説明

原子力発電所の換気空調設備およびその空調風量制御方法

【課題】原子力発電所の換気空調設備において、既存の設備改造量を少なく抑え、運用上の利便性を向上させるとともに、建屋内を負圧に維持し、送風機および排風機の風量変化時の外乱を低減させたもの。
【解決手段】原子力発電所の換気空調設備10は、外気を原子力発電所の換気空調対象区域12に供給する送風機24、送風機用電動機38と、換気空調対象区域12を換気した空気を排出させる排風機28および前記排風機用電動機39と、送風機24からの送風で換気空調対象区域12を換気して排風機28に導かれる換気ダクト23,26と、を有する。この換気空調設備10は、送風機用電動機38および排風機用電動機39に多速度電動機を用いる一方、温度検出器37からの温度信号aを信号処理する換気空調設備制御装置36を設ける。換気空調設備制御装置36は、送風機用電動機38および排風機用電動機39を個別に極数変換による回転速度制御と、風量調節ダンパ19のダンパ開度制御とで風量調節を行なう風量調節機能とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の換気空調技術に係り、特に、原子力発電所の建屋内の換気空調対象区域へ清浄な空気を供給し、換気した空気を排出する原子力発電所の換気空調設備およびその空調風量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所はその敷地内に建設された原子炉建屋、タービン建屋、放射性廃棄物処理建屋等の各建屋を有する。原子炉建屋、タービン建屋、放射性廃棄物処理建屋内には、空気中に放射能を含む可能性のある放射性区域を含む換気空調対象区域が備えられる。原子力発電所の換気空調設備は、この換気空調対象区域に清浄な外気を供給する給気側空調設備と、換気空調対象区域の排気側空調設備とを備える。
【0003】
原子力発電所の換気空調設備は、原子炉建屋内の換気空調対象区域より放射能が外部にもれることを防ぐため、外界に対して換気空調対象区域内が常時負圧に維持されるように、負圧維持手段が設けられている。
【0004】
一般に、原子力発電所の建屋の空調設備は、放射能を含んだ機器が設置されており、公衆被曝線量管理の理由から年間を通して一定の風量で運用される。風量を一定にするのは、排気された空気を排気筒から高所に吹き上げて拡散放出させる効果を変えないようにするためであり、風量は年間を通して最大所要風量に設定される。ここでの最大所要風量は、夏季の給気温度が最も高い状態での冷房に必要な風量となる。
【0005】
この原子力発電所の換気空調設備においては、冬期などで外気温度が低い場合には、給気風量を低減しても、建屋の各室内を所定の室温に十分に維持できる。外気温度が低い時期には、建屋内の冷房の観点からは風量を低減した運転が可能となるにもかかわらず、公衆被曝線量管理の理由から最大所要風量での定格風量運転をしており不要な送風動力が必要になる。この結果、原子力設備の換気空調設備は極めてエネルギ効率が悪く、多量のエネルギを必要とし、無駄なエネルギを消費している。
【0006】
また、原子力発電所の換気空調設備には、消費エネルギの低減を図るため、送風機および排風機を駆動する各電動機を個々の可変周波数電源装置により周波数制御して電源供給する方法が提案されている。可変周波数電源装置は電源供給される制御周波数を調節することで、送風機および排風機は、回転数を調節することができる。送風機および排風機は、給排気風量を必要な風量まで少なくすることで、不要な動力を低減することができる。しかし、一般に、可変周波数電源装置は大型であり、導入には、その設置場所の確保、工事費などのコストがかかり、設備改造量が増大するという課題が生じる。
【0007】
そこで、可変周波数電源装置を導入する際の設備改造量の低減を図った提案として、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1で提案されている原子力発電所の換気空調設備は、前記送風機と排風機の各電動機へ電源を供給する可変周波数電源装置を共通化している。可変周波数電源装置を共通化することで、可変周波数電源装置の設置台数を少なくし、導入による設備改造量を低減させている。
【0008】
ところで、特許文献1記載の換気空調設備制御装置には、給排気温度と最低給排気風量との関係式が予め設定されており、温度計で検出される給排気温度に応じて必要な最低給排気風量が換気空調設備制御装置で算出される。換気空調設備制御装置は、温度計で検出された給排気温度に応じて送風機および排風機の給排気風量を最低給排気風量に低減させるように、対応する送風機および排風機を共通の可変周波数電源装置の周波数制御により行っている。
【0009】
しかし、対応する送風機や排風機を可変周波数電源装置の周波数制御により、風量を低減させると、排気風量が少なくなり、排気筒からの吹出し流速が小さくなる。この吹出し流速が小さくなると、放射能が排気筒から放出される際の高さ(以下、有効高さ)が低くなるため、放射能が十分に拡散されない虞があり、公衆被曝線量が局所的に高くなるところが出る。
【0010】
排気筒からの吹出し風量が少なくなると、吹出し流速が小さくなり有効高さが低くなることから、有効高さが最低となる吹出し流速が少なくなった場合を想定し、吹出し流速が少なくなった場合でも、公衆被曝線量が原子力発電所建設時に評価している公衆被曝線量以上とならない原子力発電所の建屋内発生放射能濃度を計算により算出している。
【0011】
そして、この計算された建屋内発生放射能濃度を放射能検出器に設定値として予め設定しておく。このようにして求められた建屋内発生放射能濃度の放射能濃度であれば、吹出し流速が少ない場合の排気風量または給気風量であっても公衆被曝線量は、原子力発電所建設時に評価している公衆被曝線量以下を満たすことができる。
【0012】
一方、放射能検出器が計算された建屋内発生放射能濃度以上になったとき、温度計からの温度信号による送風機および排風機の作動制御を中止し、原子力発電所建設時に評価した給排気風量となるように送風機および排風機の作動制御を行うようになっている。この場合、換気空調設備制御装置は温度計からの温度信号に優先して、放射能検出器からの放射能信号により作動制御される。
【0013】
原子力発電所の換気空調設備では、原子力発電所の建屋内の放射能濃度が低いときは、送風機および排風機の給排気風量を温度検出器からの温度信号に基づいた換気空調に必要な最低給排気風量まで少なくすることで、送風機および排風機の動力を低減させる。建屋内の放射能濃度が高いときは、原子力発電所建設時に評価している公衆被曝線量以下を満たす給排気風量を実現している。また同時に風量調節ダンパの作動制御を行うことで、換気空調対象区域を負圧に維持することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−317236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1では、送風機および排風機用電動機に電源を供給する可変周波数電源装置を共通化し設置台数を削減することで、一般に可変周波数電源装置を導入する際の設置場所の確保や、工事費の増大などといった課題を回避している。また、可変周波数電源装置の作動制御により、送風機および排風機の風量を換気空調に必要な最低給排気風量まで抑え、動力低減を実現している。
【0016】
しかし、送風機と排風機を共通の可変周波数電源装置により、電源供給するようにすると、可変周波数電源装置の故障時に送風機および排風機が共に停止してしまうという課題や、メンテナンス時に、送風機と排風機を同時に止めなければならないといった課題がある。
【0017】
送風機と排風機は個別の運用が不可能であるため、運用上の利便性を低下させてしまっている。また、可変周波数電源装置はノイズを放出するため、共通化することで台数を削減したものの、依然として可変周波数電源装置が放出するノイズが核計装に悪影響を与える課題が残る。
【0018】
本発明は、上述した課題を考慮してなされたもので、既存の設備改造量を少なくして運用上の利便性を向上させた上で、送風機および排風機の消費動力を低減可能とし、建屋内を安定的に負圧に維持可能な原子力発電所の換気空調設備およびその空調風量制御方向を提供することを主な目的とする。
【0019】
本発明の他の目的は、原子力発電所の建屋内を負圧に維持可能で、建屋内の放射能濃度が高いときでも、外部への公衆被曝線量を抑え、送風機および排風機の風量が変化する際に生じる外乱も低減することが可能な原子力発電所の換気空調設備およびその空調風量制御方法を提供するにある。
【0020】
本発明の別の目的は、放出ノイズの影響を回避し、核計装に悪影響を与えない原子力発電所の換気空調設備およびその空調風量制御方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る原子力発電所の換気空調設備は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、外気を原子力発電所の換気空調対象区域に供給する送風機および前記送風機用電動機と、前記換気空調対象区域を換気した空気を排出させる排風機および前記排風機用電動機と、前記送風機からの送風で換気空調対象区域を換気して前記排風機に導かれる換気ダクトと、を有する原子力発電所の換気空調設備において、前記送風機用電動機および前記排風機用電動機に多速度電動機を用いる一方、前記換気ダクトに設けた温度検出器からの温度信号を信号処理する換気空調設備制御装置を設け、前記換気空調設備制御装置は、前記送風機用電動機および排風機用電動機を個別に極数変換による回転速度制御と、前記換気ダクトに設けられた風量調節ダンパのダンパ開度制御とで風量調節を行なう風量調節機能を備えたことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明に係る原子力発電所の換気空調設備は、上述した課題を解決するために、請求項7に記載したように、外気を原子力発電所の換気空調対象区域に供給する送風機および前記送風機用電動機と、前記換気空調対象区域を換気した空気を排出させる排風機および前記排風機用電動機とを複数台ずつ有し、前記送風機からの送風で換気空調対象区域を換気して前記排風機に導かれる換気ダクトを備えた原子力発電所の換気空調設備において、一方の前記送風機用電動機および排風機用電動機に多速度電動機を用い、残りの送風機用電動機および排風機用電動機を可変周波数電源装置で個別に制御可能に設け、前記換気ダクトに設けた温度検出器からの温度信号を信号処理する換気空調設備制御装置を設け、前記換気空調設備制御装置は、前記温度検出器からの温度信号に基づいて、多速度電動機の極数変換を行なう極数変換機能を備えた前記一方の送風機用電動機および排風機用電動機と、前記可変周波数電源装置の周波数制御を行なう前記残りの送風機用電動機および排風機用電動機との制御による風量調節機能を備えたことを特徴とするものである。
【0023】
一方、本発明に係る原子力発電所の換気空調設備の空調風量制御方法は、上述した課題を解決するために、請求項13に記載したように、外気を原子力発電所の換気空調対象区域に送風機で換気ダクトを介して供給し、前記換気空調対象区域を換気した空気を排風機から換気ダクトを通して排出する原子力発電所の換気空調設備の空調流量制御方法において、前記送風機を駆動する送風機用電動機と前記排風機を駆動する排風機用電動機とに多速度電動機をそれぞれ使用し、前記換気ダクトに設けた温度検出器からの温度信号に基づき、換気空調設備制御装置は、前記送風機用電動機および排風機用電動機の極数変換を行なう回転速度制御と、前記換気ダクトに設けられた風量調節ダンパのダンパ開度制御とを行ない、前記原子力発電所の換気空調設備を前記送風機および排風機と風量調節ダンパとを併用して風量調節制御を行なうことを特徴とする空調流量制御方法である。
【0024】
さらに、本発明に係る原子力発電所の換気空調設備の空調風量制御方法は、上述した課題を解決するために、請求項14に記載したように、外気を原子力発電所の換気空調対象区域に送風機で換気ダクトを介して供給し、前記換気空調対象区域を換気した空気を排風機から換気ダクトを通して排出する原子力発電所の換気空調設備の空調流量制御方法において、前記送風機および送風機用電動機と前記排風機および排風機用電動機とを複数台ずつ並設して使用し、一方の前記送風機用電動機および排風機用電動機に多速度電動機を使用し、残りの前記送風機用電動機および排風機用電動機を可変周波数電源装置で個別に周波数制御し、前記換気ダクトに設けた温度検出器からの温度信号に基づき、換気空調設備制御装置は、前記一方の送風機用電動機および排風機用電動機を極数変換して回転速度制御を行なう一方、前記残りの送風機用電動機および排風機用電動機を前記可変周波数制御装置による可変周波数電源装置の周波数制御を行ない、前記原子力発電所の換気空調設備を、複数台ずつの前記送風機および排風機を併用して風量調節制御を行なうことを特徴とする空調流量制御方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、多速度電動機を適用した送風機と排風機とを個別に運用でき、メンテナンス性や運用上の利便性を向上させ、既存の設備改造量を少なく抑えることができる。
【0026】
また、多速度電動機の極数変換による送風機および排風機の回転速度制御と風量調節ダンパのダンパ開度制御を共用したり、あるいは多速度機能の極数変換による一方の送風機および排風機の回転速度制御と可変周波数電源装置による残りの送風機および排風機用電動機の周波数制御を共用して風量調節制御を円滑かつスムーズに行なうことができ、原子力発電所の建屋内を負圧に維持し、送風機および排風機の風量が変化する際に生じる外乱を低減させることができる。
【0027】
さらに、送風機用電動機および排風機用電動機に多速度電動機を採用することで、換気空調設備制御装置を簡素化することができ、可変周波数電源装置を用いない場合には、放出ノイズの影響を回避し、核計装を安定的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る原子力発電所の換気空調設備の第1実施形態を示す系統図。
【図2】第1実施形態に備えられた換気空調設備制御装置による風量調節ダンパの制御方式を図式化した制御ブロック図。
【図3】原子力発電所の換気空調設備制御装置による風量調節ダンパの制御方式を図式化した制御ブロック図。
【図4】原子力発電所の換気空調設備の第2実施形態を示すもので、換気空調設備制御装置による風量調節ダンパの制御方法を図式化した制御ブロック図。
【図5】原子力発電所の換気空調設備の第3実施形態を示すもので、換気空調設備制御装置による極数変換方法を図式化した制御ブロック図。
【図6】原子力発電所の換気空調設備の第3実施形態を示すもので、換気空調設備制御装置による風量調節ダンパの制御方法を図式化した制御ブロック図。
【図7】原子力発電所の換気空調設備の第4実施形態を示すもので、換気空調設備制御装置による風量調節ダンパの制御方法を図式化した制御ブロック図。
【図8】原子力発電所の換気空調設備の第5実施形態を示すもので、換気空調設備制御装置による風量調節ダンパの制御方法を図式化した制御ブロック図。
【図9】本発明に係る原子力発電所の換気空調設備の第6実施形態を示す系統図。
【図10】原子力発電所の換気空調設備の第6実施形態を示すもので、換気空調設備制御装置による可変周波数電源装置の制御方法を図式化した制御ブロック図。
【図11】原子力発電所の換気空調設備の第7実施形態を示すもので、換気空調設備制御装置による可変周波数電源装置の制御方法を図式化した制御ブロック図。
【図12】原子力発電所の換気空調設備の第8実施形態を示すもので、換気空調設備制御装置による可変周波数電源装置の制御方法を図式化した制御ブロック図。
【図13】原子力発電所の換気空調設備の第9実施形態を示すもので、換気空調設備制御装置による可変周波数電源装置の制御方法を図式化した制御ブロック図。
【図14】原子力発電所の換気空調設備の第9実施形態を示すもので、換気空調設備制御装置による風量調節ダンパの制御方法を図式化した制御ブロック図。
【図15】原子力発電所の換気空調設備の第10実施形態を示すもので、換気空調設備制御装置による風量調節ダンパの制御方法を図式化した制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る原子力発電所の換気空調設備およびその空調風量制御方法の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0030】
[第1の実施形態]
図1は、原子力発電所の換気空調設備の第1の実施形態を示す系統図である。原子力発電所の換気空調設備10は、原子力発電所の敷地内に建設された原子炉建屋11、図示しないタービン建屋、放射性廃棄物処理建屋等の各建屋に設けられる。原子炉建屋11、タービン建屋、放射性廃棄物処理建屋内には、放射能を含む可能性のある放射性区域を含む換気空調対象区域12を備えている。
【0031】
換気空調設備10は、換気空調対象区域12に清浄な外気を供給する給気側空調設備13と、換気空調対象区域12からの排気を案内する排気側空調設備14と、この排気側空調設備14からの排気を高所から大気中に拡散放出させる排気筒15とを備える。原子力発電所は、沸騰水型原子力発電所であっても、加圧水型原子力発電所であっても、軽水炉以外に高速炉の原子力発電所であってもよい。
【0032】
また原子力発電所の換気空調設備10は、原子炉建屋11内の換気空調対象区域12より放射能が外部にもれることを防ぐため、換気空調対象区域12内が外界に対して常時負圧維持が図れるように、負圧維持手段17が設けられている。負圧維持手段17は、換気空調対象区域12内外の差圧を検出する差圧検出器18からの差圧検出信号に基づいて調節制御される風量調節手段としての風量調節ダンパ19とを備える。一例として風量調節ダンパ19は給気側空調設備13の送風機24下流側に設けたものである。風量調節ダンパ19は送風機24の上流側に設けてもよい。
【0033】
給気側空調設備13は、外気取入口20から取り入れられた外気を除塵して清浄化する給気フィルタ21と、この給気フィルタ21で清浄化された外気(空気)を加熱あるいは冷却する加熱・冷却器22と、この加熱・冷却器22からの清浄な空気を、換気空調対象区域12の原子炉建屋11内に給気ダクト23を介して供給する送風機(給気ファン)24とを有する。加熱・冷却器22は、1つのケーシング内に冷却コイルと加熱コイルを収容した一体構成物としても、あるいは独立した加熱器と冷却器とをシリーズに接続して構成してもよい。
【0034】
また、給気ダクト23には隔離弁25aが設けられ、この隔壁弁25aにより非常時に原子炉建屋11内を周囲から隔離できるようになっている。
【0035】
一例として例えば、110万kWクラスの沸騰水型原子力発電所では、原子炉運転中に原子炉建屋11内に約20万m/hrの換気空気量が導かれ、タービン建屋には約40万m/hrの換気空気量が案内される。
【0036】
一方、排気側空調設備14は換気空調対象区域12から排気ダクト26を介して排出される排気をフィルタリングして粒子状の放射能の一部を除去する排気フィルタ27と、排気フィルタ27でフィルタリングされ、異物除去された排気を送風する排風機28とを有し、この排風機(排気ファン)28から主排気ダクト29を通り、排気筒15に導かれるようになっている。排風機28は送風機21とともに組をなし、図1では1組の送・排風機を設置した例が示されている。
【0037】
換気空調対象区域12から排気を排気側空調設備14に案内する排気ダクト26には隔離弁25bが設けられており、この隔離弁25bは給気側空調設備13の隔離弁22と協働作用して原子炉建屋11内を周囲から隔離できるようになっている。隔離弁25a,25bは、排気ダクト29内を通る排気の放射線線量(放射能濃度)が予め定められた規定値を超えた場合に自動閉鎖され、放射性ガスの放出を原子炉発電所10の換気空調設備10から図示しない非常用ガス処理系に切り換えて処理されるようになっている。
【0038】
また、排気側空調設備14の主排気ダクト29には、タービン建屋からの排気ダクト30や放射性廃棄物処理建屋からの排気ダクト31も接続される。原子炉建屋11からの排気は、タービン建屋や放射性廃棄物建屋からの排気と合流して排気筒15に導かれるようになっている。
【0039】
原子力発電所の換気空調設備10は、給気ダクト23、排気ダクト26(30,31)および主排気ダクト29により、建屋内の換気空調対象区域12を換気する換気ダクトを構成している。
【0040】
一方、原子力発電所の換気空調設備10には、主排気ダクト29内を通る大気中の放射能濃度を測定する放射能検出器35と、この放射能検出器35からの放射能検出信号を処理する換気空調設備装置36とを有する。この換気空調設備制御装置36には、差圧検出器18からの差圧検出信号と温度計37からの温度検出信号が入力されるようになっている。
【0041】
温度検出器としての温度計37は給気側空調設備13の下流側、例えば給気ダクト23に設けられており、給気ダクト23内を通る給気の温度を測定し、検出している。温度計37は原子炉建屋11、例えば換気空調対象区域12の建屋内に設けても、また、換気空調対象区域12の下流側に設けてもよい。給気側空調設備13の下流側、換気空調対象区域12の建屋内および換気空調対象区域12の下流側の少なくとも1箇所に設けられた温度計37からの温度(検出)信号aが換気空調設備制御装置36に入力される。
【0042】
また、原子力発電所の換気空調設備10に備えられる送風機24および排風機28は、各電動機38,39でそれぞれ駆動される。送風機用電動機38および排風機用電動機39には、母線40から分岐される支線に設けられた遮断器41a,41bを介して電源が供給される。送風機用電動機38および排風機用電動機39には、極数変換機能を具備した多速度電動機が用いられる。多速度電動機は、極数変換機能の極数変換器43a,43bを備えており、多速度電動機には、誘導電動機と同じ原理が採用され、極数変換により回転速度が段階的に調整される。
【0043】
誘導電動機の回転速度Nと同期速度Nsとの関係は、次の(1)式と(2)式で表わされる。
[数1]
N=(1−S)Ns ……(1)
Ns=f/P ……(2)
但し、f:電源周波数、
P:極数、
s:すべり、
である。
【0044】
すべりsが一定であると、誘導電動機の回転速度Nは、同期速度Nsに比例するが、同期速度Nsは極数sの逆数に比例し、極数sを変化させれば、同期速度Nsおよび誘導電動機の回転速度Nが変化する。このように極数sを切り換えることにより誘導電動機の回転速度Nを変更させることが多速度電動機の原理である。
【0045】
多速度電動機の極数は、理論上何段階にも変えることができるが、電動機も極数切換装置も複雑なものとなるため、連続的な回転速度制御は行なわれない。しかし、換気空調設備制御装置36は装置の構成を簡単にできるため、工作機械やエレベータ、ポンプ、送風機など使用上段階的に回転速度を変化させても、設備費のコストを低減させることができ、設備費の低減を図る用途に適している。第1実施形態では、多速度電動機38,39は、数段階の極数変換機能、例えば極数大と極数小の2段階に極数変換を行なう例を示す。多速度電動機の極数を例えば2段階とすることで、極数変換器43a,43bをより簡素化し、換気空調設備制御装置36の構成を簡素化することができる。
【0046】
従来の原子力発電所の換気空調設備では、建屋内を負圧に維持する負圧維持手段として風量調節ダンパが用いられているが、風量調節機能の役割を果たしていない。この原子力発電所の換気空調設備10では、風量調節ダンパ19の機能を拡大して風量調節機能を追加し、給気風量の微調節を行なっている。図1では、給気側空調設備13の送風機24出口側に風量調節ダンパ19を設置した例を示している。この風量調節ダンパ19は、排気側空調設備14における排風機28の出口に設置してもよい。風量調節ダンパ19による風量調節の微調節は、送風機24や排風機28の風量調節の粗調節に対し、数分の1、一例として1/2〜1/5の調節割合で風量調節が行なわれている。
【0047】
風量調節ダンパ19は風量調節弁などの風量調節手段であってもよい。
【0048】
図2は、原子力発電所の換気空調設備10の第1実施形態において、換気空調設備制御装置36の機能を実現する極数変換方法を図式化した制御ブロック図である。
【0049】
給気側空調設備13の給気ダクト23に設置された温度検出器としての温度計37からの温度(検出)信号aは換気空調設備制御装置36内の温度警報設定器45に入力され、この設置器45で予め設定された温度設定値と比較される。温度(検出)信号aが温度設定値より高い場合は、電動機高速運転信号bが出力され(多速度電動機は極数小の運転が行なわれ)、送風機24は高速運転される。また、温度(検出)信号aが温度設定値より低い場合は、論理否定演算器46を通して(多速度電動機は極数大に変換され)、送風機24は低速運転される。
【0050】
具体的には、温度信号aが温度設定値より高い場合は、極数変換器43aを経て多速度電動機である送風機用電動機38に、極数小の電動機高速運転信号bが入力されて、送風機24は高速運転される。温度設定値より低い場合には、極数変換器43bを経て送風機用電動機38に極数大の電動機低速運転信号cが入力されて、送風機24は低速運転される。
【0051】
図2では、送風機用電動機38に備えられた多速度電動機の極数変換方法について説明したが、排風機用電動機39に備えられる多速度電動機の極数変換方法についても同様にして行なわれる。
【0052】
さらに、図3は原子力発電所の換気空調設備10において、風量調節ダンパ19の制御機能を図式化した制御ブロック図である。
【0053】
給気ダクト23に設置される温度計37からの温度検出(測定)信号aは、換気空調設備制御装置36の温度/ダンパ開度変換器48,49にそれぞれ入力される。温度/ダンパ開度変換器48,49には、予め設定された給気温度とダンパ開度の関係が設定されており、温度計37からの温度(検出)信号aに基づいて風量調節ダンパ19のダンパ開度を算出している。
【0054】
温度計37からの温度(検出)信号aが温度/ダンパ開度変換器(電動機高速運転時)48および(電動機低速運転時)49に入力され、温度/ダンパ開度変換器(電動機高速運転時)48から出力されるダンパ開度信号(電動機高速運転時)dと温度/ダンパ開度変換器(電動機低速運転時用)49から出力されるダンパ開度信号(電動機低速運転時)eを信号切換器50に入力し、極数変換器43の極数信号fに応じて2つの信号を切り換える。すなわち、多速度電動機の制御信号が高速運転信号であるときは信号切換器50からダンパ開度信号(電動機高速運転時)dを出力してこれをダンパ開度信号gとしている。多速度電動機の制御信号が低速運転信号であるときは、ダンパ開度信号(電動機低速運転時)eを出力し、ダンパ開度信号gとしている。
【0055】
これにより極数変換器43(43a,43b)の極数の切換えにより送風機24および排風機28の給排気風量の粗調節を行い、風量調節ダンパ19の調節により給排気風量の微調節を行うことで、2段階の風量調節制御を行なうことができ、給気温度に応じた最低給排気風量を実現することが可能となる。
【0056】
第1実施形態では、従来用いられていた可変周波数電源装置(インバータ盤)を使用することなく送風機24および排風機28の給排気風量を低減させ、省電力化が実現可能となる。このため、可変周波数電源装置を導入する際に問題となる設備改造量の増大を回避することができる。また送風機24および排風機28を個別に運用可能であるため、運用上の利便性を向上させることができる。さらに、可変周波数電源装置を使用しないため、可変周波数電源装置の放出ノイズが核計装に与える悪影響もなくすことも可能となる。
【0057】
次に、原子力発電所の換気空調設備の作用について説明する。
【0058】
原子力発電所の換気空調設備10が作動すると、給気側空調設備13の外気取入口20から取り入れられた外気は、給気フィルタ21にて除塵され、清浄化される。この清浄化された外気は、加熱・冷却器22により所定の温度に調節される。外気は、夏期あるいは中間期には必要に応じて冷却され、冬期は必要に応じて加熱された後、送風機24により換気空調対象区域12の各室に給気ダクト23を通して給気し、換気している。
【0059】
原子炉建屋11の各室に送られた外気は、室内設置機器からの発生熱負荷の除熱を行ない、各室の換気を行なって排気ダクト26により排気側空調設備14に導かれる。
【0060】
排気ダクト26にて原子炉建屋11の各室から集められた排気は、排気側空調設備14の排気フィルタ27にて粒子状の放射能の一部を除去した後、排風機28にて主排気ダクト29を介して排気筒15に送られ、この排気筒15の頂部吹出し口から数十m、例えば30m程度吹き上げ、高所にて拡散排気している。この排気筒15あるいは主排気ダクト29には、排気中に放射能を含む可能性のある他の建屋からの排気ダクト30,31も接続され、他の建屋からの排気も合流して排気筒15から吹き上げられ、拡散排気される。
【0061】
この原子力発電所の換気空調設備10によれば、給気側空調設備13の下流側(あるいは換気空調対象区域12の建屋内、換気空調対象区域12の下流側)に温度計37を設けて給気温度(換気温度あるいは排気温度)を検出し、検出された給気温度から原子力発電所の建屋内を適正な室温に維持できる最低給気風量を換気空調設備制御装置36で求め、この風量制御装置36により、多速度電動機である送風機用電動機38および排風機用電動機39を各極数変換器43a,43bで作動制御し、送風機24および排風機28を個別に制御している。
【0062】
この換気空調設備制御装置36では、温度計37からの温度信号に基づき、送風機24および排風機28用電動機38,39の極数を極数変換器43a,43bにより、所定の極数に、例えば、極数大および極数小の2段階に切り換えることで、送風機24および排風機28の回転速度を段階的に調節する。
【0063】
このように、送風機用電動機38および排風機用電動機39を各種極数変換器43a,43bにより、極数変換し、制御することにより、給気風量ひいては排気風量を例えば許容できる最低給気風量ひいては排気風量の最低値となるように低減される。
【0064】
このように、給気風量あるいは排気風量を低減させても、原子力発電所の建屋内を適切な室温に維持でき、この室温を維持した状態で換気空調対象区域12の建屋内を換気させることができる。
【0065】
給気風量あるいは排気風量を低減させることにより、放射能検出器35が、万一、予め設定された放射能濃度以上を検出した場合には、この放射能信号mを放射能検出器35から換気空調設備制御装置36に出力する。換気空調設備制御装置36は、放射能信号mの入力を受けて、極数変換器43a,43bの極数変換を例えば2段階制御して多速度電動機38,39を個別に制御し、送風機24および排風機28の風量低減させないように粗調節して作動制御されるので、実際の公衆被爆線量が、原子力発電所建設時に評価している評価している公衆被爆量以上となることがない。
【0066】
このように、図1に示された原子力発電所の換気空調設備10によれば、原子力発電所建設時に評価している公衆被爆量を満たした上で、給気風量や排気風量を送風機24および排風機28の粗調節と、風量調節ダンパ19の微調節とを組み合せて低減させることができ、送風機24や排風機28の作動に無駄なエネルギ消費を防ぐことができる。
【0067】
また、給気風量が低減することから、その給気を冷却または加温するエネルギも低減させることができる。夏期や中間期には冷房費の低減が図れ、また冬期には暖房費の低減を図ることができる。
【0068】
また、原子力発電所の各建屋からの排気風量を低減させることにより、給気フィルタ22や排気フィルタ27のフィルタ寿命を延長させることができる一方、排気フィルタ27の廃棄物量の低減を図ることができ、放射性廃棄物の量を軽減させることができる。各建屋内に送られる外気量も軽減できるので、外気による塩分持込みによる悪影響も軽減できる。
【0069】
この原子力発電所においては、原子力発電所の換気空調対象区域12に外気を送風機24により風量調節ダンパ19を介して供給するステップと、この外気の供給により、換気空調対象区域12を換気するステップと、換気空調対象区域12を換気した空気を排風機28により排出するステップとを有し、換気空調対象区域12の上流側および下流側設置の送風機24および排風機28は、極数変換器43a,43bの極数変換機能により多速度電動機38,39を極数変換して個別に作動制御され、空調風量可変制御を行なうようになっている。
【0070】
ところで、原子力発電所は、建設場所の地形により排気筒15の地上高さHを異にするが、一般的には排気筒15は百数十m、例えば150mの地上高さHを有する。排気筒15は、その内部あるいは排気ダクト26を通る排気風量の変化に応じて、頂部の吹出し口からの排気の吹上げ高さが変化し、排気筒15により通常数十m、例えば20m〜30m高い高所から排気が大気中へ拡散放出されるようになっている。
【0071】
この原子力発電所の換気空調設備10では、送風機用電動機38および排風用電動機39に多速度電動機を用いる一方、給気ダクト23に設けた温度検出器(温度計)37からの温度信号aを信号処理する換気空調設備制御装置36を設ける。
【0072】
そして、換気空調設備制御装置36は、送風機用電動機38および排風機用電動機39を極数変換器43a,43bで極数変換による個別の回転速度制御と、給気ダクト23に設けられた風量調節ダンパ19のダンパ開度制御とを行なう風量調節機能を備えたものである。
【0073】
第1実施形態に示された原子力発電所の換気空調設備においては、送風機24と排風機28を共通の可変周波数電源装置を介して電源供給する必要がなく、可変周波数電源装置を不要とするので、この電源装置の故障時に同時に送風機24および排風機28を停止させる問題が発生せず、設備改造量を少なく抑えることができ、さらに、メンテナンス時に送風機24と排風機28を同時に停止させる問題が生じることもない。
【0074】
また、送風機24と排風機28は、多速度電動機である送風機用電動機38および排風機用電動機39を極数変換器43(43a,43b)の極数変換機能により個別に作動制御を行なうことができる。したがって、送風機24および排風機28を個別に運用することができ、運用上の利便性が向上する。
【0075】
また、図1〜図3では、原子力発電所の換気空調設備の空調流量制御方法が実施される。この空調流量制御方法は、外気を原子力発電所の換気空調対象区域12に送風機24で給気ダクト23を介して供給し、換気空調対象区域12を換気した空気を排風機28から排気ダクト26を通して排出する方法である。原子力発電所の換気空調設備の空調流量制御方法では、送風機24を駆動する送風機用電動機38と排風機28を駆動する排風機用電動機39とに多速度電動機をそれぞれ使用する。そして、給気ダクト23に設けた温度検出器37からの温度信号aに基づき、換気空調設備制御装置36により、送風機用電動機38および排風機用電動機39の極数変換を行なう粗調節の回転速度制御と、給気ダクト23に設けられた微調節の風量調節ダンパ19のダンパ開度制御とを行ない、原子力発電所の換気空調設備10を送風機24および排風機28と風量調節ダンパ19とを併用して風量調節制御を行なう空調流量制御方法である。
【0076】
[第2の実施形態]
次に、原子力発電所の換気空調設備の第2実施形態を説明する。
【0077】
第2実施形態は、図4に示すように、原子力発電所の換気空調設備10Aにおける換気空調設備制御装置36Aを改良したもので、他の構成および作用は第1実施形態に示すものと異ならないので、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
この換気空調設備制御装置36Aは、第1実施形態の図3に示した風量調節ダンパ19を制御する換気空調設備制御装置36と同様に、温度計37からの温度検出信号aに基づいてダンパ開度信号gを出力する一方、換気空調対象区域12内外の差圧を検出する差圧検出器18を有する。そして、差圧検出器18からの差圧(検出)信号hを差圧偏差演算器53に入力させる。この差圧偏差演算器53は、差圧(検出)信号hを目標差圧設定器54から出力された目標差圧信号iと比較して信号処理し、差圧偏差信号jを出力している。この差圧偏差信号jは、PI演算器55にて換気空調対象区域12の内外差圧を一定にするための(差圧検出信号hに基づく)ダンパ開度信号kを算出している。
【0079】
温度計37からの温度(検出)信号aに基づく信号切換器50からのダンパ開度信号gと差圧検出信号hに基づくPI演算器55からのダンパ開度信号kは低値選択器56に入力されて比較され、選択された低値の信号(gまたはh)であるダンパ開度信号lを出力している。そして、低値選択器56から出力されるダンパ開度信号lに基づいて、風量調節ダンパ19のダンパ開度が調節され、この風量調節ダンパ19のダンパ開度により、換気空調対象区域12に供給される給気風量が微調節される。
【0080】
第2実施形態に示した換気空調設備制御装置36Aにおいては、給気温度に応じた最低給排気風量を実現する風量調節ダンパ19のダンパ開度を実現する一方で、換気空調対象区域12内を負圧に維持できないときは、低値選択器56により低値のダンパ開度信号を出力することで、風量調節ダンパ19を絞り、換気空調対象区域3を負圧に維持するように作動制御を行うことができる。
【0081】
なお、第2実施形態では、風量調節ダンパ19は給気側空調設備13の送風機24の出口に設置されているが、排気側空調設備の排風機28の出口に設置することも可能である。風量調節ダンパ19を排風機28の出口に設置する場合は、図4の風量調節ダンパ19の風量制御において、低値選択器56を高値選択器に変える必要がある。
【0082】
第2実施形態記載の換気空調設備制御装置36Aは、換気空調対象区域12内と外界との圧力差を検出する差圧検出器18からの差圧信号hを信号処理し、換気空調対象区域12内を外界に対して負圧に維持するために、風量調節ダンパ19のダンパ開度制御を行なう差圧制御機能を備える。さらに、換気空調設備制御装置36Aは、建屋内が負圧を維持できないとき、温度計37の温度信号aから演算される風量調節ダンパ開度信号gと差圧検出器18の差圧信号hから演算される風量調節ダンパ開度信号kとを低値選択器56で比較して低位の風量調節ダンパ開度を選択し、このダンパ開度信号lで風量調節ダンパ19のダンパ開度制御を行ない建屋を負圧に維持する機能を備えている。
【0083】
[第3の実施形態]
図5および図6は、原子力発電所の換気空調設備の第3実施形態を説明するものである。
【0084】
第3実施形態における原子力発電所の換気空調設備10Bは、図5に示すように、換気空調設備制御装置36Bを改良したものであり、他の構成は図1に示す原子力発電所の換気空調設備10と異ならないので、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
図5に示す第3実施形態では、原子力発電所の換気空調設備10Bを構成する送風機24や排風機28の駆動用電動機38,39に多速度電動機を採用し、この多速度電動機を極数変換制御するものである。多速度電動機の極数変換制御は、換気空調設備制御装置36Bの機能を実施するもので、図5は、極数変換方法を図式化した制御ブロック図である。
【0086】
換気空調設備制御装置36Bは、図2に示されるものと同様、温度計37で計測された温度(検出)信号aに基づいて温度警報設定器45により温度高信号(電動機高速度信号b)を出力する。一方、主排気ダクト29に放射能検出器35が設置されており、この放射能検出信号mに基づいて、放射能警報設定器58から放射能(検出)信号nを出力する。
【0087】
温度警報設定器45からの温度高信号bと放射能警報設定器58からの放射能(検出)信号nを用いて論理否定演算器59a,59bと論理積演算器60と論理和演算器61を組み合せることで、給気温度が高いときまたは放射能濃度が高いときは、多速度電動機の制御信号は電動機高速運転信号oとなり、多速度電動機は極数小で駆動されて送風機24は高速運転が行なわれる。給気温度が低くかつ放射能濃度が低いときのみ多速度電動機の制御信号は電動機低速運転信号pとなり、多速度電動機極数大となって送風機24は低速運転される。
【0088】
第3実施形態では、送風機用電動機38に備えた多速度電動機の極数変換方法について説明をしたが、排風機用電動機39に備えた多速度電動機の極数変換方法についても同様である。
【0089】
第3実施形態記載の換気空調設備制御装置36Bは、主排出ダクト29(または排気ダクト26)に設けた放射能検出器35からの放射能信号gおよび温度検出器37からの温度信号aを信号処理し、多速度電動機38,39の極数と風量調節ダンパ19のダンパ開度を調節して風量調節を行なう風量調節機能を備える。
【0090】
さらに、換気風量設備制御装置36Bは、放射能検出器35からの放射能信号mが設定値より高いとき、公衆被曝線量を目標値以下に抑えるべく、大気中に拡散放出できる給排気風量となるように多速度電動機の極数を変換して送風機24および排風機28を高速運転させたものである。
【0091】
[第4の実施形態]
図7は、原子力発電所の換気空調設備の第4実施形態を示すものである。
【0092】
第4実施形態に示された原子力発電所の換気空調設備10Cは、図7に示すように、換気空調設備制御装置36Bを改良したものであり、他の構成および作用は、図1に示す原子力発電所の換気空調設備10と異ならないので、同じ構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
第4実施形態を実施する原子力発電所の換気空調設備10Cは、第2実施形態に示された換気空調設備制御装置36A(図4参照)に、送風機24および排風機28の給排気風量が段階的に変化することを避けるために、給排風量の変化をできるだけ小さく抑える風量調節ダンパ19の風量変化抑制装置67を追設したものである。
【0094】
この風量変化抑制装置67は、換気空調対象区域12内外の差圧を差圧検出器18で検出し、検出された差圧信号hを目標差圧信号iと比較して差圧偏差演算器53から差圧偏差信号jを出力している。この差圧偏差信号jはPI演算器55にて、換気空調対象区域12の内外差を一定にするためのダンパ開度信号(電動機高速運転時)dを出力している。
【0095】
PI演算器55にて換気空調対象区域12の内外差圧を一定にするためのダンパ開度信号dと、ダンパ開度設定器68からのダンパ開度設定値を加算したダンパ開度加算器69からのダンパ開度信号(電動機低速運転時)eとが信号切換器50aに入力される。信号切換器50aは極数変換器43からの極数信号fに応じて、ダンパ開度信号(電動機高速運転時)dとダンパ開度信号eとが切り換えられる。
【0096】
そして、多速度電動機の制御信号が高速運転信号であるときは信号切換器50aからダンパ開度信号(電動機高速運転時)dを出力し、多速度電動機の制御信号が低速運転信号であるときは、ダンパ開度信号(電動機低速運転時)eを出力する。ここで、極数変換器43(43a,43b)の極数が切り換わる際に送風機24および排風機28の回転速度が段階的に変化することで送風機24および排風機28の風量が段階的に変化するが、給排気風量が段階的に変化することを避けるために、風量調節ダンパ19を調節する分の開度をダンパ開度設定器68の設定値として与える。
【0097】
原子力発電所の換気空調設備10Cの第4実施形態においては、極数変換器43(43a,43b)の極数変換時に、風量調節ダンパ19をダンパ開度設定器68で予め設定した開度分変化させることで、換気空調対象区域12を流れる総給排気風量が段階的に変化するのを避け、給排気風量の変化が円滑かつスムーズに、微調節し、しかもできるだけ小さくすることができる。第4実施形態では、風量調節ダンパ19は給気側空調設備13の送風機24の出口に設置されているが、排気側空調設備14の排風機28の出口に設置することも可能である。風量調節ダンパ19を排風機28の出口に設置する場合は、図7の風量調節ダンパ19の制御において、低値選択器56を高値選択器66(図6参照)に変える。
【0098】
[第5の実施形態]
図8は、原子力発電所の換気空調設備の第5実施形態を示すものである。
【0099】
第5実施形態に示された原子力発電所の換気空調設備10Dは、図8に示すように、換気空調設備制御装置36Dを改良したもので、換気空調設備制御装置36Dは、第3実施形態に示す換気空調設備制御装置36Bと第4実施形態に示す換気空調設備制御装置36Cとを組み合せたものである。第3実施形態の換気空調設備制御装置36Bと第4実施形態の換気空調設備制御装置36Cの各構成と同じ構成には同一符号を用いて説明を省略する。
【0100】
図8は、換気空調設備制御装置36Dの機能を実現する、風量調節ダンパ19の風量調節制御を図式化した制御ブロック図である。この換気空調設備制御装置36Dは、温度計37からの温度(検出)信号aに基づくダンパ開度信号gと、放射能検出器35からの放射能(検出)信号mに基づくダンパ開度信号qとを高値選択器66にて比較し、高値のダンパ開度信号rを選択し、出力する。
【0101】
一方、高値選択器66で選択された高値のダンパ開度信号rと、差圧検出器18からの差圧検出信号hに基づくダンパ開度信号kとが低値選択器56に送られ、この低値選択器56で両者の低値をダンパ開度信号lとして風量調節ダンパ19に出力している。風量調節ダンパ19は、低値選択器56からのダンパ開度信号lにより風量制御が行なわれるようになっている。
【0102】
第5実施形態に示された原子力発電所の換気空調設備10Dでは、負圧維持手段17が働き、換気空調対象区域12内を負圧に維持する差圧制御機能が作動しているとき、建屋内の放射能濃度が高くなった場合に、負圧維持手段17の差圧制御機能を優先させて、換気空調対象区域3を負圧に維持することができる。
【0103】
第5実施形態では、風量調節ダンパ19は給気側空調設備13の送風機24の出口に設置されているが、排気側空調設備14の排風機28の出口に設置することもできる。風量調節ダンパ19を排風機28の出口に設置する場合は、図の風量調節ダンパ19の制御において、低値選択器56を高値選択器に変える必要がある。
【0104】
図8に示す第5実施形態では、換気空調設備制御装置36Dは、換気空調対象区域12内と外界との差圧を検出する差圧検出器18からの差圧信号hを演算して、換気空調対象区域12内を外界に対して負圧に維持する風量調節手段としての風量調節ダンパ19のダンパ開度を制御する微調節の風量調節機能と、放射能検出器35で検出された放射能信号mを演算して多速度電動機の極数と風量調節ダンパ19のダンパ開度を調節する粗調節の風量調節機能とを備える。
【0105】
さらに、換気空調設備制御装置36Dは、差圧検出器18からの差圧信号hに基づく風量調節機能と放射能検出器35からの放射能信号mに基づく風量調節機能とが共に作動する場合、差圧信号hから演算される風量調節ダンパ開度と、放射能信号mから演算される風量調節ダンパ開度とを低値選択器56で比較して微調節し、低位の風量調節ダンパ開度のダンパ開度信号lを選択することで、建屋内を負圧に維持する機能を備えたものである。
【0106】
[第6の実施形態]
図9および図10は、原子力発電所の換気空調設備の第6実施形態を示すものである。
【0107】
第6実施形態は、送風機および排風機を複数台ずつ有する原子力発電所の換気空調設備10Eを対象とし、この換気空調設備10Eの一方(一部)の送風機用電動機38Aおよび排風機用電動機39Aに極数変換器43a,43bを、また他方(残り)の送風機用電動機38Bおよび排風機用電動機39Bを可変周波数電源装置70A,70Bで周波数制御運転されるものである。図9は、説明簡略化のため、送風機24A,24Bおよび排風機28A,28Bを2台ずつ設けた例を示す。他の構成は、風量調節ダンパを不用とした以外は図1の第1実施形態を示す原子力発電所の換気空調設備10と異ならないので、同じ構成および作用には同一符号を付して、説明を省略する。
【0108】
図9の原子力発電所の換気空調設備10Eの第6実施形態では、送風機24A,24Bおよび排風機28A,28Bを2台ずつ有する換気空調設備10Eにおいて、一方の送風機用電動機38Aおよび排風機用電動機39Aに多速度電動機を用いる一方、他方の送風機用電動機38Bおよび排風機用電動機39Bを可変周波数電源装置70A,70Bで周波数制御運転した例を示すものである。
【0109】
図9に示す第6実施形態では、換気空調対象区域12の空調風量は、多速度電動機を適用した一方の送風機24Aと排風機28Aを粗調節運転を行ない、他方の送風機24Bおよび排風機28Bは可変周波数電源装置70A,70Bで周波数制御される送風機用電動機38Bおよび排風機用電動機39Bの駆動により、空調風量は微調節運転される。粗調節運転と微調節運転の送風運転量の関係は、第1実施形態で示すものと同様である。このため、第1実施形態で設けた微調節用の風量調節ダンパは設ける必要がなく、設けられていない。なお、符号41c,41dは、母線40からの電源供給を遮断する遮断器である。
【0110】
図10は、原子力発電所の換気空調設備10Eに備えられた換気空調設備制御装置36Eの機能を実現する可変周波数電源装置70A,70Bの制御方法を図式化した制御ブロック図である。
【0111】
換気空調設備制御装置36Eでは、図3に示した第1実施形態の換気空調設備制御装置36の温度/ダンパ開度変換器(電動機高速運転時)48に換えて温度/周波数変換器(電動機高速運転時)73を、温度/ダンパ開度変換器(電動機低速運転時)49に換えて温度/周波数変換器(電動機低速運転時)74をそれぞれ設けた構成が用いられる。
【0112】
これにより、第1実施形態に示された風量調節ダンパ19の機能を、可変周波数電源装置70A,70Bにより電源供給される送風機24Bおよび排風機28Bの各周波数制御運転で実現することが可能になる。したがって、極数変換機43(43a,43b)の極数の切換えにより粗調節の風量調整を行い、可変周波数電源装置70A,70Bの周波数制御運転により微調節の風量調整を行うことで、給気温度に応じた最低給排気風量を実現することができる。
【0113】
第6実施形態では、送風機24A,24Bおよび排風機28A,28Bを複数台ずつ有する換気空調設備10Eにおいても、可変周波数電源装置70A,70Bの導入台数を極力少なくし、設備改造量を抑えた上で、送風機24A,24Bおよび排風機28A,28Bの給排気風量を低減させ、省電力化を図ることができる。また送風機1および排風機2を個別に運用可能であるため、運用上の利便性を向上させることができる。
【0114】
第6実施形態に示された原子力発電所の換気空調設備10Eは、外気を原子力発電所の換気空調対象区域12に供給する送風機24A,24Bおよび前記送風機用電動機38A,38Bと、換気空調対象区域12を換気した空気を排出させる排風機28A,28Bおよび排風機用電動機38A,38Bとを複数台ずつ有し、送風機24A,24Bからの送風で換気空調対象区域12を換気して排風機28A,28Bに導かれる換気ダクト23,26,28を備える。
【0115】
この原子力発電所の換気空調設備10Eは、一方の送風機用電動機38Aおよび排風機用電動機39Aに多速度電動機を用い、残りの送風機用電動機38Bおよび排風機用電動機39Bを可変周波数電源装置70A,70Bで個別に周波数制御可能に設け、給気(換気)ダクト23に設けた温度検出器37からの温度信号aを信号処理する換気空調設備制御装置36Eを設ける。
【0116】
そして、換気空調設備制御装置36Eは、温度検出器37からの温度信号aに基づいて、多速度電動機の極数変換を行なう極数変換機能を備えた一方の送風機用電動機38Aおよび排風機用電動機39Aと、可変周波数電源装置70A,70Bの周波数制御で駆動される残りの送風機用電動機38Bおよび排風機用電動機39Bとの制御により、粗調節と微調節の風量調節が行なわれる。可変周波数電源装置70A,70Bの簡素化を図ることができる。
【0117】
第6実施形態では、図9および図10に示す原子力発電所の換気空調設備の空調流量制御方法が実施される。
【0118】
原子力発電所の換気空調設備10Eは、外気を原子力発電所の換気空調対象区域12に複数個の送風機24,28で給気(換気)ダクト23を介して供給し、換気空調対象区域12を換気した空気を排風機28A,28Bから排気(換気)ダクト26を通して排出する空調流量制御方法である。
【0119】
原子力発電所の換気空調設備10Eは、送風機24A,24Bおよび送風機用電動機38A,38Bと排風機28A,28Bおよび排風機用電動機39A,39Bとを複数台ずつ並設して併用し、一方の送風機用電動機38Aおよび排風機用電動機39Aに多速度電動機を使用し、残りの送風機用電動機38Bおよび排風機用電動機39Bを可変周波数電源装置70A,70Bで個別に周波数制御して駆動し、換気ダクト23,26に設けた温度検出器37からの温度信号aに基づき、換気空調設備制御装置36Eは、一方の送風機用電動機38Aおよび排風機用電動機39Aを極数変換して粗調節の回転速度制御を行なう一方、残りの送風機用電動機38Bおよび排風機用電動機39Bを可変周波数制御装置による可変周波数電源装置70A,70Bの微調節の周波数制御を行なう。そして、原子力発電所の換気空調設備10Eを、複数台ずつの送風機24A,24Bおよび排風機28A,28Bを併用して粗調節と微調節の滑らか、かつ円滑な風量調節制御を行なう空調流量制御方法である。
【0120】
[第7の実施形態]
図11は、原子力発電所の換気空調設備の第7実施形態を示すものである。
【0121】
第7実施形態に示された原子力発電所の換気空調設備10Fは、換気空調設備制御装置36Fを改良したものであり、全体的構成は第6実施形態に示される換気空調設備10Eと異ならないので、同じ構成には同一符号を付して、説明を省略する。
【0122】
図11に示される第7実施形態の換気空調設備制御装置36Fは、給気側換気空調設備13の送風機24Bに電源を供給する可変周波数電源装置70Aの制御方法を図式化した制御ブロック図である。換気空調設備制御装置36F内において、図4に示した第2実施形態の換気空調設備制御装置36Aの温度/ダンパ開度変換器(電動機高速運転時)48に換えて温度/周波数変換器(電動機高速運転時)73を、温度/ダンパ開度変換器(電動機低速運転時)49に換えて温度/周波数変換器(電動機低速運転時)74をそれぞれ設けた構成とすることで、可変周波数電源装置70Aの制御周波数を算出している。
【0123】
この原子力発電所の換気空調設備10Fは、換気空調設備制御装置36Fにより、給気温度に応じた最低給排気風量を実現する可変周波数電源装置70Aの周波数信号qを実現する一方で、換気空調対象区域12内を負圧維持手段17で負圧に維持できないときは、低値選択器56により低値の周波数信号lを出力することで、可変周波数電源装置70Aにより電源供給される送風機24Bの風量を減らし、換気空調対象区域12を負圧に維持するように作動制御を行うことができる。
【0124】
図11に示す換気空調設備制御装置36Fでは、給気側空調設備13の可変周波数電源装置70Aの制御機能を示しているが、排気側空調設備14の可変周波数電源装置70Bの制御機能として設けることも可能である。排気側空調設備14の可変周波数電源装置70Bの制御機能として設ける場合は、図11において、低値選択器56を高値選択器66に変える必要がある。
【0125】
第7実施形態に示される換気空調設備制御装置36Fは、換気空調対象区域12内と外界との圧力差を検出する差圧検出器18からの差圧信号hに基づいて、可変周波数電源装置70A,70Bの制御周波数を調節して、換気空調対象区域12内を外界に対して負圧に維持する差圧制御機能を備え、さらに、換気空調設備制御装置36Fは、建屋内が負圧を維持できないとき、温度検出器37の温度信号から演算される可変周波数電源装置70A,70Bの制御周波数と差圧検出器18からの差圧信号hを信号処理する差圧制御機能から演算される制御周波数とを比較し、低値選択器56で低値の制御周波数を選択することで、建屋を負圧に維持する機能を備えたものである。
【0126】
[第8の実施形態]
図12は、原子力発電所の換気空調設備の第8実施形態を示すものである。
【0127】
第8実施形態に示された原子力発電所の換気空調設備10Gは、換気空調設備制御装置36Gを改良したもので、全体的構成は第6実施形態に示される換気空調設備10Eと異ならないので、同じ構成には同一符号を付し説明を省略する。
【0128】
図12に示される第8実施形態の換気空調設備制御装置36Gは、図6の第3実施形態に示された換気空調設備制御装置36Bの温度/ダンパ開度変換器(電動機高速運転時)48に換えて温度/周波数変換器(電動機高速運転時)73を、温度/ダンパ開度変換器(電動機低速運転時)74に換えて温度/周波数変換器(電動機低速運転時)70Aをそれぞれ設け、さらに、ダンパ開度設定器(放射能高信号時)63に換えて周波数設定器(放射能高信号時)78を、ダンパ開度設定器(放射能低信号時)64に換えて、周波数設定器(放射能低信号時)79をそれぞれ設けた構成とすることで、可変周波数電源装置70Aの制御周波数を算出している。
【0129】
換気空調設備制御装置36G内における極数変換器43aの極数変換機能の極数切換方法については、第3実施形態と同一であるので、その説明は省略する。
【0130】
第8実施形態の原子力発電所の換気空調設備10Gは、温度計37の温度信号aに基づいて、換気空調設備制御装置36Gが極数変換器43a,43bを極数変換させ、この極数変換により、送風機24Aおよび排風機28Aによる給排気風量の粗調節と、可変周波数電源装置70A,70Bによるインバータ(周波数)制御により給排気風量の微調節を行い、換気空調対象区域12の給排気風量を換気空調に必要な最低給排気風量まで低減することで、動力低減を実現している。また換気空調対象区域12内の放射能濃度が高いときは大気中に十分に拡散放出できる風量となるように、送風機24A,24Bおよび排風機28A,28Bと可変周波数電源装置70A,70Bの給排気風量制御を実現可能としている。
【0131】
第8実施形態に示された換気空調設備制御装置36Gは、換気空調設備制御装置は、換気ダクト26,29に設けた放射能検出器35からの放射能信号mに基づいて、換気空調設備制御装置36Eにより、多速度電動機の極数と可変周波数電源装置70A,70Bの制御周波数を調節して風量を調節する機能を備える。
【0132】
さらに、換気空調設備制御装置36Gは、放射能検出器35からの放射能信号mが設定値より高いとき、公衆被爆線量を目標値以下に抑えるため大気中に拡散放出できる必要な給排気風量となるように風量調節をするものである。
【0133】
[第9の実施形態]
図13は、原子力発電所の換気空調設備の第9実施形態を示すものである。
【0134】
第9実施形態に示された原子力発電所の換気空調設備10Hは、換気空調設備制御装置36Gを改良したものであり、全体的構成は第6実施形態に示される換気空調設備10Eと異ならないので、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0135】
図13に示される第9実施形態の換気空調設備10Hは、図7の第4実施形態に示された換気空調設備制御装置36Cによる風量調節ダンパ19の風量制御に代えて可変周波数電源装置70A,70Bの電源周波数をインバータ制御するものである。温度/ダンパ開度変換器(電動機高速運転時)48に換えて温度/周波数変換器(電動機高速運転時)73を、温度/ダンパ開度変換器(電動機低速運転時)49に換えて温度/周波数変換器(電動機低速運転時)74を設け、ダンパ開度設定器68に換えて周波数設定器70を、ダンパ開度加算器69に換えて周波数加算器81を設けた構成とすることで、可変周波数電源装置70A,70Bの制御周波数を算出している。
【0136】
原子力発電所の換気空調設備10Hは、換気空調設備制御装置36Hにより極数変換器43a,43bの極数変換機能を働かせた極数変換時に、可変周波数電源装置70A,70Bの制御周波数を周波数設定器80で設定した分変化(微調節)させることで、給排気風量の変化ができるだけ小さくすることが可能になる。
【0137】
第9実施形態の原子力発電所の換気空調設備10Hにおいては、可変周波数電源装置70A,70Bは給気側空調設備13の送風機24Bへ電源供給するために設置されているが、排気側空調設備14の排風機28Bの電源供給のために設置することも可能である。可変周波数電源装置70A,70Bを排風機28Bの電源供給のために設置する場合は、図13の可変周波数電源装置70Bの制御周波数の制御方法において、低値選択器56を高値選択器66に変える必要がある。
【0138】
第9実施形態に示された換気空調設備制御装置36Hは、多速度電動機の極数変換時に、換気空調対象区域12を流れる給排気風量が非連続とならないように、可変周波数電源装置70A,70Bの制御周波数を予め設定した周波数分変化させる機能を具備したものである。
【0139】
[第10の実施形態]
図14は、原子力発電所の換気空調設備の第10実施形態を示すものである。
【0140】
第10実施形態に示された原子力発電所の換気空調設備10Iは、換気空調設備制御装置36Iを改良したものであり、全体的構成は第6実施形態に示される換気空調設備10Eと異ならないので、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0141】
図14に示された第10実施形態の換気空調設備10Iは、図8の第5実施形態に示された換気空調設備制御装置36Dによる風量調節ダンパ19のダンパ風量制御に代えて、可変周波数電源装置70A,70Bの電源周波数をインバータ制御するものである。可変周波数電源装置70A,70Bはインバータ盤として機能する。可変周波数電源装置70A,70Bはインバータ制御により、送風機24Bおよび排風機28Bの各電動機38B,39Bの運転周波数が個別に作動制御される。
【0142】
具体的には、図14に示された換気空調設備制御装置36Iは、送風機24Bに電源を供給する可変周波数電源装置70Aの制御方法を図式化した制御ブロック図である。換気空調設備制御装置36Iは、図8の換気空調設備制御装置36Dにおける、温度/ダンパ開度変換器(電動機高速運転時)48に換えて温度/周波数変換器(電動機高速運転時)73を、温度/ダンパ開度変換器(電動機低速運転時)49に換えて温度/周波数変換器(電動機低速運転時)74をそれぞれ設け、また、ダンパ開度設定器(放射能高信号時)64に置き換え、周波数設定器(放射能高信号時)78を、ダンパ開度設定器(放射能低信号時)64に換えて周波数設定器(放射能低信号時)79を設け、さらにダンパ開度設定器68に換えて周波数設定器80を、ダンパ開度加算器53に換え周波数加算器81をそれぞれ設けた構成とすることで、可変周波数電源装置70Aの制御周波数を算出している。
【0143】
第10実施形態に示す原子力発電所の換気空調設備10Iにおいて、換気空調設備制御装置36Iが、原子力発電所の換気空調対象区域12を負圧に維持するため負圧維持手段17が働き、差圧検出器18の差圧制御機能が作動しているときに、建屋内の放射能濃度が高くなった場合、差圧検出器18による差圧制御機能を優先させて、換気空調対象区域12内を負圧に維持している。
【0144】
第10実施形態においては、給気側空調設備13の可変周波数電源装置70Aの制御機能を示しているが、排気側空調設備14の可変周波数電源装置70Bの制御機能として設けることも可能である。排気側空調設備14の可変周波数電源装置70Bの制御機能として設ける場合は、図14において、低値選択器56を高値選択器48に変える必要がある。
【0145】
第10実施形態に示された換気空調設備制御装置36Iは、換気空調対象区域12内と外界との差圧を検出する差圧検出器18からの差圧信号hに基づいて、可変周波数電源装置70A,70Bの制御周波数を調節し、換気空調対象区域12内を外界に対して負圧に維持する風量調節機能と、換気ダクト26,28に設けた放射能検出器35からの放射能信号mに基づいて、多速度電動機の極数と可変周波数電源装置70A,70Bの制御周波数を調節して風量を調節する風量調節機能を備える。
【0146】
さらに、換気空調設備制御装置36Fは、差圧検出器18からの差圧信号hに基づく風量調節機能と放射能検出器35からの放射能信号mに基づく風量調節機能が共に作動する場合は、差圧信号hから演算される可変周波数電源装置70A,70Bの制御周波数と、放射能信号mから演算される可変周波数電源装置の制御周波数とを比較し、低値選択器56で低値の制御周波数を選択することで、建屋を負圧に維持する差圧制御機能を備えたものである。
【0147】
[第11の実施形態]
図15は、原子力発電所の換気空調設備の第11実施形態を示すものである。
【0148】
第11実施形態は、原子力発電所の換気空調設備10Jに換気空調対象区域12の温度を一定にする換気空調設備制御装置36Jを備えたもので、全体的な構成は図1に示す第1実施形態の換気空調設備10および図6に示す第6実施形態の換気空調設備10Eと異ならないので、同じ構成には同一符号を付し図示ならびに説明を省略する。
【0149】
第11実施形態における原子力発電所の換気空調設備10Jは、給気側空調設備13において、冷却器(加熱・冷却器)22内を案内される冷却水と給気が熱交換を行ない、冷却水の流水を調節する弁(以下、冷却器調節弁という。)の給気温度を変化させることで、換気空調対象区域12の温度を一定にする換気空調設備制御装置36Jが設けられる。
【0150】
図15に示された換気空調設備制御装置36Jは、給気側空調設備13の温度計37からの温度信号aに基づき冷却器調節弁の開閉を行い、換気空調対象区域12の温度を一定に制御し、極数変換器43a,43bの極数変換機能による極数変換時にも、送風機24(24A)および排風機28(28A)の風量の変化による換気空調対象区域12の温度変化を低減することを図っている。
【0151】
図15は、原子力発電所の換気空調設備の第11実施形態において、換気空調設備制御装置36Jの機能を実現する、冷却器調節弁の制御方法を図式化した制御ブロック図である。
【0152】
第11実施形態では、給気側空調設備13の給気ダクト23に設置した温度計37からの温度(検出)信号aが換気空調設備制御装置36J内において、目標温度設定器83から出力された目標温度信号sと、温度偏差演算器84にて比較演算されて温度偏差信号tを算出し、PI演算器55にて換気空調対象区域12の温度を一定にするための冷却器調節弁開度信号(電動機高速運転時)uを算出している。
【0153】
冷却器調節弁開度信号uは、さらに冷却器調節弁開度演算器85にて、冷却器調節弁開度設定器86からの開度設定値を引いた冷却器調節弁開度信号(電動機低速運転時)vと冷却器調節弁開度信号(電動機高速運転時)uを信号切換器87に入力し、極数変換器43の極数信号fに応じて2つの信号を切り換える。
【0154】
そして、送風機24(24A)を起動する多速度電動機38Aの制御信号が高速運転信号であるときは、信号切換器87から冷却器調節弁開度信号(電動機高速運転時)uを出力し、多速度電動機38Aの制御信号が低速運転信号vであるときは、信号切換器87から冷却器調節弁開度信号(電動機低速運転時)vを出力する。
【0155】
ここで、極数変換43は、極数変換機能の極数が切り換わる際に送風機24(24A)および排風機28(28A)の回転速度が段階的に変化することで送風機24(24A)および排風機28(28A)の風量が段階的に変化し、給排気風量が変化するが、その給排気風量の変化により、換気空調対象区域12の温度が変化することを避けるために、冷却器調節弁を調節する分の開度を冷却器調節弁開度設定器85の設定値として与える。
【0156】
第11実施形態の原子力発電所の換気空調設備10Jは、極数変換器43の極数変換機能の極数変換時に、冷却器調節弁を冷却器調節弁開度設定器85で設定した開度分変化させることで、換気空調対象区域12の温度の変化ができるだけ小さくすることができる。
【0157】
第11実施形態に示された原子力発電所の換気空調設備10Jは、給気側空調設備13の加熱・冷却器22に備えられた冷却器の冷却水配管上に冷却水調節弁(図示せず)を有し、換気空調対象区域12の温度を一定に維持するように、冷却水調節弁を調節する機能を換気空調設備制御装置36Jに設けたものである。
【0158】
原子力発電所の換気空調設備10Jは、送風機用電動機38Aおよび排風機用電動機39Aに多速度電動機を用いる一方、多速度電動機の極数変換を換気空調設備制御装置36Jにより、給気(換気)ダクト23に設けた温度計37からの温度信号aを演算して信号処理する一方、換気空調設備制御装置36Jは、多速度電動機の極数変換時に、前記冷却水調節弁の弁開度を予め設定した開度分変化させる機能を備えたものである。
【符号の説明】
【0159】
10,10A〜10J 原子力発電所の換気空調設備
11 原子炉建屋
12 換気空調対象区域
13 給気側空調設備
14 排気側空調設備
15 排気筒
17 負圧維持手段
18 差圧検出器
19 風量調節ダンパ
20 外気取入口
21 給気フィルタ
22 加熱・冷却器
23 給気ダクト
24,24A,24B 送風機
25a,25b 隔離弁
26,30,31 排気ダクト
27 排気フィルタ
28,28A,28B 排風機
29 主排気ダクト
30 タービン建屋の排気ダクト
31 放射性廃棄物建屋の排気ダクト
35 放射能検出器
36,36A〜36J 換気空調設備制御装置
37 温度計
38,38A 送風機用電動機(多速度電動機)
39,39A 排風機用電動機(多速度電動機)
40 母線
41a,41b,41c,41d 遮断器
43,43a,43b 極数変換器
45 温度警報設定器
46 論理否定演算器
48 温度/ダンパ開度変換器(電動機高速運転時)
49 温度/ダンパ開度変換器(電動機低速運転時)
50,50a 信号変換器
53 差圧偏差演算器
54 目標差圧設定器
55 PI演算器
56 低値選択器
58 放射能警報設定器
59 論理否定演算器
60 論理積演算器
61 論理和演算器
63 ダンパ開度設定器(放射能高信号時)
64 ダンパ開度設定器(放射能低信号時)
65 信号切換器
67 風量変化抑制装置
68 ダンパ開度設定器
69 ダンパ開度加算器
70A,70B 可変周波数電源装置
73 温度/周波数変換器(電動機高速運転時)
74 温度/周波数変換器(電動機低速運転時)
78 周波数設定器(放射能高信号時)
79 周波数設定器(放射能低信号時)
80 周波数設定器
81 周波数加算器
83 目標温度設定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を原子力発電所の換気空調対象区域に供給する送風機および前記送風機用電動機と、前記換気空調対象区域を換気した空気を排出させる排風機および前記排風機用電動機と、
前記送風機からの送風で換気空調対象区域を換気して前記排風機に導かれる換気ダクトと、を有する原子力発電所の換気空調設備において、
前記送風機用電動機および前記排風機用電動機に多速度電動機を用いる一方、前記換気ダクトに設けた温度検出器からの温度信号を信号処理する換気空調設備制御装置を設け、
前記換気空調設備制御装置は、前記送風機用電動機および排風機用電動機を個別に極数変換による回転速度制御と、前記換気ダクトに設けられた風量調節ダンパのダンパ開度制御とで風量調節を行なう風量調節機能を備えたことを特徴とする原子力発電所の換気空調設備。
【請求項2】
前記換気空調設備制御装置は、換気空調対象領域内と外界との圧力差を検出する差圧検出器からの差圧信号を信号処理し、
前記換気空調対象区域内を外界に対して負圧に維持するために、前記風量調節ダンパのダンパ開度制御を行なう差圧制御機能を備え、
さらに、前記換気空調設備制御装置は、建屋内が負圧を維持できないとき、前記温度検出器の温度信号から演算される風量調節ダンパ開度と前記差圧検出器の差圧信号から演算される風量調節ダンパ開度とを比較して低位の風量調節ダンパ開度を選択して風量調節を行ない、建屋を負圧に維持する機能を備えた請求項1に記載の原子力発電所の換気空調設備。
【請求項3】
前記換気空調設備制御装置は、前記換気ダクトに設けた放射能検出器からの放射能信号および前記温度検出器からの温度信号を信号処理し、前記多速度電動機の極数と前記風量調節ダンパのダンパ開度を調節して風量調節を行なう風量調節機能を備える一方、
前記換気風量設備制御装置は、前記放射能検出器からの放射能信号が設定値より高いとき、公衆被曝線量を目標値以下に抑えるべく、大気中に拡散放出できる給排気風量となるように前記多速度電動機の極数を変換して前記送風機および排風機を高速運転させた請求項1に記載の原子力発電所の換気空調設備。
【請求項4】
前記換気空調設備制御装置は、前記換気ダクトに設けた放射能検出器からの放射能信号および前記温度検出器からの温度信号を信号処理して前記多速度電動機の極数と前記風量調節ダンパのダンパ開度を調節して風量調節を行なう風量調節機能を備える一方、
前記換気風量設備制御装置は、前記放射能検出器の放射能信号から演算される風量調節ダンパ開度と前記温度検出器の温度信号から演算される風量調節ダンパとを比較し、高位の風量調節ダンパ開度を選択し、前記放射能検出器で検出される放射能濃度が設定値より高いときでも、目標となる公衆被曝線量以下に給排気風量を抑えた請求項1に記載の原子力発電所の換気空調設備。
【請求項5】
前記換気空調設備制御装置は、前記多速度電動機の極数変換時に、前記換気空調対象区域を流れる給排気風量の段階的変化を避けるために、前記風量調節ダンパのダンパ開度を予め設定した開度分変化させるダンパ開度設定器を備えた請求項1に記載の原子力発電所の換気空調設備。
【請求項6】
前記換気空調設備制御装置は、前記換気空調対象区域内と外界との差圧を検出する差圧検出器からの差圧信号を演算して、前記換気空調対象区域内を外界に対して負圧に維持する風量調節ダンパのダンパ開度を制御する風量調節機能と、前記放射能検出器で検出された放射能信号を演算して前記多速度電動機の極数と前記風量調節ダンパのダンパ開度を調節する風量調節機能とを備え、
さらに、前記換気空調設備制御装置は、前記差圧検出器からの差圧信号に基づく風量調節機能と前記放射能検出器からの放射能信号に基づく風量調節機能とが共に作動する場合、前記差圧信号から演算される風量調節ダンパ開度と、前記放射能信号から演算される風量調節ダンパ開度とを比較し、低位の風量調節ダンパ開度を選択することで、建屋内を負圧に維持する機能を備えた請求項1に記載の原子力発電所の換気空調設備。
【請求項7】
外気を原子力発電所の換気空調対象区域に供給する送風機および前記送風機用電動機と、前記換気空調対象区域を換気した空気を排出させる排風機および前記排風機用電動機とを複数台ずつ有し、
前記送風機からの送風で換気空調対象区域を換気して前記排風機に導かれる換気ダクトを備えた原子力発電所の換気空調設備において、
一方の前記送風機用電動機および排風機用電動機に多速度電動機を用い、残りの送風機用電動機および排風機用電動機を可変周波数電源装置で個別に制御可能に設け、
前記換気ダクトに設けた温度検出器からの温度信号を信号処理する換気空調設備制御装置を設け、
前記換気空調設備制御装置は、前記温度検出器からの温度信号に基づいて、多速度電動機の極数変換を行なう極数変換機能を備えた前記一方の送風機用電動機および排風機用電動機と、
前記可変周波数電源装置の周波数制御を行なう前記残りの送風機用電動機および排風機用電動機との制御による風量調節機能を備えたことを特徴とする原子力発電所の換気空調設備。
【請求項8】
前記換気空調設備制御装置は、前記換気空調対象区域内と外界との圧力差を検出する差圧検出器からの差圧信号に基づいて、前記可変周波数電源装置の制御周波数を調節して前記残りの送風機用電動機および排風機用電動機を制御し、前記換気空調対象区域内を外界に対して負圧に維持する差圧制御機能を備え、
さらに、前記換気空調設備制御装置は、建屋内が負圧を維持出来ないとき、前記温度検出器の温度信号から演算される前記可変周波数電源装置の制御周波数と前記差圧制御機能から演算される制御周波数を比較し、低値の制御周波数を選択することで、前記残りの送風機用電動機および排風機用電動機を制御し、前記建屋を負圧に維持する機能を備えた請求項7に記載の原子力発電所の換気空調設備。
【請求項9】
前記換気空調設備制御装置は、前記換気ダクトに設けた放射能検出器で検出された放射能信号に基づいて、前記多速度電動機の極数と前記可変周波数電源装置の制御周波数を調節する風量を調節する機能を備え、
前記換気空調設備制御装置は、前記放射能検出器からの放射能信号が設定値より高いとき、公衆被爆線量を目標値以下に抑えるため大気中に拡散放出できる必要な給排気風量となるように風量調節をすることを特徴とした請求項7に記載の原子力発電所の換気空調設備。
【請求項10】
前記換気空調設備制御装置は、前記多速度電動機の極数変換時に、前記換気空調対象区域を流れる給排気風量が非連続とならないように、可変周波数電源装置の制御周波数を予め設定した周波数分変化させ、前記残りの送風機用電動機および排風機用電動機を制御する機能を具備した請求項7に記載の原子力発電所の換気空調設備。
【請求項11】
前記換気空調設備制御装置は、前記換気空調対象区域内と外界との差圧を検出する差圧検出器からの差圧信号に基づいて、可変周波数電源装置の制御周波数を調節して前記残りの送風機用電動機および排風機用電動機を制御し、前記換気空調対象区域内を外界に対して負圧に維持する風量調節機能と、
前記換気ダクトに設けた放射能検出器からの放射能信号に基づいて、前記多速度電動機の極数と前記可変周波数電源装置の制御周波数を調節し、風量を調節する風量調節機能を備え、
さらに、前記換気空調設備制御装置は、前記差圧検出器からの差圧信号に基づく風量調節機能と放射能検出器からの放射能信号に基づく風量調節機能が共に作動する場合は、前記差圧信号から演算される可変周波数電源装置の制御周波数と、前記放射能信号から演算される可変周波数電源装置の制御周波数とを比較し、低値の制御周波数を選択して前記残りの送風機用電動機および排風機用電動機を制御することで、建屋を負圧に維持する差圧制御機能を備えた請求項7に記載の原子力発電所の換気空調設備。
【請求項12】
前記原子力発電所の換気空調設備は、給気側空調設備の加熱・冷却器に備えられた冷却器の冷却水配管上に冷却水調節弁を有し、
前記換気空調対象区域の温度を一定に維持するように、前記冷却水調節弁を調節する機能を前記換気空調設備制御装置に設け、
さらに、前記送風機用電動機および排風機用電動機に多速度電動機を用いる一方、前記多速度電動機の極数変換を前記換気空調設備制御装置により、前記換気ダクトに設けた温度検出器からの温度信号を演算して信号処理して行ない、
前記換気空調設備制御装置は、前記多速度電動機の極数変換時に、前記冷却水調節弁の弁開度を予め設定した開度分変化させる機能を備えた請求項1または7に記載の原子力発電所の換気空調設備。
【請求項13】
外気を原子力発電所の換気空調対象区域に送風機で換気ダクトを介して供給し、
前記換気空調対象区域を換気した空気を排風機から換気ダクトを通して排出する原子力発電所の換気空調設備の空調流量制御方法において、
前記送風機を駆動する送風機用電動機と前記排風機を駆動する排風機用電動機とに多速度電動機をそれぞれ使用し、
前記換気ダクトに設けた温度検出器からの温度信号に基づき、換気空調設備制御装置は、前記送風機用電動機および排風機用電動機の極数変換を行なう回転速度制御と、前記換気ダクトに設けられた風量調節ダンパのダンパ開度制御とを行ない、前記原子力発電所の換気空調設備を前記送風機および排風機と風量調節ダンパとを併用して風量調節制御を行なうことを特徴とする原子力発電所の換気空調設備の空調流量制御方法。
【請求項14】
外気を原子力発電所の換気空調対象区域に送風機で換気ダクトを介して供給し、
前記換気空調対象区域を換気した空気を排風機から換気ダクトを通して排出する原子力発電所の換気空調設備の空調流量制御方法において、
前記送風機および送風機用電動機と前記排風機および排風機用電動機とを複数台ずつ並設して使用し、
一方の前記送風機用電動機および排風機用電動機に多速度電動機を使用し、残りの前記送風機用電動機および排風機用電動機を可変周波数電源装置で個別に周波数制御し、
前記換気ダクトに設けた温度検出器からの温度信号に基づき、換気空調設備制御装置は、前記一方の送風機用電動機および排風機用電動機を極数変換して回転速度制御を行なう一方、
前記残りの送風機用電動機および排風機用電動機を前記可変周波数制御装置による可変周波数電源装置の周波数制御を行ない、
前記原子力発電所の換気空調設備を、複数台ずつの前記送風機および排風機を併用して風量調節制御を行なうことを特徴とする原子力発電所の換気空調設備の空調流量制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−137316(P2012−137316A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288079(P2010−288079)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】