説明

反射防止膜および光学素子

【課題】反射防止性能に優れ、真空成膜装置を使用することなく製造することが可能であって生産性に優れた反射防止膜およびそれを形成した光学素子の製造。
【解決手段】光学基材の光学面に屈折率の異なる(メタ)アクリレートの硬化層を積層した反射防止膜であって、前記反射防止膜の最も低屈折率の層を構成する(メタ)アクリレートが、活性エネルギー線硬化型組成物モノマーの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子の数の比aが、0≦a≦5の関係を有する反射防止膜および反射防止膜を形成した光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子に用いる反射防止膜に関し、反射防止性能に優れ、真空成膜装置を使用することなく製造することが可能であって生産性に優れた反射防止膜およびそれを形成した光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンズ等の光学素子には、光線の透過率を向上して撮像性能を向上するために、光学面には反射防止膜が形成されている。反射防止膜は、無機化合物の薄膜を光学面上に形成したものが広く用いられている。無機化合物の薄膜は真空蒸着法に代表される減圧下における成膜方法を利用しており、減圧下で無機化合物を高温に加熱することが必要であって成膜に時間を要するという問題点があった。
【0003】
そこで、加熱または紫外線で硬化する有機材料をレンズ等の光学基材に塗布後、乾燥、加熱、あるいは紫外線照射を行って反射防止膜を形成する方法が提案されている。
従来の真空蒸着法では、光学ガラス等の表面に密着性が良好な反射防止膜を形成することができたが、有機材料を塗布して反射防止膜を形成する方法は、真空環境を必要としないものの、基材の光学材料との密着性が不十分なものであったり、あるいは複数層の反射防止膜を形成する場合には硬化層相互の密着性が十分でないことがあった。こうした問題を解決する方法が種々提案されている。
【0004】
例えば、紫外線硬化性樹脂を含有する高屈折率層と低屈折率層を交互に2層以上積層して、優れた反射防止性能を有する反射防止膜を80℃以下の温度で形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、紫外線硬化性の樹脂と金属酸化物粒子を含有するを高屈折率層と、紫外線硬化性のフッ素系樹脂を含有する低屈折率層とが、交互に2層以上積層されてなる反射防止膜を形成しているが、得られる反射防止膜は密着性が十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−227381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、真空成膜装置を用いることなく作製することが可能であって密着性が良好な反射防止膜およびそれを有する光学素子を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光学基材の光学面に屈折率の異なる(メタ)アクリレートの硬化層を積層した反射防止膜であって、前記反射防止膜の最も低屈折率の層を構成する(メタ)アクリレートが、活性エネルギー線硬化型組成物モノマーの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子の数の比aが、0≦a≦5の関係を有する反射防止膜である。
また、前記光学基材の光学面から数えて、第1層目が、フルオレンアクリレートの硬化層であり、第2層目が、チタン、ニオブ、ジルコニウムから選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物を混合したフルオレンアクリレートの硬化層であり、第3層目が、3以上の(メタ)アクリロイル基をもつ化合物の硬化層である前記の反射防止膜である。
【0009】
前記第3層目の(メタ)アクリロイル基をもつ化合物の硬化層が、中空シリカ微粒子を含有する前記の反射防止膜である。
前記の反射防止膜が光学材料基体上に設けられてなる光学素子である。
前記光学材料基体がシランカップリング処理を施したものである前記の光学素子である。
【0010】
本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート、メタアクリレートの少なくともいずれか一方を含むものを意味し、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基、メタアクリロイル基の少なくともいずれか一方を含むものを意味する。
【発明の効果】
【0011】
光学基材の光学面に、屈折率の異なる(メタ)アクリレートが硬化積層した反射防止膜であって、前記反射防止膜を構成する最も低屈折率の層を構成する(メタ)アクリレートが、活性エネルギー線硬化型組成物モノマーの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子の数の比aを特定の値としたことによって、良好な密着性を有する反射防止膜および反射防止膜を形成した光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の反射防止膜の密着性評価方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、光学ガラス等の光学基材の光学面に、屈折率の異なる(メタ)アクリレートが硬化積層した反射防止膜として、前記反射防止膜を構成する最も低屈折率の層の活性エネルギー線硬化型組成物モノマーの化学式中のフッ素原子の数と(メタ)アクリロイル基の数との比を特定の値としたことによって、良好な密着性を有する反射防止膜を有する光学素子が提供可能であることを見いだしたものである。
【0014】
従来、紫外線硬化性組成物から形成した反射防止膜は、ポリメチルメタクリレート等の合成樹脂製の光学材料を使用した光学素子に好適なものと考えられていた。前記した特許文献1においても、紫外線硬化性のフッ素樹脂を使用した反射防止膜を形成する基材としては、プラスチックレンズ等の合成樹脂が挙げられているように、光学ガラスのようなガラス材料には好適なものとはされていなかった。
本発明の反射防止膜は、(メタ)アクリレートが硬化積層した反射防止膜として、前記反射防止膜を構成する最も低屈折率の層の活性エネルギー線硬化型組成物モノマーの化学式中のフッ素原子の数と(メタ)アクリロイル基の数との比を特定の値としたことによって、密着性,反射防止特性が良好である反射防止膜および反射防止膜を有する光学素子が提供可能である。
フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型組成物のモノマーの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対する化学式中のフッ素原子の数の比aが、0≦a≦5の関係を有する物質の硬化膜を反射防止膜とすることが好ましい。
このような特性が優れた反射防止膜が得られる理由は定かではないが、分子内の(メタ)アクリロイル基がフッ素原子数に対して相対的に増加することで、材料の表面エネルギーが大きくなり、下地層との密着が確保できるようになるものと推察される。
【0015】
本発明の反射防止膜は、様々な光学材料に形成することができ、光学物品に使用するレンズ、フィルター、ミラー等の光学素子であって、光学基材はガラスも使用可能である。
【0016】
反射防止層は、紫外線硬化性のモノマー、光重合開始剤、有機溶剤とを混合溶解あるいは分散した塗布剤をスピンコート等の手法によって一様な厚さの塗布膜を形成した後に、紫外線を照射することによって硬化層を形成することが好ましい。
使用することができる紫外線硬化性モノマーとしては、フルオレン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのほか、ウレタンアクリレートのオリゴマーやポリマーを挙げることができる。
(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタアクリレートの少なくともいずれか一方を含有するものを意味する。
【0017】
また、最も低い低屈折率層を形成するフッ素原子を含む紫外線硬化性モノマーとしては、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0018】
光重合開始剤としてイルガキュア184およびイルガキュア907(長瀬産業製)を挙げることができる。
また、モノマーを溶解する溶剤としては、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルラクテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−メトキシエタノール、ハイドロフルオロエーテル類などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、混合して用いても良い。
【0019】
これらに加えて、微粒子を配合することによって、形成される硬化層の屈折率を調整することができる。粒径が5〜100nmのチタン酸化物、ニオブ酸化物、ジルコニウム酸化物の微粒子を配合することによって形成される硬化層の屈折率を高めることができる。また、粒径が5〜100nmのシリカ、中空シリカなどの微粒子を配合することによって形成される硬化層の屈折率を低くすることができる。
微粒子の配合量は、硬化層中に5〜80質量%とすることが好ましい。5質量%よりも少ない場合には添加の効果が得られず、80質量%よりも多くなると形成される硬化層が脆くなるので好ましくない。
【0020】
本発明の前記光学基材の光学面から数えて、第1層目が、フルオレンアクリレートの硬化層であり、第2層目が、チタン、ニオブ、ジルコニウムから選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物を混合したフルオレンアクリレートの硬化層であり、第3層目が、3以上の(メタ)アクリロイル基をもつ化合物の硬化層とした場合には特性が良好な反射防止膜を得ることがことができる。
また、(メタ)アクリロイル基をもつ化合物の硬化層が、中空シリカ微粒子を含有する場合にも、初期反射特性、耐熱性、密着性が良好な反射防止膜を得ることができる。
【0021】
本発明の反射防止層を構成する高屈折率層と低屈折率層は、それぞれの物性とともに、各層の厚さを調整することによって、所望の波長範囲で反射防止効果を得ることができる。
以下に、実施例、比較例を示し本発明を説明する。
【実施例】
【0022】
実施例1
シランカップリング剤の調製と表面処理ガラス基材1の調製
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業製KBM5103)1gを、100gのエタノールに溶解した。ここへ、0.1N塩酸を0.05g滴下後、25℃において1時間攪拌してシランカップリング剤を調製した。
得られたシランカップリング剤を、直径25mmの平板状のガラス基材(オハラ製S−LAH66)の中心に滴下し、回転数2000min-1で15秒間回転して、ガラス基材表面にシランカップリング剤を被覆した。次いで、シランカップリング剤を被覆したガラス基材を150℃で1時間加熱して表面処理ガラス基材1を調製作製した。
【0023】
塗布剤1の調製
トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学製)5g、光重合開始剤としてイルガキュア184(長瀬産業製)0.15g、溶剤としてプロピレングリコールモノプロピルエーテル(和光純薬工業製)94.85gを25℃において混合、溶解して塗布剤1を調製した。
塗布剤2の調製
トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(共栄社化学製)5g、イルガキュア184(長瀬産業製)0.15g、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(和光純薬工業製)94.85gを25℃において混合、溶解して塗布剤2を調製した。
【0024】
反射防止膜の形成
表面処理ガラス基材1に、塗布剤1を0.1g滴下した後に、3000min-1で20秒間の回転をした後に、高圧水銀灯で波長365nmの強度1500mJ/cm2の紫外線を照射して第1層目の硬化層を形成した。
続いて塗布剤2を0.1g滴下した後に、3000min-1にて20秒間の回転をした後に高圧水銀灯で波長365nmの強度1500mJ/cm2の紫外線を照射して第2層目の硬化層を形成をして、最も屈折率が低い層がフッ素を含まない(メタ)アクリレートモノマーの硬化物で構成された反射防止膜を設けた試料1を作製した。
以下の測定、評価方法にしたがって反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0025】
反射率の測定
試料に形成した反射防止膜の反射率の測定をレンズ反射率測定機(オリンパス製USPM−RU)を用いて行った。
表1において、反射防止膜の波長550nmにおける反射率が4%以下であれば良好、1%以下であれば優良であり、反射率が0.3%以下であれば優秀とした。
【0026】
実施例2
塗布剤3の調製
フルオレンアクリレートとして、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するアクリレート(大阪ガスケミカル製のオグソールEA−F5503)5g、光重合開始剤としてイルガキュア184(長瀬産業製)0.15g、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(和光純薬工業製)94.85gを25℃において混合、溶解して塗布剤3を調製した。
塗布剤4の調製
フルオレンアクリレートとして、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するアクリレート(大阪ガスケミカル製のオグソールEA−F5503)5.05g、光重合開始剤としてイルガキュア184(長瀬産業製)0.15g、粒子径10nmの酸化チタン粒子1.01g、プロピレングリコールモノプロピルエーテル117gを混合して酸化チタン粒子が分散した塗布剤4を調製した。
本発明において、粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所製LB−55)によって、酸化チタン1質量%の水溶液を調製し、光路長10mmの石英セルを用いて測定したものである。
【0027】
塗布剤5の調製
トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学製 ライトアクリレートTMP−A)5.05g、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート1g、光重合開始剤としてイルガキュア184(長瀬産業製)を0.15g、プロピレングリコールモノプロピルエーテル117gを混合、溶解して塗布剤5を調製した。
【0028】
反射防止膜の形成
表面処理ガラス基材1に、塗布剤3を0.1g滴下した後に、3000min-1で20秒間の回転をした後に、高圧水銀灯で波長365nmの強度1500mJ/cm2の紫外線を照射して第1層目の硬化層を形成をした。
続いて塗布剤4を0.1g滴下した後に、3000min-1で20秒間の回転をした後に、高圧水銀灯で波長365nmの強度1500mJ/cm2の紫外線を照射して第2層目の硬化層を形成をした。
続いて塗布剤5を0.1g滴下した後に、3000min-1で20秒間の回転をした後に、高圧水銀灯で波長365nmの強度1500mJ/cm2の紫外線を照射して最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが1の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を形成して、反射防止膜を有する試料2を作製した。
実施例1と同様にして反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0029】
実施例3
塗布剤6の調製
トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学製 ライトアクリレートTMP−A)5g、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート1g、光重合開始剤としてイルガキュア184(長瀬産業製)を0.15g、プロピレングリコールモノプロピルエーテル117gを混合溶解し、更に粒子径が50nmの中空シリカ(日鉄鉱業製シリナックス)1gを混合、分散して塗布剤6を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,6を順に塗布と硬化を行って、最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが3の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した試料3を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0030】
実施例4
塗布剤7の調製
塗布剤6が含有するトリメチロールプロパントリアクリレートと、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレートをペンタエリスリトールトリアクリレート5.03gに変更した点を除き、塗布剤6と同様に混合、分散して塗布剤7を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,7を順に塗布と硬化を行って、最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが0の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した試料4を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0031】
実施例5
塗布剤8の調製
塗布剤6が含有するトリメチロールプロパントリアクリレートと、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレートを、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート7.68gに変更したて点を除き、塗布剤6と同様に混合、分散して塗布剤8を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,8を順に塗布と硬化を行って、最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが0の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した試料5を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0032】
実施例6
塗布剤9の調製
塗布剤6が含有するトリメチロールプロパントリアクリレートと、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレートを、ジエチレングリコールジメタクリレート6.12gに変更した他は、塗布剤6と同様に混合、分散して塗布剤9を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,9を順に塗布と硬化を行って最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが0の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した試料6を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0033】
実施例7
塗布剤10の調製
塗布剤6が含有するトリメチロールプロパントリアクリレートと、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレートを、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート5gに変更した他は、塗布剤6と同様に混合、分散して塗布剤10を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,10を順に塗布と硬化を行って最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが3の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した試料7を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0034】
実施例8
塗布剤11の調製
塗布剤6が含有するトリメチロールプロパントリアクリレートと、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレートを、化学式中にフッ素原子を4個有する2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタアクリレート5gに変更した以外の点は、塗布剤6と同様に混合、分散して塗布剤11を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,11を順に塗布と硬化を行って最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが4の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した試料8を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0035】
実施例9
塗布剤12の調製
塗布剤6が含有するトリメチロールプロパントリアクリレートと、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレートを、化学式中にフッ素原子を5個有する2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート1gに変更した以外の点は、塗布剤6と同様に混合、分散して塗布剤12を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,12を順に塗布と硬化を行って最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子の比aが5の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した試料9を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0036】
実施例10
塗布剤13の調製
塗布剤6が含有するトリメチロールプロパントリアクリレートと、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレートを、化学式中にフッ素原子を5個有する2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタアクリレートに変更した以外の点は、塗布剤6と同様に混合・分散して塗布剤13を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,13を順に塗布と硬化を行って最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが5の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した試料10を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0037】
比較例1
塗布剤14の調製
塗布剤6が含有する2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート1gを2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート1gに変更した以外の点は塗布剤5と同様に混合、分散して塗布剤14を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,14を順に塗布と硬化を行って最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが6の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した比較試料1を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0038】
比較例2
表面処理ガラス基材1をポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製H4000)に変更して、塗布剤1を0.1g滴下した後に、6000min-1で20秒間の回転をした後に、高圧水銀灯で波長365nmの強度1500mJ/cm2の紫外線をで照射して第1層目の硬化層を形成をした。続いて塗布剤7を0.1g滴下した後に、2500min-1で20秒間の回転後、100℃で1時間加熱し、第2層目の硬化層を形成した。第2層目の硬化層の屈折率は1.85、厚みは140nmであった。
さらに、塗布剤4を3000min-1で20秒間回転した後に、第1層目と同様に紫外線照射して、第3層目の硬化層を形成した。第3層目の硬化層の屈折率は1.30、厚みは100nmであった。
次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0039】
比較例3
塗布剤15の調製
塗布剤6が含有するトリメチロールプロパントリアクリレートと、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレートを、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタアクリレート6gに変更した以外の点は塗布剤5と同様に混合、分散して塗布剤15を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,15を順に塗布と硬化を行って最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが6の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した比較試料3を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
実施例1に記載の方法と同様に、塗布剤3、4、15を順に塗布と硬化を行って硬化層を積層した反射防止膜を形成した。
次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0040】
比較例4
塗布剤16の調製
塗布剤6が含有するトリメチロールプロパントリアクリレートと、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレートを、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルメタアクリレート6gに変更した以外の点は塗布剤5と同様に混合、分散して塗布剤16を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,16を順に塗布と硬化を行って最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが7の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した比較試料4を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0041】
比較例5
塗布剤17の調製
塗布剤6が含有するトリメチロールプロパントリアクリレートと、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレートを、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルアクリレート6gに変更した点を除き、塗布剤5と同様に混合、分散して塗布剤187を調製した。
反射防止膜の形成
実施例1に記載の方法と同様に塗布剤3,4,17を順に塗布と硬化を行って最も屈折率が低い第3層として、(メタ)アクリレートの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが9の(メタ)アクリレートモノマーの硬化層を積層した比較試料5を作製した。次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
次いで、実施例1と同様に反射防止膜の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の複数の層を積層した反射防止膜は、反射防止性能、基材のガラス材料との密着性、隣接する層同士の密着性に優れており、しかも紫外線硬化性組成物を積層して硬化することによって短時間で成膜することができるので生産性にも優れた光学素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…剥離試験試料、2…ガラス基材、3…反射防止膜、4…セロハンテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学基材の光学面に屈折率の異なる(メタ)アクリレートの硬化層を積層した反射防止膜であって、前記反射防止膜の最も低屈折率の層を構成する(メタ)アクリレートが、活性エネルギー線硬化型組成物モノマーの化学式中の(メタ)アクリロイル基の数に対するフッ素原子数の比aが、0≦a≦5の関係を有することを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】
前記光学基材の光学面から数えて、第1層目が、フルオレンアクリレートの硬化層であり、第2層目が、チタン、ニオブ、ジルコニウムから選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物を混合したフルオレンアクリレートの硬化層であり、第3層目が、3以上の(メタ)アクリロイル基をもつ化合物の硬化層であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項3】
前記第3層目の(メタ)アクリロイル基をもつ化合物の硬化層が、中空シリカ微粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の反射防止膜が光学材料基体上に設けられてなることを特徴とする光学素子。
【請求項5】
光学材料基体がシランカップリング処理を施したものであることを特徴とする請求項4記載の光学素子。

【図1】
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【公開番号】特開2012−189949(P2012−189949A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55387(P2011−55387)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】