説明

反射シートの製造方法

【課題】優れた反射性能を有する反射シートを簡易に製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明の反射シートの製造方法は、ポリプロピレン樹脂(A)及びポリプロピレン樹脂(A)の延伸可能な温度でポリプロピレン樹脂(A)と非相溶である樹脂(B)を含む樹脂組成物(a)、並びにポリプロピレン樹脂(C)を含む樹脂組成物(b)を共押出しする工程(i)と、工程(i)によって得られたシートを2軸延伸して開孔させる工程(ii)と、工程(ii)によって得られたシートの縦方向と横方向の少なくとも一方向に10%以上の熱収縮を行わせる工程と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライトなどに用いられる反射材に適した、樹脂組成物からなり内部に孔を含む反射シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶はそれ自身が発光しないため、液晶を表示装置として使用するためには光源が必要となる。液晶表示装置は、液晶、配向板、電極、偏光板などからなる液晶パネル、及び該パネルに光を照射する装置、一般にはバックライトと呼ばれる照明装置などからなり、ランプの光を画面に向けて効率よく反射させる等のために反射シートを用いている。
【0003】
液晶表示装置のバックライトは、一般にエッジライト型バックライトと直下型バックライトの2種類に大きく分けられる。エッジライト型バックライトは、携帯電話や携帯情報端末などに用いられる小型の液晶表示装置に使用されることが多いバックライトである。エッジライト型バックライトは、発光ダイオードや冷陰極線管などの光源と、アクリル樹脂などの透明な樹脂を楔形に成形した導光板と、液晶パネルとは反対側の導光板の側面に配置される反射材とから構成されることが多い。エッジライト型バックライトでは、導光板の端面に配置された発光ダイオードや冷陰極線管などの光源からの光が導光板の端面から入射される。導光板に入射した光は導光板を通過する過程で導光板の側面から導光板の外に出る。導光板の液晶パネル側の側面から外に出た光は液晶パネルを照明するが、導光板の液晶パネル側とは反対側の側面から外に出た光は液晶パネルを照明することができない。このため、導光板の液晶パネル側とは反対側の側面には光を反射する反射シートを設置して、導光板の側面から外に出る光を液晶パネル側に反射させて、光源の光を有効に液晶パネルに照射させることが通常行われている。
【0004】
一方、直下型バックライトは、液晶パネルの表示面とは反対側に冷陰極線管などの光源ランプを複数本並べて設置したバックライトであり、大型テレビジョンなどに使用される大画面の液晶表示装置に用いられる。大画面の液晶表示装置では、エッジライト型バックライトでは輝度を満足する水準にまで上げようとすると光源ランプの明るさに限界があるため、光源ランプを複数使用する直下型バックライトが通常使用されている。光源ランプの光は液晶側とは反対側にも照射されるため、光源ランプの液晶側とは反対側に反射シートを設けることによって光源の光を有効に液晶パネルに照射させることが、直下型バックライトでは一般に行われている。
【0005】
最近ではテレビジョンだけでなくパソコンでも動画を表示させることが多くなり、液晶表示装置はより明るいものが求められている。このため、液晶表示装置に使用されるバックライトでは、反射率が90%以上の反射シートが使用されることが多い。液晶表示装置をより明るくするために、冷陰極線管などの光源の出力は増加する傾向にあり、そのために使用中のバックライトの温度はより高温になる傾向が見られる。このため反射シートに使用する樹脂には、液晶物質の耐熱温度に近い概ね80℃の耐熱性が必要となっている。このため、液晶表示装置のバックライトに使用される反射シートには、シートに成形しやすく耐熱性にも優れた樹脂組成物の反射シートが求められている。さらに、大型テレビジョンなどの大画面の液晶表示装置に使用されるバックライトでは、大きい面積の反射シートが長期間にわたって強い光に照らされることになる。このため反射シートには、光源の光による変色や変質が少ないことや、温度上昇や吸湿による反りなどの変形が長期間にわたって起こりにくい反射シートが求められている。
【0006】
内部に孔や気泡を含む樹脂のシートは、光を照射すると光が反射されて白く見えたり、真珠様の光沢を示したりすることはよく知られている。内部に孔や気泡を含む樹脂が光をよく反射する理由は次のように考えられる。樹脂の屈折率は概ね1.4〜1.6で、空気の屈折率は約1であるため、樹脂と空気の屈折率の差によって生じる光の反射率は1回の反射あたりでは約4%にすぎない。しかし内部に多数の孔や気泡を含む樹脂のシートでは、内部に樹脂と空気の界面が多数存在するため、シートに照射された光はシートの内部で多数回反射される。この結果、内部に多数の孔や気泡を含む樹脂のシートでは、照射された光はシートの内部で大部分が反射され、その結果、シート全体としての反射率が大きくなると考えられる。
【0007】
また、樹脂の内部に含まれる多数の孔や気泡は、各々の形状や大きさが異なる場合が多いため、孔や気泡の界面で反射される光は一つの方向にまとまって反射されることは少なく、反射する光の方向は各々の孔や気泡ごとに異なる。このため、内部に多数の孔や気泡を含む樹脂のシートに光を照射した場合の反射は、入射した光があらゆる方向に反射する拡散反射となりやすい。内部に孔や気泡を含む樹脂組成物のシートとしては、(I)無機物の粉末を添加した樹脂を延伸することによって、樹脂と無機物の粉末との界面を開裂させて、樹脂の内部に孔を形成させたものや、(II)樹脂に加圧した不活性ガスを溶解させた後、減圧して発泡させ、樹脂の内部に気泡を形成させたものが知られている。
【0008】
(I)の樹脂シートの製造方法として、例えば、特許文献1には、微粒子炭酸カルシウムを5重量%〜30重量%含有させたポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押し出し2軸延伸して、ボイド率が7%〜30%である白色ポリエチレンテレフタレートのシートとする方法が開示されている。
【0009】
(II)の樹脂シートの製造方法として、例えば、特許文献2には、熱可塑性ポリエステルに炭酸ガスなどの不活性ガスを加圧雰囲気下で溶解させた後、常圧下で加熱して発泡させ、内部に微細気泡を含む光反射シートを得る方法が開示されている。この方法は、樹脂のシートに不活性ガスを溶解させるために、加圧した不活性ガス雰囲気中に樹脂のシートを一定時間置く必要があることや、不活性ガスが溶解した樹脂のシートを取り出して常圧に戻した後に加熱して発泡させる工程が必要であるため、その製造工程が大がかりで煩雑な工程となりやすい。
【0010】
拡散反射に対して、反射面に対して光が入射する角度と反射する角度とが対称である反射は正反射とよばれ、その反射面は鏡面状を呈する。このようなものとしては、(III)ポリエステル樹脂のシートの表面を蒸着などの方法によって銀などの反射率が大きい物質で被覆する方法が知られている。
【0011】
(III)の反射シートは、樹脂のシートの表面を被覆する銀などの金属粒子が、使用中の光源ランプの熱によって凝集したり、大気中に微量含まれる酸性のガス成分によって酸化されやすく、銀などの金属の変色や反射率の低下が起こることが知られている。このため、製造方法においてシートの表面を被覆した銀などの金属粒子の上を、大気との接触を防ぐために樹脂で被覆することが行われている。この場合、樹脂のシートの表面に薄く金属や樹脂を複数回塗布する工程が必要となるため、その製造工程は大がかりで煩雑な工程となりやすい。
【0012】
また、特許文献3には、ポリプロピレン樹脂50体積%以上80体積%以下と、ポリプロピレン樹脂の延伸が可能な温度でポリプロピレン樹脂と相分離する樹脂20体積%以上50体積%以下とを含む樹脂組成物からなる反射シートとその製造方法が開示されている。
【特許文献1】特公平6−89160号公報
【特許文献2】特許第2925745号公報
【特許文献3】国際公開第2005/096036号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、優れた反射性能を有する反射シートを簡易に製造する方法を提供することを目的とする。なお、厚みが200μm以下のものをフィルムといい、厚みが200μmを超えるものをシートというように用語を区別して用いるケースがあるが、本願明細書においては、前記のフィルム及びシートの両者を共にシートという。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の反射シートの製造方法は、ポリプロピレン樹脂(A)及びポリプロピレン樹脂(A)の延伸可能な温度でポリプロピレン樹脂(A)と非相溶である樹脂(B)を含む樹脂組成物(a)、並びにポリプロピレン樹脂(C)を含む樹脂組成物(b)を共押出しする工程(i)と、工程(i)によって得られたシートを2軸延伸させる工程(ii)と、工程(ii)によって得られたシートを縦方向と横方向の少なくとも一方向に10%以上熱収縮させる工程(iii)と、を具備することを特徴とする。
【0015】
本発明の反射シートの製造方法においては、前記工程(iii)において、前記工程(ii)によって得られたシートの少なくとも一方向に20%以上の熱収縮を行わせることが好ましい。
【0016】
本発明の反射シートの製造方法においては、前記工程(i)において、2つの表層部間に内層部を有する3層構造のシートを共押出しで得る際に、前記表層部の原料として樹脂組成物(b)を用い、前記内層部の原料として樹脂組成物(a)を用いることが好ましい。
【0017】
本発明の反射シートの製造方法においては、前記樹脂組成物(a)の50体積%以上、80体積%以下がポリプロピレン樹脂(A)であることが好ましい。
【0018】
本発明の反射シートの製造方法においては、前記樹脂(B)としてポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
本発明の反射シートの製造方法においては、前記工程(i)によって得られるシートの表層部の厚みを10μm〜400μmとし、内層部の厚みを50μm〜4000μmとすることが好ましい。
【0020】
本発明の反射シートの製造方法においては、前記ポリプロピレン樹脂(C)に対して0.1重量%〜70重量%の無機粉末を含有する樹脂組成物(b)を用いることが好ましい。この場合において、前記無機粉末が、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、三酸化タングステンチタン、チタン酸ストロンチウム、及びこれらの混合体からなる群より選ばれたものであることが好ましい。
【0021】
本発明の反射シートの製造方法においては、前記2軸延伸の延伸倍率が縦方向及び横方向で各々1.5倍以上であり、面積延伸倍率が3倍以上50倍以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の反射シートの製造方法においては、前記2軸延伸が縦横逐次2軸延伸であって、縦方向(MD)及び横方向(TD)の延伸倍率の関係がMD≦TDであり、横延伸したのち、横延伸温度近傍の温度で横延伸倍率に対して横方向にシートを10%以上熱収縮させるを行う緩和熱処理を施すことが好ましい。この場合において、前記横延伸したのち、前記横延伸温度近傍の温度で横延伸倍率に対して横方向に20%以上の熱収縮を行う緩和熱処理を施すことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の反射シートの製造方法により得られる反射シートは、坪量、密度が同程度の従来の反射シートに比べて、より高い反射率を示すとともに、入射方向による反射率均一性を示す。すなわち、本発明によれば、非常に高い反射率、入射方向による反射率均一性、軽量性を兼ね備えた反射シートを簡易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る反射シートの製造方法について詳細に説明する。
本実施の形態の反射シートは、異なる樹脂組成物からなる少なくとも2層の積層シートである。反射シートの光源側に用いられる層を表層部とし、光源と反対側に用いられる層を内層部とする。例えば、表層部/内層部/表層部の3層構造を有する反射シートは、使用時に裏、表の区別なく使用可能なシートを意味する。
【0025】
前記反射シート内層部を構成する樹脂組成物(a)は、ポリプロピレン樹脂(A)と、ポリプロピレン樹脂の延伸可能な温度でポリプロピレン樹脂(A)と非相溶である樹脂(B)の少なくとも一種とを含む。
【0026】
ポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレンの単独重合体やプロピレンと共重合が可能なエチレンなどのモノマーとの共重合体などからなるポリプロピレン樹脂をいう。ポリプロピレン樹脂(A)としては、JISK7210の方法で温度230℃、荷重21.2Nで、測定されるメルトフローレートが0.1g/分〜10g/分であるポリプロピレン樹脂であることが好ましい。メルトフローレートについては、ポリプロピレン樹脂を溶融成形するときの押出機の負荷及び樹脂組成物の熱による変色の観点から、0.1g/分以上であることが好ましく、樹脂の粘度及び成形性の観点から、10g/分以下であることが好ましい。
【0027】
ポリプロピレン樹脂(A)の延伸が可能な温度でポリプロピレン樹脂と非相溶である樹脂(B)(以下、単に「樹脂(B)」ともいう)としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂などのポリシクロオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが用いられる。これらの樹脂のなかでポリプロピレン樹脂の延伸が可能な温度における弾性率が、ポリプロピレン樹脂より高い樹脂がより好ましく、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂などのポリシクロオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の中から少なくとも1種類の樹脂をポリプロピレン樹脂と溶融混合して用いることが好ましく、ポリカーボネート樹脂を用いることが最も好ましい。
【0028】
用いる樹脂組成物全体の50体積%以上80体積%以下、より好ましくは70%以下が、ポリプロピレン樹脂(A)であることが好ましい。樹脂(B)は、延伸張力を小さくするという観点から、樹脂組成物全体の50体積%以下であることが好ましい。シートの孔数及び孔体積を多くして95%以上の高い平均全反射率を得るという観点から、樹脂(B)は樹脂組成物全体の20体積%以上が好ましく、好ましくは30体積%以上である。樹脂組成物を処方する場合、重量%から体積%への換算は、各樹脂の基本特性の密度から計算出来る。例えばポリプロピレン樹脂の密度は0.89g/cm〜0.91g/cm、ポリカーボネート樹脂の密度は1.2g/cmであり、これらの値から容易に換算出来る。
【0029】
内層部の樹脂組成物に、開孔核剤、紫外線吸収剤として、その他必要に応じて無機粉末を添加して用いても良い。無機粉末としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化セリウム、三酸化タングステンチタン、チタン酸ストロンチウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛、雲母チタン、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、カオリンなどを用いることができる。
【0030】
樹脂(B)のとして、ポリプロピレン樹脂の延伸が可能な温度における弾性率がポリプロピレン樹脂より大きい樹脂が好ましく用いられる。その理由は次のように考えられる。本発明では、樹脂組成物のシートをポリプロピレン樹脂の延伸が可能な温度で延伸して、樹脂組成物中の樹脂(B)相とポリプロピレン樹脂(A)相との界面を開裂させることによってシートの内部に孔を形成させる。シートを延伸する温度で、樹脂(B)の弾性率がポリプロピレン樹脂(A)の弾性率より大きいと、樹脂(B)相の延伸力による変形量はポリプロピレン樹脂(A)相の変形量よりも小さいため、樹脂(B)相とポリプロピレン樹脂(A)相との界面がより開裂しやすくなると考えられる。ここで、各樹脂の弾性率は150℃においてJISK71612記載の引張特性試験により確認することができる。なお、150℃という温度は、ポリプロピレン樹脂(A)の代表的な延伸可能温度であり、本発明においてはこの温度で延伸する必要は必ずしも無く、樹脂(A)、樹脂(B)の配合にあわせて延伸温度を選ぶことができる。
【0031】
樹脂(B)の好ましい例であるポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート、直鎖状ポリカーボネート、分岐鎖状ポリカーボネートの中から単独で、又は組み合わせて使用することができる。ポリカーボネート樹脂は、JISK7210の方法で温度300℃、荷重11.8Nで測定されたメルトフローレートが0.1g/10分〜50g/10分であるポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリプロピレン樹脂との混合を均一にするという観点から、ポリカーボネート樹脂のメルトフローレートは0.1g/10分以上が好ましく、延伸時に孔を形成しやすいという観点から、メルトフローレートは50g/10分以下が好ましい。
【0032】
ポリカーボネート樹脂以外の樹脂(B)の例として、ポリアミド樹脂が挙げられる。ポリアミド樹脂は、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミドなどのなかから単独で、又は組み合わせて使用することができる。ポリアミド樹脂は、押し出し機で押し出すときの分散性の観点から、融点が300で以下であるポリアミド樹脂が好ましい。
【0033】
本発明では、ポリプロピレン樹脂(A)と樹脂(B)に加えて、ポリスチレン樹脂を使用することができる。ポリスチレン樹脂として、JISK7210の方法で温度200℃、荷重49Nで測定されるメルトフローレートが0.1g/10分〜20g/10分であるポリスチレン樹脂が好ましい。ポリスチレン樹脂を樹脂組成物全体の5体積%以下添加することにより、樹脂組成物全体の透明性を大きく損なうことなく、樹脂組成物全体を溶融混合するための押出機の回転トルクを軽減したり、シートの内部に孔を生成させるためにシートを延伸する時の張力を低下させるなど、反射シートを製造する工程や設備をより簡潔なものにする効果を与える。押出機の回転トルクの軽減やシートの延伸張力が低下する効果を十分に得る観点から、且つ光学的に均一なシートを得るという観点から、ポリスチレン樹脂の樹脂組成物全体に対する比率は5体積%以下が好ましい。
【0034】
なお、樹脂組成物には必要に応じて紫外線吸収剤や光安定剤や熱安定剤や造核剤や帯電防止剤などを添加してもよい。
【0035】
樹脂組成物(b)は、ポリプロピレン樹脂(C)を少なくとも含む。ポリプロピレン樹脂(C)は、内層部のポリプロピレン樹脂(A)と同じであってもよく、また、異なった種類のポリプロピレン樹脂を用いても良い。ポリプロピレン樹脂(C)において好ましいものの種類としては、ポリプロピレン樹脂(A)と同じものが挙げられる。
【0036】
ポリプロピレン樹脂(C)に対し、反射率の異方性の改善、反射率の向上、耐光性の向上などを目的として、無機粉末を添加した樹脂組成物(b)を用いることが好ましい。用いられる無機粉末としては、光を散乱させるため、それ自体を核として気泡を形成しうるもの、樹脂との屈折率差を有するものが好ましく、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化セリウム、三酸化タングステンチタン、チタン酸ストロンチウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛、雲母チタン、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、カオリンなどが挙げられる。これらの中で、400nm〜700nm可視光領域において吸収の少ない硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、三酸化タングステンチタン、及びチタン酸ストロンチウムがより好ましく、特に好ましくは、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンである。さらに、樹脂(A)、樹脂(B)、樹脂(C)の劣化を抑制するために、紫外線の吸収能を有する酸化亜鉛、酸化チタンを含有させることがもっとも好ましい。これらの無機粉末は、1種類で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
【0037】
無機粉末には必要に応じて表面改質をしてもよい。特に酸化亜鉛、酸化チタンにおいては、一般的にアルミナ、シリカなどであらかじめ表面改質がされており、これらを用いてもよく、別途ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛などの表面改質剤を添加しても良い。さらに、これらの無機粉末以外に、必要に応じて紫外線吸収剤や光安定剤や熱安定剤や造核剤や帯電防止剤などを添加してもよい。
【0038】
用いられる無機粉末の粒径としては、平均粒径で、10nm以上、5000nm以下が好ましい。10nm以上の平均粒径があれば、反射率の向上、反射率の入射方向による異方性改善効果が得られ、5000nm以下であれば、十分な成形性、形状保持性を担保することができる。より好ましくは10nm以上、3000nm以下であり、特に好ましくは15nm以上、2000nm以下である。
【0039】
無機粉末は、2軸延伸開孔、熱収縮処理を施して得られる反射シートの表層部に0.05g/m以上、20g/m以下の無機粉末が含有するように表層部原料に添加することが好ましい。得られた反射シートに無機粉末が0.05g/m以上含有されていれば、反射率の向上、反射率の入射方向による異方性改善効果が得られ、20g/m以下であれば、十分な軽量性を有した反射シートを得ることができる。また、より好ましくは、0.1g/m以上、10g/m以下、特に好ましくは0.2g/m以上、8g/m以下である。
【0040】
樹脂組成物(b)に対する無機粉末の濃度が、0.1重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。0.1重量%以上の濃度とすることで、得られた反射シートの表層部を厚くすることなく、十分な量の無機粉末を含有させることができ、70重量%以下であれば、製造時における共押出し成形性、延伸性も良好であり、また、作製された反射シートの形状保持性を担保することができる。より好ましくは、0.3重量%以上、60重量%以下であり、特に好ましくは0.5重量%以上、50重量%以下である。
【0041】
上述した表層部、内層部各原料を共押出しする工程において、押出し機で溶融混合された原料樹脂組成物を押出し機の先端に取り付けたダイからシート状に押出すが、押出される樹脂組成物の量を安定させるために押出し機とダイとの間にギヤポンプを使用しても良い。内層部の押出しには樹脂の混練性、分散性などから2軸押出機が好ましい。内層部用に主押出機、表層部用に副押出機を用いた共押出法が採用することができる。押出しダイには、Tダイやフィッシュテールダイなどのシート成形の積層ダイが使用される。ここで積層ダイは、フィードブロックダイ、マルチマニホールドダイなどの一般的な積層ダイを使用することができる。ダイの中で内層部と表層部とが積層されて押出される。副押出機は単軸押出機、2軸押出機のいずれでもいいが、保護層の組成、押出適性などを考慮して選ばれる。ここで、ダイの温度を適切に調整することによって、内層部のポリプロピレン樹脂(A)の海に樹脂(B)が島状に分散させた海島構造をとらせることができる。
【0042】
共押出しをする際、表層部/内層部/表層部の3層以上で共押出しするとすることが好ましい。3層以上とすることで、より、そりがなく、ハンドリング性が良好なシートを作製することができる。ここで、各表層部の組成は同じであっても、異なっていてもよい。
【0043】
共押出しする際の表層部の厚みは10μm以上、400μm以下が好ましい。ここで、表層部の厚みは、表層部/内層部/表層部の3層の場合、片側の厚みである。10μm以上であれば内層部の厚みにかかわらず安定に共押出しすることが可能である。400μm以下であれば軽量性を有する反射シートを得ることができる。より好ましくは10μm以上、300μm以下であり、特に好ましくは20μm以上、300μm以下である。また、3層の場合には必要に応じて各表層部の厚みは同じであっても、異なっていてもよい。
【0044】
共押出しする際の内層部の厚みは50μm以上、4000μm以下が好ましい。50μm以上であれば、その後の2軸延伸により高い反射性能を有する反射シートを作製できる。4000μm以下であれば、その後の2軸延伸時にシートの均一な温度管理、延伸性を担保できる。より好ましくは100μm以上、3000μm以下であり、特に好ましくは100μm以上、2500μm以下である。
【0045】
上述した共押出し後のシートを2軸延伸して開孔させる際、ダイから押出されたシートを冷却ローラーなどで冷却固化させた後、延伸機で延伸することが好ましい。延伸工程では、シートの内層部に孔を生成させるために、できるだけ低温で延伸を行うことが好ましい。高い温度で延伸を行う場合には、低温で延伸する場合と比べて内層部シート内部に孔の生成が起こりにくい傾向がみられるので、延伸倍率を低温で延伸する場合より大きくすることが好ましい。また、表層部は開孔させる必要はなく、内層部を開孔できればよい。
【0046】
2軸延伸としては、通常の2軸延伸法が採用出来る。即ち、縦横逐次2軸延伸、横縦逐次2軸延伸、同時2軸延伸、さらにこれらの2軸延伸の後に、縦横いずれかあるいは両方の方向に再延伸することも出来る。好ましくは、縦横逐次2軸延伸、あるいは同時2軸延伸である。縦横逐次2軸延伸は、速度差をつけた複数のローラーの間を、シートを通過させてMD方向にシートを延伸する縦延伸工程と、クリップテンターなどを使用してシートのTD方向に延伸する横延伸工程とからなる。また同時2軸延伸は、パンタグラフ延伸機などを使用してMD方向とTD方向を同時に延伸する方法である。より好ましくは最も汎用的な縦横逐次2軸延伸法である。
【0047】
2軸延伸の延伸倍率はMD方向、TD方向各々1.5倍以上であって、且つ面積延伸倍率が3倍以上50倍以下であることが好ましい。より好ましくはMD、TD各々2倍以上、面積倍率が4倍以上30倍以下である。また、必要に応じて、延伸後に熱収縮処理を行っても良い。
【0048】
共押出し後の組成物シートを2軸延伸して孔を形成した後、縦方向と横方向の少なくとも一方向に10%以上の熱収縮を行う。好ましくは15%以上の熱収縮を行い、より好ましくは20%以上の熱収縮を行う。
【0049】
2軸延伸後のシートに上記の熱収縮を行わせるには例えば以下の(1)〜(4)に示すような緩和熱処理方法を実施すればよい。
【0050】
(1)シートの端部を拘束せずに、適当な温度のオーブン中で熱収縮させる。この時の温度は130℃〜170℃である。この場合の温度と時間は樹脂組成物の種類、組成割合、成形条件(特に延伸条件)によって設定される。処理温度が低いとその効果は小さい。また処理温度が高過ぎるとポリプロピレン樹脂が大きく収縮、あるいは軟化溶融することで、逆に反射率が低下する。従って、好ましくは、140℃〜160℃、より好ましくは145℃〜155℃であり、またその処理時間は処理温度によって異なるが、5秒〜1時間である。処理時間が短いと効果が小さく、長すぎると反射率の低下、あるいは工業的には不利であり、好ましくは10秒〜10分である。
【0051】
(2)シートの端部を拘束して、適当な収縮比になるまで、特定条件で拘束しながら収縮させる。この方法が熱処理後のシートの平面性等で均一なものが得られる点で好ましい。条件は上記(1)と同じである。この場合、シートの拘束方向は縦方向のみ、あるいは横方向のみ、あるいは縦横両方であってもよい。縦方向の拘束では、低速ロールと高速ロールからなるロール縦延伸機を用いて、延伸とは逆に高速ロールを低速ロールより遅くすることで出来る。また横方向の拘束ではテンター横延伸機を用いて、テンタークリップ間をテンター走行とともに縮めることで出来る。更に、縦横両方の拘束では、テンター式同時2軸延伸機を用いてテンター走行とともに縦横を同時に縮めることで出来る。
【0052】
また、この緩和熱処理は2軸延伸後、一度ある温度まで冷却して行ってもいいし、冷却せずにそのまま連続的に行ってもいい。冷却する場合の冷却温度は特に限定はしないが、室温からポリプロピレンの結晶化温度の範囲内で選ぶことが効果的である。冷却せずにそのまま連続的に行う方法としては、テンター横延伸機を用いて横延伸後の熱処理ゾーンを利用してテンタークリップ間をテンター走行とともに縮めることで出来る。
【0053】
(3)2軸延伸方法との組み合わせにおいて、縦横逐次2軸延伸後に同テンター内で、連続的に横方向拘束緩和熱処理する。この方法は好ましい方法である。緩和熱処理前に冷却する場合は、テンター内で、延伸ゾーンと緩和熱処理ゾーンの間に、冷却ゾーンを設けることで出来る。
【0054】
(4)2軸延伸が縦横逐次2軸延伸法であって、MD、TDの延伸倍率の関係がMD≦TDであって、横延伸したのち、横延伸温度近傍の温度で横延伸倍率に対し横方向に10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上の熱収縮を行う緩和熱処理を施す。例えば、縦方向に3倍、横方向に4〜5倍延伸した後、横方向に10%以上の緩和熱処理を行う。
【0055】
前記製造方法により得られる反射シートは、表層部と内層部の2層以上から構成される。表層部/内層部/表層部の3層にて共押出しをした場合には、表層部/内層部/表層部の3層以上となる。これらの反射シート表層部表面に塗工などの手法でさらに耐光層などの層を付与しても良い。表層部と内層部の2層から構成される場合、反射シートの光源側に用いられる層が表層部、光源と反対側に用いられる層が内層部である。さらに、3層以上から構成される場合、3層以上の中に、本発明に記載の表層部、内層部を有していれば良く、たとえば、耐光層を最表層に付与した場合、最表層部(耐光層)/表層部/内層部という構成であってもよい。
【0056】
前記製造方法により得られる反射シートの内層部は、内部に孔を有する構造であり、この孔構造により反射性能が発現する。内層部の孔構造は、内層部中に空気層、空気孔を形成したものとなる。孔構造をとるため、内層部の密度はおよそ0.25g/cm〜0.70g/cmのものが得られる。内層部の厚みとしては、10μm以上、900μm以下のものが製造可能である。
【0057】
本発明により得られる反射シートの表層部は、ポリプロピレン樹脂(C)を少なくとも含むものであり、延伸により、内層部とは別に孔を形成する場合もある。本発明によれば表層部の厚みが、2μm以上、90μm以下のものが製造可能である。
【0058】
本発明により得られる反射シートは、表層部、内層部を含めた全体の密度がおよそ0.3g/cm以上、0.75g/cm以下の範囲である。本発明によれば、微小な孔を多数有し、高い反射率を示すとともに、良好な軽量性を有する反射シートが製造可能である。
【0059】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
<評価方法>
本発明によって得られる反射シートについて評価する物性の項目及びその評価方法についてまず説明する。
【0060】
(1)厚み
反射シートの厚みは、ピーコック社製厚み計を使用して測定した。また、共押出しにより作製した延伸前のシート、延伸後の反射シートの各層の厚みは、キーエンス社製デジタル顕微鏡による断面観察により測定した。
【0061】
(2)全反射率・平均全反射率
反射シートの全反射率は、島津製作所製分光光度計UV−3150と積分球試料台を使用して、ポリテトラフルオロエチレンの標準白板(ラボスフェア社製スペクトラロン)の反射率を100%とした相対反射率を波長400nm〜700nmの範囲で測定し、波長550nmの光について、シートのMD方向とTD方向の各々から入射した時の測定値を全反射率とし、両者の平均値を平均全反射率とした。また、MD方向の全反射率とTD方向の全反射率の差を反射率異方性の値とした。
【0062】
(3)坪量
シートを50mm角に切り出し、その重量を測定することで求めた。
【0063】
(4)密度
シートを50mm角に切り出し、その重量と中心部と各辺の中央部の計5点の厚みの平均値求め、密度を計算した。
【0064】
(5)耐光性試験
シートを50mm角に切り出し、高圧水銀ランプ(SEIMYUNGVACTRON社製SMTD51H−1)にて、照射量100mW/cmで500秒間暴露し、照射前後のシートの黄変度より耐光性の確認を行った。
【0065】
(6)黄変度
分光測色計(コニカミノルタ社製CM−2600d)にて測色し、JISZ8722、JISK7105に則り、黄色度を算出した。上記耐光性試験前後の黄色度の差より黄変度を算出した。
【0066】
(7)熱収縮率
シートを150mm角に切り出し、加熱オーブンに入れ、150℃で30分間加熱した後取り出し、加熱前後の寸法変化から求めた。
【0067】
(実施例1)
内層部原料として、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社E−105GM)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(旭美化成社ワンダーライトPC110)を38体積%(45重量%)混合した原料樹脂を用いた。この原料樹脂をシリンダー口径が25mmでシリンダーと口径の比が48の同方向回転2軸押出機を使って、シリンダー温度を250℃、スクリューの回転数が100rpmの運転条件で溶融し、温度を250℃に調整したギヤポンプを介して、マルチマニホールドダイに供給した。また、表層部原料として、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社E−105GM)を85重量%と、無機粉末として、酸化チタン(テイカ社、JR600A、平均粒径250nm)を15重量%混合した混合物を用いた。この混合物をシリンダー口径が32mmでシリンダーと口径の比が24の単軸押出機を使って、シリンダー温度を210℃、スクリューの回転数が100rpmの運転条件で溶融し、マルチマニホールドダイに供給した。ここで、マルチマニホールドダイには、表層部/内層部/表層部比が1/15/1となるように各原料を供給し、合流させ、リップ巾が400mmでクリアランスが2.0mmで押し出した。押し出された溶融樹脂を80℃に設定した一対のピンチローラーで引き取り、MD方向に溶融樹脂を引っ張りながら樹脂を冷却固化させて厚みが約1.9mmの2種3層共押出しシートを得た。
【0068】
得られた共押出しシートを、ロール縦延伸機を使ってMD方向(縦方向)に温度155℃で3.0倍延伸した。次に、テンター横延伸機を使ってTD方向(横方向)に温度が155℃で4.0倍延伸した後、同テンター内後部の熱処理ゾーンで、テンター出口倍が3.0倍になるようにクリップ間を設定、即ち横方向で25%収縮させて緩和熱処理を施すようにセットして、横延伸を行った。結果、内部層に孔を有する2種3層共押出し反射シートを得た。得られた2種3層反射シートの厚み、坪量と密度は、それぞれ502μm、231g/m、0.46g/cmであった。この反射シートのMD全反射率とTD全反射率は、それぞれ99.3%、99.0%であり、平均全反射率は99.2%、反射率異方性は0.3%であった。また、耐光性試験による黄変度は1であった。この反射シートの熱収縮率を測定したところ、MD方向で12%、TD方向で6%であった。
【0069】
(実施例2)
実施例1で作製した2種3層共押出しシートを、ロール縦延伸機を使ってMD方向(縦方向)に温度155℃で3.0倍延伸し、次に、テンター横延伸機を使ってTD方向(横方向)に温度が155℃で5.0倍延伸した後、同テンター内後部の熱処理ゾーンで、テンター出口倍が4.0倍になるようにクリップ間を設定、即ち横方向で20%収縮させて緩和熱処理を施すようにセットして、横延伸を行った。結果、内部層に孔を有する2種3層共押出し反射シートを得た。得られた2種3層反射シートの厚み、坪量と密度は、それぞれ426μm、174g/m、0.41g/cmであった。この反射シートのMD全反射率とTD全反射率は、それぞれ99.0%、98.7%であり、平均全反射率は98.9%、反射率異方性は0.3%であった。また、耐光性試験による黄変度は1であった。この反射シートの熱収縮率を測定したところ、MD方向で11%、TD方向で11%であった。
【0070】
(参考例1)
実施例1で作製した2種3層共押出しシートを、ロール縦延伸機を使ってMD方向(縦方向)に温度155℃で3.0倍延伸し、次に、テンター横延伸機を使ってTD方向(横方向)に温度が155℃で3.0倍延伸した後、緩和熱処理を施さずに反射シートを作製した。結果、内部層に孔を有する2種3層共押出し反射シートを得た。得られた2種3層反射シートの厚み、坪量と密度は、それぞれ507μm、242g/m、0.48g/cmであった。この反射シートのMD全反射率とTD全反射率は、それぞれ98.6%、98.2%であり、平均全反射率は98.4%、反射率異方性は0.4%であった。また、耐光性試験による黄変度は1であった。この反射シートの熱収縮率を測定したところ、MD方向で11%、TD方向で21%であった。ほぼ同様の厚み、坪量を有する実施例1と比較しても、熱緩和処理を施さないと、熱収縮率が15%も大きく、また、平均全反射率が0.8%も低いことがわかる。
【0071】
(参考例2)
実施例1で作製した2種3層共押出しシートを、ロール縦延伸機を使ってMD方向(縦方向)に温度155℃で3.0倍延伸し、次に、テンター横延伸機を使ってTD方向(横方向)に温度が155℃で4.0倍延伸した後、緩和熱処理を施さずに反射シートを作製した。結果、内部層に孔を有する2種3層共押出し反射シートを得た。得られた2種3層反射シートの厚み、坪量と密度は、それぞれ429μm、183g/m、0.43g/cmであった。この反射シートのMD全反射率とTD全反射率は、それぞれ98.4%、98.1%であり、平均全反射率は98.3%、反射率異方性は0.3%であった。また、耐光性試験による黄変度は1であった。この反射シートの熱収縮率を測定したところ、MD方向で11%、TD方向で25%であった。ほぼ同様の厚み、坪量を有する実施例2と比較しても、熱緩和処理を施さないと、熱収縮率が14%も大きく、また、平均全反射率が0.6%も低いことがわかる。
【0072】
(実施例3)
内層部原料として、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社E−105GM)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(旭美化成社ワンダーライトPC110)を38体積%(45重量%)混合した原料樹脂を用いた。この原料樹脂をシリンダー口径が25mmでシリンダーと口径の比が48の同方向回転2軸押出機を使って、シリンダー温度を250℃、スクリューの回転数が100rpmの運転条件で溶融し、温度を250℃に調整したギヤポンプを介して、マルチマニホールドダイに供給した。また、表層部原料には、無機粉末を添加せず、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社E−105GM)100重量%を用いた。このポリプロピレン樹脂をシリンダー口径が32mmでシリンダーと口径の比が24の単軸押出機を使って、シリンダー温度を210℃、スクリューの回転数が100rpmの運転条件で溶融し、マルチマニホールドダイに供給した。ここで、マルチマニホールドダイには、表層部/内層部/表層部比が1/6/1となるように各原料を供給し、合流させ、リップ巾が400mmでクリアランスが2.0mmで押し出した。押し出された溶融樹脂を80℃に設定した一対のピンチローラーで引き取り、MD方向に溶融樹脂を引っ張りながら樹脂を冷却固化させて厚みが約1.7mmの2種3層共押出しシートを得た。
【0073】
得られた共押出しシートを、ロール縦延伸機を使ってMD方向(縦方向)に温度155℃で3.0倍延伸した。次に、テンター横延伸機を使ってTD方向(横方向)に温度が155℃で4.0倍延伸した後、同テンター内後部の熱処理ゾーンで、テンター出口倍が3.0倍になるようにクリップ間を設定、即ち横方向で25%収縮させて緩和熱処理を施すようにセットして、横延伸を行った。結果、内部層に孔を有する2種3層共押出し反射シートを得た。得られた2種3層反射シートの厚み、坪量と密度は、それぞれ424μm、215g/m、0.51g/cmであった。この反射シートのMD全反射率とTD全反射率は、それぞれ99.8%、95.2%であり、平均全反射率は97.5%、反射率異方性は4.6%であった。また、耐光性試験による黄変度は15であった。この反射シートの熱収縮率を測定したところ、MD方向で12%、TD方向で7%であった。
【0074】
(参考例3)
実施例3で作製した2種3層共押出しシートを、ロール縦延伸機を使ってMD方向(縦方向)に温度155℃で3.0倍延伸し、次に、テンター横延伸機を使ってTD方向(横方向)に温度が155℃で3.0倍延伸した後、緩和熱処理を施さずに反射シートを作製した。結果、内部層に孔を有する2種3層共押出し反射シートを得た。得られた2種3層反射シートの厚み、坪量と密度は、それぞれ414μm、227g/m、0.55g/cmであった。この反射シートのMD全反射率とTD全反射率は、それぞれ99.6%、94.5%であり、平均全反射率は97.1%、反射率異方性は5.1%であった。また、耐光性試験による黄変度は14であった。この反射シートの熱収縮率を測定したところ、MD方向で12%、TD方向で22%であった。ほぼ同様の厚み、坪量を有する実施例3と比較しても、熱緩和処理を施さないと、熱収縮率が15%も大きく、また、平均全反射率が0.4%も低いことがわかる。
【0075】
(参考例4)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社E−105GM)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(旭美化成社ワンダーライトPC110)を38体積%(45重量%)混合した原料樹脂を、シリンダー口径が25mmでシリンダーと口径の比が48の同方向回転2軸押出機を使って、シリンダー温度を250℃、スクリューの回転数が100rpmの運転条件で溶融し、温度を250℃に調整したギヤポンプを介して、リップの巾が400mmでクリアランスが1.6mである単層シートダイから押し出した。押し出された溶融樹脂を80℃に設定した一対のピンチローラーで引き取り、MD方向に溶融樹脂を引っ張りながら樹脂を冷却固化させて厚みが約1.4mmの単層シートを作製した。
【0076】
得られた単層シートを、ロール縦延伸機を使ってMD方向(縦方向)に温度155℃で3.0倍延伸した。次に、テンター横延伸機を使ってTD方向(横方向)に温度が155℃で4.0倍延伸した後、同テンター内後部の熱処理ゾーンで、テンター出口倍が3.0倍になるようにクリップ間を設定、即ち横方向で25%収縮させて緩和熱処理を施すようにセットして、横延伸を行った。結果、内部層に孔を有する単層反射シートを得た。得られた単層反射シートの厚み、坪量と密度は、それぞれ444μm、182g/m、0.41g/cmであった。この反射シートのMD全反射率とTD全反射率は、それぞれ99.8%、94.4%であり、平均全反射率は97.1%、反射率異方性は5.4%であった。また、耐光性試験による黄変度は15であった。この反射シートの熱収縮率を測定したところ、MD方向で11%、TD方向で7%であった。単層反射シートでは、実施例1と比較しても反射率異方性が大きいことがわかる。
【0077】
(参考例5)
参考例4で作製した単層シートを、ロール縦延伸機を使ってMD方向(縦方向)に温度155℃で3.0倍延伸し、次に、テンター横延伸機を使ってTD方向(横方向)に温度が155℃で3.0倍延伸した後、緩和熱処理を施さずに反射シートを作製した。結果、内部層に孔を有する単層反射シートを得た。得られた単層反射シートの厚み、坪量と密度は、それぞれ430μm、190g/m、0.44g/cmであった。この反射シートのMD全反射率とTD全反射率は、それぞれ99.2%、93.4%であり、平均全反射率は96.3%、反射率異方性は5.8%であった。また、耐光性試験による黄変度は15であった。この反射シートの熱収縮率を測定したところ、MD方向で10%、TD方向で22%であった。ほぼ同様の厚み、坪量を有する参考例4と比較しても、熱緩和処理を施さないと、熱収縮率が15%も大きく、また、平均全反射率が0.8%も低いことがわかる。
【0078】
以上の結果の他、未延伸での内層部及び表層部の厚みなど、得られた結果を併せて表1に示す。これらの結果から、熱緩和処理を施すことで、寸法安定性が飛躍的に向上すると共に、同程度の厚み、坪量の反射シートと比べて反射性能が大きく向上することがわかる。また、多層とすることにより、反射率異方性が改善されることがわかる。なお、表1において、PPはポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社E−105GM)を表し、PCはポリカーボネート樹脂(旭美化成社ワンダーライトPC110)を表す。例えば、表層部/内層部/表層部=37/342/30μmの場合、表層部の厚み(μm)は37/30と表している。
【表1】

【0079】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態における寸法、材質などは例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば寸法安定性がよく、反射率の異方性を抑え、かつ高い反射率を示す反射シートを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂(A)及びポリプロピレン樹脂(A)の延伸可能な温度でポリプロピレン樹脂(A)と非相溶である樹脂(B)を含む樹脂組成物(a)、並びにポリプロピレン樹脂(C)を含む樹脂組成物(b)を共押出しする工程(i)と、工程(i)によって得られたシートを2軸延伸する工程(ii)と、工程(ii)によって得られたシートを縦方向(MD)と横方向(TD)の少なくとも一方向に10%以上熱収縮させる工程(iii)と、を具備することを特徴とする反射シートの製造方法。
【請求項2】
前記工程(iii)において、前記工程(ii)によって得られたシートの少なくとも一方向に20%以上の熱収縮を行わせることを特徴とする請求項1記載の反射シートの製造方法。
【請求項3】
前記工程(i)において、2つの表層部間に内層部を有する3層構造のシートを共押出しで得る際に、前記表層部の原料として樹脂組成物(b)を用い、前記内層部の原料として樹脂組成物(a)を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の反射シートの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物(a)の50体積%以上、80体積%以下がポリプロピレン樹脂(A)であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の反射シートの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂(B)としてポリカーボネート樹脂を用いることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の反射シートの製造方法。
【請求項6】
前記工程(i)によって得られるシートの表層部の厚みを10μm〜400μmとし、内層部の厚みが50μm〜4000μmとすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の反射シートの製造方法。
【請求項7】
前記ポリプロピレン樹脂(C)に対して0.1重量%〜70重量%の無機粉末を含有する樹脂組成物(b)を用いることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の反射シートの製造方法。
【請求項8】
前記無機粉末が、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、三酸化タングステンチタン、チタン酸ストロンチウム、及びこれらの混合体からなる群より選ばれたものであることを特徴とする請求項7記載の反射シートの製造方法。
【請求項9】
前記2軸延伸の延伸倍率が縦方向及び横方向で各々1.5倍以上であり、面積延伸倍率が3倍以上50倍以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の反射シートの製造方法。
【請求項10】
前記2軸延伸が縦横逐次2軸延伸であって、縦方向(MD)及び横方向(TD)の延伸倍率の関係がMD≦TDであり、横延伸したのち、横延伸温度近傍の温度で横延伸倍率に対して横方向にシートを10%以上熱収縮させる緩和熱処理を施すことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の反射シートの製造方法。
【請求項11】
前記横延伸したのち、前記横延伸温度近傍の温度で横延伸倍率に対して横方向に20%以上の熱収縮を行う緩和熱処理を施すことを特徴とする請求項10記載の反射シートの製造方法。

【公開番号】特開2009−186930(P2009−186930A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29527(P2008−29527)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】