説明

原反ロール用リフト装置

【課題】 簡単かつ容易に原反ロールを包装機にセットできるようにすること
【解決手段】 包装機用の原反ロールを支持するとともに、その原反ロールをその軸方向にスライドさせて外方に搬出するスライドする機構を備えたテーブル32と、そのテーブルを昇降させる昇降機構12と、昇降機構を支持し、テーブルとともにその昇降機構を移動する台車11とを備える。テーブルは、V型に配置した一対のローラ35を複数段に並列配置して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原反ロール用リフト装置に関するもので、より具体的には包装機に原反ロールをセットする際に用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、自動包装機は、フィルム供給装置から連続して供給される帯状の包装用フィルムを用いて被包装物を包み込み、所定位置をシール・カットして包装体を製造する。
【0003】
このフィルム供給装置は、包装用フィルムをロール状に巻き取った原反ロールを回転自在に支持し、その原反ロールから包装用フィルムを繰り出して包装機本体側に供給する。当然のことながら、1本の原反ロールからの包装用フィルムの供給は有限であり、巻き取られている包装用フィルムがすべて繰り出された場合には、別の原反ロールから包装用フィルムを供給することになるが、この切り替えを自動的に行うスプライサーがある。このスプライサーは、複数(通常は2本)の原反ロールをそれぞれ回転自在に支持する。そして、一方の原反ロールからの包装用フィルム(A)の終端部位に、他方の原反ロールの包装用フィルム(B)の先端を接続することで、包装用フィルム(B)は包装用フィルム(A)に続いて連続して包装機本体側に供給されることになる。
【0004】
上述したように複数の原反ロールがセットされたスプライサーは、自動的にそれぞれの原反ロールから繰り出される包装用フィルムの前後端同士を接続して包装機本体に対して包装用フィルムを連続供給できるが、所定のタイミングで原反ロール支持軸等にセットする必要がある。そして、従来、原反ロールを原反ロール支持軸等へセットする作業は、人手によって行われている。即ち、作業者が原反ロールを原反ロール支持軸の高さまで持ち上げた状態を維持しながら、原反ロールの中央の紙管内に原反ロール支持軸が貫通するようにして取り付け、その後、原反ロール支持軸に設けられた一対の固定爪で原反ロールの両端を固定してセットする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−178795
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に原反ロールが包装機の上部にセットされるタイプの場合、重量のある原反ロールを顔の高さ近くまで持ち上げる必要があり、体力のない作業者にとっては重労働になる。また、落として怪我をする危険性も高い。そこで、特許文献1に示されているような物品を所定の高さまで持ち上げる荷物昇降装置を適用することが考えられる。この特許文献1に開示された装置における昇降するテーブルの上に原反ロールをおいた状態で、そのテーブルを上昇させると、テーブルの上に置いた原反ロールがテーブル上を移動して初期に設置した状態を維持できない。さらに、テーブルを所望の高さ位置まで上昇したならば、テーブルの上に置いた原反ロールを軸方向に移動して原反ロール支持軸にセットするが、テーブルの上を滑らせながら移動させると原反ロールに巻き付けられた帯状フィルムが擦れてゆがみを生じてしまうため、結局、原反ロールをテーブルから若干でも浮かせた状態にして移動・移し替えさせる必要があり、煩雑で実用に供し得ない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、(1)包装機用の原反ロールを支持するとともに、その原反ロールをその軸方向にスライドさせて外方に搬出するスライドする機構を備えたテーブルと、そのテーブルを昇降させる昇降機構と、前記昇降機構を支持し、前記テーブルとともにその昇降機構を移動する台車とを備えて構成した。原反ロールをテーブルの上に置いた状態で昇降機構を操作して所望の高さ位置まで上昇移動させる。原反ロールの軸方向の一方の端面(テーブルの搬出側)を包装機側の原反ロールの支持部に対向させた状態で、その原反ロールを軸方向に移動する。テーブルは、かかる方向に原反ロールをスライドする機構を備えているので、原反ロールはスムーズに移動して包装機側にセットできる。このように台車にて所望の位置に行き来することができるとともに、原反ロールを高い位置まで簡単に上昇でき、作業効率が向上する。さらに、原反ロールの交換作業の負担が軽減し、人手により高い位置まで原反ロールを持ち上げるのではないので、フィルムロールの交換作業の負担が軽減する。さらに人手により原反ロールを高い位置まで持ち上げる必要もなく、安全性も向上する。
【0008】
(2)前記テーブルは、V型に配置した一対のローラを複数段に並列配置するとよい。このようにすると、原反ロールを安定して保持でき、上昇移動中に横ぶれ等することを抑制できる。また、異なるロール径の原反ロールであっても対応できる。V型は、実施の形態における一対のローラ35から明らかなように、必ずしも中心の最下点位置でつながっている必要はなく、中心部位は離反していても良い。V型は、逆ハの字と称しても良い。
【0009】
(3)上記の(2)の発明を前提とし、前記一対のローラのなす角を変更可能に構成するとよい。この発明によれば原反ロールのロール径に応じて適切な角度にでき、原反ロールをしっかりと支持できる。
【0010】
(4)前記テーブルを複数備えるとよい。複数のテーブルは上下に配置しても良いし、横に配置しても良い。また、いずれの場合にも好ましくは、個々のテーブルを独立して昇降できるようにすると、重心が低くなり安定するので好ましい。このようにすると、予備の原反ロールを置いておけるので、作業性が向上する。
【0011】
(5)前記テーブルが、前記昇降機構に対して水平面内で回転可能に連携されるようにするとよい。このようにすると、作業スペースが制限されている場合でも原反ロールの位置・姿勢・向きを容易に変更できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、原反ロールを支持したテーブルを昇降機構で上昇させることができるとともに、スライドさせる機構によりスムーズに包装機側に移動・移し替えができるので、作業効率が向上し、原反ロールの交換作業の負担が軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な一実施形態を示す正面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】その側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図3は、本発明の原反ロール用リフト装置の好適な一実施形態を示している。本実施形態の原反ロール用リフト装置10は、台車部11と、その台車部11の上に起立配置された昇降機構12と、その昇降機構12に連係されて昇降する原反ロール支持部13と、を備えて構成される。
【0015】
台車部11は、左右に一定の間隔を置いて配置された一対のベースフレーム15と、そのベースフレーム15の前端側に連結された前輪16と、ベースフレーム15の後端側に連結された後輪17と、を備えている。前輪16は、実際にはベースフレーム15の前端に取り付けられた連結プレート18の下面に対し、軸受部19を介して連結される。同様に後輪17は、ベースフレーム15の後端に取り付けられた連結プレート18′の下面に対し、軸受部19′を介して連結される。これにより、前輪16の回転軸16a並びに後輪17の回転軸17aは、それぞれ独立して水平面内で360度旋回可能となり、台車部11を任意の方向に移動させることができるとともに、小回りがきくので位置調整を簡単に行うことができる。
【0016】
昇降機構12は、台車部11のそれぞれのベースフレーム15の後方側上面と後輪17(連結プレート18′)の上方に連結されて起立形成された一対の逆U字状のガイド支柱20を備える。この一対のガイド支柱20の後側上方部位に、第1連結プレート23が渡るように取り付けられる。そしてこの第1連結プレート23の左右方向の中間部位には、操作ハンドル22が回転自在に取り付けられる。この操作ハンドル22は、アーム22bの先端に取っ手22aが取り付けられると共に、アーム22bの基端に取付けられた軸受部22cを介して第1連結プレート23に対して回転可能に軸受支持される。またこの軸受部22cには図省略するチェーンの一端側を巻き取るための巻き取り部24が連結される。
【0017】
一方、一対のガイド支柱20の前側上端近傍部位には、第2連結プレート26が渡るように取り付けられる。そして、この第2連結プレート26の左右方向の中間部位には、滑車25が回転自在に取り付けられている。この滑車25は、上述した巻き取り部24に巻き取られるチェーンを掛け渡して、その方向を下向きに変更するものである。そして、そのチェーンの先端は、原反ロール支持部13に連結される。これにより、操作ハンドル22を正逆回転させてチェーンを巻き取り部24に巻き取ったり、巻き取ったチェーンを送り出したりすることで、原反ロール支持部13を昇降移動させることができる。これらの機構は、基本的に特許文献1等に開示されたものと同種の構成を採ることができる。
【0018】
原反ロール支持部13は、ガイド支柱20の前側に連係する傾斜プレート27の下方側に設けた第1プーリ28と、傾斜プレート27の上端に設けた第2プーリ29にてガイド支柱20を前後から挟み込んで連係するとともに、その傾斜プレート27の下端に前方に突出するように連結した支持アーム30と、その支持アーム30上に配置したV字状のテーブル32を備えている。傾斜プレート27は、その下端に連係した支持アーム30並びテーブル32の自重を受けて、図1中反時計方向に回転しようとするが、その回転方向は第1,第2プーリ28,29が共にガイド支柱20に突き当たる方向であるためしっかりと連係される。さらに、一対の傾斜プレート27は、第3連結プレート31により連係されて一体化している。そして、この第3連結プレート31にチェーンの先端を連結する。これにより、上述したように操作ハンドル22を正方向に回転させると、チェーンが巻き取り部24に巻き取られることからそのチェーンの先端が上昇し、それに追従して第3連結プレート31ひいては原反ロール支持部13が上昇移動する。
【0019】
V字状のテーブル32は、原反ロールの支持面を構成するV字型に配置された左右一対のローラ35を前後方向に複数列備えている。そして、具体的な構成は、以下の通りである。まず、一対の支持アーム30に跨ぐようにしてV字状の底板40を配置し、その底板40は連結板41にて一対の支持アーム30に固定される。底板40の上面には、左右それぞれに断面略コ字状の細長な一対の軸受け支持プレート42が配置され、その一対の軸受け支持プレート42に上記の複数のローラ35が回転自在に軸受け支持される。これにより複数のローラ35は、フリーローラで回転自在となる。左右に配置された複数のローラ35は、それぞれ前後に並ぶように並列配置するとともに、その回転軸がそれぞれ取り付けられた底板40の傾斜面と平行になるように設定されている。これにより、左右の片側に配置された複数のローラ35は、それぞれそのローラ面が面一になるとともにV字状の底板40と平行になる。そして、回転軸はローラ35の並び方向、つまり前後方向と直交する方向であるため、図3に示すようにV字状のテーブル32の上に原反ロール50を置くと、原反ロール50の外周面が複数のローラ35に接触して支持される。そして、各ローラ35の回転軸の方向は、原反ロール50の軸方向(幅方向)と直交しているため、原反ロール50を軸方向に移動しようとすると、各ローラ35が回転してその移動を促進する。よって、原反ロール50はスムーズに軸方向に移動、つまり、テーブル32上を前方に移動することができる。
【0020】
さらにV字状のテーブル32は、複数のローラ35で構成されるV字状の支持面の上に置かれた原反ロール50が、不用意に軸方向(テーブル32の前後方向)に移動して落下するのを防止するため、その前後両端にストッパー機構を設けている。つまり底板40の前端に上方に起立するV字プレート33を連結する。そして、前側のV字プレート33には、一端に軸受部36を設け、その軸受部36に可動ストッパープレート38の一端を回転自在に連係し、その可動ストッパープレート38の他端に設けた切り込み38aを、V字プレート33の他端に設けた連結部37に連結可能としている。また、V字プレート33の中央の谷部分には、受け部39が設けられ、図3に示すように、可動ストッパープレート38を連結部37から離反して他端が下方に位置するときには、可動ストッパープレート38の下面所定部位が受け部39に接触してそれ以上下降しないようにしている。よって、原反ロール50をテーブル32(ローラ35)の上に置いた状態で、可動ストッパープレート38の他端に設けた切り込み38aを連結部37に連結すると、ストッパープレート38が、V字プレート33の左右両端に渡るように位置するため、原反ロール50が前方に突出するのを抑制する。そして、可動ストッパープレート38の他端を連結部37から離反させると、テーブル32の前側が開放するので、原反ロール50をテーブル32から前方に搬出できる。
【0021】
一方、底板40の後端側には、所定形状の固定ストッパープレート46を連結する。この固定ストッパープレート46は、1または複数のプレートを連結して構成することができ、ローラ35上に置いた原反ロール50の後端面が接触してそれ衣装庫右方に移動するのを阻止できるようになっていればよい。
【0022】
また、本実施形態の原反ロール用リフト装置10は、テーブル32をV字状に構成したため、図3に示すように、径の異なる原反ロール50,50′のいずれのものでも確実に支持できる。
【0023】
次に上述した構成の原反ロール用リフト装置10を用いて原反ロールを包装機にセットする作業を説明する。まず、操作ハンドル22を所定方向に回転させて原反ロール支持部13(テーブル32)を下降させる。その状態で、テーブル32の上に原反ロールをセットする。この作業は人手で行うものの、テーブル32は低い位置に位置しているので、比較的容易に行える。また、少なくともテーブル32の上に原反ロールをセットした状態では、可動ストッパープレート38を連結部37に連結し、原反ロールが不用意にテーブル32から離脱するのを抑制する。また、原反ロール用リフト装置10は台車部11を備えているので、任意の位置に移動できる。よって、原反ロール用リフト装置10を原反ロールの保管エリアまで移動し、そこで原反ロールをテーブル32上に置いたならば、その状態で包装機の前の所定位置に移動する。
【0024】
次いで、操作ハンドル22を上記と逆方向に回転させてテーブル32を上昇させる。これに伴い、原反ロールも上昇移動する。この処理は、操作ハンドル22を回転させるだけでよく、また、アーム22bの長さを適宜にすることで、比較的小さい力でも操作ハンドル22を回転させてテーブル32ひいては原反ロールを上昇させることができる。原反ロールの中央の紙管50aが、包装機側の原反ロール支持軸に対向させた状態でテーブル32の上昇を停止し、可動ストッパープレート38を連結部37から離脱させ、テーブル32の前方を開放する。
【0025】
その状態で、原反ロールを軸方向に沿ってテーブル32の前方へ押し出す。すると、原反ロールが接触しているローラ35が自転してその前方への移動を補助し、原反ロールはスムーズにテーブル32から前方に飛び出て前方に位置する包装機の原反ロール支持軸(図示省略)に装着される。
【0026】
上述した実施形態では、テーブル32は1個配置した例を示したが、本発明はこれに限ることはなく、上下或いは左右に複数設けても良い。このようにすると、予備の原反ロールを置いておくことができ、交換作業の都度原反ロールの保管エリアに戻る必要もなく作業性が向上する。
【0027】
また、上述した実施形態では、ローラ35の傾斜角度(左右一対のローラのなす角)は固定としたが、一対のローラ35のなす角を変更可能にするとよい。上述したように角度が固定でも異なるロール径の原反ロールに対応できるが、角度を変えることで原反ロールのロール径に応じて適切な角度にするとより小さい力でスムーズに操作できる。このなす角を変更するための構成としては、ローラ35を保持する一対の軸受け支持プレート42のうちの外側に位置する方を昇降させたり、底板40を左右に分割し中央の谷部分を中心に所定角度回転可能でかつ所望の角度位置で固定できるようにしたりするなどの各種の構成により実現できる。
【0028】
また、上述した実施形態では、支持アーム30の上にテーブル32を固定設置したが、本発明はこれに限ることはなくテーブル32を水平面内で回転可能に支持する構造とすると良い。そのようにすると、台車部11の前後方向の向きとテーブル32(原反ロール)の軸方向とを所望の相対角度関係にすることができるので、作業スペースが制限されている場合に有効に機能する。
【符号の説明】
【0029】
10 原反ロール用リフト装置
11 台車部
12 昇降機構
13 原反ロール支持部
32 テーブル
35 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装機用の原反ロールを支持するとともに、その原反ロールをその軸方向にスライドさせて外方に搬出するスライドする機構を備えたテーブルと、
そのテーブルを昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構を支持し、前記テーブルとともにその昇降機構を移動する台車とを備えたことを特徴とする原反ロール用リフト装置。
【請求項2】
前記テーブルは、V型に配置した一対のローラを複数段に並列配置したものである請求項1に記載の原反ロール用リフト装置。
【請求項3】
前記一対のローラのなす角を変更可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載の原反ロール用リフト装置。
【請求項4】
前記テーブルが、複数備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の原反ロール用リフト装置。
【請求項5】
前記テーブルが、前記昇降機構に対して水平面内で回転可能に連携されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の原反ロール用リフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−25505(P2012−25505A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164008(P2010−164008)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000206093)大森機械工業株式会社 (138)
【Fターム(参考)】