説明

反射防止フィルム、偏光板および透過型液晶表示装置

【課題】本発明にあっては、高い水蒸気バリア性能及び高い光透過率を有し、かつ、ハンドリング性に優れる反射防止フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と、高屈折率層と、低屈折率層を順次積層した反射防止フィルムであって、電離放射線硬化型材料を含む塗液を塗布し電離放射線硬化して形成されるハードコート層と、酸化度が1.2以上1.4以下の範囲内からなる大気下で焼結された酸化ケイ素を用いて真空蒸着により形成され屈折率が1.64以上1.82以下の範囲内となる高屈折率層と、ケイ素アルコキシドを含む塗液を塗布し熱硬化して形成される屈折率が1.30以上1.42以下の範囲内となる低屈折率層とから形成され、かつ、全光線透過率が90%以上であることを特徴とする反射防止フィルムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムに関し、特に、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなどの画像表示装置に使用される反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に画像表示装置においては、外光が表示画面上に映りこむことによって画像を認識しづらくなるという問題がある。さらに、最近では屋内だけでなく屋外にも持ち出される機会が増加し、表示画面上への外光の映り込みや高度な耐久性がより重要な問題になっている。
【0003】
表示画面上への映りこみは、反射率を下げる方法によって解決される。その手法として、反射防止フィルムには、屈折率の異なる層を積層する方法が用いられ、層数が増えるほど反射防止性能は向上する。
【0004】
しかし、層数の増加とともにコストも上がるため、コストを抑えつつ単層より良好な反射防止性能を発揮する2層または3層の積層体が使用されることが多い。この中で2層構成の場合、高屈折率材料を第1層として基材側に積層し、低屈折率材料を第2層である最外層に用いる構成が一般的であり低反射フィルム特性が良好なものが得られる。
【0005】
反射防止フィルムを製造する際には、物理蒸着(PVD)法や化学蒸着(CVD)法などのドライコーティング法とウェットコーティング法とが知られている。ドライコーティング法の場合は、ウェットコーティング法では難しい高屈折率層の膜厚を精密に制御できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−321428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、画像表示装置において、液晶ディスプレイの構成要素である偏光板は、主として延伸配向したポリビニルアルコールフィルム及びその誘導体をヨウ素や二色性色素で染色することにより偏光機能を付与した偏光膜と、その両面に形成した表面保護フィルムとで構成されている。ポリビニルアルコールは耐湿性に劣り、吸湿によって偏光性能が損なわれることがあるため表面保護層には耐湿性が求められる。しかし、表面保護層には無配向のセルロースアセテート系樹脂やアクリル系樹脂が適用され、特にトリアセチルセルロースフィルムが主流であるが、耐湿性に乏しい。
【0008】
特許文献1では、反射防止層を有する偏光板に10g/m/day以上の水蒸気透過速度を持たせることにより、耐熱性に優れた偏光フィルムを開示している。しかし、上記の水蒸気透過速度を持つ偏光板は、湿熱条件では反射防止層の水蒸気透過速度が大きいために、逆に偏光板の耐久性が逆に悪くなる傾向がみられる。偏光板の耐湿熱性を向上させるためには、反射防止層に水蒸気に対するより高いバリア性能を付与することが要求される。
【0009】
また、反射防止フィルムはハンドリング性に優れることが要求される。ここで、「ハンドリング性がよい」とは製造される反射防止フィルムのカールが小さいことである。反射防止フィルムは他の部材と貼りあわされ画像表示装置の表面に設けられるが、反射防止フィルムのハンドリング性が悪く、反射防止フィルムのカールが大きい場合には他の部材と容易に貼りあわせることができなくなってしまう。
【0010】
また、反射防止フィルムは、高い光透過率を備えることが要求される。反射防止フィルムは画像表示装置表面に設けられるため、低い光透過率の反射防止フィルムは表示される画像の低下につながってしまう。
【0011】
本発明にあっては、高い水蒸気バリア性能及び高い光透過率を有し、かつ、ハンドリング性に優れる反射防止フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明としては、透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と、高屈折率層と、低屈折率層を順次積層した反射防止フィルムであって、電離放射線硬化型材料を含む塗液を塗布し電離放射線硬化して形成されるハードコート層と、酸化度が1.2以上1.4以下の範囲内からなる大気下で焼結された酸化ケイ素を用いて真空蒸着により形成され屈折率が1.64以上1.82以下の範囲内となる高屈折率層と、ケイ素アルコキシドを含む塗液を塗布し熱硬化して形成される屈折率が1.30以上1.42以下の範囲内となる低屈折率層とから形成され、かつ、全光線透過率が90%以上であることを特徴とする反射防止フィルムとした。
【0013】
また、請求項2記載の発明としては、前記反射防止フィルムの透湿度が1.5g/m/day以上3.0g/m/day以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムとした。
【0014】
また、請求項3記載の発明としては、請求項1または請求項2に記載の反射防止フィルムのハードコート層、高屈折率層、低屈折率層形成面と反対側の面に偏光層及び透明基材をこの順で備え、該偏光層が2枚の透明基材に挟持されていることを特徴とする偏光板とした。
【0015】
また、請求項4記載の発明としては、観察者側から順に、請求項3に記載の偏光板と、液晶セル、偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、前記低屈折率層が最外層に位置することを特徴とする透過型液晶表示装置とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明の反射防止フィルムにあっては、高いバリア性能を有し、かつ、カールが少なく、かつ、高い透過率を備える反射防止フィルムとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の反射防止フィルムの断面模式図である。
【図2】本発明に用いる酸化ケイ素柱又は酸化ケイ素板の形成方法の説明図である。
【図3】本発明の反射防止フィルムを用いた第1の偏光板の断面模式図である。
【図4】本発明の反射防止フィルムを備える透過型液晶ディスプレイを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の反射防止フィルムについて説明する。
【0019】
図1に本発明の反射防止フィルムの断面模式図を示した。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(10)は、第1の透明基材(11)上に順にハードコート層(111)、高屈折率層(222)、低屈折率層(333)を備える。
【0021】
なお、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルムは、図1に示す反射防止フィルムの構成に限定されるものではなく、例えばハードコート層に導電性材料を添加することにより帯電防止性を付与してもよい。
【0022】
まず、透明基材(11)について説明する。
【0023】
本発明の透明基材としては、プラスチックフィルムを好適に用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン6等のポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂フィルム、ポリウレタン(PUR)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等のビニル化合物、ポリアクリル酸(PMMA)、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル化合物またはフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール等を用いることができるがこれらに限定されるものではなく、機械的強度や寸法安定性に優れるものであれば良い。また、密着性を良くするために前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理などを施しておいても良い。
【0024】
上述した透明基材の中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが特に好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムはトリアセチルセルロースフィルムと比較して安価であり、破れにくいことからハンドリング性に優れているなどの理由から本発明の反射防止フィルムを液晶ディスプレイに用いるにあっては好適に使用することができる。中でも、トリアセチルセルロースにあっては、複屈折率が小さく、透明性が良好であることから液晶ディスプレイに対し好適に用いることができる。
【0025】
また、透明基材の厚みは特に制限を受けるものではないが、反射防止フィルムとしての適性や複数の層を積層させることを考えると、透明基材の厚みとしては、6μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0026】
次に、ハードコート層(111)について説明する。
【0027】
本発明の反射防止フィルムにあっては、第1の透明基材表面にハードコート層を形成するが、ハードコート層は、第1の透明基材の表面硬度を向上させ、鉛筆等の荷重のかかる引っ掻きによる傷を付きにくくすることができ、さらには第1の透明基材の屈曲により高屈折率層、低屈折率層にクラックが入るのを抑制することができ、反射防止フィルムの機械的強度を改善することができる。
【0028】
ハードコート層(111)の形成用塗液に加えられる電離放射線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0029】
なお、本発明の実施の形態において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0030】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0033】
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層(12)の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこれらのもの限定されるものではない。
【0034】
ハードコート層(111)を形成するための塗液を紫外線により硬化させる場合には、ハードコート層(12)の形成用塗液に光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは1重量部以上7重量部以下である。
【0035】
さらに、ハードコート層(12)の形成用塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、塗液には添加剤として、表面調整剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤等を加えることもできる。
【0036】
また、反射防止フィルム(10)には、静電気を帯びやすく埃の付着などから外観上の問題となることがある。そのため、静電気を防止するための導電性材料を添加し、帯電防止性能を付与することができる。例えば、ハードコート層(12)に金属酸化物微粒子を分散させることによって帯電防止性を付与することができる。金属酸化物微粒子としては、透明導電膜に用いられるATO(アンチモンドープ酸化スズ)やITO(酸化インジウム酸化スズ)、酸化スズ、酸化チタン、五酸化アンチモンなどを用いることができる。また、導電性材料として、4級アンモニウム塩や導電性ポリマーを用いることもできる。
【0037】
ハードコート層(12)の形成用塗液の塗布方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0038】
ハードコート層(12)の形成用塗液が第1の透明基材(11)表面に塗布された後、必要に応じて第1の透明基材(11)表面の塗膜中の溶媒を除去するために乾燥工程が設けられる。
【0039】
第1の透明基材(11)表面の塗膜に対し、活性エネルギー線を照射することにより塗膜は硬化され、ハードコート層(12)が形成される。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、あるいはガンマ線などを用いることができる。活性エネルギー線として電子線あるいはガンマ線を用いた場合、必ずしもハードコート層(12)の形成用塗液に光重合開始剤や光開始助剤を含有する必要はない。紫外線を発生する光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。また、電子線としては、コックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。
【0040】
次に、高屈折率層(222)について説明する。
【0041】
第1の透明基材表面に形成されたハードコート層表面上に高屈折率層を形成する。
【0042】
図2に本発明に用いる酸化ケイ素柱又は酸化ケイ素板の形成方法の説明図を示した。
【0043】
高屈折率層を形成させるために用いる酸化ケイ素の形成方法としては、粉末のケイ素(A)を、円柱又は板状の金型(B)に投入し、金型上部よりプレス板(C)に100kN〜200kNの範囲内とする圧力(J)を掛けることにより、ケイ素柱(D)又はケイ素板(E)を形成する。その際のケイ素柱又はケイ素板の空孔密度が54%〜60%の範囲内であることが好ましい。
【0044】
前記ケイ素柱(D)又はケイ素板(E)の形成後、加熱炉(F)に、前記ケイ素柱又は前記ケイ素板を重なり合わないように配列させた後に、加熱炉を密閉し、加熱炉内に常時酸素が存在するように常時大気(G)を導入し、800℃の温度にて30分〜60分焼成することにより、固化された酸化ケイ素柱(H)又は板状の酸化ケイ素板(I)を形成させる。
【0045】
800℃で大気下で焼結した酸化ケイ素柱又は板状の酸化ケイ素板の酸化度は1.3〜1.5の範囲内とする必要がある。なお、本発明における酸化度とは、酸素/ケイ素の存在比(atomic%)のことである。
【0046】
前記酸化度の酸素/ケイ素の比について詳細に説明すると、酸化度は、焼結形成した酸化ケイ素柱又は酸化ケイ素板を元素分析(EDS)により、O原子、Si原子の存在比(atomic%)を測定し、O原子の存在比(atomic%)をSi原子の存在比(atomic%)で除する(O/Si)ことにより求められる。なお、本発明における元素分析の測定に際しては、エネルギー分散形X線分析装置JED−2300(EDS、日本電子データム社製)を用いて測定をおこなった。
【0047】
元素分析とは、一般的に化学物質を構成する元素の種類と構成比率を決定する手法のことをいう。化学物質はすべて元素からできているので、構成する元素の種類と量を決定することはきわめて重要である。元素分析には様々な方法が存在するが、有機合成の分野では燃焼法を指すのが一般的である。また、無機化合物には、主にICP、ESCA、SIMS、EPMAなどの手法が用いられる。本発明においては、EPMAの手法の中のEDSを用いた。
【0048】
EDS(又はEDX)とは、エネルギー分散X線分光法(EDS、EDX:energy dispersive X−ray spectrometry)のことであり、エネルギー分散形X線分光器を使ったX線分光法である。分析元素範囲はB〜Uである。全元素範囲の同時分析ができる、分析時のプローブ電流が小さくて済むなどの特長を有する。
【0049】
なお、前記酸化度が1.2未満だと蒸着により形成した高屈折率層が着色してしまい光透過率が悪くなってしまう。また、酸化度が1.5以上だと蒸着により形成した高屈折率層由来の歪み及びカールがひどくなってしまい、ハンドリング性が悪くなってしまう。また、酸化ケイ素の酸化度と屈折率の関係は、酸化度が小さい場合には屈折率が高く、酸化度が高い場合屈折率が低くなる。酸化度1.2〜1.4の酸化ケイ素を用いる場合において、屈折率1.64〜1.82の範囲の高屈折率層を得ることができる。
【0050】
また、一般に酸化ケイ素の酸化度と水蒸気バリア性の関係は、酸化度が小さい場合水蒸気バリア性が高く、酸化度が大きい場合水蒸気バリア性が低くなる傾向がある。本発明の反射防止フィルムにあっては、酸化度が1.3〜1.5の焼結された酸化ケイ素を用いて真空蒸着により高屈折率層を形成することにより、屈折率が1.64〜1.82の範囲内の高屈折率層とすることができ、かつ、高屈折率層が水蒸気バリア層として機能し、反射防止フィルムの透湿度を低下させることができる。
【0051】
また、本発明の高屈折率層を形成するための酸化ケイ素は、大気下で焼結する必要がある。大気かで焼結することにより、光透過率の高い高屈折率層を形成することができる。
【0052】
次に、低屈折率層(333)について説明する。
【0053】
第1の透明基材表面に形成されたハードコート層表面上に高屈折率層を形成された後に、高屈折率層表面上に低屈折率層(333)を形成する。
【0054】
低屈折率層には、屈折率1.2〜1.4の低屈折率層をゾルゲル法にて形成する。具体的には、熱硬化性材料である。ケイ素アルコキシドを含む塗液を塗布し熱硬化させることにより形成される。ケイ素アルコキシドとしては、一般式(A) RSi(OR)4−x (但し、式中Rはアルキル基を示し、xは0≦x≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。
【0055】
一般式(A)で表されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等を用いることができる。ケイ素アルコキシドの加水分解物は、一般式(B)で示される金属アルコキシドを原料として得られるものであればよく、例えば塩酸にて加水分解することで得られるものである。
【0056】
ケイ素アルコキシドを用いる場合、撥水材料としてフッ素化合物である一般式(B) R´Si(OR)4−z(但し、式中R´はアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドをさらに含有させることができる。一般式(B)で表されるケイ素アルコキシドを用いることにより、反射防止フィルムの低屈折率層表面に防汚性を付与することができる。さらに、低屈折率層の屈折率をさらに低下することができる。一般式(B)で示されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、オクタデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0057】
低屈折率層形成用塗液に含まれる溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。
【0058】
低屈折率層の形成用塗液には低屈折率粒子を加えることもできる。加えられる低屈折粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、または、NaAlF(氷晶石、屈折率1.33)等の低屈折材料からなる低屈折率粒子を用いることができる。
【0059】
低屈折率粒子においては、粒子の内部に空隙を有する低屈折率粒子を好適に用いることができる。粒子の内部に空隙を有する粒子においては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。具体的には、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を用いることができる。
【0060】
低屈折率層(13)の形成用塗液に加えられる低屈折率シリカ粒子としては、粒径が1nm以上100nm以下であることが好ましい。さらには、粒径が60nm以上80nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0061】
前記低屈折率シリカ粒子の粒径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、低屈折率層(13)が白化して反射防止フィルム(10)の透明性が低下する傾向にある。一方、低屈折率シリカ粒子の粒径が1nm未満の場合、粒子の凝集による低屈折率層(13)における粒子の不均一性等の問題が生じる。
【0062】
内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率シリカ粒子とすることができる。内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子としては、多孔質シリカ粒子やシェル(殻)構造のシリカ粒子を用いることができる。
【0063】
また、低屈折率層の形成用塗液には添加剤として、表面調整剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤等を加えることもできる。
【0064】
以上の材料を調整して得られる低屈折率層の形成用塗液を湿式成膜法により偏在層(12)上に塗布し、低屈折率層の塗膜を形成し、低屈折率層(13)を形成することができる。以下に低屈折率層の形成方法を示す。
【0065】
低屈折率層の形成用塗液は、高屈折率層上に塗布され、低屈折率層の塗膜を形成する。低屈折率層の形成用塗液を、高屈折率層上に塗布するための塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。なお、本発明の低屈折率層(13)は薄い塗膜を形成する必要があり、均一な膜厚であることが必要であることから、マイクログラビアコーター法を用いることが好ましい。
【0066】
以上により、本発明の反射防止フィルムは製造される。
【0067】
なお、本発明の反射防止フィルムは水蒸気透過度が低く、水蒸気バリア性に優れた反射防止フィルムとすることができる。本発明の反射防止フィルムにあっては透湿度が1.5g/m/day以上3.0g/m/day以下の範囲内であることが好ましい。透湿度が3.0g/m/dayを超える場合にあっては、十分な水蒸気バリア性を備える反射防止フィルムとすることができない。また、透湿度は低ければ低いほど好ましいが、本発明の反射防止フィルムにおいて透湿度が1.5g/m/day未満の反射防止フィルムとすることは困難である。
【0068】
また、本発明の反射防止フィルムは光透過率の高い反射防止フィルムとすることができる。本発明の反射防止フィルムにあっては光透過率は90%以上98%以下であることが好ましい。光透過率が90%を下回る場合にあっては、画像表示装置表面に設けるのに適さない反射防止フィルムとなってしまう。また、光透過率は高ければ高いほど好ましいが、本発明の反射防止フィルムにおいて光透過率が98%を超える反射防止フィルムとすることは困難である。
【0069】
次に、本発明の反射防止フィルムを用いた第1の偏光板について説明する。
【0070】
図3に本発明の反射防止フィルム(10)を用いた第1の偏光板の断面模式図を示した。図3の第1の偏光板(210)は、第1の透明基材(11)の一方の面にハードコート層(111)と、高屈折率層(222)と、低屈折率層(333)が順に備えている反射防止フィルム(10)の低屈折率層非形成面側に、第1の偏光層(23)と、第2の透明基材(22)を順に備えた偏光板(210)である。
【0071】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(10)は、ディスプレイ部材として用いることができ、画像表示装置の表面に設けることができる。本発明の反射防止フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイの構成について説明する。
【0072】
図4に本発明の反射防止フィルム(10)を用いた透過型液晶ディスプレイの断面模式図を示した。図4(a)の透過型液晶ディスプレイにおいては、本発明の反射防止フィルム(10)を、一方の面に貼り合わせた第1の偏光板(20)を低屈折率層非形成面に備えた第1の偏光板(200)、液晶セル(30)、第2の偏光板(40)、バックライトユニット(50)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(10)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0073】
図4(a)にあっては、反射防止フィルム(10)の透明基材(11)と第1の偏光板(20)の透明基材を別々に備える透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0074】
バックライトユニット(50)は、光源と光拡散板を備える。液晶セル(30)は、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(30)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(21、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
【0075】
また、図4(b)にあっては、透明基材(11)の一方の面に高屈折率層(222)と、低屈折率層(333)を備えた反射防止フィルム(10)と、当該反射防止フィルムの低屈折率層非形成面に、偏光層(23)、透明基材(22)を順に備えて、第1の偏光板(210)を形成し、反射防止性偏光板(210)、液晶セル(30)、第2の偏光板(40)、バックライトユニット(50)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(10)の低屈折率層(333)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0076】
図4(b)にあっては、反射防止フィルムの反射防止層非形成面に、第1の偏光板として、偏光層(23)と透明基材(22)を、この順に備えた第1の偏光板(210)を備えた透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0077】
図4(b)においても、図4(a)と同様に、バックライトユニット(50)は、光源と光拡散板を備える。液晶セルは、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(30)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(11、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
【0078】
また、本発明の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
【0079】
以上により、本発明の反射防止フィルムを用いた、透過型液晶ディスプレイが製造される。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0081】
(ハードコート層の形成)
第1の透明基材(11)表面に形成される、ハードコート層(12)には、電離放射線硬化型材料として紫光 UV−7605B(日本合成化学社製)を100重量部、光重合開始剤としてチバガイギー社製イルガキュア184を4重量部、溶媒として酢酸メチルを50重量部と、2−ブタノンを50重量部混合し、ハードコート層の形成用塗液を調液した。透明基材であるトリアセチルセルロースフィルム(厚さ:80μm)上にハードコート層の形成用塗液を塗布し、乾燥し、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/m2で紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚10μmの透明なハードコート層(12)を形成させた。
【0082】
(高屈折率層の形成)
以下の[実施例1]、[実施例2]、[比較例1]〜[比較例3]により、高屈折率層を形成した。
【0083】
[実施例1]
透明基材上に前述のハードコート層を形成したのち、大気下で焼結した酸化度1.2の酸化ケイ素を用いて、真空蒸着機の中に、酸素を導入しない条件で真空蒸着をおこない、高屈折率層を形成した。
【0084】
[実施例2]
大気下で焼結した酸化度1.4の酸化ケイ素を用いて、(実施例1)と同様に高屈折率層を形成した。
【0085】
[比較例1]
大気下で焼結した酸化度1.1の酸化ケイ素を用いて、(実施例1)と同様に高屈折率層を形成した。
【0086】
[比較例2]
大気下で焼結した酸化度1.5の酸化ケイ素を用いて、(実施例1)と同様に高屈折率層を形成した。
【0087】
[比較例3]
窒素雰囲気化で焼結した酸化度1.4の酸化ケイ素を用いて、(実施例1)と同様に高屈折率層を形成した。
【0088】
(低屈折率層形成用塗液の合成)
・テトラエトキシシラン(TEOS) 26重量部
・ポリビニルアルコール(PVA) 36重量部
・水 9重量部
・塩酸 14重量部
・多孔質シリカ微粒子の分散液
(平均粒子径50nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン)
15重量部
を用い、これらを混合し、低屈折率層形成用塗液を調整した。
【0089】
(低屈折率層の形成)
前記低屈折率層形成用塗液を、(実施例1)、(実施例2)、(比較例1)〜(比較例3)のそれぞれの高屈折率層上にワイヤーバーコーターを用いて乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗布し、硬化及び120℃にて乾燥を施して低屈折率層を形成させ、反射防止フィルムを得た。
【0090】
(実施例1)、(実施例2)、(比較例1)〜(比較例3)で得られた反射防止フィルムを以下の方法で評価した。評価結果は、(表1)に示す。
【0091】
(全光線透過率)
全光線透過率測定に際しては、日本電色社製 ヘイズメーターNDH2000にて測定をおこなった。
【0092】
(ハンドリング性)
カールの強弱を目視にて、3段階のレベル分けをおこなった。
丸 印:カールがほぼないレベル
三角印:カールはあるが、問題とならないレベル
バツ印:カールが強く、後行程で問題となるレベル
【0093】
(透湿度)
JIS Z0208(1976)に基づき、40℃、90%の条件でカップ法により得られた反射防止フィルムの透湿度について測定した。
【0094】
【表1】

【0095】
(表1)から、(比較例1)及び(比較例3)はハンドリング性は良好であるものの全光線透過率が低く、反射防止フィルムとしては成り立たない。また、(比較例2)は全光線透過率は良好であるが、カールがひどく後の製造工程、加工工程に進めることができない。一方、(実施例1)及び(実施例2)は全光線透過率が90%以上と良好であり、ハンドリング性にも優れており、水蒸気バリア性にも優れた反射防止フィルムとすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の反射防止フィルムは、画像表示装置の表面に好適に使用される。
【符号の説明】
【0097】
10 反射防止フィルム
11 第1の透明基材
111 ハードコート層
222 高屈折率層
333 低屈折率層
20 第1の偏光板
22 第2の透明基材
23 第1の偏光層
200 反射防止性偏光板
210 反射防止性偏光板
30 液晶セル
40 第2の偏光板
41 第3の透明基材
42 第4の透明基材
43 第2の偏光層
50 バックライトユニット
A 粉末ケイ素
B 金型
C プレス板
D ケイ素柱
E ケイ素板
F 加熱炉
G 酸素(又は大気エアー)
H 酸化ケイ素柱
I 酸化ケイ素板
J 圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と、高屈折率層と、低屈折率層を順次積層した反射防止フィルムであって、
電離放射線硬化型材料を含む塗液を塗布し電離放射線硬化して形成されるハードコート層と、
酸化度が1.2以上1.4以下の範囲内からなる大気下で焼結された酸化ケイ素を用いて真空蒸着により形成され屈折率が1.64以上1.82以下の範囲内となる高屈折率層と、
ケイ素アルコキシドを含む塗液を塗布し熱硬化して形成される屈折率が1.30以上1.42以下の範囲内となる低屈折率層とから形成され、かつ、
全光線透過率が90%以上である
ことを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記反射防止フィルムの透湿度が1.5g/m/day以上3.0g/m/day以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の反射防止フィルムのハードコート層、高屈折率層、低屈折率層形成面と反対側の面に偏光層及び透明基材をこの順で備え、該偏光層が2枚の透明基材に挟持されていることを特徴とする偏光板。
【請求項4】
観察者側から順に、請求項3に記載の偏光板と、液晶セル、偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、前記低屈折率層が最外層に位置することを特徴とする透過型液晶表示装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−68377(P2012−68377A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212132(P2010−212132)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】