説明

原稿照明ユニット、原稿読取装置及び画像形成装置

【課題】 薄型化を図ることができ、かつ照明光の配向を制御可能であり、主走査方向の照度平坦性に優れた原稿照明ユニット、及び小型で読取特性の変動の少ない原稿読取装置並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 複数の光源1と、光源1からの照明光が入射する入射面6、及び入射した照明光を読取領域12へ照射する第一の出射面8と第一の出射面とは異なる方向へ照射する第二の出射面7とを有する導光体5と、
導光体5の第二の出射面7からの出射光を読取領域12に導く対向反射部材10とを少なくとも備え、
導光体5は、原稿台4の法線方向に薄い形状であって、原稿台4と対向する内部表面に、光源1からの入射光を反射させる内部反射領域13と、複数の配向制御面15からなる配向制御領域14とを有する原稿照明ユニットである。該原稿照明ユニットを備える原稿読取装置及び画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル複写機やイメージスキャナ等の読取装置に使用される原稿照明ユニット、該原稿照明ユニットを備えた画像読取装置、該画像読取装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下、LEDと称す)の開発が活発に行われている。LED素子の明るさは急激に高まっており、コストも低廉化してきている。LEDは、一般的に長寿命、高効率、高耐衝撃性、単色発光などの利点を有しており、多くの照明分野への応用が期待されている。
その用途の一つとして、デジタル複写機やイメージスキャナのような画像読取装置の原稿照明装置がある。さらに、白色発光型のLED素子における発光スペクトルは可視域の波長帯をカバーしており、カラー画像読取装置の原稿照明装置にも使用することができる。このため、白色LEDを用いた多種多様な原稿照明装置が提案されている。
【0003】
LEDを光源とした読取照明系には、光源から発した光束を導光体を用いて伝搬させ、原稿面を照射する方式がある。該導光体を原稿台の原稿読取面(以下、「原稿面」ともいう。)に対して傾斜させて配置する方式が知られているが、傾斜させることにより、読取照明系を原稿面と垂直な方向に薄く構成することが難しくなる。
【0004】
原稿読取において、書籍等を開いて原稿台の上に載せたとき、構造上頁間部分が浮いて原稿台に対して角度を持ち、一方向からの照明では全体を照明することができず、影ができて黒い影が読み取られてしまうという問題がある。同様に、切り貼り原稿も読取時に原稿段差部に陰線が生じてしまうという問題がある。
これらの問題を回避するために、読取光軸を挟んで両側から照明を行うことが知られている。
【0005】
原稿を両側から照明する構成としては、例えば、光源からの放射光を照明領域に導く第一の照明手段と、該第一の手段に対し読取光軸を挟んだ側から照明を行う第二の照明手段とからなる照明系の構成が知られており、この構成において、第一の照明手段による光の一部を第二の照明手段に導き、第二の照明手段によって反射させて照明領域に光を導く方式が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特許文献1及び2には、第一の照明手段に導光体(以下、「導光板」ともいう。)が用いられ、導光体において光路の分離が行われることが記載されている。
【0006】
特許文献1の照明系の構成を図16に示す。特許文献1の照明系は、第一の照明手段から照明領域方向に導光するために、導光板を構成する反射面の一部を原稿台に対して傾斜配置させることが必要となっている(223eで示す傾斜反射面)。この傾斜反射面223eの位置および角度を最適化することによって、光源の光を照明領域方向に導いている。
特許文献2の照明系の構成を図17に示す。特許文献2の照明系における導光板も傾斜反射面を有する。なお、特許文献2の導光板は、出射面が原稿台側に飛び出してしまっているので、導光板が厚くなっている。
【0007】
一方、第一の照明手段と第二の照明手段がそれぞれ光源を伴う1対の照明手段である例も知られている(例えば、特許文献3参照。)特許文献3の照明系の構成を図18に示す。
【0008】
特許文献1〜3に記載の照明系の構成では、LEDから放出された光は主走査方向に広がっている。導光体の内部において内部反射の作用を受けるが、導光体から出射した後にも主走査方向に広がる特性は残っている。
また、導光体の出射面から照明領域までは一定の距離を有するように配置されているため、隣接したLEDの光は、照明領域において主走査方向に重畳されて、主走査方向の照度分布平坦性が向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
照明系を薄く構成するために、特許文献1及び2に記載されているような傾斜反射面を有する導光体を薄くした場合、導光板の厚さ方向の傾斜反射面の長さも必然的に短くなり、その面積も減少する。すると、光源から傾斜反射面に直接的に伝播される光は減少し、他の面から反射して伝播される光が増加する。他の面から反射して伝播する光線は入射角がさまざまであるため、それらの光線を傾斜反射面によって照明領域に導くことが難しくなり、照明領域からはずれた位置に導かれる光線が増えてしまう。その結果、照明領域に導くことのできる光量が減ってしまい、必要な照度を確保することが難しくなるという問題がある。
【0010】
特許文献3には1対の光源手段を備える装置が記載されている。照明手段のコストダウン等図ろうとする場合、LEDの個数を減らすことが考えられるが、上述の特許文献1〜3(図16〜18)の例においては、いずれもLEDの個数を減らすと主走査方向のLEDの配列ピッチが広がるため、重畳による効果が得られず、主走査方向の照度分布の制御が困難となり、照度分布の平坦性が劣化するという問題がある。
【0011】
これらの問題を回避する方法として、拡散面や拡散板を照明光路内に追加して主走査方向に光を拡散させる方法が考えられるが、拡散板等の拡散部材を増加することにより、コストが上昇したり、照明系の薄型化の妨げとなるという問題がある。
一方、薄型化のために導光体内の面上に光拡散作用を付与する方法も考えられるが、光を拡散させるため、光利用効率が低下するという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、薄型化を図ることができ、かつ照明光の配向を制御可能であり、主走査方向の照度平坦性に優れた原稿照明ユニットを提供することを目的とする。
本発明はまた、該原稿照明ユニットを備え、小型で読取特性の変動の少ない原稿読取装置、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る原稿照明ユニットは、
原稿台に載置された原稿の読取領域に光を照射し、該原稿からの反射光を画像読取素子により読み取る原稿読取装置における原稿照明ユニットにおいて、
主走査方向にライン状に配置した複数の光源と、
前記光源からの照明光が入射する入射面、及び前記入射面から入射した照明光を前記読取領域へ照射する第一の出射面、並びに前記第一の出射面とは異なる方向へ照射する第二の出射面とを有する導光体と、
前記導光体の前記第二の出射面からの出射光を前記読取領域に導く対向反射部材とを少なくとも備え、
前記導光体は、前記原稿台の法線方向に薄い形状であって、前記原稿台と対向する内部表面に、前記光源からの入射光を反射させる内部反射領域と、前記導光体内部の反射光の反射角を偏向させる複数の配向制御面からなる配向制御領域とを有することを特徴とする原稿照明ユニットである。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係る原稿読取装置は、
本発明の原稿照明ユニットと、
前記原稿照明ユニットから照明光を照射された原稿からの反射光の光路上に配置された読取光学系と、
前記読取光学系を介した光が入射する撮像素子と、を備えることを特徴とする原稿読取装置である。
上記課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
本発明の原稿読取装置と、
前記原稿読取装置で読み取られた画像情報に基づき、記録媒体上に画像を形成する手段とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る原稿照明ユニットによれば、薄型化を実現し、かつ照明光の配向を制御可能であり、主走査方向の照度平坦性に優れた原稿照明ユニットを提供することができる。
また、前記原稿照明ユニットを備え、小型で読取特性の変動の少ない原稿読取装置、及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の原稿照明ユニットの一実施態様を示す概要断面図である。
【図2】導光体に入射した光線の導光体内部における反射の一例を示す模式図である。
【図3】配向制御面の配置の一実施態様の例を示す部分斜視図である。
【図4】配向制御面による光線の配向制御の一例を示す部分模式図である。
【図5】任意の光源から放射され、導光体の配向制御面に入射した光束の例を示す模式図である。
【図6】光源及び導光体の下部平面の上面図と、配向制御領域の断面図の他の例を示す模式図である。
【図7】配向制御面の配置の一実施態様の例を示す部分斜視図である。
【図8】図3の隣接する配向制御面に入射した光線の偏向を示す説明図である。
【図9】図7の隣接する配向制御面に入射した光線の偏向を示す説明図である。
【図10】光源及び導光体の下部平面の上面図と、配向制御領域の断面図の他の例を示す模式図である。
【図11】配向制御領域においてZ方向にのみ配向制御作用がある場合の照度分布を示す説明図である。
【図12】配向制御領域においてZ方向及びX方向に配向制御作用がある場合の照度分布を示す説明図である。
【図13】本発明に係る原稿読取装置の一実施態様を示す概要断面図である。
【図14】本発明に係る原稿読取装置の他の実施態様を示す概要断面図である。
【図15】本発明に係る画像形成装置の一実施態様を示す概要断面図である。
【図16】従来例を示す図である。
【図17】従来例を示す図である。
【図18】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る原稿照明ユニット、原稿読取装置、画像形成装置について、図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
なお、以下の実施態様を説明する図において、主走査方向をX方向、副走査方向(原稿読取方向)をZ方向、X方向及びZ方向と直交する方向をY方向とする。
【0018】
〔第1の実施態様〕
本発明の原稿照明ユニットの一実施態様を示す概要断面図を図1に示す。
本発明の原稿照明ユニットは、原稿台4に載置された原稿の読取領域12に光を照射し、該原稿からの反射光を画像読取素子により読み取る原稿読取装置における原稿照明ユニットであって、複数の光源1と、導光体5と、対向反射部材(対向反射ミラー)10とを少なくとも備える。
【0019】
光源1は、例えばLEDである。図1における複数の光源1は、基板(図示せず)上に、主走査方向(X方向)にライン状に、所定の間隔で離間配置されている。光源1の発光面2から光が放出される。発光面2の法線方向は副走査方向Zである。
【0020】
導光体5は、原稿台4の法線方向(Y方向)に薄い形状となっている。また、導光体5の上部水平面8及び下部水平面9は、原稿台4に対して略水平に配置されている。
導光体5の入射面6は、図1に示すように、光源1の発光面2と近接して対向している。光源1の発光面2から放射された光線は、入射面6から導光体5の内部に入射する。
導光体5は、入射面6から入射した照明光を読取領域12へ照射する第一の出射面(上部水平面)8と、第一の出射面8とは異なる方向へ照射する第二の出射面7とを有する。
【0021】
導光体5は、下部水平面9の原稿台4と対向する内部表面に、光源1からの入射光を反射させる内部反射領域13と、導光体内部の反射光の反射角を偏向させる複数の配向制御面からなる配向制御領域配向制御領域14とを有する。副走査方向において、内部反射領域13は光源1に近い側に配置され、配向制御領域14は光源1から遠い側に配置されている。
【0022】
光源1から導光体5に入射した光線の一部は、内部反射領域13において導光体5の内側に反射して導光体5の内部を伝播し、導光体5の第二の出射面7から出射され、対向反射ミラー10で反射されて原稿読取領域12を照射する。
【0023】
導光体5に入射した光線の導光体内部における反射の例を図2に示す。
図2に示すように、光源1から入射して配向制御領域14に至る光線は、配向制御面15において副走査断面内での反射角が偏向され、上部水平面8である第一の出射面から導光体5の外に放射され、原稿読取領域12に至る。図2において配向制御面15の法線は16、内部反射面9の法線は17である。
この偏向作用(配向制御作用)は、配向制御領域14の配向制御面15の法線16の向きを、副走査方向において下部水平面9の法線17の向きよりも光源1が配置される側に傾けることによって得られる。
【0024】
配向制御面15の傾きにより反射光の反射角を偏向させて制御することができるため、例えば、拡散手段等によりランダムに拡散させる方法よりも、効率良く原稿読取領域を照明することができる。
【0025】
また、図2に示すように、配向制御面15は、配向制御領域14において副走査方向に周期的に配置されているので、副走査方向断面内において所定の傾きをもつ配向制御面15を、原稿台4と垂直な方向(Y方向)に短くすることができる。すなわち、上述の特許文献1及び2における導光体のような傾斜反射面を設けることが不要となり、導光体5を従来よりも薄く構成することができる。
導光体5の具体的な厚さとしては、例えば1mm前後、又は1mm以下とすることができる。
【0026】
また、導光体5において内部反射しない光線や上部平面8を反射した光線の一部は、第二の出射面7から出射され、対向照明ミラー10に導かれるため、対向照明が実現し、原稿照明ユニット全体を薄く構成することができる。
【0027】
配向制御面15の配置の例を図3に、該配向制御面で配向制御される光線の例を図4にそれぞれ示す。
図3に示すように、主走査方向の傾きが異なる配向制御面151a、152a、153aが連続して配置されている。ここで151a及び152aで示す隣接した配向制御面がペアとなって、153a以降の主走査方向へ連続して周期的に配置されている(図示せず)。
光源1から配向制御領域14に至る光線は、図4に示すように、配向制御面151a、152a、153a....において主走査方向にも偏向して反射し、第一の出射面である上部水平面8から導光体5の外に放射され、原稿読取領域12に至る。図4における配向制御面も、図3と同様に151a及び152aで示す隣接した配向制御面がペアとなって、主走査方向へ周期的に配置されている。
【0028】
配向制御領域14は、副走査方向(Z方向)への配向を制御する面を備えているので、原稿読取領域12の副走査方向への照明光線の配向を制御することができ、副走査方向の照度分布を制御できる。
配向制御領域14において副走査方向(Z方向)にのみ配向制御作用がある場合には、図11に示すように、原稿読取領域12において、主走査方向(X方向)の照度分布にムラが生じることがある。しかしながら、本発明の原稿照明ユニットにおいては、配向制御領域14はさらに、主走査方向への照明光線の配向も制御することができるため、図12に示すように、原稿読取領域12の主走査方向の照度分布をも制御することができ、照度分布ムラが改善される。
【0029】
配向制御領域14は同一領域内で、導光体5内部の反射光を副走査方向及び主走査方向へ偏向させることができるため、制御領域を別に形成する場合に比べ、加工領域が少なくて済み、加工コストを低減することができる。
【0030】
配向制御領域14は、複数の配向制御面15が副走査方向及び主走査方向に周期的に配置されてなり、配向制御面15は、法線ベクトルが主走査方向成分及び副走査方向成分を有する。
図2に示すように、配向制御領域14には、複数の配向制御面15が副走査方向(Z方向)に周期的に配置されて構成され、各々の配向制御面15において入射光線は副走査方向に偏向作用を受ける。配向制御面15の法線ベクトル16には副走査方向成分を与えているので、配向制御面15の傾きによって、配向制御面15で副走査方向に偏向反射した光線は導光板5の上側平面8(第一の出射面)を透過して原稿読取領域12に光線が導かれる。
また、図3に示すように、配向制御面15は、主走査方向(X方向)にも周期的に構成されており、各々の配向制御面151a、152a、153a....において入射光線は主走査方向にも偏向作用を受ける。ここでは、配向制御面15の法線ベクトル161a、162a、163a....には主走査方向成分を与えているので、配向制御面の傾きによって、配向制御面15で主走査方向に偏向反射した光線が導光板5の上側平面8(第一の出射面)を透過して原稿読取領域に光線が導かれる。
【0031】
このように配向制御面15により光線の配向が制御される。
配向制御面15による主走査方向への偏向作用によって、配向制御面15で反射した光線が原稿読取領域12に到達する位置を主走査方向にも移動させることができるので、光線群としての光束が原稿読取領域12を照明する主走査方向の位置や、照明する領域における主走査方向の照度分布を制御することができる。
【0032】
また、配向制御面15を主走査方向及び副走査方向の両方向に周期的に配置して構成しているので、導光板5の厚さ方向(Y方向)を薄く維持した状態で、主走査方向及び副走査方向に長い領域の光線に対して配向制御することが可能である。
【0033】
任意の光源1から放射され、導光体5の配向制御面に入射した光束の例を図5に示す。
図5に示すように、任意のひとつの光源1に着目したとき、この光源1から放射する光束は主走査方向に所定の放射角をもっており、前記光束は、導光板5の配向制御領域14に、主走査方向に所定の幅を有する光束として、広がった状態で入射する。入射領域には、主走査方向に周期配列された複数の配向制御面15が構成されている。
【0034】
ここで、例えば、図3又は図4に示すように、配向制御面151aおよび152aに入射した光束は発散光束として反射され、一方、配向制御面152aと153aに入射した光束は一旦収束した後に発散光束として原稿読取領域12に至るように、各々の面の傾きを設定することができる。
このように設定することにより、原稿読取領域12に到達する光束は、必ず主走査方向に広がり、特定の領域に光が集光することを回避することができ、主走査方向の照度分布のムラをなくすことができる。
【0035】
すなわち、配向制御領域14における複数の配向制御面15のうち、主走査方向に隣接する任意の2つの配向制御面15に入射した光束が、発散光束として原稿読取領域12へ出射されるように設定することにより、主走査方向に局所的な照度変動が発生せず、照度分布の平坦性を改善する効果が得られる。
【0036】
上記の特徴を備えた導光体5の内部の下部平面の上面図と、配向制御領域14の断面図の一例を図6に示す。
図6に示すように、導光体5の原稿台4と対向する内部表面(下部平面9)は、光源1からの入射光を反射させる内部反射領域13と、導光体内部の反射光の反射角を偏向させる配向制御領域14とを有する。配向制御領域14には、複数の配向制御面15が副走査方向及び主走査方向に周期的に配置されてなり、副走査方向(Z方向)の断面形状をAに、主走査方向(X方向)の断面形状をBに模式的に示している。
【0037】
〔第2の実施態様〕
本発明に係る原稿照明ユニットの第2の実施態様は、導光体5の配向制御領域14における複数の配向制御面15のうち、主走査方向に隣接する任意の2つの配向制御面15の接合境界近傍の表面の傾きの変化が連続的である。
【0038】
例えば、図3に示すように主走査方向に隣接した配向制御面151aと152aとが互いに平面である場合には、図8に示すように配向制御面151aと152aとの接合境界となる稜線155aが存在する。入射光線の偏向方向は、該稜線155aの位置において急峻に変化するとともに、図8に示すように、稜線155aの極近傍では光束の分離が生じ、原稿読取領域12においても光束が主走査方向に分離した状態で照明されることになりうる。
【0039】
一方、図7に示すように、主走査方向に隣接した配向制御面(例えば、151bと152b)の接合境界に稜線が存在しないよう滑らかに接合されている場合には、接合境界近傍の表面の傾きの変化が連続的であり、偏向方向が急峻に変わることがない。このような接合境界を有する配向制御面15は、図9に示すように、原稿読取領域12では光束が分離することなく、主走査方向に広がって照明されるため、原稿読取領域12における主走査方向の照度が局所的に低下することがなく、照度分布の平坦化が可能となる。
【0040】
このように、主走査方向に隣接する任意の2つの配向制御面15の接合境界近傍の表面の傾きの変化が連続的であることにより、主走査方向の照度分布が急峻に変化することなく滑らかな分布が得られる。
【0041】
〔第3の実施態様〕
本発明に係る原稿照明ユニットの第3の実施態様は、導光体5の配向制御面15が、図7に示すように、主走査方向に曲率を有する。
例えば、図7に示す配向制御面151b及び152bに入射する光束は、これらの配向面が主走査方向に正の曲率を有しているため、該配向制御面で反射した光束は発散光束となり、原稿読取領域12において主走査方向に広がって照射される。
一方、図7に示す配向制御面153b及び154bに入射する光束は、これらの配向面が主走査方向に負の曲率を有しているため、該配向制御面で反射した光束は集光光束となるが、第1の実施態様において図3及び図4により説明したように、原稿読取領域12の手前で集光したあと発散光となって原稿読取領域12に到達するので、主走査方向に広がって照射される。
【0042】
また、第2の実施態様と同様に、主走査方向に隣接する任意の2つの配向制御面15の接合境界近傍の表面の傾きの変化が連続的であるため、偏向方向が急峻にかわることなく、主走査方向の照度に局所的な変動がなく、照度分布を平坦化することができる。
【0043】
このように、配向制御面15を主走査方向に曲率を有する曲面形状とすることにより、主走査方向に照明光束を広げる配向制御の自由度が高くなり、照度の平坦性の改善がさらに容易になる。
【0044】
〔第4の実施形態〕
本発明に係る原稿照明ユニットの第4の実施態様について説明する。
第4の実施態様は、導光体5の配向制御領域14における配向制御面15の主走査方向の配列周期が、図10に示すように、主走査方向の中央から両端方向に向かって短くなるように配置されている。
【0045】
図10は、光源1を主走査方向に配列ピッチを異ならせて配置した場合を示した模式図である。この場合、主走査方向の中央部よりも両端部の配列ピッチが短くなるようにすると、読取光学系のコサイン四乗則による周辺光量の低下を補正して、撮像素子上の主走査方向の照度分布を平坦にすることができる。この方法はメカニカルな開口によって中央部の明るい光をさえぎって光量分布をメカニカルシェーディング補正する方法よりも光利用効率の点において優れている。
【0046】
このように、光源1を主走査方向に配列ピッチが異なる配置とする場合において、配向制御面15の主走査方向の配列周期を、光源1の配置の主走査方向の対称性と整合させ、図10に示すように、主走査方向の中央から主走査方向の両端方向に向けて短くなるように対称に構成することによって、光線の配向作用を与えることができる。
すなわち、光源1の配列ピッチが主走査方向の中央から両端方向に狭くなるように光源を配列したときにも、主走査方向の照度平坦性が高くなるように配向制御を行うことができる。
【0047】
〔第5の実施形態〕
本発明に係る原稿照明ユニットの第5の実施態様について説明する。
第5の実施態様は、複数の配向制御面15の主走査方向の配列周期T1と、複数の光源1の主走査方向の配列周期T2とで定義される値M=T1/T2が、非整数である。
【0048】
配向制御面15の主走査方向の配列において、Y方向の断面形状の山と山との間の周期T1が、光源1の主走査方向の配列周期T2の整数倍となるように(Mの値が整数となるように)配列すると、光源配置の主走査方向の周期性が原稿読取領域12上に現れることがある。
これに対し、Mの値を、例えば整数+1/2となるように配列周期をずらすことによって、主走査方向の照度分布特性に光源1の配列周期T2の周期性が現れないように、照明光を配向制御することができる。
【0049】
〔第6の実施形態〕
本発明に係る原稿照明ユニットの第6の実施態様について説明する。
第6の実施態様は、複数の配向制御面15のうち、主走査方向に隣接する任意の2つの配向制御面15の主走査方向の接合境界位置が、光源1の設置位置と一致しないように配置される。
【0050】
主走査方向に隣接する任意の2つの配向制御面15の主走査方向の接合境界は、Y方向断面における山又は谷(以下、単に「山谷」ともいう。)に相当する。
主走査方向に周期的に配置された配向制御面15の山谷の主走査方向に位置と、光源1の主走査方向の設置位置とが一致している場合には、山谷の位置に光源1から最も明るい光束が到達するため、最も明るい光束が主走査方向の両方向に広がって照明される。しかしながら、その反面、光源1と導光体5との主走査方向の相対位置が、組み付け誤差などによってずれた場合に、照度が急峻に変化し、照度の平坦性への影響が大きくなる。
この影響を避けるため、光源1の主走査方向の位置が、配向制御面15の山谷の位置とはずれるように配置することにより、光源1から放射される最も明るい光束成分は、山と谷の間に到達するようになり、主走査方向に光束が広げられる効果が低く、組み付け誤差などにより相対位置がずれても、照度分布の変動に与える影響を少なくすることができる。
【0051】
このように、本実施態様においては、光源から発光する最も明るい光束が、照度を変化させる効果が最も強くなっている配向制御面15の接合位置には到達しないようにしているため、光源1と導光体5の主走査方向の相対位置がずれた場合でも、主走査方向の照度分布特性に与える影響を少なくすることができる。
【0052】
〔第7の実施態様:原稿読取装置〕
本発明の原稿読取装置は、本発明の原稿照明ユニットと、該原稿照明ユニットから照明光を照射された原稿からの反射光の光路上に配置された読取光学系と、読取光学系を介した光が入射する撮像素子とを備える。
図13に第7の実施態様である原稿読取装置を示す。
原稿読取装置20は、原稿照明ユニット21と、第1の反射ミラー23、第2の反射ミラー24、第3の反射ミラー25、及び結像素子27で構成される読取光学系と、撮像素子(CCD)28とから構成されている。
原稿照明ユニット21は、照明光学系21aと、対向照明光学系21bとからなり、原稿台4上の原稿42をライン状に照明し、原稿反射光を反射ミラー23、24、25によって結像素子27に導き、原稿42の像を撮像素子28上に結像する。
【0053】
対向照明光学系21bは、導光体5から出射した光束を反射する対向反射部材10である。原稿照明ユニット21と第1の反射ミラー23とを含む第1の走行体22は走査速度Vで、反射ミラー24、25を含む第2の走行体26は走査速度V/2で走査して、原稿面全体をスキャンして読み取る。
【0054】
本実施態様の原稿読取装置20は、本発明の原稿照明ユニット21が格段に薄くなっているため、薄い装置とすることができる。
また、本発明の原稿照明ユニット21を備えることにより、主走査方向及び副走査方向の両方向に照明光の配向を制御でき、光源(LED)の配列個数が少なくても照度分布特性を良好に制御できるため、照度が平坦で読取位置ズレに対して強く、原稿読取装置として安定性の高い画像信号が得られる。
【0055】
〔第8の実施態様:原稿読取装置〕
図14に第8の実施態様である原稿読取装置を示す。
本実施態様における原稿読取装置30では、原稿照明ユニット31と、反射ミラー33、結像素子35、撮像素子36が一つの筐体32内に一体化されている。反射ミラー33、結像素子35は、読取光学系を構成する。
筐体32により一体化されている走行体34は、線速Vで副走査方向に走査して、原稿42をスキャンして読み取る。
【0056】
本実施態様の原稿読取装置30は、図13に示した第7の実施態様の原稿読取装置よりも走査機構が簡略化され、装置をY方向により薄型化できる。
照明装置と光学系とが一体化されていることにより、走査駆動の動的振動に伴う副走査方向の原稿読み取り位置の誤差が小さくなるので、撮像素子で受光される光強度の変動量を少なくでき、誤差を見込んで読み取りに必要な照明領域を副走査方向に広くしなくてもよい。また省エネ化できる。
【0057】
〔第9の実施態様:画像形成装置〕
本発明の画像形成装置は、本発明の原稿読取装置と、該原稿読取装置で読み取られた画像情報に基づき、記録媒体上に画像を形成する手段とを備える。
図15に第9の実施態様である画像形成装置の一例としてのフルカラー複写機の内部構造の概略正面図を示す。
複写機100の装置本体102内の中央部には、カラー画像を形成するための画像形成部103が設けられている。この画像形成部103は、等間隔に離間させて水平向きに並列に配設された4つのドラム状の感光体104、感光体104の外周面を一様に帯電する帯電ローラ105、帯電ローラ105により帯電された各感光体104の外周面を画像データに応じて露光することにより静電潜像を形成する露光装置106、静電潜像にトナーを供給することにより静電潜像をトナー像として顕像化する現像装置107、感光体104上のトナー像が順次転写される中間転写ベルト108、中間転写ベルト108上へのトナー像の転写後に感光体104上に残留したトナーを除去するクリーニング装置109、中間転写ベルト108上に転写されたトナー像を記録媒体Sに転写させる転写ローラ110等により構成されている。
なお、4つの感光体104上にはそれぞれ異なる色のトナー像(Y;イエロー、M;マゼンタ、C;シアン、K;ブラック)が形成され、これらの各色のトナー像が中間転写ベルト108上に転写されることにより、中間転写ベルト108上ではカラーのトナー像が形成され、このカラーのトナー像が記録媒体Sに転写される。
【0058】
装置本体102の上部には、後述する照明装置による照明対象物である原稿を自動送りするADF111と、後述する照明装置による照明対象物である原稿が載置されるコンタクトガラス112と、ADF111で自動送りされた原稿又はコンタクトガラス112上に載置された原稿を読取る画像読取装置113とが配置されている。
【0059】
本発明の画像読取装置113は、コンタクトガラス112と平行に2:1の速度で走行可能な第1・第2走行体114,115、レンズ116、画像読取部であるCCD117等により構成されている。第1走行体114には、コンタクトガラス112上に載置された原稿、又は、ADF111で搬送される原稿の原稿面を照明するための照明装置118と、原稿面で反射されて読取光軸に沿って進行する読取光を反射させる第1ミラー119とが搭載されている。第2走行体115には、第1ミラー119で反射された光をさらに反射させる第2ミラー120と第3ミラー121とが搭載されている。第1〜第3ミラー119,120,121で順次反射された読取光の進行方向前方には、レンズ116とCCD117とが配置されている。
【0060】
装置本体102の下部には、記録媒体Sを収納する複数段、例えば4段の用紙カセット124が設けられている。これらの用紙カセット124内に収納された記録媒体Sはピックアップローラ125とフィードローラ126とにより一枚ずつ分離給紙され、分離給紙された記録媒体Sは装置本体102内に設けられた用紙搬送路27に沿って搬送される。この用紙搬送路127上には、レジストローラ128、転写ローラ110、定着装置129、排紙ローラ130等が配置されている。
【0061】
このような構成において、画像読取装置113での読み取り結果に応じて露光装置106の半導体レーザから各色(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックK)の画像データに応じたレーザ光が出射され、そのレーザ光が帯電ローラ105により一様に帯電された各感光体104の外周面を露光することにより静電潜像が形成される。この静電潜像に対して各現像装置107から各色のトナーが供給されることにより、各色のトナー像が形成される。各感光体104上のトナー像は、感光体104と同期して移動する中間転写ベルト108上に順次転写され、中間転写ベルト108上にはカラートナー像が形成される。
【0062】
一方、画像形成部103での画像形成動作開始にあわせ、用紙カセット124内からは、記録媒体Sの分離給紙が開始され、分離給紙されて用紙搬送路127上を搬送された記録媒体Sは間欠的に回転駆動するレジストローラ128により、中間転写ベルト108と転写ローラ110との間の転写位置へ送り込まれる。
次にレジストローラ128が回転駆動され、記録媒体Sが中間転写ベルト108と転写ローラ110との間に送り込まれることにより、中間転写ベルト108上のカラートナー像が記録媒体S上に転写される。記録媒体S上に転写されたカラートナー像は、記録媒体Sが定着装置129を通過する過程で記録媒体Sに定着され、カラートナー像が定着された記録媒体Sは排紙ローラ130によって排紙トレイ131上に排紙される。
なお、画像読取装置113はスキャナ装置として独立に動作させることも可能である。
【0063】
本発明の画像形成装置によれば、スキャナ部である画像読取装置を従来よりも薄型化及び軽量化できるので、材料コストも削減することができる。また、光源(LED)の個数も少なくことが可能であり、装置コストを低減することができる。照明効率が高いので、消費電力が下がり、環境保護の観点からも優れている。照度の平坦性がよいので、画像信号が安定し、画像品質が高く、信号補正に要するコストを低減できる。また、読取り位置ずれに対する画像信号の変化が少なくなるので、メカ精度をゆるめることによりコストを低減することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 光源
2 発光面
4 原稿台
5 導光体
6 入射面
7 第二の出射面
8 上部水平面(第一の出射面)
9 下部水平面
10 対向反射部材(対向ミラー)
11 読取光軸
12 読取領域
13 内部反射領域
14 配向制御領域
15 配向制御面
16、17 法線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開2010−252340号公報
【特許文献2】特開2010−191397号公報
【特許文献3】特開2010−16496号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台に載置された原稿の読取領域に光を照射し、該原稿からの反射光を画像読取素子により読み取る原稿読取装置における原稿照明ユニットにおいて、
主走査方向にライン状に配置した複数の光源と、
前記光源からの照明光が入射する入射面、及び前記入射面から入射した照明光を前記読取領域へ照射する第一の出射面、並びに前記第一の出射面とは異なる方向へ照射する第二の出射面とを有する導光体と、
前記導光体の前記第二の出射面からの出射光を前記読取領域に導く対向反射部材とを少なくとも備え、
前記導光体は、前記原稿台の法線方向に薄い形状であって、前記原稿台と対向する内部表面に、前記光源からの入射光を反射させる内部反射領域と、前記導光体内部の反射光の反射角を偏向させる複数の配向制御面からなる配向制御領域とを有することを特徴とする原稿照明ユニット。
【請求項2】
前記配向制御領域は、同一の領域内において、前記導光体内部の反射光を副走査方向及び主走査方向へ偏向させることを特徴とする請求項1に記載の原稿照明ユニット。
【請求項3】
前記配向制御領域は、複数の前記配向制御面が副走査方向及び主走査方向に周期的に配置されてなり、前記配向制御面は、法線ベクトルが主走査方向成分及び副走査方向成分を有することを特徴とする請求項1または2に記載の原稿照明ユニット。
【請求項4】
前記配向制御領域における複数の前記配向制御面のうち、主走査方向に隣接する任意の2つの前記配向制御面に入射した光束は、発散光束として前記読取領域へ出射されることを特徴とする請求項3記載の原稿照明ユニット。
【請求項5】
前記配向制御領域における複数の前記配向制御面のうち、主走査方向に隣接する任意の2つの前記配向制御面の接合境界近傍の表面の傾きの変化が連続的であることを特徴とする請求項4に記載の原稿照明ユニット。
【請求項6】
前記配向制御面は、主走査方向に曲率を有することを特徴とする請求項4または5に記載の原稿照明ユニット。
【請求項7】
前記配向制御面の主走査方向の配列周期が、主走査方向の中央から両端方向に向かって短くなるように配置されていることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の原稿照明ユニット。
【請求項8】
複数の前記配向制御面の主走査方向の配列周期T1と、複数の前記光源の主走査方向の配列周期T2とで定義される値M=T1/T2が、非整数であることを特徴とする請求項7に記載の原稿照明ユニット。
【請求項9】
複数の前記配向制御面のうち、主走査方向に隣接する任意の2つの前記配向制御面の主走査方向の接合境界位置が、前記光源の主走査方向の設置位置と一致しないことを特徴とする請求項7または8に記載の原稿照明ユニット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の原稿照明ユニットと、
前記原稿照明ユニットから照明光を照射された原稿からの反射光の光路上に配置された読取光学系と、
前記読取光学系を介した光が入射する撮像素子と、を備えることを特徴とする原稿読取装置。
【請求項11】
前記原稿照明ユニットと、前記読取光学系と、前記撮像素子とが一つの筐体に保持されていることを特徴とする請求項10に記載の原稿読取装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の原稿読取装置と、
前記原稿読取装置で読み取られた画像情報に基づき、記録媒体上に画像を形成する手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−90266(P2013−90266A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231552(P2011−231552)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】