反射デバイスの形成方法
観測角に応じて変化する光学的に可変の画像を生成する反射デバイスを形成する方法を開示する。この方法は、複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンを提供するステップと、前記一次パターンに対応する二次パターンを提供するステップであって、この二次パターンは、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に潜像を観測可能にするステップとを具え、前記二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成るマイクロミラー素子を有するマイクロミラー・アレイによって提供され、前記一次パターンは、反射デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、MMAの所定のマイクロミラー素子による反射効果を少なくとも1つの観測角において光学的に無効にするように提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、オーストラリア国暫定特許出願2003903501に基づいて優先権を主張し、その開示を参考文献として本明細書に含める。
【0002】
(発明の分野)
本発明は反射デバイスに関するものである。
【0003】
本発明の好適例により作製した反射デバイスを光源によって照射すると、これらのデバイスは1つ以上の画像を生成し、これらの画像は、デバイスの周りの特定の画角範囲(視野角)内で観測される。本発明の好適例のデバイスは、多数の異なる用途に用いることができ、そしてID(Identification:身分証明)証書上の偽造防止セキュリティ・デバイスとしての特定用途を有し、例えば運転免許証、クレジットカード、ビザ、パスポート、及び印刷、電子コピー、及びコンピュータのスキャン技術による偽造に耐える方法での個人の安全な識別が要求される他の有価証券である。
【0004】
本発明の好適例は、銀行券、小切手、クレジットカード、及び株券のような他の金融取引証券用の低コストの偽造防止デバイスとしての特定用途も有する。
【0005】
(背景技術)
なお、本明細書において従来技術文献を参照する場合には、こうした参照は、こうした文献が、オーストラリア国及び他国における従来技術の一般常識的な知識の一部をなすことを認めるものではない。
【0006】
1997年に最初に発行されたアメリカンエキスプレス(登録商標)社の米ドル・トラベラーズチェックの新シリーズは、アメリカンエキスプレスのセンチュリオン(古代兵士の隊長)ロゴ(商標)の回折格子箔(フォイル)の画像を偽造防止機能として採用している。この回折格子箔デバイスが光源によって照射され、異なる画角から観測されると、センチュリオンの画像がアメリカンエキスプレス社のボックス(四角枠で囲んだ)ロゴの画像に切り換わる。このデバイスのこうした光学的可変性は、通常の電子コピーまたはカメラ技術によってコピーすることが不可能であることを保証する。
【0007】
【特許文献1】米国特許 5,825,547
【特許文献2】米国特許 6,088,161
【特許文献3】欧州特許 EP 330,738
【特許文献4】欧州特許 EP 105,099
【0008】
この可変の光学的挙動を示す回折格子デバイスは、光学的可変デバイス(OVD:Optically Variable Device)と称され、有価証券を保護するための偽造防止方策としてのその利用は成長し続けている。知的所有権のある特定の光学的可変デバイス及び今日までの応用は、ハンガリー銀行券の新シリーズ、アメリカンエキスプレス社の米ドル及びユーロ・トラベラーズチェック、ウクライナ国のビザを保護するために使用されているEXELGRAM(登録商標)デバイス、及びスイス銀行券の現シリーズ及び低額のユーロ銀行券を保護するために使用されているKINEGRAM(登録商標)デバイスを含む。EXELGRAMデバイスは米国特許番号5,825,547及び6,088,161に記載され、KINEGRAMデバイスは欧州特許EP 330,738及びEP 105,099に記載されている。
【0009】
【特許文献5】欧州特許 EP 0 490 923 B1
【特許文献6】米国特許 5,428,479
【0010】
EXELGRAM及びKINEGRAMデバイスは、公式文書の偽造に対する高度に有効な防止手段であることが証明されている箔ベースの回折構造の例である。このクラスの光学的回折性の偽造防止デバイスは、欧州特許番号EP0 490 923 B1及び米国特許番号5,428,479に記載されているPIXELGRAM(登録商標)デバイスも含む。PIXELGRAMデバイスは、相対回折構造を生成することによって製造され、この構造では、光学的に不変の画像の各画素が、PIXELGRAMデバイス上の対応する小さい回折画素領域にマッピング(写像、対応付け)される。
【0011】
【特許文献7】国際特許出願 PCT/AU02/00551
【0012】
OVDを生成するための代わりの技術は、ホット(熱間)スタンプ箔を使用しない光学的可変デバイスの直接印刷用のマイクロミラー(微小鏡)アレイの使用である。光学意的可変画像の直接印刷用のマイクロミラー・アレイは、国際特許出願PCT/AU02/00551、発明の名称”An Optical Device and Methods of Manufacture”に記載されている。
【0013】
これらの箔ベースの回折性及び反射性の光学的可変デバイスは、その産業上の有効性もかかわらず、パスポートまたは運転免許証の写真、あるいは身分証明(ID)カードの画像の場合のような個人の画像の安全な識別が要求される小体積の応用及び一度限りの応用には、特定の不足点を有する。
【0014】
現時点では、回折性OVDを用いてID文書上の個人の顔写真の画像を保護する技術は、この個人に特有のOVD画像の生成、人物の写真を透明なOVDラミネート(積層)フィルムでカバーすること、あるいは標準的なOVD画像をID文書上の文書に隣接した領域内に含めることを含む。最初の場合には、そのプロセスは、個人毎に新たなOVDの原版を生産し、そしてエンボス(打出し、浮彫り)加工技術によってホット(熱間)スタンプ箔を生産する必要性により極めて高価かつ時間を要する。セキュリティ目的用のOVD原版のコストは、技術の種類及び要求されるセキュリティ(安全性)のレベルに依存して5,000米ドルから50,000米ドルまで変化するので、ID用途向けの個人特有のOVD原版の使用は、コスト上の理由だけで見込みがない。
【0015】
一般的に言って、OVD原版の高コストは、この種の偽造防止技術は大量生産用途にしか適していないことを意味し、大量生産用途では原版のコストは、同一のホットスタンプ箔を大量生産するうちに償却することができる。透明OVD被せ(オーバレイ)フィルムの使用及び一般的なOVD画像の使用は、ID用途向けの箔を生産するうちにOVD原版のコストを償却するために現在採用されている方法である。しかし、これらの場合には、透明被せフィルムまたはOVD画像は個人特有ではなく、従って、異なる個人がこのID文書を使用可能にすべく、透明フィルムをはがして、元の写真画像を代わりの画像に置き換えることによって、代用または偽造の文書を生成することができるというリスクが存在する。
【0016】
【特許文献8】米国特許 5,374,976
【非特許文献1】”Optical Document Security, Second Edition”
【0017】
応用のセキュリティのために開発された他の技術は、スクリーン角度変調(”SAM”:Screen)、またはその微小版である”μ−SAM”として知られ、米国特許5,374,976、及びSybrand Spannenbergによる著書”Optical Document Security, Second Edition”(Rudolph L. van Renesse編集、ロンドンのArtech House発行、1998年)の第8章の169〜199ページに詳述されている。この技術では、周期的に配列された細く短い線のセグメント(区分)のパターン中に、これらのセグメントの角度を互いに対して連続的か段階的かのいずれかで変化させることによって潜像を生成する。このパターンは、巨視的に見れば一様な中間的な色またはグレースケール(中間調)として見えるが、このパターンを非変調の同じパターンと共に透明基板上に重ねると、潜像が観測される。
【0018】
上述したように、これらの技術は、変調されたアレイをこれに対応する非変調のアレイに重ねるか、あるいはその逆を行って潜像を出現させることを含む。
【0019】
この技術の変調及び非変調のアレイは通常、プリント(印刷)技術によって作製される。この理由により、この技術は回折性のOVDほど安全ではない、というのは、この技術は、回折性OVDのずっと小規模な微小構造よりもリバース・エンジニアリング(製品分析)が行いやすいからである。
【0020】
認証デバイスを生産する代わりの方法を提供することが望まれる。
【0021】
(発明の概要)
本発明は、その第1の広い態様では、観測の角度に応じて変化する光学的に可変の画像を生成する反射デバイスを形成する方法に関するものであり、この方法は:
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンを提供するステップと;
前記一次パターンに対応する二次パターンを提供するステップであって、この二次パターンは、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に前記潜像を観測可能にするステップとを具え、前記二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数のマイクロミラー素子を有するマイクロミラー・アレイ(MMA:Micro Mirror Array)によって提供され、
前記反射デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記MMAの所定のマイクロミラー素子による反射効果を少なくとも1つの観測角において光学的に無効にするように、前記一次パターンを提供する。
【0022】
一部の好適例では、前記一次パターンを、前記二次パターン上に重ねることによって提供する。
【0023】
さらに他の好適例では、前記一次パターンを、前記第2パターンと位置整合させて印刷することによって提供する。
【0024】
他の好適例では、前記マイクロミラー素子を光学的に無効にすることによって前記一次パターンを提供する。好適例によっては、前記マイクロミラー素子を(例えばレーザー・アブレーション(レーザーによる瞬間的除去)を用いて)物理的に除去するか、あるいは、前記マイクロミラー素子が強度な反射を行わない程度にその反射能力を低減することによって、光学的に無効にすることができる。
【0025】
前記2種類のマイクロミラー素子は一般に、規則的なパターンで提供する。一般に、この規則的なパターンは、少なくとも2種類のマイクロミラー素子を、画素化したパターンかトラック状のパターンのいずれかの形に配列することによって提供する。画素化したパターンの例はチェッカーボード(市松模様)パターンであり、ここでは2種類の複数のマイクロミラー素子が矩形アレイの形に配列され、これら2種類の領域は水平軸及び垂直軸の各方向に交互する。
【0026】
ここでは、前記マイクロミラー素子の事前選択した領域からの反射光の強度を他のマイクロミラー素子と比べた点で、これらの事前選択した素子による反射効果が解消されるか大幅に低減される意味で、前記マイクロミラー素子が「光学的に無効」にされる。
【0027】
本発明の方法はさらに、マイクロミラー素子を作製するための次のステップを含む:
I) 電子ビーム・リソグラフィー及びウェットまたはドライ・エッチング技術によって可変透明度のフォトマスクを作製するステップ;
II) 前記フォトマスクを光接触印刷または投射システム内で用いて、インターレースされ(織り交ぜられ)所望のパターンに構成された2種類のマイクロミラー構造の表面レリーフパターンを作製するステップ;
III) 前記作製したマイクロミラー・アレイ構造に適用される電気メッキ技術の使用によって、印刷プレート・エンボス加工ダイを作製するステップ;
IV) スクリーン印刷技術を用いてインクを紙またはポリマー基板に塗布して、前記マイクロミラー・アレイ構造を前記インク塗布された基板内にエンボス加工するステップ;
【0028】
前記一次パターンを前記二次パターン上に重ねることによって提供する好適例では、前記一次パターンを透明基板上に設け、前記二次パターンをエンボス加工された基板の形で提供し、前記方法は、前記一次パターンを前記OVDの二次パターンと位置合わせして適正な位置整合状態にし、これにより、前記一次パターン中に符号化された前記潜像の画像要素が、前記二次パターンの前記マイクロミラー素子を光学的に無効にする。
【0029】
本発明の別な態様では、前記マイクロミラー素子が追加的に、安全かつ汎用的な光学的可変効果を生成すべく符号化され、そして重ねられるIDスクリーンまたは一次パターンは、フィルムを文書からはがすと個人の画像が消失する方法で、特定個人に特有の画像情報を伴って符号化される。この好適例は、現在のOVDラミネーション(積層)技術に対してIDのセキュリティを大幅に強化する、というのは、OVD基板も符号化された重ね(オーバレイ)スクリーンも、現在の写真または印刷技術を用いた改変に対して無防備ではないからである。
【0030】
前記一次パターンを印刷する本発明の好適例では、前記一次パターンを、事前にエンボス印刷された汎用OVDのマイクロミラー・アレイ(MMA)基板の最上面に直接印刷し、これにより、MMA及びこれに重ねられたスクリーン境界面をはがすことによるリバース・エンジニアリングを防止することによって、増加されたセキュリティを提供する。
【0031】
マイクロミラー素子を部分的に改変する本発明の別な代案の好適例では、前記エンボス加工されたMMAをレーザー加熱することによって前記一次パターンを直接、OVD MMA中に含ませ、これにより、一次パターン・データファイルによって決まるOVD領域内の選択位置にある特定のマイクロミラー素子を破壊する。本発明のこの実現は、前の直接印刷法の代案に対してID画像の耐久性を改善する、というのは、符号化された画像情報をエンボス印刷されたMMAから消去する可能性が存在しないからである。
【0032】
多数の技術を用いて、適切な一次及び二次パターンを生成することができる。これらの技術は、潜像を符号化する変調された画像要素のアレイ(一次パターン)、及びこれに対応し、前記変調されたアレイと位置整合された際に前記潜像を復号化する非変調の画像要素のアレイ(二次パターン)を生成する特徴を共用する。前記変調及び非変調のアレイは共に、複数の離散画像要素に分割されるので、これらの変調及び非変調のアレイは「ディジタル」画像と称するにふさわしい。従って、本明細書ではこの種の技術を集合的に、「変調ディジタル画像(MDI:Modulated Digital Images)」と称する。適切なMDI技術の例は、SAM、μ−SAM、並びにPHASEGRAM(登録商標)、BINAGRAM(登録商標)、及びTONAGRAM(登録商標)を含む。
【0033】
【特許文献9】オーストラリア国暫定特許出願 2003905861
【0034】
PHASEGRAMは、オーストラリア国暫定特許出願番号200305861、発明の名称”Method of Encoding a Latent Image”、2003年10月24日出願に記載され、これに対応するPCT出願は、2004年7月7日に出願されている。この技術では、パターンの周期性を選択的に変化させることによって、画像を局所的に周期的なパターンに符号化している。透明基板上で元のパターン上に、あるいは元のパターンと重ねると、(重ね合わせの)位置整合の正確さ次第で、潜像、あるいは潜像の陰画の種々の陰影が観測者にとって可視になる。
【0035】
【特許文献10】国際特許出願 PCT/AU2004/00746
【0036】
BINAGRAMは、国際特許出願番号PCT/AU2004/00746、発明の名称”Method of Encoding a Latent Image”、2004年6月4日出願に記載されている。この技術では、画像を隣接または近接した画素の対に分割し、これらの画素対は局所的に周期的にすることもしないこともできる。そして、各対における一方の画素を、相補的なグレースケールまたは色特性に変調する。透明基板上で等価な非変調のパターン上に、あるいはこのパターンと重ねると、(重ね合わせの)位置整合の度合い次第で、潜像またはその陰画が可視になる。
【0037】
本明細書に規定する一次パターンは一般に、二次パターンの変調版(バージョン)である。一次パターンは潜像または画像を符号化するかあるいは含み、これらの潜像または画像は、この一次パターンが対応する二次パターン上に重ねられた際のみに(本発明の好適例ではOVDの形で)現われる。一般に、一次パターンは矩形であり、従って、その画像要素は矩形アレイの形に編成される。しかし、画像要素は他の方法で配列することができる。画像要素は一般に、周期的な形に配列され、例えば一列おきまたは一行おきに交互する、というのは、このことは重ね合わせにおいて二次パターンを一次パターンに最も容易に位置整合させることを可能にするからである。しかし、画像要素のランダムまたはスクランブル(混ぜ合わせ)された配列を用いることもできる。
【0038】
本明細書では、「二次パターン」とは2つの文脈で用い、即ち、(この一次パターンの性質次第で)一次パターンに重ねるか一次パターンを重ねた際に、この一次パターンを復号化するパターンを述べるか、あるいは、こうした二次パターンを基板に適用したものを述べるかのいずれかである。本明細書に記載のマイクロミラー素子のアレイ(マイクロミラー・アレイ(MMA))を形成すべく二次パターンを適用した際には、この二次パターンは、特定の観測角において光を有効に反射させる画像要素(「オン」マイクロミラー素子)または光の反射を無効にする画像要素(「オフ」マイクロミラー素子)のいずれかに対応するマイクロミラー素子から成る。これらのマイクロミラー素子は、潜像を符号化するために用いる一次パターンに対応する二次パターンの形に配列することもできる。さらに、物理的な二次パターン中のマイクロミラー素子の物理的寸法は、使用する一次パターンに対応する二次パターン画像の画像要素の物理的寸法と同一である。前記「オン」及び「オフ」マイクロミラー素子は、光源で照射された際に、潜像または潜像に関連する画像が現われる一次パターン内の画像要素が明暗付けされるように配列する。デバイスの光学的可変性は、画角を他の特定画角に変化させ、すべての「オフ」マイクロミラー素子が「オン」画素に変化するかあるいはその逆になる際に達成される。要求されるコントラストを達成するためには、すべての「オン」マイクロミラー素子があらゆる特定観測角において光を反射させなければならず、そしてこの角度においてすべての「オフ」画素が光を反射させないことが必要である。
【0039】
二次パターンは一般に、「オン」及び「オフ」マイクロミラー素子の矩形アレイである。例えば、二次パターンはトラック状にすることができ、即ち、「オン」マイクロミラー素子の垂直ライン複数本とすることができ、各ラインは1つのマイクロミラー素子の幅であり、同一幅の「オフ」マイクロミラー素子の垂直ラインによって互いに分離されている。他の代表的な二次パターンは、「オン」及び「オフ」マイクロミラー素子のチェッカーボード(市松模様)とすることができる。しかし、(一次パターンとの)適正な位置整合時に、二次パターン中の「オン」マイクロミラー素子が、潜像が現われる一次パターン中のすべての画像要素を明暗付け可能である限りは、ランダム及びスクランブルされたアレイを用いることもできる。
【0040】
本明細書では、二次パターンは「バックグランド(背後の)OVD」または「バックグランドMMA」とも称する。
【0041】
【特許文献11】オーストラリア国暫定特許出願 2004900187
【0042】
二次パターンから一次パターンを生成するために用いることのできる他の技術はTONAGRAMとして知られ、オーストラリア国国暫定特許出願 2004900187、”Method of Concealing an Image”、2004年1月17日出願に記載されている。
【0043】
この技術では、BINAGRAMまたはPHASEGRAMのようなMDIを数学的に、顔写真のような公開画像と数学的に組み合わせ、これにより、公開画像及び1つ以上の隠蔽された潜像を共に含む一次パターンにする。この一次パターンを対応する二次パターンと重ねると、潜像が現われる。同じ方法で、本明細書に記載する種類のマイクロミラー・アレイから成る二次パターンを、印刷されたTONAGRAMの一次パターンと重ね合わせて、これにより、すべての観測角で見ることのできる公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見ることのできる1つ以上の潜像を含むOVDにすることができる。あるいはまた、二次パターンとして作用する空白キャンバス・マイクロミラー・アレイを、TONAGRAMアルゴリズムに従って、選択した領域内で光学的に無効にすることができる。これにより、すべての観測角で見ることのできる公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見ることのできる1つ以上の潜像を含むOVDが生成される。
【0044】
本発明は、反射認証デバイスのような反射デバイス、あるいは以上の方法によって生産される新案物にも拡張され、並びに、こうした反射デバイスを内蔵する文書または証券にも拡張される。
【0045】
本発明の他の広い態様では、本発明は、観測角に応じて変化する光学的に可変な画像を生成する反射デバイスに関するものであり、この反射デバイスは、
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンと;
前記一次パターンに対応する二次パターンであって、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に、前記潜像を観測可能にする二次パターンとを具え、この二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数のマイクロミラー素子を具えたマイクロミラー・アレイ(MMA)によって提供され、
認証デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記MMAの所定のマイクロミラー素子による反射効果を、少なくとも1つの観測角において光学的に無効にするように、前記一次パターンが設けられている。
【0046】
以上で概説したように、MDI二次パターンの配列にパターン化されているが、印刷されたMDIパターンの代わりに2種類のマイクロミラー素子を用いるマイクロミラー・アレイは、対応するMDI一次パターンによってマスクして、OVD効果の形態のMDI潜像を生成することができる。結果的なハイブリッド(混成)OVD−MDI(本明細書ではMM−VOID(またはマイクロミラー可変光学識別デバイス:Micro Mirror Variable Optical Identification Device)と称する)は光学的に可変の属性を表示し、この属性は偽造が困難であるが、それにもかかわらず容易にカスタマイズ(顧客対応)できる、というのは、前記一次パターンは容易に印刷可能であり、OVDベースの前記二次パターンは一般的な形に大量生産可能だからである。
【0047】
従って、本発明の好適例は、画像の光学的に可変の側面と身分証明の側面とを分離して、これら2つの側面を別個に製造して上重ね(オーバレイ)の方法で再結合可能にすることによって、セキュリティ文書上の画像の保護へのより一般的かつ有用な取り組みを提供する。換言すれば、本発明は、一般的な種類の反射OVDマイクロミラー・アレイ内にOVD保護を取り入れ、このOVDマイクロミラー・アレイは保護すべき文書上にエンボス印刷され、そしてこのMMAは、符号化されたID情報を含む透明フィルムと重ね合わされるか、このID情報パターンと位置整合されて印刷される。これら2つの効果の組合せにより、符号化された顔写真が、OVD効果を表わす潜像として現われる。
【0048】
さらに、本発明の好適例では、印刷またはエンボス加工技術を用いて好適例におけるMMAを生産することは、第1に費用効果的であり、第2にMMAを局所的に作製することを可能にする。このことはセキュリティを改善する、というのは、MMAを含む材料を搬送する必要がないからである。
【0049】
本発明のさらなる特徴は、以下の本発明の好適な実施例より明らかになる。
【0050】
以下、本発明の好適な実施例について図面を参照しながら説明する。
【0051】
(実施例及び図面の詳細な説明)
最初に、本発明の好適な実施例を、MDI一次パターンをマイクロミラー・アレイの形態の二次パターンと組み合わせることによって生成可能な視覚効果に関連して説明する。この説明に続いて、反射認証デバイスを構成するいくつかの可能な技術について説明する。
【0052】
図1に、バックグランドMMA(または二次パターン)の例を示す。図1では、異なる陰影を有する画素領域が2つの異なる種類の反射マイクロミラー素子を表わし、この構造は拡大部分10で最も良くわかる。簡単のため、これらの陰影を、赤色(レッド、明るい方の陰影)及び青色(ブルー、暗い方の陰影)と称する。マイクロミラー画素領域の代表的な寸法は30ミクロン×30ミクロンまたは60ミクロン×60ミクロンである。一部の用途では、用途に要求される画像解像度に応じて、この寸法をこれらの図より小さくすることも大きくすることもできる。
【0053】
図2に、バックグランドOVD微小構造または二次パターンの他の構成を示す。図2では、赤色及び青色のストリップまたはトラック領域が、2つの異なる種類のMMAを表わし、この構造は拡大部分20で最も良くわかる。代表的には、これらのトラックの幅は30ミクロンまたは60ミクロンである。一部の用途については、用途に要求される画像解像度に応じて、この寸法をこれらの図より小さくすることも大きくすることもできる。これらのトラックの長さは、用途に要求される画像領域の関数であり、20mmまたはそれ以上とすることができる。最大深度は一般に、図11の顕微鏡写真に示すように20mmであり、ここではマイクロミラー素子は2つの異なる傾斜を有する。
【0054】
MDI二次パターンの選定は実施例に依存する。
【0055】
図3に、第1の好適な実施例の一次パターンを示し、このパターン中に、図2に示す二次パターンの変調によって画像を符号化する。変調されたディジタル画像(MDI)を形成する方法は、BINAGRAMの方法である。
【0056】
BINAGRAMでは、一次パターンは一般に、原画像から形成される。原画像が写真である例では、次にこの原画像をディザ処理して、一組の一次視覚特性のうちの1つを有する画像要素にする。この一次視覚特性は、実施例次第でグレースケール値または色相である。好適な実施例では、前記画像要素を対応する二次パターンと重ねた際に、各対における一方の画像要素が赤色トラックに対応し、他方の画像要素が青色トラックに対応するように、前記画像要素を対にする。そしてこれらの画像要素を変換する。代表的な変換では、各対における一方の画素は、この対の視覚特性の平均値をとり、他方の画素には相補的な視覚特性が割り当てられる。従って、各対における一方の画素は原画像からの情報を担うべく作用し、他方の画素はこの情報を隠す。
【0057】
一次パターンを形成する代わりの方法は、Adobe Photoshop(登録商標)のようなコンピュータグラフィックス・プログラムを使用して、顔写真のような原画像の陽画調及び陰画調のバーション(版)を共に生成するものである。そしてこれらの陽画調及び陰画調の画像は、次のことによって一次パターンに組み合わせることができる;
最初に、前記陽画調画像を二次スクリーンの「オン」画素でフィルタ処理し(即ち、前記二次スクリーン上の「オフ」画素の位置に対応するすべての画素を前記陽画調画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された陽画調画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
2番目に、前記陰画調画像に、この陰画調画像を前記二次パターンの「オフ」画素でフィルタ処理することによる逆の手順を適用し(即ち、前記二次スクリーン上の「オン」画素の位置に対応するすべての画素を前記陰画調画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された陰画調画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
最後に、フィルタ処理しディザ処理したバージョンの前記陰画調画像及び前記陽画調画像の両方を重ね合わせて、入力された顔写真画像の結果的な一次パターン・バージョンを得る。
【0058】
図4に、図3の一次パターンを図2の二次パターンに単純加算したものを示し、ここでブラック(黒色)画素は消去されることによって光学的に無効にされ、ダークグレー画素は保持された元の青色画素を示し、ライトグレー画素は保持された元の赤色画素を示し、この様子は拡大部分40を参照すれば最も良く見ることができる。
【0059】
図5に、1つの特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、赤色のOVDトラックは「オン」状態であり、従って明確にするために白色で表わし、青色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子は拡大部分50で最も良くわかる。図6に、他の特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、青色のトラックは「オン」状態であり、従って明確にするために白色で表わし、赤色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子は拡大部分60で最も良くわかる。
【0060】
図5及び図6に光学的に可変の効果が印刷技術によって生成される様子を示し、これは、バックグランド・キャンバスが、2グループのマイクロミラー素子から成るOVD MMA(即ち、二次パターン)で構成される場合である。これらの図に示すOVD効果は、画角の変化に伴い顔写真画像が陽画調から陰画調に切り換わるスイッチに相当する。
【0061】
バックグランドOVDキャンバスを用いて印刷画像を光学的に可視の形態に変換するこうした原理は、2チャンネルOVD画像の場合に拡張することができる。以下、こうしたプロセスの例について説明する。
【0062】
図7に、2チャンネル画像から成る一次パターンを示す。この場合には、この一次パターンは、図1に示す二次パターンの変調形態であり、2つの別個の潜像を符号化する。画像の2面が重なる(オーバラップする)所の詳細を拡大部分70に示す。
【0063】
2チャンネル画像に対応する一次パターンは、Adobe Photoshopのようなコンピュータグラフィックス・プログラムを用いて提供することもできる。2つの入力原画像は、次のことによって一次パターンに組み合わせることができる;
最初に、第1画像を二次スクリーンの「オン」画素でフィルタ処理し(即ち、前記二次スクリーン上の「オフ」画素の位置に対応するすべての画素を前記第1画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された前記第1画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
2番目に、第2画像に、この第2画像を前記二次パターンの「オフ」画素でフィルタ処理することによる逆の手順を適用し(即ち、前記二次スクリーン上の「オン」画素の位置に対応するすべての画素を前記第2画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された前記第2画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
最後に、フィルタ処理しディザ処理したバージョンの前記第1画像及び前記第2画像の両方を重ね合わせて、前記2つの入力画像に対応する結果的な2チャンネル一次パターンを得る。
【0064】
図8に、図7と図1との加算を示し、ここでブラック画素は消去されることによって光学的に無効にされ、ダークグレー画素は保持された元の青色画素を示し、ライトグレー画素は保持された元の赤色画素を示し、この様子は拡大部分80を参照すれば最も良く見ることができる。
【0065】
図9に、1つの特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、赤色のOVD画素は「オン」状態であり、従ってより明確にするために白色で表わし、青色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子を拡大部分90に示す。
【0066】
図10に、他の特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、青色のトラックは「オン」状態であり、従ってより明確にするために白色で表わし、赤色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子を拡大部分100に示す。
【0067】
図9及び図10は、2チャンネルの光学的に可変の効果は印刷技術によっても生成可能であることを確証するものであり、これは、バックグランド・キャンバスが、2グループのマイクロミラー・アレイから成るOVD MMA(即ち、二次パターン)で構成される場合である。これらの図に示すOVD効果は、画角の変化に伴い1つの陽画調顔写真から他の陽画調顔写真に切り換わるスイッチに相当する。
【0068】
図1〜10に示す例は、この新規の発明の2つの特定実施例を示すことを意図したものである。本発明の他の多くの実施例が可能であり、これらの応用の一般性は、本発明を、ID文書用、また銀行券、小切手、及び印刷、コンピュータ・スキャン、及びカラーコピー技術によって偽造される恐れのある他の金融取引文書の認証のための身元検証の領域に特に適したものとする。
【0069】
本発明の別な実施例は、上述した2チャンネルのメカニズムが、2チャンネルにおける画像用のバーコード・パターンを用いることによって、個別の方法でのデータ符号化の可能性をもたらす、ということを認識することによって実現することができる。その結果はマイクロミラー・バーコードの形になり、第1バーコード・パターンがレーザーによって第1画角において読取り可能であり、これと異なる第2バーコード・パターンが第2画角において読取り可能である。データのセキュリティ(安全性)及び完全性は、2つのバーコード成分が関与するソフトウェア相関プロセスによって保証される。データの書込みは、2つのバーコードを反射マイクロミラーのバックグランド(背後)上に、2つの異なるミラー角のマイクロミラー・トラックのインターレース(織り交ぜ)の形にインターレースする(織り交ぜる)ことを含む印刷プロセスによって達成される。
【0070】
上述した概念は、2チャンネル画像の場合を含むように拡張することもでき、ここで1つのチャンネルの画像は、二次パターン微小構造を製造した時点で固定の一般的な画像である。そして第2チャンネルの画像は、コンピュータグラフィックス・プログラムを用いて、デバイスの使用時点で個性化可能な一次パターンを生成することによって構成される。この種の応用の例がパスポートの応用である。オーストラリア国のパスポートの場合には、前記一般的画像はオーストラリア国の紋章とすることができ、前記第2チャンネル画像はパスポート保有者の顔写真画像であり、前記デバイスはパスポートのデータページ中に内蔵させることができる。このデータページの画角が変化すると共に、認証デバイスによって生成される画像は、パスポート保有者の画像から前記紋章の画像に変化し、これにより、パスポート保有者がオーストラリア国の市民であることを確かに確証する。
【0071】
本発明による反射認証デバイスを形成する1つの方法は、次のステップを含む:
I) 電子ビーム・リソグラフィー及びウェットまたはドライ・エッチング技術によって可変透明度のフォトマスクを作製するステップ;
II) 前記フォトマスクを光接触印刷または投射システム内で用いて、画素化された構成(例えば図1)またはトラック状の構成(例えば図2)に配列された、2種類のインターレースされたマイクロミラー構造を作製するステップ;
III) 前記作製したマイクロミラー・アレイ構造に適用される電気メッキ技術の使用によって、印刷プレート・エンボス加工ダイを作製するステップ;
IV) スクリーン印刷技術を用いてインクを紙またはポリマー基板に塗布して、エンボス加工技術によって前記マイクロミラー・アレイ構造を前記インク塗布された基板内にエンボス加工して、マイクロミラー素子のアレイを作製するステップ;
V) (例えば、特定人物及び/または物体、あるいはデザインの)潜像として見える1つ以上の画像を、画素化された、あるいはトラックベースの一次パターンに符号化し、この一次パターンは、二次パターンに対応する複数の画像要素を有するステップ;
VI) 前記一次パターンの物理的表現を、マイクロミラー・アレイのバックグランドOVDの最上面に追加するステップであって、この追加は、バックグランド微小構造の選択領域を、これらの事前選択領域からの反射光の強度の点で、これらの領域からの反射効果が解消されるか大幅に低減される意味で光学的に無効にする方法で行うステップ。事前選択された各無効領域の位置及び面積は前記一次パターンから決まる。
【0072】
一般に、前記二次パターンがトラック状であれば、各トラックは1ミクロン以上の幅を有し、そして少なくとも1つのトラックが1mm以上の長さであるのが一般的である。
【0073】
前記二次パターンが、マイクロミラー素子の画素化されたアレイであれば、各マイクロミラー素子は一般に、1ミクロン以上のエッジ長を有する。
【0074】
実施例次第では、各マイクロミラー素子内で、マイクロミラー面の形状、曲率または傾斜を変調または変化させることができる。
【0075】
各マイクロミラー素子内のマイクロミラー面の変調は、デバイスからの特定距離におけるこれらの素子からの反射光の反射効率を、これらの距離における反射光の焦点合わせによって最大化するように設計することが好ましい。各マイクロミラー素子内のマイクロミラー面の変調は、凸形または凹形に整形されたマイクロミラー面によって記述することができる。
【0076】
1つの好適例では、前記2種類のマイクロミラー素子の一方のマイクロミラー傾斜を、マイクロミラー領域の第2グループのマイクロミラー面の傾斜に対して直角をなすように構成する。
【0077】
前記一次パターンは、多数の異なる方法で追加することができる。
【0078】
1つの方法は、一次パターンファイルを印刷した透明フィルムをバックグランドMMAの最上面に重ねることであり、この透明スクリーンの印刷領域は印刷プロセスによって反射光に対して不透明にし、これにより、反射光を光学的に無効にする。
【0079】
あるいはまた、一次パターンをバックグランドOVD MMAの最上面に直接印刷して、反射光に対して不透明であるか部分透過性に過ぎない反射バックグランドの選択領域を作製し、これにより、これらの選択領域を光学的に無効にする。
【0080】
さらなる代案の技法は、バックグランドMMAの選択したマイクロミラー素子のレーザー・アブレーションを用いて、これらの領域を無反射にするか、あるいはこれらの領域の反射光の強度を大幅に低減し、これらのアブレート領域の分布は一次パターンによって決まる。
【0081】
前記OVD MMAは、エンボス加工して転送箔にし、この転送箔はホットスタンプ・プロセスによって、あるいは箔ベースのラベルとして、保護すべき文書に貼り付けることができ、こうしたラベルは、偽造に対する保護を必要とする文書に粘着させる。
【0082】
代表的な文書は、パスポート、ビザ、クレジットカード、運転免許証、社会保険カード、銀行券、小切手、株式証書、あるいは偽造または変造に対して文書を保護すべき他のあらゆる種類の金融取引文書を含む。
【0083】
【特許文献12】オーストラリア国特許暫定出願 2002952220
【0084】
上述した一次パターンを生成するためのBINAGRAM法に加えて、一次パターンは、”SAM”または”μ−SAM”として知られている技術により生成することができ、この技術は、米国特許5,374,976、及びSybrand Spannenbergによる著書”Optical Document Security, Second Edition”(Rudolph L. van Renesse編集、ロンドンのArtech House発行、1998年)の第8章の169〜199ページに詳述され、あるいは、PHASEGRAM(オーストラリア国暫定特許、発明の名称”Method of Encoding a Latent Image”、オーストラリア国暫定特許番号2002952229(2002年10月23日))として知られている技術において生成することができる。
【0085】
この技術では、パターンの周期性を選択的に変化させることによって、画像を局所的に周期的なパターンに符号化している。透明基板上で元のパターン上に、あるいは元のパターンと重ねると、(重ね合わせの)位置整合の正確さ次第で、潜像、あるいは潜像の陰画の種々の陰影が観測者にとって可視になる。
【0086】
画像の周期性は、画像要素を位相シフト(移相)させて符号化した画像を生成することによって変化させられる。即ち、視覚特性の値(例えば色合いのグレースケール値)に応じて異なる変位を画像要素に与える。PHASEGRAMの実施例は一般に、N個のマイクロミラー素子の幅でマイクロミラー素子の種類が交互する複数列に配列された二次パターンを利用する。このことは、N+1個の視覚特性値を符号化することを可能にする。
【0087】
潜像(視覚可能になることを所望される画像)は、原画像を取得し、視覚特性の許容値の集合中の1つのみをとる画像要素に分割することによって形成される。従って潜像は、予備的な一次パターンに関連し、この一次パターンは、二次パターンの画像要素に対応する画像要素を有する。そしてこの一次パターンの画像要素を、各画像要素に関連する潜像要素の視覚特性の値との関係に応じて変位させて、この潜像を符号化する最終的な一次パターンを形成する。
【0088】
種々の異なる変位方式を用いることができる。その一例では、M個の陰影または色相が存在し、第1の陰影または色相に関連する画像要素は1つの画像要素分(例えば、マイクロミラー素子の幅に相当する距離)だけ変位され、第2の陰影または色相に関連する画像要素は2つの画像要素分だけ変位され、等とし、M番目の陰影または色相に関連する画像要素はM個の画像要素分だけ変位される。
【0089】
二次パターンから一次パターンを生成するために使用可能な他の技術はTONAGRAMとして知られ、オーストラリア国暫定特許出願2004900187、発明の名称”Method of Concealing an Image”、2004年1月17日出願に記載され、参考文献として本明細書に含める。
【0090】
この技術では、MDI、例えばBINAGRAMまたはPHASEGRAMを公開画像、例えば顔写真と数学的に組み合わせて、これにより、この公開画像及び1つ上の隠蔽された潜像を共に含む一次パターンにする。(この一次パターンを)対応する二次パターンと重ねると、この潜像が現われる。同じ方法で、本願で説明した種類のマイクロミラー・アレイから成る二次パターンを、印刷されたTONAGRAMの一次パターンと重ねて、これにより、すべての観測角で見える公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見える1つ以上の潜像を含むOVDにすることができる。あるいはまた、二次パターンとして作用する空白キャンバスのマイクロミラー・アレイを、TONAGRAMアルゴリズムにより選択した領域内で光学的に無効にすることができる。これにより、すべての観測角で見える公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見える1つ以上の潜像を含むOVDが生成される。
【0091】
さらなる代わりの2チャンネル技術は、独立しているが同一の2つの潜像を符号化することを含むことができ、これらの潜像は少しオフセットした(離れた)2つの観測角で観測可能であり、このオフセットは、人間の観測者が適切な画像表面からの距離で観測した際に、立体(ステレオ)効果によって観測者が三次元画像を知覚できるように選定する。
【0092】
従って、別な実施例では、2つの同一画像を符号化するマスク(例えば一次パターン)を生成することができ、このマスクは、適切な二次パターン、例えば本明細書に開示する二次パターンと重ねた際に、これらの画像を互いにオフセットした(離れた)観測角で観測可能にする方法で、これらの画像を符号化する。
【0093】
二次パターンが図1に示すものである2チャンネルの場合には、一次パターンは次の技法によって生成することができる:
原画像の陽画調バージョンをチェッカーボードのパターンに細分し、チェッカーボードの交互するセルの一方(例えばすべての「ブラック(黒色)」セル)をすべて除去し、そして画像の残りの半透明バージョンをバイナリ・ディザまたはサンプリングの技法によって生成し、主題の陰画調画像に基づいて、結果的な陽画調画像の細分されバイナリ・ディザ処理されたバージョンにチェッカーボードに細分された第2の画像を重ね、この場合には、細分されたチェッカーボードのセルの逆の方(例えばすべての「ホワイト(白色)」セル)をすべて除去して、これらの領域を、主題の陽画調原画像の対応するバイナリ・ディザ処理された(「ブラック」)セルが占めることを可能にする。
にする。
【0094】
種々の追加的な変形は当業者にとって明らかである。例えば、バックグランドMMAは、一般的な性質であり、反射デバイスによって認証される人物、物体またはデザインに特有でない光学的効果を含むこともできる。さらに、このデバイスのMMAは、幅60ミクロン以下のサイズの極めて小規模な画像を含むこともでき、これらの画像は、MMAの微視的な検査によるより高度な認証またはセキュリティを提供するために用いることができる。
【0095】
現在のMMAデバイスの、箔ベースのOVDデバイスに対する1つの利点は、ホットスタンプ箔の必要性がなく、このことは、大量生産が要求される用途にとってずっと低いコストを可能にする、ということによってもたらされる。このより低いコストは、MMAエンボス加工プロセスを、特定文書を生産するために用いる種々の印刷プロセスと調和すべく構成することによって達成される。
【0096】
さらに、本発明の実施例は、回折デバイスに対しずっと高いセキュリティ(安全性)も提供する。このことは、部分的には、マスターMMAのエンボス加工/印刷ツールの製造に必要な、独特な生産プロセスの複雑性に起因する。
【0097】
適切なマイクロミラー・アレイを構成する方法についてのさらなる詳細は、国際特許出願番号PCT/AU02/00551を参照することができる。
【0098】
本発明の範囲を逸脱することなしに、本発明に種々の変形を加え得ることは、当業者にとって明らかである。これら及び他の変形は当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】バックグランドMMAまたは二次パターンの特定の構成を示す図である。
【図2】バックグランドMMAまたは二次パターンの他の構成を示す図である。
【図3】特定のID用途に対応する一次パターンの例を示す図である。
【図4】図3の一次パターンを、図2に相当するバックグランドMMA(二次パターン)に加算した図である。
【図5】図4の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を特定の画角から観測した図である。
【図6】図4の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を他の特定の画角から観測した図である。
【図7】一次パターンの例を示す図である。
【図8】図7の一次パターンを、図1に相当するバックグランドOVD MMA(二次パターン)に加算した図である。
【図9】図8の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を特定の画角から観測した図である。
【図10】図8の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を他の特定の画角から観測した図である。
【図11】MMAの小部分の顕微鏡写真である。
【技術分野】
【0001】
本願は、オーストラリア国暫定特許出願2003903501に基づいて優先権を主張し、その開示を参考文献として本明細書に含める。
【0002】
(発明の分野)
本発明は反射デバイスに関するものである。
【0003】
本発明の好適例により作製した反射デバイスを光源によって照射すると、これらのデバイスは1つ以上の画像を生成し、これらの画像は、デバイスの周りの特定の画角範囲(視野角)内で観測される。本発明の好適例のデバイスは、多数の異なる用途に用いることができ、そしてID(Identification:身分証明)証書上の偽造防止セキュリティ・デバイスとしての特定用途を有し、例えば運転免許証、クレジットカード、ビザ、パスポート、及び印刷、電子コピー、及びコンピュータのスキャン技術による偽造に耐える方法での個人の安全な識別が要求される他の有価証券である。
【0004】
本発明の好適例は、銀行券、小切手、クレジットカード、及び株券のような他の金融取引証券用の低コストの偽造防止デバイスとしての特定用途も有する。
【0005】
(背景技術)
なお、本明細書において従来技術文献を参照する場合には、こうした参照は、こうした文献が、オーストラリア国及び他国における従来技術の一般常識的な知識の一部をなすことを認めるものではない。
【0006】
1997年に最初に発行されたアメリカンエキスプレス(登録商標)社の米ドル・トラベラーズチェックの新シリーズは、アメリカンエキスプレスのセンチュリオン(古代兵士の隊長)ロゴ(商標)の回折格子箔(フォイル)の画像を偽造防止機能として採用している。この回折格子箔デバイスが光源によって照射され、異なる画角から観測されると、センチュリオンの画像がアメリカンエキスプレス社のボックス(四角枠で囲んだ)ロゴの画像に切り換わる。このデバイスのこうした光学的可変性は、通常の電子コピーまたはカメラ技術によってコピーすることが不可能であることを保証する。
【0007】
【特許文献1】米国特許 5,825,547
【特許文献2】米国特許 6,088,161
【特許文献3】欧州特許 EP 330,738
【特許文献4】欧州特許 EP 105,099
【0008】
この可変の光学的挙動を示す回折格子デバイスは、光学的可変デバイス(OVD:Optically Variable Device)と称され、有価証券を保護するための偽造防止方策としてのその利用は成長し続けている。知的所有権のある特定の光学的可変デバイス及び今日までの応用は、ハンガリー銀行券の新シリーズ、アメリカンエキスプレス社の米ドル及びユーロ・トラベラーズチェック、ウクライナ国のビザを保護するために使用されているEXELGRAM(登録商標)デバイス、及びスイス銀行券の現シリーズ及び低額のユーロ銀行券を保護するために使用されているKINEGRAM(登録商標)デバイスを含む。EXELGRAMデバイスは米国特許番号5,825,547及び6,088,161に記載され、KINEGRAMデバイスは欧州特許EP 330,738及びEP 105,099に記載されている。
【0009】
【特許文献5】欧州特許 EP 0 490 923 B1
【特許文献6】米国特許 5,428,479
【0010】
EXELGRAM及びKINEGRAMデバイスは、公式文書の偽造に対する高度に有効な防止手段であることが証明されている箔ベースの回折構造の例である。このクラスの光学的回折性の偽造防止デバイスは、欧州特許番号EP0 490 923 B1及び米国特許番号5,428,479に記載されているPIXELGRAM(登録商標)デバイスも含む。PIXELGRAMデバイスは、相対回折構造を生成することによって製造され、この構造では、光学的に不変の画像の各画素が、PIXELGRAMデバイス上の対応する小さい回折画素領域にマッピング(写像、対応付け)される。
【0011】
【特許文献7】国際特許出願 PCT/AU02/00551
【0012】
OVDを生成するための代わりの技術は、ホット(熱間)スタンプ箔を使用しない光学的可変デバイスの直接印刷用のマイクロミラー(微小鏡)アレイの使用である。光学意的可変画像の直接印刷用のマイクロミラー・アレイは、国際特許出願PCT/AU02/00551、発明の名称”An Optical Device and Methods of Manufacture”に記載されている。
【0013】
これらの箔ベースの回折性及び反射性の光学的可変デバイスは、その産業上の有効性もかかわらず、パスポートまたは運転免許証の写真、あるいは身分証明(ID)カードの画像の場合のような個人の画像の安全な識別が要求される小体積の応用及び一度限りの応用には、特定の不足点を有する。
【0014】
現時点では、回折性OVDを用いてID文書上の個人の顔写真の画像を保護する技術は、この個人に特有のOVD画像の生成、人物の写真を透明なOVDラミネート(積層)フィルムでカバーすること、あるいは標準的なOVD画像をID文書上の文書に隣接した領域内に含めることを含む。最初の場合には、そのプロセスは、個人毎に新たなOVDの原版を生産し、そしてエンボス(打出し、浮彫り)加工技術によってホット(熱間)スタンプ箔を生産する必要性により極めて高価かつ時間を要する。セキュリティ目的用のOVD原版のコストは、技術の種類及び要求されるセキュリティ(安全性)のレベルに依存して5,000米ドルから50,000米ドルまで変化するので、ID用途向けの個人特有のOVD原版の使用は、コスト上の理由だけで見込みがない。
【0015】
一般的に言って、OVD原版の高コストは、この種の偽造防止技術は大量生産用途にしか適していないことを意味し、大量生産用途では原版のコストは、同一のホットスタンプ箔を大量生産するうちに償却することができる。透明OVD被せ(オーバレイ)フィルムの使用及び一般的なOVD画像の使用は、ID用途向けの箔を生産するうちにOVD原版のコストを償却するために現在採用されている方法である。しかし、これらの場合には、透明被せフィルムまたはOVD画像は個人特有ではなく、従って、異なる個人がこのID文書を使用可能にすべく、透明フィルムをはがして、元の写真画像を代わりの画像に置き換えることによって、代用または偽造の文書を生成することができるというリスクが存在する。
【0016】
【特許文献8】米国特許 5,374,976
【非特許文献1】”Optical Document Security, Second Edition”
【0017】
応用のセキュリティのために開発された他の技術は、スクリーン角度変調(”SAM”:Screen)、またはその微小版である”μ−SAM”として知られ、米国特許5,374,976、及びSybrand Spannenbergによる著書”Optical Document Security, Second Edition”(Rudolph L. van Renesse編集、ロンドンのArtech House発行、1998年)の第8章の169〜199ページに詳述されている。この技術では、周期的に配列された細く短い線のセグメント(区分)のパターン中に、これらのセグメントの角度を互いに対して連続的か段階的かのいずれかで変化させることによって潜像を生成する。このパターンは、巨視的に見れば一様な中間的な色またはグレースケール(中間調)として見えるが、このパターンを非変調の同じパターンと共に透明基板上に重ねると、潜像が観測される。
【0018】
上述したように、これらの技術は、変調されたアレイをこれに対応する非変調のアレイに重ねるか、あるいはその逆を行って潜像を出現させることを含む。
【0019】
この技術の変調及び非変調のアレイは通常、プリント(印刷)技術によって作製される。この理由により、この技術は回折性のOVDほど安全ではない、というのは、この技術は、回折性OVDのずっと小規模な微小構造よりもリバース・エンジニアリング(製品分析)が行いやすいからである。
【0020】
認証デバイスを生産する代わりの方法を提供することが望まれる。
【0021】
(発明の概要)
本発明は、その第1の広い態様では、観測の角度に応じて変化する光学的に可変の画像を生成する反射デバイスを形成する方法に関するものであり、この方法は:
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンを提供するステップと;
前記一次パターンに対応する二次パターンを提供するステップであって、この二次パターンは、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に前記潜像を観測可能にするステップとを具え、前記二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数のマイクロミラー素子を有するマイクロミラー・アレイ(MMA:Micro Mirror Array)によって提供され、
前記反射デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記MMAの所定のマイクロミラー素子による反射効果を少なくとも1つの観測角において光学的に無効にするように、前記一次パターンを提供する。
【0022】
一部の好適例では、前記一次パターンを、前記二次パターン上に重ねることによって提供する。
【0023】
さらに他の好適例では、前記一次パターンを、前記第2パターンと位置整合させて印刷することによって提供する。
【0024】
他の好適例では、前記マイクロミラー素子を光学的に無効にすることによって前記一次パターンを提供する。好適例によっては、前記マイクロミラー素子を(例えばレーザー・アブレーション(レーザーによる瞬間的除去)を用いて)物理的に除去するか、あるいは、前記マイクロミラー素子が強度な反射を行わない程度にその反射能力を低減することによって、光学的に無効にすることができる。
【0025】
前記2種類のマイクロミラー素子は一般に、規則的なパターンで提供する。一般に、この規則的なパターンは、少なくとも2種類のマイクロミラー素子を、画素化したパターンかトラック状のパターンのいずれかの形に配列することによって提供する。画素化したパターンの例はチェッカーボード(市松模様)パターンであり、ここでは2種類の複数のマイクロミラー素子が矩形アレイの形に配列され、これら2種類の領域は水平軸及び垂直軸の各方向に交互する。
【0026】
ここでは、前記マイクロミラー素子の事前選択した領域からの反射光の強度を他のマイクロミラー素子と比べた点で、これらの事前選択した素子による反射効果が解消されるか大幅に低減される意味で、前記マイクロミラー素子が「光学的に無効」にされる。
【0027】
本発明の方法はさらに、マイクロミラー素子を作製するための次のステップを含む:
I) 電子ビーム・リソグラフィー及びウェットまたはドライ・エッチング技術によって可変透明度のフォトマスクを作製するステップ;
II) 前記フォトマスクを光接触印刷または投射システム内で用いて、インターレースされ(織り交ぜられ)所望のパターンに構成された2種類のマイクロミラー構造の表面レリーフパターンを作製するステップ;
III) 前記作製したマイクロミラー・アレイ構造に適用される電気メッキ技術の使用によって、印刷プレート・エンボス加工ダイを作製するステップ;
IV) スクリーン印刷技術を用いてインクを紙またはポリマー基板に塗布して、前記マイクロミラー・アレイ構造を前記インク塗布された基板内にエンボス加工するステップ;
【0028】
前記一次パターンを前記二次パターン上に重ねることによって提供する好適例では、前記一次パターンを透明基板上に設け、前記二次パターンをエンボス加工された基板の形で提供し、前記方法は、前記一次パターンを前記OVDの二次パターンと位置合わせして適正な位置整合状態にし、これにより、前記一次パターン中に符号化された前記潜像の画像要素が、前記二次パターンの前記マイクロミラー素子を光学的に無効にする。
【0029】
本発明の別な態様では、前記マイクロミラー素子が追加的に、安全かつ汎用的な光学的可変効果を生成すべく符号化され、そして重ねられるIDスクリーンまたは一次パターンは、フィルムを文書からはがすと個人の画像が消失する方法で、特定個人に特有の画像情報を伴って符号化される。この好適例は、現在のOVDラミネーション(積層)技術に対してIDのセキュリティを大幅に強化する、というのは、OVD基板も符号化された重ね(オーバレイ)スクリーンも、現在の写真または印刷技術を用いた改変に対して無防備ではないからである。
【0030】
前記一次パターンを印刷する本発明の好適例では、前記一次パターンを、事前にエンボス印刷された汎用OVDのマイクロミラー・アレイ(MMA)基板の最上面に直接印刷し、これにより、MMA及びこれに重ねられたスクリーン境界面をはがすことによるリバース・エンジニアリングを防止することによって、増加されたセキュリティを提供する。
【0031】
マイクロミラー素子を部分的に改変する本発明の別な代案の好適例では、前記エンボス加工されたMMAをレーザー加熱することによって前記一次パターンを直接、OVD MMA中に含ませ、これにより、一次パターン・データファイルによって決まるOVD領域内の選択位置にある特定のマイクロミラー素子を破壊する。本発明のこの実現は、前の直接印刷法の代案に対してID画像の耐久性を改善する、というのは、符号化された画像情報をエンボス印刷されたMMAから消去する可能性が存在しないからである。
【0032】
多数の技術を用いて、適切な一次及び二次パターンを生成することができる。これらの技術は、潜像を符号化する変調された画像要素のアレイ(一次パターン)、及びこれに対応し、前記変調されたアレイと位置整合された際に前記潜像を復号化する非変調の画像要素のアレイ(二次パターン)を生成する特徴を共用する。前記変調及び非変調のアレイは共に、複数の離散画像要素に分割されるので、これらの変調及び非変調のアレイは「ディジタル」画像と称するにふさわしい。従って、本明細書ではこの種の技術を集合的に、「変調ディジタル画像(MDI:Modulated Digital Images)」と称する。適切なMDI技術の例は、SAM、μ−SAM、並びにPHASEGRAM(登録商標)、BINAGRAM(登録商標)、及びTONAGRAM(登録商標)を含む。
【0033】
【特許文献9】オーストラリア国暫定特許出願 2003905861
【0034】
PHASEGRAMは、オーストラリア国暫定特許出願番号200305861、発明の名称”Method of Encoding a Latent Image”、2003年10月24日出願に記載され、これに対応するPCT出願は、2004年7月7日に出願されている。この技術では、パターンの周期性を選択的に変化させることによって、画像を局所的に周期的なパターンに符号化している。透明基板上で元のパターン上に、あるいは元のパターンと重ねると、(重ね合わせの)位置整合の正確さ次第で、潜像、あるいは潜像の陰画の種々の陰影が観測者にとって可視になる。
【0035】
【特許文献10】国際特許出願 PCT/AU2004/00746
【0036】
BINAGRAMは、国際特許出願番号PCT/AU2004/00746、発明の名称”Method of Encoding a Latent Image”、2004年6月4日出願に記載されている。この技術では、画像を隣接または近接した画素の対に分割し、これらの画素対は局所的に周期的にすることもしないこともできる。そして、各対における一方の画素を、相補的なグレースケールまたは色特性に変調する。透明基板上で等価な非変調のパターン上に、あるいはこのパターンと重ねると、(重ね合わせの)位置整合の度合い次第で、潜像またはその陰画が可視になる。
【0037】
本明細書に規定する一次パターンは一般に、二次パターンの変調版(バージョン)である。一次パターンは潜像または画像を符号化するかあるいは含み、これらの潜像または画像は、この一次パターンが対応する二次パターン上に重ねられた際のみに(本発明の好適例ではOVDの形で)現われる。一般に、一次パターンは矩形であり、従って、その画像要素は矩形アレイの形に編成される。しかし、画像要素は他の方法で配列することができる。画像要素は一般に、周期的な形に配列され、例えば一列おきまたは一行おきに交互する、というのは、このことは重ね合わせにおいて二次パターンを一次パターンに最も容易に位置整合させることを可能にするからである。しかし、画像要素のランダムまたはスクランブル(混ぜ合わせ)された配列を用いることもできる。
【0038】
本明細書では、「二次パターン」とは2つの文脈で用い、即ち、(この一次パターンの性質次第で)一次パターンに重ねるか一次パターンを重ねた際に、この一次パターンを復号化するパターンを述べるか、あるいは、こうした二次パターンを基板に適用したものを述べるかのいずれかである。本明細書に記載のマイクロミラー素子のアレイ(マイクロミラー・アレイ(MMA))を形成すべく二次パターンを適用した際には、この二次パターンは、特定の観測角において光を有効に反射させる画像要素(「オン」マイクロミラー素子)または光の反射を無効にする画像要素(「オフ」マイクロミラー素子)のいずれかに対応するマイクロミラー素子から成る。これらのマイクロミラー素子は、潜像を符号化するために用いる一次パターンに対応する二次パターンの形に配列することもできる。さらに、物理的な二次パターン中のマイクロミラー素子の物理的寸法は、使用する一次パターンに対応する二次パターン画像の画像要素の物理的寸法と同一である。前記「オン」及び「オフ」マイクロミラー素子は、光源で照射された際に、潜像または潜像に関連する画像が現われる一次パターン内の画像要素が明暗付けされるように配列する。デバイスの光学的可変性は、画角を他の特定画角に変化させ、すべての「オフ」マイクロミラー素子が「オン」画素に変化するかあるいはその逆になる際に達成される。要求されるコントラストを達成するためには、すべての「オン」マイクロミラー素子があらゆる特定観測角において光を反射させなければならず、そしてこの角度においてすべての「オフ」画素が光を反射させないことが必要である。
【0039】
二次パターンは一般に、「オン」及び「オフ」マイクロミラー素子の矩形アレイである。例えば、二次パターンはトラック状にすることができ、即ち、「オン」マイクロミラー素子の垂直ライン複数本とすることができ、各ラインは1つのマイクロミラー素子の幅であり、同一幅の「オフ」マイクロミラー素子の垂直ラインによって互いに分離されている。他の代表的な二次パターンは、「オン」及び「オフ」マイクロミラー素子のチェッカーボード(市松模様)とすることができる。しかし、(一次パターンとの)適正な位置整合時に、二次パターン中の「オン」マイクロミラー素子が、潜像が現われる一次パターン中のすべての画像要素を明暗付け可能である限りは、ランダム及びスクランブルされたアレイを用いることもできる。
【0040】
本明細書では、二次パターンは「バックグランド(背後の)OVD」または「バックグランドMMA」とも称する。
【0041】
【特許文献11】オーストラリア国暫定特許出願 2004900187
【0042】
二次パターンから一次パターンを生成するために用いることのできる他の技術はTONAGRAMとして知られ、オーストラリア国国暫定特許出願 2004900187、”Method of Concealing an Image”、2004年1月17日出願に記載されている。
【0043】
この技術では、BINAGRAMまたはPHASEGRAMのようなMDIを数学的に、顔写真のような公開画像と数学的に組み合わせ、これにより、公開画像及び1つ以上の隠蔽された潜像を共に含む一次パターンにする。この一次パターンを対応する二次パターンと重ねると、潜像が現われる。同じ方法で、本明細書に記載する種類のマイクロミラー・アレイから成る二次パターンを、印刷されたTONAGRAMの一次パターンと重ね合わせて、これにより、すべての観測角で見ることのできる公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見ることのできる1つ以上の潜像を含むOVDにすることができる。あるいはまた、二次パターンとして作用する空白キャンバス・マイクロミラー・アレイを、TONAGRAMアルゴリズムに従って、選択した領域内で光学的に無効にすることができる。これにより、すべての観測角で見ることのできる公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見ることのできる1つ以上の潜像を含むOVDが生成される。
【0044】
本発明は、反射認証デバイスのような反射デバイス、あるいは以上の方法によって生産される新案物にも拡張され、並びに、こうした反射デバイスを内蔵する文書または証券にも拡張される。
【0045】
本発明の他の広い態様では、本発明は、観測角に応じて変化する光学的に可変な画像を生成する反射デバイスに関するものであり、この反射デバイスは、
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンと;
前記一次パターンに対応する二次パターンであって、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に、前記潜像を観測可能にする二次パターンとを具え、この二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数のマイクロミラー素子を具えたマイクロミラー・アレイ(MMA)によって提供され、
認証デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記MMAの所定のマイクロミラー素子による反射効果を、少なくとも1つの観測角において光学的に無効にするように、前記一次パターンが設けられている。
【0046】
以上で概説したように、MDI二次パターンの配列にパターン化されているが、印刷されたMDIパターンの代わりに2種類のマイクロミラー素子を用いるマイクロミラー・アレイは、対応するMDI一次パターンによってマスクして、OVD効果の形態のMDI潜像を生成することができる。結果的なハイブリッド(混成)OVD−MDI(本明細書ではMM−VOID(またはマイクロミラー可変光学識別デバイス:Micro Mirror Variable Optical Identification Device)と称する)は光学的に可変の属性を表示し、この属性は偽造が困難であるが、それにもかかわらず容易にカスタマイズ(顧客対応)できる、というのは、前記一次パターンは容易に印刷可能であり、OVDベースの前記二次パターンは一般的な形に大量生産可能だからである。
【0047】
従って、本発明の好適例は、画像の光学的に可変の側面と身分証明の側面とを分離して、これら2つの側面を別個に製造して上重ね(オーバレイ)の方法で再結合可能にすることによって、セキュリティ文書上の画像の保護へのより一般的かつ有用な取り組みを提供する。換言すれば、本発明は、一般的な種類の反射OVDマイクロミラー・アレイ内にOVD保護を取り入れ、このOVDマイクロミラー・アレイは保護すべき文書上にエンボス印刷され、そしてこのMMAは、符号化されたID情報を含む透明フィルムと重ね合わされるか、このID情報パターンと位置整合されて印刷される。これら2つの効果の組合せにより、符号化された顔写真が、OVD効果を表わす潜像として現われる。
【0048】
さらに、本発明の好適例では、印刷またはエンボス加工技術を用いて好適例におけるMMAを生産することは、第1に費用効果的であり、第2にMMAを局所的に作製することを可能にする。このことはセキュリティを改善する、というのは、MMAを含む材料を搬送する必要がないからである。
【0049】
本発明のさらなる特徴は、以下の本発明の好適な実施例より明らかになる。
【0050】
以下、本発明の好適な実施例について図面を参照しながら説明する。
【0051】
(実施例及び図面の詳細な説明)
最初に、本発明の好適な実施例を、MDI一次パターンをマイクロミラー・アレイの形態の二次パターンと組み合わせることによって生成可能な視覚効果に関連して説明する。この説明に続いて、反射認証デバイスを構成するいくつかの可能な技術について説明する。
【0052】
図1に、バックグランドMMA(または二次パターン)の例を示す。図1では、異なる陰影を有する画素領域が2つの異なる種類の反射マイクロミラー素子を表わし、この構造は拡大部分10で最も良くわかる。簡単のため、これらの陰影を、赤色(レッド、明るい方の陰影)及び青色(ブルー、暗い方の陰影)と称する。マイクロミラー画素領域の代表的な寸法は30ミクロン×30ミクロンまたは60ミクロン×60ミクロンである。一部の用途では、用途に要求される画像解像度に応じて、この寸法をこれらの図より小さくすることも大きくすることもできる。
【0053】
図2に、バックグランドOVD微小構造または二次パターンの他の構成を示す。図2では、赤色及び青色のストリップまたはトラック領域が、2つの異なる種類のMMAを表わし、この構造は拡大部分20で最も良くわかる。代表的には、これらのトラックの幅は30ミクロンまたは60ミクロンである。一部の用途については、用途に要求される画像解像度に応じて、この寸法をこれらの図より小さくすることも大きくすることもできる。これらのトラックの長さは、用途に要求される画像領域の関数であり、20mmまたはそれ以上とすることができる。最大深度は一般に、図11の顕微鏡写真に示すように20mmであり、ここではマイクロミラー素子は2つの異なる傾斜を有する。
【0054】
MDI二次パターンの選定は実施例に依存する。
【0055】
図3に、第1の好適な実施例の一次パターンを示し、このパターン中に、図2に示す二次パターンの変調によって画像を符号化する。変調されたディジタル画像(MDI)を形成する方法は、BINAGRAMの方法である。
【0056】
BINAGRAMでは、一次パターンは一般に、原画像から形成される。原画像が写真である例では、次にこの原画像をディザ処理して、一組の一次視覚特性のうちの1つを有する画像要素にする。この一次視覚特性は、実施例次第でグレースケール値または色相である。好適な実施例では、前記画像要素を対応する二次パターンと重ねた際に、各対における一方の画像要素が赤色トラックに対応し、他方の画像要素が青色トラックに対応するように、前記画像要素を対にする。そしてこれらの画像要素を変換する。代表的な変換では、各対における一方の画素は、この対の視覚特性の平均値をとり、他方の画素には相補的な視覚特性が割り当てられる。従って、各対における一方の画素は原画像からの情報を担うべく作用し、他方の画素はこの情報を隠す。
【0057】
一次パターンを形成する代わりの方法は、Adobe Photoshop(登録商標)のようなコンピュータグラフィックス・プログラムを使用して、顔写真のような原画像の陽画調及び陰画調のバーション(版)を共に生成するものである。そしてこれらの陽画調及び陰画調の画像は、次のことによって一次パターンに組み合わせることができる;
最初に、前記陽画調画像を二次スクリーンの「オン」画素でフィルタ処理し(即ち、前記二次スクリーン上の「オフ」画素の位置に対応するすべての画素を前記陽画調画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された陽画調画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
2番目に、前記陰画調画像に、この陰画調画像を前記二次パターンの「オフ」画素でフィルタ処理することによる逆の手順を適用し(即ち、前記二次スクリーン上の「オン」画素の位置に対応するすべての画素を前記陰画調画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された陰画調画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
最後に、フィルタ処理しディザ処理したバージョンの前記陰画調画像及び前記陽画調画像の両方を重ね合わせて、入力された顔写真画像の結果的な一次パターン・バージョンを得る。
【0058】
図4に、図3の一次パターンを図2の二次パターンに単純加算したものを示し、ここでブラック(黒色)画素は消去されることによって光学的に無効にされ、ダークグレー画素は保持された元の青色画素を示し、ライトグレー画素は保持された元の赤色画素を示し、この様子は拡大部分40を参照すれば最も良く見ることができる。
【0059】
図5に、1つの特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、赤色のOVDトラックは「オン」状態であり、従って明確にするために白色で表わし、青色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子は拡大部分50で最も良くわかる。図6に、他の特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、青色のトラックは「オン」状態であり、従って明確にするために白色で表わし、赤色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子は拡大部分60で最も良くわかる。
【0060】
図5及び図6に光学的に可変の効果が印刷技術によって生成される様子を示し、これは、バックグランド・キャンバスが、2グループのマイクロミラー素子から成るOVD MMA(即ち、二次パターン)で構成される場合である。これらの図に示すOVD効果は、画角の変化に伴い顔写真画像が陽画調から陰画調に切り換わるスイッチに相当する。
【0061】
バックグランドOVDキャンバスを用いて印刷画像を光学的に可視の形態に変換するこうした原理は、2チャンネルOVD画像の場合に拡張することができる。以下、こうしたプロセスの例について説明する。
【0062】
図7に、2チャンネル画像から成る一次パターンを示す。この場合には、この一次パターンは、図1に示す二次パターンの変調形態であり、2つの別個の潜像を符号化する。画像の2面が重なる(オーバラップする)所の詳細を拡大部分70に示す。
【0063】
2チャンネル画像に対応する一次パターンは、Adobe Photoshopのようなコンピュータグラフィックス・プログラムを用いて提供することもできる。2つの入力原画像は、次のことによって一次パターンに組み合わせることができる;
最初に、第1画像を二次スクリーンの「オン」画素でフィルタ処理し(即ち、前記二次スクリーン上の「オフ」画素の位置に対応するすべての画素を前記第1画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された前記第1画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
2番目に、第2画像に、この第2画像を前記二次パターンの「オフ」画素でフィルタ処理することによる逆の手順を適用し(即ち、前記二次スクリーン上の「オン」画素の位置に対応するすべての画素を前記第2画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された前記第2画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
最後に、フィルタ処理しディザ処理したバージョンの前記第1画像及び前記第2画像の両方を重ね合わせて、前記2つの入力画像に対応する結果的な2チャンネル一次パターンを得る。
【0064】
図8に、図7と図1との加算を示し、ここでブラック画素は消去されることによって光学的に無効にされ、ダークグレー画素は保持された元の青色画素を示し、ライトグレー画素は保持された元の赤色画素を示し、この様子は拡大部分80を参照すれば最も良く見ることができる。
【0065】
図9に、1つの特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、赤色のOVD画素は「オン」状態であり、従ってより明確にするために白色で表わし、青色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子を拡大部分90に示す。
【0066】
図10に、他の特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、青色のトラックは「オン」状態であり、従ってより明確にするために白色で表わし、赤色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子を拡大部分100に示す。
【0067】
図9及び図10は、2チャンネルの光学的に可変の効果は印刷技術によっても生成可能であることを確証するものであり、これは、バックグランド・キャンバスが、2グループのマイクロミラー・アレイから成るOVD MMA(即ち、二次パターン)で構成される場合である。これらの図に示すOVD効果は、画角の変化に伴い1つの陽画調顔写真から他の陽画調顔写真に切り換わるスイッチに相当する。
【0068】
図1〜10に示す例は、この新規の発明の2つの特定実施例を示すことを意図したものである。本発明の他の多くの実施例が可能であり、これらの応用の一般性は、本発明を、ID文書用、また銀行券、小切手、及び印刷、コンピュータ・スキャン、及びカラーコピー技術によって偽造される恐れのある他の金融取引文書の認証のための身元検証の領域に特に適したものとする。
【0069】
本発明の別な実施例は、上述した2チャンネルのメカニズムが、2チャンネルにおける画像用のバーコード・パターンを用いることによって、個別の方法でのデータ符号化の可能性をもたらす、ということを認識することによって実現することができる。その結果はマイクロミラー・バーコードの形になり、第1バーコード・パターンがレーザーによって第1画角において読取り可能であり、これと異なる第2バーコード・パターンが第2画角において読取り可能である。データのセキュリティ(安全性)及び完全性は、2つのバーコード成分が関与するソフトウェア相関プロセスによって保証される。データの書込みは、2つのバーコードを反射マイクロミラーのバックグランド(背後)上に、2つの異なるミラー角のマイクロミラー・トラックのインターレース(織り交ぜ)の形にインターレースする(織り交ぜる)ことを含む印刷プロセスによって達成される。
【0070】
上述した概念は、2チャンネル画像の場合を含むように拡張することもでき、ここで1つのチャンネルの画像は、二次パターン微小構造を製造した時点で固定の一般的な画像である。そして第2チャンネルの画像は、コンピュータグラフィックス・プログラムを用いて、デバイスの使用時点で個性化可能な一次パターンを生成することによって構成される。この種の応用の例がパスポートの応用である。オーストラリア国のパスポートの場合には、前記一般的画像はオーストラリア国の紋章とすることができ、前記第2チャンネル画像はパスポート保有者の顔写真画像であり、前記デバイスはパスポートのデータページ中に内蔵させることができる。このデータページの画角が変化すると共に、認証デバイスによって生成される画像は、パスポート保有者の画像から前記紋章の画像に変化し、これにより、パスポート保有者がオーストラリア国の市民であることを確かに確証する。
【0071】
本発明による反射認証デバイスを形成する1つの方法は、次のステップを含む:
I) 電子ビーム・リソグラフィー及びウェットまたはドライ・エッチング技術によって可変透明度のフォトマスクを作製するステップ;
II) 前記フォトマスクを光接触印刷または投射システム内で用いて、画素化された構成(例えば図1)またはトラック状の構成(例えば図2)に配列された、2種類のインターレースされたマイクロミラー構造を作製するステップ;
III) 前記作製したマイクロミラー・アレイ構造に適用される電気メッキ技術の使用によって、印刷プレート・エンボス加工ダイを作製するステップ;
IV) スクリーン印刷技術を用いてインクを紙またはポリマー基板に塗布して、エンボス加工技術によって前記マイクロミラー・アレイ構造を前記インク塗布された基板内にエンボス加工して、マイクロミラー素子のアレイを作製するステップ;
V) (例えば、特定人物及び/または物体、あるいはデザインの)潜像として見える1つ以上の画像を、画素化された、あるいはトラックベースの一次パターンに符号化し、この一次パターンは、二次パターンに対応する複数の画像要素を有するステップ;
VI) 前記一次パターンの物理的表現を、マイクロミラー・アレイのバックグランドOVDの最上面に追加するステップであって、この追加は、バックグランド微小構造の選択領域を、これらの事前選択領域からの反射光の強度の点で、これらの領域からの反射効果が解消されるか大幅に低減される意味で光学的に無効にする方法で行うステップ。事前選択された各無効領域の位置及び面積は前記一次パターンから決まる。
【0072】
一般に、前記二次パターンがトラック状であれば、各トラックは1ミクロン以上の幅を有し、そして少なくとも1つのトラックが1mm以上の長さであるのが一般的である。
【0073】
前記二次パターンが、マイクロミラー素子の画素化されたアレイであれば、各マイクロミラー素子は一般に、1ミクロン以上のエッジ長を有する。
【0074】
実施例次第では、各マイクロミラー素子内で、マイクロミラー面の形状、曲率または傾斜を変調または変化させることができる。
【0075】
各マイクロミラー素子内のマイクロミラー面の変調は、デバイスからの特定距離におけるこれらの素子からの反射光の反射効率を、これらの距離における反射光の焦点合わせによって最大化するように設計することが好ましい。各マイクロミラー素子内のマイクロミラー面の変調は、凸形または凹形に整形されたマイクロミラー面によって記述することができる。
【0076】
1つの好適例では、前記2種類のマイクロミラー素子の一方のマイクロミラー傾斜を、マイクロミラー領域の第2グループのマイクロミラー面の傾斜に対して直角をなすように構成する。
【0077】
前記一次パターンは、多数の異なる方法で追加することができる。
【0078】
1つの方法は、一次パターンファイルを印刷した透明フィルムをバックグランドMMAの最上面に重ねることであり、この透明スクリーンの印刷領域は印刷プロセスによって反射光に対して不透明にし、これにより、反射光を光学的に無効にする。
【0079】
あるいはまた、一次パターンをバックグランドOVD MMAの最上面に直接印刷して、反射光に対して不透明であるか部分透過性に過ぎない反射バックグランドの選択領域を作製し、これにより、これらの選択領域を光学的に無効にする。
【0080】
さらなる代案の技法は、バックグランドMMAの選択したマイクロミラー素子のレーザー・アブレーションを用いて、これらの領域を無反射にするか、あるいはこれらの領域の反射光の強度を大幅に低減し、これらのアブレート領域の分布は一次パターンによって決まる。
【0081】
前記OVD MMAは、エンボス加工して転送箔にし、この転送箔はホットスタンプ・プロセスによって、あるいは箔ベースのラベルとして、保護すべき文書に貼り付けることができ、こうしたラベルは、偽造に対する保護を必要とする文書に粘着させる。
【0082】
代表的な文書は、パスポート、ビザ、クレジットカード、運転免許証、社会保険カード、銀行券、小切手、株式証書、あるいは偽造または変造に対して文書を保護すべき他のあらゆる種類の金融取引文書を含む。
【0083】
【特許文献12】オーストラリア国特許暫定出願 2002952220
【0084】
上述した一次パターンを生成するためのBINAGRAM法に加えて、一次パターンは、”SAM”または”μ−SAM”として知られている技術により生成することができ、この技術は、米国特許5,374,976、及びSybrand Spannenbergによる著書”Optical Document Security, Second Edition”(Rudolph L. van Renesse編集、ロンドンのArtech House発行、1998年)の第8章の169〜199ページに詳述され、あるいは、PHASEGRAM(オーストラリア国暫定特許、発明の名称”Method of Encoding a Latent Image”、オーストラリア国暫定特許番号2002952229(2002年10月23日))として知られている技術において生成することができる。
【0085】
この技術では、パターンの周期性を選択的に変化させることによって、画像を局所的に周期的なパターンに符号化している。透明基板上で元のパターン上に、あるいは元のパターンと重ねると、(重ね合わせの)位置整合の正確さ次第で、潜像、あるいは潜像の陰画の種々の陰影が観測者にとって可視になる。
【0086】
画像の周期性は、画像要素を位相シフト(移相)させて符号化した画像を生成することによって変化させられる。即ち、視覚特性の値(例えば色合いのグレースケール値)に応じて異なる変位を画像要素に与える。PHASEGRAMの実施例は一般に、N個のマイクロミラー素子の幅でマイクロミラー素子の種類が交互する複数列に配列された二次パターンを利用する。このことは、N+1個の視覚特性値を符号化することを可能にする。
【0087】
潜像(視覚可能になることを所望される画像)は、原画像を取得し、視覚特性の許容値の集合中の1つのみをとる画像要素に分割することによって形成される。従って潜像は、予備的な一次パターンに関連し、この一次パターンは、二次パターンの画像要素に対応する画像要素を有する。そしてこの一次パターンの画像要素を、各画像要素に関連する潜像要素の視覚特性の値との関係に応じて変位させて、この潜像を符号化する最終的な一次パターンを形成する。
【0088】
種々の異なる変位方式を用いることができる。その一例では、M個の陰影または色相が存在し、第1の陰影または色相に関連する画像要素は1つの画像要素分(例えば、マイクロミラー素子の幅に相当する距離)だけ変位され、第2の陰影または色相に関連する画像要素は2つの画像要素分だけ変位され、等とし、M番目の陰影または色相に関連する画像要素はM個の画像要素分だけ変位される。
【0089】
二次パターンから一次パターンを生成するために使用可能な他の技術はTONAGRAMとして知られ、オーストラリア国暫定特許出願2004900187、発明の名称”Method of Concealing an Image”、2004年1月17日出願に記載され、参考文献として本明細書に含める。
【0090】
この技術では、MDI、例えばBINAGRAMまたはPHASEGRAMを公開画像、例えば顔写真と数学的に組み合わせて、これにより、この公開画像及び1つ上の隠蔽された潜像を共に含む一次パターンにする。(この一次パターンを)対応する二次パターンと重ねると、この潜像が現われる。同じ方法で、本願で説明した種類のマイクロミラー・アレイから成る二次パターンを、印刷されたTONAGRAMの一次パターンと重ねて、これにより、すべての観測角で見える公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見える1つ以上の潜像を含むOVDにすることができる。あるいはまた、二次パターンとして作用する空白キャンバスのマイクロミラー・アレイを、TONAGRAMアルゴリズムにより選択した領域内で光学的に無効にすることができる。これにより、すべての観測角で見える公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見える1つ以上の潜像を含むOVDが生成される。
【0091】
さらなる代わりの2チャンネル技術は、独立しているが同一の2つの潜像を符号化することを含むことができ、これらの潜像は少しオフセットした(離れた)2つの観測角で観測可能であり、このオフセットは、人間の観測者が適切な画像表面からの距離で観測した際に、立体(ステレオ)効果によって観測者が三次元画像を知覚できるように選定する。
【0092】
従って、別な実施例では、2つの同一画像を符号化するマスク(例えば一次パターン)を生成することができ、このマスクは、適切な二次パターン、例えば本明細書に開示する二次パターンと重ねた際に、これらの画像を互いにオフセットした(離れた)観測角で観測可能にする方法で、これらの画像を符号化する。
【0093】
二次パターンが図1に示すものである2チャンネルの場合には、一次パターンは次の技法によって生成することができる:
原画像の陽画調バージョンをチェッカーボードのパターンに細分し、チェッカーボードの交互するセルの一方(例えばすべての「ブラック(黒色)」セル)をすべて除去し、そして画像の残りの半透明バージョンをバイナリ・ディザまたはサンプリングの技法によって生成し、主題の陰画調画像に基づいて、結果的な陽画調画像の細分されバイナリ・ディザ処理されたバージョンにチェッカーボードに細分された第2の画像を重ね、この場合には、細分されたチェッカーボードのセルの逆の方(例えばすべての「ホワイト(白色)」セル)をすべて除去して、これらの領域を、主題の陽画調原画像の対応するバイナリ・ディザ処理された(「ブラック」)セルが占めることを可能にする。
にする。
【0094】
種々の追加的な変形は当業者にとって明らかである。例えば、バックグランドMMAは、一般的な性質であり、反射デバイスによって認証される人物、物体またはデザインに特有でない光学的効果を含むこともできる。さらに、このデバイスのMMAは、幅60ミクロン以下のサイズの極めて小規模な画像を含むこともでき、これらの画像は、MMAの微視的な検査によるより高度な認証またはセキュリティを提供するために用いることができる。
【0095】
現在のMMAデバイスの、箔ベースのOVDデバイスに対する1つの利点は、ホットスタンプ箔の必要性がなく、このことは、大量生産が要求される用途にとってずっと低いコストを可能にする、ということによってもたらされる。このより低いコストは、MMAエンボス加工プロセスを、特定文書を生産するために用いる種々の印刷プロセスと調和すべく構成することによって達成される。
【0096】
さらに、本発明の実施例は、回折デバイスに対しずっと高いセキュリティ(安全性)も提供する。このことは、部分的には、マスターMMAのエンボス加工/印刷ツールの製造に必要な、独特な生産プロセスの複雑性に起因する。
【0097】
適切なマイクロミラー・アレイを構成する方法についてのさらなる詳細は、国際特許出願番号PCT/AU02/00551を参照することができる。
【0098】
本発明の範囲を逸脱することなしに、本発明に種々の変形を加え得ることは、当業者にとって明らかである。これら及び他の変形は当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】バックグランドMMAまたは二次パターンの特定の構成を示す図である。
【図2】バックグランドMMAまたは二次パターンの他の構成を示す図である。
【図3】特定のID用途に対応する一次パターンの例を示す図である。
【図4】図3の一次パターンを、図2に相当するバックグランドMMA(二次パターン)に加算した図である。
【図5】図4の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を特定の画角から観測した図である。
【図6】図4の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を他の特定の画角から観測した図である。
【図7】一次パターンの例を示す図である。
【図8】図7の一次パターンを、図1に相当するバックグランドOVD MMA(二次パターン)に加算した図である。
【図9】図8の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を特定の画角から観測した図である。
【図10】図8の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を他の特定の画角から観測した図である。
【図11】MMAの小部分の顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測角に応じて変化する光学的に可変の画像を生成する反射デバイスを形成する方法において、
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンを提供するステップと;
前記一次パターンに対応する二次パターンを提供するステップであって、前記二次パターンは、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に前記潜像を観測可能にするステップとを具え、前記二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数のマイクロミラー素子を有するマイクロミラー・アレイ(MMA)によって提供され、
前記反射デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記MMAの所定のマイクロミラー素子による反射効果を少なくとも1つの観測角において光学的に無効にすべく、前記一次パターンを提供することを特徴とする反射デバイスの形成方法。
【請求項2】
前記一次パターンを前記二次パターン上に重ねるステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロミラー素子を光学的に無効にして前記一次パターンを形成するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一次パターンを、バックグランドMMAの最上面に印刷するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロミラー素子を、
I) 電子ビーム・リソグラフィー及びウェット・エッチングまたはドライ・エッチング技術によって可変透明度のフォトマスクを作製し、
II) 前記フォトマスクを光接触印刷システムまたは投射システム内で用いて、インターレースされ所望のパターンに構成された2種類のマイクロミラー構造の表面レリーフパターンを作製し、
III) 前記作製したマイクロミラー・アレイ構造に適用される電気メッキ技術の使用によって、印刷プレート・エンボス加工ダイを作製し、
IV) スクリーン印刷技術を用いてインクを紙またはポリマー基板に塗布して、前記マイクロミラー・アレイ構造を前記インク塗布された基板内にエンボス加工する
ことによって作製するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2種類のマイクロミラー素子領域を規則的なパターンで提供するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2種類のマイクロミラー素子を、画素化されたマイクロミラー素子の形に配列するステップを具えていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2種類のマイクロミラー素子を、トラック状のパターンに配列するステップを具えていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
2つの異なる種類の複数のマイクロミラー素子を矩形アレイの形に配列して、前記2つの異なる種類のマイクロミラー素子が水平軸及び垂直軸の各方向に交互するステップを具えていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記一次パターンを透明基板上に提供するステップと、前記二次パターンをエンボス加工された基板の形で提供するステップと、前記一次パターンを前記二次パターンと位置合わせして適正な位置整合状態にし、これにより、前記潜像の画像要素が、前記二次パターンの前記マイクロミラー素子を光学的に無効にするステップとを具えていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
安全かつ汎用的な光学的可変効果を伴って符号化されたMMAを提供するステップと、特定の潜像に特有の画像情報で符号化された一次パターンを、前記MMAのフィルムを文書からはがすと前記潜像が消失する方法で重ねるステップとを具えていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記MMAの、前記一次パターンに対応するOVD領域内の選択位置を、前記MMAをレーザー加熱することによってアブレートするステップを具えていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記一次パターンを、変調ディジタル画像技術を用いて提供するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記技術を、SAM、μ−SAM、PHASEGRAM(登録商標)、TONAGRAM(登録商標)、及びBINAGRAM(登録商標)のグループから選択することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
観測角に応じて変化する光学的に可変の画像を生成する反射デバイスにおいて、
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンと;
前記一次パターンに対応する二次パターンであって、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に前記潜像を観測可能にする二次パターンとを具え、前記二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数のマイクロミラー素子を具えたマイクロミラー・アレイ(MMA)によって提供され、
前記反射デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記MMAの所定のマイクロミラー素子による反射効果を少なくとも1つの観測角において光学的に無効にすべく、前記一次パターンが提供されることを特徴とする反射デバイス。
【請求項16】
前記一次パターンが前記二次パターン上に重ねられることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項17】
前記一次パターンが、前記MMAを部分的に改変することによって提供されることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項18】
前記一次パターンが、バックグランドMMAの最上面に印刷されることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項19】
前記少なくとも2種類のマイクロミラー素子が規則的なパターンを形成することを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項20】
前記規則的なパターンが、画素化されたパターンであることを特徴とする請求項19に記載の反射デバイス。
【請求項21】
前記規則的なパターンが、トラック状のパターンであることを特徴とする請求項19に記載の反射デバイス。
【請求項22】
2つの異なる種類の複数のマイクロミラー素子が矩形アレイの形に配列され、前記2つの異なる種類のマイクロミラー素子が水平軸及び垂直軸の各方向に交互し、これによりチェッカーボードのパターンを形成することを特徴とする請求項20に記載の反射デバイス。
【請求項23】
2つの異なる種類のマイクロミラー素子を具えていることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項24】
前記一次パターンが透明基板上に設けられ、前記二次パターンが、エンボス加工された基板(OVD)であり、前記一次パターンが前記OVDの二次パターンと適正な位置整合状態に位置合わせされ、これにより、光源による照射時に、前記一次パターン中に符号化された前記潜像の画像要素が、複数の特定画角において異なる視覚値を有するものとして観測されることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項25】
前記画像要素が透明及び不透明であることを特徴とする請求項24に記載の反射デバイス。
【請求項26】
前記画像要素が透明または有色であることを特徴とする請求項24に記載の反射デバイス。
【請求項27】
前記エンボス加工された基板が、安全かつ汎用的な光学的可変効果を生成すべく符号化され、重ねられる前記一次パターンが、特定の潜像に特有の画像情報を伴って符号化されることを特徴とする請求項24に記載の反射デバイス。
【請求項28】
前記MMAにおける前記一次パターン内の選択位置が、前記MMAを加熱することによって改変されることを特徴とする請求項17に記載の反射デバイス。
【請求項29】
前記二次パターンを提供するエンボス加工された層上にフォトレジスト層を含み、これにより、前記一次パターンが、前記フォトレジスト層の選択的照射によって印刷可能であることを特徴とする請求項20に記載の反射デバイス。
【請求項30】
前記一次パターンが変調ディジタル画像を具えていることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項31】
前記変調ディジタル画像が、SAM、μ−SAM、PHASEGRAM、TONAGRAM、及びBINAGRAMのうちの1つであることを特徴とする請求項30に記載の反射デバイス。
【請求項32】
反射認証デバイスを構成することを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項33】
新案物を構成することを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項34】
請求項15に記載の反射デバイスを内蔵する文書または証券。
【請求項35】
少なくとも第1画角において第1画像が観測され、少なくとも第2画角において第2画像が観測されるように、前記一次パターン及び前記二次パターンが構成されていることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項36】
前記第1画像が人物の画像であることを特徴とする請求項35に記載の反射デバイス。
【請求項37】
前記第2画像がロゴ、紋章、等の画像であることを特徴とする請求項36に記載の反射デバイス。
【請求項38】
前記第2画像がデータを符号化することを特徴とする請求項36に記載の反射デバイス。
【請求項39】
前記第2画像がバーコードであることを特徴とする請求項38に記載の反射デバイス。
【請求項40】
前記第1画像及び前記第2画像が共に、データを符号化することを特徴とする請求項35に記載の反射デバイス。
【請求項41】
前記第1画像及び前記第2画像が共にバーコードであることを特徴とする請求項40に記載の反射デバイス。
【請求項1】
観測角に応じて変化する光学的に可変の画像を生成する反射デバイスを形成する方法において、
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンを提供するステップと;
前記一次パターンに対応する二次パターンを提供するステップであって、前記二次パターンは、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に前記潜像を観測可能にするステップとを具え、前記二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数のマイクロミラー素子を有するマイクロミラー・アレイ(MMA)によって提供され、
前記反射デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記MMAの所定のマイクロミラー素子による反射効果を少なくとも1つの観測角において光学的に無効にすべく、前記一次パターンを提供することを特徴とする反射デバイスの形成方法。
【請求項2】
前記一次パターンを前記二次パターン上に重ねるステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロミラー素子を光学的に無効にして前記一次パターンを形成するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一次パターンを、バックグランドMMAの最上面に印刷するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロミラー素子を、
I) 電子ビーム・リソグラフィー及びウェット・エッチングまたはドライ・エッチング技術によって可変透明度のフォトマスクを作製し、
II) 前記フォトマスクを光接触印刷システムまたは投射システム内で用いて、インターレースされ所望のパターンに構成された2種類のマイクロミラー構造の表面レリーフパターンを作製し、
III) 前記作製したマイクロミラー・アレイ構造に適用される電気メッキ技術の使用によって、印刷プレート・エンボス加工ダイを作製し、
IV) スクリーン印刷技術を用いてインクを紙またはポリマー基板に塗布して、前記マイクロミラー・アレイ構造を前記インク塗布された基板内にエンボス加工する
ことによって作製するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2種類のマイクロミラー素子領域を規則的なパターンで提供するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2種類のマイクロミラー素子を、画素化されたマイクロミラー素子の形に配列するステップを具えていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2種類のマイクロミラー素子を、トラック状のパターンに配列するステップを具えていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
2つの異なる種類の複数のマイクロミラー素子を矩形アレイの形に配列して、前記2つの異なる種類のマイクロミラー素子が水平軸及び垂直軸の各方向に交互するステップを具えていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記一次パターンを透明基板上に提供するステップと、前記二次パターンをエンボス加工された基板の形で提供するステップと、前記一次パターンを前記二次パターンと位置合わせして適正な位置整合状態にし、これにより、前記潜像の画像要素が、前記二次パターンの前記マイクロミラー素子を光学的に無効にするステップとを具えていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
安全かつ汎用的な光学的可変効果を伴って符号化されたMMAを提供するステップと、特定の潜像に特有の画像情報で符号化された一次パターンを、前記MMAのフィルムを文書からはがすと前記潜像が消失する方法で重ねるステップとを具えていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記MMAの、前記一次パターンに対応するOVD領域内の選択位置を、前記MMAをレーザー加熱することによってアブレートするステップを具えていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記一次パターンを、変調ディジタル画像技術を用いて提供するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記技術を、SAM、μ−SAM、PHASEGRAM(登録商標)、TONAGRAM(登録商標)、及びBINAGRAM(登録商標)のグループから選択することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
観測角に応じて変化する光学的に可変の画像を生成する反射デバイスにおいて、
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンと;
前記一次パターンに対応する二次パターンであって、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に前記潜像を観測可能にする二次パターンとを具え、前記二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数のマイクロミラー素子を具えたマイクロミラー・アレイ(MMA)によって提供され、
前記反射デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記MMAの所定のマイクロミラー素子による反射効果を少なくとも1つの観測角において光学的に無効にすべく、前記一次パターンが提供されることを特徴とする反射デバイス。
【請求項16】
前記一次パターンが前記二次パターン上に重ねられることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項17】
前記一次パターンが、前記MMAを部分的に改変することによって提供されることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項18】
前記一次パターンが、バックグランドMMAの最上面に印刷されることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項19】
前記少なくとも2種類のマイクロミラー素子が規則的なパターンを形成することを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項20】
前記規則的なパターンが、画素化されたパターンであることを特徴とする請求項19に記載の反射デバイス。
【請求項21】
前記規則的なパターンが、トラック状のパターンであることを特徴とする請求項19に記載の反射デバイス。
【請求項22】
2つの異なる種類の複数のマイクロミラー素子が矩形アレイの形に配列され、前記2つの異なる種類のマイクロミラー素子が水平軸及び垂直軸の各方向に交互し、これによりチェッカーボードのパターンを形成することを特徴とする請求項20に記載の反射デバイス。
【請求項23】
2つの異なる種類のマイクロミラー素子を具えていることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項24】
前記一次パターンが透明基板上に設けられ、前記二次パターンが、エンボス加工された基板(OVD)であり、前記一次パターンが前記OVDの二次パターンと適正な位置整合状態に位置合わせされ、これにより、光源による照射時に、前記一次パターン中に符号化された前記潜像の画像要素が、複数の特定画角において異なる視覚値を有するものとして観測されることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項25】
前記画像要素が透明及び不透明であることを特徴とする請求項24に記載の反射デバイス。
【請求項26】
前記画像要素が透明または有色であることを特徴とする請求項24に記載の反射デバイス。
【請求項27】
前記エンボス加工された基板が、安全かつ汎用的な光学的可変効果を生成すべく符号化され、重ねられる前記一次パターンが、特定の潜像に特有の画像情報を伴って符号化されることを特徴とする請求項24に記載の反射デバイス。
【請求項28】
前記MMAにおける前記一次パターン内の選択位置が、前記MMAを加熱することによって改変されることを特徴とする請求項17に記載の反射デバイス。
【請求項29】
前記二次パターンを提供するエンボス加工された層上にフォトレジスト層を含み、これにより、前記一次パターンが、前記フォトレジスト層の選択的照射によって印刷可能であることを特徴とする請求項20に記載の反射デバイス。
【請求項30】
前記一次パターンが変調ディジタル画像を具えていることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項31】
前記変調ディジタル画像が、SAM、μ−SAM、PHASEGRAM、TONAGRAM、及びBINAGRAMのうちの1つであることを特徴とする請求項30に記載の反射デバイス。
【請求項32】
反射認証デバイスを構成することを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項33】
新案物を構成することを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項34】
請求項15に記載の反射デバイスを内蔵する文書または証券。
【請求項35】
少なくとも第1画角において第1画像が観測され、少なくとも第2画角において第2画像が観測されるように、前記一次パターン及び前記二次パターンが構成されていることを特徴とする請求項15に記載の反射デバイス。
【請求項36】
前記第1画像が人物の画像であることを特徴とする請求項35に記載の反射デバイス。
【請求項37】
前記第2画像がロゴ、紋章、等の画像であることを特徴とする請求項36に記載の反射デバイス。
【請求項38】
前記第2画像がデータを符号化することを特徴とする請求項36に記載の反射デバイス。
【請求項39】
前記第2画像がバーコードであることを特徴とする請求項38に記載の反射デバイス。
【請求項40】
前記第1画像及び前記第2画像が共に、データを符号化することを特徴とする請求項35に記載の反射デバイス。
【請求項41】
前記第1画像及び前記第2画像が共にバーコードであることを特徴とする請求項40に記載の反射デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−538267(P2007−538267A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517905(P2006−517905)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000917
【国際公開番号】WO2005/002873
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(598152079)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼイション (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000917
【国際公開番号】WO2005/002873
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(598152079)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼイション (16)
【Fターム(参考)】
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