説明

反射板付アンテナの給電構造

【課題】給電線路に雨水が入り込むのを確実に防止することができる反射板付アンテナの給電構造を提供する。
【解決手段】反射板の前面に設けられる放射素子と、反射板上に設けられて放射素子に給電する給電線路とを備えた反射板付アンテナにおいて、前記給電線路は(−)ストリップラインと該(−)ストリップラインより幅の狭い(+)ストリップラインからなり、前記(−)ストリップラインを複数のスペーサにより反射板上に一定の高さに保持すると共に、前記各スペーサに反射板と(−)ストリップラインとの間に位置するように水返し板を設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信用基地局や放送用送信等に使用する反射板付アンテナの給電構造に関する。
【背景技術】
【0002】
各種通信用基地局では、特定の水平方向領域に対して通信サービスを行うセクタアンテナが使用されている。このセクタアンテナでは、アンテナ素子(放射素子)と金属反射板を用いた基本構造により、特定方向への指向性を強めている。
【0003】
図6はVHF(very high frequency)帯で使用される従来の反射板付アンテナの概略構成を示す正面図、図7は上記反射板付アンテナの給電部分の詳細を示す斜視図である。図6において、11は例えば長方形状に形成された反射板で、この反射板11の前面に放射素子例えばH形に構成された垂直偏波用のダイポール素子12、13が上下に所定の間隔で2段スタックにして設けられる。上記ダイポール素子12、13は、反射板11から所定の間隔を保って設けられる。また、上記反射板11の上面中央には、上記2段スタックのダイポール素子12、13に給電するための給電線路14が上下方向に設けられる。
【0004】
上記給電線路14は、図7に示すように(−)ストリップライン15と(+)ストリップライン16からなり、反射板11上に直接設けられる。(−)ストリップライン15は(+)ストリップライン16の幅より十分に広い幅例えば数倍の幅を有し、この(−)ストリップライン15上に(+)ストリップライン16が数mmの間隔で設けられる。上記(−)ストリップライン15及び(+)ストリップライン16は、中央部に給電部17が設けられ、同軸ケーブル(図示せず)により外部回路に接続される。そして、上記(−)ストリップライン15及び(+)ストリップライン16は、上下両端部が上記ダイポール素子12、13の給電点に接続される。
【0005】
また、上記反射板11上には、ダイポール素子12、13及び給電線路14を保護するための保護カバー(図示せず)が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−217559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の反射板付アンテナは、反射板11上に給電線路14を直接設けているので、雨が降ったときに反射板11を伝わって保護カバー内に入り込んだ雨水が(−)ストリップライン15と(+)ストリップライン16との間に入り、アンテナ特性を劣化させるという問題があった。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、雨水が反射板を伝わって保護カバー内に入り込んだとしても、給電線路に雨水が入り込むのを確実に防止することができる反射板付アンテナの給電構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、反射板と、前記反射板の前面に設けられる放射素子と、前記反射板上に設けられて前記放射素子に給電する給電線路とを備えた反射板付アンテナにおいて、
前記給電線路は、
前記反射板に対向して設けられる第1のストリップラインと、
前記第1のストリップラインを前記反射板上に一定の高さに保持する複数のスペーサと、前記各スペーサに前記反射板と前記第1のストリップラインとの間に位置するように設けられる水返し板と、
前記第1のストリップライン上に所定の間隔を保って対向配置され、該第1のストリップラインより幅の狭い第2のストリップラインとを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アンテナの反射板を伝わって給電線路に侵入する雨水を確実に阻止でき、雨水による給電線路の特性劣化を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係る反射板付アンテナの給電部を示す斜視図である。
【図2】(a)は同実施例1における反射板付アンテナの給電部の正面図、(b)は同側面図、(c)は同下面図である。
【図3】本発明の実施例2に係る反射板付アンテナの構成例を示す斜視図である。
【図4】(a)は同実施例2に係る反射板付アンテナの正面図、(b)は同側断面図である。
【図5】同実施例2に係る反射板付アンテナの下面図である。
【図6】従来の反射板付アンテナの概略構成を示す正面図である。
【図7】従来の反射板付アンテナの給電部分の詳細を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1に係る反射板付アンテナの給電部を示す斜視図である。図2(a)は同実施例1における反射板付アンテナの給電部の正面図、同図(b)は同側面図、同図(c)は同下面図である。
【0014】
図1及び図2において、21は例えば長方形状に形成されたアンテナの反射板で、この反射板21上に例えば円柱状に形成された導電性の複数のスペーサ22を介して給電線路30が所定の高さH1に設けられる。上記スペーサ22の高さH1は、例えば約20mmに設定される。また、上記各スペーサ22には、反射板21と給電線路30との間に例えば円板状に形成した水返し板23が設けられる。この水返し板23は、導電性部材あるいは絶縁性部材を用いて形成され、その直径は例えば約15〜20mmに設定される。上記水返し板23の位置は、スペーサ22の中央部近傍に設けられるが、中央位置より給電線路30側に近接して設ける方が望ましい。
【0015】
上記給電線路30は(−)ストリップライン31と該(−)ストリップライン31より幅の狭い(+)ストリップライン32からなり、(−)ストリップライン31と(+)ストリップライン32との間は、絶縁性部材からなるスペーサ33が介在され、例えば約5mmの間隔に保持される。上記(−)ストリップライン31の幅W1は約30mm、(+)ストリップライン32の幅W2は約5〜10mmに設定される。
【0016】
そして、上記給電線路30には、中央部に設けた給電部34により給電される。この給電部34は、例えば給電用コネクタ35を用いて構成され、(−)ストリップライン31には(−)の信号が給電され、(+)ストリップライン32には(+)の信号が給電される。この場合、反射板21の中央部に透孔36が設けられ、給電用コネクタ35の中心導体37が透孔36内を挿通して(+)ストリップライン32の給電点38に接続される。また、給電用コネクタ35の外導体は、(−)ストリップライン31に接続される。
【0017】
そして、上記のように構成された給電線路30は、(−)ストリップライン31及び(+)ストリップライン32が反射板付アンテナの放射素子に接続されて該放射素子に給電する。
【0018】
上記実施例1に示したように給電線路30を反射板21から離して配置することにより、反射板21を伝わる雨水の影響から給電線路30を守ることができる。更に、反射板21からスペーサ22を伝わって給電線路30方向に向かうは雨水は、水返し板23によって阻止されるので、給電線路30に対する防水作用を高めることができ、雨水による給電線路30の特性劣化を確実に防止することができる。
【0019】
なお、実施例1では、水返し板23を円板状に形成した場合について示したが、その他の形状に形成してもよいことは勿論である。
【実施例2】
【0020】
次に上記給電線路30を例えばVHF帯で使用される反射板付アンテナに実施した場合の構成例について説明する。図3は上記給電線路30を実装した反射板付アンテナの構成例を示す斜視図、図4(a)は上記給電線路30を実装した反射板付アンテナの正面図、同図(b)は同側断面図である。図5は上記給電線路30を実装した反射板付アンテナの下面図である。なお、図3はダイポール素子の一部を切欠すると共に保護カバーを取り除いた状態を示している。
【0021】
図3及び図4において、41は例えば長方形状に形成された反射板で、両側部を後方に折返し、この折返部を副反射板としている。上記反射板41の前面には、ダイポール素子を2段スタックに構成した垂直偏波用放射素子42及び上記実施例1に示した給電線路30が設けられる。
【0022】
上記の放射素子42は、上下左右対称に配置されたダイポール素子43a〜43dにより構成される。各ダイポール素子43a〜43dは、それぞれ直線的に配置された所定長さの2つの給電側素子44a、44bと、これらの給電側素子44a、44bの両端を直線的に接続する折返し素子44cからなり、該折返し素子44cは断面がチャネル状、すなわち略コの字形になっている。上記ダイポール素子43a〜43dは、給電線路30によって給電側素子44a、44bに給電され、かつ所定高さに保持される。
【0023】
給電線路30は、反射板41の中央部に上下方向に沿って配置され、実施例1で説明したように反射板41上に複数のスペーサ22を介して所定の高さに設けられる。また、各スペーサ22には、水返し板23が設けられる。上記給電線路30は、(−)ストリップライン31及び(+)ストリップライン32からなり、(+)ストリップライン32の両端部が給電線路を兼ねる導電性の支持部材45a、45bによりダイポール素子43a〜43dの一方の給電側素子44aに接続され、(−)ストリップライン31の両端部が給電線路を兼ねる導電性の支持部材46a、46bによりダイポール素子43a〜43dの他方の給電側素子44bに接続される。上記支持部材45a、45b、46a、46bは、略V字型に形成されてダイポール素子43a〜43dを反射板41上に所定の高さに保持し、かつ給電側素子44a、44bに給電する作用を有している。
【0024】
また、給電線路30は、(+)ストリップライン32の中央部を所定の長さに亘って幅広に形成し、インピーダンス変換部51を構成している。このインピーダンス変換部51の中央部に分岐給電線路52を接続し、この分岐給電線路52の先端に給電部34を設けている。上記分岐給電線路52もスペーサにより所定の高さに保持すると共に上記スペーサに水返し板を設け、分岐給電線路52への雨水の侵入を防止している。また、上記反射板41上には、放射素子42、給電線路30及び分岐給電線路52を保護する保護カバー53が設けられる。この保護カバー53には、水抜き穴(図示せず)が設けられる。
【0025】
上記実施例で示したように給電線路30を反射板21から離して配置し、且つ給電線路30を保持するスペーサ22に水返し板23を設けることにより、反射板41を伝わって保護カバー53内に侵入した雨水は、スペーサ22及び水返し板23によって給電線路30方向への侵入が阻止されるので、給電線路30を雨水の影響から守ることができ、給電線路の特性劣化を確実に防止することができる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0027】
21…反射板、22…スペーサ、23…水返し板、30…給電線路、31…(−)ストリップライン、32…(+)ストリップライン、33…スペーサ、34…給電部、35…給電用コネクタ、36…透孔、37…中心導体、38…給電点、41…反射板、42…放射素子、43a〜43d…ダイポール素子、44a、44b…給電側素子、44c…折返し素子、45a、45b、46a、46b…支持部材、51…インピーダンス変換部、52…分岐給電線路、53…保護カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射板と、前記反射板の前面に設けられる放射素子と、前記反射板上に設けられて前記放射素子に給電する給電線路とを備えた反射板付アンテナにおいて、
前記給電線路は、
前記反射板に対向して設けられる第1のストリップラインと、
前記第1のストリップラインを前記反射板上に一定の高さに保持する複数のスペーサと、前記各スペーサに前記反射板と前記第1のストリップラインとの間に位置するように設けられる水返し板と、
前記第1のストリップライン上に所定の間隔を保って対向配置され、該第1のストリップラインより幅の狭い第2のストリップラインと
を具備することを特徴とする反射板付アンテナの給電構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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