説明

原子炉出力測定装置

【課題】防護管21の製作性を向上でき、安価にできる原子炉出力測定装置13を提供する。
【解決手段】一重のステンレス製の防護管21内にコア部材22を配置する。防護管21とコア部材22との間に断熱部25を設ける。コア部材22の断熱部25に面する位置とこの断熱部25から外れた非断熱部26に面する位置との温度差を熱電対28で測定する。温度差から放射線量つまり原子炉の出力を測定する。ステンレス製の防護管21により原子炉内で発生する水素の影響も十分に排除できるため、防護管21を一重管構造とし、防護管21の製作性を向上させ、安価にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の出力を測定する原子炉出力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、沸騰水型原子炉(BWR)や加圧水型原子炉(PWR)などの原子炉の出力を測定する原子炉出力測定装置として、原子炉内の放射線であって特にガンマ線が照射された物質の発熱量が放射線量に比例することに着目して作られたガンマサーモメータを用いたものがある。
【0003】
このガンマサーモメータは、防護管内にステンレスなどのコア部材が配置されるとともに、防護管とコア部材との間に軸方向に間隔をあけて断熱部を構成する複数の環状空隙部が設けられ、コア部材の環状空隙部に面する位置と環状空隙部から軸方向に外れた非断熱部の位置との温度差を測定する熱電対が設けられている。
【0004】
そして、ガンマサーモメータは、ステンレスなどのコア部材が原子炉内の放射線であって特にガンマ線の吸収や非弾性散乱によってエネルギーを吸収して発熱し、コア部材に発生した熱が防護管を通じて外部へ流出する際に、断熱部である環状空隙部とこの環状空隙部から軸方向に外れた非断熱部との温度差を熱電対により測定し、この温度差からガンマ線量つまり原子炉の出力を測定する。
【0005】
また、防護管は、原子炉内で発生する水素の影響を排除するためにジルカロイ族の物質によって形成された内管と、機能的応力を吸収するのに適した物質よって形成された外管とによる二重管構造に形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公昭61−61360号公報(第4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、防護管は、原子炉内で発生する水素の影響を排除するためにジルカロイ族の物質によって形成された内管と、機能的応力を吸収するのに適した物質によって形成された外管とによる二重管構造となっているため、防護管の製作に手間がかかり、そのために価格も高くなる問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、防護管の製作性を向上でき、安価にできる原子炉出力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一重のステンレス製の防護管と、この防護管の内面に接するとともに防護管の軸方向の一部との間には断熱部を介して防護管内に配置されたコア部材と、このコア部材の前記断熱部に面する位置とこの断熱部から外れた非断熱部に面する位置との温度差を測定する温度センサとを具備しているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ステンレス製の防護管により原子炉内で発生する水素の影響も十分に排除できるため、防護管を一重管構造とし、防護管の製作性を向上でき、安価にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図2に示すように、11は沸騰水型原子炉(BWR)の圧力容器で、この圧力容器11の内部に炉心12が設置され、この炉心12に原子炉出力測定装置13のガンマサーモメータ14が設置されている。このガンマサーモメータ14の測定信号は圧力容器11の外部に設置された原子炉出力測定装置13の測定回路15に取り出され、この測定回路15により原子炉出力を測定する。
【0012】
ガンマサーモメータ14は、炉心12の位置に配置される実感部16を有し、この実感部16には複数のセンサ部17が軸方向に間隔をあけて設けられている。
【0013】
図1に示すように、ガンマサーモメータ14は、円筒状の一重管構造とするステンレス製の防護管21を有し、この防護管21内に原子炉内の放射線であって特にガンマ線の吸収や非弾性散乱によってエネルギーを吸収して発熱する例えばステンレスなどの金属製のコア部材22が配置されている。
【0014】
コア部材22は、中空状に形成され、外周面が防護管21の内周面に密接されている。コア部材22の外周部には、各センサ部17の位置に対応して防護管21との間に凹環状の環状空隙部24が形成されている。この環状空隙部24内には、アルゴン(Ar)などの不活性ガスが充填されている。そして、コア部材22の環状空隙部24に面する位置が環状空隙部24によって断熱性が高い断熱部25として構成され、環状空隙部24に面する位置から軸方向に外れた位置が断熱部25より断熱性が低い非断熱部26として構成されている。
【0015】
コア部材22の内側には、被覆管27がコア部材22に密着するように配置されている。この被覆管27内には、各センサ部17に配置される複数の温度センサとしての差動型熱電対である熱電対28、および発熱体としてのヒータ29が配置されている。
【0016】
被覆管27は、金属製で、この被覆管27内の中央にヒータ29が配置されるとともにこのヒータ29の周りに複数の熱電対28が放射状に配列された後、ドローイングにて被覆管27が縮径され、熱電対28とヒータ29との軸方向の接触長さ長くして熱伝導の向上が図られている。
【0017】
各熱電対28は、コア部材22の断熱部25の位置に対応した熱接点30と、非断熱部26の位置に対応した冷接点31との温度差を測定するものであり、そのために、熱接点30と冷接点31との間をクロメルにし、その他をアルメルにすることによって温度差を測定するように構成されている。なお、クロメルおよびアルメルに関しては、その例に限らず、熱接点30と冷接点31との間をアルメルにし、その他をクロメルにしてもよい。
【0018】
ヒータ29は、通電により発熱するニクロム線などの発熱体が用いられている。このヒータ29は原子炉内で使用中のガンマサーモメータ14を校正するためのもので、ヒータ29に通電するときの電流抵抗などから発熱量を計算し、その発熱量から熱接点30と冷接点31との温度差を測定して感度を計算する。
【0019】
そして、原子炉の運転時には、放射線、特にガンマ線の照射を受けたガンマサーモメータ14が発熱する。コア部材22の断熱部25である環状空隙部24の内側で発生する熱は環状空隙部24内の不活性ガスで断熱されて防護管21に伝達されにくく、コア部材22の非断熱部26で発生する熱は防護管21に伝達されるとともに防護管21の外面から放熱され、そのため、コア部材22の断熱部25と非断熱部26とで温度差が発生する。
【0020】
このコア部材22の断熱部25と非断熱部26とで温度差を熱電対28で測定し、測定回路15で出力を測定する。測定回路15では、測定された温度差がガンマ線の強度と比例することから、ガンマ線の強度を間接的に測定でき、それから原子炉の出力を測定できる。
【0021】
また、ヒータ29に通電して発熱させ、コア部材22を加熱することにより、コア部材22はガンマ線による発熱と類似した温度分布となり、熱電対28の感度を校正することができる。
【0022】
ところで、従来、防護管は原子炉内で発生する水素の影響を排除するためにジルカロイ族の物質によって形成された内管と機能的応力を吸収するのに適した物質よって形成された外管とによる二重管構造に形成されていたが、実炉にて評価した結果、水素によるガンマサーモメータに対する影響はなく、ジルカロイ族の物質によって形成された内管が不要であることが判明した。すなわち、外管のみでも材質の選択によって十分に対応できることが判明した。
【0023】
そのため、本実施の形態のように、防護管21をステンレス製とし、防護管21を一重管構造としても、原子炉内で発生する水素の影響を十分に排除できる。このように、防護管21が一重管構造でよいことにより、従来の二重管構造に比べて、防護管21の製作性を向上でき、安価にできる。
【0024】
なお、上述した原子炉出力測定装置13は、沸騰水型原子炉(BWR)に限らず、加圧水型原子炉(PWR)にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態を示す原子炉出力測定装置の断面図である。
【図2】同上原子炉出力測定装置を設置した原子炉の圧力容器の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
13 原子炉出力測定装置
21 防護管
22 コア部材
25 断熱部
26 非断熱部
28 温度センサとしての熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一重のステンレス製の防護管と、
この防護管の内面に接するとともに防護管の軸方向の一部との間には断熱部を介して防護管内に配置されたコア部材と、
このコア部材の前記断熱部に面する位置とこの断熱部から外れた非断熱部に面する位置との温度差を測定する温度センサと
を具備していることを特徴とする原子炉出力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−82965(P2008−82965A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265530(P2006−265530)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】