説明

厚膜パターン膜剥離装置

【課題】高い生産性で、高精度、高アスペクト比の厚膜パターンを与える装置を提供すること。
【解決手段】基板1上に樹脂と無機粉体を含む厚膜2を形成する工程、該厚膜表面にレジストパターン3を形成する工程、レジスト膜の存在しない領域に前記厚膜の樹脂を溶解若しくは膨潤させる剥離液5を付与して厚膜をパターン状に剥離除去する工程、及び形成された厚膜パターンを焼成する工程を含む厚膜パターンの形成方法に使用する膜剥離装置であって、上記被パターン化基板の搬送装置と、該基板に形成された上記樹脂層をパターン状に剥離するための剥離液5を有する液槽と、該剥離液5を噴射する噴射装置と噴射装置の上方に設けられた基板支持体とからなり、上記基板支持体が少なくともその頂部がフレキシブルな材料から構成されていることを特徴とする膜剥離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、液晶表示装置(LCD)、蛍光表示装置、混成集積回路等の製造過程において、基板上に導電性若しくは絶縁性の厚膜パターンの形成に使用する膜剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の如き厚膜パターンの形成方法としては、ガラスやセラミック等の基板上に導体や絶縁体用のペーストをスクリーン印刷によりパターン状に塗布した後、焼成工程を経て基板に密着した厚膜パターンを形成する方法が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の方法において、パターンを厚く形成する場合、例えば、線幅100μm、高さ100μm程度のパターンを形成する場合には、スクリーン印刷による複数回の塗布が必要であり、生産性に問題があった。又、繰り返し印刷により、スクリーン版の伸び等の理由により重ね刷するごとに印刷位置が微妙にずれ、その結果パターンの形状が悪くなるという問題があった。更には使用するペーストが流動性を有するために、印刷パターンの裾が拡がってしまい、高アスペクト比の厚膜パターンを形成することが困難であった。
又、単層の印刷の場合であっても大面積のパターンを形成する場合には、スクリーン版の伸びによりトータルピッチのずれや周辺部の歪み等が生じ、他のパターンとの位置合わせが困難になるという問題があった。
従って、本発明の目的は、大面積パターンにおいても、高い生産性で、高精度、高アスペクト比の厚膜パターンを与える装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、基板上に樹脂と無機粉体を含む厚膜を形成する工程、該厚膜表面にレジストパターンを形成する工程、レジスト膜の存在しない領域に前記厚膜の樹脂を溶解若しくは膨潤させる剥離液を付与して厚膜をパターン状に剥離除去する工程、及び形成された厚膜パターンを焼成する工程を含む厚膜パターンの形成方法に使用する膜剥離装置であって、上記被パターン化基板の搬送装置と、該基板に形成された上記樹脂層をパターン状に剥離するための剥離液を有する液槽と、該剥離液を噴射する噴射装置と噴射装置の上方に設けられた基板支持体とからなり、上記基板支持体が少なくともその頂部がフレキシブルな材料から構成されていることを特徴とする膜剥離装置である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、印刷方法において生じる多くの欠点が容易に解決され、高い生産性で、高精度且つ高アスペクト比の厚膜パターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に好ましい実施の形態であるプラズマディスプレイパネル(PDP)の背面板の形成に本発明の装置を適用する例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
一般にPDPは、2枚の対向するガラス基板にそれぞれ規則的に配列した一対の電極を設け、その間にNe等を主体とするガスを封入した構造になっている。そして、これらの電極間に電圧を印加し、電極周辺の微小なセル内で放電を発生させることにより、各セルを発光させて表示を行なうようにしている。情報表示するためには、規則的に並んだセルを選択的に放電発光させる。このPDPには、電極が放電空間に露出している直流型(DC型)と絶縁層で覆われている交流型(AC型)の2タイプがあり、双方とも表示機能や駆動方法の違いによって、更にリフレッシュ駆動方式とメモリー駆動方式に分類される。
【0007】
図3は、AC型PDPの一構成例を示したものである。この図は前面板31と背面板32を離した状態で示したもので、図示のようにガラスからなる前面板31と背面板32とが互いに平行に且つ対向して配設されており、背面板32の前面側には、これに立設するバリヤーリブ33が固着され、このバリヤーリブ33により前面板31と背面板32とが一定間隔で保持されている。そして、前面板31の背面側には透明電極である維持電極34と金属電極であるバス電極35とからなる複合電極が互いに平行に形成され、これを覆って誘電体層36が形成されており、更にその上に保護層37(MgO層)が形成されている。
【0008】
又、背面板32の前面側には前記複合電極と直交するようにバリヤーリブ33の間に位置してアドレス電極38が互いに平行に形成されており、更にバリヤーリブ33の壁面とセル底面を覆うようにして蛍光体層39が設けられている。
このAC型PDPでは、前面板31上の複合電極間に交流電源から所定の電圧を印加して電場を形成することにより、前面板31と背面板32とバリヤーリブ33とで区画される表示要素として各セル内で放電が行なわれる。そしてこの放電により生じる紫外線により蛍光体層39を発光させ、前面板31を透過してくる光を観察者が視認するようになっている。
【0009】
本発明を、上記PDPにおけるバリヤーリブの形成に適用する例により説明する。図1Aは、PDPの背面基板1を説明する図であり、該基板にはアドレス電極等の他の機能部材(不図示)が既に形成されていてもよいし、形成されてなくてもよい。
【0010】
本発明では、先ず上記基板1に、最終的にはバリヤーリブを構成する厚膜層2(図1B)を形成する。この厚膜層2は、例えば、バリヤーリブを構成する材料を樹脂バインダー溶液に分散させてなるペーストを基板表面に塗布及び乾燥して形成する。塗布方法は厚塗りが可能な方法であればいずれの方法でもよい。厚膜層2の形成は、上記塗布方法に限定されず、上記の如きペーストを他の基材フイルム面に塗布及び乾燥させて厚膜層を形成し、該厚膜層を上記基板表面にラミネートして形成してもよい。厚膜層の厚みは、最終的に形成されるバリヤーリブの高さ(厚さ)が約100〜180μm程度になる膜厚とする。
【0011】
次に上記厚膜層2の表面にフォトレジスト層3(図1C)を形成する。フォトレジスト層3は光硬化型でも光分解型でもよく、その形成方法はドライフイルム型のフォトレジストフイルムの転写によってもよいし、感光性樹脂液の塗布及び乾燥によってもよい。図示の例は光硬化型のフォトレジストをドライフイルムの転写方式で形成した例である。フォトレジスト層を形成後、所望のバリヤーリブのパターンと同一形状の透光パターンを有するフォトマスク4をフォトレジスト3面に配置して密着露光する(図1D)。
【0012】
露光によって露光部は光架橋硬化して現像液に不溶性となり、現像処理することにより非露光部が除去され、バリヤーリブと同一パターンのレジストパターンが形成される(図2A)。次にレジストパターンに対して活性が低く、厚膜層の樹脂バインダーを溶解或いは膨潤させる剥離液を全面に適用してレジストで被覆されていない領域の厚膜層の樹脂を溶解又は膨潤させる。この樹脂の溶解若しくは膨潤によって厚膜層はその強度を失い、剥離液のスプレー等の如き適当な手段によって除去され、図2Bに示す状態となる。その後残っているレジスト3を剥離し、焼成することによって図2Cに示す如きバイリヤーリブ2が形成される。尚、レジストが焼成時に焼失し易いものであればパターン化されたレジスト3の剥離は必須ではない。
【0013】
以上の説明は、本発明の原理を説明したものであるが、更にPDPを代表例として、それらの使用材料や厚膜の剥離液や剥離装置等について説明する。
本発明で使用するPDPの背面基板は、従来のPDPに使用されていると同様のガラス基板であり、又、該基板に形成するバリヤーリブの形状も従来技術と同様であり、特別な点はなく、本発明は上記バリヤーリブの形成に特徴を有する。
【0014】
基板上に形成するバリヤーリブの構成材料である厚膜層の無機材料としては、最終的に焼成したときに、ガラス基板とバリヤーリブとの結着性を良好にする低融点ガラスフリットを含有するとともに、焼成時に形状を安定させるための耐火物フィラーを含有することが好ましい。低融点ガラスフリットとしては、主成分として酸化鉛を50重量%以上含有し、ガラスの分相防止、軟化点の調節、熱膨張係数の調節等の目的で、更にアルミナ、硼砂、シリカ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム等を含有するガラスフリットが好ましい。
【0015】
又、耐火物フィラーとしては、500〜650℃の焼成温度で軟化しないアルミナ、マグネシア、カルシア、コージライト、シリカ、ムライト、ジルコン、ジルコニア等のセラミック粉体が好適に用いられる。これらの耐火物フィラーは厚膜層の全無機成分のう50〜10重量%を占める範囲で使用することが好ましい。
【0016】
又、形成されるバリヤーリブに遮光性を持たせるためには、無機材料には暗色の無機顔料、例えば、コバルト−クロム−鉄、コバルト−マンガン−鉄、コバルト−鉄−マンガン、コバルト−ニッケル−クロム−鉄、コバルト−ニッケル−マンガン−クロム−鉄、コバルト−ニッケル−アルミニウム−クロム−鉄、コバルト−マンガン−アルミニウム−クロム−鉄−珪素等の複合金属酸化物顔料を添加することができる。一方、バリヤーリブに光反射性を持たせる必要がある場合には、酸化チタン等の白色無機顔料等が用いられる。これらの顔料は本発明において必須の成分ではない。
【0017】
厚膜層形成に使用する樹脂バインダーとしては、従来使用されている各種の樹脂バインダーが使用されるが、厚膜層のパターン除去には水系の剥離液を使用することが好ましいので、例えば、中性の水には不溶性〜難溶性であるが、酸又はアルカリによって溶解或いは膨潤する樹脂を使用するか、水不溶性樹脂に酸又はアルカリによって溶解或いは膨潤する樹脂を混合して使用することが好ましい。又、厚膜層のパターン化後において容易に焼失し、焼成残渣の残らない樹脂が好ましい。
【0018】
このような好ましい樹脂としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉誘導体、アクリル酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、ロジンエステル等のアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
【0019】
又、水不溶性の好ましい樹脂としては、エチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、又、酸可溶性樹脂としては、上記の如き樹脂のカチオン変性樹脂が挙げられる。
【0020】
上記無機材料及びバインダーを分散及び溶解してペースト状にするために使用する溶剤としては、例えば、テルピオネール、ブチルカルビトールアセテート等が用いられるが、これらの溶剤に限定されることはなく、特に使用される樹脂バインダーに応じて適当な有機溶剤を選択して使用するべきである。これらの溶剤の使用量は得られるペーストが少なくとも流動性を有し、好適な塗布適性を与える範囲である。一般的には得られるペースト全量中において約10〜30重量%を占める範囲である。
【0021】
本発明で使用する厚膜層形成用ペーストは、その他必要に応じて可塑剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤等を使用することができる。特に厚膜層を適当な基材フイルム上に形成し、次いで基板上に転写する場合には、厚膜層に可撓性が要求されるので、フタル酸エステル、セバチン酸エステル、燐酸エステル、アジピン酸エステル、グリコール酸エステル等の可塑剤をペースト全量中において約5〜10重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0022】
上記厚膜層形成用ペーストを基板上或いは基材フイルム上に塗布する方法としては、スロットダイコーター法、カーテンコーター法、スライドコーター法等の通常の塗布方法を使用することができる。形成すべきバリヤーリブの高さは通常約100〜180μmであるので、この高さを考慮してペーストの塗布量を決定すればよい。ペーストの塗布及び乾燥によって、或いは転写によって基板に厚膜層が形成される。
【0023】
次に基板上に形成若しくは転写された厚膜層の表面にフォトレジスト層を形成する。このフォトレジスト層は感光性樹脂液の塗布及び乾燥によって形成してもよいし、ドライフイルムレジストの転写によって形成してもよい。これらのフォトレジスト材料は光硬化型及び光分解型のいずれもが公知であり、種々のものが市場から入手して本発明において使用することができる。例えば、商品名として、東京応化工業(株)製のOFPRシリーズ、オーディルシリーズ、シブレーファーイースト(株)製のAZシリーズ、日本合成化学工業(株)製のアルフォシリーズ、旭化成(株)製のサンフォートシリーズ等が挙げられる。
【0024】
次に形成すべきバリヤーリブのパターンと同一のパターンを有するフォトマスクを介して露光及び現像することにより、非パターン部のフォトレジストが現像除去され、バリヤーリブと同一パターンのレジストパターンが形成される。レジストの現像に使用する現像液は、使用したレジストの種類によって決まっており、専用の現像液を使用すればよい。水系、即ち酸又はアルカリ水溶液によって現像されるレジストを使用することが工程上好ましい。
【0025】
次にパターン化されたレジストが存在しない領域の厚膜を除去する。この厚膜の除去に使用する剥離液は、厚膜の形成に使用した樹脂バインダーによって決定され、例えば、上記樹脂バインダーがアルカリ溶解若しくは膨潤性樹脂であれば、無機又は有機のアルカリを含む剥離液を使用すればよく、上記樹脂バインダーが酸溶解若しくは膨潤性樹脂であれば、無機又は有機の酸を含む剥離液を使用すればよい。このような剥離液を、例えば、スプレー法によって全面に塗布することによって、レジストが存在しない厚膜層の樹脂バインダーは溶解若しくは膨潤し、その部分の厚膜層の膜強度が低下し、基板面から剥離若しくは溶解除去される。
【0026】
この際、剥離液として強アルカリ又は強酸を使用すると、剥離液によって除去されるべきではない領域、即ち、形成されるべきバリヤーリブの壁面まで除去され、形成されるバリヤーリブの線細りが生じるので、低濃度の鉱酸水溶液、有機酸(酢酸、ギ酸等)の水溶液、低濃度の無機アルカリ水溶液、若しくは有機塩基(低級アミンやアミノアルコール等)の水溶液を用いることが好ましい。
【0027】
上記の厚膜層の除去の1例を図4を参照して説明する。図4Aは、膜剥離装置100の平面図であり、図4Bは、図4Aの矢印X方向からみた側面図である。厚膜層2及びパターン化されたレジスト3を下面に有する基板1は、厚膜層2の剥離液5が上方に噴出されている面を、軸6によって回転自在に設けられた多数のローラ7に乗って、適当な手段で矢印Yに沿って膜剥離装置の面上を移動進行する。
【0028】
基板1は、その進行中に剥離液5の噴射に晒されて、レジスト3が存在していない厚膜層の樹脂バインダーが溶解若しくは膨潤して、厚膜層の主たる構成成分である無機材料が剥落して厚膜層が除去され、図2Bに示す状態になる。このとき、レジストが形成されている厚膜層にも幾分かの剥離液が横方向から浸透し、その浸透部分の膜強度は幾分低下するが、後に剥離液の乾燥除去によって、その厚膜パターン2は形状を保持している。このようにレジストが存在していない領域の厚膜が除去された基板1は、必要に応じて乾燥された後、レジストが剥離除去されて、図2Cに示す状態になり、次いで焼成されて所望のバリヤーリブ2が形成される。
【0029】
図5は、本発明をより効率的に実施するために考案された膜剥離装置100を説明する図である。図示のように本発明の膜剥離装置100は、被パターン化基板1の搬送装置(不図示)と、該基板1に形成された厚膜層2をパターン状に剥離するための剥離液5を有する液槽と、該剥離液5を噴射する噴射ノズル8と噴射ノズル8の上方に設けられた基板支持体6’とからなり、該基板支持体6’が少なくともその頂部がフレキシブルな材料から構成されていることを特徴としている。図示の例における基板支持体6’は先端がフレキシブルなドクターブレードの形状を有しているが、基板1に形成された厚膜層に密着して、基板が移動し得る構成であれば如何なる構成でもよく、例えば、厚膜層に密着して回転する棒状のゴムロール等であってもよい。
【0030】
上記本発明の膜剥離装置を用いる例を説明する。図5Aは、本発明において使用する改良された膜剥離装置100の平面図を示しており、図5Bは図5Aの矢印Z方向からみた側面図である。この装置でも厚膜層2とパターン化レジスト3を有する基板1は矢印Yの方向に移動し、膜剥離装置100の面上を通過し、その進行中に多数のノズル8から噴出する剥離液5に晒されて、パターン化されたレジストが存在しない領域の厚膜層が、図4の場合と同様に剥落する。しかしながら、図5に示す装置では、図4における多数のローラ7に代えてフレキシブルなブレード6’が基板1の進行方法に直交するように設けられており、基板1の下面(即ち厚膜層2の表面、尚パターン化されたレジスト3は非常に薄いので、その膜厚は無視し得る)に接触しながら進行する。
【0031】
従って厚膜層2の表面には第一のブレード6’の前で付着された剥離液は、その基板1の進行時間中は厚膜層2に作用するが、その後は接触しているブレード6’によって十分にしごかれて除去される。従って第一のブレード6’の手前において付与された剥離液5は、基板1の進行によっても第二のブレード6”の前まで持ち越されることはなく、第一のブレード6’を通過した厚膜層2は、各ブレードを過ぎるごとに新鮮な剥離液5に晒されることになる。このようにして、厚膜層2の表面に付与される剥離液5は、以前に付着された剥離液5と混合することなく、新鮮な剥離液5が常に厚膜層2の表面に付与されるので、厚膜の除去速度が大であり、且つ変化がない。従って図5に示す装置を用いて厚膜を除去することによって、厚膜の除去速度が向上するとともに一定にコントロールされるので、一層シャープな形状を有するパターン化されたバリヤーリブを形成することができる。
【0032】
厚膜がパターン状に除去された状態の基板(図2B)は、次いでその表面に残されたパターン状レジストが除去される。この除去には最初の現像に用いた現像液よりも現像力の強い現像液によって行うことができるが、このパターン化されたレジストはその膜厚が非常に薄いので、特に問題がない限り、このレジストを剥離することなく次の焼成工程に送ってもよい。
焼成工程において適当な温度、例えば、500〜650℃程度の温度において焼成することによってパターン化された厚膜層中の有機物が焼失するとともに、耐熱性フィラーが低融点ガラスフリットによって固定され、基板に密着したバリヤーリブが形成される。
【0033】
以上本発明の厚膜パターンの形成方法及び膜剥離装置を、PDPのバリヤーリブの形成に応用する例を挙げて説明したが、本発明の方法及び装置はPDPのバリヤーリブの形成に限定されるものではなく、例えば、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、液晶表示装置(LCD)、蛍光表示装置、混成集積回路等の製造過程において、形成される電極や誘電体等の各種の厚膜パターンの形成にも同様に有効である。
【実施例】
【0034】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例中「%」又は「部」とあるのは、特に断りのない限り重量基準である。
実施例1
ガラスフリット50部、黒色無機顔料20部、充填剤(アルミナ)10重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート5部、エチレングリコール15部及びエタノール15部を混合し、十分に分散処理してペーストとした。このペーストを、下地、電極及び誘電体層等が既に形成されているPDP用ガラス基板上に乾燥時の厚みが200μmになるようにロールコートで塗布し、150℃で30分間乾燥してバリヤーリブ用の厚膜を形成した。
【0035】
次に上記厚膜表面を50℃に予熱しておき、その表面にレジストドライフイルム(商品名NCP−225、日本合成化学工業製)を120℃、2.5kgf/cm及び1.5m/min.の条件でラミネートした。この状態で所望のバリヤーリブと同一パターンの透光パターンを有するフォトマスクを介して露光量80mJ/cm(365nm)で紫外線露光した。その後30℃の1重量%炭酸ソーダ水溶液で、スプレー圧1.5kgf/cm2で40秒間スプレー現像して非露光部のレジストを除去した。
【0036】
次いで図5に示す膜剥離装置を用い、剥離液として20%酢酸水溶液を室温で1.5kgf/cm2のスプレー圧で150秒間厚膜層全面に噴射して、非露光部の厚膜層を除去し、更に基板を30℃の1%苛性ソーダ水溶液中に40秒間浸漬してパターン状のレジストを剥離した。乾燥後にピーク温度595℃で3時間焼成して、所望の形状のバリヤーリブを形成した。形成されたバリヤーリブの線幅は一定であり、リブの頂部、中間部及び底部の幅において変化は認められず、非常にシャープな形状を有していた。
【0037】
実施例2
銀粉体70部、ガラスフリット10部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース5部、エチレングリコール15部及びエタノール15部を混合し、十分に分散処理してペーストとした。このペーストをPDP用ガラス基板上に乾燥時の厚みが20μmになるようにロールコートで塗布し、150℃で30分間乾燥して銀電極用の厚膜を形成した。
【0038】
次に上記厚膜表面を50℃に予熱しておき、その表面にレジストドライフイルム(商品名NCP−225、日本合成化学工業製)を120℃、2.5kgf/cm及び1.5m/min.の条件でラミネートした。この状態で所望の銀電極と同一パターンの透光パターンを有するフォトマスクを介して露光量80mJ/cm(365nm)で紫外線露光した。その後30℃の1重量%炭酸ソーダ水溶液で、スプレー圧1.5kgf/cm2で40秒間スプレー現像して非露光部のレジストを除去した。
【0039】
次いで図5に示す膜剥離装置を用い、剥離液として1%トリエタノールアミン水溶液を室温で1.5kgf/cm2のスプレー圧で90秒間厚膜層全面に噴射して、非露光部の厚膜を除去し、更に基板を30℃の1%苛性ソーダ水溶液中に40秒間浸漬してパターン状のレジストを剥離した。乾燥後にピーク温度595℃で3時間焼成して、所望の形状の銀電極を形成した。形成された銀電極の線幅は一定であり、電極の頂部、中間部及び底部の幅において変化は認められず、非常にシャープな形状を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、印刷方法において生じる多くの欠点が容易に解決され、高い生産性で、高精度且つ高アスペクト比の厚膜パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を説明する図
【図2】本発明を説明する図
【図3】PDPの構成説明図
【図4】膜剥離装置を説明する図
【図5】本発明の膜剥離装置を説明する図
【符号の説明】
【0042】
1:基板
2:厚膜層
3:レジスト
4:フォトマスク
5:剥離液
6:軸
6’,6”:ブレード
7:ローラ
8:ノズル
31:前面板
32:背面板
33:バリヤーリブ
34:維持電極
35:バス電極
36:誘電体層
37:保護層
38:アドレス電極
39:蛍光体層
100:膜剥離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に樹脂と無機粉体を含む厚膜を形成する工程、該厚膜表面にレジストパターンを形成する工程、レジスト膜の存在しない領域に前記厚膜の樹脂を溶解若しくは膨潤させる剥離液を付与して厚膜をパターン状に剥離除去する工程、及び形成された厚膜パターンを焼成する工程を含む厚膜パターンの形成方法に使用する膜剥離装置であって、上記被パターン化基板の搬送装置と、該基板に形成された上記樹脂層をパターン状に剥離するための剥離液を有する液槽と、該剥離液を噴射する噴射装置と噴射装置の上方に設けられた基板支持体とからなり、上記基板支持体が少なくともその頂部がフレキシブルな材料から構成されていることを特徴とする膜剥離装置。
【請求項2】
基板支持体が、ドクターブレード形状である請求項1に記載の膜剥離装置。
【請求項3】
基板支持体が、ゴムローラ形状である請求項1に記載の膜剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−201482(P2007−201482A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29732(P2007−29732)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【分割の表示】特願平9−127795の分割
【原出願日】平成9年5月2日(1997.5.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(591186903)進和工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】