説明

反射器

【課題】反射光の明るさを高めることのできる反射器を提供する。
【解決手段】略平面状に配列された多数の反射エレメントを有する反射器である。反射エレメントは、正六角形をなす仮想的な六平面のうち、互いに隣接する三平面をそれぞれ第一基準面、第二基準面及び第三基準面とすると、第一基準面に沿う第一鏡面と、第二基準面に沿う第二鏡面と、第三基準面に沿う第三鏡面とを備えている。第一鏡面が第一基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されている場合は、第二鏡面は第二基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成されるとともに、第三鏡面は第三基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成されている。第一鏡面が第一基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成されている場合は、第二鏡面は第二基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されるとともに、第三鏡面は第三基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射器に係り、例えば自動車の後部あるいは道路の路肩などに設けられる反射器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反射器においては、多数の反射エレメントが略平面状に配列されている。反射エレメントは、立方体をなす六面のうち隣接する三面からなる鏡面で構成されていて、これらの鏡面が正面から見たときに正六角形の形状となるように配置されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2853995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の反射器においては反射エレメントをなす鏡面が平面で成型されていることが前提であった。しかしながら、例えば反射エレメントが樹脂製である場合には、成型時の樹脂のヒケや、金型の精度等によって、鏡面に凹凸を生じてしまうおそれがあった。また、例えば反射エレメントが金属製である場合にも、作成時の加工によって鏡面に凹凸を生じてしまうおそれがあった。このように鏡面に凹凸が生じていると、設計時の性能予測よりも反射光の明るさが低い反射器になってしまうのが実状である。
このため本発明の課題は、反射光の明るさを高めることのできる反射器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、
略平面状に配列された多数の反射エレメントを有する反射器において、
前記反射エレメントは、
正六角形をなす仮想的な六平面のうち、互いに隣接する三平面をそれぞれ第一基準面、第二基準面及び第三基準面とすると、前記第一基準面に沿う第一鏡面と、前記第二基準面に沿う第二鏡面と、前記第三基準面に沿う第三鏡面とを備え、
前記第一鏡面、前記第二鏡面及び前記第三鏡面は、互いに隣接していて、
前記第一鏡面が前記第一基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されている場合は、前記第二鏡面は前記第二基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成されるとともに、前記第三鏡面は前記第三基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成され、
前記第一鏡面が前記第一基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成されている場合は、前記第二鏡面は前記第二基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されるとともに、前記第三鏡面は前記第三基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されていることを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の反射器において、
前記第一基準面の一対の対角線のうち、一方の対角線が前記第二基準面、前記第三基準面との交点を通過し、他方の対角線が上下方向に延在するように、前記第一基準面、前記第二基準面及び前記第三基準面が配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明者は、反射エレメントをなす三つの鏡面のそれぞれを曲面とし、さらに一つの鏡面の湾曲方向と、他の二つの鏡面の湾曲方向とを逆方向にすれば、反射光の明るさが高められることを見出した。つまり、請求項1記載の発明のように、第一鏡面が第一基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されている場合は、第二鏡面は第二基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成されるとともに、第三鏡面は第三基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成されていたり、第一鏡面が第一基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成されている場合は、第二鏡面は第二基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されるとともに、第三鏡面は第三基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されていれば、反射光の明るさを高めることが可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、第一基準面の一対の対角線のうち、一方の対角線が第二基準面、第三基準面との交点を通過し、他方の対角線が上下方向に延在するように、反射エレメントが配置されているので、反射光の配光パターンは上下方向に沿った形状となる。例えば自動車用反射器の規格では、光軸から僅かな角度だけ上方のポイントが基準位置となるが、上述のように反射光の配光パターンが上下方向に沿った形状であれば、各鏡面における基準面からの膨らみ具合を調整するといった簡便な方法で基準位置の明るさを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る反射器の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1の反射器に備わる反射エレメントの概略構成を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は下面図である。
【図3】図2の反射エレメントにおける各鏡面の形状を表す説明図であり、(a)は第一鏡面の断面形状、(b)は第二鏡面の断面形状、(c)は第三鏡面の断面形状を示している。
【図4】図1の反射器の使用状態を示す説明図である。
【図5】図1の反射器の配光パターンを示す説明図である。
【図6】比較例として全ての反射面が同方向に膨らんでいる反射器の配光パターンを示す説明図である。
【図7】図3の各鏡面の変形例を表す説明図であり、(a)は第一鏡面の断面形状、(b)は第二鏡面の断面形状、(c)は第三鏡面の断面形状を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係る反射器について説明する。図1は本実施形態に係る反射器の概略構成を示す部分拡大図である。図1に示すように、反射器1の表面には、多数の反射エレメント2が略平面状に配列されている。
【0011】
図2は、反射エレメント2の概略構成を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は下面図である。なお、図2では反射エレメント2の基準となる第一基準面31、第二基準面32及び第三基準面33を二点鎖線で示している。第一基準面31、第二基準面32及び第三基準面33は、正六角形をなす仮想的な六平面のうち、互いに隣接する三平面であり、互いに直交する位置に配置されている。そして、第一基準面31の一対の対角線31a,31bのうち、一方の対角線31aが第二基準面32、第三基準面33との交点を通過し、他方の対角線31bが上下方向に延在するように、第一基準面31、第二基準面32及び第三基準面33が配置されている。さらに、第一基準面31、第二基準面32及び第三基準面33は、交点が後方となって、開放部分が前方となるように配置されている。そして、反射エレメント2の光軸Lは、第一基準面31、第二基準面32及び第三基準面33の交点から、前方に向けて延在している。そして、反射エレメント2には、第一基準面31に沿う第一鏡面21と、第二基準面32に沿う第二鏡面22と、第三基準面33に沿う第三鏡面23とが備えられている。第一鏡面21、第二鏡面22及び第三鏡面23は、互いに隣接している。これら第一鏡面21、第二鏡面22及び第三鏡面23は、図面上第一基準面31、第二基準面32及び第三基準面33よりも小さく、なおかつ各基準面31,32,33から離れているように図示されているが、これは便宜上の表現であり、実際は各基準面31,32,33と同じ外形に設定されている。
【0012】
図3は、第一鏡面21、第二鏡面22及び第三鏡面23の形状を表す説明図であり、(a)は図2のa−a切断線から見た第一鏡面21の断面形状、(b)は図2のb−b切断線から見た第二鏡面22の断面形状、(c)は図2のc−c切断線から見た第三鏡面23の断面形状を示している。以下の説明において、「内側」とは各基準面31,32,33に対して光軸側のことであり、「外側」とは各基準面31,32,33に対して光軸側とは反対側のことである。
図3に示すように、第一鏡面21は、第一基準面31に対して外側に膨らむ曲面に形成されている。具体的には、第一鏡面21は、その周縁部が内側に向けて凸となり、中央部分が外側に向けて凸となる、例えば正規分布曲線を基にした曲面となっている。
一方、第二鏡面22は第二基準面32に対して内側に膨らむ曲面に形成され、第三鏡面23は第三基準面33に対して内側に膨らむ曲面に形成されている。具体的には、第二鏡面22及び第三鏡面23は、その周縁部が外側に向けて凸となり、中央部分が内側に向けて凸となる、例えば正規分布曲線を基にした曲面となっている。
【0013】
次に、本実施形態の作用について具体例を挙げて説明する。
図2に示すように反射器1の反射エレメント2は、正面から見て正六角形となっているが、この正六角形の高さH1は2.3mmに設定されている。また、各鏡面21,22,23の頂点と、各基準面31,32,33との距離H2は、1×10−3mmに設定されている。そして、光軸Lと各基準面31,32,33とがなす角度が35.293度、各基準面31,32,33の法線のうち、隣り合う法線同士がなす角度が120度に設定されている。
【0014】
そして、図4に示すように反射器1の正面に光源100を配置して、光源100から反射器1に対して光を照射する。この光を反射した反射器1の配光パターンは図5に示すように上下方向に沿った配光パターンP1となる。図5において、色味の濃い部分が明るい部分を示し、薄い部分が暗い部分を示している。
【0015】
比較例として、全ての反射面が同方向に膨らんでいる反射器に対して同条件で光を照射すると、配光パターンは図6に示すように、ある程度拡散した配光パターンP2となる。
【0016】
ここで、自動車用反射器の規格では、光軸Lから僅かな角度だけ上方のポイントが基準位置となる。図4に示すように欧州や日本の規格だと観測角度は0.33度であり、米国の規格だと観測角度は0.2度である。このような場合、反射光の配光パターンP1が上下方向に沿った形状となっていると、各鏡面21,22,23における基準面31,32,33からの膨らみ具合を調整するといった簡便な方法で基準位置の明るさを調整することができる。
【0017】
そして、第一鏡面21、第二鏡面22及び第三鏡面23がそれぞれ平面である場合の設計時の予測光度を100%とすると、製造後、不規則に各鏡面21,22,23に凹凸が形成されている場合の最も明るい箇所の光度は50.46%となって、観測角度0.2度の光度は0.55%となる。しかしながら、本実施形態の反射器1のように、第一鏡面21が第一基準面31に対して外側に膨らむ曲面に形成され、第二鏡面22が第二基準面32に対して内側に膨らむ曲面に形成され、第三鏡面23が第三基準面33に対して内側に膨らむ曲面に形成されていると、最も明るい箇所の光度は202.44%となって、観測角度0.2度の光度は27.69%となる。すなわち従来よりも反射光の明るさを高めることが可能となる。
【0018】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、本実施形態では、第一鏡面21が、第一基準面31に対して外側に膨らむ曲面に形成され、第二鏡面22が第二基準面32に対して内側に膨らむ曲面に形成され、第三鏡面23が第三基準面33に対して内側に膨らむ曲面に形成されている場合を例示して説明したが、第一鏡面21と、第二鏡面22及び第三鏡面23とが反対側に膨らんでいればよく、上述した形状に限定されない。具体的には、図7に示すように、第一鏡面21aが第一基準面31に対して内側に膨らむ曲面に形成されている場合には、第二鏡面22aは第二基準面32に対して外側に膨らむ曲面に形成されるとともに、第三鏡面23aは第三基準面33に対して外側に膨らむ曲面に形成されている。
【0019】
また、上記実施形態では、各鏡面21,22,23が正規分布曲線状の曲面である場合を例示して説明したが、これ以外にも例えば球面、楕円曲面、放物線を基とした曲面等であってもよい。
【0020】
また、上記実施形態では、光軸Lと各基準面31,32,33とがなす角度が35.293度としているが、光軸Lと第一基準面31とがなす角度を35.168度として、光軸Lと第二基準面32がなす角度と、光軸Lと第三基準面33とがなす角度とを35.36度とすると、より高い効率で反射光を明るくすることが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 反射器
2 反射エレメント
21 第一鏡面
22 第二鏡面
23 第三鏡面
31 第一基準面
31a 一方の対角線
31b 他方の対角線
32 第二基準面
33 第三基準面
100 光源
H2 距離
L 光軸
P1 配光パターン
P2 配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平面状に配列された多数の反射エレメントを有する反射器において、
前記反射エレメントは、
正六角形をなす仮想的な六平面のうち、互いに隣接する三平面をそれぞれ第一基準面、第二基準面及び第三基準面とすると、前記第一基準面に沿う第一鏡面と、前記第二基準面に沿う第二鏡面と、前記第三基準面に沿う第三鏡面とを備え、
前記第一鏡面、前記第二鏡面及び前記第三鏡面は、互いに隣接していて、
前記第一鏡面が前記第一基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されている場合は、前記第二鏡面は前記第二基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成されるとともに、前記第三鏡面は前記第三基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成され、
前記第一鏡面が前記第一基準面に対して内側に膨らむ曲面に形成されている場合は、前記第二鏡面は前記第二基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されるとともに、前記第三鏡面は前記第三基準面に対して外側に膨らむ曲面に形成されていることを特徴とする反射器。
【請求項2】
請求項1記載の反射器において、
前記第一基準面の一対の対角線のうち、一方の対角線が前記第二基準面、前記第三基準面との交点を通過し、他方の対角線が上下方向に延在するように、前記第一基準面、前記第二基準面及び前記第三基準面が配置されていることを特徴とする反射器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−159529(P2011−159529A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20991(P2010−20991)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】