説明

反射防止膜形成用組成物

【課題】反射防止膜表面の滑り性を改善でき、かつ非フッ素系の汎用溶剤に可溶で、薄膜形成の容易な反射防止膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】反応性表面改質剤(I)および反射防止膜材料(II)からなる反射防止膜形成用組成物であって、反応性表面改質剤(I)が、(A)ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネートと(B)少なくとも2種の活性水素含有化合物との反応生成物からなる反応性基含有組成物であり、かつ成分(B)が、(B−1)少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および(B−2)活性水素と自己架橋性官能基を有するモノマーを含んでなる組成物である反射防止膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜の表面性状、特に表面滑り性(低摩擦係数化)、表面硬度、耐磨耗性、耐薬品性、汚染拭き取り性、撥水性、撥油性、耐溶剤性などを改善し、本来の塗膜の表面に改質された表面性状を付与する発明に関する。
【0002】
特に反射防止膜の透明性を損なうことなく表面滑り性を改善し、長期に亘って反射防止能を維持させることができる発明に関する。
【背景技術】
【0003】
テレビやOA機器のモニターなどの画像表示装置において、光の映り込みを防止または軽減するために、画像表示装置の画面上に反射防止膜を設けることが行なわれている(たとえば特許文献1)。
【0004】
しかし、反射防止膜は透明性を確保するためにも0.03〜0.5μmと極めて薄いものであり、また表面の滑り性も良好ではなく(摩擦係数が高い)、表面の汚れなどを繰り返し拭き取ることにより傷が付いたり、剥落したりする場合もある。
【0005】
一般に、表面の滑り性を改良する方法として、低分子量のシリコーンオイルやフッ素オイルなどの液状の撥水撥油剤を塗布または内添することが知られているが、効果に持続性がない。
【0006】
また、ポリマーの形態で適用し、表面の滑り性を改善する方法も提案されている(たとえば特許文献2)。この特許文献2に提案されている方法によれば、式:
RfO(CF2CF2O)m(CF2O)nCF2−Aq−Tp
(式中、Rfは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、Aは−CF2−末端に結合している架橋基(アルキレン基やオキシアルキレン基などの連結基であって、架橋性の官能基ではない)、Tは反応性官能基)で示されるパーフルオロポリエーテル構造を有するフッ素変性剤と水素含有単量体または重合体(たとえばポリウレタンやポリアクリレートなど)とを重縮合、重付加またはグラフト反応させて得られるフッ素化変性水素含有重合体をガラスなどの基材に塗布しUV架橋やパーオキサイド架橋することにより、表面の摩擦係数を低減し、耐磨耗性を付与でき、表面硬度を高め、対水接触角を高め、耐薬品性を向上できるとされている。
【0007】
しかし、特許文献2に記載のフッ素化変性水素含有重合体は、薄膜を作製する際にフッ素化変性剤と水素含有重合体を基材表面で反応させて合成されている。さらにこのフッ素化変性剤、特に防汚性や滑り性に優れる長鎖の高フッ素化フルオロポリエーテル構造を有するフッ素変性剤は含フッ素溶剤には溶解するが汎用溶剤への溶解性に乏しく、塗工の過程において含フッ素溶剤が必要であるため、コストがかかるうえ、環境への負荷も大きい。
【0008】
特許文献3および特許文献4に無機酸化物微粒子を含むハードコート層とパーフルオロポリエーテル含む防汚層とを含むディスプレイ要素が開示されているが、反射防止材料に少量添加して反射防止膜の表面改質をするものではなく、防汚層の主剤がパーフルオロポリエーテルであって、硬化後の主鎖に長いパーフルオロ鎖が架橋部との間に存在するため、結果として体積あたりの架橋密度が小さくそのため表面硬度が得にくい。また、反射防止を目的としない架橋剤などを添加し、架橋密度を上げて硬度を高めると屈折率が上がり充分な反射防止効果が得られない。いずれにしても表面改質された反射防止膜を得る目的の物ではない。また、塗工の過程においてフッ素系溶剤が必要であり、コストがかかるうえ、環境への配慮も必要である。
【0009】
またさらに、特許文献5に炭素−炭素二重結合およびパーフルオロポリエーテル基を有する表面処理剤組成物が提案されているが、反射防止を目的とはしない表面コート剤モノマーに添加し、塗布硬化して表面改質するものであり、反射防止材料に少量添加して反射防止膜の表面改質をするものではないし、もちろん光学的な特性についての教示はない。
【0010】
【特許文献1】国際公開公報WO02/18457号パンフレット
【特許文献2】特開平10−287719号公報
【特許文献3】特表2004−511001号公報
【特許文献4】特表2004−511002号公報
【特許文献5】国際公開公報WO03/002628号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、反射防止膜表面の滑り性を改善でき、かつ非フッ素系の汎用溶剤に可溶で、薄膜形成の容易な反射防止膜形成用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の反射防止膜形成用組成物は、反応性表面改質剤(I)および反射防止膜材料(II)からなる組成物であって、そのうち、
反応性表面改質剤(I)が、(A)ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネートと(B)少なくとも2種の活性水素含有化合物との反応生成物からなる反応性基含有組成物であり、
成分(B)が、
(B−1)少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および
(B−2)活性水素と自己架橋性官能基を有するモノマー
を含んでなる組成物であるものである。
【0013】
さらには、本発明の反射防止膜形成用組成物を用いた反射防止膜の形成方法、反射防止膜形成用組成物および溶剤からなる液状組成物を用いて塗布、乾燥し、膜を形成したのち硬化させる硬化物の形成方法、反射防止膜形成用組成物を硬化して得られるパーフルオロポリエーテルを含有する硬化物、および該硬化物、特にパーフルオロポリエーテル含有量が0.01〜50重量%である硬化被膜を最外表面に有する光学材料にも関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、反射防止膜の表面性状、特に表面滑り性(低摩擦係数化)、表面硬度、耐磨耗性、耐薬品性、汚染拭き取り性、撥水性、撥油性、耐溶剤性などを改善し、本来の塗膜の表面に改質された表面性状を付与することができる。
【0015】
特に反射防止膜の透明性を損なうことなく表面滑り性を改善し、長期に亘って反射防止能を維持させることができる。
【0016】
本発明で使用する反応性表面改質剤(I)は、高分子量の樹脂ではなく数千の分子量のオリゴマーを用いているため、硬化前の反射防止材料(II)に添加され塗布された際にの膜の表面に移行しやすく、表面に偏析した状態で反射防止膜形成用組成物が硬化されるため、改質剤(I)が表面に多数存在する膜が得られやすく、少量の添加でも大きな効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の反射防止膜形成用組成物は、反応性表面改質剤(I)と反射防止膜材料(II)とからなる。
【0018】
反応性表面改質剤(I)は国際公開公報WO03/002628号パンフレットに記載されている表面改質剤であり、(A)ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネート、および(B)少なくとも2種の活性水素含有化合物の組み合わせからなる反応性基含有組成物であり、成分(B)は、(B−1)少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテルと(B−2)活性水素と自己架橋性官能基を有するモノマーとを必須の組合せとしてを含んでなる組成物である。
【0019】
自己架橋性官能基とは、同じ官能基同士で架橋反応を生起し得る官能基のことをいい、官能基を機能・性質の面から特定するものである。
【0020】
非自己架橋性官能基の場合は、硬化(架橋)反応を進めるためには硬化剤が必要であり、その場合、比較的低分子量の未反応硬化剤が塗膜表面に偏析しやすく、表面改質効果が低下してしまうことがある。その点、自己架橋性官能基は硬化反応に硬化剤を必要としないので、表面改質効果を充分に発揮できる。
【0021】
ただし本発明においては、1つの自己架橋性官能基が他種の自己架橋性官能基または非自己架橋性官能基と架橋反応を起こす場合を排除するものではなく、また架橋剤(硬化剤)を介しての架橋反応を排除するものでもない。
【0022】
自己架橋性官能基としては、たとえばラジカル重合反応性の自己架橋性官能基、カチオン重合反応性の自己架橋性官能基および光のみで架橋する自己架橋性官能基などがあげられる。
【0023】
ラジカル重合反応性の自己架橋性官能基としては、たとえばラジカル重合反応性C=Cなど;カチオン重合反応性の自己架橋性官能基としてはたとえばカチオン重合反応性のC=C、エポキシ基、オキセタニル基、その他アルコキシシリル基、シラノール基などの架橋性ケイ素化合物など:光のみで架橋する自己架橋性官能基としてはたとえばビニルけい皮酸などの光二量化性官能基などがあげられる。
【0024】
本発明における自己架橋性官能基として好ましいものは、ラジカル重合反応性のC=C、エポキシ基であり、なかでも
【0025】
【化1】

【0026】
(X1はH、CH3またはF;X2はHまたはCH3
があげられる。
【0027】
そして、たとえばトリイソシアネート(A)と成分(B)とを反応させることによって、すなわち、トリイソシアネート(A)に存在するNCO基と成分(B)に存在する活性水素を反応させることによって、少なくとも1つの自己架橋性官能基を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物(IAB)の形で得ることができる。トリイソシアネート(A)に存在するNCO基と成分(B)に存在する活性水素の当量比は、NCO基1当量に対して活性水素が少なくとも1当量、特に1:1であるのが好ましい。
【0028】
トリイソシアネート(A)に存在するNCO基と成分(B)との反応においては、トリイソシアネート(A)に、成分(B−1)および(B−2)を同時に添加して反応させてもよいし、あるいは成分(B−1)および(B−2)を順次反応させてもよい。
【0029】
トリイソシアネート(A)1モルに対して、成分(B−1)の有する活性水素と成分(B−2)の有する活性水素の総和が2.5〜3.5モル、さらには少なくとも3モルであることが好ましい。
【0030】
成分(B−1)の好適な量は、トリイソシアネート(A)1モルに対して、下限が0.0001モル、たとえば0.01モル、特に0.1モルであり、上限が2モル、たとえば1.5モル、特に1.0モルである。
【0031】
成分(B−2)の好適な量は、トリイソシアネート(A)1モルに対して、下限が1モル、たとえば1.2モル、特に1.5モル、上限が2.5モル、たとえば2.0モル、特に1.8モルである。
【0032】
成分(B)は、さらに上記(B−1)および(B−2)以外の活性水素を有する化合物(B−3)を含んでいてよい。成分(B−3)を含む場合、化合物(IAB)は、成分(A)と、成分(B−1)、(B−2)および(B−3)とを反応させることによって得られる。トリイソシアネート(A)に、成分(B−1)、(B−2)および(B−3)を同時に添加して反応させてもよいし、あるいは成分(B−1)、(B−2)および(B−3)を順次(添加は記載の順序に限定されない)添加して反応させてもよい。
【0033】
トリイソシアネート(A)に存在するNCO基に成分(B−2)を1モル以上反応させ、残りのNCO基を成分(B−1)および成分(B−3)と反応させることが好ましい。トリイソシアネート(A)1モルに対して、成分(B−1)、(B−2)および(B−3)が有する活性水素の総和が2.5〜3.5モル、少なくとも3モル、特に3モルであることが好ましい。
【0034】
トリイソシアネート(A)は、ジイソシアネートを三量体化して得られたトリイソシアネートである。
【0035】
トリイソシアネート(A)を得るために使用するジイソシアネートとしては、たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート基が脂肪族的に結合したジイソシアネート;たとえばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートイソシアネート基が芳香族的に結合したジイソシアネートなどがあげられる。
【0036】
トリイソシアネート(A)の具体例としては、たとえば
【0037】
【化2】

【0038】
などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
少なくとも2種の活性水素含有化合物の組み合わせである成分(B)は、前記のとおり
(B−1)少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および
(B−2)活性水素と自己架橋性官能基を有するモノマー
の組合せを必ず含んでいるが、必要に応じて、
(B−3)前記(B−1)および(B−2)以外の活性水素を有する化合物
をさらに組み合せてもよい。なお、活性水素を有する基としては、たとえば活性水酸基などの活性水素含有基が例示できる。
【0040】
パーフルオロポリエーテル(B−1)としては、パーフルオロポリエーテル基に加えて、1つの分子末端に1つの水酸基を有するか、あるいは両末端のそれぞれに1つの水酸基を有する化合物が好ましい。
【0041】
パーフルオロポリエーテル(B−1)は、一般式:
【0042】
【化3】

【0043】
(式中、XはFまたは−CH2OH基;YおよびZは同じかまたは異なりFまたは−CF3;aは1〜16の整数、cは0〜5の整数、b、d、e、fおよびgは同じかまたは異なり0〜200の整数、hは0〜16の整数)で示される化合物であることが特に好ましい。
【0044】
具体例としては国際公開公報WO03/002628号パンフレットに記載されているものが例示でき、それらのうちでも、パーフルオロポリエーテル(PEPE)部分の数平均分子量が1000以上、特に1500以上で、10000以下、特に5000以下、さらには3000以下のものが好ましい。分子量が小さくなると防汚性や潤滑性が低下する傾向にあり、大きくなりすぎると溶剤に溶けにくくなる傾向にある。また、末端部分も適正な架橋度が得られる点から片末端アルコール変性体が好ましい。
【0045】
活性水素と自己架橋性官能基を有するモノマー(B−2)は、活性水素、特に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよびビニルモノマーであることが好ましい。
【0046】
モノマー(B−2)としては、たとえば
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、
HO(CH2CH2O)i−COC(R)C=CH2(R:H、CH3、i=2〜10)、
CH3CH(OH)CH2OCOC(R)C=CH2(R:H、CH3;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート)、
CH3CH2CH(OH)CH2OCOC(R)C=CH2(R:H、CH3;2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)、
65OCH2CH(OH)CH2OCOC(R)C=CH2(R:H、CH3;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート)、
アリルアルコール、
HO(CH2k CH=CH2(k=2〜20)、
(CH33SiCH(OH)CH=CH2
スチリルフェノール
などがあげられ、特に反応生成物の溶剤溶解性に優れている点から2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0047】
任意の成分である活性水素を有する化合物(B−3)は、パーフルオルオロポリエーテル基および自己架橋性官能基の両方を有さず、少なくとも1つの活性水素を有する化合物であることが好ましい。化合物(B−3)の好ましい例は、次のとおりである。
(B−3−1)炭素数1〜16の直鎖状あるいは分枝鎖状炭化水素からなる1価のアルコール、
【0048】
【化4】

【0049】
(B−3−3)炭素数1から16の直鎖状あるいは分枝鎖状炭化水素からなる2級アミン、
(B−3−4)芳香族基を有する2級アミン、
(B−3−5)Rfアルコール;Q(CF2l(CH=CH)m(CHI)n(CH2oOH(Qは水素原子、フッ素原子、(CF32CF−基であり、lは1から10の整数、m,nは0から1の整数、oは1から10の整数)
(B−3−6)ポリアルキレングリコールモノエステル;たとえば、R(OCH2CH2pOH、R(OCH2CH2CH2qOH (Rは炭素数1から16の直鎖状または分枝鎖状炭化水素あるいはアセチル基あるいはアルキルフェノキシ基であり、p,qは1から20の整数)、
(B−3−7)芳香族アルコール、
(B−3−8)活性水素を有するシラン化合物、たとえば(CH33Si(CH2sOH(sは1から20の整数)、
(B−3−9)そのほか、
【0050】
【化5】

【0051】
など。
【0052】
自己架橋性官能基として炭素−炭素二重結合(C=C)を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物(IAB)を得る反応は、たとえば、次のように表すことができる。式中、PEPEはパーフルオロポリエーテル基を表す。
【0053】
【化6】

【0054】
トリイソシアネート(A)として種々の非フッ素系物質に親和性の高いジイソシアネート(たとえば、アルキルジイソシアネート)の3量体であるトリイソシアネート(たとえばHMDI−イソシアヌレート変性3量体)に、末端に活性水素をもつパーフルオロポリエーテル(B−1)と、活性水素を有する付加重合性(自己架橋性官能基含有)モノマー(B−2)を反応させることによって、化合物(IAB)に非フッ素系物質に対する親和性を付与できる。
【0055】
また、同一反応器内で、成分(B−2)の活性水素/成分(B−1)の活性水素/トリイソシアネート(A)のNCO基=2/1/3(当量)で反応させると、上記化合物(2)単品が得られる。化合物(2)は、希釈剤、特にフッ素を含まない希釈剤に対して高い相溶性を有する。
【0056】
さらに反応仕込み比を調整し、成分(B−1)の活性水素/成分(B−2)の活性水素≦1/2(当量比)で、トリイソシアネートのNCO基をすべて修飾すると、上記の式(1)で表される非フッ素系の化合物(1)と式(2)で表されるPEPE基をもつフッ素系の化合物(IAB)の複数成分の混合物を同一反応器内にワンポットで生成させることができる。この混合物は、さらに乳化性を高めた付加重合性組成物である。非フッ素系化合物(1)はフッ素を含有せずかつ式(2)の化合物(IAB)と類似の構造であるので、フッ素系化合物(IAB)を反射防止膜材料に可溶化させる役割と多官能アクリレート架橋剤の役割を併せもつ。
【0057】
本発明においては、化合物(IAB)は上記式(2)で示される化合物であるが、反応性表面処理剤(I)としては、反応の副生成物である式(1)で示される化合物を含む混合物の形態でもよい。
【0058】
第3成分(すなわち、成分(B−3))を使用して得られる、自己架橋性官能基を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物(IAB)の具体例は次のような化学式のものである。
【0059】
【化7】

【0060】
化合物(IAB)は、イソシアヌレート環から出ている第1のイソシアネート基が成分(B−1)と反応し、第2のイソシアネート基が成分(B−2)に反応し、第3のイソシアネート基が成分(B−3)に反応している上記の化学式のような化合物であってよい。 本発明においては、反応性表面改質剤(I)は反応の副生成物であるPEPE基を有しないつぎの化合物を含む混合物の形態でもよい。
【0061】
【化8】

【0062】
また、自己架橋性官能基としてエポキシ基などを有するパーフルオロポリエーテル含有化合物(IAB)を得る反応も、同様に進めることができる。
【0063】
化合物(IAB)は、少なくとも1つのNCO基に結合した1分子のパーフルオロポリエーテル化合物(B−2)と少なくとも1つのNCO基に結合した1分子の自己架橋性官能基含有化合物(B−2)を有する化合物である。残りのNCO基は、成分(B−1)、(B−2)および(B−3)のいずれかと反応して、これらと結合している。
【0064】
本発明で用いる反応性表面改質剤(I)は化合物(IAB)を必ず含んでいるが、そのほか反応副生成物である種々の化合物を含む混合物であってもよい。
【0065】
反応副生成物としては、たとえば
トリイソシアネート(A)のNCO基に成分(B−1)が結合していない化合物(NCO基は成分(B−2)や成分(B−3)と結合している)、
トリイソシアネート(A)のNCO基に成分(B−2)が結合していない化合物(NCO基は成分(B−1)や成分(B−3)と結合している)、
トリイソシアネート(A)のNCO基に成分(B−1)と成分(B−2)の両方とも結合していない化合物(NCO基は成分(B−3)と結合している)
などがあげられる。
【0066】
また、反応性表面改質剤(I)では、1分子の成分(B−1)が結合している化合物(IAB)の割合は、好ましくは下限が0.01モル%、より好ましくは1モル%、特に10モル%であり、上限は好ましくは100モル%、より好ましくは80モル%、特に67モル%である。また、2分子の成分(B−1)が結合している化合物(IAB)は必ずしも存在していなくてもよいが、存在させる場合その割合は、好ましくは上限が100モル%、より好ましくは80モル%、特に50モル%である。
【0067】
任意の成分(B−3)を使用する場合、1分子の成分(B−3)が結合している化合物(IAB)の割合は、好ましくは上限が100モル%、より好ましくは80モル%、特に50モル%である。化合物(IAB)には含まれない2分子の成分(B−3)が結合しているパーフルオロポリエーテル含有化合物も存在していてもよく、その割合は、好ましくは上限が80モル%、より好ましくは50モル%、特に30モル%である。
【0068】
本発明において、反射防止膜材料(II)への溶解性や目標物性に合わせて、反応性表面改質剤(I)の組成を任意に変えることができる。また、化合物(IAB)の重量平均分子量をたとえば500〜10000の範囲に調整することによって、相溶性をさらに向上させることができ、溶解性の乏しい反射防止膜材料(II)に対しても、反応性表面改質剤(I)を相溶化させることができる。相溶性を向上させるには、成分(B−1)の活性水素/成分(B−2)の活性水素の比を小さくすることが好ましく、たとえば1/2以下、たとえば1/20,000〜1/2にすることが好ましい。
【0069】
本発明に用いる反応性表面改質剤(I)としては、自己架橋性官能基含有PEPE基含有化合物(IAB)単独で使用する場合、高架橋性の反射防止膜材料(II)へも均一分散できるようになり、均一な膜を形成することができるようになる。さらにPEPE基を有さない化合物(2)を併用することにより、反射防止膜材料(II)への溶解性をより一層向上させることができる。
【0070】
つぎに、本発明で使用する反射防止膜材料(II)について説明する。
【0071】
本発明で使用する反射防止膜材料(II)としては、液状の形態で基材(フィルムなど)上に塗工できるものであればよく、なかでも硬化後の屈折率が1.45以下である硬化性材料が好ましい。具体的には、従来公知の反射防止膜材料、たとえば有機ケイ素化合物系材料、含フッ素有機ケイ素化合物系材料、架橋性シリコーン樹脂系材料、架橋性含フッ素シリコーン樹脂系材料、含フッ素アクリル化合物系材料、含フッ素エポキシ化合物系材料または硬化性含フッ素ポリマー系材料からなる反射防止膜材料があげられる。かかる反射防止膜材料には、硬化剤、レベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤などが配合されていてもよい。
【0072】
有機ケイ素化合物系材料の限定されない具体例としては、たとえば特開平10−147740号公報、特開2000−1648号公報などに記載されたシロキサン結合を含む硬化性樹脂組成物などがあげられる。
【0073】
含フッ素有機ケイ素化合物系材料の限定されない具体例としては、たとえば特開平10−147739号公報、特開2000−10965号公報、特開2000−17028号公報、特開2000−313709号公報などに記載されたシラン化合物からなる反射防止膜形成用組成物などがあげられる。
【0074】
含フッ素アクリル化合物系材料の限定されない具体例としては、たとえば特開平9−203801号公報、特開2000−194503号公報などに記載された多官能含フッ素アクリルからなる組成物などがあげられる。
【0075】
含フッ素エポキシ化合物系材料の限定されない具体例としては、たとえば特開平5−302058号公報、特開2000−17099号公報などに記載された多官能含フッ素エポキシ化合物からなる組成物などがあげられる。
【0076】
硬化性含フッ素ポリマー系材料の限定されない具体例としては、たとえば国際公開公報WO02/18457号パンフレット、特開平6−115023号公報、特開2000−194503号公報、特開平11−337706号公報などに記載されたものなどがあげられる。
【0077】
本発明が目的とする表面改質作用は、これらのうち透明性に優れ、生産性が高く、反射防止効果も良好であるが、摩擦抵抗が比較的大きく耐擦り傷性や表面硬度の向上が望まれている薄い(約0.03〜0.5μm)含フッ素ポリマー系反射防止膜材料において特に有利である。
【0078】
さらに本発明で好適に使用できる硬化性含フッ素ポリマー系反射防止膜形成用材料として、上記のほかに、式(4):
−(N)−(C)− (4)
[式中、
構造単位Nは、式(N):
【0079】
【化9】

【0080】
(式中、X3およびX4は同じかまたは異なり、HまたはF;X5はH、F、CH3またはCF3;X6およびX7は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rf1は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY1またはY2(Y1は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基、Y2は水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい架橋性環状エーテル構造を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位;
構造単位Cは、構造単位Nを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Nを0.1〜100モル%および構造単位Cを0〜99.9モル%含む数平均分子量500〜1000000の含フッ素ポリマー(IIa)を100モル%まで含む硬化性含フッ素樹脂(IIA)が好ましくあげられる。
【0081】
含フッ素ポリマー(IIa)は、式(N)で示される構造単位Nの側鎖末端基である有機基Rf1として、炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY1またはY2(Y1は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基、Y2は水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい架橋性環状エーテル構造を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基を有している点に特徴がある。
【0082】
Rf1中の有機基Y1が有するエチレン性炭素−炭素二重結合およびY2が有する架橋性環状エーテル構造はいずれも自己架橋性の官能基であり、また活性エネルギー線架橋性の官能基である。
【0083】
ポリマー(IIa)としては、好ましくは、たとえば式(N)において構造単位Nが式(N1):
【0084】
【化10】

【0085】
(式中、X3、X4、X5、X6、X7、Rf1、aおよびcは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位N1である含フッ素ポリマー;
特に、式(N)において構造単位Nが式(N2):
【0086】
【化11】

【0087】
(式中、Rf1は前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位N2である含フッ素ポリマー;または
式(N)において構造単位Nが式(N3):
【0088】
【化12】

【0089】
(式中、Rf1は前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位N3である含フッ素ポリマー
が例示できる。
【0090】
さらに好ましくは、前記式(N)、(N1)、(N2)および(N3)におけるRf1中のY1またはY2において、それぞれY1またはY2の少なくとも1つが、Rf1の末端に結合しているものが好ましい。
【0091】
末端にエチレン性炭素−炭素二重結合をもつ有機基Y1を有する含フッ素ポリマー(IIa)(以下、「ポリマー(IIa−1)」という)は、本出願人により開発したポリマーであって、既に公知になっている(たとえばWO02/018457号パンフレット、WO02/072706号パンフレット、WO02/093249号パンフレットなど)。これらのパンフレットに記載されている架橋性官能基含有含フッ素ポリマーも使用できる。
【0092】
ポリマー(IIa−1)の好ましい具体例は、たとえば
【0093】
【化13】

【0094】
(n=1〜30の整数)
などがあげられる。
【0095】
なかでも
【0096】
【化14】

【0097】
(XはH、F、CH3またはCF3、n=1〜4の整数)
が、低屈折率、硬化反応性、溶剤溶解性の点で有利なことから好ましい。
【0098】
架橋性環状エーテル構造をもつ有機基Y2を有する含フッ素ポリマー(IIa)(以下、「ポリマー(IIa−2)という」は、本出願人により開発したポリマーであって、既に公知になっている(WO2004/016689号パンフレット)。このパンフレットに記載されている架橋性官能基含有含フッ素ポリマーも使用できる。
【0099】
ポリマー(IIa−2)の好ましい具体例は、基本骨格はポリマー(IIa−1)と同じであり、有機基Y2が、エーテル結合を少なくとも1つ含む3〜6員環の架橋性環状エーテル構造(水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基であるポリマーが例示できる。
【0100】
有機基Y2としては、たとえば
【0101】
【化15】

【0102】
(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数2〜100の有機基、式:
【0103】
【化16】

【0104】
(式中、Qは炭素数3〜100の単環構造、複環構造または複素環構造の水素原子が上記Xで置換されていてもよい1価または2価の有機基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基、
さらには
【0105】
【化17】

【0106】
(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基
などが例示できる。
【0107】
具体的なポリマー(IIa−2)としては、たとえば
【0108】
【化18】

【0109】
などがあげられる。
【0110】
なかでも
【0111】
【化19】

【0112】
が、低屈折率、硬化反応性、溶剤溶解性の点で有利なことから好ましい。
【0113】
なお、有機基Rf1はY1とY2を両方有していてもよいし、ポリマー(IIa)がY1を有するRf1とY2を有するRf1の両方を有していてもよい。
【0114】
自己架橋性官能基として好ましいものは、ラジカル重合反応性のC=C、エポキシ基であり、なかでも
【0115】
【化20】

【0116】
(X1はH、CH3またはF;X2はHまたはCH3
が好ましい。このものは、後述する活性エネルギー線硬化開始剤から発生したラジカルまたはカチオンにより容易に架橋反応を開始する。
【0117】
構造単位Cは構造単位Nを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位であり、任意成分である。
【0118】
好ましい構造単位Cとしては、基本骨格が構造単位(N)と同じであり、有機基Y1の代わりに有機基Z1(Z1は−OH、−CH2OH、−COOH、カルボン酸誘導体、−SO3Hまたはシアノ基)を有するものがあげられ、ポリマー(IIa)の構造単位(N)の好ましい構造のY1をZ1に置き換えたものが例示できる。
【0119】
そのほか、
【0120】
【化21】

【0121】
などがあげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0122】
ポリマー(IIa)の屈折率は1.45以下、さらには1.42以下であり、特に1.40以下であることが好ましい。最も好ましくは1.38以下であり、低い方が優れた反射防止効果が奏される点で有利である。
【0123】
この硬化性含フッ素樹脂(IIA)は単独で使用してもよいし、前記の他の反射防止膜材料と併用してもよい。
【0124】
反射防止膜形成用組成物において、反応性表面改質剤(I)の添加量は使用する反射防止膜材料(II)の種類、要求特性などによって異なるが、固形分全体の0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに3重量%以上、また50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。少なすぎると表面改質効果が得られにくくなる傾向にあり、多すぎると硬度が下がる傾向にある。
【0125】
本発明で用いる反射防止膜形成用組成物は反応性表面改質剤および反射防止膜材料以外に、単独で、または他の添加剤を配合して、そのまま、あるいは溶剤に溶解させ、基材に塗布してその基材表面に反射防止膜を形成することができる。
【0126】
特に、汎用溶剤に溶解し得ることが本発明の反射防止膜形成用組成物の特徴であり、したがって溶剤に溶解した溶剤型の反射防止膜形成用組成物が、塗工性が良好で、均一かつ均質な薄膜を形成でき、また生産性が高く、低コストで生産できる点で好ましい。
【0127】
溶剤としては、反射防止膜形成用組成物を均一に溶解することができるものであれば特に限定されず、たとえばケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤などのエステル系溶剤、アルコール系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エーテル系溶剤、アセタール系溶剤、テレビン油、またはこれらの同種または異種の混合溶剤、さらにはこれらを含む混合溶剤などの非フッ素系の汎用溶剤があげられる。
【0128】
ケトン系溶剤としては、たとえばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルブチルケトン(MBK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノンなどがあげられ、特にMIBK、MEK、MBKが好ましい。
【0129】
酢酸エステル系溶剤としては、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸アミルなどがあげられ、特に酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルが好ましい。
【0130】
アルコール系溶剤としては、たとえばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコールなどがあげられ、特にイソプロピルアルコール、イソペンチルアルコールが好ましい。
【0131】
酢酸エステル系溶剤以外のエステル系溶剤としては、たとえば酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテートなどがあげられる。
【0132】
プロピレングリコール系溶剤としては、たとえばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどがあげられる。
【0133】
セロソルブ系溶剤としては、たとえばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどがあげられる。
【0134】
芳香族炭化水素類としては、たとえばトルエン、キシレンなどがあげられる。
【0135】
脂肪族炭化水素類としては、たとえば工業ガソリン、ヘキサン、オクタンなどがあげられる。
【0136】
エーテル系溶剤としては、たとえばテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、メチルブチルエーテルなどがあげられる。
【0137】
アセタール系溶剤としては、たとえばジメトキシメタン、ジエトキシメタンなどがあげられる。
【0138】
なかでも、ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤およびアルコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種の溶剤またはこれらの溶剤の少なくとも1種を含む混合溶剤が、溶解性が良好であり、人体や環境への影響が比較的少ない点から特に好ましくあげられる。
【0139】
フッ素系の溶剤も利用でき、目標とする塗装性、成膜性、膜厚の均一性、塗装の生産性などに応じ、種類、使用量などを前述の例示の中から適宜選択すればよい。フッ素系溶剤としては、たとえばH−(CF2CF2a−CH2OH(式中、aは1〜3の整数)、CF3−(CF2b−CH2OH(式中、bは1〜5の整数)、CH(CF32OHなどの含フッ素アルコール;CH3CCl2F、CF3CF2CHCl2、CClF2CF2CHClFなどのフルオロアルカン;o−、m−またはp−ジトリフルオロメチルベンゼン;R1−O−R2(R1およびR2は同じかまたは異なり、少なくともいずれか一方がフッ素原子を含む炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基)で示される含フッ素エーテル(市販品としては、たとえばスリーエム社製のHFE−7100、HFE−7200など)などがあげられる。
【0140】
本発明の反射防止膜形成用組成物には、本発明が目的とする効果を損なわない限り、必要に応じて種々の添加剤を配合してもよい。
【0141】
そうした添加剤としては、たとえば活性エネルギー線硬化開始剤、他の硬化剤(架橋剤)、屈折率低下剤、レベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤、帯電防止剤などがあげられる。
【0142】
硬化方法は特に限定されず、硬化剤(架橋剤)を使用した場合は硬化剤の開始温度または条件で硬化反応を起こさせるか、硬化剤を配合しない場合は自己架橋性官能基による自己架橋を生ぜしめる条件(50〜150℃に加熱または室温放置)で硬化させれてもよいが、特に活性エネルギー線の照射により架橋させる方法が、硬化剤を使用しない点、他の架橋系のように高温での加熱の必要がなく、比較的低温で短時間に架橋(硬化)反応が可能であるので、耐熱性が低く、熱で変形や分解、着色が起こりやすい基材、たとえば透明樹脂基材などにも適応できる点で好ましい。
【0143】
活性エネルギー線硬化開始剤は、たとえば紫外線、X線、γ線などの波長が350nm以下の電磁波または電子線などの活性エネルギー線を照射することにより、ラジカルまたはカチオンを発生する化合物であり、発生したラジカルまたはカチオンが自己架橋性官能基の架橋(硬化)反応を開始させる働きをする。
【0144】
活性エネルギー線硬化開始剤は、硬化性含フッ素樹脂(IIA)中の架橋基の種類(ラジカル反応性か、カチオン反応性か)、使用する活性エネルギー線の種類(波長域など)と照射強度などによって適宜選択される。
【0145】
ラジカル重合反応性の自己架橋性官能基としては、たとえばラジカル重合反応性C=Cなど;カチオン重合反応性の自己架橋性官能基としてはたとえばカチオン重合反応性のC=C、エポキシ基、オキセタニル基、その他アルコキシシリル基、シラノール基などの架橋性ケイ素化合物などがあげられる。
【0146】
紫外線領域の活性エネルギー線を用いて自己架橋性官能基としてラジカル重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する含フッ素ポリマーを架橋(硬化)させる開始剤としては、たとえばつぎのものが例示できる。
【0147】
アセトフェノン系
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、ヒドロキシプロピオフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリンプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなど
【0148】
ベンゾイン系
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなど
【0149】
ベンゾフェノン系
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーズケトンなど
【0150】
チオキサンソン類
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソンなど
【0151】
その他
ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノンなど
【0152】
また、紫外線領域の活性エネルギー線を用いて自己架橋性官能基としてカチオン反応性の炭素−炭素二重結合、またはエポキシ基やオキサシクロプロパニル基を有する含フッ素ポリマーを架橋(硬化)させる開始剤としては、つぎのものが例示できる。
【0153】
オニウム塩
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩など
【0154】
メタロセン系化合物
鉄アレーン錯体など
【0155】
スルホン化合物
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物など
【0156】
スルホン酸エステル類
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなど
【0157】
その他
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類など
【0158】
これらの開始剤のなかでもヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、メタロセン系化合物が好ましく、さらに好ましくは芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩およびメタロセン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の芳香族化合物が好ましい。これらは光照射に対して量子効率よく、カチオン重合を開始するカチオン種を生じるため好ましいものである。
【0159】
活性エネルギー線硬化開始剤の配合量は、自己架橋性官能基の合計1当量に対して0.001当量以上、さらには0.005当量以上、特に0.01当量以上で、1当量以下、さらには0.5当量以下、特に0.1当量以下である。開始剤の配合量が少なすぎると硬化性が低下し膜の強度や硬度が不足し、多すぎると滑り性が低下し、また屈折率が高くなる傾向にある。
【0160】
活性エネルギー線硬化開始剤以外の硬化剤(架橋剤)としては、たとえばラジカルまたはカチオン反応性官能基を1つ以上有するものが好ましく、具体的にはアクリル系モノマーなどのラジカル重合性の単量体、エポキシまたはグリシジル系モノマーなどのカチオン重合性の単量体があげられる。これら単量体は、単官能であっても多官能の単量体であってもよい。
【0161】
屈折率低下剤としては、低屈折率(たとえば屈折率1.3以下)の無機微粒子、たとえば中空シリケート超微粒子などがあげられる。屈折率低下剤を添加することにより、反射防止膜全体の屈折率を低下させ、下地層(たとえばハードコート層など)との屈折率の差を大きくして反射防止効果を向上させることができる。そうした中空シリケート超微粒子としては触媒化成(株)製のシリカゾルなどが例示できる。
【0162】
本発明はまた、上記反射防止膜形成用組成物を基材に塗装したのち硬化させる基材の表面改質法、さらには反射防止膜形成用組成物と溶剤からなる液状物を用いて塗布、乾燥し、膜を形成した後硬化させる硬化物の形成方法にも関する。
【0163】
塗装法としては、溶剤型の反射防止膜形成用組成物の場合、たとえばロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法などが採用でき、また、粉体型の組成物の場合は、たとえば粉体塗装法、溶射法などが採用でき、これらの方法から基材の種類、形状、生産性などを考慮して選択すればよい。
【0164】
この反射防止膜形成用組成物を塗布後、硬化させた後の硬化物(塗膜)の屈折率は1.45以下、さらには1.42以下であり、特に1.40以下であることが好ましい。最も好ましくは1.38以下であり、低い方が優れた反射防止効果が奏される点で有利である。
【0165】
また、本発明の硬化物はパーフルオロポリエーテルを含有しており、硬化被膜を最外層として有する光学材料の場合、硬化被膜中のパーフルオロポリエーテル含有量は好ましくは0.01〜50重量%である。
【0166】
基材の種類は特に限定されない。たとえばガラス、石材、コンクリート、タイルなどの無機材料;ポリエチレンやポリスチレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリアリレートやポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、塩酸ゴムなどのゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、イオノマー樹脂などの合成樹脂;鉄、アルミ、銅などの金属;木、紙、印刷物、印画紙、絵画など;またこれらの基材上にハードコート層などの保護膜や、帯電防止機能を有する膜などを形成したもの;さらには光記録媒体や磁気記録媒体またはその上にハードコート層を形成したものなどがあげられ、これらの基材の上に本発明の反射防止膜形成用組成物を塗布することによって、反射防止性、表面の滑り性、耐擦傷性、撥水撥油性、防汚性を向上させることができる。
【0167】
基材の中でもアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂(たとえばポリエチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン系樹脂などの樹脂基材、さらにはこれらの樹脂基材に反射防止処理する際に好ましく施される。
【0168】
本発明の反射防止膜形成用組成物は、薄膜にしたときの膜の滑り性に優れ、耐久性が高く、屈折率が低く、また透明であるため、光学材料の製造に有利である。
【0169】
すなわち本発明はさらに、上記硬化物を最外層に有する光学材料にも関する。
【0170】
光学材料としては、ディスプレイなどのほか、後述する多種多様な光学材料が好ましくあげられる。
【0171】
1.ディスプレイ関連
(1)ディスプレイ
CRT(TVやパソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、FED(Field Emission Display)などのディスプレイまたはそれらのディスプレイの保護板、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
【0172】
(2)液晶ディスプレイの構成部材
フロントライト、拡散シートなどの液晶ディスプレイの構成部材、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
【0173】
(3)各種フィルター
パソコンモニターへ視認性向上のため後付けする光学フィルター、PC、PDA、ATM装置などのタッチパネル(世界的にはタッチセンサー、タッチスクリーンなどともいわれる)、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
【0174】
2.光学部品・光デバイス
メガネレンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、背面投写型ディスプレイのスクリーン、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品・光デバイス、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
【0175】
3.建材
ショーウインドー、ショーケース、広告用カバー、フォトスタンド用のカバー、自動車用フロントガラスなどに代表される透明なガラス製または透明なプラスチック製(アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂など)建材、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
【0176】
4.記録メディア関連
(1)光記録媒体
光磁気ディスク、CD・LD・DVDなどの光ディスク、PDなどの相転移型光ディスク、ホログラム記録などに代表される光記録媒体、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
【0177】
(2)磁気記録媒体
磁気テープ、磁気ディスク、磁気ドラム、磁気フロッピーディスクなどの磁気記録媒体、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
【0178】
また、本発明の硬化性表面改質用組成物から形成されるシートまたはフィルムは、上記に列挙したような各種物品の上や最表面に貼り付けるためのシートまたはフィルムとして、好適に用いることもできる。この場合、容易に物品の表面改質を行なうことができ、また物品を廃棄またはリサイクルする際の処理が容易である。
【0179】
なお、該シートまたはフィルムは、たとえば基材の上に前述したような各種塗装法により、本発明の硬化性表面改質用組成物を塗装したのち硬化させたのち剥離することで得られる。
【実施例】
【0180】
つぎに本発明を合成例および実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0181】
なお、以下の合成例および実施例、比較例においての物性の評価に使用した装置および測定条件は以下のとおりである。
【0182】
(1)NMR:BRUKER社製
1H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
【0183】
(2)IR分析:PERKIN ELMER社製フーリエ変換赤外分光光度計
1760Xで室温にて測定する。
【0184】
合成例1(パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物の調製)
滴下ロート、コンデンサー、温度計、撹拌装置を装着した2Lの3口フラスコにSUMIDUR N3300(ヘキサメチレンジイソシアナートの環状3量体、住友バイエルウレタン(株)製、NCO基含有率21.9%)144gをHCFC−225の200gに溶解させ、ジブチルスズジラウレート(和光純薬(株)製の一級試薬)0.2gを加え、空気中室温で攪拌しながら4.5時間かけてDEMNUM(CF3CF2O−(CF2CF2CF2O)10.9−CF2CF2CH2OH。ダイキン工業(株)製)の202gをHCFC−225の300gに溶かした溶液を滴下し、室温で6時間撹拌した。30〜40℃に加温し、ヒドロキシエチルアクリレート96gを30分間で滴下し6時間撹拌した。IRによってNCOの吸収が完全に消失を確認し(生成物の19F−NMR分析からも−C2−CH2OHの消失が確認された)、突沸と重合に注意し50℃以下の減圧蒸留によりHCHC−225を留去し、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物442gを得た。
【0185】
参考例1(対照反射防止膜の作製:WO02/018457号パンフレットの実験例24参照)
(1)ヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体の調製
撹拌装置および温度計を備えた1000mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を208gと[H(CF2CF232 の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を22g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なったところ、高粘度の固体が生成した。
【0186】
得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体192gを得た。
【0187】
この重合体を19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、GPC分析(溶媒THF)により測定した数平均分子量は72,000、重量平均分子量は118,000であった。
【0188】
(2)α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー溶液の調製
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた2000ml容量の四ツ口フラスコに、メチルエチルケトン(MEK)500ml、上記(1)で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体50gと、ピリジン25gを仕込み5℃以下に氷冷した。
【0189】
窒素気流下、撹拌を行ないながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの25gをMEK100mlに溶解したものを約10分間かけて滴下した。
【0190】
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに2.0時間撹拌を継続した。
【0191】
反応後のMEK溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついで溶液を濾過により分離し、MEK溶液を得た。ポリマー濃度は13重量%であった。
【0192】
このMEK溶液を19F−NMRにより分析した結果、
【0193】
【数1】

【0194】
の共重合体であった。
【0195】
NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm-1に、C=O基の吸収が1770cm-1に観測された。
【0196】
(3)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
上記(2)で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー溶液にMEKを加え希釈し、ポリマー濃度を5.0重量%に調整した。
【0197】
得られたポリマー溶液100gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをMEKに1重量%の濃度に溶かした溶液を1.2g加え、均一な溶液にした。
【0198】
実施例1〜3
(1)コーティング用反射防止膜形成用組成物の調製
参考例1の(3)に記載される方法で調製したコーティング用含フッ素樹脂組成物に、合成例1で得パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物を50mg(実施例1)、250mg(実施例2)、300mg(実施例3)の量でそれぞれ加え、均一な溶液としてコーティング用反射防止膜形成用組成物を調製した。
【0199】
(2)反射防止膜の作製
上記(1)で得たコーティング用反射防止膜形成用組成物を表面処理されていないアクリル板上にスピンコーターにより室温でコートし、室温で30分間乾燥した。スピンコートの回転速度は300rpmで3秒間保持した後、1000〜1500rpmで20秒間保持した。この際、乾燥後の膜厚が90〜110nmとなるように、スピンコーターの回転数を調整した。
【0200】
ついで、乾燥後の被膜に高圧水銀灯を用い、大気中にて1500mJ/cm2の強度で紫外線を照射して光硬化させて反射防止膜を作製した。
【0201】
(3)物性評価
上記(2)で得た表面処理アクリル板についてつぎの方法により摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、指紋付着性、指紋拭き取り性および反射率の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0202】
(摩擦係数)
往復動摩擦係数測定器(東測精密工業(株)製のAFT−15−1S。商品名)を用い、接触面には綿布を使用して測定を行なう。各サンプルの摩擦係数の値は参考例1で作製した対照反射防止膜(コントロール)の摩擦係数を基準(100)としたときの相対値(指数)で評価する。
【0203】
(鉛筆硬度)
JIS K5400に準じて測定する。
【0204】
(接触角)
接触角計(協和界面化学(株)製のCA−DT)を用いて純水およびn−ヘキサデカンの3μlの液量での接触角を測定する。
【0205】
(指紋付着性)
上記アクリル板の塗布面に指を押し付け、指紋の付きやすさを目視で判定する。評価は、つぎの基準とする。
○:指紋が付きにくいか、付いても指紋が目立たない。
△:指紋の付着が少ないが、その指紋は充分に確認できる。
×:未処理のアクリル板と同程度に明確に指紋が付着する。
【0206】
(指紋拭取り性)
上記の指紋付着性試験後、付着した指紋をキムワイプ(商品名。十條キンバリー(株)製)で3往復拭き取り、付着した指紋の拭取りやすさを目視で判定する。評価はつぎの基準とする。
○:指紋を完全に拭き取ることができる。
△:指紋の拭取り跡が残る。
×:指紋の拭取り跡が拡がり、除去することが困難である。
【0207】
(反射率の測定)
反射率の測定は、5°正反射ユニットを装着した可視紫外分光器を用いて、波長550nmの光について反射率を測定する。
【0208】
比較例1
実施例1において、合成例1で得パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物を添加しなかったほかは実施例1と同様にして反射防止膜を作製し、実施例1と同様にして摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、指紋付着性、指紋拭き取り性および反射率の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0209】
【表1】

【0210】
実施例4(コーティング用反射防止膜形成用組成物の調製)
参考例1の(2)に記載される方法で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー溶液に合成例1のパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物6g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アルドリッチ社製)18g、MIBK2144g、IPA288gを加え、活性エネルギー線硬化開始剤としてIrgacure907 (チバスペシャリティーケミカルズ社製)6gを加え、攪拌した後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、不揮発性分濃度を4.2重量%のコーティング用反射防止膜形成用組成物溶液3000gを調製した。
【0211】
(2)反射防止フィルムの作製
基材は厚さ100μmのPETフィルムの片面に、ハードコート処理(屈折率1.60、厚さ5μm)を施したものを用い、上記(1)のコーティング用組成物の塗工を行なった。塗工条件は、線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径230mmのマイクログラビア ロールとドクターブレードを用いて、グラビア ロール回転数16rpm、搬送速度5m/分の条件でハードコート処理面上に塗布し、70℃で乾燥の後、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射し硬化させ巻き取った。
【0212】
(3)反射防止フィルムの評価
上記(2)で得た表面改質された反射防止フィルムについて実施例1と同様にして、摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、指紋付着性および指紋拭き取り性の評価を行ない、加えてつぎの方法で転落角、ヘイズ値、反射率の測定を行なった。結果を表2に示す。
【0213】
(転落角の測定)
硬化被膜上にn−ヘキサデカン(nHD)の3μlの液滴を形成し、試験台ごと傾けていき、液滴が下方へ動き出したときに、試料台が水平面となす角度を転落角とする。
【0214】
(ヘイズ値の測定)
フィルムのヘイズ値は、東洋精機製作所製の直読式ヘイズメーターを用いて、JIS K6714に準じて測定する。
【0215】
(反射率の測定)
フィルム裏面(コーティングしていない面)を#240の紙やすりでよく研磨し、黒色スプレーで塗装する。このフィルムの反射防止コーティング面の反射率を実施例1記載の反射率の測定法と同様にして測定する。
【0216】
比較例2
実施例4において、合成例1で得たパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物を添加しなかったほかは実施例4と同様にして反射防止フィルムを作製し、実施例4と同様にして摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、転落角、指紋付着性、指紋拭き取り性、ヘイズ値および反射率の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0217】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性表面改質剤(I)および反射防止膜材料(II)からなる反射防止膜形成用組成物であって、
反応性表面改質剤(I)が、(A)ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネートと(B)少なくとも2種の活性水素含有化合物との反応生成物からなる反応性基含有組成物であり、
かつ成分(B)が、
(B−1)少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および
(B−2)活性水素と自己架橋性官能基を有するモノマー
を含んでなる組成物
である反射防止膜形成用組成物。
【請求項2】
前記モノマー(B−2)が有する自己架橋性官能基が、
【化1】

(X1はH、CH3またはF;X2はHまたはCH3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の反射防止膜形成用組成物。
【請求項3】
前記パーフルオロポリエーテル(B−1)が、1つの分子末端に1つの水酸基を有するか、または両末端のそれぞれに1つの水酸基を有する化合物である請求項1または2記載の反射防止膜形成用組成物。
【請求項4】
前記パーフルオロポリエーテル(B−1)が、一般式:
【化2】

(式中、XはFまたは−CH2OH基;YおよびZは同じかまたは異なりFまたは−CF3;aは1〜16の整数、cは0〜5の整数、b、d、e、fおよびgは同じかまたは異なり0〜200の整数、hは0〜16の整数)で示される化合物を含む請求項1または2記載の反射防止膜形成用組成物。
【請求項5】
反応性表面改質剤(I)が、前記トリイソシアネート(A)に存在するNCO基に成分(B−1)を部分的に反応させ、残りのNCO基の全部または一部に成分(B−2)を反応させて得られる反応生成物である請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止膜形成用組成物。
【請求項6】
反応性表面改質剤(I)が、前記トリイソシアネート(A)1モルに対して、成分(B−1)の有する活性水素と成分(B−2)の有する活性水素の総和が2.5〜3.5モルであり、かつ成分(B−1)の有する活性水素/成分(B−2)の有する活性水素とのモル比が1/2以下である量反応させて得られる反応生成物である請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止膜形成用組成物。
【請求項7】
反射防止膜材料が、硬化後の屈折率が1.45以下である硬化性材料である請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止膜形成用組成物。
【請求項8】
反射防止膜材料(II)が、式(4):
−(N)−(C)− (4)
[式中、
構造単位Nは、式(N):
【化3】

(式中、X3およびX4は同じかまたは異なり、HまたはF;X5はH、F、CH3またはCF3;X6およびX7は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rf1は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY1またはY2(Y1は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基、Y2は水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい架橋性環状エーテル構造を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位;
構造単位Cは、構造単位Nを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Nを0.1〜100モル%および構造単位Cを0〜99.9モル%含む数平均分子量500〜1000000の含フッ素ポリマー(IIa)を100モル%まで含む硬化性含フッ素樹脂(IIA)である請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止膜形成用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止膜形成用組成物を基材上に塗装したのち硬化させる反射防止膜の形成方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止膜形成用組成物および溶剤からなる液状組成物を用いて塗布、乾燥し、膜を形成したのち硬化させる硬化物の形成方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止膜形成用組成物を硬化して得られるパーフルオロポリエーテルを含有する硬化物。
【請求項12】
請求項11記載の硬化物を最外表面に有する光学材料。
【請求項13】
前記硬化物のパーフルオロポリエーテル含有量が0.01〜50重量%である硬化被膜を最外表面に有する請求項12記載の光学材料。

【公開番号】特開2006−37024(P2006−37024A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222474(P2004−222474)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】