説明

双極型リチウムイオン二次電池用集電体

【課題】双極型リチウムイオン二次電池に用いられる樹脂集電体において、集電体の内部へのリチウムイオンの吸蔵を抑制しうる手段を提供する。
【解決手段】本発明の双極型リチウムイオン二次電池用集電体は、少なくとも2つの導電性層を有する。そして、集電体を構成する導電性層の1つ(第1の導電性層)は、イミド基含有樹脂を含む基材に導電性フィラーが添加されてなる構成を有する。また、集電体を構成する導電性層の他の1つ(第2の導電性層)は、リチウムイオンを遮断する機能を有する層であり、イミド基非含有樹脂を含む基材に導電性フィラーが添加されてなる遮断性樹脂層および金属層を含む。さらに、双極型電極の形成時には、第1の導電性層が第2の導電性層に対して正極活物質側に位置するように用いられる点にも特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型リチウムイオン二次電池用集電体、ならびに該集電体を用いたリチウムイオン二次電池用双極型電極、および双極型リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境や燃費の観点から、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)、さらには燃料電池自動車が製造・販売され、新たな開発が続けられている。これらのいわゆる電動車両においては、放電・充電ができる電源装置の活用が不可欠である。この電源装置としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等が利用される。特に、リチウムイオン二次電池はそのエネルギー密度の高さや繰り返し充放電に対する耐久性の高さから、電動車両に好適と考えられ、各種の開発が鋭意進められている。ただし、上記したような各種自動車のモータ駆動用電源に適用するためには、大出力を確保するために、複数の二次電池を直列に接続して用いる必要がある。
【0003】
しかしながら、接続部を介して電池を接続した場合、接続部の電気抵抗によって出力が低下してしまう。また、接続部を有する電池は空間的にも不利益を有する。即ち、接続部によって、電池の出力密度やエネルギー密度の低下がもたらされる。
【0004】
この問題を解決するものとして、双極型リチウムイオン二次電池等の双極型二次電池が開発されている。双極型二次電池は、集電体の一方の面に正極活物質層が形成され、他方の面に負極活物質層が形成された双極型電極が、電解質層やセパレータを介して複数積層された発電要素を有する。
【0005】
このような双極型二次電池に用いる集電体は、より大きな出力密度を確保するために、軽量であって、かつ導電性に優れた材料からなることが望ましい。そこで、近年、導電性材料が添加された高分子材料を集電体(樹脂集電体)の材料として用いることが提案されている。例えば、特許文献1では、高分子材料に導電性材料として金属粒子またはカーボン粒子が混合された樹脂集電体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−190649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているような樹脂集電体は、電解液中のリチウムイオンの遮断性が低い。そのため、双極型リチウムイオン二次電池に適用した場合には、双極型電極を構成する樹脂集電体の内部にリチウムイオンが浸透し、当該集電体の内部にリチウムイオンが吸蔵されたままになることが判明した。この吸蔵されたリチウムは集電体の内部から放出されにくいため、結果として電池容量の低下を招く虞がある。
【0008】
樹脂集電体を構成する樹脂は、電池作製時の加熱処理や加圧処理によっても変形しにくく、かつ、電解液中の溶媒に溶解しにくい、耐熱性、強度、および耐溶媒性に優れた樹脂であることが望ましい。これらの特性を併せ持つ樹脂として、ポリイミドのようなイミド基含有樹脂が好適であるが、上述の樹脂集電体内部へのリチウムイオンの吸蔵は、イミド基含有樹脂を用いた場合に特に顕著であることも判明した。
【0009】
そこで、本発明は、双極型リチウムイオン二次電池に用いられるイミド基含有樹脂を含む樹脂集電体において、集電体の内部へのリチウムイオンの吸蔵を抑制しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その過程で、本発明者らは、樹脂集電体へのリチウムイオンの浸透・吸蔵のメカニズムを明らかにした。そして、イミド基含有樹脂を含む樹脂集電体に、イミド基非含有樹脂を含む遮断性樹脂層および金属層を設けることによりリチウムイオンの浸透・吸蔵を著しく抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の双極型リチウムイオン二次電池用集電体は、少なくとも2つの導電性層を有する。そして、集電体を構成する導電性層の1つ(本願において、「第1の導電性層」と称する)は、イミド基含有樹脂を含む基材に導電性フィラーが添加されてなる構成を有する。また、集電体を構成する導電性層の他の1つ(本願において、「第2の導電性層」と称する)は、リチウムイオンを遮断する機能を有する層であり、イミド基非含有樹脂を含む基材に導電性フィラーが添加されてなる遮断性樹脂層および金属層を含む。さらに、双極型電極の形成時には、第1の導電性層が第2の導電性層に対して正極活物質側に位置するように用いられる点にも特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、イミド基含有樹脂を含む第1の導電性層よりも相対的に負極活物質層側に遮断性樹脂層および金属層を含む第2の導電性層を設けることにより、負極電位に曝された場合であってもリチウムイオンの移動を抑制することができる。よって、リチウムイオンの樹脂集電体内部への吸蔵を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る双極型リチウムイオン二次電池用集電体を用いた、リチウムイオン二次電池用双極型電極の全体構造を模式的に表した断面図である。
【図2】本発明の他の一実施形態に係る双極型リチウムイオン二次電池用集電体を用いた、リチウムイオン二次電池用双極型電極の全体構造を模式的に表した断面図である。
【図3】本発明の他の一実施形態に係る、金属溶出防止層を有する双極型リチウムイオン二次電池用集電体を用いた、リチウムイオン二次電池用双極型電極の全体構造を模式的に表した断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る双極型リチウムイオン二次電池を模式的に表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。以下では、双極型リチウムイオン二次電池用集電体を単に「集電体」と、リチウムイオン二次電池用双極型電極を単に「双極型電極」と、双極型リチウムイオン二次電池を「双極型二次電池」と、それぞれ称する場合がある。
【0015】
<集電体、双極型電極>
図1は、本発明の一実施形態に係る双極型リチウムイオン二次電池用集電体を用いた、リチウムイオン二次電池用双極型電極の全体構造を模式的に表した断面図である。図1に示す双極型電極1は、集電体3の一方の面に正極活物質層5が形成され、他方の面に負極活物質層7が形成された積層構造を有する。そして、集電体3は、正極活物質層5側に位置する第1の導電性層3Aと、負極活物質層7側に位置する第2の導電性層3Bとが積層されてなる構造を有する。
【0016】
ここで、第1の導電性層3Aは、ポリイミド(PI)からなる基材に、導電性フィラーとしてのケッチェンブラックが分散されてなる構成を有する。また、第2の導電性層3Bは、遮断性樹脂層3aおよび金属層3bの2つの層を含む。遮断性樹脂層3aは、ポリプロピレン(PP)などのイミド基非含有樹脂を含む基材に、導電性フィラーとしてのケッチェンブラックが分散されてなる構成を有する。金属層3bは、銅から構成される。
【0017】
正極活物質層5は、正極活物質として、LiNiO(図示せず)を含み、負極活物質層7は、負極活物質として、グラファイト(図示せず)を含む。以下、本形態の集電体3および双極型電極1の主な構成要素について説明する。
【0018】
[集電体]
集電体3は、正極活物質層が形成される一方の面から、負極活物質層が形成される他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。
【0019】
(第1の導電性層)
本形態において、集電体3は、2つの導電性層(3A、3B)を有する。ここで、双極型電極1の正極活物質層5側に位置する導電性層(第1の導電性層)3Aは、イミド基含有樹脂を含む基材に導電性フィラーが添加されてなる構成を有する。かような構成によって、電子移動媒体としての機能を有することは勿論のこと、集電体の軽量化にも寄与しうる。
【0020】
第1の導電性層3Aを構成する基材は、イミド基含有樹脂を必須に含む。イミド基含有樹脂は、耐熱性、強度、および耐溶媒性に優れるため、イミド基含有樹脂を集電体の基材として用いることにより、電池作製時の加熱処理や加圧処理によっても変形しにくく、また、電解液中の溶媒にも溶解しにくい集電体とすることができる。ここで、イミド基含有樹脂としては、例えば、ポリイミド(PI)のほか、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)などが挙げられる。なかでも、イミド基含有樹脂としては、ポリイミドが好ましく用いられる。ポリイミドの具体例としては、ユーピレックス(登録商標、宇部興産社製)、カプトン(登録商標、東レ・デュポン社製)、アピカル(登録商標、カネカ社製)等の商品名で市販されているポリイミドが挙げられるが、これ以外の樹脂を使用することも勿論可能である。これらのイミド基含有樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて混合物として使用しても構わない。
【0021】
なお、第1の導電性層3Aを構成する基材は、イミド基含有樹脂に加えて、従来公知の非導電性高分子材料または導電性高分子材料を含んでもよい。非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE))、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、およびポリスチレン(PS)などが挙げられる。また、導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。これらの非導電性高分子材料または導電性高分子材料は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上の共重合体または混合物の形態で使用されても構わない。
【0022】
基材を構成する高分子材料(樹脂)のうち、本形態の作用効果をより一層発揮させるという観点から、当該基材に占めるイミド基含有樹脂の配合量が規定されうる。具体的には、基材を構成する樹脂100質量%に占めるイミド基含有樹脂(より好ましくはポリイミド(PI))の配合量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0023】
第1の導電性層3Aを構成する際に基材に添加される導電性フィラーとしては、特に制限はないが、例えば、導電性カーボン、スズ(Sn)、およびチタン酸リチウム(LiTi12)などが挙げられる。導電性カーボンとしては、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの導電性カーボンは、電位窓(potential window)が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに、優れた導電性を有する。なかでも、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ケッチェンブラック、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。これらの導電性カーボンは中空構造を有するため、質量あたりの表面積が大きく、集電体をより一層軽量化することができる。一方、Ni、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Zn、In、Sb、およびKからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物が導電性フィラーとして用いられてもよい。これらの金属は、集電体表面に形成される正極または負極の電位に対して耐性を有する。例えば、Alは正極電位に対して、Ni、Cuは負極電位に対して、Ptは両極の電位に対して耐性を有する。これらのうち、Ni、Al、Cu、Pt、Fe、およびCrからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む合金であることがより好ましい。合金としては、具体的には、ステンレス鋼(SUS)、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、およびその他Fe−Cr系合金、Ni−Cr合金等が挙げられる。これらの合金を用いることにより、より高い耐電位性が得られうる。なお、これらの導電性フィラーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
導電性フィラーの形状は、特に制限はなく、粒状、繊維状、板状、塊状、布状、およびメッシュ状などの公知の形状を適宜選択することができる。例えば、樹脂に対して広範囲に亘って導電性を付与したい場合は、粒状の導電性フィラーを使用することが好ましい。一方、樹脂において特定方向への導電性をより向上させたい場合は、繊維状等の形状に一定の方向性を有するような導電性フィラーを使用することが好ましい。
【0025】
導電性フィラーの大きさは、特に制限はなく、導電性層の大きさや厚さまたは導電性フィラーの形状によって、様々な大きさのフィラーを使用することができる。一例として、導電性フィラーが粒状の場合の平均粒子径は、導電性層の成形を容易にする観点から、0.1〜10μm程度であることが好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。後述する活物質などの粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
【0026】
導電性層3Aに含まれる導電性フィラーの含有量も特に制限はない。ただし、導電性フィラーの含有量は、基材の全質量に対して、好ましくは5〜35質量%であり、より好ましくは5〜25質量%であり、さらに好ましくは5〜15質量%である。かような量の導電性フィラーを基材に添加することにより、導電性層3Aの質量増加を抑制しつつ、基材に十分な導電性を付与することができる。
【0027】
導電性層3A中の導電性フィラーの分散の形態は特に制限はなく、基材である樹脂中に均一に分散されている形態であってもよいし、部分的に局在して分散されていても勿論よい。
【0028】
(第2の導電性層)
双極型電極1の負極活物質層7側に位置する導電性層(第2の導電性層)3Bは、イミド基非含有樹脂を含む基材に導電性フィラーが添加されてなる遮断性樹脂層3aおよび金属層3bを含む。
【0029】
遮断性樹脂層3aにおいて、基材はイミド基非含有樹脂を含む。本形態において、イミド基非含有樹脂は、集電体3へのリチウムイオンの浸透および吸蔵を抑制や、負極電位に対する耐電位性の向上に寄与する。
【0030】
イミド基非含有樹脂としては、特に制限はなく、非架橋性高分子材料や、架橋性高分子材料が適宜採用されうる。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン−1(PB)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド−6(PA−6)、ポリアミド−66(PA−66)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、パーフルオロ(エチレン−プロピレン)共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシルアルカン(PFA)、硬質ポリ塩化ビニル(RPVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、一般ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃用ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS)、変性ポリフェニレンオキシド(m−PPO)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルホン(PES)、およびこれらの樹脂の一部が架橋されてなる架橋性高分子材料、ならびに、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂、紫外線硬化性シリコーン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、不飽和アクリル樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、ポリエーテルアクリレート樹脂、ポリエン−ポリチオール樹脂などが挙げられる。これらのイミド基非含有樹脂のうち、リチウムイオン遮断性をより高める観点から、架橋性高分子材料を用いることが好ましい。なお、これらのイミド基非含有樹脂は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上の共重合体または混合物の形態で使用されても構わない。
【0031】
なお、遮断性樹脂層3aを構成する基材は、上述したイミド基非含有樹脂以外にも、第1の導電性層3Aの欄で説明した従来公知の非導電性高分子材料または導電性高分子材料で例示した樹脂を含んでもよい。また、本形態の効果を著しく阻害しない範囲において、遮断性樹脂層3aはイミド基含有樹脂を含んでもよい。ただし、本形態の作用効果をより一層発揮させるという観点から、遮断性樹脂層3aにおけるイミド基含有樹脂の配合量も規定されうる。すなわち、基材を構成する樹脂100質量%に占めるイミド基含有樹脂の配合量は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である(すなわち、イミド基含有樹脂を含まない)。
【0032】
遮断性樹脂層3aは、上述した樹脂からなる基材に導電性フィラーが添加されてなる構成を有する。この際に用いられる導電性フィラーの具体的な形態については、第1の導電性層で述べた形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0033】
また、第2の導電性層3は、金属層3bを必須に含む。本形態において、金属層3bは、上述の遮断性樹脂層3aと同様に、集電体3へのリチウムイオンの浸透および吸蔵を抑制するのに寄与する。
【0034】
本形態の金属層3bに使用される金属材料は特に制限はなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、クロム、ニッケル、チタン、バナジウム、モリブデン、ニオブ、金、銀、白金、およびこれら金属の合金、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物などが使用されうる。これらの金属材料のうち、導電性が良好な金属材料を用いることが好ましく、具体的には、アルミニウム、ニッケル、銅、鉄、およびチタン、ならびに合金(一例を挙げると、SUS304、SUS316、SUS316Lなどのオーステナイト系ステンレス)、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。さらに、金属材料として、放電時における負極電位の下で溶解しない金属材料、または充電時における負極電位の下でリチウムイオンと合金化しない金属材料を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、銅およびニッケル、ならびにこれら金属の合金、金属リン化合物(例えば、ニッケルリン(NiP))、金属ホウ素化合物(例えば、ニッケルホウ素(NiB))、金属炭化物、金属窒化物(例えば、ニッケル窒化物(NiN))、金属酸化物等が挙げられる。
【0035】
集電体3は、上述した第1の導電性層3A(相対的に正極活物質側に位置する)、および遮断性樹脂層3aおよび金属層3bを少なくとも1層ずつ有する第2の導電性層3B(相対的に負極活物質層側に位置する)の定義を満たす層を必須に含む。この限りにおいては各層がいかなる配置で積層されていてもよいし、また他の層を含む場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。一例として、図2に、本発明の他の一実施形態に係る双極型リチウムイオン二次電池用集電体を用いた、リチウムイオン二次電池用双極型電極の全体構造を模式的に表した断面図を示す。図2の形態では、第2の導電性3Bにおいて、遮断性樹脂層3aが金属層3bに対して相対的に正極活物質層側に位置している点で図1の形態と異なるが、図2の形態でも図1の形態と同様の効果を発揮することができる。すなわち、本形態の集電体3は、第2の導電性層3Bにおける遮断性樹脂層3aと金属層3bとの位置関係によらず、十分なリチウムイオン遮断性を発揮することができる。
【0036】
また、本形態の集電体は、上述した層のほかに、必要に応じてその他の層を含む積層体であってもよい。例えば、その他の層としては、金属溶出防止層または接着層などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。図3に、本発明の他の一実施形態に係る、金属溶出防止層を有する双極型リチウムイオン二次電池用集電体を用いた、リチウムイオン二次電池用双極型電極の全体構造を模式的に表した断面図を示す。図3によると、第2の導電性層3Bにおいて、銅からなる金属層3bの第1の導電性層3Aと対向する側の表面(金属層3bの正極活物質層5側の表面)に、クロムからなる金属溶出防止層3cが設けられている。当該金属溶出防止層3cは、極性基であるイミド基を含有する第1の導電性層3Aと金属層3bとが接する場合に生じうる、エレクトロマイグレーションまたはイオンマイグレーションによる金属層3bの溶出を防止する機能を有する。
【0037】
金属溶出防止層3cに使用される金属材料は特に制限はないが、例えば、クロム、ニッケル、コバルト、鉄、パラジウム、白金、およびこれらの合金(例えば、ニッケル−クロム合金)や、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物などが挙げられる。特に、これらの金属溶出防止層3cは、金属層3bが銅またはアルミニウムを含む場合における金属溶出を防止するのに効果的である。
【0038】
なお、本形態の集電体3は、1つの層に他の層を順次積層して製造してもよいし、2つの層を別々に作製した後、それらの層を接着することによって製造してもよい。この際の、各層の接着方法は特に制限はない。例えば、樹脂を含む2つの層同士を接着する場合には、これら層を熱融着することによって接着することができる。また、樹脂を含む層と金属層3bまたは金属溶出防止層3cとを接着する方法としては、樹脂を含む層に金属蒸着(メッキ、スパッタ)する方法、金属箔上に樹脂を融着する方法などが挙げられる。さらに、隣接する層の境界面での接触抵抗を低減させたり、接着面の剥離を防いだりするという観点から、2つの層は接着層を介して接着されてもよい。かような接着層に使用される材料としては、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタンなどを含む金属酸化物系の導電性ペースト;カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイトなどを含むカーボン系の導電性ペーストが好ましく使用される。
【0039】
集電体の厚さは、軽量化により電池の出力密度を高める上では、薄い方が好ましい。双極型二次電池においては、双極型電極の正極活物質層と負極活物質層の間に存在する集電体は積層方向に水平な方向の電気抵抗が高くてもよいため、集電体の厚さを薄くすることが可能である。具体的には、集電体3の厚さの下限値は、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。また、集電体3の厚さの上限値は、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。かような厚さを有することによって、軽量で、かつ、十分な機械的強度を確保することができる。第1の導電性層3Aおよび第2の導電性層3Bのそれぞれの厚さについても特に制限はない。具体的には、第1の導電性層3Aおよび第2の導電性層3Bのそれぞれの厚さの下限値は、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また、第1の導電性層3Aおよび第2の導電性層3Bのそれぞれの厚さの上限値は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。
【0040】
また、第1の導電性層3Aと第2の導電性層3Bとの厚さの比についても特に制限はなく、第1の導電性層/第2の導電性層として、好ましくは1000/1〜1/1000であり、より好ましくは100/1〜1/100であり、さらに好ましくは5/1〜1/15であり、特に好ましくは2/1〜1/5であり、最も好ましくは1/1〜1/4である。かような範囲内の値が選択されると、リチウムイオンや電解質に対する遮断性が十分に発揮され、電池容量の向上にも寄与しうる。特に、第2の導電性層3Bが第1の導電性層3Aよりも厚い形態では、リチウムイオン遮断性がより顕著に発揮され、電池容量の低下を効果的に防ぐことできる。
【0041】
さらに、第2の導電性層3Bにおける金属層3bまたは任意に設けられる金属溶出防止層3cの厚さも特に制限はない。ただし、集電体の軽量化や、短絡時における短絡部位への電流集中を抑制するために集電体の面方向の抵抗を低減させる観点から、薄い方が好ましい。より詳しくは、金属層3bまたは金属溶出防止層3cの厚さは、それぞれ独立して、第1の導電性層3Aよりも薄いことが好ましく、第1の導電性層3Aと金属層3bとの厚さの比が10/1以下であることがより好ましい。具体的には、金属層3bまたは金属溶出防止層3cの厚さは、それぞれ独立して、0.001μm〜1μmであることが好ましく、0.01〜0.1μmであることがより好ましく、0.05μm〜0.1μmであることがさらに好ましい。
【0042】
集電体3の体積抵抗の上限値は、電池性能の観点から、10Ω・cm以下とすることが好ましく、10Ω・cm以下とすることがより好ましい。一方、集電体3の体積抵抗の下限値は、短絡時における短絡部位への電流集中を抑制するという観点から、10−5Ω・cm以上とすることが好ましく、5×10−2Ω・cm以上とすることがより好ましく、10−1Ω・cm以上とすることがさらに好ましい。なお、かような体積抵抗とするには、導電性層を製造する際に基材(樹脂)に添加する導電性フィラーの種類や量、分散形態、金属層や金属溶出防止層に用いる金属材料などを適宜設定すればよい。
【0043】
以下、本形態の集電体3が奏する作用効果について説明する。一般に、双極型電極の負極活物質層側に配置される導電性層の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位は、負極電位に基づく電子の供給によって上昇する。本発明者らは、この上昇後のレベルが電解液におけるリチウムイオンの酸化還元電位を上回ると、電子が移動し、これに伴ってリチウムイオンが樹脂集電体の内部に浸透することを突き止めた。
【0044】
本形態の集電体3によれば、第2の導電性層3Bに含まれる遮断性樹脂層3aの最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位が負極電位によって上昇しても、上昇後のレベルが電解液におけるリチウムイオンの酸化還元電位を上回ることが抑制される。その結果、リチウムイオンの樹脂集電体内部への浸透および吸蔵が防止される(つまり、リチウムイオン遮断性が発揮される)。これに加えて、第2の導電性層3Bに含まれる金属層3bも、リチウムイオン遮断性をより高める機能を有する。よって、第2の導電性層3Bに、遮断性樹脂層3aおよび金属層3bを併用することにより、イミド基含有樹脂を含む樹脂集電体において、十分なリチウムイオン遮断性を確保することが可能となる。
【0045】
また、本形態の集電体3では、リチウムイオンを遮断する機能を有する第2の導電性層3Bとして、金属層3bに加えて遮断性樹脂層3aを併用することにより、面方向の抵抗を抑えることができる。よって、電池が内部短絡した場合であっても電流が短絡部位に流れにくく、電池の発熱を抑えることができる。さらに、本形態の集電体3は、金属層3bおよび遮断性樹脂層3aを併用することにより、負極電位に対する耐電位性にも優れる。
【0046】
[正極活物質層]
正極活物質層5は正極活物質を含む。正極活物質は、放電時にイオンを吸蔵し、充電時にイオンを放出する組成を有する。好ましい一例としては、遷移金属とリチウムとの複合酸化物であるリチウム−遷移金属複合酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoOなどのLi・Co系複合酸化物、LiNiOなどのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMnなどのLi・Mn系複合酸化物、LiFeOなどのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したものなどが使用できる。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル特性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することが可能である。この他、前記正極活物質としては、LiFePOなどの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V、MnO、TiS、MoS、MoOなどの遷移金属酸化物や硫化物;PbO、AgO、NiOOHなど、を用いることもできる。上記正極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0047】
正極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、正極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、正極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、正極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくてもよいことはいうまでもない。かかる正極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径使用できる。なお、正極活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
【0048】
[負極活物質層]
負極活物質層7は負極活物質を含む。負極活物質は、放電時にイオンを放出し、充電時にイオンを吸蔵できる組成を有する。負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されないが、負極活物質の例としては、SiやSnなどの金属、あるいはTiO、Ti、TiO、もしくはSiO、SiO、SnOなどの金属酸化物、Li4/3Ti5/3もしくはLiMnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、Li−Pb系合金、Li−Al系合金、Li、またはグラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、もしくはハードカーボンなどの炭素材料などが好ましく挙げられる。また、負極活物質は、リチウムと合金化する元素を含むことが好ましい。リチウムと合金化する元素を用いることにより、従来の炭素系材料に比べて高いエネルギー密度を有する高容量および優れた出力特性の電池を得ることが可能となる。上記負極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0049】
上記のリチウムと合金化する元素としては、以下に制限されることはないが、具体的には、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等が挙げられる。これらの中でも、容量およびエネルギー密度に優れた電池を構成できる観点から、炭素材料、ならびに/またはSi、Ge、Sn、Pb、Al、In、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を含むことが好ましく、炭素材料、Si、またはSnの元素を含むことが特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
負極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、負極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、負極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、負極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくてもよいことはいうまでもない。かかる負極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径使用できる。なお、負極活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
【0051】
活物質層(5、7)には、必要であれば、その他の物質が含まれてもよい。例えば、導電助剤、バインダ等が含まれうる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
【0052】
導電助剤とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト等のカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)等の種々の炭素繊維、膨張黒鉛などが挙げられる。しかし、導電助剤がこれらに限定されないことはいうまでもない。
【0053】
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PI、PTFE、SBR、合成ゴム系バインダ等が挙げられる。しかし、バインダがこれらに限定されないことはいうまでもない。また、バインダとゲル電解質として用いるマトリックスポリマーとが同じ場合には、バインダを使用する必要はない。
【0054】
活物質層に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。活物質層の厚さについても特に制限はなく、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、活物質層の厚さは、好ましくは10〜100μm程度であり、より好ましくは20〜50μmである。活物質層が10μm程度以上であれば、電池容量が充分に確保されうる。一方、活物質層が100μm程度以下であれば、電極深部(集電体側)にリチウムイオンが拡散しにくくなることに伴う内部抵抗の増大という問題の発生が抑制されうる。
【0055】
集電体表面上への正極活物質層(または負極活物質層)の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にして使用できる。例えば、上記したように、正極活物質(または負極活物質)、ならびに必要であれば、イオン伝導性を高めるための電解質塩、電子伝導性を高めるための導電助剤、およびバインダを、適当な溶剤に分散、溶解などして、正極活物質スラリー(または負極活物質スラリー)を調製する。これを集電体上に塗布、乾燥して溶剤を除去した後、プレスすることによって、正極活物質層(または負極活物質層)が集電体上に形成される。この際、溶剤としては、特に制限されないが、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、シクロヘキサン、ヘキサン、水などが用いられうる。バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を採用する場合には、NMPを溶媒として用いるとよい。
【0056】
上記方法において、正極活物質スラリー(または負極活物質スラリー)を集電体上に塗布・乾燥した後、プレスする。この際、プレス条件を調節することにより、正極活物質層(または負極活物質層)の空隙率が制御されうる。
【0057】
プレス処理の具体的な手段やプレス条件は特に制限されず、プレス処理後の正極活物質層(または負極活物質層)の空隙率が所望の値となるように、適宜調節されうる。プレス処理の具体的な形態としては、例えば、ホットプレス機やカレンダーロールプレス機などが挙げられる。また、プレス条件(温度、圧力など)も特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0058】
本形態の双極型電極1によれば、第2の導電性層3Bに含まれる遮断性樹脂層3aの最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位が負極電位によって上昇しても、上昇後のレベルが電解液におけるリチウムイオンの酸化還元電位を上回ることが抑制される。その結果、リチウムイオンの樹脂集電体内部への浸透および吸蔵が防止される(つまり、リチウムイオン遮断性が発揮される)。これに加えて、第2の導電性層3Bに含まれる金属層3bも、リチウムイオン遮断性をより高める機能を有する。よって、第2の導電性層3Bに、遮断性樹脂層3aおよび金属層3bを併用することにより、イミド基含有樹脂を含む樹脂集電体において、十分なリチウムイオン遮断性を確保することが可能となる。
【0059】
<双極型二次電池>
また、本発明の一形態によると、上述の双極型電極1と電解質層とが積層されてなる発電要素を有する、双極型リチウムイオン二次電池が提供される。図4は、本発明の一実施形態である双極型二次電池の全体構造を模式的に表した断面図である。図4に示す双極型二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
【0060】
図4に示すように、本形態の双極型二次電池10の発電要素21は、集電体11(図1〜3における集電体3)の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23(図1〜3における双極型電極1)を有する。各双極型電極23は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータの面方向中央部に電解質が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。
【0061】
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型二次電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する目的で、単電池層19の外周部にはシール部(絶縁層)31が配置されている。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。
【0062】
さらに、図4に示す双極型二次電池10では、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板25が配置され、これが延長されて電池外装材であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板27が配置され、同様にこれが延長されてラミネートフィルム29から導出している。
【0063】
図4に示す双極型二次電池10においては、通常、各単電池層19の周囲にシール部31が設けられる。このシール部31は、電池内で隣り合う集電体11どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かようなシール部31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型二次電池10が提供されうる。
【0064】
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型二次電池10では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型二次電池10でも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装材であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。以下、本形態の双極型二次電池の主な構成要素について説明する。
【0065】
[電解質層]
電解質層を構成する電解質に特に制限はなく、液体電解質、ならびに高分子ゲル電解質および高分子固体電解質等のポリマー電解質を適宜用いることができる。
【0066】
液体電解質は、溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解したものである。溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピオン酸メチル(MP)、酢酸メチル(MA)、ギ酸メチル(MF)、4−メチルジオキソラン(4MeDOL)、ジオキソラン(DOL)、2−メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびγ−ブチロラクトン(GBL)などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせた混合物として使用してもよい。
【0067】
また、支持塩(リチウム塩)としては、特に制限はないが、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiSbF、LiAlCl、Li10Cl10、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(CSONとも記載)等の有機酸陰イオン塩などが挙げられる。これらの電解質塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0068】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない高分子固体電解質に分類される。ゲル電解質は、リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PEO)、ポリプロピレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸エステル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVdF−HFP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などが挙げられる。また、上記のポリマー等の混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体なども使用できる。これらのうち、PEO、PPOおよびそれらの共重合体、PVdF、PVdF−HFPを用いることが望ましい。かようなマトリックスポリマーには、リチウム塩等の電解質塩がよく溶解しうる。
【0069】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィンやポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素、ガラス繊維などからなる微多孔膜が挙げられる。
【0070】
高分子固体電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が高分子固体電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0071】
高分子ゲル電解質や高分子固体電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発揮しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合などの重合処理を施せばよい。なお、上記電解質は、電極の活物質層中に含まれていてもよい。
【0072】
[シール部]
シール部(絶縁層)は、集電体同士の接触や単電池層の端部における短絡を防止する機能を有する。シール部を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよい。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム(エチレン−プロピレン−ジエンゴム:EPDM)、等が用いられうる。また、イソシアネート系接着剤や、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などを用いても良く、ホットメルト接着剤(ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂)などを用いても良い。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性等の観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層の構成材料として好ましく用いられ、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂を用いることが、好ましい。
【0073】
[電池外装材]
電池外装材としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、ポリプロピレン、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。本形態では、高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用等の大型機器用電池に好適に利用することができるラミネートフィルムが望ましい。
【0074】
本形態の双極型二次電池10によれば、第2の導電性層3Bに含まれる遮断性樹脂層3aの最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位が負極電位によって上昇しても、上昇後のレベルが電解液におけるリチウムイオンの酸化還元電位を上回ることが抑制される。その結果、リチウムイオンの樹脂集電体内部への浸透および吸蔵が防止される(つまり、リチウムイオン遮断性が発揮される)。これに加えて、第2の導電性層3Bに含まれる金属層3bも、リチウムイオン遮断性をより高める機能を有する。よって、樹脂集電体内部へのリチウムイオンの浸透・吸蔵が十分に防止され、電池容量の低下が抑制されうる。
【実施例】
【0075】
本発明の作用効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0076】
[実施例1]
<集電体の作製>
第1の導電性層として、ポリイミド(PI)100質量部に対してケッチェンブラック10質量部が混合されてなる導電性樹脂フィルム(膜厚:50μm)を作製し、第1の導電性層とした。当該第1の導電性層の一方の面に、スパッタにより銅を20nmの厚さで堆積させ、第1の導電性層−金属層の積層体を形成した。一方、ポリプロピレン(PP)100質量部にケッチェンブラック10質量部が混合されてなる導電性樹脂フィルム(膜厚:100μm)を作製し、遮断性樹脂層とした。その後、上記第1の導電性層−金属層の積層体の金属層側の面と、上記遮断性樹脂層とを重ね合わせ、160℃にて10分間熱融着することにより、図1のような3層構造を有する双極型リチウムイオン二次電池用集電体を作製した。
【0077】
<双極型電極の作製>
負極活物質としてグラファイト90質量部、バインダとしてPVDF10質量部、およびスラリー粘度調整溶媒としてNMP適量を混合し、負極活物質スラリーを調製した。一方、正極活物質としてLiNiO 85質量部、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)10質量部、およびスラリー粘度調整溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)適量を混合し、正極活物質スラリーを調製した。
【0078】
上記で調製した負極活物質スラリーを、上記で作製した集電体の第2の導電性層側の表面(すなわち、遮断性樹脂層の表面)に塗布し、乾燥させて負極活物質層(厚さ:30μm)を形成した。同様に、上記で調製した正極活物質スラリーを、上記で作製した集電体の第1の導電性層側の表面に塗布し、乾燥させて正極活物質層(厚さ:30μm)を形成した。この際、負極活物質層の面積と、正極活物質層の面積とを同じとし、負極活物質層と正極活物質層との集電体への投影図が一致するように調整して、負極活物質層および正極活物質層を形成した。その後、集電体の周縁部20mmの負極活物質層および正極活物質層を剥がし取ることにより集電体の表面を露出させ、双極型電極を完成させた。
【0079】
<双極型二次電池の作製>
電解液としてプロピレンカーボネート・エチレンカーボネートの等体積混合液にリチウム塩であるLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させたものを準備した。
【0080】
集電体の第1の導電性層側の表面の露出部(周縁部)に幅12mmのシール材を配置した。この操作を繰り返して、6つの双極型電極がゲル電解質層を介して積層されてなる積層体を得た。次いで、得られた積層体に対して積層方向にホットプレス処理(0.2MPa、80℃、5秒間)を施し、シール部を融着させることで隣接する双極型電極間をシールして、発電要素を完成させた。さらに、得られた発電要素の投影面全体を覆うことができるアルミニウム板の一部が発電要素の投影面外部まで伸びている強電端子を用いて発電要素を挟持した。そして、これらをアルミラミネートフィルムで覆い、3辺をラミネートして袋状にした。残りの1辺から上記電解液を注入し、当該1辺を真空下でラミネートした。さらにこれを積層方向にホットプレス処理(面圧1kg/cm、150℃、1時間)を施し、未硬化のシール部を硬化させて、双極型二次電池を完成させた。
【0081】
[実施例2]
集電体の作製において、第1の導電性層の一方の面に、スパッタにより銅を20nmの厚さで堆積させた後、この堆積させた銅を150℃で強熱して酸化銅とすることにより、第1の導電性層−金属層の積層体を形成した。(すなわち、金属層が酸化銅よりなる集電体である。)これ以外は、上述した実施例1と同様の手法により、双極型二次電池を作製した。
【0082】
[実施例3]
第1の導電性層の一方の面に、スパッタによりクロムを50nmの厚さで堆積させて金属溶出防止層を形成した。その後、同様にスパッタにより銅を20nmの厚さで堆積させることにより第1の導電性層−金属溶出防止層−金属層の積層体を形成した。当該第1の導電性層−金属層の積層体の金属層側の面と、遮断性樹脂層とを重ね合わせ、160℃にて10分間熱融着することにより、双極型リチウムイオン二次電池用集電体を作製した。(すなわち、金属層の第1の導電性層と対向する側の表面に金属溶出防止層を有する集電体である。)これ以外は、上述した実施例1と同様の手法により、双極型二次電池を作製した。
【0083】
[比較例1]
第1の導電性層の一方の面に、スパッタにより銅を20nmの厚さで堆積させ、第1の導電性層−金属層の積層体を双極型リチウムイオン二次電池用集電体として使用した(すなわち、遮断性樹脂層を有さない集電体である)。これ以外は、上述した実施例1と同様の手法により、双極型二次電池を作製した。
【0084】
[比較例2]
第1の導電性層と、遮断性樹脂層とを重ね合わせ、160℃にて10分間熱融着することにより、双極型リチウムイオン二次電池用集電体を作製した(すなわち、金属層を有さない集電体である)。これ以外は、上述した実施例1と同様の手法により、双極型二次電池を作製した。
【0085】
[比較例3]
双極型リチウムイオン二次電池用集電体として、ポリイミド(PI)100質量部に対してケッチェンブラック10質量部が混合されてなる導電性樹脂フィルム(膜厚:50μm)を用いた(すなわち、第1の導電性層のみからなる集電体である)。これ以外は、上述した実施例1と同様の手法により、双極型二次電池を作製した。
【0086】
[比較例4]
双極型リチウムイオン二次電池用集電体として、ポリプロピレン(PP)100質量部にケッチェンブラック10質量部が混合されてなる導電性樹脂フィルム(膜厚:100μm)を用いた(すなわち、遮断性樹脂層のみからなる集電体である)。これ以外は、上述した実施例1と同様の手法により、双極型二次電池を作製した。
【0087】
<サイクル試験>
実施例1および比較例1で作製した双極型二次電池について、45℃の雰囲気下、80mAの電流で各電池の満充電まで定電流(CC)充電し、その後定電圧(CV)で充電し、合計で10時間充電した。その後、定電流放電し、これを1サイクルとして20サイクルのサイクル試験を行った。そして、20サイクル後の放電容量維持率(20サイクル後の放電容量/初期放電容量×100[%])を求めた。結果を下記表1に示す。
【0088】
<耐電位試験>
実施例1〜3、ならびに比較例1〜4で作製した双極型二次電池について、負極電位における耐電位試験を行った。具体的には、5mVの一定電圧において150時間保持した後における電流密度を測定した。そして、実施例1における電流密度を1とした場合の各例の電流密度の相対値を算出した。なお、電流密度の値が小さいほど、耐電位性に優れることを意味する。結果を下記表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1のサイクル試験における容量維持率の結果より、第1の導電性層であるPI層の負極活物質層側に金属層および遮断性樹脂層を有する実施例1は、PI層の負極活物質層側に金属層のみを有する比較例1と比べて、容量維持率が有意に高いことが示された。この効果が発現されるメカニズムは、以下のように推定された。すなわち、PI層の負極活物質層側に遮断性樹脂層としてのPP層を設けることにより、当該PP層の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位が、負極電位によって上昇しても上昇後のレベルが電解液におけるリチウムイオンの酸化還元電位を上回ることがない。その結果、リチウムイオンの集電体内部への浸透および吸蔵が防止され、電池容量の低下が抑制されると考えられる。
【0091】
また、表1の耐電位試験における電流密度の結果より、PI層の負極活物質層側に金属層および遮断性樹脂層を設けることにより、優れた耐電位性能が得られることが示された。
【符号の説明】
【0092】
1、23 双極型電極、
3、11 集電体、
3A 第1の導電性層、
3B 第2の導電性層、
3a 遮断性樹脂層、
3b 金属層、
3c 金属溶出防止層、
5、13 正極活物質層、
7、15 負極活物質層、
10 双極型二次電池、
11a 正極側の最外層集電体、
11b 負極側の最外層集電体、
17 電解質層、
19 単電池層、
21 発電要素、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29 ラミネートフィルム、
31 シール部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミド基含有樹脂を含む基材に導電性フィラーが添加されてなる第1の導電性層と、
リチウムイオンを遮断する機能を有する第2の導電性層と、を有し、
前記第2の導電性層は、イミド基非含有樹脂を含む基材に導電性フィラーが添加されてなる遮断性樹脂層および金属層を含み、
前記第1の導電性層が第2の導電性層に対して正極活物質層側に位置するように用いられる、双極型リチウムイオン二次電池用集電体。
【請求項2】
前記金属層は、アルミニウム、ニッケル、銅、鉄、およびチタン、ならびにこれらの合金、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の双極型リチウムイオン二次電池用集電体。
【請求項3】
前記金属層は、前記第1の導電性層よりも薄い、請求項1または2に記載の双極型リチウムイオン二次電池用集電体。
【請求項4】
前記第2の導電性層は、金属溶出防止層をさらに含み、
前記金属溶出防止層は、前記金属層の前記第1の導電性層と対向する側の表面に位置する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の双極型リチウムイオン二次電池用集電体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の集電体と、
前記集電体の前記第1の導電性層側の面に形成された正極活物質層と、
前記集電体の前記第2の導電性層側の面に形成された負極活物質層と、
を有する、双極型リチウムイオン二次電池用電極。
【請求項6】
請求項5に記載の電極と電解質層とが積層されてなる発電要素を有する、双極型リチウムイオン二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−26192(P2013−26192A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163258(P2011−163258)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】