説明

双方向DC/DCコンバータ

【課題】巻線比のみで昇圧あるいは降圧できない電圧に対応して、所定の電圧値に降圧可能であり、部品点数を削減して小型化を容易とする双方向DC/DCコンバータを提供する。
【解決手段】本発明の双方向DC/DCコンバータは、高電圧と低電圧との相互間にて、電圧変換動作を行うものであり、第1の1次側巻線と、これと同一の極性の第1の2次側巻線とからなる第1のトランスと、第2の1次側巻線と、これと逆の極性の第2の2次側巻線とからなる第2のトランスとを有し、第1及び第2の1次側巻線が直列に接続され、同様に第1及び第2の2次側巻線が直列に接続され、昇圧処理においては第1及び第2の2次側巻線に対して励磁電流を流し、第1及び第2の1次側巻線に電圧を誘起させ、一方、降圧処理においては第1及び第2の1次側巻線に励磁電流を流し、第1及び第2の2次側巻線に電圧を誘起させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向DC/DCコンバータ、特に、広い入力電圧範囲で所定出力電圧への変圧(降圧または昇圧)を可能にした双方向DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、DC/DCコンバータは、一方向に、すなわち高圧側電圧から低圧側電圧に降圧、あるいは低圧側電圧から高圧側電圧に昇圧する構成となっている。
しかしながら、車両においては、各々異なる電圧値(高圧側電圧及び低圧側電圧)を有するバッテリを用いる2つの直流電源系を有しているものがある。
【0003】
そのため、高効率を求める車両において、2つの直流電源系間、すなわち低圧から高圧、あるいは高圧側電圧から低圧側電圧への電圧変換を相互に行い、限られたエネルギーを効率的に利用する動きが高まってきている。
ここで、相互に電力を融通し合う場合、一般的に、直流電源系間に直流昇圧回路と直流降圧回路とを並列に配設し、それらを適宜使用する双方向のDC/DCコンバータの構成が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−165448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す双方向DC/DCコンバータにあっては、トランスの1次側と2次側との巻数比により、双方向の変換電圧、特に昇圧動作の際に、降圧側電圧の電圧値により、昇圧電圧の上限が制限されてしまうという問題がある。
例えば、従来例のDC/DCコンバータにおいては、例えば、50V〜100Vの入力電圧を10Vに降圧する構成、すなわち降圧に対応した巻数比とすると、逆に昇圧する際に50Vを超える電圧を生成することができない。
そのため、従来例においては、降圧する比率に設定した巻数比を用いて昇圧する場合、所望の昇圧した電圧を得るため、別に昇圧回路を形成する必要があり、部品点数が増加し、かつ回路規模が大きくなるという問題がある。
また、昇圧動作において、高電圧側に何らかの異常が発生し、昇圧電圧の電圧値を低下させる場合、0V近傍にまで低下させることができなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、昇圧電圧の生成範囲を従来例に比較して昇圧電圧の電圧値の上限値及び下限値を巻線比にて制限されずに広く(実質的に上限値は巻き数比の2倍の電圧であり、下限値は0V近傍)設定することができ、かつ部品点数を従来に比して削減することができ、コンバータ回路の小型化を容易とする双方向DC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の双方向DC/DCコンバータは、高電圧と低電圧との相互間にて、電圧変換動作を行う双方向DC/DCコンバータであって、第1の1次側巻線と、当該第1の1次側巻線と同一の極性の第1の2次側巻線とからなる第1のトランスと、第2の1次側巻線と、当該第2の1次側巻線と逆の極性の第2の2次側巻線とからなる第2のトランスと、前記第1の1次側巻線の一端及び前記第2の1次側巻線の一端の第1の接続点と、高電圧の+側端子との間に設けられた第1のスイッチ手段と、前記第1の接続点と、前記高電圧の−側端子に接続された第2のスイッチ手段と、前記第1の1次側巻線の他端と高電圧側の+側端子との間に設けられた第3のスイッチ手段と、前記第1の1次側巻線の他端と高電圧側の−側端子との間に設けられた第4のスイッチ手段と、前記第2の1次側巻線の他端と高電圧側の+側端子との間に設けられた第5のスイッチ手段と、前記第2の1次側巻線の他端と高電圧側の−側端子との間に設けられた第6のスイッチ手段と、前記第1の2次側巻線の一端及び第2の2次側巻線の一端の第2の接続点と、低電圧の+側端子との間に設けられた第7のスイッチ手段と、前記第2の接続点と、前記低電圧の−側端子に接続された第8のスイッチ手段と、前記第1の2次側巻線の他端と低電圧側の+側端子との間に設けられた第9のスイッチ手段と、前記第1の2次側巻線の他端と低電圧側の−側端子との間に設けられた第10のスイッチ手段と、前記第2の2次側巻線の他端と低電圧側の+側端子との間に設けられた第11のスイッチ手段と、前記第2の2次側巻線の他端と低電圧側の−側端子との間に設けられた第12のスイッチ手段とを有し、前記第1の1次側巻線と第2の1次側巻線とが直列に接続され、前記第1の2次側巻線と第2の2次側巻線とが直列に接続されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の双方向DC/DCコンバータは、前記第1、第2、第3、第4、第5及び第6のスイッチ手段を制御する第1の制御回路と、前記第1の2次側巻線及び第2の2次側巻線に接続された第2の整流回路とをさらに有し、降圧動作において、前記第1、第4及び第6のスイッチ手段をオン状態とし、前記第2、第3及び第5のスイッチ手段をオフ状態とする第1の状態と、前記第2、第3及び第5のスイッチ手段をオン状態とし、前記第1、第4及び第6のスイッチ手段をオフ状態とする第2の状態とを周期的に繰り返し、前記第1の制御回路が、前記第1、第4及び第6のスイッチ手段と、前記第2、第3及び第5のスイッチ手段とのオンオフのタイミングを位相制御し、前記第2の整流回路が前記第1の2次側巻線と前記第2の2次側巻線に誘起される電圧の和を第2の複合電圧とし、前記第2の整流回路から出力される第2の複合電圧を平滑化して降圧電圧として出力することを特徴とする。
【0008】
本発明の双方向DC/DCコンバータは、前記第1の制御回路が、前記第1、第4及び第6のスイッチ手段と、前記第2、第3及び第5のスイッチ手段とのオンオフのタイミングを位相制御し、前記第2の複合電圧が予め設定された低電圧となるよう制御することを特徴とする。
【0009】
本発明の双方向DC/DCコンバータは、前記第7、第8、第9、第10、第11及び第12のスイッチ手段を制御する第2の制御回路と、前記第1の1次側巻線及び第2の1次側巻線に接続された第1の整流回路とをさらに有し、昇圧動作において、前記第7、第10及び第12のスイッチ手段をオン状態とし、前記第8、第9及び第11のスイッチ手段をオフ状態とする第3の状態と、前記第8、第9及び第11のスイッチ手段をオン状態とし、前記第7、第10及び第12のスイッチ手段をオフ状態とする第4の状態とを周期的に繰り返し、前記第1の整流回路が前記第1の1次側巻線と第2の1次側巻線に誘起される電圧の和を第1の複合電圧とし、前記第1の整流回路から出力される第1の複合電圧を平滑化して昇圧電圧として出力することを特徴とする。
【0010】
本発明の双方向DC/DCコンバータは、前記第2の制御回路が、前記第7、第10及び第12のスイッチ手段と、前記第8、第9及び第11のスイッチ手段とのオンオフのタイミングを位相制御し、前記第1の複合電圧が予め設定された高電圧となるよう制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の双方向DC/DCコンバータによれば、第1のトランスの1次側の巻線と2次側の巻線とが同一極性となるように構成され、一方、第2のトランスの1次側の巻線と2次側の巻線とが逆極性となるように構成され、かつ第1のトランスの1次側巻線と第2のトランスの1次側巻線とが直列に接続され、第1のトランスの2次側巻線と第2のトランスの2次側巻線が直列に接続されているため、従来例と同様に巻線比及びスイッチングの制御により所定の電圧を得て、一方、低圧側から高圧側への昇圧動作、あるいは高圧側から低圧側への降圧動作において、第1のトランス及び第2のトランスにおける1次側巻線、2次側巻線が直列に接続されているため、それぞれに誘起される電圧にて得られる電圧が加算される(昇圧時に各1次側巻線に誘起される電圧の和、あるいは降圧時に各2次側巻線に有機される電圧の和となる)ことにより、巻線比に加えて、2つのトランスの各1次側巻線に誘起された電圧を加算する(昇圧時)ため、あるいは各2次側巻線に誘起された電圧を加算する(降圧時)ため、容易に変圧時の電圧を制御することが可能となる。
【0012】
また、本発明の双方向DC/DCコンバータによれば、昇圧時において、第1及び第2のトランスの1次側巻線を直列に接続し、昇圧電圧を高くしたことに加え、第1及び第2のトランス各々の2次側巻線の駆動を位相制御し、かつ位相が180°ずらして位相制御の下限値となった際、誘起される電圧値を0まで低下させることができ、昇圧電圧の電圧値の範囲を0から巻線比の2倍までとすることが可能となり、出力される昇圧電圧の範囲を、従来のDC/DCコンバータに比較して大幅に広げることができる。
【0013】
また、本発明のDC/DCコンバータによれば、第1のトランスの1次側の巻線と2次側の巻線とが同一極性となるように構成され、一方、第2のトランスの1次側の巻線と2次側の巻線とが逆極性となるように構成され、降圧する際または昇圧する際において直列の出力電圧を用い、かつスイッチング手段のオンオフを位相制御するため、従来のように巻線比では対応できない昇圧電圧、あるいは降圧電圧に対応するために別の昇圧回路を設ける必要が無くなく、従来例に比較して昇圧電圧を広範囲に制御することができ、かつ従来例に比較して部品点数を抑制し、小型化及び低コスト化を実現することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による双方向DC/DCコンバータを図面を参照して説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。
本発明は、図1に示すように、高電圧VoHのバッテリB1と、低電圧VoLのバッテリB2との間にて、電圧値が低下した一方に対して、他方からエネルギを補完して電圧値の低下を抑制するために用いるDC/DCコンバータである。
この図において、本実施形態による双方向DC/DCコンバータは、昇圧処理の電圧変換(エネルギー変換)において、2次側直交変換部4がバッテリB2における直流の低電圧VoHを、一端、単相矩形波交流電圧に変換し、1次側直交変換部3がその単相矩形波交流電圧を整流して直流の高電圧VoHに変換する。
一方、上記双方向DC/DCインバータは、降圧処理のエネルギー変換において、1次側直交変換部3がバッテリB1における直流の高電圧VoHを、一端、単相矩形波交流電圧に変換し、2次側直交変換部4がその単相矩形波交流電圧を整流して直流の低電圧VoLに変換する。
【0015】
上記図1において、1次側直交変換部3は、Nチャネル型MOSトランジスタ(以下、単にトランジスタ)Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6と、第1の制御回路5から構成され、インバータ構成となっている。
トランジスタQ1、Q3、Q5各々は、ドレインが高電圧バッテリB1の+側端子TVoHに接続されている。
一方、トランジスタQ2,Q4、Q6各々は、ソースが高電圧バッテリB1の−側端子TVoHLに接続されている。
また、トランジスタQ1のソースはトランジスタQ2のドレインと接続点K1にて接続し、トランジスタQ3のソースはトランジスタQ4のドレインと接続点K2にて接続し、トランジスタQ5のソースはトランジスタQ6のドレインと接続点K3にて接続されている。
【0016】
また、トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6各々は、それぞれのゲートに対して、上記第1の制御回路5から制御信号S1、S2、S3、S4、S5、S6それぞれが入力されている。
上記第1の制御回路5は、各制御信号を「H」レベルまたは「L」レベルにて出力し、1次側巻線1Lと1次側巻線2Lとの各々に流れる電流の向きを、一定の周期にて逆相となるよう制御する。これにより、トランス1の1次側巻線1Lとトランス2の1次側巻線2Lとのそれぞれに対して単相矩形波交流電圧が印加される。
ここで、トランジスタQ1及びQ2と、トランジスタQ3、Q4、Q5及びQ6とのそれぞれが制御の組を構成している。すなわち、トランジスタQ3とトランジスタQ5には同一の制御信号(制御信号S3=制御信号S5)が印加され、同様に、トランジスタQ4とトランジスタQ6には同一の制御信号(制御信号S4=制御信号S6)が印加される。
【0017】
2次側直交変換部4は、Nチャネル型MOSトランジスタ(以下、単にトランジスタ)Q7、Q8、Q9、Q10、Q11、Q12と、第2の制御回路6から構成されている。
トランジスタQ7、Q9、Q11各々は、ドレインが低電圧バッテリB2の+側端子TVoLに接続されている。
一方、トランジスタQ8、Q10、Q12各々は、ソースが低電圧バッテリB2の−側端子TVoLLに接続されている。
また、トランジスタQ7のソースはトランジスタQ8のドレインと接続点m1にて接続し、トランジスタQ9のソースはトランジスタQ10のドレインと接続点m2にて接続し、トランジスタQ11のソースはトランジスタQ12のドレインと接続点m3にて接続されている。
【0018】
また、トランジスタQ7、Q8、Q9、Q10、Q11及びQ12各々は、それぞれのゲートに対して、上記第2の制御回路6から制御信号S7、S8、S9、S10、S11、S12それぞれが入力されている。
上記第2制御回路6は、各制御信号を「H」レベルまたは「L」レベルにて出力し、2次側巻線1Aと2次側巻線2Aとの各々に流れる電流の向きを、一定の周期にて逆相となるよう制御する。これにより、トランス1の2次側巻線1Aとトランス2の2次側巻線2Aとのそれぞれに対して単相矩形波交流電圧が印加される。
ここで、トランジスタQ7及びQ8と、トランジスタQ9、Q10、Q11及びQ12とのそれぞれが制御の組を構成している。すなわち、トランジスタQ9とトランジスタQ11には同一の制御信号(制御信号S9=制御信号S11)が印加され、同様に、トランジスタQ10とトランジスタQ12には同一の制御信号(制御信号S10=制御信号S12)が印加される。
【0019】
また、第2の制御回路6は、昇圧動作において、トランジスタQ7及びQ8各々のオン/オフ制御を行う周期と、トランジスタQ9、Q11各々とQ10、Q12各々とのオン/オフ制御を行う周期と、の位相を変化させる位相制御により、直列に接続された2次側巻線1A及び2次側巻線2Aを駆動し、直列に接続された1次側巻線1L及び2Lに誘起される電圧を制御し、昇圧される昇圧電圧の電圧値、すなわち高電圧が予め設定した電圧値となるよう制御を行う。
【0020】
すなわち、第2の制御回路6は、制御信号S7及びS8を「H」レベルまたは「L」レベルに変化させる周期と、制御信号S9(=S11)及び制御信号S10(=S12)を「H」レベルまたは「L」レベルに変化させる周期と、の位相を変化させる位相制御により昇圧電圧の電圧値を制御する。
上述したように、2次側直交変換部4において、トランジスタQ7〜トランジスタQ12からなる複合スイッチの構造は、直列に接続された2次側巻線1A及び2次側巻線2A各々に対し逆の極性の単相矩形波交流電圧を生成するインバータ構成となっている。
詳細は後述するが、上記単相矩形波交流電圧に対応し、1次側直交変換部3は、2次側巻線1A及び2Aに流れる電流により、1次側巻線1Lと、1次側巻線2Lとのそれぞれに、互いに同位相にて誘起される電圧を、加算して単相全波整流を行い高電圧VoHの生成を行う。
【0021】
この1次側直交変換部3は、トランジスタQ1〜トランジスタQ6それぞれの寄生ダイオードD1〜寄生ダイオードD6によるフルブリッジ整流により、直列接続された1次側巻線1L及び2L間に誘起される単相矩形波交流電圧の整流動作を行う。
また、昇圧動作において、上述したようなフルブリッジ整流を行うのではなく、トランジスタQ7〜Q12の上述したスイッチングに同期して、第1の制御回路5は、トランジスタQ1〜Q6のオンオフを行う同期整流により、1次側巻線1L,2Lに誘起される単相矩形波交流電圧の整流動作を行っても良い。
【0022】
また、第1の制御回路5は、降圧動作において、トランジスタQ1及びQ2各々のオン/オフ制御を行う周期と、トランジスタQ3、Q5各々とQ4、Q6各々とのオン/オフ制御を行う周期と、の位相を変化させる位相制御により、直列に接続された1次側巻線1L及び1次側巻線2Lを駆動し、直列に接続された2次側巻線1A及び2Aに誘起される電圧を制御し、降圧される降圧電圧の電圧値、すなわち低電圧が予め設定した電圧値となるよう制御を行う。
すなわち、第1の制御回路5は、制御信号S1及びS2を「H」レベルまたは「L」レベルに変化させる周期と、制御信号S3(=S5)及びS4(=S6)を「H」レベルまたは「L」レベルに変化させる周期と、の位相を変化させる位相制御により降圧電圧の電圧値を制御する。
【0023】
上述したように、1次側直交変換部3において、トランジスタQ1〜Q6からなる複合スイッチの構造は2つの単相矩形波交流電圧を生成するインバータ構成となっている。
詳細は後述するが、上記単相矩形波交流電圧に対応し、2次側直交変換部4は、1次側巻線1L及び2Lに流れる電流により、2次側巻線1Aと、2次側巻線2Aとのそれぞれに、互いに同位相にて誘起される電圧を、加算して単相全波整流を行い低電圧VOLの生成を行う。
この2次側直交変換部4は、トランジスタQ7〜Q12それぞれの寄生ダイオードD7〜D12によるフルブリッジ整流により、直列接続された2次側巻線1A及び2A間に誘起される単相矩形波交流電圧の整流動作を行う。
また、降圧動作において、上述したようなフルブリッジ整流を行うのではなく、トランジスタQ1〜Q6の上述したスイッチングに同期して、第2の制御回路6は、トランジスタQ7〜Q12のオンオフを行う同期整流により、2次側巻線1A,2Aに誘起される単相矩形波交流電圧の整流動作を行っても良い。
【0024】
トランス1は1次側巻線1Lと、2次側巻線1Aとにて構成されている。トランス1において、例えば、1次側巻線1Lと2次側巻線1Aとの巻き数比はN:1とする。ここで、1次側巻線1Lと2次側巻線1Aとは、互いに巻線の極性が同一極性になるように接続されている。
ここで、1次側巻線1Lの一方の端子には直列にリーケージインダクタ1LLが接続され、2次側巻線1Aの一方の端子には直列にリーケージインダクタ1LAが接続されている。すなわち、リーケージインダクタ1LLは1次側巻線1Lの端子T1LBとトランス1の端子T1Lとの間に接続され、リーケージインダクタ1LAは2次側巻線1Aの端子T1BBとトランス1の端子T1Bとの間に接続されている。
【0025】
また、同様に、トランス2は1次側巻線2Lと、2次側巻線2Aとにて構成されている。トランス2において、例えば、1次側巻線2Lと2次側巻線2Aとの巻き数比は、トランス1と同様にN:1とする。ここで、1次側巻線2Lと2次側巻線2Aとは、互いに巻線の極性が逆極性になるように接続されている。
ここで、1次側巻線2Lの一方の端子には直列にリーケージインダクタ2LLが接続され、2次側巻線2Aの一方の端子には直列にリーケージインダクタ2LAが接続されている。すなわち、リーケージインダクタ2LLは1次側巻線2Lの端子T2LBとトランス2の端子T2Lとの間に接続され、リーケージインダクタ2LAは2次側巻線2Aの端子T2BBとトランス2の端子T2Bとの間に接続されている。
【0026】
また、上述したリーケージインダクタ1LLを1次巻線1Lでなく2次巻線1Aに設け、リーケージインダクタ2LLを1次巻線2Lではなく2次巻線2Aに設けるようにしても良い。
また、リーケージインダクタ1LLをトランス1の寄生インダクタを利用しても良く、リーケージインダクタ2LLをトランス2の寄生インダクタを利用しても良い。
また、リーケージインダクタ1LL及び2LLを、DC/DCコンバータの装置外に設けるようにしても良い。
【0027】
上述したように、本実施形態においては、1次側直交変換部3及び2次側直交変換部4それぞれにチョークコイルを用いずに、単相矩形波交流電圧の整流動作における平滑化に対し、上記トランス1及びトランス2の1次側巻線のリーケージインダクタ1LL及び2LLと、2次側巻線のリーケージインダクタ1AL及び2ALとを利用している。ここで、リーケージインダクタ1LL、2LL、1AL及び2ALは、上述したようにトランスのリーケージを用いても良いし、別に付加してもかまわないが、上述したように各トランスのリーケージを使用することにより部品点数を低減させることができる。
【0028】
1次側直交変換部3において、1次側巻線1Lの端子T1LM(リーケージインダクタ1LLと接続されていない他方の端子)は、上記接続点K3に接続されている。リーケージインダクタ2LLの端子T2L(1次側巻線2Lと接続されていない他方の端子)は接続点K1に接続されている。リーケージインダクタ1LLの端子TIL(1次側巻線1Lと接続されていない他方の端子)と、1次側巻線2Lの端子T2LM(リーケージインダクタ2LLと接続されていない他方の端子)とは接続点K1に接続されている。
すなわち、トランス1の1次側巻線1Lとトランス2の1次側巻線2Lとは、各々リーケージインダクタ1LL,2LLが直列に介挿された構成にて接続点K3と接続点K5との間にて直列に接続されている。
【0029】
一方、2次側直交変換部4において、2次側巻線1Aの一方の端子T1AMは、上記接続点m9に接続されている。2次側巻線1Aの他方端子T1Bは接続点m7に接続されている。2次側巻線2Aの端子T2AMは接続点m7に接続されている。2次側巻線2Aの端子T2Bは接続点m11接続されている。
すなわち、トランス1の2次側巻線2Lとトランス2の2次側巻線2Aとは、接続点m9と接続点m11との間にて直列に接続されている。
【0030】
上述したように、本実施形態においては、1次側巻線1Lと2次側巻線2Lとが互いに巻線の極性が同一極性として直列に接続され、2次側巻線1Aと2次側巻線2Aとが互いに巻線の極性が逆極性として直列に接続され、トランス1において1次側巻線1Lと2次側巻線1Aとの巻線が同一極性となるよう配置され、トランス2において1次側巻線2Lと2次側巻線2Aとの巻線が逆極性となるよう配置されている。
このため、昇圧時において、トランジスタQ7、Q10、Q12をオンとし、トランジスタQ8、Q9、Q11をオフとする第1周期と、トランジスタQ7、Q10、Q12をオフとし、トランジスタQ8、Q9、Q11をオンとする第2周期とを交互に繰り返すことにより、2次側巻線1A及び2次側巻線2Aに互いに逆方向の励磁電流が流れることになる。ここで、2次側巻線1A及び2次側巻線2A各々における巻線の極性が逆であるため、1次側巻線1L及び1次側巻線2Lには同一極性の電圧が発生し(1次側及び2次側巻線の巻線比に対応した電圧が発生し)、それぞれの電圧が加算された単相矩形波交流電圧が、1次側直交変換部3における寄生ダイオードD1〜D6によりフルブリッジ整流されることになる。
【0031】
同様に、降圧時において、トランジスタQ1、Q4、Q6をオンとし、トランジスタQ2、Q3、Q5をオフとする第1周期と、トランジスタQ1、Q4、Q6をオフとし、トランジスタQ2、Q3、Q5をオンとする第2周期とを交互に繰り返すことにより、1次側巻線1L及び2次側巻線2Aに互いに逆方向の励磁電流が流れることになる。ここで、2次側巻線1A及び2次側巻線2A各々における巻線の極性が逆であるため、2次側巻線1A及び2次側巻線2Aには同一極性の電圧が発生し(1次及び2次側巻線の巻線比に対応した電圧が発生し)、それぞれの電圧が加算された単相矩形波交流電圧が、2次側直交変換部4における寄生ダイオードD7〜D12によりフルブリッジ整流されることになる。
【0032】
次に、図1及び図2を用いて、本実施形態による双方向DC/DCコンバータによる昇圧動作を説明する。図2は本実施形態による双方向DC/DCコンバータによる低電圧から高電圧への昇圧動作を説明するDC/DCコンバータの昇圧動作のタイミングチャートを示す。ここで、低電圧から高電圧への昇圧処理とは、例えば数十Vの電圧から100V程度の電圧への変換処理をいう。2次側直交変換部4において位相制御の降圧処理を行い、1次側直交変換部3において、1次側巻線1L及び2Lに誘起される単相矩形波交流電圧に対するフルブリッジ整流が行われ、高電圧が生成される。このとき、第1の制御回路5は、トランジスタQ1〜Q6に対して「L」レベルの制御信号S1〜S6を出力している。このため、トランジスタQ1〜Q6は全てオフ状態となっている。
【0033】
以下の説明において、整流動作は、ダイオードD1〜D6によるフルブリッジ整流にて、直列接続された1次側巻線1Lと、1次側巻線2Lとにそれぞれ誘起される単相矩形波交流電圧の整流を行う。
また、すでに述べたように、トランジスタQ1〜Q6をスイッチングする同期整流にて1次側巻線1Lと、1次側巻線2Lとに誘起される単相矩形波交流電圧に対する整流を行う方式にて整流動作を行っても良い。
【0034】
以下の説明に用いる図2において、トランジスタQ7及びQ8をオン/オフするスイッチング周期を周期T1とし、トランジスタQ9及びQ11と、トランジスタQ10及びQ12とをオン/オフするスイッチング周期を周期T2とし、上記周期T1に対する周期T2との位相のずれをΔTとする。ここで、周期T2は周期T1に対して位相がΔT進んでいる。ここで、周期T1及び周期T2は、双方ともに、すでに説明した第1周期及び第2周期から構成されている。
また、例えば、1次側巻線1Lと2次側巻線1Aとの巻線比をN:1とし、同様に、1次側巻線2Lと2次側巻線2Aとの巻線比をN:1とする。また、1次側巻線1Lと1次側巻線2Lとは巻線の巻数が同様である。
【0035】
<周期T1と周期T2との位相が180°(=ΔT)ずれている場合:図2(a)>
時刻t1において、第2の制御回路6は、制御信号S7、制御信号S10、制御信号S12を「L」レベルから「H」レベルに変化させ、制御信号S8、制御信号S9、制御信号S11を「H」レベルから「L」レベルに変化させる。
上述した各制御信号の変化によって、トランジスタQ7、トランジスタQ10及びトランジスタQ12はオンとなり、一方トランジスタQ8、トランジスタQ9及びトランジスタQ11はオフとなる。
【0036】
これにより、2次側巻線1Aに電流iT1(端子T1B→端子T1AM)が流れ、2次側巻線2Aに、上記電流iT1と逆の方向に電流iT2(端子T2AM→端子T2B)が流れることにより、1次側巻線1LにN×VoL(=VT1)の電圧が誘起され、1次側巻線2LにN×VoL(=VT2)の電圧が誘起される。ここで、電流iT1と電流iT2との励磁電流の流れる方向が逆であるが、2次側巻線1Aに対して2次側巻線2Aの巻線の極性が逆極性であり、かつ1次側巻線1Lに対して1次側巻線2Lの巻線の極性が同一極性であるため、直列接続された1次側巻線1Lと1次側巻線2Lとの各々において、同一極性の電圧VT1、VT2が誘起されることとなる。
ここで、1次側巻線1Lに誘起された電圧N×VoLと、1次側巻線2Lに誘起された電圧N×VoLとが加算され、ダイオードD3を介して+側端子TVOHへ出力される。
これにより、+側端子TVoHと−側端子TVoHLとの間に、トランス1のリーケージインダクタ1LL及びトランス2のリーケージインダクタ2LLのインダクタンスにより平滑化され、高電圧VoHが出力される。
【0037】
次に、時刻t2において、第2の制御回路6は、制御信号S7、制御信号S10、制御信号S12を「H」レベルから「L」レベルに変化させ、制御信号S8、制御信号S9、制御信号S11を「L」レベルから「H」レベルに変化させる。
上述した各制御信号の変化によって、トランジスタQ7、トランジスタQ10及びトランジスタQ12はオフとなり、一方トランジスタQ8、トランジスタQ9及びトランジスタQ11はオンとなる。
【0038】
これにより、2次側巻線1Aに電流iR1(端子T1AM→端子T1B)が流れ、2次側巻線2Aに、上記電流iR1と逆の方向に電流iR2(端子T2B→端子T2AM)が流れることにより、1次側巻線1LにN×VoL(=VR1)の電圧が誘起され、1次側巻線2LにN×VoL(=VR2)の電圧が誘起される。ここで、電流iR1と電流iR2との励磁電流の流れる方向が逆であるが、2次側巻線1Aに対して2次側巻線2Aの巻線の極性が逆極性であり、かつ1次側巻線1Lに対して1次側巻線2Lの巻線の極性が同一極性であるため、直列接続された1次側巻線1Lと1次側巻線2Lとの各々において、同一極性の電圧VR1、VR2が誘起されることとなる。
ここで、1次側巻線1Lに誘起された電圧N×VoLと、1次側巻線2Lに誘起された電圧N×VoLとが加算され、ダイオードD5を介して+側端子TVOHへ出力される。
これにより、+側端子TVoHと−側端子TVoHLとの間に、トランス1のリーケージインダクタ1LL及びトランス2のリーケージインダクタ2LLのインダクタンスにより平滑化され、高電圧VoHが出力される。
【0039】
<周期T1と周期T2との位相が90°(=ΔT)ずれている場合:図2(b)>
時刻t1より前の時刻において、第2の制御回路6は、制御信号S7,S9及びS11を「L」レベルにて出力し、制御信号S8、S10及びS12を「H」レベルにて出力している。このため、トランジスタQ7,Q9及びQ11はオフとなり、トランジスタQ8、Q10及びQ12はオンしている。この時点においては、電流経路が形成されずに、2次側巻線1A及び2次側巻線2Aに対しては励磁電流が流れないため、1次側巻線1L及び1次側巻線2Lには電圧は誘起されない。
【0040】
時刻t1において、第2の制御回路6は、制御信号S7を「L」レベルから「H」レベルに変化させ、制御信号S8を「H」レベルから「L」レベルに変化させる。
上述した制御信号の変化によって、トランジスタQ7はオンとなり、一方トランジスタQ8はオフとなる。
このとき、第2の制御回路6は、制御信号S10及びS12を「H」レベルにて出力し、制御信号S9及びS11を「L」レベルにて出力している。
したがって、トランジスタQ10及びQ12はオン状態であり、トランジスタQ9及びQ11はオフ状態にある。
【0041】
上述したように、トランジスタQ7,Q10,Q12がオン状態であり、トランジスタQ8,Q9,Q11がオフ状態にあるため、トランジスタQ7からトランジスタQ10及びQ12を介して、2次側巻線1Aに電流iT1(端子T1B→端子T1AM)が流れ、また、2次側巻線2Aに電流iT2が、それぞれ励磁電流として流れる。
これにより、トランス1の1次側巻線1Lに電圧N×VoLが誘起され、1次側巻線2Lに電圧N×VoLが誘起される。
ここで、1次側巻線1Lに誘起された電圧N×VoLと、1次側巻線2Lに誘起された電圧N×VoLとが加算され、ダイオードD3を介して+側端子TVOHへ出力される。
これにより、+側端子TVoHと−側端子TVoHLとの間に、トランス1のリーケージインダクタ1LL及びトランス2のリーケージインダクタ2LLのインダクタンスにより平滑化され、高電圧VoHが出力される。
【0042】
次に、時刻t11において、第2の制御回路6は、制御信号S9及びS11を「L」レベルから「H」レベルに変化させ、制御信号S10及びS12を「H」レベルから「L」レベルに変化させる。
このとき、第2の制御回路6は、制御信号S7を「H」レベルにて出力し、制御信号S8を「L」レベルにて出力している。
上述したように、トランジスタQ7,Q9,Q11がオン状態であり、トランジスタQ8,Q10,Q12がオフ状態にあるため、2次側巻線1A及び2次側巻線2Aに対して励磁電流を流す経路が無くなり、1次側巻線1L及び1次側巻線2Lには電圧が誘起されない。
【0043】
次に、時刻t2において、第2の制御回路6は、制御信号S7を「H」レベルから「L」レベルに変化させ、制御信号S8を「L」レベルから「H」レベルに変化させる。
上述した制御信号の変化によって、トランジスタQ7はオフとなり、一方トランジスタQ8はオンとなる。
また、このとき、トランジスタQ9及びQ11はオンであり、一方トランジスタQ10及びQ12はオフである。
【0044】
上述したように、トランジスタQ8,Q9,Q11がオン状態であり、トランジスタQ7,Q10,Q12がオフ状態にあるため、トランジスタQ9及びQ11からトランジスタQ8を介して、2次側巻線1Aに電流iR1(端子T1AM→端子T1B)が流れ、また2次側巻線2Aに電流iR2(端子T2B→端子T2AM)がそれぞれ励磁電流として流れる。
これにより、直列接続された1次側巻線1Lと1次側巻線2Lとの各々において、同一極性の電圧VR1(電圧N×VoL)、VR2(電圧N×VoL)が誘起されることとなる。
ここで、1次側巻線1Lに誘起された電圧N×VoLと、1次側巻線2Lに誘起された電圧N×VoLとが加算され、ダイオードD5を介して+側端子TVOHへ出力される。
これにより、+側端子TVoHと−側端子TVoHLとの間に、トランス1のリーケージインダクタ1LL及びトランス2のリーケージインダクタ2LLのインダクタンスにより平滑化され、高電圧VoHが出力される。
【0045】
次に、時刻t21において、第2の制御回路6は、制御信号S9及びS11を「H」レベルから「L」レベルに変化させ、制御信号S10及びS12を「L」レベルから「H」レベルに変化させる。
上述した制御信号の変化により、トランジスタQ9及びQ11がオフとなり、トランジスタQ10及びQ12がオンとなる。
このとき、トランジスタQ7はオフであり、一方トランジスタQ8はオンである。
すなわち、トランジスタQ8,Q10,Q12がオン状態であり、トランジスタQ7,Q9,Q11がオフ状態にあるため、2次側巻線1A及び2次側巻線2Aに対して励磁電流を流す経路が無くなり、1次側巻線1L及び1次側巻線2Lには電圧が誘起されない。
【0046】
図2(b)の場合、周期T1に対して周期T2の位相が90°ずれているため、トランス1及び2それぞれの単相矩形波交流電圧の幅が180゜の半分となり、この半分の期間において単相矩形波交流電圧が1次側巻線に誘起されることになり、1次側直交変換部3において、その単相矩形波交流電圧にパルス幅に対応した単相全波整流が行われ、位相ずれΔTに対応した電圧値の高電圧VoHが生成される。
時刻t3〜時刻t51においても、時刻t1〜時刻t21の動作が繰り返して行われ、低電圧から高電圧に電圧を昇圧させる処理が行われる。
【0047】
また、図2(b)において、周期T1及び周期T2の時間長は等しく、制御信号S7及びS8と、制御信号S9、S10、S11、S12とは、上記周期T1と周期T2との位相がΔT=90゜ずれている。
また、周期T1に対して周期T2の位相が180°ずらすことにより、トランジスタQ8,Q10,Q12がオン状態でトランジスタQ7,Q9,Q11がオフ状態となるか、あるいはトランジスタQ8,Q10,Q12がオフ状態でトランジスタQ7,Q9,Q11がオン状態となるかのいずれかとなり、2次側巻線1A及び2次側巻線2Aには励磁電流が流れずに、位相制御により昇圧電圧を0Vにまで低下させることができる。
【0048】
したがって、図2(a)及び図2(b)にて説明したように、制御信号S7及び制御信号S8の信号レベルの変化の位相に対し、制御信号S9及びS11と、S10及びS11との「H」レベル及び「L」レベルに変化する周期の位相のずれを変化(調整)させることにより、励磁電流が2次側巻線1A及び2Aに流れる期間(時間長)を制御し、1次側巻線に誘起される電圧パルスの幅を制御し、高電圧VoHの電圧値を、0V〜2N×VoLの電圧範囲において任意に制御することができる。
【0049】
次に、図3及び図4を用いて、本実施形態による双方向DC/DCコンバータによる昇圧動作を説明する。図3は、図1における降圧動作における励磁電流及び誘起される電圧の関係を代えた図であり、双方向DC/DCコンバータの構成としては図1と同様である。図4は本実施形態による双方向DC/DCコンバータによる高電圧から低電圧への降圧動作を説明するDC/DCコンバータの動作を示すタイミングチャートである。ここで、高電圧から低電圧への降圧処理とは、例えば100V程度の電圧から数V程度の電圧への変換処理をいう。1次側直交変換部3において位相制御の降圧処理を行い、2次側直交変換部4において、2次側巻線1A及び2Aに誘起される単相矩形波交流電圧に対するフルブリッジ整流が行われ、低電圧が生成される。このとき、第2の制御回路6は、トランジスタQ7〜Q12に対して「L」レベルの制御信号S7〜S12を出力している。このため、トランジスタQ7〜Q12は全てオフ状態となっている。
【0050】
以下の説明において、整流動作は、寄生ダイオードD7〜D12によるフルブリッジ整流にて、直列接続された2次側巻線1Aと、2次側巻線2Aとにそれぞれ誘起される単相矩形波交流電圧の整流を行う。
また、すでに述べたように、トランジスタQ7〜Q12をスイッチングする同期整流にて2次側巻線1Aと、2次側巻線2Aとに誘起される単相矩形波交流電圧に対する整流を行う方式にて整流動作を行っても良い。
【0051】
以下の説明に用いる図4において、トランジスタQ1及びQ2をオン/オフするスイッチング周期を周期T3とし、トランジスタQ3及びQ5と、トランジスタQ4及びQ6とをオン/オフするスイッチング周期を周期T4とし、上記周期T3に対する周期T4との位相のずれをΔTとする。ここで、周期T4は周期T3に対して位相がΔT進んでいる。ここで、周期T3あるいは周期T4は、すでに説明した第1周期及び第2周期から構成されている。
また、例えば、昇圧動作の説明と同様に、1次側巻線1Lと2次側巻線1Aとの巻線比をN:1とし、同様に、1次側巻線2Lと2次側巻線2Aとの巻線比をN:1とする。また、1次側巻線1L及び1次側巻線2Lとの巻線の巻数は同様である。
【0052】
<周期T3と周期T4との位相が180°(=ΔT)ずれている場合:図4(a)>
時刻t1において、第1の制御回路5は、制御信号S1、制御信号S4、制御信号S6を「L」レベルから「H」レベルに変化させ、制御信号S2、制御信号S3、制御信号S5を「H」レベルから「L」レベルに変化させる。
上述した各制御信号の変化によって、トランジスタQ1、トランジスタQ4及びトランジスタQ6はオンとなり、一方トランジスタQ2、トランジスタQ3及びトランジスタQ5はオフとなる。
【0053】
これにより、1次側巻線1Lに電流iT3(端子T1L→端子T1LM)が流れ、1次側巻線2Lに、上記電流iT3と逆の方向に電流iT4(端子T2LM→端子T2L)が流れることにより、2次側巻線1Aに(1/N)×VoH(=VT3)の電圧が誘起され、2次側巻線2Aに(1/N)×VoH(=VT4)の電圧が誘起される。ここで、電流iT3と電流iT4との励磁電流の流れる方向が逆であるが、2次側巻線1Aに対して2次側巻線2Aの巻線の極性が逆極性であり、かつ1次側巻線1Lに対して1次側巻線2Lの巻線の極性が同一極性であるため、直列接続された2次側巻線1Aと2次側巻線2Aとの各々において、同一極性の電圧VT3、VT4が誘起されることとなる。
ここで、2次側巻線1Aに誘起された電圧(1/N)×VoHと、2次側巻線2Aに誘起された電圧(1/N)×VoHとが加算され、ダイオードD9を介して+側端子TVOLへ出力される。
これにより、+側端子TVoLと−側端子TVoLLとの間に、トランス1のリーケージインダクタ1LL及びトランス2のリーケージインダクタ2LLのインダクタンスにより平滑化され、低電圧VoLが出力される。
【0054】
次に、時刻t2において、第1の制御回路5は、制御信号S1、制御信号S4、制御信号S6を「H」レベルから「L」レベルに変化させ、制御信号S2、制御信号S3、制御信号S5を「L」レベルから「H」レベルに変化させる。
上述した各制御信号の変化によって、トランジスタQ1、トランジスタQ4及びトランジスタQ6はオフとなり、一方トランジスタQ2、トランジスタQ3及びトランジスタQ5はオンとなる。
【0055】
これにより、1次側巻線1Lに電流iR3(端子T1LM→端子T1L)が流れ、1次側巻線2Lに上記電流iR3と逆の方向に電流iR4(端子T2L→端子T2LM)が流れることにより、2次側巻線1Aに(1/N)×VoH(=VR3)の電圧が誘起され、2次側巻線2Aに(1/N)×VoH(=VR4)の電圧が誘起される。ここで、電流iR3と電流iR4との励磁電流の流れる方向が逆であるが、2次側巻線1Aに対して2次側巻線2Aの巻線の極性が逆極性であり、かつ1次側巻線1Lに対して1次側巻線2Lの巻線の極性が同一極性であるため、直列接続された2次側巻線1Aと2次側巻線2Aとの各々において、同一極性の電圧VR3、VR4が誘起されることとなる。
ここで、2次側巻線1Aに誘起された電圧(1/N)×VoHと、2次側巻線2Aに誘起された電圧(1/N)×VoHとが加算され、ダイオードD11を介して+側端子TVOLへ出力される。
これにより、+側端子TVoLと−側端子TVoLLとの間に、トランス1のリーケージインダクタ1LL及びトランス2のリーケージインダクタ2LLのインダクタンスにより平滑化され、低電圧VoLが出力される。
【0056】
<周期T3と周期T4との位相が90°(=ΔT)ずれている場合:図4(b)>
時刻t1より前の時刻において、第1の制御回路5は、制御信号S1,S3及びS5を「L」レベルにて出力し、制御信号S2、S4及びS6を「H」レベルにて出力している。このため、トランジスタQ1、Q3及びQ5はオフとなり、トランジスタQ2、Q4及びQ6はオンしている。この時点においては、電流経路が形成されずに、1次側巻線1L及び1次側巻線2Lに対しては励磁電流が流れないため、2次側巻線1A及び2次側巻線2Aには電圧は誘起されない。
【0057】
時刻t1において、第1の制御回路5は、制御信号S1を「L」レベルから「H」レベルに変化させ、制御信号S2を「H」レベルから「L」レベルに変化させる。
上述した制御信号の変化によって、トランジスタQ1はオンとなり、一方トランジスタQ2はオフとなる。
このとき、第1の制御回路5は、制御信号S4及びS6を「H」レベルにて出力し、制御信号S3及びS5を「L」レベルにて出力している。
したがって、トランジスタQ4及びQ6はオン状態であり、トランジスタQ3及びQ5はオフ状態にある。
【0058】
上述したように、トランジスタQ1,Q4,Q6がオン状態であり、トランジスタQ2,Q3,Q5がオフ状態にあるため、トランジスタQ1からトランジスタQ4及びQ6を介して、1次側巻線1Lに電流iT3(端子T1L→端子T1LM)が流れ、また、1次側巻線2Lに電流iT4が、それぞれ励磁電流として流れる。
これにより、トランス1の2次側巻線1Aに電圧(1/N)×VoHが誘起され、2次側巻線2Aに電圧(1/N)×VoHが誘起される。
ここで、2次側巻線1Aに誘起された電圧(1/N)×VoHと、2次側巻線2Aに誘起された電圧(1/N)×VoHとが加算され、ダイオードD9を介して+側端子TVOLへ出力される。
これにより、+側端子TVoLと−側端子TVoLLとの間に、トランス1のリーケージインダクタ1LL及びトランス2のリーケージインダクタ2LLのインダクタンスにより平滑化され、低電圧VoLが出力される。
【0059】
次に、時刻t11において、第1の制御回路5は、制御信号S3及びS5を「L」レベルから「H」レベルに変化させ、制御信号S4及びS6を「H」レベルから「L」レベルに変化させる。
このとき、第1の制御回路5は、制御信号S1を「H」レベルにて出力し、制御信号S2を「L」レベルにて出力している。
上述したように、トランジスタQ1,Q3,Q5がオン状態であり、トランジスタQ2,Q4,Q6がオフ状態にあるため、1次側巻線1L及び1次側巻線2Lに対して励磁電流を流す経路が無くなり、2次側巻線1A及び2次側巻線2Aには電圧が誘起されない。
【0060】
次に、時刻t2において、第1の制御回路5は、制御信号S1を「H」レベルから「L」レベルに変化させ、制御信号S2を「L」レベルから「H」レベルに変化させる。
上述した制御信号の変化によって、トランジスタQ1はオフとなり、一方トランジスタQ2はオンとなる。
また、このとき、トランジスタQ3及びQ5はオンであり、一方トランジスタQ4及びQ6はオフである。
【0061】
上述したように、トランジスタQ2,Q3,Q5がオン状態であり、トランジスタQ1,Q4,Q6がオフ状態にあるため、トランジスタQ3及びQ5からトランジスタQ2を介して、1次側巻線1Lに電流iR3(端子T1LM→端子T1L)が流れ、また1次側巻線2Lに電流iR4(端子T2L→端子T2LM)がそれぞれ励磁電流として流れる。
これにより、直列接続された2次側巻線1Aと2次側巻線2Aとの各々において、同一極性の電圧VR3(電圧(1/N)×VoH)、VR4(電圧(1/N)×VoH)が誘起されることとなる。
ここで、2次側巻線1Aに誘起された電圧(1/N)×VoHと、2次側巻線2Aに誘起された電圧(1/N)×VoHとが加算され、ダイオードD11を介して+側端子TVOLへ出力される。
これにより、+側端子TVoLと−側端子TVoLLとの間に、トランス1のリーケージインダクタ1LLA及びトランス2のリーケージインダクタ2LLのインダクタンスにより平滑化され、低電圧VoLが出力される。
【0062】
次に、時刻t21において、第1の制御回路5は、制御信号S3及びS5を「H」レベルから「L」レベルに変化させ、制御信号S4及びS6を「L」レベルから「H」レベルに変化させる。
上述した制御信号の変化により、トランジスタQ3及びQ5がオフとなり、トランジスタQ4及びQ5がオンとなる。
このとき、トランジスタQ1はオフであり、一方トランジスタQ2はオンである。
すなわち、トランジスタQ2,Q4,Q6がオン状態であり、トランジスタQ1,Q3,Q5がオフ状態にあるため、1次側巻線1L及び1次側巻線2Lに対して励磁電流を流す経路が無くなり、2次側巻線1A及び2次側巻線2Aには電圧が誘起されない。
【0063】
図4(b)の場合、周期T3に対して周期T4の位相が90°ずれているため、トランス1及び2それぞれの単相矩形波交流電圧の幅が180゜の半分となり、この半分の期間において単相矩形波交流電圧が2次側巻線に誘起されることになり、2次側直交変換部4において、その単相矩形波交流電圧にパルス幅に対応したフルブリッジ整流が行われ、位相ずれΔTに対応した電圧値の低電圧VoLが生成される。
時刻t3〜時刻t51においても、時刻t1〜時刻t21の動作が繰り返して行われ、高電圧から低電圧に電圧を降圧させる処理が行われる。
【0064】
また、図4(b)において、周期T3及び周期T4の時間長は等しく、制御信号S1及びS2と、制御信号S3、S4、S5、S6とは、上記周期T3と周期T4との位相がΔT=90゜ずれている。
また、周期T3に対して周期T4の位相を180°ずらすことにより、トランジスタQ2,Q4,Q6がオン状態でトランジスタQ1,Q3,Q5がオフ状態となるか、あるいはトランジスタQ2,Q4,Q6がオフ状態でトランジスタQ1,Q3,Q4がオン状態となるかのいずれかとなり、1次側巻線1L及び1次側巻線2Lには励磁電流が流れずに、位相制御により降圧電圧を0Vにまで低下させることができる。
【0065】
したがって、図4(a)及び図4(b)にて説明したように、制御信号S1及び制御信号S2の信号レベルの変化の位相に対し、制御信号S3及びS5と、S4及びS6との「H」レベル及び「L」レベルに変化する周期の位相のずれを変化(調整)させることにより、励磁電流が1次側巻線1L及び2Lに流れる期間(時間長)を制御し、2次側巻線に誘起される電圧パルスの幅を制御し、低電圧VoLの電圧値を、0V〜2(1/N)×VoHの電圧範囲において任意に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態による双方向DC/DCコンバータの構成例を示す図である。
【図2】図1の双方向DC/DCコンバータの昇圧動作を説明するタイミングチャートである。
【図3】本発明の一実施形態による双方向DC/DCコンバータの構成例を示し、降圧動作の説明を行う図である。
【図4】図1の双方向DC/DCコンバータの降圧動作を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1,2…トランス
1A,2A…2次側巻線
1L,2L…1次側巻線
1LL,2LL…リーケージインダクタ
3…1次側直交変換部
4…2次側直交変換部
5…第1の制御回路
6…第2の制御回路
B1,B2…バッテリ
D1,D2,D3,D4,D5,D7,D8,D8,D9,D10,D11,D12…ダイオード
Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10,Q11,Q12…トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧と低電圧との相互間にて、電圧変換動作を行う双方向DC/DCコンバータであって、
第1の1次側巻線と、当該第1の1次側巻線と同一の極性の第1の2次側巻線とからなる第1のトランスと、
第2の1次側巻線と、当該第2の1次側巻線と逆の極性の第2の2次側巻線とからなる第2のトランスと、
前記第1の1次側巻線の一端及び前記第2の1次側巻線の一端の第1の接続点と、高電圧の+側端子との間に設けられた第1のスイッチ手段と、
前記第1の接続点と、前記高電圧の−側端子に接続された第2のスイッチ手段と、
前記第1の1次側巻線の他端と高電圧側の+側端子との間に設けられた第3のスイッチ手段と、
前記第1の1次側巻線の他端と高電圧側の−側端子との間に設けられた第4のスイッチ手段と、
前記第2の1次側巻線の他端と高電圧側の+側端子との間に設けられた第5のスイッチ手段と、
前記第2の1次側巻線の他端と高電圧側の−側端子との間に設けられた第6のスイッチ手段と、
前記第1の2次側巻線の一端及び第2の2次側巻線の一端の第2の接続点と、低電圧の+側端子との間に設けられた第7のスイッチ手段と、
前記第2の接続点と、前記低電圧の−側端子に接続された第8のスイッチ手段と、
前記第1の2次側巻線の他端と低電圧側の+側端子との間に設けられた第9のスイッチ手段と、
前記第1の2次側巻線の他端と低電圧側の−側端子との間に設けられた第10のスイッチ手段と、
前記第2の2次側巻線の他端と低電圧側の+側端子との間に設けられた第11のスイッチ手段と、
前記第2の2次側巻線の他端と低電圧側の−側端子との間に設けられた第12のスイッチ手段と
を有し、
前記第1の1次側巻線と第2の1次側巻線とが直列に接続され、前記第1の2次側巻線と第2の2次側巻線とが直列に接続されていることを特徴とする双方向DC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記第1、第2、第3、第4、第5及び第6のスイッチ手段を制御する第1の制御回路と、
前記第1の2次側巻線及び第2の2次側巻線に接続された第2の整流回路と
をさらに有し、
降圧動作において、
前記第1、第4及び第6のスイッチ手段をオン状態とし、前記第2、第3及び第5のスイッチ手段をオフ状態とする第1の状態と、前記第2、第3及び第5のスイッチ手段をオン状態とし、前記第1、第4及び第6のスイッチ手段をオフ状態とする第2の状態とを周期的に繰り返し、前記第1の制御回路が、前記第1、第4及び第6のスイッチ手段と、前記第2、第3及び第5のスイッチ手段とのオンオフのタイミングを位相制御し、前記第2の整流回路が前記第1の2次側巻線と前記第2の2次側巻線に誘起される電圧の和を第2の複合電圧とし、
前記第2の整流回路から出力される第2の複合電圧を平滑化して降圧電圧として出力することを特徴とする請求項1に記載の双方向DC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記第1の制御回路が、前記第1、第4及び第6のスイッチ手段と、前記第2、第3及び第5のスイッチ手段とのオンオフのタイミングを位相制御し、前記第2の複合電圧が予め設定された低電圧となるよう制御することを特徴とする請求項2に記載の双方向DC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記第7、第8、第9、第10、第11及び第12のスイッチ手段を制御する第2の制御回路と、
前記第1の1次側巻線及び第2の1次側巻線に接続された第1の整流回路と
をさらに有し、
昇圧動作において、
前記第7、第10及び第12のスイッチ手段をオン状態とし、前記第8、第9及び第11のスイッチ手段をオフ状態とする第3の状態と、前記第8、第9及び第11のスイッチ手段をオン状態とし、前記第7、第10及び第12のスイッチ手段をオフ状態とする第4の状態とを周期的に繰り返し、前記第1の整流回路が前記第1の1次側巻線と第2の1次側巻線に誘起される電圧の和を第1の複合電圧とし、
前記第1の整流回路から出力される第1の複合電圧を平滑化して昇圧電圧として出力することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の双方向DC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記第2の制御回路が、前記第7、第10及び第12のスイッチ手段と、前記第8、第9及び第11のスイッチ手段とのオンオフのタイミングを位相制御し、前記第1の複合電圧が予め設定された高電圧となるよう制御することを特徴とする請求項4に記載の双方向DC/DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−93952(P2010−93952A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261798(P2008−261798)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】