説明

原本性保証用ホログラム画像形成方法、静電荷像現像用トナーおよび原本性保証用ホログラム画像形成装置

【課題】 原本が複写物であるかどうか確認することのできる原本性保証用ホログラム画像部を、煩雑な工程および大型の装置を用いることなく簡単に当該原本に付帯させることができる原本性保証用ホログラム画像形成方法、静電荷像現像用トナーおよび原本性保証用ホログラム画像形成装置の提供。
【解決手段】 少なくとも熱可塑性樹脂を含有するトナーにより電子写真方式の画像形成方法によって形成されてなる電子写真画像部上に、エンボスホログラム転写部材を、凹凸が形成された面が前記電子写真画像部に接触する状態に積層し、トナーの軟化点以上に加熱すると共に加圧した後、冷却し、エンボスホログラム転写部材を剥離することにより、当該エンボスホログラム転写部材に係る凹凸を電子写真画像部に転写する工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の原本が複写物であるかどうか確認することのできる原本性保証用ホログラム画像部を当該原本に付帯させる原本性保証用ホログラム画像形成方法、および当該原本性保証用ホログラム画像を得るための静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)および当該原本性保証用ホログラム画像部を形成するための原本性保証用ホログラム画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術を利用した複写機が普及し、これを利用して誰でも簡単に紙などに印刷された文字や画像を複写できるようになった。特に、最近のカラーデジタル複写機によれば、画像処理技術、画像形成技術の飛躍的な向上もあり、原本との見分けが極めて困難な複写物でさえも容易に作製できるようになってきている。このため、重要文書や機密文書などの複製が禁止された印刷物について、これを複写することにより、不正に原本(原稿)と同等の印刷物が作製され、さらにこれが社外などへ流出、漏洩されるという問題が生じるようになった。このように、重要書類などの印刷物の偽造、変造、不正コピーなどに対する防止技術が強く求められている。
【0003】
このような偽造防止技術として、従来から、原本である印刷物に、偽造を困難にするために、高度な印刷技術で識別符号を入れることや、入手困難な特殊なインクを用いて当該識別符号を形成することが行われている。具体的には、例えば特許文献1には、赤外線吸収剤を含有したインキやトナーを用いて原本に不可視パターンを形成する技術が開示されている。
また、偽造防止技術として、ホログラムのような特殊な技術による偽造防止シートを貼付する方法もよく用いられている(特許文献2参照。)。
ホログラムのような特殊な技術による偽造防止シートを貼付する方法としては、具体的には、接着剤を塗布した面にホログラムが形成された偽造防止シートを圧着して接着する方法や、予め接着剤が塗布された偽造防止シートを、金型を用いて圧着するホットスタンプ法によって接着する方法などがある。
【0004】
しかしながら、このような方法によっては、原本に接着剤を塗布する装置と偽造防止シートを圧着する装置の両方を工程内に組み込む必要があり、画像形成工程が煩雑、かつ装置が大型化してしまうなどの問題があった。
【0005】
一方、各種の証明書のような、印刷内容が個々に異なるが原本性を保証すべき文書についても、オンデマンドでどこでも手軽に出力したいという要求が強まっている。
原本性を保証するためには、やはり識別符号を特殊な印刷技術で付帯させることや特殊紙を用いること、あるいはその両者を組み合わせて用いることが最善であるが、銀行券や証券のように特定の印刷所で大量に印刷する場合とは異なり、企業や地方自治体などで限られた量を印刷するなど少量印刷を行う場合は、特殊な材料を用いる特殊な印刷や特殊紙を用いる印刷を行うと高コストになることや、大型の装置などが必要になって利便性に欠ける、という問題があった。
【0006】
このように、原本に対して原本性の保証あるいは偽造防止という安全性と、小部数の印刷物を出力するオンデマンド印刷やオンデマンドバリアブル印刷を利用して簡単に原本を得ることができるという利便性を同時に実現することは、従来の技術では困難であるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−146254号公報
【特許文献2】特開2010−113249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、シート状の原本が複写物であるかどうか確認することのできる原本性保証用ホログラム画像部を、煩雑な工程および大型の装置を用いることなく簡単に当該原本に付帯させることができる原本性保証用ホログラム画像形成方法、これに用いる静電荷像現像用トナーおよび原本性保証用ホログラム画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の原本性保証用ホログラム画像の形成方法は、シート状の原本が複写物であるかどうか確認することのできる原本性保証用ホログラム画像部を当該原本に付帯させる方法であって、
少なくとも熱可塑性樹脂を含有するトナーにより電子写真方式の画像形成方法によって形成されてなる電子写真画像部上に、エンボスホログラム転写部材を、凹凸が形成された面が前記電子写真画像部に接触する状態に積層し、前記トナーの軟化点以上に加熱すると共に加圧した後、冷却し、その後、前記エンボスホログラム転写部材を剥離することにより、当該エンボスホログラム転写部材に係る凹凸を電子写真画像部に転写する工程を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法においては、前記原本が情報表示部位を有し、前記原本性保証用ホログラム画像部が、前記原本の情報表示部位上に形成される構成とすることもできる。
この方法においては、前記トナーがクリアトナーであることが好ましい。
【0011】
本発明の静電荷像現像用トナーは、上記の原本性保証用ホログラム画像形成方法に用いられることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0012】
本発明の原本性保証用ホログラム画像形成装置は、シート状の原本が複写物であるかどうか確認することのできる原本性保証用ホログラム画像部を当該原本に付帯させるための原本性保証用ホログラム画像形成装置であって、
静電潜像を形成する静電潜像担持体と、当該静電潜像を少なくとも熱可塑性樹脂を含有するトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、当該トナー像を原本上に転写する転写手段と、前記原本に前記トナー像を加熱定着させることにより、原本上に電子写真画像部を形成させる定着手段を有し、
さらに、前記電子写真画像部に、エンボスホログラム転写部材を、凹凸が形成された面が前記電子写真画像部に接触する状態に積層し、前記トナーの軟化点以上に加熱すると共に加圧した後、冷却し、その後、前記エンボスホログラム転写部材を剥離することにより、当該エンボスホログラム転写部材に係る凹凸を電子写真画像部に転写して原本性保証用ホログラム画像部を形成するホログラム加工手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法によれば、原本に対して、電子写真方式の画像形成方法によって得られた電子写真画像部にエンボスホログラム転写部材を用いた特定の処理を行うことのみによって、電子写真画像部の表面にホログラム像を発現する凹凸を容易に形成することができ、従って、煩雑な工程および大型の装置を用いることなく簡単に原本性保証用ホログラム画像部を形成して当該原本に原本性保証用ホログラム画像部を付帯させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法によって形成された原本性保証用ホログラム画像部の機能を説明するための説明図であって、(a)はクリアトナーによる原本性保証用ホログラム画像部が付帯された状態の原本、(b)は(a)の複写物である。
【図2】本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法の概略を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明に係る特定の加熱加圧処理に用いられる加熱加圧装置の構成の別の一例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る特定の加熱加圧処理に用いられる加熱加圧装置の構成のさらに別の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0016】
本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法は、図1に示されるように、シート状の原本10が複写物であるかどうか確認することのできる、すなわち、シート状の原本10について複写物10Xが作製された場合に当該複写物10Xに対する当該原本10の原本性を確認することのできる原本性保証用ホログラム画像部12Hを当該原本10に付帯させる方法である。
図2を用いて本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法における原本10に情報表示部位が存在する場合について説明する。
まず、原本10における情報表示部位である情報表示画像部Q上に電子写真方式の画像形成方法によって電子写真画像部12を形成し、当該電子写真画像部12に、エンボスホログラム転写部材20を、当該エンボスホログラム転写部材20における凹凸が形成された面(以下、「凹凸面」ともいう。)21が接触する状態に積層し、特定の加熱加圧処理(図2(b)参照。)をした後、冷却し(図2(c)参照。)、その後、エンボスホログラム転写部材20を剥離することにより、このエンボスホログラム転写部材20に係る凹凸を電子写真画像部12の表面に転写し(図2(d)参照。)、これにより、ホログラム像が発現される原本性保証用ホログラム画像部12Hを形成させて、原本10に原本性保証用ホログラム画像部12Hを付帯させる。
【0017】
原本性保証用ホログラム画像部12Hは、原本10の全面に形成させてもよく、局所的に形成させてもよい。
原本10において原本性保証用ホログラム画像部12Hを局所的に形成させる場合、その位置としては、任意の位置とすることができ、具体的には、原本性保証用ホログラム画像部12Hの一部または全部が当該原本10の情報表示部位にある状態としてもよく、その全部が原本10の情報表示部位以外の部位すなわちいわゆる余白上にある状態としてもよい。
【0018】
〔原本〕
本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法によって原本性保証用ホログラム画像部12Hを付帯させる対象となる原本10は、シート状のものであって、例えば情報表示画像部Qが形成されてなるものである。
この原本10は、例えば電子写真方式の画像形成方法によって記録材11上に情報表示画像部Qが形成されてなるものとすることができ、また、電子写真方式の画像形成方法以外の方法、例えばオフセット印刷方式や、インクジェット印刷方式などの印刷方法によって情報表示画像部Qが形成されたものであってもよい。
本発明によれば、原本10を構成する記録材11の種類にかかわらず、簡単に原本性保証用ホログラム画像部12Hを付帯させることができる。
原本性保証用ホログラム画像部12Hを付帯させる原本10を構成する記録材11としては、例えば薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙などの各種の印刷用紙などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
〔電子写真画像部の形成〕
本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法においてエンボスホログラム転写部材20に係る凹凸を転写する対象となる電子写真画像部12は、電子写真方式の画像形成方法によって得られ、具体的には、静電潜像担持体上に形成した静電潜像を、少なくとも熱可塑性樹脂を含有するトナーにより現像してトナー像を形成し、当該トナー像を原本10上に転写して未定着トナー像を形成し、当該未定着トナー像を加熱定着させることによって、得られる。
【0020】
電子写真画像部12の厚みは、例えば5〜20μmとされる。電子写真画像部12がこのような範囲の厚みを有すれば、原本性保証用ホログラム画像部12Hに十分に鮮明なホログラム像を発現させることができる。
電子写真画像部12の厚みは、具体的には、静電潜像の現像工程における各色のトナー付着量の制御、重ね合わせる色数の制御をすることによって調整することができる。
電子写真画像部12の面積は、所望の原本性保証用ホログラム画像部12Hの大きさが得られる大きさとされる。
【0021】
電子写真画像部12を形成するための静電潜像の形成方法、静電潜像の現像方法、トナー像の転写方法としては、特に限定されず、公知の種々の方法を採用することができる。
【0022】
電子写真画像部12を形成するための未定着トナー像の加熱定着方法としては、トナーを構成する熱可塑性樹脂を溶融させることができる程度の加熱処理が行われる方法であれば特に限定されず、公知の種々の加熱定着方法を採用することができる。
具体的には、例えば、接触加熱方式の定着装置を用いることができる。
【0023】
電子写真画像部12は、特に限定されずに、例えば有彩色トナーによる単色画像、有彩色トナーの重ね合わせによる多色画像、クリアトナーによる画像、有彩色トナーとクリアトナーによる重ね合わせによる画像のいずれからなるものであってもよい。
当該電子写真画像部12において、情報表示画像部Q上に位置される部分を形成するトナーは、下地の情報表示画像部Qを視認することができる透光性を有するトナー、例えば着色剤を実質的に含まないクリアトナーなどであればよい。
【0024】
〔特定の加熱加圧処理〕
本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法における特定の加熱加圧処理は、トナーの軟化点以上に加熱すると共に加圧することにより、行われる。
特定の加熱加圧処理は、例えば、接触加熱方式の定着装置によって行うことができる。
具体的には、例えば、図2(b)に示されるように、熱源32が備えられた加熱ローラ37と加圧ローラ39とが互いに圧接されてなる加熱加圧装置30を用いて、圧接部に形成されるニップに原本10上に原本性保証用ホログラム画像部12が形成されたものにエンボスホログラム転写部材20が積層された積層体を通紙することによって、行うことができる。
【0025】
特定の加熱加圧処理における加熱温度とは、原本10の電子写真画像部12とエンボスホログラム転写部材20の凹凸面21を接触させた状態にして加熱加圧したときの、エンボスホログラム転写部材20の電子写真画像部12と接触している凹凸面21と反対側の面22の表面温度のことをいい、具体的には、赤外線放射温度計「IR0510」(ミノルタ社製)を用いて当該エンボスホログラム転写部材20の面22について、加熱加圧したときの表面温度を測定したものとされる。
特定の加熱加圧処理における加熱温度は、トナーの軟化点以上であればよいが、(トナーの軟化点+10℃)以上であることが、エンボスホログラム転写部材20に係る凹凸の転写性の観点から、好ましい。
具体的には、用いられるトナーの熱可塑性樹脂の軟化点によって異なるが、例えば80〜200℃とされることが好ましく、より好ましくは100〜180℃である。
具体的には、通紙後の積層体におけるエンボスホログラム転写部材20の凹凸面21と反対側の面22の表面温度が上記の範囲になるよう、加熱ローラおよび加圧ローラのローラ表面温度を制御することにより、調整される。
加熱温度がトナーの軟化点未満である場合は、トナーを構成する熱可塑性樹脂の軟化が不十分となるために結着樹脂の流動性が低くなるために、電子写真画像部12にエンボスホログラム転写部材20の凹凸形状を十分に追随させることができない。また、200℃を超える場合は、ペーパーブリスターが発生してしまうなどの不具合が生じるおそれがある。
【0026】
また、特定の加熱加圧処理における加圧の大きさは、例えば0.10〜0.80MPaとされることが好ましく、より好ましくは0.20〜0.70MPaである。
加圧の大きさが0.10MPa未満である場合は、電子写真画像部12にエンボスホログラム転写部材20の凹凸形状を十分に追随させることができないおそれがあり、また、0.80MPaを超える場合は、電子写真画像部12の厚みが小さい場合に原本10が損傷するおそれがある。
【0027】
このような特定の加熱加圧処理の処理時間、すなわち加熱および加圧がなされる時間は、トナーの熱可塑性樹脂が溶融されてエンボスホログラム転写部材20に係る凹凸形状が電子写真画像部12に追随されるだけの時間であればよく、トナーの熱可塑性樹脂の種類や加熱温度および加圧の大きさによっても異なるが、例えば0.03〜0.4secとされることが好ましく、より好ましくは0.08〜0.35secである。
【0028】
特定の加熱加圧処理における加熱時間、加圧の大きさ、処理時間の具体的な一例を挙げると、熱可塑性樹脂が軟化点130℃のものである場合に、加熱温度150℃、加圧の大きさ0.3MPa、処理時間0.2secとされる。
【0029】
〔冷却〕
特定の加熱加圧処理後の積層体の冷却は、当該特定の加熱加圧処理に供される電子写真画像部12を構成する熱可塑性樹脂が流動しない温度とされればよく、例えば、(トナーの軟化点−50℃)未満であることが好ましく、(トナーの軟化点−60℃)未満であることがより好ましく、(トナーの軟化点−70℃)未満であることがさらに好ましい。
具体的な冷却方法としては、特に制限されず適宜の方法を選択することができ、例えば、図2(c)に示されるように、ファン40によって冷却温度を調節した冷気を送風する方法、ヒートシンクを用いる方法などを採用することができる。
【0030】
〔剥離〕
冷却された積層体からエンボスホログラム転写部材20を剥離する方法としては、特に限定されず適宜の方法を選択することができ、例えば、エアーを吹き付ける方法や、エンボスホログラム転写部材20がフィルムシート状やベルト状の形態を有するものである場合は、当該エンボスホログラム転写部材20を張架するローラの曲率を原本10の剛性に対して制御する方法などを採用することができる。
【0031】
〔エンボスホログラム転写部材〕
本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法に使用されるエンボスホログラム転写部材20は、その一面が、一般のホログラム形状が微細な凹凸としてエンボス加工されて凹凸面21とされたものである。このエンボスホログラム転写部材20は、フィルムシート状、ベルト状、スタンパー状またはローラ状など、いずれの形態を有するものであってもよいが、生産性の観点から、ベルト状の形態を有するものであることが特に好ましい。
エンボスホログラム転写部材20がベルト状の形態を有するものである場合、このエンボスホログラム転写部材20の材料としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを基材として形成されたものが好適であり、継ぎ目のないシームレスベルトであっても、シート状のフィルムを接いでベルト状に加工した物であってもよい。
【0032】
以下に、ベルト状のエンボスホログラム転写部材20を用いて、特定の加熱加圧処理を施し、さらに冷却した後、エンボスホログラム転写部材20を剥離するまでの工程を一連に行う、具体的なホログラム処理装置の一例について、図3を用いて説明する。
このホログラム処理装置1は、一定速度で駆動される、互いに接触または圧接された状態に配置された凹凸形状追随ローラ38a、38bよりなる加熱加圧装置30aと、一方の凹凸形状追随ローラ38a、剥離ローラ28、支持ローラ29に、凹凸面21が外側面となるよう張架された無端ベルト状のエンボスホログラム転写部材20と、エンボスホログラム転写部材20の移動方向における加熱加圧装置30aの下流側であって剥離ローラ28の上流側に設けられた冷却部45と、当該冷却部45の下流側における剥離ローラ28の付近に設けられた剥離部47とにより構成されている。このようなホログラム処理装置1によっては、複数枚の原本10のそれぞれについて、連続的にホログラム加工を行うことができる。
【0033】
加熱加圧装置30aにおいては、電子写真画像部12にエンボスホログラム転写部材20の凹凸形状を確実に転写させるために、凹凸形状追随ローラ38a、38bが互いに圧接された状態に配置されていることが好ましい。この場合においては、凹凸形状追随ローラ38a、38bの一方または両方が、その表面にシリコーンゴム層またはフッ素ゴム層が設けられたものとされ、これにより、凹凸形状追随ローラ38a、38bの圧接部にニップ部が形成される。このニップ部の幅は、例えば1〜8mm程度の範囲とされることが好ましい。
【0034】
凹凸形状追随ローラ38a、38bは、少なくとも一方が加熱源を備えたものとされ、消費電力量や作業効率の観点から、例えば、一方の凹凸形状追随ローラ38aのみを加熱源の備えられたものとすることによっても、十分な加熱が得られる。
【0035】
凹凸形状追随ローラ38aは、例えば、アルミニウムなどの金属製の基体表面に、シリコーンゴムなどからなる弾性体層が被覆されてなり、所定の外径に形成されたものとすることができる。凹凸形状追随ローラ38aは、その内部に、加熱源として例えば300〜350Wのハロゲンランプが配設されており、当該凹凸形状追随ローラ38aの表面温度が所定温度となるように内部から加熱する構成とされている。
【0036】
凹凸形状追随ローラ38bは、例えば、アルミニウムなどの金属製の基体表面に、シリコーンゴムなどからなる弾性体層が被覆されてなり、さらに、当該弾性体層表面にPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製のチューブなどによる離型層が被覆されて、所定の外径に形成されたものとすることができる。
凹凸形状追随ローラ38bは、その内部に、例えば300〜350Wのハロゲンランプを加熱源として配設させて、当該凹凸形状追随ローラ38bの表面温度が所定温度となるように内部から加熱する構成を有するものとすることもできる。
【0037】
冷却部45は、エンボスホログラム転写部材20の内面側に存在してこれを張架している凹凸形状追随ローラ38aと剥離ローラ28との間の領域に、当該エンボスホログラム転写部材20と非接触状態に配設されたファン40aと、エンボスホログラム転写部材20の外面側の凹凸形状追随ローラ38bと搬送補助ローラ46との間の領域に、当該エンボスホログラム転写部材20と非接触状態に配設された、2つのファン40b、40cおよびこれにヒートシンク41が連接された冷却機構とよりなるものである。
【0038】
剥離部47は、剥離ローラ28と、凹凸形状追随ローラ38aおよび支持ローラ29が剥離ローラ28を支点として鋭角を形成する位置関係で配置されていることによって形成される、エンボスホログラム転写部材20の循環移動方向が大きく変化するエンボスホログラム転写部材20の屈曲部と、剥離ローラ28に対向して、原本10上に電子写真画像部12が形成されてなる被処理体Wの厚みと同等の離間距離または僅かに大きい離間距離を介して設けられた搬送補助ローラ46とにより構成されるものである。
【0039】
このようなホログラム処理装置においては、以下のようにエンボスホログラム転写部材20の凹凸形状の転写がなされる。
すなわち、まず、原本10上に電子写真画像部12が形成されてなる被処理体Wが、当該被処理体Wの電子写真画像部12がエンボスホログラム転写部材20の凹凸面21に接触する状態で加熱加圧装置30aのニップ部において凹凸形状追随ローラ38a、38bの駆動によって挟持搬送される。ニップ部において、被処理体Wにおける電子写真画像部12が加熱されて溶融すると同時に記録材11に対してエンボスホログラム転写部材20の凹凸形状に追随した状態に融着する。
この融着によってエンボスホログラム転写部材20の外側面に被処理体Wが密着した状態とされ、当該エンボスホログラム転写部材20が矢印方向に循環移動することによって被処理体Wが冷却部45に移動される。
被処理体Wは、冷却部45を通過する間に、ファン40aおよび冷却機構によるエアーによって強制的に冷却され、これにより、原本性保証用ホログラム画像部12Hが形成される。
そして、剥離部47に搬送された被処理体Wは、エンボスホログラム転写部材20の屈曲部に到達し、その循環移動方向の大きな変化時における被処理体Wを構成する記録材11自身の剛性(腰)によってエンボスホログラム転写部材20から剥離され、搬送補助ローラ46に重心が移動することにより、エンボスホログラム転写部材20からの剥離が促進され、これにより、原本性保証用ホログラム画像部12Hが付帯された原本10が得られる。
【0040】
また、ベルト状のエンボスホログラム転写部材20を用いたホログラム処理装置の別の一例について、図4を用いて説明する。
このホログラム処理装置2は、一定速度で駆動される、互いに接触された状態に配置された一対の駆動ローラ25a、25bと、一方の駆動ローラ25a、剥離ローラ25c、支持ローラ25d、25eに、凹凸面21が外側面となるよう張架された無端ベルト状のエンボスホログラム転写部材20と、エンボスホログラム転写部材20の移動方向における駆動ローラ25aの下流側であって剥離ローラ25cの上流側に設けられた加熱加圧装置30bと、当該加熱加圧装置30bの下流側に設けられた冷却部42とにより構成されている。このようなホログラム処理装置2によっても、複数枚の原本10のそれぞれについて、連続的にホログラム加工を行うことができ、さらに、各々の原本10について、例えば一部にのみ加熱処理を行ってホログラム加工を施すことができる。
【0041】
加熱加圧装置30bは、エンボスホログラム転写部材20の内面側における駆動ローラ25aと剥離ローラ25cとの間に設置された、熱源を有するサーマルヘッド35と、このサーマルヘッド35とエンボスホログラム転写部材20を介して対向する状態に設けられた押圧部材36とにより構成されている。
【0042】
冷却部42は、エンボスホログラム転写部材20の内面側におけるサーマルヘッド35と剥離ローラ25cとの間の領域に配設されたフィンよりなるものである。
【0043】
このようなホログラム処理装置においては、以下のようにエンボスホログラム転写部材20の凹凸形状の転写がなされる。
すなわち、まず、原本10上に電子写真画像部12が形成されてなる被処理体Wが、当該被処理体Wの電子写真画像部12がエンボスホログラム転写部材20の凹凸面21に接触する状態で駆動ローラ25a、25bの駆動によって加熱加圧装置30bにおけるサーマルヘッド35と押圧部材36との間に搬送され、ここにおいて、被処理体Wにおける電子写真画像部12が加熱されて溶融すると同時に記録材11に対してエンボスホログラム転写部材20の凹凸形状に追随した状態に融着する。
この融着によってエンボスホログラム転写部材20の外側面に被処理体Wが密着した状態とされ、当該エンボスホログラム転写部材20が矢印方向に循環移動することによって被処理体Wが冷却部42に移動される。
被処理体Wは、冷却部42を通過する間に強制的に冷却され、これにより、原本性保証用ホログラム画像部12Hが形成される。
そして、剥離ローラ25cに搬送された被処理体Wは、エンボスホログラム転写部材20の屈曲部に到達し、その循環移動方向の大きな変化時における被処理体Wを構成する記録材11自身の剛性(腰)によってエンボスホログラム転写部材20から剥離され、これにより、原本性保証用ホログラム画像部12Hが付帯された原本10が得られる。
【0044】
以上のような原本性保証用ホログラム画像形成方法によれば、原本10に対して、電子写真方式の画像形成方法によって得られた電子写真画像部12にエンボスホログラム転写部材20を用いた特定の処理を行うことのみによって、電子写真画像部12の表面にホログラム像を発現する凹凸を容易に形成することができ、従って、煩雑な工程および大型の装置を用いることなく簡単に原本性保証用ホログラム画像部12Hを形成して当該原本10に原本性保証用ホログラム画像部12Hを付帯させることができる。
このような原本性保証用ホログラム画像形成方法は、具体的には、小部数の印刷物を要請に応じて都度印刷するオンドマンド印刷方式や、レイアウトは同じで印刷内容を差し替えて印刷するオンデマンドバリアブル印刷方式で原本10を得る場合に、特に好ましく適用することができる。
【0045】
以上のような原本性保証用ホログラム画像形成方法を行うための原本性保証用ホログラム画像形成装置は、静電潜像を形成する静電潜像担持体と、当該静電潜像を少なくとも熱可塑性樹脂を含有するトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、当該トナー像を原本10上に転写する転写手段と、前記原本10に前記トナー像を加熱定着させることにより、原本10上に電子写真画像部12を形成させる定着手段を有し、さらに、得られた電子写真画像部12に、エンボスホログラム転写部材20を、当該エンボスホログラム転写部材20における凹凸面21が電子写真画像部12に接触する状態に積層し、トナーの軟化点以上に加熱すると共に加圧した後、冷却し、その後、エンボスホログラム転写部材20を剥離することにより、当該エンボスホログラム転写部材20に係る凹凸を電子写真画像部12に転写するホログラム加工手段を有することを特徴とする。
電子写真画像部12を形成するための静電潜像担持体、現像手段、転写手段および定着手段としては、特に限定されず、公知の種々の構成のものを使用することができる。
ホログラム加工手段としては、上述したような、原本10上に電子写真画像部12が形成されたものの上にエンボスホログラム転写部材20を積層して加熱加圧装置30を通紙させる構成のものを使用することができる。
また、上述したような、ベルト状のエンボスホログラム転写部材20を用いたホログラム処理装置1,2を使用することもできる。
【0046】
〔トナー〕
電子写真画像部12を形成するためのトナーは、少なくとも熱可塑性樹脂を含む結着樹脂を含有するトナー粒子よりなるものである。
トナーとしては、光吸収や光散乱による着色を目的とした着色剤を含有する有色トナーや、このような着色剤を含まない実質的に透明な無色のトナーなどが挙げられる。
ホログラム画像を、原本10に係る画像を認識しながらその画像上に形成させる場合、例えば、原本10の情報表示画像部Q上に原本性保証用ホログラム画像部12Hを形成する場合には、トナーとしてクリアトナーを用いることが好ましい。本発明におけるクリアトナーとは、光吸収や光散乱の作用により色が認識されないトナーのことをいう。クリアトナーは実質的に無色透明であればよく、例えば、顔料、染料などの着色剤を含まないトナーや、顔料、染料などの着色剤を色認識できない程度に含むトナー、結着樹脂やワックス、外添剤の種類や添加量により透明度が若干低くなっているトナーなどが挙げられる。
【0047】
〔結着樹脂〕
本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法に用いる電子写真画像部を得るためのトナーを構成する結着樹脂は、少なくとも熱可塑性樹脂を含むものである。
結着樹脂における熱可塑性樹脂の割合は、90〜100質量%であることが好ましく、特に、特定の加熱加圧処理、冷却および剥離を経ることによって形状を転写するという観点から、熱可塑性樹脂の割合が100質量%であることが好ましい。
結着樹脂における熱可塑性樹脂の割合が90質量%未満である場合は、エンボスホログラム転写部材20に係る凹凸を忠実に転写することができずに鮮明なホログラム像を発現させることができないというおそれがある。
【0048】
〔熱可塑性樹脂〕
本発明において、熱可塑性樹脂とは、加熱によって軟化して可塑性を示し、かつ、冷却によって固化する性質をもつ樹脂のことをいう。
熱可塑性樹脂としては、具体的には、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリウレタン樹脂、などの公知の種々の熱可塑性樹脂を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱可塑性樹脂は、融点を有する結晶性樹脂と、融点を有さずにガラス転移点を有する非晶性樹脂とのいずれであってもよい。
本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。結晶性樹脂の具体例としては、結晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
また、非晶性樹脂とは、上述したDSCにおいて明確なピークを有さない樹脂であり、結晶性樹脂以外の樹脂をいう。非晶性樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、非晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、樹脂の透明性の観点から、非晶性樹脂を用いることが好ましく、溶融特性が低粘度で高いシャープメルト性を有するという観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂およびこれらの混合樹脂を好適に用いることができる。
【0049】
トナーが例えば乳化重合凝集法、溶解懸濁法などのケミカル製法によって製造される場合において、重合性および分散性の観点から、特に、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂およびこれらの混合樹脂を好適に用いることができる。
【0050】
〔熱可塑性樹脂以外の樹脂〕
結着樹脂を構成する熱可塑性樹脂以外の樹脂としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂およびフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
〔着色剤〕
本発明に係るトナーが有彩色トナーである場合、当該トナーに含有される着色剤としては、一般に知られている染料および顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、マグネタイト、フェライトなどの磁性体、染料、非磁性酸化鉄を含む無機顔料などの公知の種々のものを任意に使用することができる。
カラーのトナーを得るための着色剤としては、具体的には、顔料としては例えばC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、同238、同269C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントブルー15:3、同60、同76などを挙げることができ、染料としては例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同68、同11、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同69、同70、同93、同95などを挙げることができる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
これら着色剤のトナー粒子中における数平均一次粒子径は、着色剤の種類などにより異なるが、概ね10〜200nm程度であることが好ましい。
【0053】
以上のような着色剤を、トナー粒子中に導入する方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する乳化重合凝集法によって製造する場合において、(1)結着樹脂と分子レベルで混在させた微粒子の分散液を調製し、この微粒子を凝集させることにより、トナー粒子を得る方法、または、(2)結着樹脂による微粒子とは別個に、着色剤のみよりなる微粒子を作製し、これらの分散液を混合して両方の微粒子を凝集させることにより、トナー粒子を得る方法などが挙げられる。
結着樹脂と着色剤とが分子レベルで混在された微粒子は、当該結着樹脂を形成すべき重合性単量体に予め着色剤を溶解させておき、着色剤を含有した重合性単量体を重合させることにより、作製することができる。
【0054】
着色剤の含有量は、トナー中に1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜8質量%である。着色剤の含有量がトナー中に1質量%未満である場合は、得られるトナーが着色力の不足したものとなるおそれがあり、一方、着色剤の含有量がトナー中の10質量%を超える場合は、着色剤の遊離やキャリアなどへの付着が発生し、帯電性に影響を与える場合がある。
【0055】
以上のようなトナーについて、トナーの軟化点は、トナーの定着性、エンボスホログラム転写部材20との剥離性の観点から、80〜140℃であることが好ましく、より好ましくは90〜120℃である。
トナーの軟化点は、下記に示すフローテスターによって測定されるものである。
具体的には、まず、20℃、50%RHの環境下において、トナー1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP−10A」(島津製作所社製)によって3820kg/cm2 の力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作成し、次いで、この成型サンプルを、24℃、50%RHの環境下において、フローテスター「CFT−500D」(島津製作所社製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、トナーの軟化点とされる。
【0056】
また、以上のようなトナーに含有される結着樹脂全体としては、数平均分子量(Mn)が好ましくは3,000〜6,000、より好ましくは3,500〜5,500、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが2.0〜6.0、好ましくは2.5〜5.5である。
【0057】
結着樹脂の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定試料をトナーとして測定されるものであり、具体的には、以下のように行われる。
すなわち、装置「HLC−8220」(東ソー社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料(トナー)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。また、検出器には屈折率検出器を用いる。
【0058】
また、結着樹脂に非晶性の樹脂が含まれている場合は、当該結着樹脂を含有するトナーは、そのガラス転移点(Tg)がトナーの耐熱保管性の観点から20〜70℃であることが好ましく、30〜65℃であることがより好ましい。
【0059】
また、結着樹脂に非晶性の樹脂が含まれている場合の当該結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、以下のように測定されるものである。
結着樹脂に非晶性の樹脂が含まれている場合の当該結着樹脂を含有するトナーのガラス転移点(Tg)は、以下のように測定されるものである。
すなわち、示差走査カロリメーター「DSC−7」(パーキンエルマー製)、および熱分析装置コントローラー「TAC7/DX」(パーキンエルマー製)を用いて測定されるものである。具体的には、トナー4.50mgをアルミニウム製パン「KITNO.0219−0041」に封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットし、リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃で、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、Heat−cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを取得し、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線との交点をガラス転移点(Tg)として示す。なお、1st.Heat昇温時は200℃にて5分間保持する。
【0060】
〔トナーの平均粒径〕
以上のようなトナーは、その平均粒径が体積基準のメディアン径で3〜10μmであることが好ましく、より好ましくは6〜9μmである。このトナーの平均粒径は、例えば、使用する凝集剤(塩析剤)の濃度や凝集停止剤の添加のタイミング、凝集時の温度、重合体の組成によって制御することができる。体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0061】
トナーの体積基準のメディアン径は、「コールターカウンターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した装置を用いて測定・算出したものである。
具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の電解液「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5〜10%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。測定装置において、測定粒子カウント数を25,000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径(体積D50%径)を体積基準のメディアン径とする。
【0062】
〔トナーの平均円形度〕
また、以上のようなトナーは、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、転写効率の向上の観点から、平均円形度が0.850〜1.000であることが好ましく、より好ましくは0.900〜0.995である。
この平均円形度が0.850〜1.000の範囲にあることにより、原本10に転写されたトナー層におけるトナー粒子の充填密度が高くなって定着性が向上し、定着オフセットが発生しにくくなる。また、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が減少し、トナーの帯電性が安定する。
【0063】
トナーの平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。具体的には、トナーを界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲であれば、再現性が得られる。
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子役影像の周囲長)
【0064】
〔トナーの製造方法〕
本発明の原本性保証用ホログラム画像形成方法に用いる電子写真画像部を得るためのトナーを製造する方法としては、例えば混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、その他の公知の方法などを挙げることができるが、乳化凝集法を用いることが好ましい。この乳化凝集法によれば、製造コストおよび製造安定性の観点から、トナー粒子の小粒径化を容易に図ることができる。
ここに、乳化凝集法とは、乳化によって製造された結着樹脂の微粒子(以下、「結着樹脂微粒子」ともいう)の分散液を、必要に応じて、着色剤の微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう)の分散液と混合し、所望のトナー粒子径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂微粒子間の融着を行うことにより形状制御を行い、これによりトナー粒子を製造する方法である。ここで、結着樹脂微粒子は、任意に離型剤、荷電制御剤などの内添剤を含有していてもよい。
結着樹脂の乳化方法としては、乳化重合法、ミニエマルション重合法、シード重合法、転相乳化法などが挙げられるが、水のみにて形成可能な重合法を採用することが好ましい。
乳化凝集法を用いて、有彩色トナーを製造する方法の一例を以下に示す。
(1)水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)着色剤微粒子の分散液と結着樹脂微粒子の分散液とを混合して、着色剤微粒子および結着樹脂微粒子を凝集、融着させてトナー粒子を形成する工程
(4)トナー粒子の分散系(水系媒体)からトナー粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(5)トナー粒子を乾燥する工程
(6)トナー粒子に外添剤を添加する工程
上記の(2)の工程において得られる結着樹脂微粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよい。このような構成の結着樹脂微粒子は、例えば、乳化重合法であれば、2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調製し、この分散液に重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。
また、乳化凝集法においては、コア−シェル構造を有するトナー粒子を得ることもでき、具体的にコア−シェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア粒子用の結着樹脂微粒子と着色剤微粒子とを凝集、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂微粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0065】
ここで、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0066】
〔連鎖移動剤〕
結着樹脂微粒子重合工程においては、結着樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えば2−クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタンおよびスチレンダイマーなどを挙げることができる。
【0067】
〔重合開始剤〕
結着樹脂微粒子重合工程においては、結着樹脂を得るための重合開始剤は、水溶性の重合開始剤であれば適宜のものを使用することができる。重合開始剤の具体例としては、例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなど)、アゾ系化合物(4,4’−アゾビス4−シアノ吉草酸およびその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩など)、パーオキシド化合物などが挙げられる。
【0068】
〔界面活性剤〕
結着樹脂微粒子重合工程において界面活性剤を使用する場合に、界面活性剤としては、従来公知の種々のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを用いることができる。
【0069】
〔凝集剤〕
結着樹脂微粒子重合工程において使用する凝集剤としては、例えばアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を挙げることができる。凝集剤を構成するアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが挙げられ、凝集剤を構成するアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。これらのうち、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましい。前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の対イオン(塩を構成する陰イオン)としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオンなどが挙げられる。
【0070】
〔離型剤〕
トナーに離型剤を含有させる場合において、離型剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス、カルナウバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ライスワックス、キャンデリラワックスなどを挙げることができる。
離型剤の添加量は、最終的に得られるトナー中において0.5〜25質量%、好ましくは3〜10質量%となるよう調整することができる。
離型剤をトナー粒子中に導入する方法としては、特に限定されないが、例えば、上記に示した着色剤を含有させる方法と同様の方法を挙げることができる。
【0071】
〔荷電制御剤〕
トナーに離型剤を含有させる場合において、荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
具体的には、サルチル酸錯体、ベンジル酸錯体等のオキシカルボン酸錯体が挙げられ、その酸錯体を構成する中心金属としてはアルミニウム、カルシウム、亜鉛などが挙げられる。また、オキシカルボン酸錯体の他に、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミニウム、鉄、クロムなどのアゾ錯体染料、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。
荷電制御剤の添加量は、最終的に得られるトナー中において0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%となるように調整することができる。
荷電制御剤をトナー粒子中に導入する方法としては、特に限定されないが、例えば、上記に示した着色剤を含有させる方法と同様の方法を挙げることができる。
【0072】
〔外添剤〕
上記のトナー粒子は、そのままで本発明に用いるトナーを構成することができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加して本発明に係るトナーを構成してもよい。
【0073】
後処理剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
【0074】
これらの種々の外添剤の添加量は、その合計が、トナー100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0075】
〔現像剤〕
以上のようなトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなるバインダー型キャリアなど用いてもよい。
コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0076】
キャリアの体積基準のメジアン径としては20〜100μmであることが好ましく、更に好ましくは20〜60μmとされる。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【0078】
例えば、原本10の情報表示画像部Qを電子写真方式の画像形成方法によって形成する場合においては、原本10に原本性保証用ホログラム画像部12Hを付帯させることができれば、原本10に係る情報表示画像部Qの定着と同時に、原本性保証用ホログラム画像部12Hを形成するための電子写真画像部12を定着させてもよい。
具体的には、静電潜像担持体上に形成した静電潜像を、適宜のトナーにより現像してトナー像を形成し、当該トナー像を記録材11上に転写して情報表示画像部Qに係る未定着トナー像を形成し、当該情報表示画像部Qに係る未定着トナー像が形成された記録材11上に、静電潜像担持体上に形成した静電潜像を少なくとも熱可塑性樹脂を含有するトナーにより現像したトナー像を転写して原本性保証用ホログラム画像部12Hに係る未定着トナー像を形成し、前記情報表示画像部Qに係る未定着トナー像および当該原本性保証用ホログラム画像部12Hに係る未定着トナー像を同時に加熱定着させることによって、原本性保証用ホログラム画像部12Hを形成するための電子写真画像部12を得ることができる。
【0079】
また例えば、原本10の情報表示画像部Qを電子写真方式の画像形成方法によって形成する場合であって、原本性保証用ホログラム画像部12Hを情報表示画像部Qによる情報表示部位上に形成させる場合においては、情報表示画像部Qを原本性保証用ホログラム画像部12Hに係る電子写真画像部12として用いて原本性保証用ホログラム画像部12Hを形成することもできる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
〔樹脂微粒子分散液の調製〕
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4gをイオン交換水3000gに溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)5gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、液温を75℃とした後、
スチレン 567g
n−ブチルアクリレート 165g
メタクリル酸 68g
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃で2時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第1段重合)反応を行うことにより、樹脂微粒子〔A1〕が分散された分散液〔A1〕を得た。
【0082】
(2)第2段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2gをイオン交換水1270gに溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、80℃に加熱した後、上記の分散液〔A1〕を固形分換算で40g投入し、さらに、
スチレン 123g
n−ブチルアクリレート 45g
メタクリル酸 20g
n−オクチルメルカプタン 0.5g
パラフィンワックス「HNP−57」(日本精蝋社製) 82g
からなる単量体混合液を80℃で溶解させた単量体溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子を含む分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム5gをイオン交換水100gに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃で1時間にわたって加熱撹拌することによって重合(第2段重合)反応を行うことにより、樹脂微粒子〔A2〕が分散された分散液〔A2〕を得た。
【0083】
(3)第3段重合
上記の分散液〔A2〕に、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、
スチレン 390g
n−ブチルアクリレート 143g
メタクリル酸 37g
n−オクチルメルカプタン 13g
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することによって重合(第3段重合)反応を行った後、28℃まで冷却することにより、複合樹脂微粒子よりなる樹脂微粒子〔1〕が分散された樹脂微粒子分散液〔1〕を得た。
この樹脂微粒子〔1〕の軟化点を測定したところ、133℃であった。
【0084】
〔トナーの製造例1:クリアトナー〕
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、樹脂微粒子分散液〔1〕を固形分換算で450gと、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2gをイオン交換水1100gに溶解させた界面活性剤溶液とを仕込み、液温を30℃に調整した後、この溶液に5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。
次いで、塩化マグネシウム6水和物60gをイオン交換水60gに溶解した水溶液を、撹拌下、30℃で10分間かけて添加し、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃を保持したまま粒子成長反応を継続し、その状態で「コールターマルチサイザーIII 」(ベックマン・コールター社製)を用いて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.7μmになった時点で、塩化ナトリウム200gをイオン交換水860gに溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させ、さらに、熟成処理として液温度95℃で加熱撹拌することにより融着させ、これを平均円形度が0.90になるまで継続し、その後、液温30℃に冷却した。
そして、バスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40」(松本機械(株)製)を用いて固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成し、このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で繰り返し洗浄し、その後、「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥することにより、トナー母体粒子〔1〕を得た。
このトナー母体粒子〔1〕に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)を1質量%と疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm)を0.3質量%添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井鉱山社製)により混合することにより、クリアトナー粒子よりなるクリアトナー〔1〕を作製した。
このクリアトナー〔1〕の軟化点は133℃、ガラス転移点は49℃、体積基準のメジアン径は6.5μm、平均円形度は0.910であった。
【0085】
〔トナーの製造例2:シアントナー〕
トナーの製造例1において、樹脂微粒子分散液〔1〕450g(固形分換算)と共に以下のように調製した着色剤微粒子分散液〔Cy〕180gを加えたことの他は同様にして、シアントナー粒子よりなるシアントナー〔2〕を作製した。
このシアントナー〔2〕の軟化点は133℃、ガラス転移点は49℃、体積基準のメジアン径は6.5μm、平均円形度は0.910であった。
【0086】
〔着色剤微粒子分散液の調製例Cy〕
ドデシル硫酸ナトリウム90gをイオン交換水1600gに添加した溶液を撹拌しながら、C.I.Pigment Blue 15:3を240g徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子分散液〔Cy〕を調製した。
この着色剤微粒子分散液〔Cy〕における着色剤微粒子の粒子径を、「MICROTRAC UPA−150」(HONEYWELL社製)を用いて測定したところ、体積基準のメジアン径で112nmであった。
【0087】
〔現像剤の作製〕
このクリアトナー〔1〕、シアントナー〔2〕の各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積基準のメジアン径40μmのフェライトキャリアを、前記クリアトナー(シアントナー)の濃度が6質量%になるよう混合することによって、クリア現像剤〔1〕、シアン現像剤〔2〕を作製した。
【0088】
<実施例1>
原本として、デジタル複写機「bizhub C353」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用いて日本画像学会の「テストチャートNo.7」を出力した印画物を使用し、この原本の余白部分に、デジタル複写機「bizhub C353」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を改造してY現像器にクリア現像剤〔1〕を搭載したものによって、表1に従って、指定の形状のクリアトナー付着量が8g/m2 であるクリアトナーパッチ像(電子写真画像部)を出力した。
なお、表1中、「J紙」はコニカミノルタビジネスソリューションズ社製の「Jペーパー」である。
次いで、このクリアトナーパッチ像が形成された原本を、下記に詳述する加熱加圧装置1に下記の制御条件で通紙した後、原本における記録材のクリアトナーパッチ像が形成されなかった側の表面温度が50℃以下になるまで、積層体の記録材側から約20秒間ファンにより風冷し、その後、エンボスホログラム転写部材を剥離することによって、原本性保証用ホログラム画像部が付帯されてなる原本(保証付き原本)〔1〕を形成した。
【0089】
<実施例2>
実施例1において、クリア現像剤〔1〕の代わりにシアン現像剤〔2〕を用いて、クリアトナーパッチ像の代わりにシアントナーパッチ像を出力したことの他は同様にして、原本性保証用ホログラム画像部が付帯されてなる原本(保証付き原本)〔2〕を形成した。
【0090】
<実施例3>
原本として、デジタル複写機「bizhub C353」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用いて日本画像学会の「テストチャートNo.7」を出力し、さらに、余白部分に情報表示部位として10ポイントの10桁の数字を印刷した印画物を使用し、この原本の情報表示部位上に、デジタル複写機「bizhub C353」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を改造してY現像器にクリア現像剤〔1〕を搭載したものによって、表1に従って、指定の形状のクリアトナー付着量が8g/m2 であるクリアトナーパッチ像(電子写真画像部)を出力し、実施例1と同様の方法によって、原本性保証用ホログラム画像部が付帯されてなる原本(保証付き原本)〔3〕を形成した。
【0091】
<実施例4>
実施例3において、情報表示部位としてバーコードを印刷した印画物を使用したことの他は同様にして、原本性保証用ホログラム画像部が付帯されてなる原本(保証付き原本)〔4〕を形成した。
【0092】
−加熱加圧装置1−
・図4に記載の構成を有する装置
・エンボスホログラム転写部材(20):ベルト状に接ぎ加工をしたもの(厚さ16μm/幅30cm)「パターン1L (KN−1)」(カタニ産業社製)
−制御条件−
・通紙速度:20mm/sec
・サーマルヘッド(35)の表面温度:160℃
・サーマルヘッド(35)は、通紙直後のエンボスホログラム転写部材(20)の電子写真画像部と接触している凹凸面と反対側の面の表面温度が133〜140℃になるように制御した。サーマルヘッド(35)による加熱は、原本に対して、原本性保証用ホログラム画像部を形成させる部分にのみ、選択的に行った。
・加圧の大きさ:0.29MPa
【0093】
<実施例5>
デジタル複写機「bizhub C353」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を改造してY現像器にクリア現像剤〔1〕を搭載したものによって、表1に従って、指定の原本上の指定の位置(下記の加熱加圧装置2におけるエンボスホログラム転写部材の位置に対応)に指定の形状のクリアトナー付着量が4g/m2 であるクリアトナーパッチ像(電子写真画像部)を出力した。
なお、表1中、「トップコート紙」は王子製紙社製の「OKトップコート157g/m2 」である。
次いで、このクリアトナーパッチ像が形成された原本を、下記に詳述する加熱加圧装置2に下記の制御条件で通紙した後、原本における記録材のクリアトナーパッチ像が形成されなかった側の表面温度が50℃以下になるまで、積層体の記録材側から約20秒間ヒートシンクおよび風冷ファンにより冷却し、その後、エンボスホログラム転写部材を剥離することによって、原本性保証用ホログラム画像部が付帯されてなる原本(保証付き原本)〔5〕を形成した。
【0094】
−加熱加圧装置2−
・図3に記載の構成を有する装置
・凹凸形状追随ローラ(38a):長さ357mm、外径62mm、厚さ5mmのアルミニウム製基体の表面が、厚さ1.5mmのシリコーンゴム層によって被覆され、アルミニウム製基体の内部に、サーミスタにより温度制御されるハロゲンランプ(熱源)が配置されたもの
・凹凸形状追随ローラ(38b):長さ357mm、外径52mm、厚さ5mmのアルミニウム製基体の表面が、厚さ1.5mmのシリコーンゴム層によって被覆され、アルミニウム製基体の内部に、サーミスタにより温度制御されるハロゲンランプ(熱源)が配置されたもの
・ニップ幅:7mm
・エンボスホログラム転写部材(20):ベルト状に接ぎ加工をしたもの(厚さ16μm/幅2cm)「パターン22L (KN−22)」(カタニ産業社製)
−制御条件−
・通紙速度:73mm/sec
・凹凸形状追随ローラ(38a)のローラ表面温度:160℃
・凹凸形状追随ローラ(38b)のローラ表面温度:100℃
・凹凸形状追随ローラ(38a、38b)は、これらによるニップ部に通紙後の、エンボスホログラム転写部材(20)の電子写真画像部と接触している凹凸面と反対側の面の表面温度が133〜140℃になるように制御した。
・通紙方法:原本における原本性保証用ホログラム画像部を形成させる電子写真画像部とエンボスホログラム転写部材(20)の凹凸面とが接触する状態で当該原本を通紙させた。
・加圧の大きさ:0.29MPa
【0095】
〔原本についての原本性の保証についての評価〕
以上のようにして得られた保証付き原本〔1〕〜〔5〕を、コピー機「bizhub C353」(コニカミノルタ社製)によって複写物を1枚形成した。この保証付き原本および複写物を、任意に選んだモニターに目視で観察してもらい、保証付き原本についてホログラム像の発現が視認でき、複写物についてホログラム像の発現が視認できない場合を「○」、それ以外の場合を「×」として官能評価を行ってもらった。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【符号の説明】
【0097】
1、2 ホログラム処理装置
10 原本
10X 複写物
11 記録材
12 電子写真画像部
12H 原本性保証用ホログラム画像部
20 エンボスホログラム転写部材
21 凹凸面
22 面
25a、25b 駆動ローラ
25c、28 剥離ローラ
25d、25e、29 支持ローラ
30、30a、30b 加熱加圧装置
32 熱源
35 サーマルヘッド
36 押圧部材
37 加熱ローラ
38a、38b 凹凸形状追随ローラ
39 加圧ローラ
40、40a、40b、40c ファン
41 ヒートシンク
42、45 冷却部
46 搬送補助ローラ
47 剥離部
Q 情報表示画像部
W 被処理体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の原本が複写物であるかどうか確認することのできる原本性保証用ホログラム画像部を当該原本に付帯させる方法であって、
少なくとも熱可塑性樹脂を含有するトナーにより電子写真方式の画像形成方法によって形成されてなる電子写真画像部上に、エンボスホログラム転写部材を、凹凸が形成された面が前記電子写真画像部に接触する状態に積層し、前記トナーの軟化点以上に加熱すると共に加圧した後、冷却し、その後、前記エンボスホログラム転写部材を剥離することにより、当該エンボスホログラム転写部材に係る凹凸を電子写真画像部に転写する工程を含むことを特徴とする原本性保証用ホログラム画像形成方法。
【請求項2】
前記原本が情報表示部位を有し、前記原本性保証用ホログラム画像部が、前記原本の情報表示部位上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の原本性保証用ホログラム画像形成方法。
【請求項3】
前記トナーがクリアトナーであることを特徴とする請求項2に記載の原本性保証用ホログラム画像形成方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の原本性保証用ホログラム画像形成方法に用いられることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
シート状の原本が複写物であるかどうか確認することのできる原本性保証用ホログラム画像部を当該原本に付帯させるための原本性保証用ホログラム画像形成装置であって、
静電潜像を形成する静電潜像担持体と、当該静電潜像を少なくとも熱可塑性樹脂を含有するトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、当該トナー像を原本上に転写する転写手段と、前記原本に前記トナー像を加熱定着させることにより、原本上に電子写真画像部を形成させる定着手段を有し、
さらに、前記電子写真画像部に、エンボスホログラム転写部材を、凹凸が形成された面が前記電子写真画像部に接触する状態に積層し、前記トナーの軟化点以上に加熱すると共に加圧した後、冷却し、その後、前記エンボスホログラム転写部材を剥離することにより、当該エンボスホログラム転写部材に係る凹凸を電子写真画像部に転写して原本性保証用ホログラム画像部を形成するホログラム加工手段を有することを特徴とする原本性保証用ホログラム画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−132981(P2012−132981A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282801(P2010−282801)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】