説明

反射型光学イメージセンサ及び貨幣処理装置

【課題】光源光量の補正の精度を高めること。
【解決手段】透明な支持部12の検知面12aに支持された被読取媒体Bに、支持部を通してライン状光源14から照射光を照射し、被読取媒体からの反射光を受光する反射型光学イメージセンサにおいて、支持部の一部分に設けられていて、透明状態及び不透明状態の間で透明度を変化し得る液晶素子16と、支持部を通して検知面側へ照射光を照射するライン状光源と、支持部からの照射光に対応した反射光を受光するイメージセンサ部18と、イメージセンサ部が受光する不透明状態の液晶素子からの反射光の強度に基づいて、光源の明るさ又はイメージセンサ部の感度を補正する補正部20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、反射型光学イメージセンサ及び貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨の種類を識別する硬貨認識ユニットとしては、硬貨を磁気検出する技術が知られていた(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、近年、光源から光を照射して、硬貨や紙幣から反射される反射光を検出する反射型光学イメージセンサを用いた硬貨認識ユニットや紙幣認識ユニットが開発されている。
【0003】
反射型光学イメージセンサを用いて、硬貨や紙幣等の被読取媒体の識別を行う場合には、長期間にわたる装置の使用により、光源が経年劣化し、光源から照射される光量が減少する場合がある。
【0004】
このような光源の劣化を補正するために、イメージセンサ部と検知面との間に設けた透明状態と不透明状態とで透明度を変化可能な液晶シャッタを用いる技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−140747号公報
【特許文献2】特開2003−6700号公報
【特許文献3】特開2007−233506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常は、反射型光学イメージセンサでは、ライン状光源の焦点位置を検知面に一致させている。それは、光源光量の補正を行う場合に、焦点位置にある検知面位置からの反射光を用いて補正を行ったときに最も正確な補正を行うことができるからである。
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示された技術では、液晶シャッタを、ライン状光源の焦点位置からずれた位置に設けている。
【0007】
このため、特許文献3に開示されているような技術焦点位置からずれた位置に設けた液晶シャッタを用いて光源光量の補正を行う方法では、補正の精度が充分でない可能性があった。
【0008】
この発明は、上述したような問題点に鑑みなされたものである。従って、この発明の目的は、従来よりも光源光量の補正の精度を高めた反射型光学イメージセンサ及び貨幣処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の発明者は、種々の検討を行ったところ、検知面に光源光量の補正に用いる液晶素子を配置することにより、上述した課題の解決を図ることができることに想到した。
【0010】
そこで、この発明の第1の要旨の反射型光学イメージセンサは、特に、透明な支持部の検知面に支持された被読取媒体に、支持部を通してライン状光源から照射光を照射し、被読取媒体からの反射光を受光する。
【0011】
この構成の反射型光学イメージセンサにおいては、好ましくは、支持部の一部分に設けられていて、透明状態及び不透明状態の間で透明度を変化し得る液晶素子と、支持部を通して検知面側へ照射光を照射するライン状光源と、支持部からの照射光に対応した反射光を受光するイメージセンサ部と、イメージセンサ部が受光する不透明状態の液晶素子からの反射光の強度に基づいて、ライン状光源の明るさ又はイメージセンサ部の感度を補正する補正部とを備えるのがよい。
【0012】
また、この発明の第2の要旨の反射型光学イメージセンサは、特に、透明な支持部の検知面に支持された被読取媒体に、ライン状光源から照射光を照射し、前記被読取媒体からの反射光を受光する。
【0013】
この構成の反射型光学イメージセンサにおいては、好ましくは、支持部の全部に設けられていて、透明状態及び不透明状態の間で透明度を変化し得る液晶素子と、支持部を通して検知面側へ照射光を照射するライン状光源と、支持部からの照射光に対応した反射光を受光するイメージセンサ部と、イメージセンサ部が受光する不透明状態の液晶素子からの反射光の強度の2次元分布に基づいて、ライン状光源の明るさ又はイメージセンサ部の感度と、イメージセンサ部の感度ムラとを補正する補正部とを備えるのがよい。
【0014】
この発明の貨幣処理装置は、上述した反射型光学イメージセンサを備えている。
【発明の効果】
【0015】
このように、この発明の反射型光学イメージセンサは、ライン状光源の焦点位置に液晶素子を設けているので、従来よりも光源光量の補正の精度を高めることができる。
【0016】
また、この反射型光学イメージセンサを備えた貨幣処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図は、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施の形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0018】
(実施の形態1)
図1及び図2を参照して、実施の形態1の反射型光学イメージセンサについて説明する。なお、この反射型光学イメージセンサは、貨幣処理装置の一部分を構成している。
【0019】
(構造)
図1は、反射型光学イメージセンサ10の構成を概略的に示す模式図である。この実施の形態の反射型光学イメージセンサ10は、支持部12と、液晶素子16と、ライン状光源14と、イメージセンサ部18と、補正部20とを備えている。
【0020】
支持部12は、例えばガラスやプラスチック等の透明な材料からなる平板状の部品を主要構成部品として備えている。この支持部12は、装置外部に露出した一面が、紙幣や硬貨等の被読取媒体Bを載置(支持)する検知面12aとされている。検知面12aは、ライン状光源14から支持部12を通して照射される照射光の焦点位置に配置されている。
【0021】
液晶素子16は、周知の通り、内部に液晶が封入された平行平板であり、外部からの電圧のON/OFFにより、無色透明な透明状態と、白色の不透明状態の間で透明度を変化し得る。
【0022】
液晶素子16は、支持部12の一部分に一構成要素として一体的に設けられている。より詳細には、液晶素子16は、支持部12の端部付近の領域に配置されている。液晶素子16は、支持部12の検知面12aの被読取媒体Bを載置する領域外であって、支持部12の検知面12aと液晶素子16の表面とが同一平面をなすように、支持部12に配置されている。
【0023】
ライン状光源14は、支持部12の透明な部分を通り検知面12aに照射光を照射するとともに、液晶素子16を照射して、それぞれからの反射光をイメージセンサ部18で受光できる位置に配置されているのが好ましい。すなわち、ライン状光源14は、支持部12とイメージセンサ部18との間の支持部12からイメージセンサ部18へ向かう反射光を遮らない位置に配置するのが好適である。ライン状光源14としては、好ましくは、例えば、従来公知の発光ダイオード(LED)アレイを用いるのがよい。ライン状光源14(以下、単に光源と称する場合がある。)には、図示しないレンズ等の光学系が設けられていて、光源14から照射されるライン状の照射光で、検知面12a及び液晶素子16の全面を順次に走査できるように構成されている。
【0024】
光源14は、照射光を支持部12に向けて照射する。光源14から照射された照射光は、透明な支持部12を通して被読取媒体Bに照射され、この被読取媒体Bから反射された反射光が、後述するイメージセンサ部18で受光される。
【0025】
また、後述する補正時においては、光源14からの照射光は、白色に変化させた不透明状態の液晶素子16に向けて照射される。この補正の際は、後述するように、不透明状態の液晶素子16から反射された反射光がイメージセンサ部18で受光され、この反射光の光量に基づいて、光源14の照射光の光量又はイメージセンサ部18の感度の補正を行う。
【0026】
イメージセンサ部18は、支持部12に対面して配置されている。イメージセンサ部18は、好ましくは、例えば撮像素子としてのCCD(Charge Coupled Device)を2次元的に配置した部品である。イメージセンサ部18において、撮像素子は、支持部12からの反射光を受光できるだけの広さで配置されている。
【0027】
補正部20は、後述するように、予め組み込まれたアプリケーションプログラムを実行することによりCPU22で達成される機能手段である。
【0028】
ここでCPU22は、制御部24と、内部記憶部26と、演算部28とを備えている。CPU22は、データバスにより、外部記憶部30に接続されており、これらは例えば一台のコンピュータ(図示せず)を構成していて、図示されないが、入力手段や表示手段も備えている。
【0029】
制御部24は、後述する補正時に、外部記憶部30から読み込まれたアプリケーションプログラムにしたがって反射型光学イメージセンサ10の動作全体を制御する。
【0030】
内部記憶部26は、CPU22の動作時に発生した情報などを一時的に格納する。
【0031】
演算部28は、アプリケーションプログラムの実行などのCPU22の動作に当たり、各種の機能手段として作用する。これらの機能手段の一つが上述した補正部20である。
【0032】
詳細は動作の項で後述するが、補正部20は、光源14の経年劣化に伴う照射光、従って反射光の光量減少を評価する。そして、この光量減少を補正するように、光源14に印加する電圧を上げることにより照射光の光量を増加させたり、イメージセンサ部18の感度を増加させたりする。
【0033】
(動作)
次に、反射型光学イメージセンサ10の動作について説明する。
【0034】
まず、始めに被読取媒体Bの読み取りを行う際の動作(以下、「通常動作」と称する。)について説明する。
【0035】
通常動作においては、まず始めに、支持部12の検知面12a上には、紙幣や硬貨等の被読取媒体Bが載置される。この際、液晶素子16は、被読取媒体Bの読み取りの障害とならないように、透明状態とされている。
【0036】
その上で、光源14から、検知面12a上に置かれた被読取媒体Bに向けて照射光が照射される。支持部12を通って被読取媒体Bに到達したライン状の照射光は、被読取媒体Bで反射されて反射光を生じる。この反射光は、支持部12を通り、この支持部12に対面して配置されているイメージセンサ部18で受光される。
【0037】
イメージセンサ部18で受光された反射光は、従来公知の手法により、被読取媒体Bのイメージデータに変換される。
【0038】
続いて、光源14の光量を補正する際の動作(以下、「補正動作」と称する。)について、図1及び図2を参照して説明する。図2は、補正動作のフローチャートを示す図である。
【0039】
反射型光学イメージセンサ10を長期間使用していると、光源14から照射される照射光の光量が、経年劣化により使用当初すなわち正常時の光量に比較して小さくなってくる。その結果、イメージセンサ部18で得られる反射光の光量が正常時よりも低下しており、従って、被読取媒体Bのイメージデータが暗くなってしまう。そこで、図2を参照して説明する補正動作を行い、光源14の照射光量低下を補正する必要がある。
【0040】
今、補正開始前の液晶素子16は透明状態にあり、光源14は照射光を発生しておらず、イメージセンサ部18は反射光を受光できる状態にあるとする。また、以下の処理で参照される指令やデータその他の信号は、予め外部記憶部30に記憶されていて、補正動作開始時に外部記憶部30から読み込まれて内部記憶部26に一時的に記憶されている。
【0041】
まず、S1において、液晶素子16を不透明状態(白色)に変化させる。具体的には、CPU22を備えるコンピュータ(図示せず)の入力手段を用いて、ユーザにより補正動作の実行が指示されると、CPU22において、外部記憶部30から演算部28へと補正動作用のアプリケーションプログラムが読み込まれる。その結果、機能手段としての補正部20が動作を開始する。
【0042】
補正部20は、まず始めに、液晶素子16に対して、不透明状態への変化を指示する。より詳細には、この指示に応答して、電圧印加信号を内部記憶部26から読み出して、液晶素子16に対して電圧を印加している電圧印加部に出力し、液晶素子16を透明状態から不透明状態へと変化させる電圧の印加を指示する。その結果、液晶素子16は、不透明状態(白色)へと変化する。
【0043】
続いて、S2において、光源14から照射光を液晶素子16に対して照射する。具体的には、補正部20は、この電圧印加信号に応答して補正部20から光源14をオンにする指示信号を内部記憶部26から読み出してきて、光源14に出力して照射光の照射を指示する。その結果、光源14から、不透明状態の液晶素子16に向かって照射光が照射される。
【0044】
続いて、S3において、イメージセンサ部18は、液晶素子16から反射された反射光の強度をモニタする。以降、液晶素子16から反射された反射光のことを「補正用反射光」と称する。具体的には、補正部20は、指示信号に応答して、内部記憶部26からモニタ指示信号を読み出してイメージセンサ部18に与える。
【0045】
イメージセンサ部18はモニタ指示信号によりモニタを開始して、イメージセンサ部18が受光した補正用反射光の強度を表わす強度信号を補正部20に出力する。
【0046】
続いて、S4において、補正用反射光の強度が補正目標範囲内かどうか判断される。具体的には、補正部20は、強度信号に応答して外部記憶部30から内部記憶部26へと予め読み込まれた反射光の強度の補正目標範囲データと、補正用反射光の強度信号とを、演算部28に送る。この演算部28の比較部において、このデータと強度信号とが比較される。
【0047】
S4の条件判断において、補正用反射光の強度が補正目標範囲内に納まっていない場合(N)には、S5において、さらに条件判断が行われる。
【0048】
すなわち、S5において、補正部20では、補正用反射光の強度が補正目標範囲よりも大きいのか小さいのかが判断される。S5において、補正用反射光の強度が補正目標範囲よりも小さいと判断される場合、すなわち“補正用反射光の強度<補正目標範囲の下限値”の場合(Y)には、その結果が図示していない表示手段に表示されるとともに、S9に示される処理が行われる。
【0049】
つまり、この場合には、ユーザは、表示手段に表示された結果を見て、入力手段から光源14かイメージセンサ部18のどちらを調整するかの第1の指示を与える。S9において、補正部20は、入力手段からの第1の指示信号に応答して、この第1の指示信号に対応する第1の制御指令を内部記憶部26から読み出してきて、対応する光源14の電源部又はイメージセンサ部18に送り、(1)光源14の電源部を制御して、光源14に印加する電圧を所定幅で増加するか、又は(2)イメージセンサ部18の感度を所定幅だけ増加させる。すなわちイメージセンサ部18の出力信号を所定幅だけ増大させる。そして、S2の処理に戻り、S4で、後述する正常(Y)との判断が行われるまで処理を繰り返す。
【0050】
また、S5において、補正用反射光の強度が補正目標範囲よりも大きいと判断される場合、すなわち“補正用反射光の強度>補正目標範囲の上限値”の場合(N)には、S6に示される処理が行われる。
【0051】
つまり、この場合には、上述と同様にしてユーザは表示手段に表示された結果を見て、入力手段から電源14とイメージセンサ部18のどちらを調整するかの第2の指示を与える。S6において、補正部20は、入力手段からの第2の指示信号に応答して、この第2の指示信号に対応する第2制御指令を内部記憶部26から読み出してきて、対応する光源14又はイメージセンサ部18に送り、(1)光源14の電源部を制御して、光源14に印加する電圧を所定幅で減少するか、又は(2)イメージセンサ部18の感度を所定幅だけ減少させる。すなわちイメージセンサ部18の出力信号を所定幅だけ減少させる。そして、S2の処理に戻り、後述する正常(Y)の判断が行われるまで処理を繰り返す。
【0052】
一方、S4の条件判断において、補正用反射光の強度が補正目標範囲内であった場合(Y)には、S7の処理が行われる。
【0053】
すなわち、S7において、補正部20は、この正常であるとの判断結果に応答して、内部記憶部26から現状維持指令を読み出してきて、光源14の電源及びイメージセンサ部18に送り、よって、光源14に印加する電圧、又はイメージセンサ部18の感度を現在の値に維持又は固定する。
【0054】
そして、S8において、補正部20は、この現状維持指令を液晶素子16に対して電圧を印加している電圧印加部に対して送り、液晶素子16を不透明状態から透明状態へと変化させる電圧の印加を指示する。その結果、液晶素子16は、透明状態へと変化する。
【0055】
このようにして、光源14からの照射光の光量の経年劣化が補正される。
【0056】
(効果)
このように、この実施の形態の反射型光学イメージセンサ10は、支持部12の検知面12aと液晶素子16とを同一平面をなすように配置している。つまり、光源光量の劣化を補正するために用いる液晶素子16を光源14の焦点位置に配置している。その結果、従来の技術に比較して、より正確な光源光量の補正を行うことができる。
【0057】
(設計条件)
以下、この実施の形態の反射型光学イメージセンサ10の設計条件について説明する。
【0058】
(1)この実施の形態では、補正動作は、ユーザの指示(例えば、補正ボタンを押圧する等)により、行われる場合について説明した。しかし、補正動作は、ユーザの指示なく、自動的に実行されるようにしてもよい。例えば、被読取媒体Bの読み取り時ごとに、補正動作を行うようにしてもよい。これは、補正動作用のアプリケーションプログラムを書き換えることにより達成される。
【0059】
(2)この実施の形態ではS6及びS9の光源光量及びイメージセンサ部の感度の補正において、(a)光源光量を変化させる、(b)イメージセンサ部18の感度を変える、という2種類の補正方法を併記した。これら2種類の補正方法は、反射型光学イメージセンサ10の状況に応じて、適宜使い分けることが好ましい。
【0060】
例えば、光源光量が最大値又は最低値に達するまでは、光源光量を変化させることで補正を行い、光源光量が最大値又は最低値に達したならば、イメージセンサ部の感度を変化させることが考えられる。
【0061】
このように、光源光量とイメージセンサ部18の感度の両者を用いて補正を行うことで、より長期間にわたり、光源光量及びイメージセンサ部の感度を適正に保つことができる。
【0062】
(3)この実施の形態では、S6及びS9の光源光量及びイメージセンサ部の感度の補正において、光源光量及びイメージセンサ部の感度を所定幅だけ変化させることについて説明した。ここで、「所定幅」は、補正動作の実行頻度を勘案して任意好適な値に設定できる。例えば、補正動作を頻繁に実施する場合には、所定幅は、小さい値に設定し、及び補正動作の頻度が少ない場合には、大きい値に設定することが好ましい。
【0063】
(実施の形態2)
図3及び図4を参照して、実施の形態2の反射型光学イメージセンサ60について説明する。なお、この反射型光学イメージセンサは、貨幣処理装置の一部分を構成している。
【0064】
(構造)
図3は、この実施の形態の反射型光学イメージセンサ60の構成を概略的に示す模式図である。反射型光学イメージセンサ60は、液晶素子64が支持部12の全面に設けられている点、及び、補正部62の機能が異なる点を除いて、図1に示す反射型光学イメージセンサ10と同様に構成されている。従って、図3において、図1と同様の構成要素には同符号を付してその説明を省略する。
【0065】
反射型光学イメージセンサ60において、液晶素子64は、支持部12の全面に設けられている。つまり、反射型光学イメージセンサ60においては、液晶素子64が支持部12を構成している。
【0066】
その結果、補正動作時において、イメージセンサ部18は、支持部12の全面に設けられた液晶素子64からの補正用反射光を受光することになる。なお、補正動作の詳細については後述する。
【0067】
反射型光学イメージセンサ60において、補正部62は、実施の形態1の補正部20と同様に、CPU22の動作により達成される機能手段である。補正部62の構成は、実施の形態1と同様であるので、これ以上の説明を省略する。詳細は後述するが、補正部62は、光源14からの照射光の光量の経年劣化又はイメージセンサ部18の感度のみでなく、イメージセンサ部18の撮像素子ごとの感度ムラを補正する。
【0068】
(動作)
以下、図4を参照して、反射型光学イメージセンサ60の動作について説明する。図4は、反射型光学イメージセンサ60の補正動作のフローチャートを示す図である。
【0069】
まず、S31において、液晶素子64を不透明状態(白色)に変化させる。具体的には、ユーザにより補正動作の実行が指示されると、CPU22において、外部記憶部30から演算部28へと補正動作用のアプリケーションプログラムが読み込まれる。その結果、機能手段としての補正部62が動作を開始する。
【0070】
補正部62は、まず始めに、液晶素子64に対して、不透明状態への変化を指示する。より詳細には、この指示に応答して、電圧印加信号を内部記憶部26から読み出して、液晶素子64に対して電圧を印加している電圧印加部に出力し、液晶素子64を透明状態から不透明状態へと変化させる電圧の印加を指示する。その結果、液晶素子64は、不透明状態(白色)へと変化する。つまり、支持部12の全面が白色へと変化する。
【0071】
続いて、S32において、光源14から照射光を液晶素子64に対して照射する。具体的には、補正部62は、この電圧印加信号に応答して補正部62から光源14をオンにする指示信号を内部記憶部26から読み出してきて、光源14に出力して照射光の照射を指示する。その結果、光源14は、不透明状態の液晶素子64に向かって照射光が照射されるとともに、液晶素子64の全面の走査を行う。
【0072】
続いて、S33において、イメージセンサ部18は、液晶素子64から反射された補正用反射光の強度をモニタする。具体的には、補正部62は、指示信号に応答して、内部記憶部26からモニタ指示信号を読み出してイメージセンサ部18に与える。
【0073】
イメージセンサ部18はモニタ指示信号によりモニタを開始して、イメージセンサ部18が受光した補正用反射光の強度を表わす強度信号を補正部62に出力する。
【0074】
続いて、S34において、補正用反射光の強度が補正目標範囲内かどうか判断される。具体的には、補正部62は、強度信号に応答して外部記憶部30から内部記憶部26へと予め読み込まれた反射光の強度の補正目標範囲データと、補正用反射光の強度信号とを、演算部28に送る。この演算部28の比較部において、このデータと強度信号とが比較される。
【0075】
S34の条件判断において、補正用反射光の強度が補正目標範囲内に納まっていない場合(N)には、S35において、さらに条件判断が行われる。
【0076】
すなわち、S35において、補正部62では、補正用反射光の強度が補正目標範囲よりも大きいのか小さいのかが判断される。S35において、補正用反射光の強度が補正目標範囲よりも小さいと判断される場合、すなわち“補正用反射光の強度<補正目標範囲の下限値”の場合(Y)には、その結果が図示していない表示手段に表示されるとともに、S41に示される処理が行われる。
【0077】
つまり、この場合には、ユーザは、表示手段に表示された結果を見て、入力手段から光源14かイメージセンサ部18のどちらを調整するかの第1の指示を与える。S41において、補正部62は、入力手段からの第1の指示信号に応答して、この第1の指示信号に対応する第1の制御指令を内部記憶部26から読み出してきて、対応する光源14の電源部又はイメージセンサ部18に送り、(1)光源14の電源部を制御して、光源14に印加する電圧を所定幅で増加するか、又は(2)イメージセンサ部18の感度を所定幅だけ増加させる。すなわちイメージセンサ部18の出力信号を所定幅だけ増大させる。そして、S32の処理に戻り、S34で、後述する正常(Y)との判断が行われるまで処理を繰り返す。
【0078】
また、S35において、補正用反射光の強度が補正目標範囲よりも大きいと判断される場合、すなわち“補正用反射光の強度>補正目標範囲の上限値”の場合(N)には、S36に示される処理が行われる。
【0079】
つまり、この場合には、上述と同様にしてユーザは表示手段に表示された結果を見て、入力手段から電源14とイメージセンサ部18のどちらを調整するかの第2の指示を与える。S36において、補正部62は、入力手段からの第2の指示信号に応答して、この第2の指示信号に対応する第2制御指令を内部記憶部26から読み出してきて、対応する光源14又はイメージセンサ部18に送り、(1)光源14の電源部を制御して、光源14に印加する電圧を所定幅で減少するか、又は(2)イメージセンサ部18の感度を所定幅だけ減少させる。すなわちイメージセンサ部18の出力信号を所定幅だけ減少させる。そして、S32の処理に戻り、後述する正常(Y)の判断が行われるまで処理を繰り返す。
【0080】
一方、S34の条件判断において、補正用反射光の強度が補正目標範囲内であった場合(Y)には、S37の処理が行われる。
【0081】
S37及びS38では、イメージセンサ部18の撮像素子ごとの感度ムラが補正される。すなわちS37において、補正部62は、イメージセンサ部18で検出された補正用反射光強度を撮像素子ごとに評価する。そして、撮像素子ごとの補正用反射光強度のバラツキが補正目標範囲に収まっているかどうかを判断する。
【0082】
S37で、撮像素子ごとの補正用反射光強度のバラツキが補正目標範囲を超えている場合(N)、S38の処理が行われる。すなわち、S38において、補正部62は、イメージセンサ部18を制御して、各撮像素子ごとの感度を調整し、撮像素子ごとの感度のバラツキを補正目標範囲内に収める。
【0083】
つまり、補正目標範囲内よりも補正用反射光強度が大きい撮像素子については、その撮像素子に印加する電圧を減少し、感度を減少させ、及び補正目標範囲内よりも補正用反射光強度が小さい撮像素子については、その撮像素子に印加する電圧を増加し、感度を増加させる。そして、S39以降の処理を行う。
【0084】
一方、S37の条件判断で、撮像素子ごとの補正用反射光強度のバラツキが補正目標範囲内に収まっている場合(Y)には、S39以降の処理が行われる。
【0085】
すなわち、S39では、補正部62は、光源14に印加する電圧、又はイメージセンサ部18の感度を現在の値に固定する。
【0086】
そして、S40において、補正部62は、液晶素子64に対して電圧を印加している電圧印加部に対して、液晶素子64を不透明状態から透明状態へと変化させる電圧の印加を指示する。その結果、液晶素子64は、透明状態へと変化する。
【0087】
このようにして、光源14からの照射光の光量の経年劣化、イメージセンサ部18の感度及びイメージセンサ部18の撮像素子ごとの感度ムラが補正される。
【0088】
(効果)
このように、この実施の形態の反射型光学イメージセンサ60は、支持部の全体を液晶素子64としている。つまり、光源光量の劣化を補正するために用いる液晶素子16を光源14の焦点位置に配置している。その結果、従来の技術に比較して、より正確な光源光量の補正を行うことができる。また、イメージセンサ部18の感度及びイメージセンサ部18の撮像素子ごとの感度補正を行うことができ、その結果、より正確な被読取媒体Bのイメージデータを得ることができる。
【0089】
(設計条件)
以下、この実施の形態の反射型光学イメージセンサ60の設計条件について説明する。
【0090】
この実施の形態の反射型光学イメージセンサ60は、実施の形態1と同様の設計条件の変更を行うことができる。
【0091】
さらに、この実施の形態では、S38におけるイメージセンサ部18の感度ムラの補正において、撮像素子ごとに印加電圧を調整して、感度ムラを補正する場合について説明した。
【0092】
しかし、撮像素子ごとの感度ムラの補正は、ソフトウエア的に実施することも可能である。すなわち、外部記憶部30等の記憶装置に、撮像素子ごとの感度の補正係数を記憶させておき、被読取媒体Bのイメージデータ上において、画素ごとに、この補正係数を乗じるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施の形態1の反射型光学イメージセンサの構成を概略的に示す模式図である。
【図2】実施の形態1の反射型光学イメージセンサの補正動作のフローチャートを示す図である。
【図3】実施の形態2の反射型光学イメージセンサの構成を概略的に示す模式図である。
【図4】実施の形態2の反射型光学イメージセンサの補正動作のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0094】
10,60 反射型光学イメージセンサ
12 支持部
12a 検知面
14 ライン状光源
16,64 液晶素子
18 イメージセンサ部
20,62 補正部
22 CPU
24 制御部
26 内部記憶部
28 演算部
30 外部記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な支持部の検知面に支持された被読取媒体に、支持部を通してライン状光源から照射光を照射し、前記被読取媒体からの反射光を受光する反射型光学イメージセンサにおいて、
前記支持部の一部分に設けられていて、透明状態及び不透明状態の間で透明度を変化し得る液晶素子と、
前記支持部を通して前記検知面側へ照射光を照射する前記ライン状光源と、
前記支持部からの前記照射光に対応した反射光を受光する前記イメージセンサ部と、
前記イメージセンサ部が受光する不透明状態の前記液晶素子からの反射光の強度に基づいて、前記ライン状光源の明るさ又は前記イメージセンサ部の感度を補正する補正部と
を備えることを特徴とする反射型光学イメージセンサ。
【請求項2】
透明な支持部の検知面に支持された被読取媒体に、ライン状光源から照射光を照射し、前記被読取媒体からの反射光を受光する反射型光学イメージセンサにおいて、
前記支持部の全部に設けられていて、透明状態及び不透明状態の間で透明度を変化し得る液晶素子と、
前記支持部を通して前記検知面側へ照射光を照射する前記ライン状光源と、
前記支持部からの前記照射光に対応した反射光を受光する前記イメージセンサ部と、
前記イメージセンサ部が受光する不透明状態の前記液晶素子からの反射光の強度の2次元分布に基づいて、前記ライン状光源の明るさ又は前記イメージセンサ部の感度と、イメージセンサ部の感度ムラとを補正する補正部と
を備えることを特徴とする反射型光学イメージセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の反射型光学イメージセンサを備えた貨幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−140230(P2010−140230A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315495(P2008−315495)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】