜発光構造の堆積に関して、厚膜構造を平滑にするため金属有機堆積(MOD)またはゾルゲル技術を用いて塗布された、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等の、互換性がある圧電性または強誘電体のより薄い上部層(overlayer)もあってよい。
【0004】
本出願人の米国特許第5,432,015号(この内容は全て参考としてここに組み込まれている)はエレクトロルミネッセントディスプレイにおいて使用するための厚膜誘電体複合材構造物を開示する。厚膜層は薄膜金電極が塗布された適当な基板上部に高温で焼結され、焼結された厚膜は十分高い密度を持ち、特に層の上部部分において残存する間隙はゾルゲルまたはMOD技術を用いて堆積された上部層によって満たされることが可能である。しかしながら、ゾルゲルまたはMOD前駆体材料が圧電性または強誘電体材料を形成するために焼成されるとき大きな体積減少を受けるために、上部層は焼結された材料の間隙を完全には満たさない。
【0005】
本出願人のPCT特許出願第WO00/70917(この内容は参考としてここに全て組み込まれている)には静水圧圧縮成形工程(isostatic pressing process)が開示され、それによると堆積された厚膜誘電体材料は焼結よりも前に静水圧圧縮成形工程を用いて機械的に圧縮される。これは、上部層が塗布されたとき、誘電率及び層の絶縁耐力がどちらも増大するように、圧膜材料の密度を増大して間隙を減少するという機能を提供する。絶縁破壊は誘電体層中のランダムな欠陥と結び付けられ、破壊確率はディスプレイ面積の増加に伴って増加する。従って、より大きな面積のディスプレイに関してこの傾向を打ち消すために、より高い公称絶縁耐力を有する層が、望まれる。
【0006】
本出願人の国際特許出願PCT CA02/01932(この内容は参考としてここに全て組み込まれている)は、厚膜誘電体層を作るために使われる、修正された厚膜ペーストの処方を開示する。この修正された厚膜誘電体層は、ガラス基板の使用を容易にするために650℃の低温で焼結されてよい。しかしながら、この修正された厚膜誘電体層は、やはり残存する間隙を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、絶縁破壊に関するサイトとして潜在的に働く欠陥(すなわち、間隙または孔)がより少ない改良された複合材厚膜誘電体構造物を提供すること、及びディスプレイ寿命の短縮につながる厚膜誘電体層と発光層との間の望ましくない反応にコンジットを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[発明の要約]
本発明は、複合材を形成する厚膜誘電体層上部に塗布される改良された平滑層である。改良された平滑層は、ベースの厚膜誘電体層内の表面欠陥の密度を結果として減少する。前記改良は、平滑層内部に界面活性剤を混合することによって成される。平滑層を形成する堆積溶液に界面活性剤を加えることは、下方の厚膜誘電体層のぬれを容易にして、結果として、厚膜誘電体層内に存在する間隙/孔(ここでは欠陥として参照される)の減少を容易にする。
【0009】
本発明は、改良された複合材厚膜誘電体構造物及びそのような構造を組み込んだエレクトロルミネッセントディスプレイも包含する。
【0010】
本発明の一つの局面は、厚膜誘電体層と共に使用される平滑層であり、前記平滑層は後から厚膜誘電体層に塗布される金属有機溶液またはゾルゲルに界面活性剤を添加することによって作製される。ある局面では、この塗布された平滑層は、その後圧電性または強誘電体の材料を形成するのに適切な温度において焼結(すなわち燃焼)される。さらなる局面では、圧電性または強誘電体の材料はジルコン酸チタン酸鉛(PZT)である。
【0011】
もう1つの本発明の局面は界面活性剤を含むジルコン酸チタン酸鉛(PZT)である。
【0012】
本発明の他の局面は、エレクトロルミネッセントディスプレイのための複合材厚膜誘電体層構造物であり、前記構造物は、以下を含む;
PZT平滑層をその上部に有する厚膜誘電体層であって、前記平滑層は1平方ミリメータあたり約100個未満のピット欠陥の面積密度を有する。ある局面では、PZT平滑層は鉛アセテート、チタンアルコキシド、ジルコンアルコキシド及びその後厚膜誘電体層に塗布される溶媒を含む金属有機溶液またはゾルゲルに界面活性剤を添加することによって作られ、最高約850℃の温度で焼結された。さらなる局面では、追加のPZT平滑層が提供され、そのような追加層は界面活性剤を含まない金属有機溶液として塗布される。
【0013】
本発明のさらにもう1つの局面は、エレクトロルミネッセントディスプレイのための焼結された複合材厚膜誘電体構造物であり、前記構造は;
−下部の厚膜誘電体層、及び
−上部の平滑層であって、前記平滑層は前記下部厚膜誘電体層内の欠陥を減少させ、前記平滑層は後から厚膜誘電体層に塗布され、焼結される金属有機溶液またはゾルゲルに界面活性剤を追加することによって作られる。
【0014】
なお、もう1つの本発明の局面によれば、エレクトロルミネッセントディスプレイのための焼結された複合材厚膜誘電体構造物であり、前記構造は、
(a)ニオブ酸鉛マグネシウム(PMN)、マグネシウムチタン酸ニオブ酸鉛(PMN−PT)、チタン酸鉛、チタン酸バリウム及び酸化鉛の一つ以上;酸化鉛、酸化ホウ素及び二酸化シリコンを含むガラスフリット組成物;を含む下部層の厚膜誘電体組成物;及び
(b)ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)の少なくとも一つの層を含む上部平滑層であって、直接(a)に隣接する前記少なくとも一つの層は1平方ミリメータあたり約100以下のピット欠陥の面積密度を有する。
【0015】
なお、もう1つの本発明の局面は、エレクトロルミネッセントディスプレイのための複合材厚膜誘電体構造物を作製する方法であり、前記方法は、
−厚膜誘電体層を、界面活性剤を含む金属有機溶液またはゾルゲルとして塗布される平滑層で覆う段階と、
−最高約850℃の温度で焼結する段階、とを含む。
【0016】
ある局面は、界面活性剤を含まない追加の平滑層が複合材厚膜誘電体構造物上部に積層され、焼結されてよい。他の実施形態では、平滑層の積層は金属有機堆積(MOD)またはゾルゲル技術によって行われてよい。
【0017】
本発明のさらに他の局面は、エレクトロルミネッセントディスプレイであり、前記ディスプレイは、
−基板、
−前記基板上に形成された複合材厚膜誘電体構造物、及び
−前記複合材厚膜誘電体構造物上に与えられた発光組成物、
を含む。ある局面では、複合材厚膜誘電体構造物は1平方ミリメータあたり約100未満のピット欠陥の面積密度を有する平滑層を含む。前記エレクトロルミネッセントディスプレイは、追加で薄い誘電体層を含む。
【0018】
本発明の他の特徴及び利点は、この後の詳細な記述から明白になるであろう。しかしながら、詳細な記述及び特定の例示は本発明の実施形態を示す一方で、説明のためだけに与えられるものであることは理解されるべきである。本発明の精神及び範囲を逸脱しない様々な変更及び修正が、前記詳細な記述から当業者には明白になるであろう。
【0019】
本発明は、ここで与えられる詳細な記述及び添付される図面からより完全に理解されるであろう。それらは説明のためだけに与えられ、本発明の意図する範囲を制限するものではない。
【発明の効果】
【0020】
[発明の詳細な説明]
本発明はエレクトロルミネッセントディスプレイに使用するための改良された複合材厚膜誘電体構造物である。改良された複合材厚膜誘電体構造物は、上部を新規平滑層に覆われた底部厚膜誘電体層を含む。前記新規平滑層は、以前に考えられた平滑層と比較してピット欠陥が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
厚膜誘電体層は一般的にスクリーン印刷され、焼成され、発光堆積物にとって適切なものとなるよう平滑層で覆われる。従来用いられた平滑層は厚膜表面の殆どを調製したが、しかしながら厚膜誘電体層中の通常とは異なる大きな間隙または孔(すなわち、欠陥)を適切に満たすことはなく、平滑層内にある程度の数の孔を残した。これらの孔の面積密度は、通常よりも大きな孔がより少数になるよう厚膜誘電体層を改良することによって減少され得るが、しかしこれは困難であり、厚膜層を作製する厚膜ペースト中の粒子に対する時間がかかり且つ高価な研磨、粒子から調製される厚膜ペーストの徹底的な均一化、及び/または厚膜誘電体層の焼結よりも前に行われ、非常に大きく且つ高価な装置を必要とする、極端に高い圧力における圧膜層の静水圧圧縮成形を含む。
【0022】
本発明は、厚膜誘電体層を覆うために使用される平滑層を形成する金属有機溶液またはゾルゲルに、適当な界面活性剤を組み込むことによってこれらの問題を克服する。これは、間隙または孔の面積密度を減少するという結果を達成するための低コスト且つ改良された方法である。界面活性剤は、間隙/孔の大部分を効果的に除去するため、厚膜誘電体層上部へのMOD溶液またはゾルゲルとして積層される平滑層の透過や相互作用を実質的に改良する。界面活性剤は塗布された膜とその上部に膜が塗布された基板との間の界面張力を変更するだけではなく、平滑層の高誘電率を損なうことがないよう、または平滑層が厚膜誘電体層全体に与える高い絶縁耐力の減少がないよう、高温で平滑層が焼結(すなわち、焼成)されるときに起こる高温での化学作用に影響を与えないものでなくてはならない。
【0023】
界面活性剤は硬化ポリマー層におけるそれらの使用に関しても知られている(U.S.5,306,756、5,874,516、U.S.5,891,825、6,406,803及び6,613,455)。界面活性剤は、ある特定の低誘電率セラミックスと共に使用すること(U.S.2003/0219906)、または電気回路の定義に関して高精細パターンでのそれらの堆積を容易にするために厚膜ペースト内部で使用すること(U.S.2003/02111406)が考えられたが、しかしながら、高誘電体厚膜組成物に関して平滑層内部での使用に関しては考えられてこなかった。また、高誘電体厚膜組成物と共に使用される平滑層内部の欠陥を矯正するための使用に関しても考えられてこなかった。
【0024】
本発明の改良された平滑層はゾル溶液として提供されてよく、結果として得られる複合材厚膜誘電体層表面の欠陥密度を大きく減少するMODプロセスを用いて厚膜誘電体層上部に塗布されてよい。他の実施形態では、ゾル溶液は当業者に知られるゾルゲル技術を用いて塗布されてよい。ゾルゲルまたはMOD層は、本出願人のWO00/70917及びPCT CA02/01932(それらの内容は全て参考としてここに組み込まれている)に記載されるように、ある局面はジルコン酸チタン酸鉛(PZT)平滑層等相溶性の圧電性または強誘電体の材料である高誘電率材料を提供するため処方される。簡単にいうと、もしもPZT平滑層が所望される場合、MOD溶液は、適当な溶媒中に鉛アセテート、チタンアルコキシド、及びジルコンアルコキシドを含む。界面活性剤は、この混合物に添加される。平滑層を堆積するために使用されるMOD溶液の挙動は、従来技術に記載されるアルミナ基板に関するものと比較してガラス基板に関するものは大きく異なる。これらの相違は、一部は異なる基板材料に関して使用される厚膜焼成温度に起因する。最適なMOD溶液粘度は、基板の材料が異なれば異なる。
【0025】
MOD溶液層から形成された平滑層はPZT以外の材料を含んでよい。平滑層材料に要求されるのは、組み合わされた層が、所望される平滑さ、絶縁耐力及び誘電率を有するように、厚膜誘電体層に化学的及び物理的に影響しないことである。他の適切な平滑層材料の例は、ランタンジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、タンタル酸バリウム及び酸化タンタルから選択されてよい。
【0026】
平滑層に使用される界面活性剤は、MOD溶液が、平滑層自身の高誘電率を実質的に損なうことなしに、または平滑層が全厚膜誘電体構造物に与える高絶縁耐力を減少することなしに平滑層を形成するため、高温で焼成されたときに起こる高温での化学作用に影響を与えない、どのような界面活性剤から選択されてよい。界面活性剤は、ある局面では非イオン性であり、MOD溶媒と完全に混和性であるべきで、ある局面ではそれはエチレングリコールである。界面活性剤は、約500℃で焼成されたとき、平滑層内部に固体残留物を残さないように完全に分解されるべきである。本発明に使用される適切な非イオン性界面活性剤は、これらに制限されないが、SurfynolTM61、ジメチルヘキシノール、SurfynolTM420、エトキシ化アセチレンジオール、TritonTMX−100、p−tert−オクチルフェノキシポリエチルアルコール及びそれらの混合物を含む。アニオン性界面活性剤もまた使用に適切であり、欠陥密度をある程度減少させるが、しかしながら非イオン性界面活性剤ほどは所望されない。適切なアニオン性界面活性剤は、これらに制限されないが、EmphosTMPS−200、アルキルエーテルリン酸塩、セチルトリメチルアンモニウム臭化物及びそれらの混合物を含む。本発明のある局面では、SurfynolTM61が使用される。平滑層のためのMOD溶液の使用に関する界面活性剤の量は、重量にして0.1%から5%の範囲であり、好ましくは重量にして1.0%から2.0%の範囲である。界面活性剤の範囲は重量にして0.1%から5%の間のどのサブレンジであってもよいことは、当業者には理解される。
【0027】
厚膜誘電体層を形成するために使用される厚膜ペーストの組成は、ニオブ酸鉛マグネシウム(PMN)、マグネシウムチタン酸ニオブ酸鉛(PMN−PT)、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、及び任意に連続的な焼結または熱処理段階の間粉末から蒸発した酸化鉛を補うための酸化鉛、から選択される一つ以上のペロブスカイト形成前駆体粉末を含む。それは酸化鉛、酸化ホウ素及び酸化シリコンを含み、融点が約550℃以下であるガラスフリット組成物を含む。また、溶媒を含むビークル(vehicle)、焼結よりも前に堆積された膜を合わせて保持するためのポリマーバインダー、及び任意に選択された堆積法を用いて所望される厚み及び均一性を有する膜の堆積を可能にするための粘度及び表面張力調整剤を含む。堆積法は、これらで制限はされないが、スクリーン印刷、ステンシリング、及びロールコーティングである。堆積に最適な粘度は選択される堆積法に依存する。
【0028】
本発明の制限を受けない実施形態では、ペロブスカイト形成前駆体粉末が異なる割合で厚膜誘電体組成物内に含まれてよい。主な層は、好ましくはPMNまたはPMT−PTであり、全厚膜誘電体組成物重量の約85及び95%の間で存在する。ペロブスカイト形成前駆物質粉末の残りの部分は以下の重量パーセンテージで存在してよい:チタン酸バリウム、最高約10%;酸化鉛、最高約8%;及びチタン酸鉛、最高約15%。ガラスフリット組成物は、酸化鉛、酸化ホウ素(B)及び酸化ケイ素(SiO)を含み、前もって均一化されるか、または混合された粉末として存在してよく、およそ以下の重量パーセンテージで存在してよい:酸化鉛約87から94%;酸化ホウ素、約6%から9%;及び二酸化ケイ素、最高約6%。酸化鉛、酸化ホウ素、及び二酸化ケイ素粉末は、約550℃以上で固溶体を形成する。ガラスフリット組成物の全重量はPMNまたはPMT−PTの重量の約1%から8%であってよい。
【0029】
ペロブスカイト形成前駆体粉末及びガラスフリット組成物粉末の粒子サイズは、平均して約1ミクロン以下で且つ約0.2ミクロン以上であってよいが、チタン酸バリウム粉末の約20から30%の粒子サイズは約50から100ナノメータであるべきであり、ある局面では、焼結された厚膜誘電体層内部に適切に分散されることを確実にするために最高約50ナノメータである。
【0030】
ビークルは、適切な堆積特性を提供するように処方され、焼結よりも前に堆積膜が加熱されるので、構成要素が焼かれてまたは揮発されて形成された、焼結された厚膜誘電体層の性質に重大な影響を及ぼさない。しかしながら、ビークルの性質は、ペースト内の粒子のサイズを減少するためのペーストの粉砕時間であるため、欠陥の無い層を堆積するのに重要である。欠陥が無いような印刷または堆積に最適なペーストを決定することにおいては、ペーストの固体液体比と同様に、粘度が重要なパラメータである。最適な粘度及び固体液体分率は、セラミックス基板上に堆積するときと比較してガラス材料基板上の堆積では異なるが、これはおそらくそれらのミクロ−ラフネスにおける差異によるものである。
【0031】
本発明の実施形態では、本発明の改良された複合材厚膜誘電体構造物は、まず厚膜を形成するためにPMNまたはPMN−PTベースペーストを堆積及び焼結し、その後金属有機堆積(MOD)工程を用いて堆積された界面活性剤を含む平滑PZT層を塗布することによって作製される。基板との接合部近傍におけるこの構造の組成は、最初に堆積されたPMNまたはPMN−PTに大部分由来し、その上部表面近傍の組成はPZTに大部分由来する。間に挟まれた領域では、これら二つの材料は混ざり合い、複合材料構造を形成するため反応する。誘電体層の誘電破壊強さは、層の詳細な化学及び物理構造に関連する。誘電破壊は一般的に層内の欠陥または異常において開始する。誘電破壊が起こる確率は存在する欠陥の数、結果的にその一部であるディスプレイの面積に依存する。それは、誘電体層のすぐ隣にある層の性質、層内部の応力分布及び環境、特に誘電体層を含むディスプレイが受ける湿度レベルによって影響されうる。本発明の一つの局面では、界面活性剤が内部に混合された平滑層を使用することによって、誘電体層内の欠陥密度を減少する。
【0032】
誘電体層の厚膜成分の処方において、考慮に入れるべき多くのトレードオフがある。焼結温度が低下したとき、焼結処理は完成には遠い状態であるので焼結層の間隙は増加する。本発明は、間隙、孔、クラック、ボイド等の最小の機械的欠陥無しに、またはそれらを伴って、適切な誘電破壊強度及び高誘電率を各々達成する、許容可能な程度に低いパイロクロア(pyrochlore)含量も有する複合材厚膜誘電体構造物の達成を可能にする。これは、複合材誘電体層の厚膜部分を形成するために使用される厚膜ペーストの化学組成及び物理的性質、及び、平滑層のための界面活性剤MOD溶液の化学組成及び物理的性質の賢明な選択によって達成される。
【0033】
本発明を用いて構成されたエレクトロルミネッセントデバイスの機械的な完全さは、基板の物理的性質、特に基板の熱膨張係数に依存する。熱膨張係数は約4×10−6から10×10−6/℃の範囲にあるべきで、ある局面では約5.5×10−6から9×10−6/℃の範囲である。もしも基板材料の熱膨張係数が複合材厚膜誘電体層に関連して非常に低い場合、それには亀裂が入る。
【0034】
複合材厚膜誘電体構造物はエレクトロルミネッセントディスプレイに組み込まれ、ガラス、またはそのようなディスプレイの内部のガラス/セラミックスまたはセラミックス基板上に提供され、ニオブ酸鉛マグネシウム、チタン酸鉛、及び/またはチタン酸バリウムを含んでよい。本発明は、ジルコニウムチタン酸鉛を含む平滑上部層を形成するため界面活性剤を含むMOD溶液を用いてコートされ、熱処理された、ニオブ酸鉛マグネシウムを含む複合材厚膜誘電体構造物に特に適用可能である。
【0035】
本発明の典型的な実施形態において、エレクトロルミネッセントディスプレイのための複合材厚膜誘電体構造物は、高誘電率を有する誘電体粉末を含むペーストを印刷、加圧及び焼結し、金属有機溶液(MOD)を堆積及び燃焼する工程によって形成された少なくとも一つの高誘電率材料の平滑層で覆うことによって形成された厚膜誘電体層を含み、MODを堆積及び焼成する工程は、PCT特許出願WO00/70917(その内容は参考として全てここに組み込まれている)に例示されるものであって、MOD溶液は、平滑層を形成するのに要求される、適切な溶媒に溶解された有機金属前駆体化合物、及び、MOD溶液が十分内部に浸透するのを容易にするためMOD溶液と焼結された厚膜誘電体層界面との表面張力を減少させる界面活性剤を含み、積層されたMOD層としての厚膜誘電体組成物は実質的に間隙のない平滑表面を有する複合材層を形成するため加熱され、燃焼される。
【0036】
本発明のもう一つの実施形態では、エレクトロルミネセンスディスプレイのための複合材厚膜誘電体構造物が剛直な基板上に構築され、その上部表面には1平方ミリメータあたり約100以下のピット欠陥の面積密度を有する平滑層を有する。ピット欠陥は、表面において0.5マイクロメータを超える深さの孔または陥没として定義される。
【0037】
本発明のさらに他の実施形態では、エレクトロルミネセンスディスプレイのための複合材厚膜誘電体構造物はニオブ酸鉛マグネシウム厚膜層を含み、前記厚膜層は高誘電率誘電体粉末を含むペーストを印刷、加圧及び焼結することによって形成され、ジルコン酸チタン酸鉛を含む平滑層を形成するのに必要とされる有機金属前駆体化合物と、及び、MOD溶液が十分内部に浸透するのを容易にするためMOD溶液と焼結された厚膜層との界面の表面張力を減少させる界面活性剤とを含むMOD溶液を堆積及び焼成する工程によって形成される少なくとも一つの高誘電率材料の平滑層で覆い、MOD層としての厚膜材料が加熱され焼成されることによって形成される。
【0038】
本発明のさらに他の実施形態では、エレクトロルミネセンスディスプレイのための複合材厚膜誘電体構造物はニオブ酸鉛マグネシウム厚膜層を含み、前記厚膜層は高誘電率誘電体粉末を含むペーストを印刷、加圧及び焼結することによって形成され、平滑層を形成するのに必要とされる有機金属前駆体化合物と、及びMOD溶液と厚膜誘電体層との間の界面表面張力を下げる界面活性剤とを含むMOD溶液を堆積及び焼成する工程によって形成される少なくとも一つのジルコン酸チタン酸鉛の平滑層で覆うことによって形成される。
【0039】
さらに他の実施形態では、エレクトロルミネッセントディスプレイのための複合材厚膜誘電体構造物はニオブ酸鉛マグネシウム厚膜層を含み、前記厚膜層は高誘電率誘電体粉末を含むペーストを印刷、加圧及び焼結することによって形成され、酢酸鉛三水和物、メトキシエタノール、ジルコニウムプロポキシド、チタンプロポキシド、エチレングリコール及びSurfynolTM61を含む界面活性剤を含むMOD溶液を堆積及び焼成する工程によって形成される化学式PbZrTi1−x0.5≦x≦0.55を有するジルコン酸チタン酸鉛の平滑層で覆うことによって形成される。
【0040】
一つ以上の平滑層が、基板上部に堆積された厚膜誘電体層の上部に積層されてよい。ある局面では、厚膜誘電体層に直接隣接する平滑層は界面活性剤を含む。続いて追加される平滑層は界面活性剤を必要としない。厚膜誘電体組成物に塗布された平滑層の全厚みは焼結後で最高約1500nm(当業者には理解されるように、このうちのどのような範囲でもよい)である。平滑層は所望の表面平滑度を得るために塗布され、表面平滑度はディスプレイのピクセルサイズのオーダーにおいて、組み立てられた複合材誘電体層の表面に沿った横方向の距離が0.5マイクロメータ未満である、不連続なピット欠陥のない状態での表面の起伏で定義される。所望される平滑度を達成するのに必要とされる層の数及び厚みは、当業者には理解されるように下部の厚膜層の厚み、多孔性及び表面粗さに依存する。本発明の改良された平滑層及び改良された複合材厚膜誘電体構造物は、本出願人のU.S.5,432,015(この内容は全てここに組み込まれている)における例示で記載されるようにエレクトロルミネセンスディスプレイ内部での使用に関する。
【0041】
上述の開示は本発明を全体的に記述する。以下の特定の例示を参照することによってより完全な理解が得られうる。これらの例示は単に説明を目的として記述され、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。状況が示唆するか、または好都合にするように、形態の変更及び等価物での置換が熟考される。特定の用語がここで使用されてきたけれども、そのような用語は説明的な意味を意図しており、制限の目的のためではない。
【0042】
〔例〕
[例1]
図1と図2の概略図に参照されるように、金の列電極2の組及び43センチの対角線のエレクトロルミネセンスディスプレイのための厚膜誘電体層3が、日本の大阪の日本電気硝子社から入手したPP8Cガラス基板1上に構築された。列電極及び厚誘電体層の堆積方法は、ここで記載された方法と共に、米国特許出願第09/326,777に開示された方法と同様であった。金電極層は、厚膜誘電体層の堆積よりも前に、基板上部に堆積された。厚膜誘電体層は、厚膜ペーストを印刷し、印刷された層を乾燥し、印刷された層を静水圧圧縮成形で高密度化し、最終的に高密度化された層を焼結することからなる、各々の層を堆積する工程を用いて、連続的に形成された二つの層で形成された。高密度化工程は、米国特許出願09/540,288(内容は参考のためにここに全て組み込まれている)で教示された冷静水圧圧縮成形を用いて実行された。焼結は最高温度700℃でベルト炉内で空気下で実行された。ベルト炉を通しての全輸送時間は75分であった。厚膜ペーストは、米国ニューヨーク州、Niagara Falls、Ferro社から購入した600グラムのPMN、18グラムの酸化鉛、20グラムのチタン酸鉛及び20グラムのチタン酸バリウムであって、これら全てにおいて典型的な粒子直径が約1マイクロメータであるものと、及び、追加の6グラムの米国ニューメキシコ州、アルバカーキ、TPLから購入した、約50ナノメータの粒子直径を有するチタン酸バリウムとを含む、ペロブスカイト形成粉末化前駆体材料で処方された。前駆体材料は、293gのアルファテルピネオール、5gのアセトン、4gのテキサス州ヒューストンのWitcoから購入したEmphos PS−220からなるスラリー内部に混合され、15gの米国ニューヨーク州、4511 Hyde Park Blvd. Niagara Falls Ferro Electoronic Materialsから購入したCF7589ガラスフリットを含む4gのジ−n−ブチルフタレートが加えられ、フリット粒子サイズが約1マイクロメータに減少するまで2時間粉砕された。前駆体材料を添加し、結果として得られるスラリーはさらに追加の2時間の間粉砕され、その後より大きな粒子を除去するため、10マイクロメータフィルターに通された。汚染を最小化するため、粉砕は3mmのジルコニアボールを用いて実行された。粘度を30から5000センチポアズの間に調整するため、フィルタ後のスラリーに、アルファテルピノール中にエチルセルロース1から3%を含むビークルを加えた。Microtrac粒子サイズ分析器で測定された、粉砕されたスラリー内の粒子(D50)の平均サイズは、0.63マイクロメータであった。
【0043】
厚膜層の堆積の後に、図2に示される平滑層4が、以下に示すように、調製されたMOD溶液を用いて堆積された。850グラムのメトキシエタノールが562グラムの酢酸鉛3水和物に加えられ、混合物は酢酸鉛が溶解するまでホットプレート上で攪拌された。溶液は蒸留されて200ミリリットルの液体が除かれ、90℃に冷却された。その後、322グラムのジルコニウムプロポキシドが加えられ、溶解させるために攪拌され、167グラムのチタンプロポキシド溶液が添加された。結果として得られた溶液は、溶液から540ミリメータの液体を除くため蒸留された。その後、256グラムの無水エチレングリコール及び23グラムのSurfynol61界面活性剤はろうとを通じて溶液に添加された。結果として得られる溶液は室温に冷却され、濾過された。溶液の粘度は、落球粘度計を用いて25センチポアズであることが測定され、Ultrospec 1000 UV/可視分光光度計を用いて、400ナノメータにおける溶液の光学的吸収が0.05から0.2%の範囲であることが測定され、水の含量はカールフィッシャー分析を用いて0.5から1.2%の範囲であることが測定された。MOD溶液は、前述のように厚膜誘電体層上部にスピン速度350rpmでスピン塗布されるまでアルゴン下で貯蔵された。コートされた基板は、ピーク温度700℃で75分間、空気下でベルト炉内において燃焼される。燃焼後、第二のMOD溶液が、第一の層に関して使用されたものと同様の、しかし界面活性剤は添加されていないMOD溶液を用いて調製される。この溶液の粘度は9cpsに調整され、完成した複合材厚膜誘電体構造物を形成するため、第一のMOD層と同じ条件下で第一のMOD層上部にスピンコートされた。二つのMODによって得られた層の厚さを合わせると、約1500ナノメータであった。
【0044】
完成した複合材誘電体層の表面は顕微鏡で調べられた。表面の顕微鏡写真は、図3に示される。表面において少数のピット形態の欠陥またはくぼみのみが、顕微鏡写真において明白である。ピット欠陥の面積密度は、1平方ミリメータ中約50個である。走査型電子顕微鏡を用いた、表面の同じ領域のより小さな部分をさらに分析することにより、これらの欠陥の約10%だけがMOD由来の平滑層を通って下部の厚膜層内部へと貫通するピットを示し、残りの90%が一般的に深さ0.5マイクロメータ未満の平滑層内のくぼみを示すことを明らかにした。
【0045】
[例2]
複合材厚膜誘電体構造物は、例1で記述された第一のMOD層のためのMOD溶液の代わりに、界面活性剤を含まず、粘度が15から40センチポアズのMOD溶液が使用されたことを除いて、例1で記述されたのと同様に基板上に構築された。
【0046】
完成した複合材誘電体層の表面は、顕微鏡で調べられた。表面の顕微鏡写真を図4に示す。欠陥の面積密度は1平方センチメータあたり3500欠陥である。図3に示された表面と比較して、MOD層の表面では顕微鏡写真では明らかに欠陥(ピット及びくぼみ)の数が多く、例1で記述された界面活性剤を含むMOD溶液は表面欠陥の数を大きく減少することを示している。図5は、平滑層を形成するMOD溶液内に界面活性剤を使用しない従来技術の方法による厚膜誘電体層のいくつかの0.15平方ミリメータ区画あたりの欠陥の数を、本発明の方法により作られた同面積の同様の厚膜誘電体層のいくつかの区画における欠陥の数と比較した柱状グラフを示す。前記区画は、例1及び2の43センチメータ対角の基板上に堆積された厚膜の比較可能な領域から選択される。界面活性剤が追加されたMOD溶液及び追加されないMOD溶液で作製されたパネルに関して選択される領域の適切な位置は図6に示されている。図6において番号を付けた位置は、図5の横軸上に示された位置に対応する。データからわかるように、本発明の方法を用いると、欠陥密度は約5倍減少される。さらに、基板上の異なる位置における欠陥密度の変化は実質的に減少し、このことは本発明が従来技術の方法で達成可能な表面品質の均一性を改善することを示す。
【0047】
発明の好ましい実施形態がここに詳細で記述されたけれども、発明の精神または添付されたクレームの範囲から逸脱せずに変更されてよいことは当業者によって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】エレクトロルミネッセントテストピクセルの概略図を示す。
【図2】本発明の厚膜誘電体層及び平滑層の位置を示す厚膜エレクトロルミネッセント要素の部分を示す。
【図3】本発明の方法を用いた厚膜誘電体層上の平滑層の表面の顕微鏡像を示す。
【図4】従来技術の方法を用いた厚膜誘電体層上の平滑層の表面の顕微鏡像を示す。
【図5】従来技術及び本発明の方法により作られた厚い誘電体層内の表面欠陥の面積密度を示す。
【図6】図5のサンプルエリアを示す43センチメーター対角パネルの上面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ガラス基板
2 金の列電極
3 厚膜誘電体層
4 平滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚膜誘電体層と共に用いられる平滑層であって、ピット欠陥の面積密度が1平方ミリメータあたりおよそ100未満である高誘電率材料を含む平滑層。
【請求項2】
前記高誘電率材料が、圧電材料または強誘電材料である、請求項1に記載の平滑層。
【請求項3】
前記圧電材料または強誘電材料が、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)である、請求項2に記載の平滑層。
【請求項4】
前記平滑層が、その後前記厚膜誘電体層上で焼結される金属有機溶液または有機金属前駆体化合物のゾルゲルへの界面活性剤の添加によって作られる、請求項1から3の何れか一項に記載の平滑層。
【請求項5】
前記界面活性剤が金属有機溶液に添加される、請求項4に記載の平滑層。
【請求項6】
前記界面活性剤が前記金属有機溶液の重量の約0.1%から約5%で与えられる、請求項5に記載の平滑層。
【請求項7】
前記界面活性剤が前記金属有機溶液の重量の約1.0%から約2%で与えられる、請求項6に記載の平滑層。
【請求項8】
前記圧電材料または強誘電材料の平滑層が、ランタンジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、タンタル酸バリウム及び酸化タンタルのうち一つ以上を含む、請求項2に記載の平滑層。
【請求項9】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群から選択される、請求項4から7の何れか一項に記載の平滑層。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤が、SurfynolTM61、ジメチルヘキシノール、SurfynolTM420、エトキシ化アセチレンジオール、TritonTMX−100、p−tert−オクチルフェノキシポリエチルアルコール及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の平滑層。
【請求項11】
前記非イオン性界面活性剤がSurfynolTM61である、請求項10に記載の平滑層。
【請求項12】
前記アニオン性界面活性剤が、EmphosTMPS−200、アルキルエーテルリン酸、臭化セチルトリメチルアンモニウム及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の平滑層。
【請求項13】
前記平滑層が最高約850℃の温度で焼結される、請求項4に記載の平滑層。
【請求項14】
前記平滑層が、前記厚膜誘電体層上に、最高約1500nmの全厚みを有する二つ以上の層として提供される、請求項1に記載の平滑層。
【請求項15】
エレクトロルミネッセントディスプレイのための焼結された複合材厚膜誘電体構造物であって、前記構造物は、
厚膜誘電体層と、
その上部の平滑層であって、ピット欠陥の面積密度が1平方ミリメータあたりおよそ100未満である高誘電率材料を含む平滑層と、
を含む、複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項16】
前記高誘電率材料が、圧電材料または強誘電材料である、請求項15に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項17】
前記圧電材料または強誘電材料が、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)である、請求項16に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項18】
前記平滑層が、ランタンジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、タンタル酸バリウム及び酸化タンタルからなる群から選択される、請求項15から17の何れか一項に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項19】
前記平滑層が、その後前記厚膜誘電体層上で焼結される金属有機溶液または有機金属前駆体化合物のゾルゲルへの界面活性剤の添加によって作られる、請求項15に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項20】
前記界面活性剤が前記金属有機溶液の重量の約0.1%から約5%で与えられる、請求項19に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項21】
前記界面活性剤が前記金属有機溶液の重量の約1.0%から約2%で与えられる、請求項20に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項22】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群から選択される、請求項19から21の何れか一項に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項23】
前記非イオン性界面活性剤が、SurfynolTM61、ジメチルヘキシノール、SurfynolTM420、エトキシ化アセチレンジオール、TritonTMX−100、p−tert−オクチルフェノキシポリエチルアルコール及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項22に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項24】
前記非イオン性界面活性剤がSurfynolTM61である、請求項22に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項25】
前記アニオン性界面活性剤が、EmphosTMPS−200、アルキルエーテルリン酸、臭化セチルトリメチルアンモニウム及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項22に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項26】
前記平滑層は、全厚みが最高約1500nmである二つ以上の層として提供される、請求項15から25の何れか一項に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項27】
前記厚膜誘電体層と直接隣接しない前記平滑層が、界面活性剤が添加されていない金属有機溶液または有機金属前駆体化合物のゾルゲルから作られる、請求項26に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項28】
前記厚膜誘電体層がペーストから焼結された組成物から形成され、前記ペーストは、
(a)ニオブ酸鉛マグネシウム(PMN)、マグネシウムチタン酸ニオブ酸鉛(PMN−PT)、チタン酸鉛、チタン酸バリウム及び酸化鉛のうち一つ以上;
(b)酸化鉛、酸化ホウ素及び酸化ケイ素を含むガラスフリット組成物;
(c)溶媒;
(d)ポリマーバインダー;
を含む、請求項15から27の何れか一項に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項29】
前記焼結温度が最高約850℃である、請求項28に記載の複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項30】
エレクトロルミネッセントディスプレイのための焼結された複合材厚膜誘電体構造物であって、前記構造物は、
(a)ニオブ酸鉛マグネシウム(PMN)、マグネシウムチタン酸ニオブ酸鉛(PMN−PT)、チタン酸鉛、チタン酸バリウム及び酸化鉛のうち一つ以上;酸化鉛、酸化ホウ素及び二酸化ケイ素を含むガラスフリット組成物;を含む厚膜誘電体組成物の下部層、
(b)少なくとも一つのジルコン酸チタン酸鉛(PZT)層を含む上部の平滑層であって、(a)と直接隣接する前記少なくとも一つの層におけるピット欠陥の面積密度が1平方ミリメータあたりおよそ100未満である平滑層、
を含む、焼結された複合材厚膜誘電体構造物。
【請求項31】
前記平滑層が、金属有機溶液または有機金属前駆体化合物のゾルゲルへの界面活性剤の添加によって形成される、請求項30に記載の構造物。
【請求項32】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群から選択される、請求項31に記載の構造物。
【請求項33】
前記非イオン性界面活性剤が、SurfynolTM61、ジメチルヘキシノール、SurfynolTM420、エトキシ化アセチレンジオール、TritonTMX−100、p−tert−オクチルフェノキシポリエチルアルコール及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の構造物。
【請求項34】
前記非イオン性界面活性剤がSurfynolTM61である、請求項33に記載の構造物。
【請求項35】
前記アニオン性界面活性剤が、EmphosTMPS−200、アルキルエーテルリン酸、臭化セチルトリメチルアンモニウム及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の構造物。
【請求項36】
エレクトロルミネッセントディスプレイのための複合材厚膜誘電体構造物を作製する方法であって、前記方法は、
高誘電率材料の平滑層を形成するため界面活性剤を含む金属有機溶液で厚膜誘電体層を被覆すること、及び、
最高約850℃の温度で焼結すること、
を含む方法。
【請求項37】
前記金属有機溶液は適切な溶媒中に酢酸鉛、チタンアルコキシド及びジルコニウムアルコキシドを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記高誘電率材料はジルコン酸チタン酸鉛(PZT)である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記平滑層はピット欠陥の面積密度が1平方ミリメータあたりおよそ100未満である、請求項36、37または38に記載の方法。
【請求項40】
基板と、
前記基板上に形成された請求項15から35のうち何れか一項に記載された複合材厚膜誘電体構造物と、
前記複合材厚膜誘電体構造物上に形成された発光組成物と、
を含むエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項41】
前記複合材厚膜誘電体構造物が、ピット欠陥の面積密度が1平方ミリメータあたりおよそ100未満である平滑層を含む、請求項40に記載のディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−533068(P2007−533068A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506627(P2007−506627)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000538
【国際公開番号】WO2005/099314
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(505089913)アイファイアー・テクノロジー・コープ (18)
【Fターム(参考)】