説明

反射シート

【課題】反射性能が高く、熱成形加工によって容易に製造することが出来る上に、反射効率をより高くすることが可能な反射シートを提供すること。
【解決手段】本発明の反射シートは、ポリプロピレン樹脂(A)と、該ポリプロピレン樹脂に対して非相溶性である樹脂(B)とを含む組成物で構成されており、少なくとも一方の主面に凸部を有する反射シートであって、その相分離構造が、前記ポリプロピレン樹脂(A)で構成された海相と前記樹脂(B)で構成された島相とからなり、空洞を含有する海−島構造であり、前記反射シートの坪量が30〜500(g/m2)、密度が0.25〜0.75(g/cm3)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射シートに関し、特に液晶表示装置のバックライトなどに用いられる反射シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶はそれ自身が発光しないため、液晶を表示装置として使用するためには光源が必要となる。液晶表示装置は、液晶、配向板、電極、偏光板などからなる液晶パネル、及び該パネルに光を照射する装置、一般にはバックライトと呼ばれる照明装置等からなり、ランプの光を画面に向けて効率よく反射させる等のために反射シートを用いている。
【0003】
液晶表示装置のバックライトは一般にエッジライト型バックライトと直下型バックライトの2種類に大きく分けられる。
【0004】
エッジライト型バックライトは、携帯電話や携帯情報端末などに用いられる小型の液晶表示装置に使用されることが多いバックライトであって、発光ダイオードや冷陰極線管などの光源と、アクリル樹脂などの透明な樹脂を楔形に成形した導光板と、液晶パネルとは反対側の導光板の側面に配置される反射材とから構成されることが多い。エッジライト型バックライトでは、導光板の端面に配置された発光ダイオードや冷陰極線管などの光源からの光が導光板の端面から入射される。導光板に入射した光は導光板を通過する過程で導光板の側面から導光板の外に出る。導光板の液晶パネル側の側面から外に出た光は液晶パネルを照明するが、導光板の液晶パネル側とは反対側の側面から外に出た光は液晶パネルを照明することができないため、導光板の液晶パネル側とは反対側の側面には光を反射する反射シートを設置して、導光板の側面から外に出る光を液晶パネル側に反射させて、光源の光を有効に液晶パネルに照射させることが通常行われている。
【0005】
直下型バックライトは、液晶パネルの表示面とは反対側に冷陰極線管などの光源ランプを複数本並べて設置したバックライトであり、大型テレビジョンなどに使用される大画面の液晶表示装置に用いられる。大画面の液晶表示装置では、エッジライト型バックライトでは輝度を満足する水準にまで上げようとすると光源ランプの明るさに限界があるため、光源ランプを複数使用する直下型バックライトが通常使用されている。光源ランプの光は液晶側とは反対側にも照射されるため、光源ランプの液晶側とは反対側に反射シートを設けることによって光源の光を有効に液晶パネルに照射させることが、直下型バックライトでは一般に行われている。
【0006】
最近ではテレビジョンだけでなくパソコンでも動画を表示させることが多くなり、液晶表示装置はより明るいものが求められている。このため、液晶表示装置に使用されるバックライトでは、反射率が90%以上の反射シートが使用されることが多く、より高い反射性能を求めてシートの反射率のアップ、折り曲げ加工による形状の工夫等の開発が進められている。また液晶表示装置をより明るくするために、冷陰極線管などの光源の出力は増加する傾向にあり、そのために使用中のバックライトの温度はより高温になる傾向が見られる。このため反射シートに使用する樹脂には、液晶物質の耐熱温度に近い概ね80℃の耐熱性が必要となっている。このため液晶表示装置のバックライトに使用される反射シートには、シートに成形しやすく耐熱性にも優れた樹脂組成物の反射シートが求められている。さらに、大型テレビジョンなどの大画面の液晶表示装置に使用されるバックライトでは、大きい面積の反射シートが長期間にわたって強い光に照らされることになる。このため反射シートには、光源の光による変色や変質が少ないことや、温度上昇や吸湿による反りなどの変形が長期間にわたって起こりにくい反射シートが求められている。
【0007】
また、最近では大画面の液晶表示装置の直下型バックライトにおいても、冷陰極線管に替わって多数の発光ダイオードを碁盤の目の如く一面に並べたバックライトも用いられるようになってきた。このケースでは個々の発光ダイオードの輝度が高いために、ダイオードのランプイメージが表示部に残り易いという問題があった。そのため発光ダイオードの直上の拡散板などに一度光を反射させて、その反射光を再度反射シートで反射させる、あるいは発光ダイオードと拡散板の距離を大きくとるなどの工夫を施すことで、このランプイメージを出来るだけ消すような対応がなされている。
【0008】
内部に孔や気泡を含む樹脂のシートは、光を照射すると光が反射されて白く見えたり、真珠様の光沢を示したりすることはよく知られている。内部に孔や気泡を含む樹脂が光をよく反射する理由は次のように考えられる。樹脂の屈折率は概ね1.4〜1.6で、空気の屈折率は約1であるため、樹脂と空気の屈折率の差によって生じる光の反射率は1回の反射あたりでは約4%にすぎない。しかし内部に多数の孔や気泡を含む樹脂のシートでは、内部に樹脂と空気の界面が多数存在するため、シートに照射された光はシートの内部で多数回反射される。この結果、内部に多数の孔や気泡を含む樹脂のシートでは、照射された光はシートの内部で大部分が反射され、その結果、シート全体としての反射率が大きくなると考えられる。
【0009】
また、樹脂の内部に含まれる多数の孔や気泡は、各々の形状や大きさが異なる場合が多いため、孔や気泡の界面で反射される光は一つの方向にまとまって反射されることは少なく、反射する光の方向は各々の孔や気泡ごとに異なる。このため、内部に多数の孔や気泡を含む樹脂のシートに光を照射した場合の反射は、入射した光があらゆる方向に反射する拡散反射となりやすい。内部に孔や気泡を含む樹脂組成物のシートとしては、(1)無機物の粉末を添加した樹脂を延伸することによって、樹脂と無機物の粉末との界面を開裂させて、樹脂の内部に孔を形成させたものや、(2)樹脂に加圧した不活性ガスを溶解させた後、減圧して発泡させ、樹脂の内部に気泡を形成させたものが知られている。(1)の樹脂シートとしては、例えば、特許文献1に、微粒子炭酸カルシウムを5〜30wt%含有させたポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押し出し二軸延伸して、密度から計算されたボイド率が7〜30%である白色ポリエチレンテレフタレートのシートが開示されている。また、(2)の樹脂シートとしては、例えば、特許文献2に、熱可塑性ポリエステルに炭酸ガスなどの不活性ガスを加圧雰囲気下で溶解させた後、常圧下で加熱して発泡させた、内部に微細気泡を含む光反射シートが開示されている。
【0010】
一方、拡散反射に対して、反射面に対して光が入射する角度と反射する角度とが対称である反射は正反射とよばれ、その反射面は鏡面状を呈する。樹脂シートで正反射するものとしては、(3)ポリエステル樹脂のシートの表面を蒸着などの方法によって銀などの反射率が大きい物質で被覆したものが知られている。この例の反射シートは、鏡面状の正反射を起こすシートであるが、大型テレビジョンなどの大画面液晶表示装置に使用される直下型バックライトでは、複数本が配置される光源ランプの光が干渉して液晶画面の明るさに斑が生じやすくなることが知られている。このために、直下型バックライトには拡散反射を起こす反射シートが使用されることが多い。
【0011】
無機物粒子を添加しないで内部に孔を形成させた白色樹脂シートとしては、特許文献3に、ポリプロピレン65〜93重量%と非相溶性樹脂5〜20重量%とを含む白色二軸延伸ポリオレフィンシートが開示されて、印刷用紙やラベルなどに使用される白色シートとして使用できる。
【0012】
また、特許文献4には、ポリプロピレン樹脂50体積%以上80体積%未満と、ポリプロピレン樹脂の延伸が可能な温度でポリプロピレン樹脂と相分離する樹脂20体積%以上50体積%未満とを含む樹脂組成物からなる反射シートが開示されている。これには通常の簡便な樹脂延伸製造装置で、無機粉末を含まなくても90%以上の高い反射率を有する反射シートが提供されている。
【特許文献1】特公平6−89160号公報
【特許文献2】特許第2925745号公報
【特許文献3】特許第3139510号公報
【特許文献4】国際公開第2005/096036号
【0013】
前記の従来の反射シートは、通常平板状で使用されているが、反射効率を上げる目的で、機械的な折り曲げ加工、カット−折り曲げ加工、あるいは2次元の曲面形状に加工されて使用されるケースも多い。しかしながら、より反射性能を向上させるためには、バックライトの使用形態に合わせて反射シートを最適な形状に3次元形状に加工されることが求められる。例えば、発光ダイオード(LED)バックライト方式の場合、反射効率を向上させるために、碁盤の目の如く多数配置されたLEDの配置に合わせて、LED直下を凹状に折り曲げ加工した反射シートも提案されている。3次元形状を工夫し、この3次元構造面を、反射方向を制御するための反射面にすることで、反射効率が上がり、LEDなどのランプイメージが消えやすくなれば、ランプと拡散板までの距離も短くすることも可能になり、より薄いバックライトユニットを形成することも出来る。凹状等の3次元成形加工は、通常シートを熱変形温度以上まで加熱したのち、圧縮成形、真空成形あるいは圧空成形により行われる。しかし、従来の無機材料とポリプロピレンからなるシートを2軸延伸した反射シートは熱成形温度での熱収縮が大きいために、所望の形状の成形品が得られない上に、シートの薄肉化、あるいは延伸によって形成された孔あるいは気泡がつぶれることによって反射性能が低下する等の問題があり3次元形状の熱成形加工は難しかった。またポリエチレンテレフタレートの2軸延伸、あるいはその微細発泡によって得られた反射シートもポリエチレンテレフタレート樹脂の特性から、熱変形温度まで温度を上げると大きな変形を起こすことなどの問題があり、熱成形による3次元加工は難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、機械的加工ではなく熱成形加工によって容易に製造することが出来る上に、反射効率をより高くすることが可能な反射シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の反射シートは、ポリプロピレン樹脂(A)と、該ポリプロピレン樹脂に対して非相溶性である樹脂(B)とを含む組成物で構成された反射シートであって、少なくとも一方の主面に凸部を有し、相分離構造が、前記ポリプロピレン樹脂(A)で構成された海相と前記樹脂(B)で構成された島相とからなり、空洞を含有する海−島構造であり、前記反射シートの坪量が30〜500(g/m2)、密度が0.25〜0.75(g/cm3)であることを特徴とする。
【0016】
本発明の反射シートにおいては、前記ポリプロピレン樹脂(A)が50体積%〜80体積%、前記樹脂(B)が20体積%〜50体積%であることが好ましい。
【0017】
本発明の反射シートにおいては、前記ポリプロピレン樹脂(A)の延伸可能な温度における前記樹脂(B)の弾性率が前記ポリプロピレン樹脂(A)の弾性率より大きいことが好ましい。
【0018】
本発明の反射シートにおいては、前記樹脂(B)がポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
【0019】
本発明の反射シートにおいては、前記反射シートの厚さの1/30〜1/3である保護層を有することが好ましい。この場合においては、前記保護層が前記ポリプロピレン樹脂(A)を80体積%以上含むことが好ましい。
【0020】
本発明の反射シートにおいては、前記凸部の形状が、球状又は多角錐形状の少なくとも一部の形状、多角錐の頂部を平坦あるいは円弧状にした形状であることが好ましい。
【0021】
本発明の反射シートにおいては、熱成形によって得られることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の反射シートは、従来の反射シートに比べてより高い反射性能を有するとともに凸部の形状を有することによってより効果的な反射効率を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明について、以下具体的に説明する。
(反射シートを構成する樹脂組成物)
本発明の反射シートを構成する樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂(A)及びこのポリプロピレン樹脂(A)に対して非相溶性の樹脂(B)の少なくとも一種を含む。
【0024】
ポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレンの単独重合体やプロピレンと共重合が可能なエチレンなどのモノマーとの共重合体などのポリプロピレン樹脂である。ポリプロピレン樹脂(A)は、JISK7210の方法で温度230℃、荷重21.2Nで、測定されるメルトフローレートが0.1〜l0g/分であるポリプロピレン樹脂であることが好ましい。メルトフローレートは、ポリプロピレン樹脂を溶融成形するときの押出機の負荷及び樹脂組成物の熱による変色の観点から、0.lg/分以上であることが好ましく、樹脂の粘度及び成形性の観点から、10g/分以下であることが好ましい。樹脂延伸時の張力及び延伸性の観点から、樹脂組成物全体に占めるポリプロピレン樹脂(A)の比率は50体積%以上が好ましい。一方、樹脂組成物を押し出したシートを延伸してシートの内部に孔を形成させて90%以上の高い平均全反射率の反射シートを得るためには、樹脂組成物全体に占めるポリプロピレン樹脂(A)の比率は80体積%以下が好ましく、より好ましくは70体積%以下である。ここでいう平均全反射率とは、波長550nmの光についてシートのMD方向とTD方向の各々から入射した時の全反射率を測定し、両方向の平均値をいう。
【0025】
ポリプロピレン樹脂の延伸が可能な温度でポリプロピレン樹脂と相分離する樹脂(B)(以下、単に「樹脂(B)」ともいう)には、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂などのポリシクロオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などがある。これらの樹脂のなかでポリプロピレン樹脂の延伸が可能な温度における弾性率が、ポリプロピレン樹脂のそれより高い樹脂がより好ましく、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂などのポリシクロオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂のなかから少なくとも1種類の樹脂をポリプロピレン樹脂と溶融混合して用いることが好ましく、ポリカーボネート樹脂を用いることが最も好ましい。
【0026】
本発明においては、樹脂組成物全体の20体積%以上50体積%未満が、樹脂(B)であることが好ましい。樹脂(B)は、延伸張力を小さくするという観点から、樹脂組成物全体の50体積%未満であることが好ましい。シートの孔数及び孔体積を多くして95%以上の高い平均全反射率を得るという観点から、樹脂(B)は樹脂組成物全体の20体積%以上が好ましく、好ましくは30体積%以上である。樹脂組成物を処方する場合、重量%から体積%への換算は、各樹脂の基本特性の密度から計算出来る。例えばポリプロピレン樹脂の密度は0.89〜0.91g/cm3、ポリカーボネート樹脂の密度は1.2g/cm3であり、これらの値から容易に換算出来る。
【0027】
本発明の反射シートには、無機物粒子は積極的には添加しないが、熱成形加工性を損なわない程度なら添加してもいい。例えば、反射シートをバックライトの組立装置のローラーやガイドレールと滑り易くさせるために滑剤として、0.1〜1重量%程度の微少量の微粒子シリカなどを添加してもよい。また、紫外線によるシートの黄変を防止する目的で酸化亜鉛、二酸化チタンなどの金属酸化物粒子を0.1〜1重量%程度添加してもよい。この場合の粒子径0.01〜10μmであり、好ましくは0.01〜1μmである。更に、反射性能の向上に寄与する二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどを添加することで反射性能をより高くすることも出来る。この場合の添加量は1重量%〜30重量%である。
【0028】
本発明の反射シートは、例えば、ポリプロピレン樹脂(A)を50体積%以上80体積%未満と、樹脂(B)を20体積%以上50体積%未満とを溶融混合し、ポリプロピレン樹脂の海の中に、樹脂(B)の島が分散する、いわゆる海−島構造の樹脂組成物を、シート状に押出した後、延伸することにより得られる。
【0029】
ポリプロピレン樹脂(A)や樹脂(B)のぺレットを二軸押出機などの押出機を使って溶融して押し出す場合に、ポリプロピレン樹脂(A)よりも硬い樹脂(B)は、押出機の内部で押出機のシリンダーとスクリュ一の隙間やスクリュ一同士の隙間などを通過するときに、スクリュ一の回転によるせん断力によって、通常の数mm程度の大きさの樹脂ペレットから数μm程度の大きさの分散相にまで細かく分割される。押出機のスクリューの形状やシリンダー温度やスクリューの回転数などを適切に設定することにより、樹脂(B)が分割される大きさの平均値や分布を調整することができる。
【0030】
樹脂(B)のなかで、ポリプロピレン樹脂の延伸が可能な温度における弾性率がポリプロピレン樹脂より大きい樹脂が好ましい。その理由は次のように考えられる。本発明は、樹脂組成物のシートをポリプロピレン樹脂の延伸が可能な温度で延伸して、樹脂組成物中の樹脂(B)相とポリプロピレン樹脂(A)相との界面を開裂させることによってシートの内部に孔を形成させる。シートを延伸する温度で、樹脂(B)の弾性率がポリプロピレン樹脂(A)の弾性率より大きいと、樹脂(B)相の延伸力による変形量はポリプロピレン樹脂(A)相の変形量よりも小さいため、樹脂(B)相とポリプロピレン樹脂(A)相との界面がより開裂しやすくなると考えられる。
【0031】
更に、樹脂(B)のポリプロピレン樹脂の延伸が可能な温度における弾性率がポリプロピレン樹脂より大きいことが凸部成形加工性に大きく寄与していると考えられる。通常の2軸延伸ポリプロピレンはその延伸温度近傍まで温度を上げると大きな熱収縮を起こし変形するが、この延伸温度付近での弾性率がポリプロピレン樹脂より大きい樹脂(B)が存在することで、その熱変形が抑えられ、熱成形性を向上させていると考えられる。更に樹脂(B)の存在が、反射材としての使用時の耐熱性をも向上させ、反射シートの強度アップにも寄与している。
【0032】
本発明において、樹脂(B)の好ましい例であるポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート、直鎖状ポリカーボネート、分岐鎖状ポリカーボネートの中から単独で、又は組み合わせて使用することができる。ポリカーボネート樹脂は、JISK7210の方法で温度300℃、荷重11.8Nで測定されたメルトフローレートが0.1〜50g/l0分であるポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリプロピレン樹脂との混合を均一にするという観点から、ポリカーボネート樹脂のメルトフローレートは0.1g/l0分以上が好ましく、延伸時に孔を形成しやすいという観点から、メルトフローレートは50g/l0分以下が好ましい。
【0033】
ポリカーボネート樹脂以外の樹脂(B)の例として、ポリアミド樹脂が挙げられる。ポリアミド樹脂は、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミドなどのなかから単独で、又は組み合わせて使用することができる。ポリアミド樹脂は、押し出し機で押し出すときの分散性の観点から、融点が300で以下であるポリアミド樹脂が好ましい。
【0034】
本発明では、ポリプロピレン樹脂(A)と樹脂(B)に加えて、ポリスチレン樹脂を使用することができる。ポリスチレン樹脂として、JISK7210の方法で温度200℃、荷重49Nで測定されるメルトフローレートが0.1〜20g/l0分であるポリスチレン樹脂が好ましい。ポリスチレン樹脂を樹脂組成物全体の5体積%以下添加することにより、樹脂組成物全体の透明性を大きく損なうことなく、樹脂組成物全体を溶融混合するための押出機の回転トルクを軽減したり、シートの内部に孔を生成させるためにシートを延伸する時の張力を低下させるなど、反射シートを製造する工程や設備をより簡潔なものにする効果を与える。押出機の回転トルクの軽減やシートの延伸張力が低下する効果を十分に得る観点から、且つ光学的に均一なシートを得るという観点から、ポリスチレン樹脂の樹脂組成物全体に対する比率は5体積%以下が好ましい。
【0035】
本発明では、その反射シートにポリプロピレン樹脂(A)と樹脂(B)と必要に応じてポリスチレン樹脂とを混合した樹脂組成物を使用するが、樹脂組成物には必要に応じて紫外線吸収剤や光安定剤や熱安定剤や造核剤や帯電防止剤などを添加してもよい。
【0036】
(反射シートの形状、物性)
本発明の反射シートは表面に凸部を有することを特徴とする。この凸部の形状はシート面に対して3次元的に凸状の形状であれば特に限定されるものではなく、四角柱、六角柱等の多角柱、円柱、半円球等の円球の一部、あるいは三角錐、四角錐等の多角錐、さらには半円球等の円球の一部、多角錐の形状であって、その頂部を切り取って頂部を平面状にした形状、あるいは多角錐の頂部を円弧状に丸くした形状等の構造などが挙げられる。成形加工性、反射方向の均一性、効率性の観点から好ましい構造は半円球等の円球の一部、多角錐形状、および半円球等の円球の一部、多角錐の形状であって、その頂部を切り取って頂部を平面状にした形状、または多角錐の頂部を円弧状に丸くした形状であり、より好ましい構造は半円球等の円球の一部、および半円球等の円球の一部、多角錐の形状であって、その頂部を切り取って頂部を平面状にした形状、あるいは多角錐の頂部を円弧状に丸くした形状である。特に好ましい構造は半円球等の円球の一部、多角錐の頂部を円弧状に丸くした形状である。
【0037】
上記形状において、凸部の大きさをその底面部の長手方向とこれと直角な方向で示すと、長手方向、その直角方向で各々1〜50mm、好ましくは10〜30mmである。また凸部の高さは0.5〜20mm、好ましくは1〜10mmである。これらの大きさと高さは使用されるバックライトの種類、その個数と配置などにより決められるが、上記の範囲を超えるとその形状の効果が小さいか、あるいは凸部の形状部の反射率自体が低下し、所望の効果が得られない。
【0038】
また、シートの厚さは凸部を有している点と有していない点において、反射率に大きな差異がないならば、一定であっても一定でなくても構わない。また、本発明は凸部を有することを特徴とするが、使用形態によってはシートの表裏を逆にして反射面を凹部にして使用することもできる。LEDをバックライト光源として、本発明の反射シートをその反射材に使用する場合、LEDが配置される位置は、その反射効率の観点からその最適な位置が選ばれる。例えば、図3に示すように、反射シート1の凸部を反射面とし、凸部の形状2が、球状又は多角錐形状の少なくとも一部の形状である場合、各形状から等距離にある平坦部の位置に、LEDが配置される穴3を開け、ここにLEDを配置する。また、反射面を凹部とする場合は、凹部の中心部にLED用の穴を開け、ここにLEDを配置するなどが例示できる。さらには、形状として平坦部に対して凸部と凹部の両方を有する形状であっても良い。この場合、凸部と凹部の両方を反射面とすることもできる。
【0039】
本発明の反射シートでは、光の反射は空気と樹脂の屈折率差を利用して、空気と樹脂の界面で起こる。樹脂の屈折率は概ね1.4〜1.6で、空気の屈折率は約1であるため、樹脂と空気の屈折率の差によって生じる光の反射率は1回の反射あたりでは高々約4%にすぎない。しかし内部に多数の孔や気泡を含む構造にすることで、その界面を多数存在させることができる。これによってシート内部での反射が多数回繰り返されることになり、高い反射率を得ることができる。内部に多数の孔や気泡を含む構造を形成するシートの構成要件は、本発明の反射シートにおいては坪量と密度である。
【0040】
本発明の反射シートにおいては、坪量が、30〜500g/m2であることを特徴とする。この範囲においては、凸部を有する反射シートを成形する上で、十分な強度、剛性を有し、反射能を得るための充分な数の孔あるいは気泡を形成することができる。このため、反射用の凸部を含む全反射面に渡って高い反射率を得ることができる。好ましい坪量は、50〜400g/m2であり、より好ましくは100〜350g/m2である。
【0041】
また、本発明の反射シートにおいては、密度が、0.25〜0.75g/cm3であることを特徴とする。この範囲においては、樹脂量が少なくならない状態で孔あるいは気泡の体積を多く作ることができ、高い反射率を得ることができる。また、樹脂量が十分であるので、熱成形時に一部に熱溶融が発生することがなく熱成形が容易となると共に、反射シートとしての強度が十分となる。このため、好ましい密度は0.30〜0.70g/cm3であり、より好ましくは0.40〜0.60g/cm3である。
【0042】
さらに本発明の反射シートは、反射シートの少なくとも片面に、反射シートの1/30〜1/3の厚みを有する保護層を設けることが出来る。この保護層は、反射面の機械的なキズなどからの保護、あるいは紫外線による反射シートの黄変の防止、更には、反射性能の更なる向上を図るなどの目的で設けることが出来る。紫外線による反射シートの黄変防止の目的では、保護層に酸化亜鉛、二酸化チタンなどの金属酸化物粒子あるいは有機系の紫外線吸収剤を0.1〜1重量%程度添加される。さらには必要に応じて光安定剤、熱安定剤や造核剤や帯電防止剤などを添加してもよい。この場合の金属酸化物の粒子径は0.01〜10μm、好ましくは0.01〜1μmである。また反射性能の向上の目的では、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどを1重量%〜30重量%添加することが出来る。この場合の粒子径は0.01〜10μm、好ましくは0.01〜1μmである。
【0043】
保護層は実質的には孔を有しない構造であるが、添加する添加剤の種類、製造時の延伸条件などにより、一部に孔が発生する場合もあるが、本発明で定義する反射シートの坪量、密度の計算に当たっては、孔がないとして計算する。
【0044】
保護層は、共押出法などにより反射シートの片面あるいは両面に設けられるが、反射シートとの接着性、押出時の成形性からポリプロピレン樹脂を80体積%以上含むことが好ましく、より好ましくは90体積%以上である。この場合のポリプロピレン樹脂は反射シートに使用されるポリプロピレン樹脂と同じものでもいいし、反射シートとの押出適性などに合わせて種々のグレードから選択することが出来る。
【0045】
(原反シート成形方法)
本発明では、好ましくは、先ず押出機で溶融混合された原料樹脂を押出機の先端に取り付けたダイからシート状に押し出すが、押し出される樹脂組成物の量を安定させるために押出機とダイの間にギヤポンプを使用してもよい。反射シートシートの押し出には樹脂の混練性、分散性などから2軸押出機が好ましい。ダイはTダイやフィッシュテールダイなどのシート成形ダイが使用される。ダイは反射シート単層の場合は単層ダイが使用される。保護層を設ける場合は、反射シート用に主押出機、保護層用に副押出機を用いた共押出法が採用される。この場合の成形ダイは、フィードブロックダイ、マルチマニホールドダイなどの積層ダイが用いられ、ダイの中で反射シートと保護層とが積層されて押し出される。副押出機は単軸押出機、2軸押出機のいずれでもいいが、保護層の組成、押出適性などを考慮して選ばれる。また反射シートのみの場合でも、共押出法を用いることで、中心部と表層部とでポリプロピレン樹脂(A)とポリプロピレン樹脂と相分離する樹脂(B)の比率を変えたり、ポリスチレン樹脂の添加比率を変えたりすることができる。たとえば、中心部は樹脂(B)の比率を大きくし、表層部は樹脂(B)の比率を小さくすることによって、延伸加工がしやすくなり反射率が高いものが得られやすくなる。また、表層部にポリスチレン樹脂を添加することによっても、延伸加工性が良く反射率が高いシートを得られやすくすることができる。
【0046】
(2軸延伸の方法)
本発明では、好ましくは、ダイから押し出されたシートを冷却ローラーなどで冷却固化させた後、延伸機で延伸する。延伸工程では、反射シート内部に孔を生成させるために、できるだけ低温で延伸を行う方が好ましい。高い温度で延伸を行う場合には、低温で延伸する場合と比べて反射シートシート内部に孔の生成が起こりにくい傾向がみられるので、延伸倍率を低温で延伸する場合より大きくすることが好ましい。
【0047】
本発明においては、押し出される樹脂の温度が200℃〜300℃の範囲になるように押出機やダイの運転条件を設定することが好ましく、押し出される樹脂は20℃〜150℃の範囲になるよう冷却ローラーの温度や速度を設定することが好ましい。この延伸によって、反射シート内部のポリプロピレン樹脂(A)と樹脂(B)の界面を開裂させてシートの内部に孔を生成すると同時に、シートの厚みを所望の厚みにまで薄くすることができる。
【0048】
本発明では、通常の2軸延伸法が採用出来る。即ち、縦横逐次2軸延伸、横縦逐次2軸延伸、同時2軸延伸、さらにこれらの2軸延伸の後に、縦横いずれかあるいは両方の方向に再延伸することも出来る。好ましくは、縦横逐次2軸延伸、あるいは同時2軸延伸である。縦横逐次2軸延伸は、速度差をつけた複数のローラーの間をシートを通過させて流れ方向にシートを延伸する縦延伸工程と、クリップテンターなどを使用してシートの幅方向に延伸する横延伸工程からなる。また同時2軸延伸は、パンタグラフ延伸機などを使用して流れ方向と巾方向を同時に延伸する方法である。より好ましくは最も汎用的な縦横逐次2軸延伸法である。
【0049】
2軸延伸の延伸倍率はMD方向、TD方向各々1.5倍以上であって、且つ面積延伸倍率が3倍以上50倍以下である。好ましくはMD、TD各々2倍以上、面積倍率が4倍以上30倍以下である。
【0050】
(凸部の形成方法)
2軸延伸されたシートに、熱寸法安定性付与のために必要に応じて熱処理などの後処理を施した後、凸部を形成する。この成形には通常の真空成形、圧空成形あるいは熱圧縮成形などの通常の熱成形手法を適用することが出来る。本発明ではその成形方法については特に限定はしないが、生産性、成形加工性、成形後の厚みの均一性などの点から真空成形法、圧空成形法が好ましい方法として推奨される。
【0051】
真空成形とは、シート状の樹脂を加熱し軟化させ、それを所望の形状の金型に密着させ、シートと金型の間の空気を金型の下部に設けた吸引口から減圧吸引することで真空に近い状態を作り出し、型の形状にシートを密着させることで、意図する形状を作り出す成形法である。本発明の成形品は枚葉タイプからのバッチ成形、ロール形状から繰り出す連続成形のいずれも対応出来る。
【0052】
圧空成形とは、加熱軟化させたシートを、1〜5kg/cmの圧縮空気により、型に密着させ、所定の形状を得る方法であり、金型に接触する面を製品の表面にすることで、射出成形と同等のシャープなデザインと表面性を表現できる、また真空成形に比べ高い圧力で成形が出来るなどの特徴がある。本発明の成形品は枚葉タイプからのバッチ成形、ロール形状から繰り出す連続成形のいずれも対応出来る。従って、金型面の表面性を重視する場合、あるいは高い圧力で成形する必要がある場合は、この圧空成形が用いられるが、それほどこれらを重要視しない場合は真空成形の方が生産性、操作性などの点で推奨される。
【0053】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
<評価方法>
反射シートについて評価する物性の項目及びその評価方法についてまず説明する。
【0054】
(1)厚み
反射シートの厚みは、ピーコック社製厚み計を使用して測定した。
【0055】
(2)光全反射率・平均全反射率
反射シートの光全反射率は、島津製作所製分光光度計UV−3150と積分球試料台を使用して、ポリテトラフルオロエチレンの標準白板(ラボスフェア社製スペクトラロン)の反射率を100%とした相対反射率を波長400nm〜700nmの範囲で測定した。平均全反射率は波長550nmの光について、シートのMD方向とTD方向の各々から入射した時の測定値を求め、両者の相加平均値を平均全反射率とした。反射シートの凸部を含む場合の反射率は、その投影面積が標準板の面積と同じになるように切り出し同様に測定した。
【0056】
(3)坪量
シートから凸部を0.5〜1g程度になるように、必要なら複数の構造部を切り出し、重量を測定する。次いで、切り出した総ての凸部の表面及び裏面の各々の面積の総和をその形状の寸法から計算により求め、表面と裏面の相加平均値を反射シートの面積とし、先に求めた重量をこの面積で除して、本発明の凸部の坪量とした。本発明の構造体が保護層を有する積層構造の場合は、保護層を構成する樹脂、添加剤の種類、量から保護層の重量を計算し、全体の坪量からこの保護層の部分の坪量を引いて、反射シートの坪量とした。
【0057】
(4)密度
(3)で切り出した凸部の各構造部について、均等に3点の厚みを測定し、3点の厚みの相加平均を該構造部の厚みとする。これに(3)と同じ方法で該構造部の面積の平均値を求め、これに厚みを乗じて体積を求め、該構造部の重量をこの体積で除して、密度を算出する。この計算を切り出した総ての凸部の各々について行い、それらの相加平均値を算出し、本発明の反射シートの密度とした。本発明の構造体が保護層を有する積層構造の場合は、全体の厚みから、保護層部分の厚みの平均値(上記同様に3点の平均値)を引いて、反射シートの厚みを求め、これに(3)と同じ方法で求めた面積を乗じて体積とし、(3)で求めた方法で保護層部分を除いた重量を求め、この重量を体積で除して密度とした。
【0058】
<実施例で使用した金型>
図1に本実施例で使用した真空成形用金型の概略図を示した。各円弧状の凹部には真空成形用に吸引口が設けられている。a−a’断面とb−b’断面において、各円弧の配置、形状は同じである。
【0059】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社E−105GM)を62体積%(55重量%)、ポリカーボネート樹脂(旭美化成社ワンダーライトPC110)を38体積%(45重量%)混合した原料樹脂を、シリンダー口径が25mmでシリンダーと口径の比が48の同方向回転2軸押出機を使って、シリンダー温度を250℃、スクリューの回転数が100rpmの運転条件で溶融し、温度を250℃に調整したギヤポンプを介して、リップの巾が400mmでクリアランスが1.7mであるシートダイから押し出した。押し出された溶融樹脂を80℃に設定した一対の冷却用ピンチローラーで引き取り、押出方向に溶融樹脂を引っ張りながら樹脂を冷却固化させて厚みが1.5mmの原反シートを作製した。
【0060】
得られたシートを、ロール縦延伸機を使って押し出し方向(MD方向)に温度155℃で3倍延伸した後、テンター横延伸を使って巾方向(TD方向)に温度155℃で3倍延伸し、3×3倍に延伸された白色のシートを得た。この白色シートの平均全反射率は97.0%、坪量と密度は、それぞれ220g/m2、0.48g/cm3であり、厚みは460μmであった。
【0061】
得られた白色シートを、350×250mm角にカットし、各辺を金枠で固定し、155℃に加熱された図1に示した真空成形用の金型上にセットした。金型上に12秒間シートをセットした後、155℃のオーブンに移し、10秒後に真空弁を開け真空成形を行った。15秒後オーブンから金型を取り出し、エアーガンで成形品を急冷した後、成形品を金型から取り出した。得られた成形品は金型形状通りの半円球状の凸部を有する皺のない均一な成形品であった。
【0062】
得られた成形品の坪量は200g/m2、密度は0.44g/cm3であり、シートの平均全反射率は凸面側で96.8%、凹面側で96.6%であった。凸部付与後もシートとして高い反射率を維持していることが分かった。
【0063】
図2は本実施例で得られた反射シートの凸部の断面中央部のSEM写真である。写真では、空洞、及び棒状に分散して島相を形成しているポリカーボネート樹脂とその周囲を取り囲むように海相を形成しているポリプロピレン樹脂が観察された。
【0064】
(実施例2)
実施例1で得られた原反シートを同じくロール縦延伸機を使ってMD方向に温度155℃で3倍延伸した後、テンター横延伸を使ってTD方向に温度155℃で6倍延伸し、3×6倍に延伸された白色のシートを得た。この白色シートの平均全反射率は96.5%、坪量と密度は、それぞれ95g/m2、0.50g/cm3であり、厚みは190μmであった。
【0065】
得られた白色シートを、実施例1と同様に350×250mm角にカットし、同じ金型で真空成形を行った。得られた成形品は金型形状通りの半円球状の凸部を有する皺のない均一な成形品であった。
【0066】
得られた成形品の坪量は90g/m2、密度は0.55g/cm3であり、シートの平均全反射率は凸面側で95.7%、凹面側で96.0%であった。凸部付与後もシートとして高い反射率を維持していることが分かった。
【0067】
(実施例3)
実施例1の押出機を主押出機として実施例1と同じ組成の樹脂を使用した。副押出機として、シリンダー口径が32mmでシリンダーと口径の比が24の単軸押出機を使用して、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社E−105GM)を98体積%(90重量%)、紫外線吸収剤として酸化亜鉛粉末(堺化学社製、商品名Nanofine-50SD、粒子径20nm、真比重5.6)を2体積%(10重量%)を予めペレタイズしておいた混合樹脂を用いて共押出を行った。副押出機のシリンダー温度は210℃、スクリュー回転数は60rpmで行った。積層ダイは2種3層のフィードブロックタイプを使用し、ダイ出口のリップの巾300mmでクリアランスが2.0mmであった。ダイから押し出された溶融樹脂を同じく80℃に設定した冷却用ピンチローラーで引き取り、全厚みが1.8mmの積層原反シートを作製した。得られた原反シートの層構成は、反射シートであるコア層が1340μm、保護層が表裏面各々230μmであった。
【0068】
得られた積層シートを、ロール縦延伸機を使って押し出し方向(MD方向)に温度155℃で3倍延伸した後、テンター横延伸を使って巾方向(TD方向)に温度155℃で3倍延伸し、3×3倍に延伸された白色のシートを得た。この白色シートの平均全反射率は96.8%、反射シートであるコア層の厚みは390μm、保護層は表裏各々25μmであった。反射シートの坪量と密度は、それぞれ180g/m2、0.46g/cm3であった。
【0069】
得られた白色シートを、実施例1と同様に350×250mm角にカットし、同じ金型で真空成形を行った。得られた成形品は金型形状通りの皺のない均一な成形品であった。
【0070】
得られた成形品の坪量は175g/m2、密度は0.50g/cm3であり、シートの平均全反射率は凸面側で96.1%、凹面側で96.4%であった。凸部付与後もシートとして高い反射率を維持していることが分かった。
【0071】
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社E−105GM)を83.4体積%(50重量%)、平均粒径0.8μmの硫酸バリウム(真比重4.5)16.6体積%(50重量%)混合した原料樹脂を、実施例1の2軸押出機を使って、シリンダー温度を250℃、スクリューの回転数が100rpmの運転条件で溶融し、温度を250℃に調整したギヤポンプを介して、リップの巾が400mmでクリアランスが1.7mである単層ダイから押し出した。押し出された溶融樹脂を同様に80℃に設定したピンチローラーで引き取り、冷却固化させて厚みが1.5mmのシートを作成した。
【0072】
得られたシートを、ロール縦延伸機を使って押し出し方向(MD方向)に温度155℃で3倍延伸した後、テンター横延伸を使って巾方向(TD方向)に温度155℃で3倍延伸し、3×3倍に延伸された白色のシートを得た。この白色シートの平均全反射率は95.0%、坪量と密度は、それぞれ410g/m2、1.24g/cm3であり、厚みは330μmであった。
【0073】
得られた白色シートを、実施例1と同様に350×250mm角にカットし、同じ金型を用いて成形温度を150℃にした以外は同様の操作により真空成形を行った。得られた成形品は、一部に皺の発生がみられるとともに、凸部が薄く伸ばされ、透明性が明らかに増しており、平坦部に比べ反射性能が明らかに低下していることが分かった。
【0074】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態における寸法、材質などは例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の反射シートは、従来の反射シートに比べてより高い反射性能を有するとともに表面に凸部を有するので、液晶表示装置等のバックライトの反射材に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例1で本発明の反射シート成形品作製に使用した金型の形状及び構造を示す概略図である。
【図2】実施例1で得られた反射シートの凸部の断面中央部のSEM写真である。
【図3】LEDが配置される際の反射シートの例を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1 反射シート
2 凸部の形状
3 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂(A)と、該ポリプロピレン樹脂に対して非相溶性である樹脂(B)とを含む組成物で構成された反射シートであって、少なくとも一方の主面に凸部を有し、相分離構造が、前記ポリプロピレン樹脂(A)で構成された海相と前記樹脂(B)で構成された島相とからなり、空洞を含有する海−島構造であり、前記反射シートの坪量が30〜500(g/m2)、密度が0.25〜0.75(g/cm3)であることを特徴とする反射シート。
【請求項2】
前記ポリプロピレン樹脂(A)が50体積%〜80体積%、前記樹脂(B)が20体積%〜50体積%であることを特徴とする請求項1記載の反射シート。
【請求項3】
前記ポリプロピレン樹脂(A)の延伸可能な温度における前記樹脂(B)の弾性率が前記ポリプロピレン樹脂(A)の弾性率より大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の反射シート。
【請求項4】
前記樹脂(B)がポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の反射シート。
【請求項5】
前記反射シートの厚さの1/30〜1/3である保護層を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の反射シート。
【請求項6】
前記保護層が前記ポリプロピレン樹脂(A)を80体積%以上含むことを特徴とする請求項5記載の反射シート。
【請求項7】
前記凸部の形状が、球状又は多角錐形状の少なくとも一部の形状、多角錐の頂部を平坦あるいは円弧状にした形状であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の反射シート。
【請求項8】
熱成形によって得られることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の反射シート。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−14775(P2009−14775A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173263(P2007−173263)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】