双方向バラスト
【課題】既存のバラスト型CHN(S)有機物測定器の範囲と性能を拡張した新しいバラストシステムを使用する分析装置を提供する。
【解決手段】燃焼炉を備えた分析装置が、弁を介して双方向バラストチャンバ10に結合された燃焼副生成物の流路を備え、燃焼中にチャンバの両側において燃焼副生成物の充填と排出を交互に行うために弁が順次作動される。或いは、複数の低容積バラストチャンバが使用される。試料中の元素の濃度を測定する方法は、試料を燃焼させる段階と、双方向バラストの両側において燃焼副生成物ガスの充填と排出を交互に行う段階とを含む。双方向バラストチャンバは、チャンバを画定する外側壁と、壁の両側に密封されたエンクロージャと、チャンバ内に位置決めされた可動ピストンと、ピストンの両側にチャンバと関連付けられたガスポートとを有する。
【解決手段】燃焼炉を備えた分析装置が、弁を介して双方向バラストチャンバ10に結合された燃焼副生成物の流路を備え、燃焼中にチャンバの両側において燃焼副生成物の充填と排出を交互に行うために弁が順次作動される。或いは、複数の低容積バラストチャンバが使用される。試料中の元素の濃度を測定する方法は、試料を燃焼させる段階と、双方向バラストの両側において燃焼副生成物ガスの充填と排出を交互に行う段階とを含む。双方向バラストチャンバは、チャンバを画定する外側壁と、壁の両側に密封されたエンクロージャと、チャンバ内に位置決めされた可動ピストンと、ピストンの両側にチャンバと関連付けられたガスポートとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、Peter M.Willisによって2011年7月19日に出願された「BIDIRECTIONAL BALLAST」と題する米国仮特許出願第61/509,227号の利益及び米国特許法第119条(e)項に基づく優先権を主張するものであり、この米国仮特許出願の開示全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
本発明は、元素分析装置、特に分析物の収集に一個以上の双方向バラストを使用する分析装置に関する。この新しいバラストシステムは、既存のバラスト型CHN(S)有機物測定器の範囲と性能を拡張するものである。
【背景技術】
【0003】
有機物質中の炭素、水素、窒素等の元素の測定が多くの理由で望まれている。近年、食品市場は、試料中のタンパク質の量を測定することに関心を持ってきており、この量は、窒素含有率によって測定することができる。従って、栄養市場に有益な情報を提供する際に窒素の測定は重要である。石炭やコークス試料の特性を決定する際には、炭素と水素の比率は、様々な他の有機物質中の炭素、水素及び窒素の比率と同じように望まれる。従ってこの所、これら及びその他の用途のために、元素分析装置が使用されている。
【0004】
ミシガン州セントジョーゼフのLeco CorporationのTruSpec(登録商標)分析装置等、現在の有機燃焼分析装置では、高温炉内に酸素(02)ガスが通される。炉内には、燃焼とその後の分析のために試料物質が配置される。燃焼ガスは、典型的には容積が6リットルの可動ピストンバラスト内に捕捉され、ガスは、約1.5気圧に加圧される。バラスト内が平衡状態にされた後で、ガスは、10ccのアリコートループを通して排出され、その後アリコートループは大気圧で平衡状態にされる。このプロセスにより、燃焼ガスの約1/900の部分が、更なる分析のために使われる。収集されたガスの残りは、分析されることなく排出される。このシステムは、本譲受人に譲渡された特許文献1に記載されており、この特許文献1の開示を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5も、本発明のシステムで使用することができる燃焼システムの構成要素を開示している。特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5の開示も本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0005】
このような元素分析装置では、アリコートループの内容物が、ヘリウム流に送り込まれ、そこで、非分散赤外検出器(NDIR)セルを使用して水(H20)と二酸化炭素(CO2)が測定される。最後に、熱伝導度(TC)セルを使用して窒素(N2)が測定される。TCセルは非識別型検出器なので、N2の測定前にまず燃焼で生じた他の全てのガスを除去しなければならない。ドース(dose)が大きいと、スクラバを頻繁に交換しなければならず、コストとダウンタイムが生じるので、小さいアリコートループが望ましい。
【0006】
先行技術には改良の余地がある。まず、バラストは、試料サイズと濃度の上限に合わせてサイズが決められる。その結果、極めて小さい試料又は低濃度の試料は、O2で過剰に希釈され、試料の検出ダイナミックレンジの下限が制限される。また、バラストが満杯になった後はそれ以上ガスを収集できないので、バラスト容積が一定だと上限が制限される。また、よりゆっくりと(例えば、バラストを満杯にする時間より長い時間で)燃焼する物質の回収が行われないことがある。また、分析時間は、炉のパージ時間と;大きなバラストの充填、平衡及び排出時間と;アリコートのドースの充填、平衡及び除去時間とに基づいて決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,070,738号
【特許文献2】米国特許第7,497,991号
【特許文献3】米国特許第4,622,009号
【特許文献4】米国特許第6,291,802号
【特許文献5】米国特許第6,270,727号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示された発明は、試料の燃焼中に小型の双方向バラストの両側に燃焼ガスを連続的に交互に充填して(又は、複数の小型のバラストに交互に充填して)、分析を幾つかの小さい区画に分割できるようにすることによって、上記の制限を克服する。小型バラストの片側が充填されている間に、充填済みの他方のバラストからのガスが、小容積のアリコート・ドーサ(aliquot doser)を介して排出される。次にアリコートは、分析のためにヘリウム流に送り込まれる。アリコート容積に対するバラスト容積の比率は、900:1とすることができ、その結果、従来のバラストシステムに比べて、スクラバガスが多く消費されることはない。
【0009】
分析を複数の小さい区画に分割することによって、低濃度材料が過剰に希釈されることが防止される。また、区画の数は限定されず、従って、必要に応じて高濃度物質又は低速燃焼物質の分析時間を延長することができる。バラストの充填は、試料物質が炉内に投入される直前に開始できる。このような初期のバラストサンプリングは、実時間ブランク測定が望まれる場合、これを可能にする。大きなバラストを備えた従来の測定機では、ブランクの測定に完全な分析シーケンスが必要とされる。燃焼期間中にガスを連続的に検出することによって、分析時間を自動的に調整してO2と洗浄剤(scrubbing reagent)を節約することができる。また、収集段階と分析段階が重なっているので、全体の分析時間を大幅に短縮することができる。
【0010】
本発明は、燃焼用の試料を収容する燃焼炉を備えた分析装置を含む。燃焼炉からの燃焼副生成物の流路は、弁によって双方向バラストチャンバに結合されており、燃焼中にチャンバへの燃焼副生成物の充填とチャンバからの燃焼副生成物の排出を交互に行うように弁が順次作動される。
【0011】
また、本発明は、試料中の元素の濃度を測定する方法を提供するものであり、この方法は、試料を燃焼させる段階と、双方向バラストの両側又は複数の低容積バラストにおいて燃焼副生成物ガスの収集と排出を交互に行う段階とを含む。
【0012】
本発明は、また、チャンバを画定する外側壁と、この壁の両端にある封止エンクロージャと、チャンバ内に位置決めされた可動ピストンと、ピストンの両側で前記チャンバに結合されたガスポートとを有する分析装置用の双方向バラストチャンバである。
【0013】
本発明の以上あるいはその他の特徴、目的及び利点は、添付図面を参照し以下の説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】双方向バラストチャンバが使用された燃焼システムの概要図である。
【図2】2個の独立したバラストチャンバが使用された燃焼システムの概要図である。
【図3】図1と図2に示された燃焼システムの燃焼サイクルにおける連続アリコートサンプリング中に検出された窒素を示す熱伝導性セル出力のグラフである。
【図4】多数のサンプリングサイクルの内の2個のサンプリングサイクルにおける、図1と図2に示されたバラストチャンバと共に使用される弁の制御を示すタイミング図である。
【図5A】図1と図2のバラストAの充填とバラストBを放出を制御するためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【図5B】図1と図2のバラストAの充填とバラストBを放出を制御するためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【図5C】図1と図2のバラストAの充填とバラストBを放出を制御するためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【図5D】図1と図2のバラストAの充填とバラストBを放出を制御するためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【図6A】図1と図2のバラストBの充填とバラストAの放出のためのスライドゲート弁と流路の概要図と結線図である。
【図6B】図1と図2のバラストBの充填とバラストAの放出のためのスライドゲート弁と流路の概要図と結線図である。
【図6C】図1と図2のバラストBの充填とバラストAの放出のためのスライドゲート弁と流路の概要図と結線図である。
【図6D】図1と図2のバラストBの充填とバラストAの放出のためのスライドゲート弁と流路の概要図と結線図である。
【図7】双方向バラストチャンバの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最初に、好ましい実施形態である図1を参照すると、単一の双方向バラストチャンバ10が示されている。図2は、2個の小型で低容量の個別バラストチャンバ100及び110を使用する代替実施形態である。図1では、バラストAに燃焼副生成物が充填されているとき、チャンバA及びBを分離するピストン12が、バラスト10の上端に移動する。この間に、バラストBは、ドースループ(Dose Loop)Bを介して排出する。ピストン行程の終わりで完全停止すると、炉圧の所定の圧力上昇が、検出器14によって検出される。アリコートは、この過剰充填中に短い平衡時間を有する。圧力上昇によって、通常は弁とセンサのそれぞれに結合されたコントローラ16が起動し、弁の状態を変化させてバラストBを充填し始める。同時に、ドーサが切り換えられて、ドースループBの内容物をヘリウム流に放出し、バラストAの排気によりドースループAに充填する。
【0016】
図2のシステムは、1対の比較的小型で低容積(約0.5リットル)バラストチャンバ100及び110を使用する類似の方式で動作する。両方のシステムにおいて、コントローラ16は、スライドゲート弁1〜4とそれらの状態を図4〜図6に示すように制御し、バラストチャンバA及びBはそれぞれ、燃焼サイクル中に5〜20回充填と排出が行われて、分析物が取得される。
【0017】
燃焼は大気圧より僅かに高い圧力で起こり、その結果、炉の密閉に対する要求度が低くなる。バラストピストン12は、両側にO2を有し、ピストンとOリング間の領域においてO2と平衡させることができる。炉バラストとアリコートループは自動的にパージされる。何故なら、分析は、再びベースライン(ブランクレベル)に達するまで(供給路に燃焼汚染物質が存在しない状態になるまで)続くからである。次の分析は、現在の分析においてベースラインに達した直後に開始できる。
【0018】
図4は、多数のサンプリングサイクルの内の2個のサンプリングサイクルの間において、図1と図2に示すバラストチャンバと共に使用される弁の制御を示すタイミング図である。
【0019】
図5A〜図5Dは、図1と図2のバラストAの充填とバラストBの放出を制御するためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【0020】
図6A〜図6Dは、図1と図2のバラストBの充填とバラストAの放出のためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【0021】
分析は、1回又は複数回のブランクを注入することで始まり、次に試料が燃焼炉に導入される。中間ピークは、分析が進むにつれて高さが変化し、燃焼が終わった後でブランクレベルに戻る。2個のバラスト並びにドースループA及びBは、自己浄化され、次の分析の準備をするために現状では必要とされているパージを無くすことができる。図3は、システムのTCセル出力を示す。個々のピークは、弁と検出セルに結合されたコントローラ16によって積分されて、総窒素量の測定値が提供される。NDIRセンサは、燃焼中に存在する試料の水素と炭素の含有量を表わす類似の信号を提供する。バラスト4.5リットルの相当物の燃焼時間は、約1.5分である。分析が9個の区画に分割された場合、各区画は約10秒続く。
【0022】
図7は、本発明のシステムに関連して使用することができる典型的な比較的小型の双方向バラストチャンバ10を示す。このバラストチャンバは、円筒状ガラス外側壁15を有し、密封端板18及び20が、複数の支持体22によって壁15に対して密封され離間された関係で支持されている。図1に概略的に示すように、各端板18及び20のガス入口及び出口は、図7に示す接続部24等の密封ガス接続である。チャンバは、2個の離間されたOリング11及び13を有する浮動円盤形ピストン12を有する。ピストン12は、チャンバ10を両側(AとB)に分割し、図7では下降位置で示されており、この位置では、バラスト容積Aが排出されており、ピストン12より上のバラスト容積Bが充填されている。
【0023】
下記は、図1と図2に示すシステムの利点の要約である。
・分析速度が速い(時間が1/2未満)。
・使用されるO2が少なく(典型的には1/2未満)分析コストが減少し、分析で量が規定され、オペレータは、可変充填バラストの場合のように予測する必要がない。
・必要な試薬が減少し(1/2未満)、分析コストが低減する。
・ダイナミックレンジがより大きい(低レベルと高レベル)(上限がバラストサイズにより限定されず、下限が希釈によって限定されない)。
・希釈が少ないので信号対雑音比が改善される。
・バラストが小さい(パッケージ占有面積が小さい)。
・ブランクが極めて高速で、ブランクが分析の前後に自動で行われる。
・パージ時間が高速(システムが自己洗浄する)。
・バラストピストンが0リング間のO2と平衡する。
・燃焼圧力が低い。
【0024】
本システムは、既存の制御回路を使用して弁を制御し圧力を測定できる。既存のTC又はIRセル組立体を検出器として使用でき、またバラスト及びドーサ・オーブン(doser oven)のために温度コントローラを使用できる。ミシガン州セントジョーゼフのLeco Corporationから市販されているソフトウェアLabView(商標)が、システムを制御し、データを収集することができる。デュアル回転式ドーサ又はデュアル往復型ドーサを使用することができる。小さい炉は、バラストチャンバを保持する。 0.5リットルの2個のバラスト又は直径3インチx長さ5インチの0.5リットルバラストを使用することができる。システムは、燃焼分析を評価するためにLeco社製のモデルNo.FP628又はTruMac(登録商標)コントローラに接続できる。幾つかのシステムでは、複数(3個以上)の比較的低容積のバラストチャンバを使用し、ドーサへの試料の充填と放出を順次行うように制御してもよい。
【0025】
本明細書の教示により、複数の双方向又は一方向バラストを使用して分析装置の性能を改善できることは当業者に明らかであろう。また、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなくそのような或いはその他の修正を行えることは当業者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0026】
10 双方向バラストチャンバ
12 ピストン
14 検出器
16 コントローラ
100、110 個別バラストチャンバ
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、Peter M.Willisによって2011年7月19日に出願された「BIDIRECTIONAL BALLAST」と題する米国仮特許出願第61/509,227号の利益及び米国特許法第119条(e)項に基づく優先権を主張するものであり、この米国仮特許出願の開示全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
本発明は、元素分析装置、特に分析物の収集に一個以上の双方向バラストを使用する分析装置に関する。この新しいバラストシステムは、既存のバラスト型CHN(S)有機物測定器の範囲と性能を拡張するものである。
【背景技術】
【0003】
有機物質中の炭素、水素、窒素等の元素の測定が多くの理由で望まれている。近年、食品市場は、試料中のタンパク質の量を測定することに関心を持ってきており、この量は、窒素含有率によって測定することができる。従って、栄養市場に有益な情報を提供する際に窒素の測定は重要である。石炭やコークス試料の特性を決定する際には、炭素と水素の比率は、様々な他の有機物質中の炭素、水素及び窒素の比率と同じように望まれる。従ってこの所、これら及びその他の用途のために、元素分析装置が使用されている。
【0004】
ミシガン州セントジョーゼフのLeco CorporationのTruSpec(登録商標)分析装置等、現在の有機燃焼分析装置では、高温炉内に酸素(02)ガスが通される。炉内には、燃焼とその後の分析のために試料物質が配置される。燃焼ガスは、典型的には容積が6リットルの可動ピストンバラスト内に捕捉され、ガスは、約1.5気圧に加圧される。バラスト内が平衡状態にされた後で、ガスは、10ccのアリコートループを通して排出され、その後アリコートループは大気圧で平衡状態にされる。このプロセスにより、燃焼ガスの約1/900の部分が、更なる分析のために使われる。収集されたガスの残りは、分析されることなく排出される。このシステムは、本譲受人に譲渡された特許文献1に記載されており、この特許文献1の開示を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5も、本発明のシステムで使用することができる燃焼システムの構成要素を開示している。特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5の開示も本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0005】
このような元素分析装置では、アリコートループの内容物が、ヘリウム流に送り込まれ、そこで、非分散赤外検出器(NDIR)セルを使用して水(H20)と二酸化炭素(CO2)が測定される。最後に、熱伝導度(TC)セルを使用して窒素(N2)が測定される。TCセルは非識別型検出器なので、N2の測定前にまず燃焼で生じた他の全てのガスを除去しなければならない。ドース(dose)が大きいと、スクラバを頻繁に交換しなければならず、コストとダウンタイムが生じるので、小さいアリコートループが望ましい。
【0006】
先行技術には改良の余地がある。まず、バラストは、試料サイズと濃度の上限に合わせてサイズが決められる。その結果、極めて小さい試料又は低濃度の試料は、O2で過剰に希釈され、試料の検出ダイナミックレンジの下限が制限される。また、バラストが満杯になった後はそれ以上ガスを収集できないので、バラスト容積が一定だと上限が制限される。また、よりゆっくりと(例えば、バラストを満杯にする時間より長い時間で)燃焼する物質の回収が行われないことがある。また、分析時間は、炉のパージ時間と;大きなバラストの充填、平衡及び排出時間と;アリコートのドースの充填、平衡及び除去時間とに基づいて決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,070,738号
【特許文献2】米国特許第7,497,991号
【特許文献3】米国特許第4,622,009号
【特許文献4】米国特許第6,291,802号
【特許文献5】米国特許第6,270,727号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示された発明は、試料の燃焼中に小型の双方向バラストの両側に燃焼ガスを連続的に交互に充填して(又は、複数の小型のバラストに交互に充填して)、分析を幾つかの小さい区画に分割できるようにすることによって、上記の制限を克服する。小型バラストの片側が充填されている間に、充填済みの他方のバラストからのガスが、小容積のアリコート・ドーサ(aliquot doser)を介して排出される。次にアリコートは、分析のためにヘリウム流に送り込まれる。アリコート容積に対するバラスト容積の比率は、900:1とすることができ、その結果、従来のバラストシステムに比べて、スクラバガスが多く消費されることはない。
【0009】
分析を複数の小さい区画に分割することによって、低濃度材料が過剰に希釈されることが防止される。また、区画の数は限定されず、従って、必要に応じて高濃度物質又は低速燃焼物質の分析時間を延長することができる。バラストの充填は、試料物質が炉内に投入される直前に開始できる。このような初期のバラストサンプリングは、実時間ブランク測定が望まれる場合、これを可能にする。大きなバラストを備えた従来の測定機では、ブランクの測定に完全な分析シーケンスが必要とされる。燃焼期間中にガスを連続的に検出することによって、分析時間を自動的に調整してO2と洗浄剤(scrubbing reagent)を節約することができる。また、収集段階と分析段階が重なっているので、全体の分析時間を大幅に短縮することができる。
【0010】
本発明は、燃焼用の試料を収容する燃焼炉を備えた分析装置を含む。燃焼炉からの燃焼副生成物の流路は、弁によって双方向バラストチャンバに結合されており、燃焼中にチャンバへの燃焼副生成物の充填とチャンバからの燃焼副生成物の排出を交互に行うように弁が順次作動される。
【0011】
また、本発明は、試料中の元素の濃度を測定する方法を提供するものであり、この方法は、試料を燃焼させる段階と、双方向バラストの両側又は複数の低容積バラストにおいて燃焼副生成物ガスの収集と排出を交互に行う段階とを含む。
【0012】
本発明は、また、チャンバを画定する外側壁と、この壁の両端にある封止エンクロージャと、チャンバ内に位置決めされた可動ピストンと、ピストンの両側で前記チャンバに結合されたガスポートとを有する分析装置用の双方向バラストチャンバである。
【0013】
本発明の以上あるいはその他の特徴、目的及び利点は、添付図面を参照し以下の説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】双方向バラストチャンバが使用された燃焼システムの概要図である。
【図2】2個の独立したバラストチャンバが使用された燃焼システムの概要図である。
【図3】図1と図2に示された燃焼システムの燃焼サイクルにおける連続アリコートサンプリング中に検出された窒素を示す熱伝導性セル出力のグラフである。
【図4】多数のサンプリングサイクルの内の2個のサンプリングサイクルにおける、図1と図2に示されたバラストチャンバと共に使用される弁の制御を示すタイミング図である。
【図5A】図1と図2のバラストAの充填とバラストBを放出を制御するためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【図5B】図1と図2のバラストAの充填とバラストBを放出を制御するためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【図5C】図1と図2のバラストAの充填とバラストBを放出を制御するためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【図5D】図1と図2のバラストAの充填とバラストBを放出を制御するためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【図6A】図1と図2のバラストBの充填とバラストAの放出のためのスライドゲート弁と流路の概要図と結線図である。
【図6B】図1と図2のバラストBの充填とバラストAの放出のためのスライドゲート弁と流路の概要図と結線図である。
【図6C】図1と図2のバラストBの充填とバラストAの放出のためのスライドゲート弁と流路の概要図と結線図である。
【図6D】図1と図2のバラストBの充填とバラストAの放出のためのスライドゲート弁と流路の概要図と結線図である。
【図7】双方向バラストチャンバの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最初に、好ましい実施形態である図1を参照すると、単一の双方向バラストチャンバ10が示されている。図2は、2個の小型で低容量の個別バラストチャンバ100及び110を使用する代替実施形態である。図1では、バラストAに燃焼副生成物が充填されているとき、チャンバA及びBを分離するピストン12が、バラスト10の上端に移動する。この間に、バラストBは、ドースループ(Dose Loop)Bを介して排出する。ピストン行程の終わりで完全停止すると、炉圧の所定の圧力上昇が、検出器14によって検出される。アリコートは、この過剰充填中に短い平衡時間を有する。圧力上昇によって、通常は弁とセンサのそれぞれに結合されたコントローラ16が起動し、弁の状態を変化させてバラストBを充填し始める。同時に、ドーサが切り換えられて、ドースループBの内容物をヘリウム流に放出し、バラストAの排気によりドースループAに充填する。
【0016】
図2のシステムは、1対の比較的小型で低容積(約0.5リットル)バラストチャンバ100及び110を使用する類似の方式で動作する。両方のシステムにおいて、コントローラ16は、スライドゲート弁1〜4とそれらの状態を図4〜図6に示すように制御し、バラストチャンバA及びBはそれぞれ、燃焼サイクル中に5〜20回充填と排出が行われて、分析物が取得される。
【0017】
燃焼は大気圧より僅かに高い圧力で起こり、その結果、炉の密閉に対する要求度が低くなる。バラストピストン12は、両側にO2を有し、ピストンとOリング間の領域においてO2と平衡させることができる。炉バラストとアリコートループは自動的にパージされる。何故なら、分析は、再びベースライン(ブランクレベル)に達するまで(供給路に燃焼汚染物質が存在しない状態になるまで)続くからである。次の分析は、現在の分析においてベースラインに達した直後に開始できる。
【0018】
図4は、多数のサンプリングサイクルの内の2個のサンプリングサイクルの間において、図1と図2に示すバラストチャンバと共に使用される弁の制御を示すタイミング図である。
【0019】
図5A〜図5Dは、図1と図2のバラストAの充填とバラストBの放出を制御するためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【0020】
図6A〜図6Dは、図1と図2のバラストBの充填とバラストAの放出のためのスライドゲート弁と流路の概要図である。
【0021】
分析は、1回又は複数回のブランクを注入することで始まり、次に試料が燃焼炉に導入される。中間ピークは、分析が進むにつれて高さが変化し、燃焼が終わった後でブランクレベルに戻る。2個のバラスト並びにドースループA及びBは、自己浄化され、次の分析の準備をするために現状では必要とされているパージを無くすことができる。図3は、システムのTCセル出力を示す。個々のピークは、弁と検出セルに結合されたコントローラ16によって積分されて、総窒素量の測定値が提供される。NDIRセンサは、燃焼中に存在する試料の水素と炭素の含有量を表わす類似の信号を提供する。バラスト4.5リットルの相当物の燃焼時間は、約1.5分である。分析が9個の区画に分割された場合、各区画は約10秒続く。
【0022】
図7は、本発明のシステムに関連して使用することができる典型的な比較的小型の双方向バラストチャンバ10を示す。このバラストチャンバは、円筒状ガラス外側壁15を有し、密封端板18及び20が、複数の支持体22によって壁15に対して密封され離間された関係で支持されている。図1に概略的に示すように、各端板18及び20のガス入口及び出口は、図7に示す接続部24等の密封ガス接続である。チャンバは、2個の離間されたOリング11及び13を有する浮動円盤形ピストン12を有する。ピストン12は、チャンバ10を両側(AとB)に分割し、図7では下降位置で示されており、この位置では、バラスト容積Aが排出されており、ピストン12より上のバラスト容積Bが充填されている。
【0023】
下記は、図1と図2に示すシステムの利点の要約である。
・分析速度が速い(時間が1/2未満)。
・使用されるO2が少なく(典型的には1/2未満)分析コストが減少し、分析で量が規定され、オペレータは、可変充填バラストの場合のように予測する必要がない。
・必要な試薬が減少し(1/2未満)、分析コストが低減する。
・ダイナミックレンジがより大きい(低レベルと高レベル)(上限がバラストサイズにより限定されず、下限が希釈によって限定されない)。
・希釈が少ないので信号対雑音比が改善される。
・バラストが小さい(パッケージ占有面積が小さい)。
・ブランクが極めて高速で、ブランクが分析の前後に自動で行われる。
・パージ時間が高速(システムが自己洗浄する)。
・バラストピストンが0リング間のO2と平衡する。
・燃焼圧力が低い。
【0024】
本システムは、既存の制御回路を使用して弁を制御し圧力を測定できる。既存のTC又はIRセル組立体を検出器として使用でき、またバラスト及びドーサ・オーブン(doser oven)のために温度コントローラを使用できる。ミシガン州セントジョーゼフのLeco Corporationから市販されているソフトウェアLabView(商標)が、システムを制御し、データを収集することができる。デュアル回転式ドーサ又はデュアル往復型ドーサを使用することができる。小さい炉は、バラストチャンバを保持する。 0.5リットルの2個のバラスト又は直径3インチx長さ5インチの0.5リットルバラストを使用することができる。システムは、燃焼分析を評価するためにLeco社製のモデルNo.FP628又はTruMac(登録商標)コントローラに接続できる。幾つかのシステムでは、複数(3個以上)の比較的低容積のバラストチャンバを使用し、ドーサへの試料の充填と放出を順次行うように制御してもよい。
【0025】
本明細書の教示により、複数の双方向又は一方向バラストを使用して分析装置の性能を改善できることは当業者に明らかであろう。また、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなくそのような或いはその他の修正を行えることは当業者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0026】
10 双方向バラストチャンバ
12 ピストン
14 検出器
16 コントローラ
100、110 個別バラストチャンバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置であって、
燃焼用の試料を収容するための燃焼炉と、
前記燃焼炉からの燃焼副生成物の流路と、
双方向バラストチャンバと、
前記バラストチャンバを前記燃焼副生成物の流路に結合する弁であって、前記チャンバへの燃焼副生成物の充填と前記チャンバからの燃焼副生成物の排出を交互に行うために順次作動される弁とを有する分析装置。
【請求項2】
前記バラストチャンバは、前記チャンバを2個の両側の区画に分割する可動ピストンを有する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
試料を燃焼させる段階と、
双方向バラストの両側において燃焼副生成物の収集と排出を交互に行う段階とを含む、試料中の元素の濃度を測定する方法。
【請求項4】
前記収集する段階が、更に前記双方向チャンバと関連付けられた弁を順次作動させて前記チャンバの両側において充填と排出を交互に行う段階を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
分析装置用の双方向バラストチャンバであって、
チャンバを画定する外側壁と、
前記壁の両端にあるエンクロージャと、
前記チャンバ内に位置決めされた可動ピストンと、
前記ピストンの両側で前記チャンバと結合されたガスポートとを有する双方向バラストチャンバ。
【請求項6】
前記壁が円筒状である、請求項5に記載のチャンバ。
【請求項7】
前記ピストンが円盤状である、請求項6に記載のチャンバ。
【請求項8】
前記ピストンが1対の離間された封止Oリングを有する、請求項7に記載のチャンバ。
【請求項9】
前記ガスポートに結合された弁を更に有する、請求項8に記載のチャンバ。
【請求項10】
前記弁を交互に作動させて前記ピストンの両側においてガスの充填と排出を交互に行うように前記弁に結合されたコントローラを更に備えた、請求項9に記載のチャンバ。
【請求項11】
分析装置であって、
燃焼用の試料を収容するための燃焼炉と、
前記燃焼炉からの燃焼副生成物の流路と、
複数の一方向バラストチャンバと、
前記バラストチャンバを前記燃焼副生成物の流路に結合する弁であって、前記チャンバへの燃焼副生成物の充填と前記チャンバからの燃焼副生成物の排出を交互に行うために順次作動される弁とを有する分析装置。
【請求項12】
分析装置であって、
燃焼用の試料を収容する燃焼炉と、
前記燃焼炉からの燃焼副生成物の流路と、
複数の低容積バラストチャンバと、
前記バラストチャンバを前記燃焼副生成物の流路に結合する弁であって、前記チャンバへの燃焼副生成物の充填と前記チャンバからの燃焼副生成物の排出を交互に行うために順次作動される弁とを有する分析装置。
【請求項13】
前記バラストチャンバがそれぞれ、約0.5リットルの容積を有する、請求項12に記載の分析装置。
【請求項14】
試料中の元素の濃度を測定する方法であって、
試料を燃焼させる段階と、
複数の低容積バラストチャンバにおいて前記燃焼副生成物ガスの収集と排出を交互に行う段階とを含む方法。
【請求項15】
前記収集する段階が、更に、前記チャンバと関連付けられた弁を順次作動させて前記チャンバに対して充填と排気を交互に行う段階を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項1】
分析装置であって、
燃焼用の試料を収容するための燃焼炉と、
前記燃焼炉からの燃焼副生成物の流路と、
双方向バラストチャンバと、
前記バラストチャンバを前記燃焼副生成物の流路に結合する弁であって、前記チャンバへの燃焼副生成物の充填と前記チャンバからの燃焼副生成物の排出を交互に行うために順次作動される弁とを有する分析装置。
【請求項2】
前記バラストチャンバは、前記チャンバを2個の両側の区画に分割する可動ピストンを有する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
試料を燃焼させる段階と、
双方向バラストの両側において燃焼副生成物の収集と排出を交互に行う段階とを含む、試料中の元素の濃度を測定する方法。
【請求項4】
前記収集する段階が、更に前記双方向チャンバと関連付けられた弁を順次作動させて前記チャンバの両側において充填と排出を交互に行う段階を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
分析装置用の双方向バラストチャンバであって、
チャンバを画定する外側壁と、
前記壁の両端にあるエンクロージャと、
前記チャンバ内に位置決めされた可動ピストンと、
前記ピストンの両側で前記チャンバと結合されたガスポートとを有する双方向バラストチャンバ。
【請求項6】
前記壁が円筒状である、請求項5に記載のチャンバ。
【請求項7】
前記ピストンが円盤状である、請求項6に記載のチャンバ。
【請求項8】
前記ピストンが1対の離間された封止Oリングを有する、請求項7に記載のチャンバ。
【請求項9】
前記ガスポートに結合された弁を更に有する、請求項8に記載のチャンバ。
【請求項10】
前記弁を交互に作動させて前記ピストンの両側においてガスの充填と排出を交互に行うように前記弁に結合されたコントローラを更に備えた、請求項9に記載のチャンバ。
【請求項11】
分析装置であって、
燃焼用の試料を収容するための燃焼炉と、
前記燃焼炉からの燃焼副生成物の流路と、
複数の一方向バラストチャンバと、
前記バラストチャンバを前記燃焼副生成物の流路に結合する弁であって、前記チャンバへの燃焼副生成物の充填と前記チャンバからの燃焼副生成物の排出を交互に行うために順次作動される弁とを有する分析装置。
【請求項12】
分析装置であって、
燃焼用の試料を収容する燃焼炉と、
前記燃焼炉からの燃焼副生成物の流路と、
複数の低容積バラストチャンバと、
前記バラストチャンバを前記燃焼副生成物の流路に結合する弁であって、前記チャンバへの燃焼副生成物の充填と前記チャンバからの燃焼副生成物の排出を交互に行うために順次作動される弁とを有する分析装置。
【請求項13】
前記バラストチャンバがそれぞれ、約0.5リットルの容積を有する、請求項12に記載の分析装置。
【請求項14】
試料中の元素の濃度を測定する方法であって、
試料を燃焼させる段階と、
複数の低容積バラストチャンバにおいて前記燃焼副生成物ガスの収集と排出を交互に行う段階とを含む方法。
【請求項15】
前記収集する段階が、更に、前記チャンバと関連付けられた弁を順次作動させて前記チャンバに対して充填と排気を交互に行う段階を含む、請求項14に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【公開番号】特開2013−36992(P2013−36992A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−160204(P2012−160204)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(592071853)レコ コーポレイション (19)
【氏名又は名称原語表記】LECO CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160204(P2012−160204)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(592071853)レコ コーポレイション (19)
【氏名又は名称原語表記】LECO CORPORATION
【Fターム(参考)】
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