説明

双峰性サイズ分布を有する磁気粒子を備える、統合型分離および検出カートリッジ

【課題】200μl未満の少量サンプルにおける標的分析対象の有無を、高い信頼度で効率的に検出すること可能とする、手動デバイスおよび方法を開発すること。
【解決手段】本発明は、液体サンプルにおいて標的分析対象の有無を定量的に検出するためのデバイスおよび方法に関し、該デバイスは、該分析対象を捕捉することが可能な固定基質を含む、200μl未満の容量を持つ反応チェンバーを含み、前記固定基質は、好ましくは、少なくとも2峰性であるサイズ分布を持つ磁気材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体サンプルにおける標的分析対象の有無を定量的に検出するためのデバイス、およびその使用に関する。
【0002】
本発明はさらに、200μl未満から成るサンプルにおける標的分析対象の有無を定量的に検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ここ数年、生物学的、環境的、および工業的液体において、注目する標的分析対象の有無を速やかに検出するために、数多くの単純化試験システムが設計されている。それらの内もっとも単純な形式のものでは、これらのアッセイシステムおよびデバイスは、通常、その標的分析対象と反応して視覚的反応を与える試験試薬と、該試験試薬を流通させる吸収紙または膜の組み合わせを含む。
【0004】
この接触は種々の方法で行うことが可能である。もっとも一般的には、試験試薬を含む、例えば、多孔性ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの多孔性または吸収性部材、または膜の中を、または該多孔性または吸収性部材の一部の中を、毛管作用によって、水性サンプルを横断させる。別の場合では、試験試薬は、試験デバイスの外部であらかじめ混合され、次いで、デバイスの吸収部材に添加されて最終的に信号を発生する。
【0005】
多くの市販のデバイスおよびアッセイシステムはさらに洗浄ステップを含む。このステップでは、免疫吸収ゾーンが洗浄されて、非特異的信号発生器が取り除かれるので、適切なゾーンにおける信号に関して該多孔部材を調べることによって、サンプル中の標的分析対象の有無または量を決定することが可能となる。
【発明の概要】
【0006】
従来技術によるアッセイデバイスおよびシステムは、サンプルおよび試薬の担体として吸収膜を使用するという制限を含むが、それらの制限に加えてさらに、アッセイデバイスは、一般に、数多くの工程を含むが、この内、実験結果を左右するパイペッティング工程は、検査室環境では比較的熟練したユーザーによって実行されなければならない。したがって、デバイス中の試薬の流れを制御するだけでなく、デバイス中の特定チェンバーにおける試薬の流れをも制御する、一工程アッセイおよびシステムが求められる。さらに、実験結果を左右するパイペッティングデバイスを要せず、完全に定量的な方法を実行するアッセイデバイスが求められる。
【0007】
今日、多くの標的分析対象は、中央研究所に設置される大型装置(免疫分析器)を用いて測定される。その主な理由の一つは、今日では、高感度、再現可能、定量的免疫およびDNAアッセイにおいて実験結果を左右するパラメータを満足させることができる、小型の、手動装置が存在しないからである。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、200μl未満の少量サンプルにおける標的分析対象の有無を、高い信頼度で効率的に検出すること可能とする、手動デバイスおよび方法を開発することである。
【0009】
少量サンプルにおいて分析対象の有無を定量的に検出する場合の、主要な一問題点は、少量の分析対象検出の信頼性および再現性を妨げる、背景信号を排除または抑制することである。
【0010】
したがって、本発明のもう一つの目的は、少量の液体サンプルにおける標的分析対象の有無を定量的に検出するためのもので、そこでは、非特異的背景信号が抑制または排除されるデバイス、および方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明をもたらした実験開発中に、本発明人らは、少量サンプルにおいて分析対象の有無を定量的に検出するための、高感度、高再現性で、完全定量的なアッセイを実行するのに決定的に重要なパラメータは、背景ノイズを下げることによって信号対ノイズ比を増すことであることを見出した。さらに、標的分析対象と、追跡/捕捉抗体の間の効率的混合過程が、背景ノイズを低減するための効率的洗浄過程と同様に、好ましい。その上さらに、標的分析対象と追跡/捕捉抗体の間に、大きな反応面があることが好ましいことが見出れた。さらに好ましい特徴として、効率的増幅試薬、例えば、HRPまたはALP酵素に接合される追跡抗体、および、温度制御アッセイ使用の可能性がある。
【0012】
本発明人らは、微量液体と磁気粒子技術を特定配合において組み合わせることによって、決定的重要パラメータを制御することが可能であり、同様にして、200μl未満のサンプルを分析することが可能な、比較的小型の手動装置(500グラム未満)を取得することが可能であることを見出した。
【0013】
驚くべきことに、従来の、単峰性サイズ分布(smsMB)の代わりに、双峰性サイズ分布を持つ磁気ビーズ(bmsMB)を用いると、信号対ノイズ比が増加することが見出された。発明人らはさらに、bmsMBでは、双峰性サイズ分布を持つMB同士の間で混合がよく行われ、そのため磁気ビーズの洗浄が最適となるために、単峰性サイズ分布に比べると、より優れたアッセイ成績が得られることを示した。これもまた、望ましくない背景信号を抑える。さらに、大型および小型磁気ビーズの混合物の使用は、大きな反応面の取得(小型粒径の利点)が、該粒子の効率的捕捉と輸送--これは大型磁気粒子の利点である--と組み合わされるために、分析対象物の捕捉という点でも優れた結果をもたらすことが見出された。このようにして、双峰性サイズ分布を持つ磁気粒子を用いることによって、高い信号、低いノイズ、および優れた移動性が実現可能であることが見出された。
【0014】
したがって、本発明のある好ましい局面では、本発明は、200μl未満の容量を持つ液体サンプルにおいて標的分析対象の有無を定量的に検出するためのデバイスであって、該分析対象を捕捉することが可能な固定基質を含む反応チェンバーを含み、前記固定基質が、少なくとも2峰性であるサイズ分布を有する磁気粒子を含むことを特徴とする、デバイスに関する。
【0015】
ある好ましい局面では、本発明は、液体サンプルにおいて標的分析対象の有無を定量的に検出するためのデバイスであって、200μl未満の容量を持つ毛細管チャンネルの形状を持つ反応チェンバーを含み、該反応チェンバーが:
a. 反応チェンバーと、分析対象を含むサンプル導入のためのサンプル流入口とを含む第1部分(3)であって、さらに、少なくとも2峰性であるサイズ分布を有する磁気粒子を含む固定基質を含む、第1部分;
b. 標的分析対象の検出手段を含む第2部分(5および6)、
c. 洗浄液および反応混合物導入のための溶液流入口(8);
d. 固定された分析対象を、チェンバーの第1部分から第2部分へ、および逆方向へ移動させるための手段;および、
e. 廃棄産物放出のための放出口;
を含み、
第1部分と、第2部分は隔てられるが、その隔離が、チェンバーの第1部分の液体サンプル試料が、チェンバーの第2部分に入ることがないように行われることを特徴とする、デバイスに関する。
【0016】
さらに別の局面では、本発明は、サンプルにおける標的対象物の有無の定量的検出における、本発明によるデバイスの使用に関する。
【0017】
さらに別の局面では、本発明は、200μl未満の液体から成るサンプルにおいて標的分析対象物の有無を定量的に検出するための方法であって、下記の工程:
a)200μl未満の液体から成る液体サンプルを含む分析対象を準備すること;
b)該液体サンプルを反応チェンバーに供給すること;
c)反応チェンバー中のサンプルを、該分析対象を捕捉することが可能な固定基質と接触させること、ここに、前記固定基質は、少なくとも2峰性であるサイズ分布を有する磁気材料を含み;
d)捕捉された分析対象を含む固定基質を固定すること;
e)捕捉分析対象を含む固定基質を、洗浄液によって洗浄すること;
f)捕捉分析対象を含む固定基質を、チェンバーの検出器部分に移送すること;および、
g)通例の検出手段を用いて標的分析対象の有無を検出すること、
を含む、方法に関する。
【0018】
さらに別の局面では、本発明は、本発明によるデバイスと磁気材料とを含む部品のキットに関する。
本発明は、図面を参照しながら下記に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】サンプルデバイスであって、第1部分(3)および第2部分(5,6)を有する微小流チャンネル、印加ゾーン(1)、隔離チェンバー(2)、第1毛細管チャンネル(3)、収集チェンバー(4a)、廃棄物流出口(4b)、洗浄チェンバー(5)、検出チェンバー(6)、洗浄チェンバーに配される磁気粒子(双峰性サイズ分布を有する)(7)(第1部分と第2部分の間を移送することが可能)、洗浄液および検出液のための流入チャンネル(8)、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の物理的障壁(10(垂直)、10'(傾斜))、第1毛細管チャンネル(3)における毛細管微小チャンネル(11)、第1毛細管チャンネルのコロナ処理部(12)(灰色の陰影によって表される)、および、検出ユニット(14)を含むサンプルデバイスの模式図を示す。
【図2】三次元描画によって、図1のものと同じ原理を示す。
【図3】隔離デバイスであって、微小流チャンネル(3)、印加ウェル(1')、隔離チェンバー(2)、第1毛細管チャンネル(3)、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の物理的障壁(10')、親水性フィルター材料(17)、およびプレフィルター(15)を含む隔離デバイスの模式側面図を示す。
【図4】図4aは、統合型分離/検出デバイスであって、微小流チャンネル(3,5,6)、印加ウェル(1)、隔離チェンバー(2)および親水性フィルター(17)、第1毛細管チャンネル(3)、第1毛細管チャンネルにおける血清/血漿(18)、洗浄チェンバー(5)および検出器チェンバー(6)における信号液(19)、第1毛細管チャンネル(3)と洗浄チェンバー(5)の間の接合部における光捕捉方式A(20)、および検出ユニット(14)を含むデバイスの模式側面図を示す。 図4bは、統合型分離/検出デバイスであって、微小流チャンネル(3,5,6)、印加ウェル(1)、隔離チェンバー(2)および親水性フィルター(17)、第1毛細管チャンネル(3)、第1毛細管チャンネルにおける血清/血漿(18)、洗浄チェンバー(5)および検出器チェンバー(6)における信号液(19)、第1毛細管チャンネル(3)と洗浄チェンバー(5)の間の接合部における光捕捉方式B(20')(チェンバーの第1部分から第2部分への経路上に曲線部を導入し、その導入が、第1部分からの流出点と、第2部分の流入点が異なるレベルとなるようにすることによる)、および検出ユニット(14)を含むデバイスの模式側面図を示す。
【図5】図1と同じではあるが、より多くの特徴を含む三次元描画によって同じ原理を図示する。統合型分離/検出デバイスであって、三つの区画(3,5,6)を有する微小流チャンネル、印加ウェル(1')、隔離チェンバー(2)、第1毛細管チャンネル(3)、廃棄物流出口を備える収集チェンバー(4)、洗浄チェンバー(5)、検出チェンバー(6)、洗浄チェンバーにおける磁気粒子部位(7)、洗浄液および検出液のための流入チャンネル(8)、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の物理的障壁(10,10')、第1毛細管チャンネル(3)における毛細管微小チャンネル(11)、検出ユニット(14)、検出液Aのための第1区画(9)、検出液Bのための第2区画(15)、洗浄液区画(16)、および血液蓋(12a)を含むデバイス。
【図6】統合型分離/検出デバイスであって、印加ウェル(1)、ろ過域(2)、血漿流入口(21)、吸収性障壁および毛細管ストップ(22)に接続される第1部分チャンネル(3)を含むデバイスの平面図を示す。洗浄液(23)を備える水泡容器は、チャンネル(25)に接続されるチャンネル(24)を通じて微小流システムに接続され、チャンネル(26)および(6)を通じて検出域に連絡する。洗浄チャンネル(5)は、収集チェンバーで(毛細管ストップ(22)で)終わり、そこにおいて、二つの側方チャンネル(27)に接続され、これらのチャンネルは、廃棄物容器(図示せず)で終わる。洗浄チャンネルには、検出域(ウィンドウ)(6,14)がある。水泡(28)は、チャンネル(30)に接続され、水泡(29)は、チャンネル(31)に接続される。チャンネル(30)および(31)は、チャンネル(32)に接続され、後者のチャンネルは、チャンネル(33)に接続され、その際、チャンネル(30)および(31)からの信号液はチャンネル(33)に達し、残余の信号液はチャンネル(34)に入り、これらは、ポイント(26)において血漿チャンネルに接続される、チャンネル(35)において混ぜ合わされる。
【図7】図6に記載される通りの、毛細管ストップ(22)および二つの側方チャンネル(27)の区域の模式平面図を示す。
【図8】(実施例1によるアッセイ使用による)0pg/ml - 16,000pg/ml BNPの測定におけるセンサーデータを示す。「新型PMT」が、実施例に言及されるPMTである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔定義〕
本発明の背景においては、「毛細管チャンネル」とは、流体が通過することが可能な、細長いチューブまたはチャンネルを意味する。好ましくは、本発明による毛細管チャンネルの直径は、10mm未満である。さらに好ましくは、本発明による毛細管チャンネルの直径は、5mm未満、例えば、4mm未満、または3mm未満、場合によっては2mm未満である。もっとも好ましい局面では、毛細管チャンネルは、1mm以下の直径を有する。
【0021】
本発明の背景においては、「単峰性」という用語は、単峰性の、通例の数学的意味を有する、すなわち、分布は、ただ一つのモード(最頻値)しか持たない。二つの順序集合の間の関数f(x)は、もしも、ある値m(モード)に関し、x≦mにおいて該関数が単調に増加し、x≧mにおいて該関数が単調に減少するならば、1峰性(単峰性)である。この場合、f(x)の最大値はf(m)であり、他に局所的最大値は無い。
【0022】
本発明の背景においては、「双峰性」という用語は、双峰性の、通例の数学的意味を有する、すなわち、分布は二つのモードを持つ。一般に、双峰性分布は、異なる、二つの、単峰性分布の混合物である。
【0023】
微小流システムは感度がきわめて低く、信頼性、再現性の高い信号を発生するには大量の分析対象を必要とするため、信号検出はしばしば困難に見舞われる。これまで、より高感度で、洗練された検出手段を開発するために大きな努力が払われてきた。一方、驚くべきことに、非特異的信号(ノイズ)レベルの一掃または抑制のためには、それよりも僅かなことしか行われてこなかった。本発明人らは、驚くべきことに、システムノイズを抑制するという単純な施策が、該システムの感度を目覚しく改善することを見出した。
【0024】
一般に、本発明の発明概念は、微小流システムにおいて、分析対象を結合、固定、および洗浄する工程と、該分析対象を検出する工程との物理的隔離と見なしてもよいかもしれない。好ましくは、非分析対象分子由来の信号(背景信号)は全て、デバイスの第1部分(3)(または、方法の第1工程)に残留し、一方、デバイスの第2部分(方法の後続工程)において、分析対象由来の信号が、背景信号最小の状態下に、検出される。
【0025】
驚くべきことに、非単峰性サイズ分布、例えば、双峰性サイズ分布を有する磁気粒子を用いると、洗浄効率および時間の点でより効率的な性能が発揮されることが観察された。サイズ分布を混ぜ合わせた磁気粒子を用いた場合、粒子のより効率的な捕捉および移動と組み合わされた、分析対象のより効率的な結合が実現されるものと考えられる。したがって、本発明の好ましい局面では、固定基質は、少なくとも双峰性のサイズ分布を有する。本発明の別の局面では、固定基質は、3峰性サイズ分布を有する。
【0026】
したがって、本発明は、200μl未満の容量を持つ液体サンプルにおいて標的分析対象の有無を定量的に検出するためのデバイスであって、該分析対象を捕捉することが可能な固定基質を含む反応チェンバーを含み、前記固定基質が、少なくとも2峰性であるサイズ分布を有することを特徴とする、デバイスに関する。
【0027】
別の実施態様では、サイズ分布は3峰性である。
【0028】
好ましくは、固定基質は、磁気材料を含む。
【0029】
好ましくは、固定基質のサイズ分布は、2峰性であり、一集団の粒子は、2μm未満、例えば、1.5μm以下、例えば、1.0μm以下の平均直径を有し、もう一方の集団の磁気粒子は、2μmを超える、例えば、2.5Mm以上、または2.8μm以上、または3.0μm以上、または場合によっては5.0μm以上の平均直径を有する。
【0030】
一般に、本発明の発明概念は、微小流システムにおいて、分析対象を結合、固定する工程と、該分析対象を検出する工程との物理的隔離と見なしてもよいかもしれない。好ましくは、非分析対象分子由来の信号(背景信号)は全て、デバイスの第1部分(3)(または、方法の第1工程)に残留し、一方、デバイスの第2部分(方法の後続工程)において、分析対象由来の信号が、背景信号最小の状態下に、検出される。
【0031】
したがって、一局面では、本発明は、200μl未満の容量を持つ、液体サンプルにおいて標的分析対象の有無を定量的に検出するためのデバイスであって、一つ以上の毛細管チャンネルの形状を持つ反応チェンバーを含むデバイスにおいて、該反応チェンバーが:
a. 200μl未満の容量を持つ毛細管チャンネル、分析対象を含むサンプル導入のためのサンプル流入口(1)、および、廃棄産物放出のための放出口(4b)を含む第1部分(3);
b. 標的分析対象の検出手段(14)、および、洗浄液および反応混合物導入のための溶液流入口(8)を含む第2部分(5);および、
c. 固定された分析対象を、チェンバーの第1部分から第2部分へ、および逆方向へ移動させるための手段、
を含み、
第1部分と、第2部分は隔てられるが、その隔離が、他の液体サンプル試料が、チェンバーの第2部分に入ることがないように行われることを特徴とする、デバイスに関する。他のサンプル試料とは、分析対象を除くサンプル試料を意味する。
【0032】
もう一つの局面では、本発明は、200μl未満の容量を持つ液体サンプルにおいて標的分析対象の有無を定量的に検出するためのデバイスであって:
a. 反応チェンバーと、分析対象を含むサンプル導入のためのサンプル流入口とを含む第1部分(3)であって、さらに、少なくとも2峰性であるサイズ分布を有する磁気粒子を含む固定基質を含む、第1部分;
b. 標的分析対象の検出手段を含む第2部分、
c. 洗浄液および反応混合物導入のための溶液流入口(8);
d. 固定された分析対象を、チェンバーの第1部分(3)から第2部分(5)へ、および逆方向へ移動させるための手段;および、
e. 廃棄産物放出のための放出口(4b);
を含み、
第1部分と、第2部分は隔てられるが、その隔離が、チェンバーの第1部分の液体サンプル試料が、チェンバーの第2部分に入ることがないように行われることを特徴とする、デバイスに関する。
【0033】
反応チェンバーは、いくつかの区画または部分を含んでもよい。さらに各部分は、そこにおいて特異的反応が行われる筈の、さらに細かい部分または区画に分割されてもよい。反応チェンバーを、分析対象と結合するための第1部分(3)と、該分析対象を検出するための第2部分(5)とに分離することによって、背景信号の著明な低下の実現が可能となると考えられる。
【0034】
ある好ましい局面では、分析されるサンプルは、200μl未満の容量を有することが好ましい。さらに好ましい局面では、分析されるサンプルは、150μl未満の容量を有し、さらに好ましくは100μl未満の容量、さらに好ましくは90μl未満の容量、例えば、80μl未満、70μl未満、または場合によっては60μl未満の容量を有する。さらに好ましい局面では、分析されるサンプルは、50μl未満の容量、さらに好ましくは45μl未満、40μl未満、例えば、35μl未満、30μl未満、または場合によっては25μl未満の容量を有する。
【0035】
ある好ましい局面では、毛細管チャンネルの第1部分(3)は、100μl未満の容量を有する。さらに好ましい局面では、毛細管チャンネルの第1部分は、90μl未満の容量を有し、さらに好ましくは80μl未満、さらに好ましくは70μl未満、例えば、60μl未満、50μl未満、または場合によっては40μl未満の容量を有する。さらに好ましい局面では、毛細管チャンネルの第1部分は、30μl未満の容量を有し、さらに好ましくは25μl未満、さらに好ましくは20μl未満、例えば、15μl未満、10μl未満、または場合によっては5μl未満の容量を有する。同様の好ましい容量は、反応チェンバーの第2部分にも当てはまる。反応チェンバーは、第1部分(3)および第2部分(5)を含む。好ましい局面では、第1部分および第2部分は共に毛細管チャンネルから構成される。第1および第2部分は、例えば、収集チェンバー、それから残留サンプル試料および添加試薬が収集され、後に排出される収集チェンバーによって隔てられてもよい。このような収集チェンバー、およびその容量は、反応チェンバーの一部、およびその好ましい容量と理解してはならない。
【0036】
本発明のある好ましい局面では、チェンバーの第1部分から第2部分へ、およびその逆方向へ、固定化分析対象を移送するための手段は、外部の磁力発生源である。このものは、チェンバーに磁場を印加することが可能であり、かつ、必要に応じてチェンバーの辺縁にそって移動することが可能である。
【0037】
一局面では、毛細管チャンネルの第1部分は、デバイスに一体化されるフィルター機構に接続される。サンプル(例えば、血清または血漿)の流入は、好ましくはこのフィルターデバイスを通じて行われる。
【0038】
本発明の一局面では、第1および第2部分は、収集チェンバー(4a)によって隔てられる。この収集チェンバーは、第1と第2部分を隔てるが、その際その隔離が、第1および第2部分の間で積極的に輸送される分析対象分子以外の液体サンプル試料が、チェンバーの第2部分に浸入することがないように行われてもよい。収集チェンバーはさらに、洗浄液および残留サンプル試料などの廃棄産物用の流出口としても役立つ。第1および第2部分の間に収集チェンバーを設置することによって、該収集チェンバーの、チェンバーの第1および第2両部分から出る試料の流出口としての使用が実現される。
【0039】
本発明のある好ましい局面では、固定化分析対象を含む磁気粒子をもっとも効率的に移動させるために、必要に応じて、磁場は、チェンバーの頂上辺縁(3,5,6)にそって動かされる。
【0040】
本発明のある好ましい局面では、第1および第2部分は隔てられるが、その際、隔離は、信号(例えば、光)の相当部分が、チェンバーの第1部分から、チェンバーの第2部分の検出部分に移送されることがないように行われる。相当部分とは、50%を超えるパーセント、例えば、75%、または場合によっては90%、または場合によっては99%を超えるパーゼントを意味する。これは、第1部分からの流出点と、第2部分への流入点を異なるレベルに設置することによって実現される。例えば、チェンバーの第1部分から第2部分への経路に曲線部(20')を導入し、その導入を、チェンバーの第1部分からの信号(光線の形状を取る)が、第2チェンバーの検出部分に侵入することがないように行うことによって実現される。もう一つの可能性は、チェンバーの第2部分に曲線部を導入するに際し、その導入を、検出部が、分析対象の、チェンバーの第2部分への流入点と直線的に揃うことがないようにすることである。好ましい可能性は、二つの部分の間に光不透過の障壁(20)を設けることであって、設置は、光の相当部分が、第2部分から第1部分に入ることを阻止されるように行われる。もちろん、この障壁は、第1および第2部分からの、分析対象(例えば、磁気粒子を介する)の移送を妨げてはならない。
【0041】
好ましくは、反応チェンバー、または、反応チェンバーの少なくとも第2部分の内面の表面構造および内面の色は、それぞれ、無反射および/または光吸収性である。本発明の一局面では、この無反射および/または光吸収性表面は、表面を曇らせるか、および/または暗黒化することによって実現される。ある好ましい局面では、暗黒化は、黒色化である。もっとも好ましくは、反応チェンバーの内面の色は黒である。
【0042】
本発明のある好ましい局面では、標的分析対象の検出手段は、表面音波(SAW)検出器、分光光度計、蛍光光度計、CCDセンサーチップ(単数または複数)、CCOSセンサーチップ(単数または複数)、PMT検出器(単数または複数)、または、適切なものであればいずれのものであってもよい光検出器の中から選ばれる。
【0043】
ある好ましい局面では、反応チェンバー内部、または、少なくとも反応チェンバーの第1部分(3)内部の幅および高さは、それぞれ、0.1 - 5mmおよび0.05 - 2mmである。より好ましくは、反応チェンバー内部、または、少なくとも反応チェンバーの第1部分内部の幅および高さ、それぞれ、0.25 - 2mmおよび0.2 - 1mmである。
【0044】
ある好ましい局面では、反応チェンバーの長さは、2 - 30mm、より好ましくは5 - 20mmである。
【0045】
本発明によるデバイスは、サンプルにおける標的分析対象物の有無を定量的に検出するために使用されてもよい。好ましくは、サンプルは血液から得られる。一局面では、サンプルは血清である。一局面では、サンプルは血漿である。血漿は、分析される血液サンプルに抗凝固剤を与えることによって取得することが可能である。好ましい抗凝固剤は、K3-EDTA、クエン酸塩、およびヘパリンから成る群から選ばれてもよい。
【0046】
本発明のある好ましい局面では、サンプルはヒト由来ものである。
【0047】
一局面において、本発明は、200μl未満の液体から成るサンプルにおいて標的分析対象の有無を定量的に検出するための方法であって、下記の工程:
a)200μl未満の液体から成る液体サンプルを含む分析対象を準備すること;
b)該液体サンプルを反応チェンバーに供給すること;
c)反応チェンバー中のサンプルを、該分析対象を捕捉することが可能な固定基質と接触させること、ここに、前記固定基質は、好ましくは、少なくとも2峰性であるサイズ分布を有する磁気材料を含み;
d)捕捉された分析対象を含む固定基質を固定すること;
e)捕捉分析対象を含む固定基質を、洗浄液によって洗浄すること;
f)捕捉分析対象を含む固定基質を、チェンバーの検出器部分に移送すること;および、
g)通例の検出手段を用いて標的分析対象の有無を検出すること、
を含む、方法に関する。
【0048】
別の局面において、本発明は、200μl未満の液体から成るサンプルにおいて標的対象物の有無を定量的に検出するための方法であって、下記の工程:
a)200μl未満の液体から成る液体サンプルを含む分析対象を準備すること;
b)該液体サンプルを反応チェンバーに供給すること、その際、チェンバーは、第1反応部分および第2検出部分を含み、この二つの部分は物理的に隔てられ、その隔離は、該液体サンプルが、第2検出部分と接触することができないように行われ;
c)チェンバーの第1反応部分中のサンプルを、少なくとも2峰性のサイズ分布を持ち、該分析対象を捕捉することが可能な固定基質と接触させること;
d)捕捉された分析対象を含む固定基質を固定すること;
e)捕捉分析対象を含む固定基質を、チェンバーの第2部分に移送すること;
f)捕捉分析対象を含む固定基質を再び可動化し、洗浄液によって洗浄すること;
g)捕捉分析対象を含む固定基質を固定すること;
h)必要に応じて洗浄液を廃棄すること;
i)必要に応じて、捕捉分析対象を含む固定基質を再び可動化し、工程f)からh)を繰り返すこと;
j)捕捉分析対象を含む固定基質を、チェンバー第2部分の検出器部分に移送すること;および、
k)通例の検出手段を用いて標的分析対象の有無を検出すること、
を含む、方法に関する。
【0049】
1区画において分析対象を結合させる工程a)-d)と、第2区画において分析対象を洗浄、検出する工程e)-k)とを分離することによって、背景信号の著明な減少が観察された。
【0050】
ある好ましい局面では、本発明はさらに、分析対象を、該分析対象に結合することが可能な生物学的マーカーと接触させる工程a')を含む。この生物学的マーカーは、例えば、酵素、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ビオチンまたはアルカリフォスファターゼ(ALP)を備える抗体であってもよい。このようにすると、分析対象は、検出用信号を増すためにより検出可能となる。本発明による方法の好ましい局面では、分析対象を、該分析対象に結合することが可能な生物学的マーカーに接触させる工程a')は、工程e)の前に実行される。このようにすると、本法の検出部分における未結合生物学的マーカーの存在は著明に抑えられる。本発明のある好ましい局面では、生物学的マーカーは、信号を増幅することが可能な基質と反応することが可能である。したがって、本発明の一局面では、方法はさらに、捕捉分析対象を含む固定基質を、生物学的マーカーと反応することが可能な基質と接触させる工程f')を含む。
【0051】
本発明の好ましいある局面では、生物学的マーカーは、化合物、モノクロナール、オリゴクロナール、およびポリクロナール抗体、抗原、受容体、リガンド、酵素、タンパク質、ペプチド、および核酸から選ばれる一つ(またはそれ以上)である。好ましくは、生物学的マーカーは、光吸収、蛍光発射、りん光発射、またはルミネセンス発射の特性を有する群から選ばれる一つ以上である。
【0052】
ある好ましい局面では、固定基質は磁気材料を含む。ある好ましい局面では、工程e)は、磁気源を、第1反応チェンバーの外部辺縁にそって、第2検出チェンバーの方に向けて動かすことによって実行される。
【0053】
磁気材料は、好ましくは、磁気粒子、磁気ナノ粒子、および超常磁性ナノ粒子を含む群から選ばれる。
【0054】
本発明のある好ましい局面では、前記通例検出手段は、表面音波(SAW)検出器、分光光度計、蛍光光度計、CCDセンサーチップ(単数または複数)、CCOSセンサーチップ(単数または複数)、PMT検出器(単数または複数)、または、適切なものであればいずれのものであってもよい光検出器の中から選ばれる。
【0055】
本発明による方法は、サンプルにおける標的分析対象物の有無を定量的に検出するために使用されてもよい。好ましくは、サンプルは血液から得られる。一局面では、サンプルは血清である。一局面では、サンプルは血漿である。血漿は、分析される血液サンプルに抗凝固剤を与えることによって取得してもよい。好ましい抗凝固剤は、K3-EDTA、クエン酸塩、およびヘパリンから成る群から選ばれてもよい。本発明のある好ましい局面では、サンプルはヒト由来ものである。
【0056】
一局面では、本発明は、上に定義した通りのデバイス、および本発明による磁気材料を含む部品のキットに関する。好ましくは、このキットは、サンプルにおける標的対象の有無の検出に使用される。
【実施例1】
【0057】
統合型分離および検出デバイスにおけるアッセイサイクル
本実施例の目的は、下記を具体的に説明することである:
1. 例としての、分析対象、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)に関する測定原理
2. 検出限界
3. 検出範囲
4. 種々のBNP濃度におけるCV値
5. 血液サンプルにおけるBNPの測定。
【0058】
試料
標準:範囲0pg/ml - 16,000pg/mlのBNPを、本実施例の方法を用いて測定した。
サンプル:健康な志願者から得た4つの異なる血液サンプル、および心不全患者から得た4つの異なる血液サンプルを、本実施例の方法を用いて測定した。
抗体:BNP捕捉性モノクロナール抗体でコートした磁気粒子(MP)。追跡抗体は、HRP標識モノクロナールBNP抗体である。追跡抗体は、血液分離フィルターの中に直接置いた。
血液安定化剤:毛細管チャンネル、または血液サンプルのいずれかにEDTAを添加する。
洗浄液:TBS + 0.05 wt.vol% Twen および、0.05 wt.vol% BSA
検出液:Pierce SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate(下記の工程17にしたがって、水泡Aからの1容量部の信号液、および水泡Bからの1容量部の信号液から構成される)。
検出器:PMT検出器(Hamamatsu)
アッセイ温度:19℃
機械系および電子系:機械部品、電子制御装置、およびソフトウェアは全て、出願企業によって企業内で製造された。
【0059】
アッセイ手順
(分離および検出デバイスを、図6に示される通りに使用)
1. 36 - 50μlのサンプルまたは標準を、ろ過区域(2)に印加した。
2. 分離後、4.6μlの血漿が、血漿流入口(21)を通じて血漿チャンネルに入った(毛管力がサンプルを反応チェンバー内に引き込む)。
3. 血漿は血漿チャンネル(3)に進入し、光吸収性障壁および毛細管ストップ(22)まで駆け上る。
4. 血漿チャンネル(磁気粒子によってコートされる)において、磁気粒子は、血漿チャンネル(3)に進入する血漿に溶解した。
5. アッセイインキュベーション時間の間、外部の磁気駆動機構を用いて、血漿チャンネル(3)においてMPをゆっくりと前後に移動させる。
6. アッセイインキュベーション時間後、外部磁気駆動機構を用いて、全てのMPを毛細管ストップ位置(22)の近傍で、濃縮、固定する。
7. 洗浄液を含む水泡(23)を破裂させ、洗浄液を、チャンネル(25)に接続されるチャンネル(24)を通じて微小流システムに、次いで、(26)および(6)を通じて検出域に進入させる。
8. 洗浄液はさらに、洗浄チャンネル(5)を通じて流れ、最終的に毛細管ストップ(22)に到達し、そこにおいて、洗浄液は、血漿の前線に接触し、側方チャンネル(27)を持つ収集チェンバーを通じて直接廃棄物容器(図示せず)に向かって進む。
9. MPは、外部の磁気駆動機構によって、毛細管ストップ(22)障壁を通じて洗浄チャンネル(5)の中に移動させられる。
10. MPは、外部の磁気駆動機構によって、洗浄チャンネル(5)においてゆっくりと前後に動かされる。
11. MPは、外部の磁気駆動機構によって、洗浄チャンネル(5)の中央において濃縮、固定される。
12. 洗浄液含有水泡(23)を通じて、より多くの洗浄液が注入される。
13. 収集チェンバーおよび側方チャンネル(27)には(血漿チャンネルに比べて)より高い圧が存在するために、新たに注入された洗浄液は、比較的低圧の血漿チャンネル(3)中に進入し、血漿を、さらに後方、血液ろ過域(2)の方に押し戻す。
14. 工程10および11を繰り返すことによって、続けて洗浄サイクルを実行してもよい。
15. 外部磁気駆動機構は、MPを検出域(ウィンドウ)(6,14)に移動させ、そこにおいて、MPは、検出ウィンドウ(6,14)の中心の上方に固定される。
16. 洗浄液は、下記のようにして、水泡(28)および(29)中の光発生液によって置換される。
17. 信号液水泡A(28)および信号液水泡B(29)は、チャンネル(31)に接続されるチャンネル(30)を通じて1:1で混合されて(32)に送り込まれる。
18. 最初の60μlの混合液は、チャンネル(32)を通じて、チャンネル(33)を満たす。
19. チャンネル(33)の末端において圧が増加すると、信号(光)発生液は、チャンネル(34)を通じて混合ユニットの中に入る。
20. 二つの溶液は、混合ユニット(35)において混ぜ合わされる。
21. 三次元(x,y,z)混合ユニットにおいて7混合サイクルを経過した後、信号(光)発生液は、検出域(6,14)に進入し、さらに洗浄チャンネル(5)に進み、毛細管ストップ(22)に到達し、そこにおいて、信号発生液は、対称的廃棄チャンネル(27)と血漿チャンネル(3)の間の圧差のために--工程13参照--洗浄液と交換された血漿前線に到達する。
22. 検出域の中心の上にMPを固定する(工程15)外部磁気駆動機構は、素早くろ過域(2)の方に移動させられ、そのため、検出ウィンドウ(6,14)上にMPの集合が実現される。
23. PMT検出器は、フォトン計数によってMPから発射される光をカウントする。
【0060】
結果
標準曲線は、0 - 10,000pg/mlの正当な測定範囲において、範囲0 - 2000pg/mlについて直線性を示す(図8)。
【0061】
予期した通り、健康な志願者および心不全患者から得た血液サンプルの結果から、健康な志願者のBNP濃度は、範囲の低レベル末端にあるが、患者のBNP濃度は、それよりも5-10倍高いことが明らかになった。

表1:全血サンプルの測定結果

【0062】
結論
結果から、本分離/検出デバイスにとって下記の最重要機能特性が達成されることが明らかになった。
*比較的低い検出限界:5pg/ml未満
*測定範囲:0から10,000pg/ml
*精度:CVは、中等/高レベル範囲では5%未満、下限では15%未満
*1回の所要時間:15分未満
*サンプル試料
+ヒト全血、場合によって指先から直接採取したもの。
+EDTA安定化血
+遠心による単離血漿
【0063】
前述の実施例に基づけば、5pg/mlを下回る濃度領域で十分に小さいCV値下に、かつ、0 - 2000pg/mlに直線性範囲を持ちながら、<5pg/mlから>10,000pg/mlの検出範囲に亘って分析対象BNPを検出することが可能であると結論することが可能である。
【実施例2】
【0064】
デバイスの毛細管チャンネルを親水性物質によってコートすること
直径が1μmまたは2.8μmで、抗原(分析対象)と相互作用を持つ抗体によって標識される磁気粒子(MP)は、表面張力の低い安定化水溶液として保存された。このMPを、最終含量が5wt.vol%となるようにスクロース液と混合した。投与のための最終溶液における典型的MP濃度は、6ng/mlである。
【0065】
磁気粒子の投与
毛細管チャンネルを、2-プロパノールの50vol%水溶液で超音波洗浄し、25W/2sでコロナ処理して、投与前に親水性を高めた。調整済み磁気粒子を、高精度自動化投与装置(Nanodrop NS-1 Stage)を用いて上述の毛細管チャンネルに投与した。250nl、4滴、合計1μlをチャンネルにそって投与した。投与パターンおよび用量は、チャンネル表面は覆われるが、毛細管ストップの形状はそのまま保全されるように調整することが可能である。
【0066】
乾燥および保存
毛細管チャンネルを含むデバイスを室温で3 - 5分水平に放置し、液体コーティングを毛細管チャンネルから蒸発させ、磁気粒子およびスクロースを残留させた。これによって、毛細管チャンネルの底部に、保護され、すぐに溶解することが可能な、一層のMPが得られる。
【0067】
調整済みのカートリッジは、優れた長期の安定性を実現するために、最終的に、封印されたアルミニウムフォイル・バッグにおいて4 - 8℃で保存される。
【0068】
スクロース液で処理され、保存された毛細管チャンネルを含むデバイスでは、スクロース処理をしない場合よりも、処理をした方がはるかに早く(約3倍)充填されることが観察された。さらに、より再現性の高い、最終検出アッセイが実現された。
【実施例3】
【0069】
磁気粒子の双峰性サイズ分布
磁気粒子の単峰性サイズ分布(smsMP)と比べ、双峰性サイズ分布(bmsMP)を用いた場合の信号/背景比を、BNPアッセイにおいて調べた。
【0070】
方法:
smsMPの調製
BNPのC末端部分に対して特異的なヒト抗体に対するビオチニル化マウスモノクロナール抗体を備えるストレプトアビジン磁気粒子(2.8μm Dynal M280)を、5wt.vol%スクロースの最終溶液において6ng/mlの最終濃度となるように調製した。この磁気粒子縣濁液を、0.2ml PCRチューブに保存し、投与の直前に混ぜ合わせた。
【0071】
bmsMPの調製
BNPのC末端部分に対して特異的なヒト抗体に対するビオチニル化マウスモノクロナール抗体を備えるストレプトアビジン磁気粒子(2.8μm Dynal M280、および1μm Seramac)を、5wt.vol%スクロースの最終溶液において6ng/mlの最終濃度となるように1:1で混合した。この磁気粒子縣濁液を、0.2ml PCRチューブに保存し、投与の直前に混ぜ合わせた。
【0072】
このMPを、実施例2の記載の通りに毛細管チャンネルに投与した。
【0073】
表2は、磁気粒子の双峰性サイズ分布を用いた場合に対し、磁気粒子の単峰性サイズ分布を用いた場合の、BNPアッセイ間に見られる差を示す。

表2:smsMPとbmsMPの間のアッセイ比較

【0074】
結果から、BNPアッセイでは、双峰性サイズ分布の磁気粒子を使用する方が、際立って優れた信号/背景比を得ることが可能であることが明らかになった。
【0075】
さらに、BNPアッセイにおいて、磁気粒子の単峰性サイズ分布(smsMP)と比べた場合の、双峰性サイズ分布(bmsMP)を用いた場合の、アッセイの再現性(低い%CVにおける優れた再現性結果)を調べた。
【0076】
表3は、双峰性サイズ分布の磁気粒子を用いた場合に対し、単峰性サイズ分布の磁気粒子を用いた場合の、BNPアッセイ間の再現性の差を示す。

表3:smsMPとbmsMPの間のアッセイ比較

【0077】
BNPアッセイでは、双峰性サイズ分布の磁気粒子を使用する方が、際立って優れた%CV値を得ることが可能であることが見て取れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
200μl未満の容量を持つ液体サンプルにおいて標的分析対象の有無を定量的に検出するためのデバイスであって、該分析対象を捕捉することが可能な固定基質を含む反応チェンバーを含み、前記固定基質が、少なくとも2峰性であるサイズ分布を有する磁気粒子を含むことを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記固定基質が磁気材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデバイスであって:
a. 反応チェンバー(3)と、分析対象を含むサンプルの導入のためのサンプル流入口とを含む第1部分;
b. 該標的分析対象の検出手段を含む第2部分(6)、
c. 洗浄液および反応混合物導入のための溶液流入口(8);
d. 固定された分析対象を、チェンバーの第1部分(3)から第2部分(5および6)へ、および逆方向へ移送するための手段;および、
e. 廃棄産物放出のための放出口(4b);
を含み、
第1部分と、第2部分は隔てられるが、その隔離が、チェンバーの第1部分の液体サンプル試料が、チェンバーの第2部分に入ることがないように行われることを特徴とする、デバイス。
【請求項4】
前記第1部分と第2部分が、収集チェンバー(4a)によって隔離されることを特徴とする、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1部分と第2部分は隔てられ、その隔離は、光が、チェンバーの第1部分から、チェンバーの第2部分の検出器部分に移送されることがないように行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記反応チェンバーの内面の表面構造および色が、それぞれ、無反射および/または光吸収性であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
標的分析対象の前記検出手段が、表面音波(SAW)検出器、分光光度計、蛍光光度計、CCDセンサーチップ(単数または複数)、CCOSセンサーチップ(単数または複数)、PMT検出器(単数または複数)、または、適切なものであればいずれのものであってもよい光検出器の中から選ばれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記磁気材料が、磁気粒子、磁気ナノ粒子、および超常磁性ナノ粒子を含む群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
サンプルにおいて標的分析対象の有無を定量的に検出するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載のデバイスの使用。
【請求項10】
200μl未満の液体から成るサンプルにおいて標的分析対象の有無を定量的に検出するための方法であって、下記の工程:
a)200μl未満の液体から成る液体サンプルを含む分析対象を準備すること;
b)該液体サンプルを反応チェンバーに供給すること;
c)反応チェンバー中のサンプルを、該分析対象を捕捉することが可能で、少なくとも2峰性であるサイズ分布を有する、固定基質と接触させること;
d)捕捉された分析対象を含む固定基質を固定すること;
e)捕捉分析対象を含む固定基質を、洗浄液によって洗浄すること;
f)捕捉分析対象を含む固定基質を、チェンバーの検出器部分に移送すること;および、
g)通例の検出手段を用いて標的分析対象の有無を検出すること、
を含む、方法。
【請求項11】
前記固定基質が、3峰性サイズ分布を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記磁気材料が、磁気粒子、磁気ナノ粒子、および超常磁性ナノ粒子を含む群から選ばれることを特徴とする、請求項10〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記分析対象を、該分析対象に結合することが可能な生物学的マーカーと接触させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的マーカーが、例えば、HRP、またはALP、またはビオチンなどの酵素と結合する抗体であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記捕捉分析対象を含む固定基質を、前記生物学的マーカーと反応することが可能な物質と接触させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項13〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的マーカーが、モノクロナール、オリゴクロナール、およびポリクロナール抗体、抗原、受容体、リガンド、酵素、タンパク質、ペプチド、および核酸から選ばれる一つ、またはそれ以上であることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記工程f)が、磁気源を、前記反応チェンバーの外部辺縁にそって、前記チェンバーの検出部分の方に向けて動かすことによって実行されることを特徴とする、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のデバイスを含む部品のキット。
【請求項19】
サンプルにおいて標的分析対象の有無を定量的に検出するための、請求項18に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−504592(P2011−504592A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534506(P2010−534506)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066274
【国際公開番号】WO2009/068585
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(506388510)アトノミックス アクティーゼルスカブ (9)
【Fターム(参考)】