説明

厚膜導体形成用組成物

【課題】 半田食われが少なく、かつ、鉛を含有しない厚膜導体形成用組成物を提供する。
【解決手段】 導電粉末と、酸化物粉末と、有機ビヒクルとからなり、該酸化物粉末が、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末と、Al23粉末とを含む厚膜導体形成用組成物を用いる。SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の組成比は、SiO2:20〜60質量%、B23:2〜25質量%、Al23:2〜25質量%、CaO:20〜50質量%、およびLi2O:0.1〜10質量%であり、導電粉末100質量部に対し、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末が0.1〜15質量部、Al23粉末が0.1〜8質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛を含有しない厚膜導体形成用組成物に関し、特に、チップ抵抗器、抵抗ネットワークおよびハイブリッドICなどを製造する際、セラミック基板上などに、厚膜導体を形成するために使用する厚膜導体形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
厚膜技術を用いて厚膜導体を形成する場合、一般には、導電率の高い導電粉末を、ガラス粉末などの酸化物粉末と共に、有機ビヒクル中に分散させて、導電ペーストを得て、該導電ペーストを、アルミナ基板等のセラミック基板上に、スクリーン印刷法等により、所定の形状に塗布し、500℃〜900℃で焼成することにより、厚膜導体を形成する。
【0003】
導電粉末としては、導電率の高いAu、Ag、PdまたはPtからなり、平均粒径10μm以下の粉末が用いられており、特に、安価なAg粉末およびPd粉末が、一般的に使用されている。
【0004】
ガラス粉末としては、軟化点の制御が容易で、化学的耐久性の高いホウケイ酸鉛、またはアルミノホウケイ酸鉛系が用いられてきた。しかしながら、環境汚染を防止する昨今の観点から、鉛を含有しない導電ペーストが望まれている。
【0005】
得られた厚膜導体を使用して、チップ抵抗器、抵抗ネットワークまたはハイブリッドIC等の電子部品を製造する際の製造工程、あるいは実装工程では、厚膜導体に半田付けが行なわれる。この半田付けの際に、Au、Ag、PdまたはPtが、半田中に溶け出し、導体部分が消失し、断線してしまうことがある。この現象を、半田食われと呼んでいる。半田食われは、チップ抵抗器、抵抗ネットワークまたはハイブリッドIC等の電子部品の歩留まりを低下させたり、これらの電子部品の信頼性を低下させる原因になるという問題がある。
【0006】
さらに、前述のように環境汚染を防止するため、半田も、63Sn/37Pbの共晶半田から、鉛を含有しないSn含有量の高い組成の半田に変わりつつあり、Sn系半田の融点が高いことから、半田付け温度も高くなる傾向がある。このような半田組成の変更や、半田付け温度の上昇に伴い、半田食われが今まで以上に発生しやすくなったという問題もある。
【0007】
半田食われを防ぐ方法の一つとして、厚膜導体形成用組成物中のガラス粉末の量を増やし、得られる厚膜導体の表面にガラス成分を浮かせる方法がある。しかしながら、この方法では、厚膜導体と電子部品の接触が不完全となったり、電子部品の特性値を測定するためのプローブと、厚膜導体との接触が不完全となる問題がある。
【0008】
また、特開平6−223616号公報には、PbO−SiO2−CaO−Al23系ガラス粉末と、Al23粉末と、SiO2粉末と、導電粉末とを、有機ビヒクルに分散させて、ペースト焼成時に、アノーサイト(CaAl2Si28)と呼ばれる針状の結晶相を厚膜導体の内部に析出させることにより、半田食われを防ぐ方法が記載されている。しかしながら、特開平6−223616号公報に記載の導電ペースト用組成物は、鉛を含有しているガラス粉末を用いており、環境汚染の観点から好ましくない。また、特開平6−223616号公報には、ガラス粉末中のPbOが15質量%未満では、アノーサイトが十分に析出しないと記載されているように、鉛を含有しない導電ペーストでは、半田食われを防ぐことが困難であった。
【0009】
一方、特開平7−97269号公報および特開平2001−114556号公報には、SiO2−B23−Al23−CaO系ガラス粉末と、Al23粉末との混合物を加熱することによって、アノーサイトを析出させている。しかしながら、これらの場合には、十分な大きさのアノーサイトを析出させるためには、その結晶化温度が高い(ガラスの軟化温度が高い)ことから、900℃以上の高温が必要である。900℃以上の温度で電極ペーストを焼成すると,電極膜が過焼結となったり、融点が低いAgを主成分とする電極ペーストでは電極膜が島状になってしまい,均質な電極膜が形成できなくなるという問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開平6−223616号公報
【0011】
【特許文献2】特開平7−97269号公報
【0012】
【特許文献3】特開2001−114556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前述の事情に鑑み、半田食われが少なく、かつ、鉛を含有しない厚膜導体形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の厚膜導体形成用組成物は、導電粉末と、酸化物粉末と、有機ビヒクルとからなり、前記酸化物粉末が、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末と、Al23粉末とを含む。ここで、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末には、これらの組成からなるもののほか、これらの成分以外に、ZnO、BaO、TiO2、ZrO2、Bi23等の他の成分を含有するガラス粉末も含まれる。また、酸化物粉末として、該ガラス粉末、Al23粉末のほか、Bi23、SiO2、CuO、ZnO、MnO2等を添加することは妨げられない。
【0015】
前記SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の組成比が、SiO2:20〜60質量%、B23:2〜25質量%、Al23:2〜25質量%、CaO:20〜50質量%、およびLi2O:0.1〜10質量%であることが好ましい。特に、前記ガラス粉末におけるLi2Oの組成比が、0.5〜6重量%の範囲にある場合には、厚膜導体形成用組成物に含まれるガラス粉末の含有量が少ない場合でも、得られる厚膜導体の耐半田性が損なわれることなく、その接着強度を向上させることができる。
【0016】
なお、前記導電粉末は、Au、Ag、PdおよびPtの少なくとも1種類であることが好ましい。
【0017】
また、前記導電粉末100質量部に対し、前記SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末が0.1〜15質量部であり、前記Al23粉末が0.1〜8質量部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の厚膜導体形成用組成物により、従来の技術では困難であったが、鉛を含有せず、半田食われの少ない導体膜を形成することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の厚膜導体形成用組成物は、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末と、Al23粉末とを含有することを特徴とし、導電ペースト焼成時に前記ガラス粉末とAl23粉末とを反応させることにより、アノーサイトが厚膜導体内部に均一に析出している厚膜導体を得ることができる。かかる厚膜導体を用いると、僅かな量の厚膜導体中の貴金属が、半田に溶け出すことにより、アノーサイトが厚膜導体の表面に棘状に露出する。アノーサイトは針状の結晶であり、これが厚膜導体表面に棘状に露出すると、半田が、表面張力によって貴金属に達しなくなり、半田食われが進行しなくなる。
【0020】
本発明の厚膜導体形成用組成物において、前記ガラス粉末に、Al23粉末を混合させない場合、得られた厚膜導体とセラミック基板の界面付近に、アノーサイトが多く析出してしまうため、半田食われを抑制する効果が十分に得られない。すなわち、半田が、表面張力によって貴金属に達しないようにするためには、アノーサイトが厚膜導体内部に均一に析出している必要がある。さらに、半田付けにより露出するアノーサイトの棘の長さが1μm以上は必要である。長さが1μm未満の微細な結晶相では、該アノーサイト結晶が厚膜導体中から半田中に移動してしまい、半田食われを抑制する効果が十分に得られなくなる。
【0021】
前述のように、アノーサイトは、SiO2−B23−Al23−CaO系ガラス粉末と、Al23粉末との混合物を加熱することによっても、析出させることができる。この場合に、十分な大きさのアノーサイトを析出させるには、900℃以上の高温が必要である。これに対して本発明では、ガラス粉末中にLi2Oが含有されているため、低温でもアノーサイトを析出させることを可能としている。
【0022】
本発明に用いるSiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の組成比は、SiO2:20〜60質量%、B23:2〜25質量%、Al23:2〜25質量%、CaO:20〜50質量%、およびLi2O:0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0023】
ガラス粉末の組成において、SiO2が、20質量%より少なくなると、アノーサイトが析出しにくくなり、半田食われを防止できなくなるおそれがある。また、厚膜導体中のガラスの耐候性、耐水性および耐酸性が低下する傾向となる。一方、SiO2が、60質量%より多くなると、ガラスの軟化温度が高くなりすぎて、アノーサイトが析出する温度が高くなる傾向となる。
【0024】
23が、2質量%より少なくなると、ガラスの軟化温度が高くなりすぎる傾向となる。また、厚膜導体のガラスが脆くなりやすくなってしまう。一方、B23が、25質量%より多くなると、ガラスが分相しやすくなり、厚膜導体中のガラスの耐候性、耐水性および耐酸性も低下するおそれがある。
【0025】
ガラス粉末の組成において、Al23が、2質量%より少なくなると、アノーサイトが析出しにくくなり、また、厚膜導体中のガラスが分相しやすくなる。一方、Al23が、25質量%より多くなると、ガラスの軟化温度が高くなりすぎ、アノーサイトが析出する温度が高くなりすぎるおそれがある。
【0026】
CaOが、20質量%より少なくなると、アノーサイトが析出しにくい。CaOが、50質量%より多くなると、ガラス化しにくくなる。
【0027】
Li2Oは、ガラスの軟化温度を低下させる働きがあり、Li2Oの含有量を増やすと、それに応じて、アノーサイトの結晶を大きく成長させることができる。従って、ガラス粉末の組成において、Li2Oが、0.1質量%よりも少なくなると、アノーサイトが析出しにくくなり、また、析出したアノーサイトの大きさも小さくなりやすい。一方、Li2Oが、10質量%より多くなると、ガラスの耐候性、耐水性および耐酸性が低下するおそれがある。なお、Li2Oが、4〜8質量%の範囲にある場合には、厚膜導体形成用組成物に含まれるガラス粉末の含有量が少ない場合でも、得られる厚膜導体の耐半田性が損なわれることなく、その接着強度を向上させることができる。
【0028】
本発明のSiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の組成比では、Li2Oは、ペースト焼成中に析出したアノーサイトにほとんど取り込まれて、固定化される。従って、形成された電極間に電位差があっても、Liイオンがマイグレーションしてしまうことはない。
【0029】
本発明で使用するガラス粉末は、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系であるが、その組成中に他の成分を含むこともでき、軟化点または耐酸性等に応じて、ZnO、BaO、TiO2、ZrO2またはBi23等の成分を選択し、含有させることができる。
【0030】
本発明のSiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の平均粒径は、10μm以下が望ましい。平均粒径が10μm以上では、ガラス粉末の軟化が遅れ、電極膜と基板との接着強度が低下する傾向となり、好ましくない。
【0031】
本発明においては、導電粉末100質量部に対し、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末を0.1〜15質量部、Al23粉末を0.1〜8質量部、それぞれ添加している。
【0032】
SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末が、導電粉末の100質量部に対して0.1質量部より少なくなると、セラミック基板との接着強度が低下してしまう。また、15質量部より多くなると、厚膜導体の抵抗値が高くなるばかりでなく、厚膜導体の表面にガラスが浮き、メッキ性、半田の濡れ、および特性評価のためのプローブとの接触抵抗が、劣化するおそれがある。
【0033】
酸化物粉末に使用するAl23粉末の平均粒径は、3μm以下が望ましい。Al23粉末の平均粒径が3μmを超えると、アノーサイトが厚膜導体中に均一に析出しにくくなるばかりでなく、厚膜導体の表面が粗くなり、電子部品の特性を測定するためのプローブとの接触抵抗が大きくなるおそれがある。
【0034】
酸化物粉末に使用するAl23粉末が、導電粉末の100質量部に対して0.1質量部より少なくなると、アノーサイトの析出が少なく、半田食われを起こしやすくなる。一方、8質量部より多くなると、接触抵抗が大きくなるだけでなく、セラミック基板との接着強度が低下してしまう。
【0035】
本発明に用いる導電粉末は、通常の厚膜導体の形成に用いられるものでよく、例えば、Au、Ag、PdおよびPt等の粉末を、1種類のみで、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。導電粉末の平均粒径は、10μm以下が望ましく、導電粉末の形状は、粒状またはフレーク状等であってもよく、特に限定されない。
【0036】
また、有機ビヒクルとしては、従来と同様に、エチルセルロースまたはメタクリレート等を、ターピネオールまたはブチルカルビトール等の溶剤に溶解したもので良い。
【0037】
なお、本発明では、導電粉末、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末、およびAl23粉末以外にも、厚膜導体の接着強度や半田濡れ性等を向上させる目的で、従来から用いられる各種粉末、例えば、Bi23、SiO2、CuO、ZnOまたはMnO2等の酸化物粉末を添加することは、何ら差し支えない。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
平均粒径1.5μmの粒状Ag粉末99.0質量部、および平均粒径0.1μmの粒状Pd粉末1.0質量部からなる導電粉末に対して、表1に示した平均粒径3μmのガラス粉末Aを5質量部、および平均粒径0.5μmのAl23粉末を1質量部、それぞれ添加して、さらに、エチルセルロースのターピネオール溶液をビヒクルとして添加し、3本ロールミルで混練することにより、厚膜導体形成用ペーストを作製した。
【0039】
作製した厚膜導体形成用ペーストを、96%アルミナ基板上にスクリーン印刷し、150℃で乾燥した。乾燥した基板を、ピーク温度850℃で9分間、トータル30分間のベルト炉で焼成し、所定のパターンの厚膜導体膜を形成した。
【0040】
得られた厚膜導体の膜厚の評価は、2.0mm×2.0mmのパッドについて、触針型の膜厚計により測定することにより行った。
【0041】
面積抵抗値の評価は、幅0.5mm、長さ50mmの導体パターンの抵抗値をデジタルマルチメータにより測定して、得られた値を面積抵抗値に換算することにより行った。
【0042】
耐半田性の評価は、次のように行った。まず、幅0.5mm、長さ50mmの焼成した厚膜導体を用いて、270℃に保持した96.5質量%Sn−3質量%Ag−0.5質量%Cu組成の鉛フリー半田浴中に、10秒間、浸した後、抵抗値を測定する操作を1回として、この操作を繰り返した。測定された抵抗値が1kΩ以上になったことにより、半田食われが起きたことを確認し、半田食われが起きるまでの繰返し回数を、耐半田性の評価とした。
【0043】
接着強度の評価は、2.0mm×2.0mmのパターンの厚膜導体上に、直径0.65mmのSnメッキ銅線を、96.5質量%Sn−3質量%Ag−0.5質量%Cu組成の鉛フリー半田を用いて半田付けし、垂直方向に引っ張り、剥離させ、剥離時の引っ張り力を測定することにより行った。
【0044】
測定された厚膜導体の膜厚、面積抵抗値、耐半田性および接着強度を、それぞれ表3に示す。
【0045】
本実施例の厚膜導体は、12回、半田に浸しても、面積抵抗値は10Ω以下で、断線することは無く、耐半田性に優れていた。また、その接着強度も、60N以上と高かった。
【0046】
(実施例2、3、比較例1、2)
使用量およびガラス粉末の種類を、表1および表2に示したように変更した以外は、実施例1と同様に厚膜導体を得て、実施例1と同様に測定を行った。
【0047】
測定された厚膜導体の膜厚、面積抵抗値、耐半田性および接着強度を、表3に示す。
【0048】
実施例2の厚膜導体は、12回、半田に浸しても、面積抵抗値は10Ω以下で、断線することは無く、耐半田性に優れていた。また、その接着強度も、60N以上と高かった。
【0049】
実施例3の厚膜導体は、12回、半田に浸しても、抵抗値は10Ω以下で、断線することは無かった。接着強度も、60N以上と高かった。ガラス粉末Cは、ガラス粉末Aやガラス粉末Bよりも、軟化温度が低く、ガラス粉末が少量でも、ガラス粉末Cを用いた実施例3のように、得られる厚膜導体の接着強度が高いことが分かる。
【0050】
一方、比較例1の厚膜導体は、接着強度が低く、4回目に面積抵抗値が1kΩ以上になってしまい、耐半田性に劣っていた。
【0051】
比較例2の厚膜導体は、4回目に面積抵抗値が1kΩ以上になってしまい、耐半田性に劣っていた。
【0052】
(比較例3)
酸化物粉末に対して、Al23粉末を加えなかった他は、ガラス粉末の種類(ガラス粉末A)および導電粉末とガラス粉末の割合については、実施例1と同様にして、厚膜導体を得て、実施例1と同様に測定を行った。
【0053】
測定された厚膜導体の膜厚、面積抵抗値、耐半田性および接着強度を、表3に示す。
【0054】
比較例3の厚膜導体は、3回目に面積抵抗値が1kΩ以上になり、耐半田性に劣っていた。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
比較例1のように、Li2Oを含まないガラス粉末Dを使用して得た導体ペーストでは、厚膜導体中にアノーサイトが十分に析出および成長しないので、厚膜導体のAgまたはPdが、完全に半田に食われてしまっている。このことから、Li2Oがアノーサイトの析出および成長を促進させていることが理解される。
【0059】
比較例2のように、CaOを含まないガラス粉末Eを使用して得た導体ペーストでは、アノーサイトが析出せず、厚膜導体のAgまたはPdが、完全に半田に食われてしまっている。アノーサイトは、SiとAlとCaの複合酸化物であり、Caを含まないガラス組成ではCaが供給されず、アノーサイトが析出しないためである。
【0060】
比較例3は、Al23粉末を含まない比較例である。酸化物粉末として、Al23粉末を加えない場合では、アノーサイトが厚膜導体中に均一に析出せず、厚膜導体とアルミナ基板の界面部に集中的に析出してしまい、半田から厚膜導体を保護することができないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電粉末と、酸化物粉末と、有機ビヒクルとからなる厚膜導体形成用組成物であり、前記酸化物粉末が、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末と、Al23粉末とを含むことを特徴とする厚膜導体形成用組成物。
【請求項2】
前記SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の組成比が、SiO2:20〜60質量%、B23:2〜25質量%、Al23:2〜25質量%、CaO:20〜50質量%、およびLi2O:0.1〜10質量%である請求項1に記載の厚膜導体形成用組成物。
【請求項3】
前記ガラス粉末におけるLi2Oの組成比が、0.5〜6質量%である請求項2に記載の厚膜導体形成用組成物。
【請求項4】
前記導電粉末100質量部に対し、前記SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末が0.1〜15質量部であり、前記Al23粉末が0.1〜8質量部である請求項1に記載の厚膜導体形成用組成物。
【請求項5】
前記導電粉末が、Au、Ag、PdおよびPtの少なくとも1種類である請求項1に記載の厚膜導体形成用組成物。
【請求項6】
導電粉末に、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末およびAl23粉末を含む酸化物粉末、および有機ビヒクルを添加して、これらの材料を混練することにより得た導電ペーストを、セラミック基板に塗布した後、500℃以上、900℃未満の温度で焼成することを特徴とする厚膜導体の製造方法。
【請求項7】
組成中にLi2Oを含む厚膜導体であって、該厚膜導体内部にアノーサイトが均一に析出しており、かつ、前記Li2Oがアノーサイトに固定化されていることを特徴とする厚膜導体。

【公開番号】特開2006−228572(P2006−228572A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41048(P2005−41048)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】