双ループアンテナ
【課題】広帯域化を実現することができる双ループアンテナを提供する。
【解決手段】一対のループ部2は、第1給電線路41に接続された第1内辺素子21aと、第1内辺素子21aよりも外側に配置された外辺素子21bと、第1内辺素子21a及び外辺素子21bの両端部にそれぞれ接続された右辺素子21c及び左辺素子21dとを用いてループ形成された第1ループ部21を備える。第1ループ部21の内側には、第2給電線路42に接続されているとともに右辺素子及び左辺素子の中間接続点A1,A2に両端部がそれぞれ接続された第2内辺素子22aと、右辺素子21c及び左辺素子21dの各中間接続点A1,A2よりも外側の外側部21c1,21d1と、外辺素子21bとを用いてループ形成され、第1ループ部21の第1周長L1よりも短い第2周長L2を有する第2ループ部22を備える。
【解決手段】一対のループ部2は、第1給電線路41に接続された第1内辺素子21aと、第1内辺素子21aよりも外側に配置された外辺素子21bと、第1内辺素子21a及び外辺素子21bの両端部にそれぞれ接続された右辺素子21c及び左辺素子21dとを用いてループ形成された第1ループ部21を備える。第1ループ部21の内側には、第2給電線路42に接続されているとともに右辺素子及び左辺素子の中間接続点A1,A2に両端部がそれぞれ接続された第2内辺素子22aと、右辺素子21c及び左辺素子21dの各中間接続点A1,A2よりも外側の外側部21c1,21d1と、外辺素子21bとを用いてループ形成され、第1ループ部21の第1周長L1よりも短い第2周長L2を有する第2ループ部22を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばFM帯とVHF−TV帯の放送電波を送信をする双ループアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば周波数帯域が90〜108MHzであるVHF−TV帯(1〜3ch)の放送電波を送信する双ループアンテナとして、所定間隔を空けて配置された一対のループ素子(ループ部)を給電線路で接続し、この給電線路からループ素子に給電するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−222923号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の双ループアンテナは、その周波数帯域を広くすることができないため、例えば、VHF−TV帯に隣接する周波数帯域(76〜90MHz)であるFM帯の送信アンテナとして共用することができない。この問題を解決するために、双ループアンテナに空中線共用装置と所望のFM送信周波数に整合する整合回路を別途取り付けることが考えられるが、この場合はコスト高になるとともに、整合回路を取り付けた際のVSWRの周波数特性を事前に予測することができない等の問題が生じるため、好ましくない。
【0005】
また、UHF帯用の送信アンテナのように、ループ素子を幅広の導体板で構成することにより広帯域化を図ることも考えられるが、VHF帯用の双ループアンテナのループ素子は外部に露出しているため、ループ素子における受風荷重が増大し、強度上好ましくない。
そこで、本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、広帯域化を実現することができる双ループアンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の双ループアンテナは、一対のループ部と、両ループ部間に配置された給電部と、この給電部から前記各ループ部側である外側に向けて延びる一対の給電線路とを備え、所望の周波数帯域の電波を送信する双ループアンテナであって、前記ループ部は、前記給電線路に中間部が接続された第1内辺素子、当該第1内辺素子よりも外側に所定間隔を空けて配置された外辺素子、前記第1内辺素子及び外辺素子の各右端部に両端部がそれぞれ接続された右辺素子、並びに前記第1内辺素子及び外辺素子の各左端部に両端部がそれぞれ接続された左辺素子を用いてループ形成された第1ループ部と、前記給電線路に中間部が接続されているとともに前記右辺素子及び左辺素子の各中間部に位置する中間接続点にそれぞれ接続された第2内辺素子、前記右辺素子及び左辺素子の前記各中間接続点よりも外側の外側部、並びに前記外辺素子を用いてループ形成され、前記第1ループ部の周長よりも短い周長を有する第2ループ部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、各ループ部は、周長が異なる第1ループ部及び第2ループ部によって二重ループを構成しているため、第1ループ部と第2ループ部との共振作用によって、双ループアンテナの広帯域化を実現することができる。また、第1ループ部を形成する外辺素子、並びに右辺素子及び左辺素子の各外側部を、第2ループ部を形成するループ素子として兼用しているため、双ループアンテナの重量が、二重ループを構成することにより増大するのを効果的に抑制することができる。
【0008】
(2)また、前記ループ部は、前記第2内辺素子と前記外辺素子との間に配置され、前記右辺素子及び左辺素子の前記各外側部に位置する外側接続点に接続された調整素子をさらに備えていることが好ましい。この場合は、双ループアンテナの周波数帯域の全域に亘って良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0009】
(3)また、前記第1ループ部の周長は、前記周波数帯域の設計下限周波数の波長と略同一長さであることが好ましい。この場合は、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0010】
(4)また、前記第2ループ部の周長は、前記周波数帯域の設計中心周波数の波長と略同一長さであることが好ましい。この場合は、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0011】
(5)また、前記調整素子は、次式の関係を満たす位置に配置されていることが好ましい。この場合は、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
Lef+Lg1+Li+Lh1≒0.9λc
Lef:第2内辺素子の長さ
Lg1:右辺素子の中間接続点から外側接続点までの長さ
Li :調整素子の長さ
Lh1:左辺素子の中間接続点から外側接続点までの長さ
λc :周波数帯域の設計中心周波数の波長
【0012】
(6)また、前記ループ部は、前記調整素子の中間部と前記外辺素子の中間部とを接続する支持素子をさらに備えていることが好ましい。この場合は、支持素子によってループ部の剛性を高めることができる。
【0013】
(7)また、前記周波数帯域が、76〜108MHzであることが好ましい。この場合は、単一の双ループアンテナを、相互に隣接する周波数帯域であるFM帯(76〜90MHz)及びVHF−TV帯(90〜108MHz)の送信アンテナとして共用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各ループ部は、周長が異なる第1ループ部及び第2ループ部によって二重ループを構成しているため、第1ループ部と第2ループ部との共振作用によって、双ループアンテナの広帯域化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る双ループアンテナを示す正面図である。
【図2】上記双ループアンテナを示す側面図である。
【図3】上記双ループアンテナの上側のループ部のみを示す正面図である。
【図4】第1ループ部を示す上記ループ部の概略正面図である。
【図5】第2ループ部を示す上記ループ部の概略正面図である。
【図6】調整素子の配置位置を示す上記ループ部の概略正面図である。
【図7】上記双ループアンテナと従来の双ループアンテナとを比較したVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【図8】上記双ループアンテナと調整素子を有しない双ループアンテナとを比較したVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【図9】上記双ループアンテナと調整周長を変更した双ループアンテナとを比較したVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【図10】上記双ループアンテナとを比較した第2周長を変更した双ループアンテナとを比較したVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態に係る双ループアンテナの上側のループ部のみを示す正面図である。
【図12】第2実施形態の双ループアンテナのVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔全体構成〕
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る双ループアンテナを示す正面図であり、図2は、双ループアンテナの側面図である。この双ループアンテナ1は、FM帯及びVHF−TV帯(1〜3ch)の放送電波を送信するものである。本実施形態では、双ループアンテナ1の偏波面は水平偏波であり、公称インピーダンスは50オームである。
【0017】
図1及び図2において、双ループアンテナ1は、上下方向に所定間隔を空けて配置された一対のループ部2と、両ループ部2間の中央部に配置された給電部3と、給電部3から上下の各ループ部2側である外側に向けて延びる一対の給電線路4と、ループ部2に対して所定間隔を空けて背面側に配置された反射板5と、この反射板5にループ部2を支持する支持器6とを備えている。なお、本明細書においては、給電部3から各ループ部2側に向かう方向を「外側」といい、ループ部2側から給電部3に向かう方向を「内側」という。
【0018】
給電部3は、給電線路4を介してループ部2に電力を供給するものであり、図2に示すように、一端部が反射板5に取り付けられた棒状のトラップ31を有している。トラップ31は、例えばアルミニウム合金により形成されている。トラップ31の高さHは、設計中心周波数Fcの波長λcに対して略0.25λcとなるように設定されている。本実施形態では、周波数帯域は76〜108MHz、設計中心周波数Fcは90.6MHz(=√(76×108))、波長λcは3309mmであり、上記高さHは865mm(≒0.26λc)に設定されている。
【0019】
給電線路4は、例えばアルミニウム合金により形成された金属板を平行に配置したものであり、給電部3と各ループ部2とを接続する第1給電線路41と、ループ部2内に配置された第2給電線路42とによって構成されている。第1給電線路41及び第2給電線路42は、例えばアルミニウム合金により形成された金属板を平行に配置したものである。第1給電線路41の内端部は各トラップ31の他端部に固定され、外端部はループ部2側に固定されている。これにより、第1給電線路41は、給電部3からループ部2に電力を供給することができる。なお、トラップ31と第1給電線路41との接続部分は、防雪カバー7によって覆われている。
【0020】
反射板5は、上下方向へ延びる複数の縦反射素子51と、左右方向へ水平に延びる複数の横反射素子52とにより、図1の正面視において矩形に形成されている。縦反射素子51及び横反射素子52は、例えばアルミニウム合金により形成されている。本実施形態では、反射板5の大きさは1800×3500mmに設定されている。
【0021】
支持器6は、図1に示すように、各ループ部2の内側を支持する左右一対の内側支持器61と、各ループ部2の外側を支持する単体の外側支持器62とによって構成されている。内側支持器61及び外側支持器62は、図2に示すように、例えばFRP(繊維強化プラスチック)により前後方向(図2の左右方向)へ水平に延びるように形成されており、一端部が反射板5に固定されている。内側支持器61及び外側支持器62の他端部には、ループ部2の所定部が固定されている。
【0022】
一対のループ部2は、図1に示すように、給電部3の水平方向の中心線X1を挟んで線対称に形成されている。また、図2において、上側のループ部2の中心線X2と下側のループ部2の中心線X3との間隔Dは、略0.5λcとなるように設定されている。本実施形態では、上記間隔Dは1750mm(≒0.53λc)に設定されている。
【0023】
〔第1ループ部〕
図3は、上側のループ部2のみを示す正面図である。ループ部2は、四角形状の第1ループ部21と、第1ループ部21の内側に配置された台形状の第2ループ部22とによって二重ループが構成されている。第1ループ部21は、給電線路4に中間部が接続された左右方向に延びる第1内辺素子21aと、この第1内辺素子21aに対して外側(図3の上側)の上下方向に所定間隔を空けて配置された外辺素子21bと、第1内辺素子21a及び外辺素子21bの各右端部(一端部)に両端部がそれぞれ接続された右辺素子21cと、第1内辺素子21a及び外辺素子21bの各左端部(他端部)に両端部がそれぞれ接続された左辺素子21dとによってループ形成されている。各素子21a〜21dは、例えばアルミニウム合金からなる金属板により形成されている。
【0024】
第1内辺素子21aは、所定の隙間を設けて配置された左右一対の平板部材により構成されている。各平板部材の一端は、第1給電線路41の外端部にボルト11により固定され、他端は各内側支持器61の側面にそれぞれ一対のボルト12により固定されている。第1内辺素子21aの中央部には、第2ループ部22に電力を供給するために、上記第2給電線路42が固定されている。第2給電線路42を構成する一対の金属板は、それぞれ水平方向に屈曲して第1内辺素子21aに一対のボルト13により固定されている。
【0025】
右辺素子21c及び左辺素子21dは、第1内辺素子21aに対して垂直に配置された平板部材からなり、各素子21c,21dの内端部は、内側支持器61の側面にそれぞれ一対のボルト14により固定されている。外辺素子21bは、第1内辺素子21aに対して平行に配置されている。外辺素子21bの両端部は、内側に屈曲して右辺素子21c及び左辺素子21dの外端部にそれぞれ一対のボルト15により固定されている。
【0026】
第1ループ部21の周長である第1周長L1は、設計下限周波数Flの波長λlと略同一長さに設定されている。本実施形態では、上記周波数帯域(76〜108MHz)より、設計下限周波数Flは76MHz、波長λlは3945mmであり、第1周長L1は3980mm(≒1.01λl)に設定されている。
【0027】
第1周長L1は、図4に示すように、第1内辺素子21aの長さLaと、右辺素子21cの長さLcと、外辺素子21bの長さLbと、左辺素子21dの長さLdとを合計した長さである。本実施形態では、第1周長L1が3980mmとなるように、長さLa及びLbはそれぞれ1200mm、長さLc及びLdはそれぞれ790mmに設定されている。
【0028】
〔第2ループ部〕
第2ループ部22は、第1内辺素子21aと外辺素子21bとの間において給電線路4に中間部が接続されているとともに右辺素子21c及び左辺素子21dに両端部が接続された第2内辺素子22aと、右辺素子21c及び左辺素子21dの外側部21c1,21d1(後述)と、上記外辺素子21bとによってループ形成されている。第2内辺素子22aは、例えばアルミニウム合金からなる金属板により形成されており、水平方向に延びる水平部22a1と、この水平部22a1から左斜め外方及び右斜め外方に延びるように一体形成された一対の傾斜部22a2とを有している。
【0029】
水平部22a1は、所定の隙間を設けて配置された左右一対の平板部材を、それぞれ上記第2給電線路42の外端に一体形成したものである。各傾斜部22a2の外端部は、鉛直方向に屈曲して右辺素子21c及び左辺素子21dの各中間部に位置する中間接続点A1,A2から外側に延びる各外側部21c1,21d1に接触させた状態で、それぞれ一対のボルト16により固定されている。
【0030】
第2ループ部22の周長である第2周長L2は、第1周長L1よりも短く設定されている。具体的には、第2周長L2は設計中心周波数Fcの波長λcと略同一長さに設定されている。本実施形態では、上述のように波長λcは3309mmであり、第2周長L2は3247mm(≒0.98λc)に設定されている。
【0031】
第2周長L2は、図5に示すように、水平部22a1の長さLeと、各傾斜部22a2の長さLf1及びLf2と、右辺素子21cの外側部21c1の長さLgと、外辺素子21bの長さLb(=1200mm)と、左辺素子21dの外側部21d1の長さLhとを合計した長さである。本実施形態では、第2周長L2が3247mmとなるように、長さLeは360mm、Lf1及びLf2はそれぞれ593.5mm、長さLg及びLhはそれぞれ250mmに設定されている。
【0032】
〔調整素子〕
図3において、ループ部2は、第2内辺素子22aと外辺素子21bとの間に配置された調整素子24をさらに備えている。調整素子24は、例えばアルミニウム合金からなる金属板により形成されており、外辺素子21bに対して平行に配置されている。調整素子24の両端部は、内側に屈曲して右辺素子21c及び左辺素子21dの外側部21c1,21d1の中間部に位置する外側接続点B1,B2に接触させた状態で、それぞれ一対のボルト17により固定されている。
【0033】
調整素子24は、下記式(1)の関係を満たすように位置調整された状態で固定されている(図6参照)。
Lef+Lg1+Li+Lh1≒0.9λc ・・・(1)
ここで、Lefは第2内辺素子22aの長さ(=Le+Lf1+Lf2=1547mm)、Lg1は右辺素子21cの中間接続点A1から外側接続点B1までの長さ、Liは調整素子24の長さ、Lh1は左辺素子21dの中間接続点A2から外側接続点B2までの長さ、λcは設計中心周波数Fcの波長(=3309mm)である。本実施形態では、長さLg1及びLh1はそれぞれ120mm、長さLiは1200mmに設定されている。以下、上記式(1)の左辺の合計長さ(Lef+Lg1+Li+Lh1)を調整周長L3という。
【0034】
[VSWRの周波数特性]
図7〜図10は、本実施形態の双ループアンテナ1と、ループ部を様々な形状に変更した双ループアンテナとを、シミュレーションにより求めたVSWR(電圧定在波比)の周波数特性で比較したグラフである。以下、各図の試験結果について説明する。
図7は、本実施形態の双ループアンテナ1と、従来のFM双ループアンテナとを比較したグラフである。本実施形態の双ループアンテナ1は、周波数帯域(76〜108MHz)の全域に亘って、VSWRが1.1以下となる良好な周波数特性が得られており、従来の双ループアンテナよりも広帯域において対応できることが分かる。
【0035】
図8は、調整素子24を有する本実施形態の双ループアンテナ1と、調整素子24を有しない双ループアンテナとを比較したグラフである。調整素子24を有しない双ループアンテナは、低周波数帯域においてVSWRが高い値を示しているのに対して、本実施形態の双ループアンテナ1は、低周波数帯域のVSWRは高周波帯域のVSWRと同等の低い値を示している。この試験結果により、調整素子24を有する本実施形態の双ループアンテナ1は、調整素子24を有しない双ループアンテナよりも広帯域において対応できることが分かる。
【0036】
図9(a)は、本実施形態の双ループアンテナ1と、本実施形態の調整周長L3(≒0.9λc)よりも長い調整周長(=0.94λc)を有する双ループアンテナとを比較したグラフである。図9(b)は、本実施形態の双ループアンテナ1と、本実施形態の調整周長L3よりも短い調整周長(=0.87λc)を有する双ループアンテナとを比較したグラフである。各グラフにおいて、本実施形態の双ループアンテナ1は、調整周長を長くした双ループアンテナ及び調整周長を短くした双ループアンテナよりも、周波数帯域の略全域に亘ってVSWRが安定した低い値を示している。この試験結果により、本実施形態の双ループアンテナ1は、調整周長L3を略0.9λc、つまり調整素子24を上記式(1)を満たす位置に配置することにより、良好なVSWRの周波数特性を得ることが分かる。
【0037】
図10(a)は、本実施形態の双ループアンテナ1と、本実施形態の第2周長L2(=0.98λc)よりも長い第2周長(=1.04λc)を有する双ループアンテナとを比較したグラフである。図10(b)は、本実施形態の双ループアンテナ1と、本実施形態の第2周長L2(=0.98λc)よりも短い第2周長(=0.91λc)を有する双ループアンテナとを比較したグラフである。各グラフにおいて、本実施形態の双ループアンテナ1は、第2周長を長くした双ループアンテナ及び第2周長を短くした双ループアンテナよりも、周波数帯域の略全域に亘ってVSWRが安定した低い値を示している。この試験結果により、本実施形態の双ループアンテナ1は、第2周長を設計中心周波数Fcの波長λcと略同一長さ(=0.98λc)とすることにより、良好なVSWRの周波数特性を得ることが分かる。
【0038】
以上、本発明の実施形態に係る双ループアンテナによれば、各ループ部2は、周長が異なる第1ループ部21及び第2ループ部22によって二重ループを構成しているため、第1ループ部21と第2ループ部22との共振作用によって、双ループアンテナ1の広帯域化を実現することができる。また、第1ループ部21を形成する外辺素子21b、並びに右辺素子21c及び左辺素子21dの各外側部21c1,21d1を、第2ループ部22を形成するループ素子として兼用しているため、双ループアンテナ1の重量が、二重ループを構成することにより増大するのを効果的に抑制することができる。
【0039】
また、第2内辺素子22aと外辺素子21bとの間に調整素子24を配置し、調整素子24の両端部を右辺素子21c及び左辺素子21dの外側接続点B1,B2に接続したので、双ループアンテナ1の周波数帯域の全域であるFM帯(76〜90MHz)からVHF−TV帯(90〜108MHz)にわたって、良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。また、調整素子24は、上記式(1)の関係を満たす位置に配置されているため、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0040】
また、第1ループ部21の周長を、設計下限周波数Flの波長λlと略同一長さに設定し、第2ループ部22の周長を、設計中心周波数Fcの波長λcと略同一長さに設定したので、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0041】
また、双ループアンテナ1の周波数帯域を76〜108MHzとしたので、単一の双ループアンテナ1を、相互に隣接する周波数帯域であるFM帯(76〜90MHz)及びVHF−TV帯(90〜108MHz)の送信アンテナとして共用することができる。さらに、双ループアンテナ1は、放送機の公称インピーダンスが50オームであるため、整合回路を用いることなくFM帯及びVHF−TV帯の全域に亘って良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
図11は、本発明の第2実施形態に係る双ループアンテナの上側のループ部のみを示す概略正面図である。以下、本実施形態の説明において、第1実施形態と同じ名称の部位については、同じ符号を付してその説明を省略する。本実施形態の双ループアンテナは、調整素子24と外辺素子21bとの間に配置された補強用の支持素子25を備えている。この支持素子25は、例えばアルミニウム合金により形成された金属板を、調整素子24及び外辺素子21bに対して垂直に配置したものである。支持素子25の一端は調整素子24の左右方向の中央部(中間部)に固定され、他端は外辺素子21bの左右方向の中央部(中間部)に固定されている。
【0043】
以上、第2実施形態に係る双ループアンテナによれば、調整素子24の中央部と、外辺素子21bの中央部とを支持素子25により接続したので、この支持素子25によってループ部2の剛性を高めることができる。
【0044】
図12は、第2実施形態における双ループアンテナのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示すグラフである。図12の第2実施形態の双ループアンテナは、図7の支持素子25を有しない第1実施形態のループアンテナと略同等の周波数特性であって、周波数帯域の全域に亘って、VSWRが1.1以下となる良好な周波数特性が得られた。これにより、第2実施形態における双ループアンテナは、支持素子25を設けても、第1実施形態の双ループアンテナと同様に、広帯域において対応できることが分かる。
【0045】
[その他の変形例]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、上記各実施形態において、双ループアンテナ1の周波数帯域を76〜108MHzとしているが、その他の周波数帯域であってもよい。
【0046】
また、第1ループ部21は、四角形状に形成されているが、少なくとも第1内辺素子21a、外辺素子21b、右辺素子21c及び左辺素子21dを用いてループ形成されていれば、その他の形状であってもよい。また、第2ループ部22は、台形状に形成されているが、少なくとも第2内辺素子22a、右辺素子21c及び左辺素子21dの外側部21c1,21d1、及び外辺素子21bを用いてループ形成されていれば、その他の形状であってもよい。
【0047】
さらに、調整素子24は、第1ループ部21や第2ループ部22の形状や、周波数帯域等によって良好なVSWRの周波数特性を得ることができれば、必ずしも設ける必要はない。また、双ループアンテナ1の偏波面は、水平偏波としているが、垂直偏波としてもよい。
【0048】
第2実施形態において、支持素子25の取付位置は、調整素子24及び外辺素子21bにおける左右方向の任意の位置に取り付けることができる。また、支持素子25は、複数個取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 双ループアンテナ
2 ループ部
3 給電部
4 給電線路
21a 第1内辺素子
21b 外辺素子
21c 右辺素子
21c1 外側部
21d 左辺素子
21 第1ループ部
21d1 外側部
22 第2ループ部
22a 第2内辺素子
24 調整素子
25 支持素子
A1、A2 中間接続点
B1、B2 外側接続点
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばFM帯とVHF−TV帯の放送電波を送信をする双ループアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば周波数帯域が90〜108MHzであるVHF−TV帯(1〜3ch)の放送電波を送信する双ループアンテナとして、所定間隔を空けて配置された一対のループ素子(ループ部)を給電線路で接続し、この給電線路からループ素子に給電するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−222923号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の双ループアンテナは、その周波数帯域を広くすることができないため、例えば、VHF−TV帯に隣接する周波数帯域(76〜90MHz)であるFM帯の送信アンテナとして共用することができない。この問題を解決するために、双ループアンテナに空中線共用装置と所望のFM送信周波数に整合する整合回路を別途取り付けることが考えられるが、この場合はコスト高になるとともに、整合回路を取り付けた際のVSWRの周波数特性を事前に予測することができない等の問題が生じるため、好ましくない。
【0005】
また、UHF帯用の送信アンテナのように、ループ素子を幅広の導体板で構成することにより広帯域化を図ることも考えられるが、VHF帯用の双ループアンテナのループ素子は外部に露出しているため、ループ素子における受風荷重が増大し、強度上好ましくない。
そこで、本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、広帯域化を実現することができる双ループアンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の双ループアンテナは、一対のループ部と、両ループ部間に配置された給電部と、この給電部から前記各ループ部側である外側に向けて延びる一対の給電線路とを備え、所望の周波数帯域の電波を送信する双ループアンテナであって、前記ループ部は、前記給電線路に中間部が接続された第1内辺素子、当該第1内辺素子よりも外側に所定間隔を空けて配置された外辺素子、前記第1内辺素子及び外辺素子の各右端部に両端部がそれぞれ接続された右辺素子、並びに前記第1内辺素子及び外辺素子の各左端部に両端部がそれぞれ接続された左辺素子を用いてループ形成された第1ループ部と、前記給電線路に中間部が接続されているとともに前記右辺素子及び左辺素子の各中間部に位置する中間接続点にそれぞれ接続された第2内辺素子、前記右辺素子及び左辺素子の前記各中間接続点よりも外側の外側部、並びに前記外辺素子を用いてループ形成され、前記第1ループ部の周長よりも短い周長を有する第2ループ部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、各ループ部は、周長が異なる第1ループ部及び第2ループ部によって二重ループを構成しているため、第1ループ部と第2ループ部との共振作用によって、双ループアンテナの広帯域化を実現することができる。また、第1ループ部を形成する外辺素子、並びに右辺素子及び左辺素子の各外側部を、第2ループ部を形成するループ素子として兼用しているため、双ループアンテナの重量が、二重ループを構成することにより増大するのを効果的に抑制することができる。
【0008】
(2)また、前記ループ部は、前記第2内辺素子と前記外辺素子との間に配置され、前記右辺素子及び左辺素子の前記各外側部に位置する外側接続点に接続された調整素子をさらに備えていることが好ましい。この場合は、双ループアンテナの周波数帯域の全域に亘って良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0009】
(3)また、前記第1ループ部の周長は、前記周波数帯域の設計下限周波数の波長と略同一長さであることが好ましい。この場合は、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0010】
(4)また、前記第2ループ部の周長は、前記周波数帯域の設計中心周波数の波長と略同一長さであることが好ましい。この場合は、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0011】
(5)また、前記調整素子は、次式の関係を満たす位置に配置されていることが好ましい。この場合は、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
Lef+Lg1+Li+Lh1≒0.9λc
Lef:第2内辺素子の長さ
Lg1:右辺素子の中間接続点から外側接続点までの長さ
Li :調整素子の長さ
Lh1:左辺素子の中間接続点から外側接続点までの長さ
λc :周波数帯域の設計中心周波数の波長
【0012】
(6)また、前記ループ部は、前記調整素子の中間部と前記外辺素子の中間部とを接続する支持素子をさらに備えていることが好ましい。この場合は、支持素子によってループ部の剛性を高めることができる。
【0013】
(7)また、前記周波数帯域が、76〜108MHzであることが好ましい。この場合は、単一の双ループアンテナを、相互に隣接する周波数帯域であるFM帯(76〜90MHz)及びVHF−TV帯(90〜108MHz)の送信アンテナとして共用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各ループ部は、周長が異なる第1ループ部及び第2ループ部によって二重ループを構成しているため、第1ループ部と第2ループ部との共振作用によって、双ループアンテナの広帯域化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る双ループアンテナを示す正面図である。
【図2】上記双ループアンテナを示す側面図である。
【図3】上記双ループアンテナの上側のループ部のみを示す正面図である。
【図4】第1ループ部を示す上記ループ部の概略正面図である。
【図5】第2ループ部を示す上記ループ部の概略正面図である。
【図6】調整素子の配置位置を示す上記ループ部の概略正面図である。
【図7】上記双ループアンテナと従来の双ループアンテナとを比較したVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【図8】上記双ループアンテナと調整素子を有しない双ループアンテナとを比較したVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【図9】上記双ループアンテナと調整周長を変更した双ループアンテナとを比較したVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【図10】上記双ループアンテナとを比較した第2周長を変更した双ループアンテナとを比較したVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態に係る双ループアンテナの上側のループ部のみを示す正面図である。
【図12】第2実施形態の双ループアンテナのVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔全体構成〕
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る双ループアンテナを示す正面図であり、図2は、双ループアンテナの側面図である。この双ループアンテナ1は、FM帯及びVHF−TV帯(1〜3ch)の放送電波を送信するものである。本実施形態では、双ループアンテナ1の偏波面は水平偏波であり、公称インピーダンスは50オームである。
【0017】
図1及び図2において、双ループアンテナ1は、上下方向に所定間隔を空けて配置された一対のループ部2と、両ループ部2間の中央部に配置された給電部3と、給電部3から上下の各ループ部2側である外側に向けて延びる一対の給電線路4と、ループ部2に対して所定間隔を空けて背面側に配置された反射板5と、この反射板5にループ部2を支持する支持器6とを備えている。なお、本明細書においては、給電部3から各ループ部2側に向かう方向を「外側」といい、ループ部2側から給電部3に向かう方向を「内側」という。
【0018】
給電部3は、給電線路4を介してループ部2に電力を供給するものであり、図2に示すように、一端部が反射板5に取り付けられた棒状のトラップ31を有している。トラップ31は、例えばアルミニウム合金により形成されている。トラップ31の高さHは、設計中心周波数Fcの波長λcに対して略0.25λcとなるように設定されている。本実施形態では、周波数帯域は76〜108MHz、設計中心周波数Fcは90.6MHz(=√(76×108))、波長λcは3309mmであり、上記高さHは865mm(≒0.26λc)に設定されている。
【0019】
給電線路4は、例えばアルミニウム合金により形成された金属板を平行に配置したものであり、給電部3と各ループ部2とを接続する第1給電線路41と、ループ部2内に配置された第2給電線路42とによって構成されている。第1給電線路41及び第2給電線路42は、例えばアルミニウム合金により形成された金属板を平行に配置したものである。第1給電線路41の内端部は各トラップ31の他端部に固定され、外端部はループ部2側に固定されている。これにより、第1給電線路41は、給電部3からループ部2に電力を供給することができる。なお、トラップ31と第1給電線路41との接続部分は、防雪カバー7によって覆われている。
【0020】
反射板5は、上下方向へ延びる複数の縦反射素子51と、左右方向へ水平に延びる複数の横反射素子52とにより、図1の正面視において矩形に形成されている。縦反射素子51及び横反射素子52は、例えばアルミニウム合金により形成されている。本実施形態では、反射板5の大きさは1800×3500mmに設定されている。
【0021】
支持器6は、図1に示すように、各ループ部2の内側を支持する左右一対の内側支持器61と、各ループ部2の外側を支持する単体の外側支持器62とによって構成されている。内側支持器61及び外側支持器62は、図2に示すように、例えばFRP(繊維強化プラスチック)により前後方向(図2の左右方向)へ水平に延びるように形成されており、一端部が反射板5に固定されている。内側支持器61及び外側支持器62の他端部には、ループ部2の所定部が固定されている。
【0022】
一対のループ部2は、図1に示すように、給電部3の水平方向の中心線X1を挟んで線対称に形成されている。また、図2において、上側のループ部2の中心線X2と下側のループ部2の中心線X3との間隔Dは、略0.5λcとなるように設定されている。本実施形態では、上記間隔Dは1750mm(≒0.53λc)に設定されている。
【0023】
〔第1ループ部〕
図3は、上側のループ部2のみを示す正面図である。ループ部2は、四角形状の第1ループ部21と、第1ループ部21の内側に配置された台形状の第2ループ部22とによって二重ループが構成されている。第1ループ部21は、給電線路4に中間部が接続された左右方向に延びる第1内辺素子21aと、この第1内辺素子21aに対して外側(図3の上側)の上下方向に所定間隔を空けて配置された外辺素子21bと、第1内辺素子21a及び外辺素子21bの各右端部(一端部)に両端部がそれぞれ接続された右辺素子21cと、第1内辺素子21a及び外辺素子21bの各左端部(他端部)に両端部がそれぞれ接続された左辺素子21dとによってループ形成されている。各素子21a〜21dは、例えばアルミニウム合金からなる金属板により形成されている。
【0024】
第1内辺素子21aは、所定の隙間を設けて配置された左右一対の平板部材により構成されている。各平板部材の一端は、第1給電線路41の外端部にボルト11により固定され、他端は各内側支持器61の側面にそれぞれ一対のボルト12により固定されている。第1内辺素子21aの中央部には、第2ループ部22に電力を供給するために、上記第2給電線路42が固定されている。第2給電線路42を構成する一対の金属板は、それぞれ水平方向に屈曲して第1内辺素子21aに一対のボルト13により固定されている。
【0025】
右辺素子21c及び左辺素子21dは、第1内辺素子21aに対して垂直に配置された平板部材からなり、各素子21c,21dの内端部は、内側支持器61の側面にそれぞれ一対のボルト14により固定されている。外辺素子21bは、第1内辺素子21aに対して平行に配置されている。外辺素子21bの両端部は、内側に屈曲して右辺素子21c及び左辺素子21dの外端部にそれぞれ一対のボルト15により固定されている。
【0026】
第1ループ部21の周長である第1周長L1は、設計下限周波数Flの波長λlと略同一長さに設定されている。本実施形態では、上記周波数帯域(76〜108MHz)より、設計下限周波数Flは76MHz、波長λlは3945mmであり、第1周長L1は3980mm(≒1.01λl)に設定されている。
【0027】
第1周長L1は、図4に示すように、第1内辺素子21aの長さLaと、右辺素子21cの長さLcと、外辺素子21bの長さLbと、左辺素子21dの長さLdとを合計した長さである。本実施形態では、第1周長L1が3980mmとなるように、長さLa及びLbはそれぞれ1200mm、長さLc及びLdはそれぞれ790mmに設定されている。
【0028】
〔第2ループ部〕
第2ループ部22は、第1内辺素子21aと外辺素子21bとの間において給電線路4に中間部が接続されているとともに右辺素子21c及び左辺素子21dに両端部が接続された第2内辺素子22aと、右辺素子21c及び左辺素子21dの外側部21c1,21d1(後述)と、上記外辺素子21bとによってループ形成されている。第2内辺素子22aは、例えばアルミニウム合金からなる金属板により形成されており、水平方向に延びる水平部22a1と、この水平部22a1から左斜め外方及び右斜め外方に延びるように一体形成された一対の傾斜部22a2とを有している。
【0029】
水平部22a1は、所定の隙間を設けて配置された左右一対の平板部材を、それぞれ上記第2給電線路42の外端に一体形成したものである。各傾斜部22a2の外端部は、鉛直方向に屈曲して右辺素子21c及び左辺素子21dの各中間部に位置する中間接続点A1,A2から外側に延びる各外側部21c1,21d1に接触させた状態で、それぞれ一対のボルト16により固定されている。
【0030】
第2ループ部22の周長である第2周長L2は、第1周長L1よりも短く設定されている。具体的には、第2周長L2は設計中心周波数Fcの波長λcと略同一長さに設定されている。本実施形態では、上述のように波長λcは3309mmであり、第2周長L2は3247mm(≒0.98λc)に設定されている。
【0031】
第2周長L2は、図5に示すように、水平部22a1の長さLeと、各傾斜部22a2の長さLf1及びLf2と、右辺素子21cの外側部21c1の長さLgと、外辺素子21bの長さLb(=1200mm)と、左辺素子21dの外側部21d1の長さLhとを合計した長さである。本実施形態では、第2周長L2が3247mmとなるように、長さLeは360mm、Lf1及びLf2はそれぞれ593.5mm、長さLg及びLhはそれぞれ250mmに設定されている。
【0032】
〔調整素子〕
図3において、ループ部2は、第2内辺素子22aと外辺素子21bとの間に配置された調整素子24をさらに備えている。調整素子24は、例えばアルミニウム合金からなる金属板により形成されており、外辺素子21bに対して平行に配置されている。調整素子24の両端部は、内側に屈曲して右辺素子21c及び左辺素子21dの外側部21c1,21d1の中間部に位置する外側接続点B1,B2に接触させた状態で、それぞれ一対のボルト17により固定されている。
【0033】
調整素子24は、下記式(1)の関係を満たすように位置調整された状態で固定されている(図6参照)。
Lef+Lg1+Li+Lh1≒0.9λc ・・・(1)
ここで、Lefは第2内辺素子22aの長さ(=Le+Lf1+Lf2=1547mm)、Lg1は右辺素子21cの中間接続点A1から外側接続点B1までの長さ、Liは調整素子24の長さ、Lh1は左辺素子21dの中間接続点A2から外側接続点B2までの長さ、λcは設計中心周波数Fcの波長(=3309mm)である。本実施形態では、長さLg1及びLh1はそれぞれ120mm、長さLiは1200mmに設定されている。以下、上記式(1)の左辺の合計長さ(Lef+Lg1+Li+Lh1)を調整周長L3という。
【0034】
[VSWRの周波数特性]
図7〜図10は、本実施形態の双ループアンテナ1と、ループ部を様々な形状に変更した双ループアンテナとを、シミュレーションにより求めたVSWR(電圧定在波比)の周波数特性で比較したグラフである。以下、各図の試験結果について説明する。
図7は、本実施形態の双ループアンテナ1と、従来のFM双ループアンテナとを比較したグラフである。本実施形態の双ループアンテナ1は、周波数帯域(76〜108MHz)の全域に亘って、VSWRが1.1以下となる良好な周波数特性が得られており、従来の双ループアンテナよりも広帯域において対応できることが分かる。
【0035】
図8は、調整素子24を有する本実施形態の双ループアンテナ1と、調整素子24を有しない双ループアンテナとを比較したグラフである。調整素子24を有しない双ループアンテナは、低周波数帯域においてVSWRが高い値を示しているのに対して、本実施形態の双ループアンテナ1は、低周波数帯域のVSWRは高周波帯域のVSWRと同等の低い値を示している。この試験結果により、調整素子24を有する本実施形態の双ループアンテナ1は、調整素子24を有しない双ループアンテナよりも広帯域において対応できることが分かる。
【0036】
図9(a)は、本実施形態の双ループアンテナ1と、本実施形態の調整周長L3(≒0.9λc)よりも長い調整周長(=0.94λc)を有する双ループアンテナとを比較したグラフである。図9(b)は、本実施形態の双ループアンテナ1と、本実施形態の調整周長L3よりも短い調整周長(=0.87λc)を有する双ループアンテナとを比較したグラフである。各グラフにおいて、本実施形態の双ループアンテナ1は、調整周長を長くした双ループアンテナ及び調整周長を短くした双ループアンテナよりも、周波数帯域の略全域に亘ってVSWRが安定した低い値を示している。この試験結果により、本実施形態の双ループアンテナ1は、調整周長L3を略0.9λc、つまり調整素子24を上記式(1)を満たす位置に配置することにより、良好なVSWRの周波数特性を得ることが分かる。
【0037】
図10(a)は、本実施形態の双ループアンテナ1と、本実施形態の第2周長L2(=0.98λc)よりも長い第2周長(=1.04λc)を有する双ループアンテナとを比較したグラフである。図10(b)は、本実施形態の双ループアンテナ1と、本実施形態の第2周長L2(=0.98λc)よりも短い第2周長(=0.91λc)を有する双ループアンテナとを比較したグラフである。各グラフにおいて、本実施形態の双ループアンテナ1は、第2周長を長くした双ループアンテナ及び第2周長を短くした双ループアンテナよりも、周波数帯域の略全域に亘ってVSWRが安定した低い値を示している。この試験結果により、本実施形態の双ループアンテナ1は、第2周長を設計中心周波数Fcの波長λcと略同一長さ(=0.98λc)とすることにより、良好なVSWRの周波数特性を得ることが分かる。
【0038】
以上、本発明の実施形態に係る双ループアンテナによれば、各ループ部2は、周長が異なる第1ループ部21及び第2ループ部22によって二重ループを構成しているため、第1ループ部21と第2ループ部22との共振作用によって、双ループアンテナ1の広帯域化を実現することができる。また、第1ループ部21を形成する外辺素子21b、並びに右辺素子21c及び左辺素子21dの各外側部21c1,21d1を、第2ループ部22を形成するループ素子として兼用しているため、双ループアンテナ1の重量が、二重ループを構成することにより増大するのを効果的に抑制することができる。
【0039】
また、第2内辺素子22aと外辺素子21bとの間に調整素子24を配置し、調整素子24の両端部を右辺素子21c及び左辺素子21dの外側接続点B1,B2に接続したので、双ループアンテナ1の周波数帯域の全域であるFM帯(76〜90MHz)からVHF−TV帯(90〜108MHz)にわたって、良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。また、調整素子24は、上記式(1)の関係を満たす位置に配置されているため、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0040】
また、第1ループ部21の周長を、設計下限周波数Flの波長λlと略同一長さに設定し、第2ループ部22の周長を、設計中心周波数Fcの波長λcと略同一長さに設定したので、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0041】
また、双ループアンテナ1の周波数帯域を76〜108MHzとしたので、単一の双ループアンテナ1を、相互に隣接する周波数帯域であるFM帯(76〜90MHz)及びVHF−TV帯(90〜108MHz)の送信アンテナとして共用することができる。さらに、双ループアンテナ1は、放送機の公称インピーダンスが50オームであるため、整合回路を用いることなくFM帯及びVHF−TV帯の全域に亘って良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
図11は、本発明の第2実施形態に係る双ループアンテナの上側のループ部のみを示す概略正面図である。以下、本実施形態の説明において、第1実施形態と同じ名称の部位については、同じ符号を付してその説明を省略する。本実施形態の双ループアンテナは、調整素子24と外辺素子21bとの間に配置された補強用の支持素子25を備えている。この支持素子25は、例えばアルミニウム合金により形成された金属板を、調整素子24及び外辺素子21bに対して垂直に配置したものである。支持素子25の一端は調整素子24の左右方向の中央部(中間部)に固定され、他端は外辺素子21bの左右方向の中央部(中間部)に固定されている。
【0043】
以上、第2実施形態に係る双ループアンテナによれば、調整素子24の中央部と、外辺素子21bの中央部とを支持素子25により接続したので、この支持素子25によってループ部2の剛性を高めることができる。
【0044】
図12は、第2実施形態における双ループアンテナのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示すグラフである。図12の第2実施形態の双ループアンテナは、図7の支持素子25を有しない第1実施形態のループアンテナと略同等の周波数特性であって、周波数帯域の全域に亘って、VSWRが1.1以下となる良好な周波数特性が得られた。これにより、第2実施形態における双ループアンテナは、支持素子25を設けても、第1実施形態の双ループアンテナと同様に、広帯域において対応できることが分かる。
【0045】
[その他の変形例]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、上記各実施形態において、双ループアンテナ1の周波数帯域を76〜108MHzとしているが、その他の周波数帯域であってもよい。
【0046】
また、第1ループ部21は、四角形状に形成されているが、少なくとも第1内辺素子21a、外辺素子21b、右辺素子21c及び左辺素子21dを用いてループ形成されていれば、その他の形状であってもよい。また、第2ループ部22は、台形状に形成されているが、少なくとも第2内辺素子22a、右辺素子21c及び左辺素子21dの外側部21c1,21d1、及び外辺素子21bを用いてループ形成されていれば、その他の形状であってもよい。
【0047】
さらに、調整素子24は、第1ループ部21や第2ループ部22の形状や、周波数帯域等によって良好なVSWRの周波数特性を得ることができれば、必ずしも設ける必要はない。また、双ループアンテナ1の偏波面は、水平偏波としているが、垂直偏波としてもよい。
【0048】
第2実施形態において、支持素子25の取付位置は、調整素子24及び外辺素子21bにおける左右方向の任意の位置に取り付けることができる。また、支持素子25は、複数個取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 双ループアンテナ
2 ループ部
3 給電部
4 給電線路
21a 第1内辺素子
21b 外辺素子
21c 右辺素子
21c1 外側部
21d 左辺素子
21 第1ループ部
21d1 外側部
22 第2ループ部
22a 第2内辺素子
24 調整素子
25 支持素子
A1、A2 中間接続点
B1、B2 外側接続点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のループ部と、両ループ部間に配置された給電部と、この給電部から前記各ループ部側である外側に向けて延びる一対の給電線路とを備え、所望の周波数帯域の電波を送信する双ループアンテナであって、
前記ループ部は、前記給電線路に中間部が接続された第1内辺素子、当該第1内辺素子よりも外側に所定間隔を空けて配置された外辺素子、前記第1内辺素子及び外辺素子の各右端部に両端部がそれぞれ接続された右辺素子、並びに前記第1内辺素子及び外辺素子の各左端部に両端部がそれぞれ接続された左辺素子を用いてループ形成された第1ループ部と、
前記給電線路に中間部が接続されているとともに前記右辺素子及び左辺素子の各中間部に位置する中間接続点にそれぞれ接続された第2内辺素子、前記右辺素子及び左辺素子の前記各中間接続点よりも外側の外側部、並びに前記外辺素子を用いてループ形成され、前記第1ループ部の周長よりも短い周長を有する第2ループ部とを備えていることを特徴とする双ループアンテナ。
【請求項2】
前記ループ部は、前記第2内辺素子と前記外辺素子との間に配置され、前記右辺素子及び左辺素子の前記各外側部に位置する外側接続点に接続された調整素子をさらに備えている請求項1に記載の双ループアンテナ。
【請求項3】
前記第1ループ部の周長が、前記周波数帯域の設計下限周波数の波長と略同一長さである請求項1又は2に記載の双ループアンテナ。
【請求項4】
前記第2ループ部の周長が、前記周波数帯域の設計中心周波数の波長と略同一長さである請求項1〜3のいずれか一項に記載の双ループアンテナ。
【請求項5】
前記調整素子は、次式の関係を満たす位置に配置されている請求項2に記載の双ループアンテナ。
Lef+Lg1+Li+Lh1≒0.9λc
Lef:第2内辺素子の長さ
Lg1:右辺素子の中間接続点から外側接続点までの長さ
Li :調整素子の長さ
Lh1:左辺素子の中間接続点から外側接続点までの長さ
λc :周波数帯域の設計中心周波数の波長
【請求項6】
前記ループ部は、前記調整素子の中間部と前記外辺素子の中間部とを接続する支持素子をさらに備えている請求項2又は5に記載の双ループアンテナ。
【請求項7】
前記周波数帯域が、76〜108MHzである請求項1〜6のいずれか一項に記載の双ループアンテナ。
【請求項1】
一対のループ部と、両ループ部間に配置された給電部と、この給電部から前記各ループ部側である外側に向けて延びる一対の給電線路とを備え、所望の周波数帯域の電波を送信する双ループアンテナであって、
前記ループ部は、前記給電線路に中間部が接続された第1内辺素子、当該第1内辺素子よりも外側に所定間隔を空けて配置された外辺素子、前記第1内辺素子及び外辺素子の各右端部に両端部がそれぞれ接続された右辺素子、並びに前記第1内辺素子及び外辺素子の各左端部に両端部がそれぞれ接続された左辺素子を用いてループ形成された第1ループ部と、
前記給電線路に中間部が接続されているとともに前記右辺素子及び左辺素子の各中間部に位置する中間接続点にそれぞれ接続された第2内辺素子、前記右辺素子及び左辺素子の前記各中間接続点よりも外側の外側部、並びに前記外辺素子を用いてループ形成され、前記第1ループ部の周長よりも短い周長を有する第2ループ部とを備えていることを特徴とする双ループアンテナ。
【請求項2】
前記ループ部は、前記第2内辺素子と前記外辺素子との間に配置され、前記右辺素子及び左辺素子の前記各外側部に位置する外側接続点に接続された調整素子をさらに備えている請求項1に記載の双ループアンテナ。
【請求項3】
前記第1ループ部の周長が、前記周波数帯域の設計下限周波数の波長と略同一長さである請求項1又は2に記載の双ループアンテナ。
【請求項4】
前記第2ループ部の周長が、前記周波数帯域の設計中心周波数の波長と略同一長さである請求項1〜3のいずれか一項に記載の双ループアンテナ。
【請求項5】
前記調整素子は、次式の関係を満たす位置に配置されている請求項2に記載の双ループアンテナ。
Lef+Lg1+Li+Lh1≒0.9λc
Lef:第2内辺素子の長さ
Lg1:右辺素子の中間接続点から外側接続点までの長さ
Li :調整素子の長さ
Lh1:左辺素子の中間接続点から外側接続点までの長さ
λc :周波数帯域の設計中心周波数の波長
【請求項6】
前記ループ部は、前記調整素子の中間部と前記外辺素子の中間部とを接続する支持素子をさらに備えている請求項2又は5に記載の双ループアンテナ。
【請求項7】
前記周波数帯域が、76〜108MHzである請求項1〜6のいずれか一項に記載の双ループアンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−182297(P2011−182297A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46393(P2010−46393)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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