説明

反射型位相変装置及び反射型位相変調装置の設定方法

【課題】 電圧依存性位相変調特性の補正、及び電圧非依存性歪みの補正を高い精度で行うことが可能な反射型位相変調装置を提供する。
【解決手段】入力値設定手段47は、区画毎に設けられたルックアップテーブル11に基づいて入力値を制御値に変換し、駆動手段36は、制御値を、動作電圧範囲内に設定された所定の電圧範囲内の電圧値に変換し、各画素を電圧値の駆動電圧にてLCOS型空間光変調器の各画素を駆動する。各ルックアップテーブル11は、入力値が採りうる複数の第1の値と、複数の第1の値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるために制御値が採るべき複数の第2の値とを1対1に格納している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型位相変調装置及び、反射型位相変調装置の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LCoS(Liquid Crystal on Silicon)を用いた空間光変調装置(SLM:Spatial Light Modulator)が知られている。画素電極に電圧を印加すると、LCoSの液晶分子は基板に垂直な面で回転し、入射した光の位相変調量を変化させる。しかしながら、位相変調量は画素電極に印加する電圧に対して非線形に変化するため、所望の位相変調量が得られないという問題があった。
【0003】
LCoSのシリコン基板は半導体プロセスで処理するため、厚くすることができず機械的強度が弱い。そのため、図21に示すように、素子製造の各プロセスによって発生する応力によってシリコン基板が歪み、LCoSの鏡面の平面度が低下する。さらに、LCoSは、液晶層の厚みも不均一である。そのため、各画素での位相変調量が液晶層の厚みに応じて異なることになり、このバラツキと反射面の歪みによって、LCoS型SLMで反射されて出力される波面は大きく歪むことになり、位相変調量は画素毎によって異なってしまうという問題があった。具体的には、画素の位置をx、y、電圧をVとすると、位相変調量Φ(V,x,y)は、以下の式によって表される。

【0004】
これより、位相変調量Φ(V,x,y)は、電圧に依存するφ(V,x,y)と、電圧に依存しない量Φ(x,y)との和で求められる。ここで、φ(V,x,y)は、以下の式によって表される。

【0005】
ここでΔn(V)は、液晶の配向方向に平行な方向に振動する電場を有する偏光成分に対する複屈折率である。d(x、y)は位置x、yにおける液晶層の厚みである。各画素において、電圧Vとφ(V,x,y)との関係は非線形である。また、d(x,y)によって、φ(V,x,y)は、画素毎にも異なる値となる。一方、Φ(x、y)は、主としてLCoSの反射面の歪みに起因している。以下では、φ(V,x,y)の寄与による、電圧と位相変調量との非線形性と位相変調量の画素毎のバラツキとをまとめて電圧依存性位相変調特性と呼び、Φ(x、y)の寄与による位置x、y毎の位相変調量のバラツキを電圧非依存性歪みと呼ぶ。この電圧依存性位相変調特性及び、電圧非依存性歪みを補正する方法が提案されている(例えば非特許文献1−3)。
【0006】
また、LCoS型SLMではないが、位相変調型SLMを用いて、電圧依存性の歪みの補正を行う方法が提案されている(例えば非特許文献4)。
【0007】
また、位相変調型SLMにおいて出力波面の歪みを2光束干渉計で計測し、歪みをキャンセルするパターンを用いて電圧非依存性を補正する方法が提案されている。(例えば特許文献1)
【非特許文献1】Phase calibration of spatially nonuniform spatial light modulator [Applied Opt., vol.43, No. 35, Dec. 2004]
【非特許文献2】Improving spatial light modulator performance through phase compensation [Proc. SPIE, Volume 5553, Oct. 2004]
【非特許文献3】Active, LCOS based laser interferometer for microelements studies [Opt. Express, Nol. 14, No. 21, Oct. 2006]
【非特許文献4】Highly stable wavefront control using a hybrid liquid-crystal spatial light modulator [Proc. SPIE, volume 6306, Apr. 2006]
【特許文献1】国際公開WO2003/036368
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1−3では、LCoS型SLMにおいて、2光束干渉計を用いて出力光波面の歪みを計測し、その補正を行っている。しかしながら、2光束干渉計における測定では、電圧依存性位相変調特性と電圧非依存性歪みが混合した形で計測されるという問題がある。また、非特許文献1では非線形性の補正に関しては、非線形な特性の中から比較的線形に近い部分を抜き出しているに過ぎず、正確な補正はできていない。
【0009】
非特許文献2−3では、単一のルックアップテーブルを用いて非線形性の補正を行なっているため、電圧依存性位相変調特性による位相変調量の画素毎のバラツキを補正することができない。そのため、歪みの大きなLCoS型SLMを補正しようとすると精度が悪くなることが記載されている。
【0010】
非特許文献4では、位相変調型SLMにおいて、電圧依存性の歪みを偏光干渉計で計測している。測定結果に基づき、4×4画素を1ブロックとし、ブロックごとにルックアップテーブルを作成し、当該ルックアップテーブルを用いることで電圧依存性の歪みの補正をしている。
【0011】
本発明は、電圧依存性位相変調特性の補正、及び電圧非依存性歪みの補正を高い精度で行うことが可能なLCoS型位相変調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、互いに隣り合うように2次元状に配列された複数の画素を備え、各画素が、動作電圧範囲内の電圧値の駆動電圧の印加に応じて入力光に対し位相変調を行うことができるLCoS型空間光変調器と、各画素に対して入力値を設定する入力値設定手段と、単一の画素もしくは複数の画素からなる区画毎に設けられた区画の数に対応した数のルックアップテーブルと、各画素に対して入力された入力値を、対応するルックアップテーブルを参照して、制御値に変換する変換手段と、前記制御値を、前記動作電圧範囲内に設定された所定の電圧範囲内の電圧値に変換し、各画素を前記電圧値の駆動電圧にて駆動する駆動手段とからなり、前記所定の電圧範囲は、前記複数の画素のうちの少なくとも1つの画素の電圧依存性位相変調特性に基づいて設定されており、各ルックアップテーブルは、入力値が採りうる複数の第1の値と、前記複数の第1の値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるために制御値が採るべき複数の第2の値とを1対1に格納していることを特徴とする反射型位相変調装置を提供している。
【0013】
動作電圧範囲の内、電圧依存性位相変調特性に基づいた所定の電圧範囲内で駆動電圧を制御しているため、駆動電圧を精度良く制御できる。また、入力値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるよう、電圧依存性位相変調特性を補正することができるので、所望の位相変調量を得ることができる。
【0014】
また、前記入力値設定手段は、所望の位相パターンを示す所望値と電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値とを画素毎に足し合わせて、足し合わせた結果を、各画素に対する入力値として設定し、各ルックアップテーブルは、入力値が採りうる複数の第1の値と、前記複数の第1の値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるために制御値が採るべき複数の第2の値とを1対1に格納していることが好ましい。
【0015】
このように入力値を設定しているため、電圧非依存性歪みを補正することができる。また、入力値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるよう、電圧依存性位相変調特性を補正することができる。
【0016】
前記入力値設定手段は、所望の位相パターンを示す所望値を画素毎に入力値として設定し、各ルックアップテーブルは、入力値が採りうる複数の第1の値と、前記複数の第1の値に対し電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値を足し合わせた値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるために制御値が採るべき複数の第2の値とを1対1に格納していることが好ましい。これにより、ルックアップテーブルを適用するだけで電圧非依存性歪みも補正することができる。また、前記各区画は互いに隣り合う複数の画素からなることが好ましい。これにより、画素毎の位相変調量のバラツキが補正される。
【0017】
前記各ルックアップテーブルは、既に作成されたルックアップテーブルを参照して入力値の前記複数の第1の値を複数の制御値に変換し、前記複数の制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換して、対応する区画に属する前記少なくとも1つの画素を前記電圧値の駆動電圧にて駆動して電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量を測定して得られた測定結果に基づき反復して作成されることが好ましい。これにより、ルックアップテーブルのデータ量を減らしつつ電圧依存性位相変調特性を補正できる
【0018】
前記各区画についての電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値は、全区画について同一の位相を示す値を各区画について既に作成された補正値と足し合わせて、前記対応するルックアップテーブルを参照して制御値に変換し、前記制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換して、対応する区画に属する前記少なくとも1つの画素を前記電圧値の駆動電圧にて駆動して電圧非依存性歪みを測定して得られた測定結果に基づき反復して作成されることが好ましい。これにより、高い精度の補正値が得られ、精度よく電圧非依存性歪みを補正できる。
【0019】
また、本発明は、互いに隣り合うように2次元状に配列された複数の画素を備え、各画素が、動作電圧範囲内の電圧値の駆動電圧の印加に応じて入力光に対し位相変調を行うことができるLCoS型空間光変調器と、画素毎に入力値を設定する入力値設定部と、単一の画素もしくは複数の画素からなる区画毎に設けられた区画の数に対応した数のルックアップテーブルを参照して入力値を制御値に変換する変換器と、制御値を電圧値に変換して前記電圧値の駆動電圧を各画素に印加することができる駆動回路とを備えた反射型位相変調装置の設定方法であって、少なくとも1つの画素を前記動作電圧範囲内の電圧値の駆動電圧にて駆動し、前記少なくとも1つの画素の電圧依存性位相変調特性を測定する工程と、前記電圧依存性位相変調特性に基づいて、前記動作電圧範囲内に所定の電圧範囲を設定する工程と、前記駆動回路に対して、制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換するよう設定する工程と、前記区画毎に、前記ルックアップテーブルを作成し、前記変換器に対し、各区画に属する画素については、対応するルックアップテーブルを参照して入力値を制御値に変換するよう設定する工程とからなり、前記ルックアップテーブル作成工程は、前記変換器を制御して、複数の制御値を前記所定の電圧範囲内の複数の電圧値に変換し、各区画に属する少なくとも1つの画素を前記複数の電圧値の駆動電圧にて駆動して、電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量を測定する工程と、前記測定結果に基づき、入力値が採りうる複数の第1の値と、前記複数の第1の値と位相変調量との関係が所定の線形関係になるために制御値が採るべき複数の第2の値とを1対1に格納したルックアップテーブルを決定する工程とからなることを特徴とする設定方法を提供している。
【0020】
駆動回路に対し、動作電圧範囲内の内、電圧依存性位相変調特性に基づいて定めた所定の電圧範囲内の電圧値で駆動電圧を制御するよう設定した上で、入力値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるよう電圧依存性位相変調特性を補正するルックアップテーブルを作成している。かかるルックアップテーブルによれば、所望の位相変調量を精度良く得ることができる。
【0021】
また、既に求められた前記ルックアップテーブルを更新するか否か判断する工程と、前記ルックアップテーブルを更新すると決定した場合に、前記ルックアップテーブルを更新する工程とを更に備え、前記ルックアップテーブル更新工程は、前記変換器を制御して、入力値の前記複数の第1の値のそれぞれを、前記ルックアップテーブルを参照して制御値に変換する工程と、前記駆動回路を制御して、前記制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換して、対応する区画に属する前記少なくとも1つの画素を前記電圧値の駆動電圧にて駆動して、電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量を測定する工程と、前記測定した結果に基づき、前記ルックアップテーブルを更新する工程とからなることが好ましい。これにより、高い精度のルックアップテーブルが得られる。
【0022】
各区画について、電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値を決定する工程を、更に備え、前記補正値を決定する工程は、前記変換器を制御して、全区画について同一の位相を示す値を、区画毎に、対応するルックアップテーブルを参照して、制御値に変換する工程と、前記駆動回路を制御して、前記制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換して、各区画に属する少なくとも1つの画素を前記電圧値にて駆動して、得られる電圧非依存性歪みを測定する工程と、測定された電圧非依存性歪みに基づき、電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値を前記区画毎に決定する工程とからなることが好ましい。これにより、位相変調装置は電圧非依存性歪みを補正することができる。
【0023】
既に求められた前記補正値を更新するか否か判断する工程と、前記補正値を更新すると決定した場合に、前記補正値を更新する工程とを更に備え、前記補正値更新工程は、全区画について同一の位相を示す値を、区画毎に、既に作成されている補正値に足し合わせる工程と、前記変換器を制御して、各区画に属する少なくとも1つの画素について、足し合わせた結果の値を、対応するルックアップテーブルを参照して、制御値に変換する工程と、前記駆動回路を制御して、前記制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換して、各区画に属する少なくとも1つの画素を前記電圧値の駆動電圧にて駆動して、得られる電圧非依存性歪みを測定する工程と、測定された電圧非依存性歪みに基づき、電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値を更新する工程とからなることが好ましい。これにより、高い精度の補正値が得られる。
【0024】
前記入力値設定部に対し、画素毎に、所望の位相パターンを示す所望値と、前記画素に対応する電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値とを足し合わせて、足し合わせた結果を、各画素に対する入力値として設定するよう、設定する工程を更に備えたことが好ましい。これにより、位相変調装置は、電圧依存性位相変調特性及び電圧非依存性歪みを補正することができる。
【0025】
前記入力値設定部に対し、所望の位相パターンを示す所望値を画素毎に入力値として設定するよう、設定する工程と、各ルックアップテーブルを補正する工程とを備え、前記ルックアップテーブル補正工程は、各区画用のルックアップテーブルの前記複数の第1の値に対し当前記区画用に求められた補正値を足し合わせることで、前記複数の第1の値を設定しなおすことにより、前記ルックアップテーブルを補正し、もって、前記ルックアップテーブルは、入力値が採りうる複数の第1の値と、前記複数の第1の値に対し前記補正値を足し合わせた値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるために制御値が採るべき複数の第2の値とを、1対1に格納することになることが好ましい。これにより、位相変調装置は、ルックアップテーブルを適用するだけで電圧非依存性歪みも補正することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の反射型位相変調装置によれば、動作電圧範囲の内、電圧依存性位相変調特性に基づいた所定の電圧範囲内で駆動電圧を制御しているため、駆動電圧を精度良く制御できる。また、入力値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるよう、電圧依存性位相変調特性を補正することができるので、所望の位相変調量を得ることができる。
【0027】
また、本発明の反射型位相変調装置の設定方法によれば、駆動回路に対し、動作電圧範囲内の内、電圧依存性位相変調特性に基づいて定めた所定の電圧範囲内の電圧値で駆動電圧を制御するよう設定した上で、入力値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるよう電圧依存性位相変調特性を補正するルックアップテーブルを作成している。かかるルックアップテーブルによれば、所望の位相変調量を精度良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。図1に示すように、LCoS型位相変調装置1は、LCoS型空間光変調器2と、LCoS型空間光変調器2に電圧を駆動する駆動装置3と、駆動装置3に後述する制御入力値Aなどのデータを送信する制御装置4とを備える。
【0029】
図2に示すように、LCoS型空間光変調器2は、シリコン基板21と、スペーサー26を介してシリコン基板21に接着されるガラス基板25とを有する。シリコン基板21とガラス基板25との間には、液晶分子28からなる液晶層27が充填されている。シリコン基板21には複数の画素電極22と、各画素電極22に与える電圧を制御する回路(図示せず)とが形成されており、画素電極22上には配向膜23が形成されている。ガラス基板25は、対向電極24と、配向膜23とを備えている。対向電極24は、液晶層27を介して画素電極22と対向している。液晶層27の液晶分子28は、平行配向、垂直配向、もしくはハイブリッド配向になるように形成されている。LCoS型空間光変調器2は、画素電極22がアルミニウムで構成されており、入射光を反射させるミラーとしても機能する。尚、1つの画素電極22が、位相変調を行う際の1画素に対応する。
【0030】
各画素電極22の電圧を制御する回路(図示せず)は、例えば、アクティブマトリクス回路である。アクティブマトリクス回路では、各画素電極22にトランジスタとコンデンサを配し、さらにトランジスタには画素電極22選択のための、行方向に伸びたゲート信号線と、アナログ電圧信号を供給するための、列方向に伸びたデータ信号線が接続されている。ゲート信号線にHi信号を印加して選択された画素電極22のコンデンサに、データ信号線に印加されたアナログ電圧信号が記録されることにより、当該画素電極の電圧を制御する。選択するデータ線とゲート線とを順次切り替えることにより、全ての画素電極22に所定の電圧を入力することができる。
【0031】
図3(A)−3(C)に示すように、画素電極22に任意の電圧を印加し液晶分子28を回転させる。図3(A)は画素電極22と対向電極24との電位差がない場合の液晶分子28の状態を表している。図3(B)は当該電位差が低い状態、図3(C)は、当該電位差が大きい状態を表している。偏光成分に対する屈折率が電圧によって変化するため、当該光成分の位相が変調される。
【0032】
LCoS型空間光変調器2を用いて光の位相を変調するには、液晶の配向方向に対して平行な直線偏光を入射させる。各画素電極22で位相を変調することにより、光の位相分布が制御される。従って、LCoS型空間光変調器2は波面を制御できる。
【0033】
図1に示すように、制御装置4は、例えばパーソナルコンピュータであり、中央処理装置41と、通信装置42と、メモリ43と、HDD44とを備える。HDD44は、所望パターン13と、ルックアップテーブル11(以下LUT11)と、補正パターン12とを格納している。LUT11は、LCoS型空間光変調器2の画素数と同じ個数あり、画素と1対1で対応しており、電圧依存性位相変調特性(非線形性および電圧依存性歪み)を補正するためのものである。補正パターン12は、電圧非依存性歪みを補正するためのものである。中央処理装置41は、変換手段46と、入力値設定手段47とを備える。入力値設定手段47は、各画素に対して制御入力値Aを設定する。変換手段47は、各画素に対して設定された制御入力値Aを、対応するLUT11を参照して、DA(デジタルアナログ)入力値B(本発明の制御値)に変換する。
【0034】
LCoS型位相変調装置1で位相変調を行う場合には、中央処理装置41は、LUT11と補正パターン12と所望パターン13とをHDD44からメモリ43に読み出す。入力値設定手段47は、所望パターン13と補正パターン12とを画素毎に足し合せ、その加算結果を制御入力値Aとする。制御入力値Aは、全階調数がN(0からN−1)のデジタル信号であり、本実施の形態ではN=256である。なお、所望パターン13を示す値も、補正パターン12を示す値もそれぞれ256階調のデータである。また、加算結果の値がNを超える場合には、さらに制御入力値Aの位相折り畳み処理が施され、その結果を制御入力値Aとする。即ち、制御入力値Aは、位相変調量に対応し、制御入力値Aが0からN−1で位相変調量の1周期分(2π[rad])に対応する。従って、制御入力値Aの位相折り畳み処理において、中央処理装置41は、上記の加算結果が負の値もしくは255以上の値となった場合には、当該値を、当該値を256で割った余りに置き換えた値を制御入力値Aとする。例えば、上記の加算結果が512のときには、制御入力値Aは0となる。また、加算結果が384のときには制御入力値Aは128となる。なお、加算結果が負の値を256で割った余りを求めるには、まず、当該負の値の絶対値を求め、次に、当該絶対値の値と足しあわせると足しあわせた結果が256の整数倍となるような最小の正の値を上記の加算結果とすればよい。例えば、加算結果が−64となったら、制御入力値Aは192である。
【0035】
変換手段46は、LUT11に基づいて、制御入力値Aを、DA入力値Bに変換する。DA入力値Bは全階調数がM(0からM−1)のデジタル信号である。ここで、Mは、M>Nを満たす整数であり、本実施の形態ではM=4096である。図4に示されるように、LUT11は、制御入力値Aが採りうる値ta(第1の値)とDA入力値Bが採るべき値t(第2の値)との対応関係を示すものである。LUT11を用いることにより、DA入力値Bが採りうる値taと、電圧依存性位相変調量φとの関係が線形関係になるようにDA入力値Bが設定されている。ただし、図4のφに関する値はLUT11を用いて実際に測定を行った場合の位相変調量を示すものであり、LUT11はφに対応するデータを有してはいない。通信装置42は、DA入力値Bなどのデータを駆動装置3に出力する。
【0036】
駆動装置3は、通信装置33と、処理装置31と、D/A(デジタルアナログ)回路32とを有する。通信装置33は、制御装置4からDA入力値Bなどのデータを受信し、処理装置31に出力する。処理装置31は、DA入力値Bに基づきLCoS型空間光変調器2を駆動するのに必要な、垂直同期信号と、水平同期信号などを含むデジタル制御信号を発生させる。また、処理装置31は、DA入力値BをD/A回路32に出力する。D/A回路32は駆動手段36を備える。駆動手段36は、動作可能な電圧範囲P−R内に設定された所定の使用電圧範囲(Q−R)内の電圧値に変換し、各画素を電圧値の駆動電圧にて駆動する。
【0037】
まず、駆動手段36は、DA入力値BをLCoS型空間光変調器2に印加する使用電圧を示すアナログ信号Cに変換する。図5に示すように、かかる変換においては、D/A回路32は、0‐4095のDA入力値Bを、使用電圧範囲Q−R(最小値Qから最大値R)内の駆動電圧値を示すアナログ信号Cに変換するよう設定されている。ここで、DA入力値B(0‐4095)は使用電圧範囲Q−Rに対して線形に割り当てられ、印加する駆動電圧のとる使用電圧範囲Q−Rは、LCoS型空間光変調器2が動作可能な動作電圧範囲P−Sの一部である。
【0038】
変換手段46が、制御入力値Aを画素毎に設定されたLUT11にてDA入力値Bに変換し、更に、駆動手段36が、DA入力値Bを使用電圧範囲Q−R内の電圧値を示すアナログ信号Cに変換してLCoS型空間光変調器2に電圧を印加する。これにより得られる位相変調量Φは、図4に示すように、制御入力値Aに対し線形でかつ、画素毎のバラツキがないものとなる。
【0039】
上記構成を有するLCoS型位相変調装置1は、図6に示すように動作して位相変調を行なう。まず、ステップ41で、制御装置4の中央処理装置41は、補正パターン12をHDD44からメモリ43に読み出す。ステップ41と並行してステップ42では、中央処理装置41は所望の位相表現を行う所望パターン13をHDD44からメモリ43に読み出す。但し、中央処理装置41が所望パターン13を作成しメモリ43に所望パターン13を保存するようにしてもよい。次に、ステップ43で、入力値設定手段47は、所望パターン13の値と補正パターン12の値とを画素毎に足し合わせ、必要に応じて足し合わせた値の位相折り畳みを行ない、制御入力値Aを画素毎に求める。ここで、足し合わせた値の位相折り畳みは上述の制御入力値Aの位相折り畳みと同様である。即ち、足し合わせた値は、階調0‐255で位相変調量の1周期分(2π[rad])に対応する。従って、足し合わせた値の位相折り畳み処理において、中央処理装置41は、上記の加算結果が負の値もしくは255以上の値となった場合には、当該値を、当該値を256で割った余りに置き換えた値を制御入力値Aとする。なお、加算結果が負の値を256で割った余りを求めるには、まず、当該負の値の絶対値を求め、次に、当該絶対値の値と足しあわせると足しあわせた結果が256の整数倍となるような最小の正の値を上記の加算結果とすればよい。ステップ44において、中央処理装置41は、HDD44からメモリ43へ各画素に対するLUT11を読み出す。ステップ45では、変換手段46は、各画素の制御入力値Aの値に対してLUT11を参照してDA入力値Bを求める。ステップ46では、中央処理装置41は、DA入力値Bを通信装置42を介して駆動装置3に送信する。すると、処理装置31は、DA入力値BをD/A回路32へ転送すると共に、デジタル制御信号を発生させる。駆動手段36は、DA入力値Bをアナログ信号Cに変換して、LCoS型空間光変調器2へ出力する。同時にデジタル制御信号が処理装置31から出力されることによりLCoS型空間光変調器2が入射光の位相を変調する。
【0040】
次に、LCoS型位相変調装置1の設定方法について説明する。LCoS型位相変調装置1を設定する際には、まず、D/A回路32の使用電圧範囲Q−Rの最小・最大電圧Q,Rを設定する。その後、各画素に対してLUT11を設定する。その後、補正パターン12を作成する。
【0041】
図7を参照して、使用電圧の最小値Qおよび最大値Rの設定方法を説明する。まず、ステップ1では、図8に示す偏光干渉計60を用いて、任意に選択した複数の画素に対して電圧依存性の位相変調特性を測定する。偏光干渉計60はキセノンランプ61と、コリメートレンズ62と、偏光子63と、ビームスプレッター64と、LCoS型位相変調装置1と、検光子65と、イメージレンズ66,67と、帯域フィルター68と、イメージセンサー69とからなる。ここでは、駆動手段36は、図9に示すように、DA入力値0−4095を、LCoS型空間光変調器2に印加可能な動作電圧範囲(P‐S)に対して線形に割り当てるように設定されている。LCoS型空間光変調器2によって位相変調された光が、イメージセンサー69によって測定される。偏光子63の偏光方向は、LCoS型空間光変調器2の液晶分子の配向方向に対し45°ずれているため、イメージセンサー69の測定結果により、電圧依存性の位相変調特性が求められる。
【0042】
ステップ2では、イメージセンサー69の測定結果に基づいて、DA入力値‐電圧依存性位相変調特性を各画素について求める。図9は、画素5点に対して得られたDA入力値‐電圧依存性位相変調量の関係を示すグラフである。図9より、以下の(A)‐(D)が確認できる。(A)位相変調量が2π[rad]以上ある。(B)電圧が変化しても位相変調量がほとんど変化しない領域(DA入力値が0−800の範囲)がある。(C)画素5点の位相変調量が異なる。(D)位相変調量がDA入力値に対して非線形である。
【0043】
LCoS型空間光変調器2において、位相変調量が2π[rad]あれば、位相の折り畳み処理を行うことで2π[rad]以上の位相変調量を実現することができる。従って、液晶に印加する電圧の駆動範囲は、位相変調量が2π[rad]確保できる範囲であれば十分である。しかし、実際には歪みの補正を行う際には、各画素の位相変調量のバラツキを考慮してある程度の余裕が必要であるため、位相変調量を2π[rad]以上確保できる値として、本実施の形態では3.5π[rad]に設定する。ここで、位相の折り畳み処理とは、制御入力値の位相折り畳みと同様に、位相が2π[rad]以上か0より小さい場合に、位相を2π[rad]で割った値に置き換えることである。
【0044】
具体的には、ステップ3において、LCoS型空間光変調器2に印加する使用電圧の最小電圧Qを液晶が動作するしきい値電圧以上になり、最大電圧Rが液晶の動作が飽和する飽和電圧以下になり、かつ、使用電圧の最小電圧Qと最大電圧R間の位相変調範囲がおよそ3.5πになるように設定する。このように設定した使用電圧の最小電圧Qと最大電圧Rとの範囲に対してDA入力値Bを4096階調で対応させる。図10は、最小電圧Qと最大電圧Rをこのような条件で設定した場合の上記5点に関するDA入力値Bと位相変調量と使用電圧範囲(Q‐R)との関係を示している。LCoS型空間光変調器2の動作可能電圧範囲全体を使用する図9の場合では、位相変調量が0.5π‐4π[rad]までの範囲に対してDA入力値は、約1100‐1800のおよそ700階調であった。これに対して、図10では、位相変調量が同じ0.5π‐4π[rad]までの範囲に対して、4096段階の電圧制御が可能となっている。従って、同じ位相変調量の範囲に対して、DA入力値は約5倍の階調を持つことになり、高い精度で電圧を制御できることになる。言い換えれば、最小最大電圧Q,Rを設定することで、DA入力値に対する使用電圧範囲のスケール変換を行なっていることになる。こうして、駆動手段36は、0‐4095のDA入力値を設定された使用電圧範囲Q−Rの電圧値を示すアナログ信号Cに線形変換するように設定される。
【0045】
図11を参照して、LUT11の作成方法を説明する。LUT11は、上記D/A回路32の設定の後作成される。まず、ステップ11では、図8で示した偏光干渉計60で、DA入力値Bと電圧依存性の位相変調量との関係をLCoS型空間光変調器2の各画素に対して求める。具体的には、全画素に対して同じ値のDA入力値Bに対する各画素の位相変調量を計測する。即ち、全画素に対して同じ値のDA入力値BをD/A回路32の駆動手段36にてアナログ信号Cに変換して、このアナログ回路CにてLCoS型空間光変調器2を駆動して、位相変調量を計測する。このDA入力値の値を0‐4095まで変化させて計測を繰り返す。ステップ12では、ステップ11で求めた測定値を元に、各画素に対して、DA入力値‐電圧依存性位相変調特性を求める。結果は、上述の図10と同じになり、非線形性を有し、かつ、画素毎にバラツキがある。
【0046】
ステップ13では、各画素に対して、得られたDA入力値‐電圧依存性位相変調特性を元にLUT11を作成する。具体的には、まず、DA入力値と位相変調量との関係を最小二乗法などを用いて、位相変調量を変数とする多項式で近似する。この近似により、光源や、イメージセンサなどによる測定ノイズの影響を軽減できる。尚、ステップ11において、DA入力値Bの全ての値について計測せず、間隔を置いて測定し、測定しなかったDA入力値Bの情報をこの近似式より推定してもよい。この近似式は、DA入力値tを 、位相変調量φのK次のべき多項式として以下のように表される。

【0047】
このように、DA入力値と位相変調量との関係を示す近似式を各画素において求める。一方、制御入力値Aと位相変調量との関係が線形で、かつ、0.0−2.0π[rad]を256段階の制御入力値Aで表わすために、制御入力値をta(1)とし、位相変調量φとの関係を、以下のように表す。

【0048】
ここで、ta(1)は0から255までの整数値であり、constはオフセット値である。このオフセット値は全ての画素で式(2)が実現できる同一の値に設定する。式(2)を式(1)に代入し制御入力値ta(1)とtとの関係を求める。この際、tは整数であるため四捨五入をする必要がある。四捨五入の操作をROUNDで表すと、ta(1)とtの関係は以下のようになる。

【0049】
a(1)の値0‐255に対して(3)で求まるtb(1)の値を対応させることでLUT11が作成される。
【0050】
ステップ14では、上記のように作成されたLUT11をHDD44に保存する。上記のLUT11は、干渉計の干渉強度出力から位相を計算によって求めている。この際、測定した干渉強度の最大値と最小値を用いるが、これらの値には誤差が含まれている可能性がある。ステップ15−17では、この誤差がどの程度になるかの評価を行なっている。
【0051】
詳細には、ステップ15において、ステップ11と同じく、全画素に対して制御入力値tと位相変調量φの関係を計測する。ただしステップ15では、変換手段46は、直前のステップ14で得られた各画素用のLUT11に基づいて、制御入力値AをDA入力値Bに変換した上で、駆動手段36がDA入力値Bをアナログ信号Cに変換し、LCoS型空間光変調器2の対応する画素を駆動する。こうして、全画素について制御入力値A(t)と電圧依存性位相変調量φとの関係を計測する。ステップ16において、ステップ15の結果を基に制御入力値‐位相変調特性を求める。ステップ17において、ステップ16の結果から、LUT11により電圧依存性位相変調特性の補正が所望の精度で行えているかを判断する。例えば、制御入力値‐電圧依存性位相変調特性が線形に近づいていれば所望の精度が得られていると判断するという方法を用いる。尚、判断方法はこの例に限定されない。ステップ17において、所望の精度が得られていないと判断した場合は、ステップ13を反復して、ステップ16の結果に基づいてLUT11を更新し、LUT11による、電圧依存性位相変調特性に対する補正の精度を向上させる。
【0052】
2回目に行なうステップ13では、DA入力値B(t)と位相変調量φとの関係は以下のように近似される。

【0053】
今回の処理で得られる新たな制御入力値ta(2)もまた256階調で表され、位相変調量と線形な関係とする。従って以下の式が成り立つ。

【0054】
前回の制御入力値A(ta(1))と今回の制御入力値A(ta(2))との関係は(4)と(5)から以下のように表すことができる。

【0055】
(6)式を(3)式に代入することにより、tとta(2)の関係が以下のようになる。

(7)式により新たな制御入力値A(ta(2))とDA入力値B(t)との関係が求められる。ステップ13では、これらの値に基づいて、新たなLUT11を作成し、ステップ14において、LUT11をHDD44に上書き保存する。一方、ステップ17で所望の精度が得られていると判断した場合、あるいは、更新前のLUT11に比べて精度の向上が得られないと判断した場合には、LUT11作成工程を終了する。
【0056】
図4は、上記の処理によりある画素に対して得られたtとtと位相変調量φとの関係を示している。LUT11による変換によって、制御入力値と位相変調量との関係が高い精度で線形になる。
【0057】
図12は、LCoS型空間光変調器2が有する各画素において、対応するLUT11を用いて位相変調を行った際の、制御入力値Aと電圧依存性の位相変調量の関係を示したグラフである。太線は、制御入力値Aと位相変調量の理想的な線形関係を示している。通常線は、太線に最も近い値を持つ画素に制御入力値Aと位相変調量との関係、点線は、太線と最も遠い値を持つ画素に関する制御入力値Aと位相変調量の関係を示している。本実施の形態のLUT11を用いることにより、画素毎の位相変調量のバラツキが補正され、かつ制御入力値Aと位相変調量との関係が線形になるような補正が実現されていることがわかる。
【0058】
以上のようにして、各画素に対してLUT11を作成した後、補正パターン12を作成する。電圧非依存性歪みは、通常では単独では計測できないが、LUT11を用いて電圧依存性位相変調特性を補正した状態でLCoS型位相変調装置1の出力波面を計測することにより計測が可能となるからである。電圧非依存性歪みを含む光波面の測定は、2光束干渉計を用いて測定される。本実施の形態では、2光束干渉計として図13に示すマイケルソン干渉計80を用いる。マイケルソン干渉計80は、レーザー光源81と、スペーシャルフィルタ82と、コリメートレンズ83と、偏光子84と、ビームスプリッター85と、LCoS型位相変調装置1と、ミラー86と、イメージレンズ87,88とCCD89とからなる。偏光子84の偏光方向は、液晶の偏光方向と平行になっている。ミラー86で反射される波面とLCoS型位相変調装置1のうちLCoS型空間光変調器2で反射される波面との干渉によって生成される干渉縞が計測され、以下の文献に示される解析方法を用いることにより、計測した干渉縞からLCoS型位相変調装置1の出力波面を求めることができる。
参考文献:M.Takeda, H.Ina, and S.Kobayashi, "Fourier-transform method of fringe pattern analysis for computer-based topography and interferometry", J. Opt. Soc. Am., Vol. 72, 156-160(1982).
【0059】
図14を参照して、電圧非依存性の歪みを補正する補正パターン12の作成方法を説明する。まず、ステップ21では、中央処理装置41は、全ての画素の値が0のパターンを初期の補正パターン12として設定する。ステップ22では、中央処理装置41は、全ての画素の制御入力値Aが、0‐255のうちいずれかの値で互いに等しい位相画像を所望パターン13として設定する。ステップ23では、入力値設定手段47は、所望パターン13と補正パターン12とを加算し、加算結果に位相折り畳みを施したものを制御入力値Aとする。ステップ24では、変換手段46は、画素毎に対応するLUT11に基づいて、制御入力値AをDA入力値Bに変換し、駆動装値3に転送する。ステップ25では、駆動手段36が、DA入力値Bに基づいて、アナログ信号Cを生成し、LCoS型空間光変調器2に使用電圧を印加する。ステップ26では、マイケルソン干渉計80のCCD89の出力結果に基づいてLCoS型位相変調装置1の出力波面を計測する。LUT11を用いて電圧依存性位相変調特性が補正されているため、ステップ26で計測した出力波面は電圧非依存性歪みのみを含んでいる。ステップ27では、計測した電圧非依存性歪みの符号を逆にし、補正パターン12を作成する。ステップ28では、補正パターン12の位相値に対して、位相の折り畳みを施す。ステップ29では、補正パターン12の各画素の位相値を、LUT11を参照して、図15に示すような256階調の値に表現しなおす。ステップ30では、256階調で表しなおされた補正パターン12をHDD44に保存する。
【0060】
以上の処理においても、LUT11の作成の際と同様に、干渉を測定することによる測定誤差が含まれている可能性がある。ステップ31−35において、この誤差がどの程度あるかを評価する。具体的には、ステップ31では、入力値設定手段47は、ステップ23と同様にして上記の所望パターン13と、直前のステップ30で得られた補正パターン12とを加算し、必要に応じて制御入力値Aの位相折り畳みを施したものを制御入力値Aとする。ステップ32−34は、ステップ24−26と同様であり、ステップ32で、変換手段46は、ステップ31で得られた制御入力値Aに対するDA入力値Bを求め、ステップ33で、駆動手段36は、DA入力値Bをアナログ信号Cに変換してLCoS型空間光変調器2に駆動電圧を印加する。ステップ34で、CCD89の出力結果に基づいて出力波面の計測が行なわれる。ステップ35では、この計測結果に基づいて、直前のステップ30にて得られた補正パターン12によって必要な精度の補正が行われたか否かを判断している。例えば、出力波面の平面度が得られていれば所望の精度が得られていると判断する方法を用いる。尚、判断方法はこの例に限定されない。ステップ35において、必要な精度が補正パターン12で得られたと判断されるか、もしくは精度の向上が得られないと判断される場合には補正パターン作成処理を終了する。必要な精度が得られない場合には、ステップ27に戻り、ステップ34の結果が示す電圧非依存性歪みに基づいて補正パターン12を作成しなおす。こうして、反復して補正パターン12の作成を繰り返す。
【0061】
以上の本実施の形態によるLCoS型位相変調装置1では、4096階調で表されるDA入力値Bに対して、LCoS型区間光変調器2を、動作可能電圧の範囲より小さく必要な位相変調量が確保された使用電圧の範囲内で制御している。そのため、精度良くLCoS型空間光変調器2に印加する電圧を制御できる。しかも、LUT11によって制御入力値Aと電圧依存性の位相変調量との関係が略線形になり、電圧依存性に起因する画素毎のバラツキも補正されるため、所望の位相変調量を高い精度で得ることができる。さらに、補正パターン12を用いて電圧非依存性歪みを補正することにより、より正確な位相変調を行うことができる。図16(A)は、LUT11及び補正パターン12を用いて、ラゲールガウシアンビームの位相変調を測定した図である。かかる補正を行っていない図16(B)と比較して、図16(A)は理論どおり同心円状のパターンが見えている。
【0062】
また、LUT11の作成及び補正パターン12の作成において、必要な精度が得られるか、精度の向上が得られなくなるまで、作成処理を反復している。そのため、高い精度でLUT11及び補正パターン12が得られ、電圧依存性位相変調特性および、電圧非依存性歪みを精度よく補正できる。
【0063】
HDD44に図6のフローチャートを実行するプログラムを格納する。中央処理装置41が、このプログラムをHDD44から読み出して実行することによりLCoS型位相変調装置1は、図6に示すような位相変調処理をできるように設定される。
【0064】
本発明による位相変調装置及び位相変調装置の設定方法は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、LCoS型空間光変調器2においては、画素電極22がミラーも兼ねていたが、図17に示すLCoS型空間光変調器120のように、画素電極22上に誘電体ミラー29を積層する構成のものをLCoS型空間光変調器2の代わりに用いてもよい。尚、LCoS型空間光変調器120において、LCoS型空間光変調器2と同様の構成には同じ番号を付し説明を省略した。
【0065】
上記の実施の形態におけるLCoS型位空間光調装置1では、LUT11と補正パターン12とを制御装置4のHDD44に格納したが、図18に示すLCoS型位相変調装置100のように、HDD44にはLUT11を格納せず、その代わりに、駆動装置130にLUT11を保持する構成であってもよい。即ち、制御装置4は、HDD44にLUT11が格納されていない。また、中央処理装置41は、変換手段46を備えておらず、駆動装置130のLUT処理装置135が変換手段として機能する。即ち、駆動装置130は、処理装置131と、D/A回路132と、通信装置133と、LUT11を保持するROM134と、LUT処理装置135とを有する。D/A回路132は駆動手段137を有する。LCoS型空間光変調器2の装置構成はLCoS型位相変調装置1に用いられたものと同じである。
【0066】
位相変調を行う際には、入力値設定手段47は、所望パターン13と補正パターン12とを足し合わせて画素毎に制御入力値Aを求め、これを駆動装置130に転送する。制御入力値Aは、通信装置133及び処理装置131を介して、LUT処理装置135へ転送される。LUT処理装置135は、ROM134からLUT11を読み出し、LUT11に基づいて、制御入力値AをDA入力値Bに変換する。DA入力値BはDA回路132に転送される。D/A回路132は、DA入力値Bを動作電圧値を示すアナログ信号Cに変換し、LCoS型空間光変調器2を駆動する。
【0067】
また、図19に示すLCoS型位相変調装置200のように、駆動装置3の代わりに駆動装置230を設け、駆動装置230が、LUT11及び補正パターン12を持つ構成にしてもよい。この場合も、中央処理装置41は変換手段46を備えず、駆動装置3のLULT処理装置236が変換手段として機能する。また、HDD44は、補正パターン12と、LUT11を備えない。駆動装置230は、処理装置231と、D/A回路232と、通信装置233と、LUT11及び補正パターン12を保持するROM234と、加算装置235と、LUT処理装置236とを有する。D/A回路232は駆動手段238を有する。制御装置4から送信された所望パターンを示す制御入力値Aは、加算装置235において、ROM234から読み出された補正パターン12と加算されて、LUT処理装置236に送信される。LUT処理装置236はLUT11をROM234から読み出し、補正パターン12が加算された制御入力値AをDA入力値Bに変換し、D/A回路232に送信する。D/A回路232において、駆動手段238は、DA入力値Bを動作電圧を示すアナログ信号Cに変換し、LCoS型空間光変調器2に出力する。
【0068】
さらに、駆動装置3に制御装置4の機能を組みこんでしまってもよい。この場合は、図19の駆動装置230がメモリを、処理装置231が入力値設定手段を、また、ROM234が所望パターンを更に備える。
【0069】
LUT11は各画素毎に作成していたが、隣接する複数の画素をグループ化し、グループ単位でLUT11を作成してもよい。例えば、2×2画素を1グループにする構成や、4×4画素を1グループにする構成にし、LUT11を作成する。この場合、グループ内において少なくとも1つの画素の電圧依存性の位相変調特性を計測し、そのグループ内に含まれる画素の測定値の平均値に基づいてLUT11を作成する。ただし、1つのグループに1つの画素のみの電圧依存性の位相変調量を計測した場合は、平均値ではなく、その画素の測定値そのものに基づいてLUT11を作成すればよい。かかる構成により、LUT11を各画素毎に用意する必要がないため、LUT11のデータ量を削減できる。
【0070】
また、グループを構成する画素数を可変にし、グループ単位で制御入力値‐電圧依存性位相変調特性を求め、グループ毎にLUT11を作成するようにしてもよい。液晶素子では膜厚(液晶層の厚さ)により位相変調量が変化する。膜厚の差が急激に変化するところではグループを構成する画素数を少なくし、例えば1画素を1グループとし、膜厚の変化が小さいところでは画素数を多く取り、例えば8×8画素を1グループ、という構成にする。かかる構成によれば、LUT11のデータ量を削減しつつ、効率的に精度よい補正が可能となる。
【0071】
補正パターン12もグループ単位で値を持つようにしてもよい。その場合には、グループにおいて少なくとも1つの画素の位相変調特性を計測し、そのグループ内において求めた画素毎の補正値の平均値を、そのグループ内の画素用の補正値として設定する。ただし、1つのグループにおいて1つの画素のみの位相変調特性を計測した場合は、平均値ではなく、その画素の補正値そのものをそのグループの補正値とすればよい。
【0072】
また、図20に示すように、LUT11に補正パターン12の値を包含してもよい。ある画素における制御入力値Aをtとし、補正パターン12の値をpとする。上述の実施の形態では、両者が加算された後にLUT11を適用していた。即ち、LUT11を参照するときの制御入力値Aはt+pであった。所望画像は随時変化するが、pは固定値なので、参照位置が常にpだけずれることになる。これは、LUTの参照開始位置をpだけずらすことと同等である。
【0073】
従って、各画素のLUT11の参照位置を補正パターンの当該画素での値分だけずらすことにより、電圧非依存性歪みを補正する情報をLUT11に包含することができる。図20は、p=128として、図4のデータに電圧非依存性歪みを補正する情報を包含させたものである。例えば、図4において、tが0であったときのtの値1030が、図20ではtが128の箇所に現れている。この場合、図6を参照して説明した位相変調方法において、ステップ42、ステップ43は必要なくなり、中央処理装置41は、ステップ41で所望パターン13を読み出し、入力値設定手段47は、所望パターン13の画素毎の値を制御入力値Aとして設定する。ステップ44において、中央処理装置41は、図20のLUT11を読み出す。ステップ45で、変換手段46は、図20のLUT11を参照して、制御入力値AをDA入力値Bに変換する。従って、補正パターンを包含したLUT11を適用するだけで電圧非依存性歪みも補正でき、補正パターンの保持と所望画像への加算処理が不要になる。
【0074】
補正パターンを包含するLUT11を用いた補正方法は、前述のグループ単位で補正を行う方法にも適用可能である。その場合、LUT11と補正パターン12のグループの分け方を同じにし、グループ単位で構成されたLUT11に、グループ単位で値を持つ補正パターン12の値を反映させればよい。
【0075】
このように、LUT11に補正パターンの情報を含め、かかるLUT11を用いて制御入力値AをDA入力値Bに変換することで電圧非依存性による歪みも補正することができる。そのため、補正パターン12を加算する処理を省略でき、効率的な位相変調が可能となる。
【0076】
駆動装置3内にD/A回路32を設けているが、駆動装置3からD/A回路を分離し、LCoS型空間光変調器側にD/A回路とDA入力値Bを受信する受信回路を新たに設ける構成をとっても良い。この場合、駆動装置3からLCoS側の受信回路には、DA入力値Bが伝送されることになる。
【0077】
また、D/A回路32の代わりに、パルス変調回路を設けてもよい。この場合には、パルス変調回路は、デジタル信号であるパルス変調回路を出力し、LCoS型空間光変調器をパルス変調回路で駆動する。
【0078】
また、本実施の形態では、5つの画素に関して電圧依存性位相変調特性を測定し、その測定結果に基づいて最小・最大電圧Q,Rを設定していたが、測定する画素の数は少なくとも1つあればよい。その場合も、測定した少なくとも1つの画素に対する電圧依存性位相変調特性に基づき最小・最大電圧を設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の位相変調装置は、レーザー加工、光ピンセット、適応光学、各種撮像光学系、光通信、非球面レンズ検査、短パルスレーザーのパルス波形制御、光メモリ等に用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態によるLCoS型空間光変調装置の構成を示す構成図である。
【図2】LCoS型位相変調器の構造を示す図である。
【図3(A)】LCoS型位相変調器の画素電極と対向電極との電位差が無い場合の液晶分子の状態を示す図である。
【図3(B)】LCoS型位相変調器の画素電極と対向電極との電位差が小さい場合の液晶分子の状態を示す図である。
【図3(C)】LCoS型位相変調器の画素電極と対向電極との電位差が大きい場合の液晶分子の状態を示す図である。
【図4】LUTに用いるデータを示した表である。
【図5】D/A回路による変換について説明する説明図である。
【図6】本実施の形態のLCoS型空間光変調装置による位相変調の方法を示したフローチャートである。
【図7】LCoS型位相変調器に駆動する電圧の最小値・最大値を設定する方法を示したフローチャートである。
【図8】偏光干渉計の構成を示す構成図である。
【図9】DA入力値と位相変調量との関係を示すグラフである。
【図10】使用電圧の最小値・最大値を設定した後のDA入力値と位相変調量との関係を示すグラフである。
【図11】LUTを作成する方法を示したフローチャートである。
【図12】LUTを用いて電圧依存性位相変調特性を補正した結果得られる制御入力値と位相変調量の関係を表すグラフである。
【図13】マイケルソン干渉計の構成を示す構成図である。
【図14】補正パターンを作成する方法を示したフローチャートである。
【図15】図14で示した手順に基づいて作成された補正パターンの例である。
【図16(A)】LUT及び補正パターンを適用して位相変調をした結果を示す図である。
【図16(B)】LUT及び補正パターンを適用せずに位相変調をした結果を示す図である。
【図17】変更例のLCoS型位相変調器の構造を示す図である。
【図18】別の変更例のLCoS型位相変調装置の構成を示す構成図である。
【図19】更に別の変更例におけるLCoS型位相変調装置の構成を示す構成図である。
【図20】補正パターンの情報を含むLUTに用いるデータを示した図である。
【図21】従来例における、LCoSの反射面の歪みを示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1,100,200 LCoS型位相変調装置
2,120 LCoS型空間光変調器
3,130,230 駆動装置
36,137,238 駆動手段
32 D/A回路
4 制御装置
41 中央処理装置
46,136,237 変換手段
47 入力値設定手段
11 ルックアップテーブル
12 補正パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣り合うように2次元状に配列された複数の画素を備え、各画素が、動作電圧範囲内の電圧値の駆動電圧の印加に応じて入力光に対し位相変調を行うことができるLCoS型空間光変調器と、
各画素に対して入力値を設定する入力値設定手段と、
単一の画素もしくは複数の画素からなる区画毎に設けられた区画の数に対応した数のルックアップテーブルと、
各画素に対して入力された入力値を、対応するルックアップテーブルを参照して、制御値に変換する変換手段と、
前記制御値を、前記動作電圧範囲内に設定された所定の電圧範囲内の電圧値に変換し、各画素を前記電圧値の駆動電圧にて駆動する駆動手段とからなり、
前記所定の電圧範囲は、前記複数の画素のうちの少なくとも1つの画素の電圧依存性位相変調特性に基づいて設定されており、
各ルックアップテーブルは、入力値が採りうる複数の第1の値と、前記複数の第1の値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるために制御値が採るべき複数の第2の値とを1対1に格納していることを特徴とする反射型位相変調装置。
【請求項2】
前記入力値設定手段は、所望の位相パターンを示す所望値と電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値とを画素毎に足し合わせて、足し合わせた結果を、各画素に対する入力値として設定し、
各ルックアップテーブルは、入力値が採りうる複数の第1の値と、前記複数の第1の値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるために制御値が採るべき複数の第2の値とを1対1に格納していることを特徴とする請求項1に記載の反射型位相変調装置。
【請求項3】
前記入力値設定手段は、所望の位相パターンを示す所望値を画素毎に入力値として設定し、
各ルックアップテーブルは、入力値が採りうる複数の第1の値と、前記複数の第1の値に対し電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値を足し合わせた値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるために制御値が採るべき複数の第2の値とを1対1に格納していることを特徴とする請求項1に記載の反射型位相変調装置。
【請求項4】
前記各区画は互いに隣り合う複数の画素からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の反射型位相変調装置。
【請求項5】
前記各ルックアップテーブルは、既に作成されたルックアップテーブルを参照して入力値の前記複数の第1の値を複数の制御値に変換し、前記複数の制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換して、対応する区画に属する前記少なくとも1つの画素を前記電圧値の駆動電圧にて駆動して電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量を測定して得られた測定結果に基づき反復して作成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の反射型位相変調装置。
【請求項6】
前記各区画についての電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値は、全区画について同一の位相を示す値を各区画について既に作成された補正値と足し合わせて、前記対応するルックアップテーブルを参照して制御値に変換し、前記制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換して、対応する区画に属する前記少なくとも1つの画素を前記電圧値の駆動電圧にて駆動して電圧非依存性歪みを測定して得られた測定結果に基づき反復して作成されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の反射型位相変調装置。
【請求項7】
互いに隣り合うように2次元状に配列された複数の画素を備え、各画素が、動作電圧範囲内の電圧値の駆動電圧の印加に応じて入力光に対し位相変調を行うことができるLCoS型空間光変調器と、画素毎に入力値を設定する入力値設定部と、単一の画素もしくは複数の画素からなる区画毎に設けられた区画の数に対応した数のルックアップテーブルを参照して入力値を制御値に変換する変換器と、制御値を電圧値に変換して前記電圧値の駆動電圧を各画素に印加することができる駆動回路とを備えた反射型位相変調装置の設定方法であって、
少なくとも1つの画素を前記動作電圧範囲内の電圧値の駆動電圧にて駆動し、前記少なくとも1つの画素の電圧依存性位相変調特性を測定する工程と、
前記電圧依存性位相変調特性に基づいて、前記動作電圧範囲内に所定の電圧範囲を設定する工程と、
前記駆動回路に対して、制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換するよう設定する工程と、
前記区画毎に、前記ルックアップテーブルを作成し、前記変換器に対し、各区画に属する画素については、対応するルックアップテーブルを参照して入力値を制御値に変換するよう設定する工程とからなり、
前記ルックアップテーブル作成工程は、
前記変換器を制御して、複数の制御値を前記所定の電圧範囲内の複数の電圧値に変換し、各区画に属する少なくとも1つの画素を前記複数の電圧値の駆動電圧にて駆動して、電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量を測定する工程と、
前記測定結果に基づき、入力値が採りうる複数の第1の値と、前記複数の第1の値と位相変調量との関係が所定の線形関係になるために制御値が採るべき複数の第2の値とを1対1に格納したルックアップテーブルを決定する工程とからなることを特徴とする設定方法。
【請求項8】
既に求められた前記ルックアップテーブルを更新するか否か判断する工程と、
前記ルックアップテーブルを更新すると決定した場合に、前記ルックアップテーブルを更新する工程とを更に備え、
前記ルックアップテーブル更新工程は、
前記変換器を制御して、入力値の前記複数の第1の値のそれぞれを、前記ルックアップテーブルを参照して制御値に変換する工程と、
前記駆動回路を制御して、前記制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換して、対応する区画に属する前記少なくとも1つの画素を前記電圧値の駆動電圧にて駆動して、電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量を測定する工程と、
前記測定した結果に基づき、前記ルックアップテーブルを更新する工程とからなることを特徴とする請求項7記載の設定方法。
【請求項9】
各区画について、電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値を決定する工程を、更に備え、
前記補正値を決定する工程は、
前記変換器を制御して、全区画について同一の位相を示す値を、区画毎に、対応するルックアップテーブルを参照して、制御値に変換する工程と、
前記駆動回路を制御して、前記制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換して、各区画に属する少なくとも1つの画素を前記電圧値にて駆動して、得られる電圧非依存性歪みを測定する工程と、
測定された電圧非依存性歪みに基づき、電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値を前記区画毎に決定する工程とからなることを特徴とする請求項7または8記載の設定方法。
【請求項10】
既に求められた前記補正値を更新するか否か判断する工程と、
前記補正値を更新すると決定した場合に、前記補正値を更新する工程とを更に備え、
前記補正値更新工程は、
全区画について同一の位相を示す値を、区画毎に、既に作成されている補正値に足し合わせる工程と、
前記変換器を制御して、各区画に属する少なくとも1つの画素について、足し合わせた結果の値を、対応するルックアップテーブルを参照して、制御値に変換する工程と、
前記駆動回路を制御して、前記制御値を前記所定の電圧範囲内の電圧値に変換して、各区画に属する少なくとも1つの画素を前記電圧値の駆動電圧にて駆動して、得られる電圧非依存性歪みを測定する工程と、
測定された電圧非依存性歪みに基づき、電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値を更新する工程とからなることを特徴とする請求項9記載の設定方法。
【請求項11】
前記入力値設定部に対し、画素毎に、所望の位相パターンを示す所望値と、前記画素に対応する電圧非依存性歪み補正用パターンを示す補正値とを足し合わせて、足し合わせた結果を、各画素に対する入力値として設定するよう、設定する工程を更に備えたことを特徴とする請求項7乃至10記載の設定方法。
【請求項12】
前記入力値設定部に対し、所望の位相パターンを示す所望値を画素毎に入力値として設定するよう、設定する工程と、
各ルックアップテーブルを補正する工程とを備え、
前記ルックアップテーブル補正工程は、各区画用のルックアップテーブルの前記複数の第1の値に対し当前記区画用に求められた補正値を足し合わせることで、前記複数の第1の値を設定しなおすことにより、前記ルックアップテーブルを補正し、もって、前記ルックアップテーブルは、入力値が採りうる複数の第1の値と、前記複数の第1の値に対し前記補正値を足し合わせた値と電圧依存性位相変調特性を示す位相変調量との関係が所定の線形関係になるために制御値が採るべき複数の第2の値とを、1対1に格納することになることを特徴とする請求項7乃至10記載の設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図3(C)】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16(A)】
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【図16(B)】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−176150(P2008−176150A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10779(P2007−10779)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】