説明

反射防止/防曇コーティング

本発明は、a)多孔質シリカナノ粒子、b)1種以上の有機可溶性ポリマー樹脂、c)1種以上のUV架橋性反応性希釈剤、d)溶剤、およびe)UV開始剤系を含む組成物に関する。さらに、本発明は、透明基材を被覆するためのこの組成物の使用および、そのような組成物により被覆した基材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、a)多孔質シリカナノ粒子、b)1種以上の有機可溶性ポリマー樹脂、c)1種以上のUV架橋性反応性希釈剤、d)溶剤、およびe)UV開始剤系を含む組成物およびそのような組成物により被覆した基材に関する。
【背景技術】
【0002】
全体としてこの系は、「防曇」特性(水蒸気により曇る傾向の減少)とともに良好な「反射防止」特性(透過率の増加)を特徴とする。基材によっては、表面特性のさらなる機械的および化学的改善(例えば耐摩耗性や耐薬品性)をなし得る。それらの表面親水性により、その被覆された基材を高分子電解質概念による水性調製物により被覆することができる。
【0003】
原理上、シリカを組み込むことによるコーティング特性の改良は、比較的長い期間知られている。シリカ粒子の添加により、例えば摩耗性、耐引掻き性、反射特性、光沢、帯電防止特性、引火性、UV耐性、水蒸気により曇ることに対する耐性(防曇)、水により湿潤性、および耐薬品性に関してコーティングを改善することができる。
【0004】
したがって、上記特性についてさらに改善された全特性を有するシリカ(二酸化ケイ素)含有被覆組成物を提供することについての試みが、これまで十分なされてきた。しかしながら、現在まで、これら全ての特徴を、または特定の特徴の組み合わせ(特に以下に記載する組み合わせ)を満足のいく方法で1つのコーティング系に組み込むことができなかった。
【0005】
DE10311639A1は、耐電防止特性を備えた成形品およびその製造方法を記載する。この課題を達成するために、アクリレート含有バインダー、アルコール溶剤、ナノスケール電気伝導金属酸化物、ナノスケール不活性粒子(例えば二酸化ケイ素など)、場合によりさらなる添加剤(例えば分散剤など)を含んでなる表面コーティング系がこの文献に記載されている。使用される不活性ナノ粒子の平均粒子径は2〜100nmであり、そのようなナノ粒子を乾燥被膜に基づき0.1〜50重量%の量で使用する。
【0006】
JP61−181809は、α,β−不飽和カルボン酸および水または低級アルコールに分散したコロイド二酸化ケイ素粒子を含み、良好な密着性および高い耐摩耗性を有するコーティング用UV硬化性組成物を開示する。
【0007】
JP2006−348375は、0重量%〜80重量%の微細粒子、例えば二酸化ケイ素等および100重量%〜20重量%のプラスチック物質からなる20重量%〜99重量%の混合物、ならびに2個のアニオン性置換基を有する0.5重量%〜30重量%のスルホスクシネートを含む防曇性コーティングが記載されている。
【0008】
多官能性アクリル酸エステルに基づく、高い透明性、耐候安定性および耐引掻き性を有する被覆剤の製造用表面被覆組成物がEP0050996Aに記載されている。上述したアクリル酸誘導体に加えて、この組成物は重合開始剤ならびに無機フィラー、例えば、1nm〜1μmの平均粒子径および1.40〜1.60の屈折率を有する二酸化ケイ素を含有する。
【0009】
US4499217Aには、10〜50μmの平均粒子径を有するコロイド二酸化ケイ素、および熱硬化性化合物、例えばメラミン−アルキド樹脂を含有する無水表面被覆組成物が記載されている。硬化したコーティングは良好な耐摩耗性、様々な基材に対する良好な密着性および耐薬品性ならびに耐熱性を有する。
【0010】
JP2001−019874Aは、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)メチルメタクリレート、アクリルアミド、光開始剤、分散剤およびシリカを含み、高い密着性および増強された耐引掻き性を有するコーティングの製造用組成物を開示する。
【0011】
WO2006/049008には、N,N−ジメチルアセトアミドのような高沸点性溶媒中に懸濁したシリカ粒子をベースとする親水性被覆物が記載され、非イオン界面活性剤(L−77)のアルコール溶液を該懸濁液に添加し、次いで、焼き戻しを10分間100℃で行う。被覆物は親水性の表面を生じさせ、20°未満の水での濡れ角が得ることが可能である。該方法は、防曇性に関する眼鏡レンズの被覆物に用いられる。しかしながら、これらの条件は、用いる溶媒に対する敏感性に起因してプラスチック基材の被覆に適していない。
【0012】
US4383057には、ポリビニルブチラールの有機溶液およびコロイドシリカのアルコール懸濁液の混合物からなる注入性処方物が記載されている。該組成物は、乾燥重量を基準として、ポリビニルブチラール20重量%〜95重量%およびシリカ80重量%〜5重量%から構成することができる。安定性値、例えば耐引掻性、化学薬品および燃焼性に対する耐性等の向上について、ポリマーポリビニルブチラールが架橋され、その目的のために例えばアルキルエーテルで変性されたメチロールメラニンが用いられる。表面特性、例えば親水性または水濡れ角等に関するさらなる情報は記載されていない。本出願と比べると、これらはUV架橋性処方物ではない。
【0013】
WO2006/048277Aに記載されるように、特に高く、高密度のシリカ構造を備える表面を製造すべき場合、しばしばシリカの堆積が、シリカ前駆体(例えばヘキサメチルジシラザンまたはテトラエトキシシランなど)からの火炎加水分解により局所的に行われる。これらのコーティングの疎水性特性は、フルオロアルキルシランの組み込みによりさらに促進される。
【0014】
EP337695Aは、固体の、特に透明基材の耐摩耗性コーティング用の二酸化ケイ素分散物を開示する。この分散物は、プロトン置換エステルまたはアクリル酸またはメタクリル酸のアミドに分散した、100nm未満の、75nm未満の、特に好ましくは50nm未満の粒子径を有するコロイド二酸化ケイ素を含む。使用する不飽和モノマー1重量部に対して、0.1〜2.5重量部の二酸化ケイ素を用いる。光開始剤を添加した後、この分散物を適当な基材上でUV放射により硬化する。
【0015】
EP0505737Aは、メタアクリレート官能性コロイドシリカナノ粒子を含有するUV架橋性アクリレート系を記載する。顕著な耐候性のみならず、対応する表面のコーティングは良好な摩耗値(例えば、500サイクル後、6〜8%のテーバーヘイズ)を示す。メタクリレート官能性コロイドシリカナノ粒子はメタアクリロイルプロピルトリメトキシシランおよびコロイドシリカナノ粒子から調製される。アクリレート修飾シリカナノ粒子も、例えば、「Nanocryl」(Nanoresins製)または「Highlink Nano」(Clariant製)の商品名のもと市販され始めている。耐引掻き性添加剤および耐摩耗性添加剤として供給されるこれらの製品は、それらの複雑な化学的性質のため、その特性に関して綿密に定義されていない。
【0016】
WO08/005412Aは、未変性プロトン化シリカナノ粒子、ウレタンアクリレート、極性溶剤およにUV開始剤系を含み、未変性プロトン化シリカナノ粒子の重量がウレタンアクリレートの含量より多く、コーティングの乾燥重量に基づいて少なくとも50.1重量%であるUV架橋性組成物、基材のコーティングにおける組成物の使用、およびそのような調製物により被覆された基材を記載する。
【0017】
これらのコーティングは、良好な耐引掻き性、低いヘイズ値、良好な再被覆性および様々な基材に対する良好な密着性により特徴付けられる。しかしながら、透過率の顕著な増加または反射低減はこれらのコーティングによりなし得ていない。
【0018】
「Technische Optik」(G. Schroeder、1998、Vogel Verlag)には、被覆基材における電磁波の最小反射または最大透過率を実現するための、下記条件が考案されている:
空気(屈折率n:1.0)と透明基材(屈折率nS)間に屈折率nの中間層を適用することにより、干渉による反射の減少を達成する。反射における最適減少は、コーティングの屈折率nがルートnSの値に達した場合に達成される。最適な層厚については、d:λ/4nSの関係を適用する。したがって、可視波長域(380〜780nm)に対しては、長波電磁波、例えば赤外領域(熱線)に対するものより、より低い層厚を確立すべきである。最適値に達しない場合、反射防止効果は低下する。
【0019】
多孔質シリカおよびそれらのガラス用反射防止コーティングは既知である。例えば、WO97/07056Aは、2〜20nmの孔径を有するSiOから実質的になる単分散多孔質球状粒子、それらの粒子の製造および誘導体シリカゲルの製造におけるそれらの使用を開示する。[SiO(OH)粒子を含み、第1粒径範囲を有する第1粒子区分と第2粒径範囲を有する第2粒子区分を含むソルから製造されるガラス用の多孔質シリカ反射防止コーティングが、WO03/027015AおよびWO03/027034Aに記載されている。しかしながら、ガラスに対する十分に安定な反射防止コーティングの製造には、ガラスのガラス転移温度に近い温度が必要となる。したがって、プラスチックに対して、数百度の硬化条件を含む前記コーティング組成物およびコーティング法を転用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】独国特許第10311639号明細書
【特許文献2】特開昭61−181809号公報
【特許文献3】特開2006−348375号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第0050996号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第4499217号明細書
【特許文献6】特開2001−019874号公報
【特許文献7】国際特許出願第2006/049008号パンフレット
【特許文献8】米国特許出願第4383057号明細書
【特許文献9】国際特許出願第2006/048277号パンフレット
【特許文献10】欧州特許出願公開第337695号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第0505737号明細書
【特許文献12】国際特許出願第08/005412号パンフレット
【特許文献13】国際特許出願第97/07056号パンフレット
【特許文献14】国際特許文献第03/027015号パンフレット
【特許文献15】国際特許出願第03/027034号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明の目的は、ガラスに加えて、低い加工温度を有する透明基材(例えばプラスチック)にも被覆することができるように、反射防止コーティングを穏やかな温度(中温)で製造し得る透明コーティング系を提供することにある。このコーティングは、透過率の上昇を達成し、反射を低減すると同時に防曇特性を示す。さらに本発明のコーティング表面は、様々な基材に対して優れた密着性を示す。プラスチックの透明基材は、強化された耐候性、改善された帯電防止特性、増加した耐薬品性、ならびに親水性組成物、特に高分子電解質希釈水性溶媒による再被覆性について改善された親和性を示す。本発明の組成物は、目的とする基材に簡単な技術(例えば、浸浸、噴霧または塗り流し)により塗布することができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
驚くべきことに、1種以上の有機可溶性ポリマー樹脂およびUV架橋成分において特定のシリカナノ粒子を含むことを特徴とするコーティング組成物を含有する透明系が、改善された透過率、反射、防曇、親和性および表面特性の所望する組み合わせを有することがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
したがって、本発明は、
a)5〜15重量部の多孔質シリカナノ粒子、
b)0.5〜6重量部の1種以上の有機可溶性ポリマー樹脂、
c)0.2〜3.0重量部の1種以上のUV架橋性反応性希釈剤、
d)溶剤、
e)0.02〜0.1重量部のUV開始剤系
を含む組成物に関する。
【0024】
好ましくは75〜95重量部の溶剤が存在するが、より高い希釈物であってもよく、それはより薄い表面コーティング層を生じる。特に好ましい実施態様において、本発明の組成物は、a)8〜12重量%の多孔質シリカナノ粒子、b)1〜4重量%の1種以上の有機可溶性ポリマー樹脂、c)0.5〜2.0重量%の反応性希釈剤、d)80〜90重量%の溶剤およびe)0.03〜0.1重量%のUV開始剤系を含有する。驚くべきことに、本発明の組成物によるコーティングが、被覆生成物において非常に良好な製品特性を可能にすることがわかった。このコーティングは、1.45未満の、好ましくは1.40未満、特に好ましくは1.35未満の屈折率nを有する。
【0025】
成分a)多孔質シリカナノ粒子は、有機溶剤、好ましくは少なくとも1種のアルコール、特に好ましくは1−メトキシ−2−プロパノール(MOP)中に分散した形態である。分散物中の粒子含量は、分散物に対して、好ましくは10〜25重量%、特に好ましくは18〜22重量%である。
【0026】
本発明の範囲の多孔質シリカナノ粒子は、1.22付近の屈折率を有するガラス上に多孔質コーティングを作ることのできるシリカナノ粒子である。例えば、M. Kursawe、V. Hilarius、G. Pfaff、Merck KGaA、「Moderne Beschichtungsverfahren」中の「Beschichtungen ueber Sol−Gel Prozesse」、Wiley−VCH、2005年を参照することができる(この文献は、多孔質シリカ粒子およびガラスコーティングにおけるその使用を記載する)。同様に、本明細書において上述した先行文献(多孔質シリカナノ粒子を数百度の温度で硬化するガラスに反射防止コーティングするためのソル−ゲル法において用いる)を参照することができる。
【0027】
用いられるシリカナノ粒子は、WO97/07056Aに記載されるような単分散物形態(すなわち単峰性粒度分布を有する)で存在していてよく、または、WO03/027015Aに記載されるような、例えば1〜15nmの範囲の粒子径を有する1つの区分と15〜60nmの範囲の粒子径を有する第2区分とを有する二峰性分布曲線を示してもよい。好ましくは平均粒径(d50)が10〜50nm、特に好ましくは20〜40nmを有する単分散多孔質二酸化ケイ素(シリカ)ナノ粒子、または多峰性、好ましくは二峰性で、1〜10nm、好ましくは3〜7nmの範囲の粒子径と、10〜30nm、好ましくは20〜25nmの範囲の粒子径を有する複数の区分を含む粒度分布を有する粒子を使用することが好ましい。ここで、粒子径は重量平均粒子径に基づき、平均粒径(d50)は粒子の50重量%以下がd50以下の径を有する値に基づく。粒度分布は、例えば超遠心分離法により決定できる。より好ましくは、多孔質シリカナノ粒子「Silicon dioxide Hybrid−Sol SiosolTM」製品No.102264(Merck KGaA製、ダルムシュタット)を使用し得る。
【0028】
成分b)は有機可溶性ポリマー(ポリマー樹脂)であり、好ましくはポリビニル(コ)ポリマー、特にポリビニルアセテート、またはポリアクリル(コ)ポリマー、特にポリメチルメタクリレートもしくはポリエチルメタクリレートである。ポリマー混合物を使用してもよい。
【0029】
成分c)の反応性希釈剤として、UV架橋性の、脂肪族基または脂環式基を有するエチレン性不飽和モノマーを使用する。特に好ましくは、低分子量アクリレートまたはメタクリレートが挙げられる。例えば、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ビス−[メタアクリロイルオキシ]−エチル]ホスフェート、グリシジルアクリレートおよびメタクリレート、ならびに官能性シラン、例えば3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランである。これらの反応性希釈剤の混合物を用いることもできる。
【0030】
成分d)の溶媒は、極性溶媒であり、好ましくはシリカナノ粒子および他の成分、特に調製物のバインダーがいずれも相溶性であるプロトン性溶媒である。適当なものは、特にアルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、プロピルグリコール(エチレングリコールn−プロピルエーテル)、メトキシプロパノール(MOP、1−メトキシ−2−プロパノール)またはジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、ケトン、例えばアセトン等、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エステル、例えばエチルアセテート、ブチルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エーテル、例えばエチレングリコールn−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ならびにアミド溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドン等である。特に好ましくは、MOPおよび/またはDAAなどのアルコールを挙げることができる。当然、溶媒混合物を用いてもよく、純粋形態でそれ自体適当でない溶媒、例えばトルエン等を少量存在させることも可能である。
【0031】
成分e)の光開始剤系は、空気中でまたは不活性ガス下で、UV光による照射の下、アクリレート成分の重合を開始する系である。このような系は、用いるアクリレートの量に基づいて数重量%(約2〜10)の量で通常添加され、例えば製品名Irgacure(登録商標)またはDarocure(登録商標)として得られる。混合物、例えばIrgacure 184/Darocure TPO等を用いることも多い。Irgacure 184(登録商標)は、ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトンであり、Darocure TPO(登録商標)は、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドである。
【0032】
コーティング系の後架橋をUV処理により行う代わりに電子線により、またはUV処理と電子線処理との組み合わせにより行ってもよい。
【0033】
本発明の表面コーティング調製物の適用によりさらに改善し得る基材に関して、本発明においては、例えばセラミック、大理石または木材のような、透明材料および半透明材料さらには非透明材料の幅広い範囲の可能性のある選択が存在する。新規表面コーティング系の優れた「透明保護特性」のために、やはりより高い透明基材が好ましい。とりわけ好ましくは透明熱可塑性ポリマー、例えばポリカーボネート(Makrolon(登録商標)、Apec(登録商標))またはポリカーボネートブレンド(Makroblend(登録商標)、Bayblend(登録商標))、ポリメチルメタクリレート(Plexiglas(登録商標))、ポリエステル、脂環式オレフィン、例えばZeonor(登録商標)等、およびガラスが挙げられる。
【0034】
本発明による組成物のためのポリカーボネートは、ホモポリカーボネート、コポリカーボネートおよび熱可塑性ポリエステルカーボネートである。
【0035】
本発明によるポリカーボネートおよびコポリカーボネートは通常、2000〜200000、好ましくは3000〜150000、特に5000〜100000、さらに特に好ましくは8000〜80000、とりわけ12000〜70000の平均分子量(重量平均)を有する(ポリカーボネート較正でのGPCにより決定)。
【0036】
本発明による組成物のポリカーボネートの製造について、例えば「Schnell」、Chemistry and Physics of Polycarbonates、Polymer Reviews、第9巻、Interscience Publishers、ニューヨーク、ロンドン、シドニー1964年、D.C.PREVORSEK、B.T.Debona and Y.Kesten、Corporate Research Center、Allied Chemical Corporation、モリスタウン、ニュージャージー07960、「Synthesis of Poly(ester Carbonate)Copolymers」、Journal of Polymer Science、Polymer Chemistry Edition、第19巻、第75〜90頁(1980年)、D.Freitag、U.Grigo、P.R.Mueller、N.Nouvertne、Bayer AG、「Polycarbonates」、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第11巻、第2版、1988年、第648〜718頁、および最後にDres.U.Grigo、K.Kircher and P.R−Mueller「Polycarbonate」、 Becker/Braun、Kunststoff−Handbuch、第3/1巻、Polycarbonate、Polyacetale、Polyester、Celluloseester、Carl Hanser Verlag Munich、ウィーン1992年、117〜299頁を参照し得る。製造は好ましくは、界面法または溶融エステル交換法により行う。
【0037】
好ましいものは、ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネートおよびモノマービスフェノールAに基づくコポリカーボネートおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。これらのまたは他の適当なビスフェノール化合物を、炭酸化合物、特にホスゲン、または溶融エステル交換法の場合には、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートと反応させて、各ポリマーを形成する。
【0038】
さらなる成分として、処方中にコーティング添加剤、例えば流動性向上剤、ならびにUV光安定化剤、例えばトリアゾールおよび立体障害アミンを添加し得る。
【0039】
すでに述べたように、本発明の組成物を、良好な反射防止特性および防曇特性を有する耐摩耗性コーティングおよび耐引掻き性コーティング、すなわち保護コーティングおよび他のコーティングに対する基材層として用いることができる。
【0040】
一般的な層厚は、0.2〜200μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは2〜20μmである。
【0041】
反射防止、耐摩耗性および耐引掻き性、高透明保護コーティングの使用分野は、とりわけ、ガラスの代わりにプラスチック(例えばポリカーボネート)を用いる分野、例えば自動車部門、建築ガラス、または光学分野(例えば眼鏡レンズ)などである。従来既知の耐引掻き性コーティングと比較して、本発明のコーティングはその良好な反射防止特性に加えて、防曇特性ならびに帯電防止効果を示す。防曇特性は、対応する表面に息を吹きかけることにより容易に実証することができ、良好な防曇特性の場合、空気の湿気により曇ることを防止する。
【0042】
さらに本発明は、本発明の組成物により被覆された、または本発明の方法により被覆された表面を有する成形品を提供する。
【0043】
さらに本発明は、少なくとも片側に第2層を有する基材層を含む多層生成物であって、第2層が本発明の組成物から製造される生成物を提供する。この多層生成物は、陽イオン性または双性イオン性化合物のさらなる層を含んでいてよい。
【実施例】
【0044】
A.成分
〔1.シリカナノ粒子〕
a.Silicon dioxide Hybrid−Sol Siosol(商標):
多孔質二酸化ケイ素(d50=33mmの単峰性粒度分布)、Merck製、1−メトキシ−2−プロパノール(MOP)分散物(21重量%)またはジアセトンアルコール分散物(21.5重量%)
b.Highlink(商標)Nano G Silica Organosol:
13nmの平均粒径を有する非多孔質シリカナノ粒子のアルコール(例えばイソプロパノール、エチレングリコール、またはプロピルグリコール)分散物(30重量%)。これらの粒子は、比較例で使用した。
【0045】
〔2.熱硬化性ポリマー樹脂〕
a.Degalan(商標)M 912:
メチルメタクリレートに基づく、粒状のバルクポリマー、Degussa製、分子量(Mw):180,000g/モル、Tg(ガラス転移温度):122℃
b.Elvacite(商標)2041:
高分子量メチルメタクリレートポリマー、Lucite International社製、Mw:410,000g/モル、Tg:105℃
【0046】
〔3.UV架橋製ウレタンアクリレート〕
a.HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、Alfa Aesar製
b.Desmolux U 100:不飽和脂肪族ウレタンアクリレート、Bayer MaterialScience AG製
【0047】
B.基材
〔1.ポリカーボネートシート〕
(Makrolon(登録商標)、Bayer MaterialScience AG製)
a.Makrolon(登録商標)M 2808(ビスフェノールAポリカーボネート:中粘度ビスフェノールAポリカーボネート、MFR10g/10分:ISO1133による、300℃、1.2kg、UV安定化および離型剤なし)
b.Makrolon(登録商標)Al 2647(中粘度ビスフェノールAポリカーボネート、UV安定化剤および離型剤あり:MFR13g/10分:ISO1133、300℃、1.2kg)
〔2.ホイル〕
a.ポリカーボネートホイル:
Makrofol(登録商標)DE 1−1、Bayer MaterialScience AG製、層厚:375μm、両面高光沢
【0048】
C.試験法
〔被覆生成物の製造および試験〕
a)屈折率
屈折率nおよびコーティングの虚数成分の屈折率k(以下、吸光係数kと称する)を、透過および反射スペクトルから測定した。このために、約100〜300nmの厚みを有するコーティング被膜を、希釈溶液からスピンコートにより石英ガラスに塗布した。この多層コーティングの透過および反射スペクトルを、STEAG ETA−Optik製の分光計:CD−Measurement System ETA−RTを用いて測定し、次いで層厚さおよびnおよびkのスペクトル経過を透過および反射の測定スペクトルに適合させた。これは、分光計の内部ソフトウェアにより得られ、予めブランク測定において決定した石英ガラス基材のnおよびkのデータをさらに必要とする。kは以下の光強度の減衰定数αに依存する:

[λは光の波長である]。
【0049】
透過および反射
Perkin Elmer製のLamda 900を分光のために使用し、ASTM E 308にしたがって、200〜2300nmの波長域で測定を行った。垂直照射において、直線的および拡散した成分を考慮して、測定は球形光度計を用いて行った。
【0050】
b)防曇特性の決定
b.1) ブリージングテスト:基材の半分を試験するコーティング組成物で被覆し、被覆表面に息を吹きかけた。防曇効果のある場合、被覆面は曇らないが、未被覆面は上記により曇る。
【0051】
b.2) 温室試験:被覆したシートを被覆面を下方にして、60°の角度で、モデル温室の屋根に固定し、その結果、液滴形成を観察することによって、水拡散作用を比較することができる。気温50℃で大気湿度100%を達成するように、熱源を用いて温室内で水を蒸発させた。
シートをこれらの条件下で6時間保管し、その後、乾燥加熱箱中40℃で4時間加熱した。水拡散効果が消えるまで(それは、シート上の液滴の形成によって知ることができる)、モデル温室中と加熱乾燥箱中の手順を交互に繰り返した。水拡散効果が80サイクルの後にも存在する場合、長期性能があるものととして評価し、試験を終了する。
【0052】
c) 層厚を、白光干渉計(ETA SPB−T、ETA−Optik GmbH)を用いて測定する。
【0053】
d) 密着性は、DIN EN ISO 2407(クロスカットテスト)に従って決定した。0のクロスカット等級は、全ての切り口が完全に滑らかであり、かつクロスカット四角形が剥がれ落ちていないことを意味する。5のクロスカット等級は、全てのクロスカット四角形が剥がれ落ちていることを意味する。
【0054】
e)ヘイズ: ヘイズは、広角光散乱によりASTM D 1003−00に従って決定する。値は%ヘイズ(H)により与えられ、低い値、例えば1%Hは低ヘイズで高い透明性を意味し、1%H未満の値は優れた透明性を意味する。
【0055】
f)摩耗試験: 擦り切れ耐性(摩耗)を、研磨円盤法(DIN53 754)を用いて散乱光の増加によって決定する。CS−10FCalibrase研磨円盤(型IV)を有する型5151Taber研磨器を、1円盤あたり500gの塗布重量で用いた。ヘイズ値が計測され、例えば100、500または1000サイクル後、低い値、例えば0.5%Hは良好な耐摩耗性を意味する。
【0056】
g)黄色指数(YI、ASTM E 313):YI試験は、UV光による試験試料の黄変の計測である。低い値、例えばYI:0.5は、黄変の低い度合いを意味する。
【0057】
h)長期安定性および耐候性試験
長期安定性を測定するために、以下の応力条件下で試験を行った:
【0058】
水中での貯蔵: 試料を、ASTM 870−02に従って、10日間水中で65+/−2℃の温度で貯蔵し、上記の試験を毎日行う。
【0059】
沸騰試験: 試料を沸騰水中に設置し、上記の値を0.5、1、2、3および4時間後に決定する。例えば、4時間沸騰試験を損傷なく通過する場合には、良好な長期安定性を予測することができる。
【0060】
耐候性: 天然試験と比べて、物質の光/耐候性に対する安定性の加速された決定を行う。より重要な基準要素(放射、熱、湿気、雨)はいわゆるWeather−Ometers(登録商標)によりシミュレートすることができる。例えば、いわゆるASTM G 155によるXenon WOMおよびDIN EN ISO 4892−2によるXenon High Energy試験を行う。
【0061】
D.コーティングの製造
実施例1:ポリマー樹脂の溶解
Degalan(登録商標)M 912:12.5gのDegalan M 912を、87.5gのジアセトンアルコール(DAA)に攪拌しながら80℃で溶解し、12.5%の透明ポリマー溶液を得た。粘度:94.0mPa・s±0.3mPa・s
【0062】
実施例2(本発明):乾燥被膜重量に基づいて、15重量%のDegalan M 912を、HDDAおよび70重量%の多孔質シリカナノ粒子とともに含有する注入性調製物の調製
磁気撹拌機を備えた500mlガラス製ビーカー中で、下記成分を攪拌しながら混合し、均質な注入性調製物を生成した:
56.0gの12.5%Degalan M 912/DAA溶液(実施例1)
54.0gのジアセトンアルコール
113.0gの21%シリカナノ粒子(Silicon dioxide Hybrid−Sol Siosol(商標))/1−メトキシ−2−プロパノール(MOP)
3.0gの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、Alfa Aesar
0.15gのIrgacure184(登録商標)(1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、光開始剤、CIBA)。
その後、さらに10分間攪拌を行った後、3μm濾紙を介して濾過し、褐色ガラス瓶に無色透明の注入溶液を得た。
【0063】
実施例3(本発明):乾燥被膜重量に基づいて、15重量%のElvacite(登録商標)2041を、HDDAおよび70重量%の多孔質シリカナノ粒子とともに含有する注入性調製物の調製
実施例2に記載したのと同様にして、下記成分から注入性調製物を生成した:
56.0gの12.5%Elvacite 2041/DAA溶液(実施例1と同様に調製)
56.0gのジアセトンアルコール
110.5gの21%シリカナノ粒子(Silicon dioxide Hybrid−Sol Siosol(商標))/1−メトキシ−2−プロパノール(MOP)
3.0gの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、Alfa Aesar
0.16gのIrgacure184(登録商標)(1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、光開始剤、CIBA)。
【0064】
実施例4(本発明に従わない):乾燥被膜重量に基づいて、15重量%のElvacite(登録商標)2041を、HDDAおよび70重量%の非多孔質シリカナノ粒子とともに含有する注入性調製物の調製:
56.0gの12.5%Elvacite 2041/DAA溶液(実施例1と同様に調製)
56.0gのジアセトンアルコール
110.5gの21%シリカナノ粒子(Highlink(商標)Nano G Silica Organosol)/1−メトキシ−2−プロパノール(MOP)
3.0gの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、Alfa Aesar
【0065】
実施例5(本発明に従わない):乾燥被膜重量に基づいて、8重量%のElvacite(登録商標)2041および70重量%の多孔質シリカナノ粒子を含有し、反応性希釈剤(HDDA)を含有しない注入性調製物の調製
実施例2に記載したのと同様にして、下記成分から注入性調製物を生成した:
7.0gの12.5%Elvacite 2041/DAA溶液(実施例1と同様に調製)
11.0gのジアセトンアルコール
18.5gの21%ナノ粒子(Silicon dioxide Hybrid−Sol Siosol(商標))/1−メトキシ−2−プロパノール(MOP)
【0066】
実施例6(本発明に従わない):乾燥被膜重量に基づいて、15重量%のDesmolux U 100および70重量%の多孔質シリカナノ粒子を含有し、有機可溶性ポリマー樹脂成分を含有しない注入性調製物の調製
実施例2に記載したのと同様にして、下記成分から注入性調製物を生成した:
56.0gのDesmolux U 100
10.0gのジアセトンアルコール
114.0gの21%シリカナノ粒子(Silicon dioxide Hybrid−Sol Siosol(商標))/1−メトキシ−2−プロパノール(MOP)
0.5gのIrgacure184(登録商標)(1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、光開始剤、CIBA)。
【0067】
〔表面シートのコーティング〕
実施例2〜6に記載の分散物を、様々な基材に流し塗りにより塗布した。
実施例7〜13において、基材として10×15cmの表面積を有するシートを用いた。
【0068】
基材1: Makrolon(登録商標)M 2808
基材2: Makrolon(登録商標)Al 2647
【0069】
初めにシートをイソプロパノールで清浄し、イオン化空気で風乾させた。流し塗りにより塗布した注入性溶液を5分間、室温(RT)で空気にさらした後、80℃で30分間乾燥させた。その後、Hgランプ(約5J/cmのエネルギーを適用)を用いてコーティングにUV硬化を施した。
【0070】
実施例7:実施例2の注入性溶液により流し塗り被覆した基材1のシート
防曇試験および耐薬品性試験のために、それぞれ基材の半分のみ流し塗り被覆した。
実施例8(比較例):流し塗り被覆をしていない基材1のシート
実施例9:実施例2の注入性溶液により流し塗り被覆した基材2のシート
防曇試験および耐薬品性試験のために、それぞれ基材の半分のみ流し塗り被覆した。
実施例10(比較例):流し塗り被覆をしていない基材2のシート
【0071】
実施例7〜10の特性
実施例7および9においては、良好な密着性を有する高透明コーティングが得られた。
a)実施例7および9
層厚: 上:3.1μm、下:1.4μm(流し塗り工程の結果としての漸減層)
b)透過率計によるヘイズ(ASTM 1003−00に従う)
実施例7および9
ヘイズ:0.3%、この低い値は優れた透明性に対応する。
一方、未被覆基材(実施例8)の場合、0.9%のヘイズ値が測定された。
c)CS−10FCalibrase研磨円盤を用いた研磨円盤法(テーバー試験)DIN53 754による耐摩耗性
実施例7および9
Δヘイズ:100サイクル後 9%
一方、未被覆基材(実施例8および10)の場合、同様の測定法によりΔヘイズ:29%の顕著に高い摩耗が測定された。
d)実施例7および9
クロスカッティング後のテープ試験は完全に滑らかなエッジを示し、DIN EN ISO2409による等級「0」と評価された。コーティングは、いずれの基材に対しても完璧な密着性を示した。
f)防曇特性:本発明に従い半分の表面のみ被覆されたシートに息を吹きかけた。未被覆部分は蒸気で曇り、そしてくすんだが、被覆部分において変化は観察されなかった(すなわち透明性は完全に維持された)。
g)実施例7および9
コーティングの屈折率:1.315
h)透過率/反射:
未被覆シート(実施例8および10)における可視波長における透過率は、約90%であったのに対して、コーティング(実施例7および9)により約93〜95%の値を達成できた。
i)耐薬品性:
本発明に従い半分の表面のみ被覆されたシートの未被覆部分は、予測どおりすぐに曇ったのに対して、基材の被覆部分は顕著に優れた耐アセトン性(実質的に曇りなし)を示した。
【0072】
実施例11:実施例3の注入性溶液により流し塗り被覆した基材1のシート
層厚(流し塗り被覆):1.5−3.0μm
ヘイズ:0.43%
屈折率:1.36
耐摩耗性:Δヘイズ(100サイクル):11%
防曇:息を吹きかけた時、被覆部分は蒸気で曇らなかったが、未被覆部分は曇った。
【0073】
実施例12(比較例):実施例4の注入性溶液により流し塗り被覆した基材1のシート
UV架橋後、細かく細い亀裂の入ったコーティングが得られた。したがって、他の試験は行わなかった。
【0074】
実施例13(比較例):実施例5の注入性溶液により流し塗り被覆した基材1のシート
UV架橋後、下記特性を備えた透明で障害のないコーティングが得られた:
層厚:0.8−1.4μm
ヘイズ:0.13%
屈折率:1.48
驚くべきことに、ここに記載されたコーティングは、屈折率の著しい低下をもたらさず、特筆すべき反射防止特性を生じなかったため、他の試験は行わなかった。
【0075】
実施例14(比較例):実施例4の注入性溶液(非多孔質シリカナノ粒子を含む注入性溶液)により流し塗り被覆した基材1のシート
層厚(流し塗り被覆):2.0−3.5μm
ヘイズ:0.43%
屈折率:1.48
透過率(450〜800nm):約91%
防曇:息を吹きかけた時、被覆部分は蒸気で曇らなかったが、未被覆部分は曇った。
結果から、多孔質シリカナノ粒子(Silicon dioxide Hybrid−Sol Siosol(商標)、実施例3)の、非多孔質シリカナノ粒子(Highlink(商標)Nano G Silica Organosol、実施例5)への代替は、顕著に高い反射率および低い透過率(低減した反射防止効果)を有するコーティングを生じた。
【0076】
基材ホイルの持続的コーティング
実施例15:パイロットコーティング装置によるMakrofol(登録商標)DE 1−1ホイルのコーティング
厚さ375μmのポリカーボネートホイル(Makrofol(登録商標)DE1−1)を上記注入性溶液により被覆し、下記の注入パラメータを測定する:
ベルトスピード:2m/分
適用方法:反転ローラーコーティング
【0077】
温空気による乾燥:第1ゾーン:50℃、第2ゾーン:90℃、第3ゾーン:100℃、各乾燥ゾーンは長さ1mであり、総滞在時間が1.5分となるようにする。
【0078】
IR放熱器による乾燥:温空気乾燥の後、IR放熱器を用いて75℃の温度でさらなる乾燥を行った。
【0079】
UV架橋:IR乾燥の後、約550mJ/cmのUV量に対応するHg蒸気ランプを用いて、アクリレート成分の架橋をUV架橋により行った。
【0080】
上記方法によるホイルの試験から、下記の測定結果が得られた。
ヘイズ:0.3%
屈折率:1.315
耐摩耗性:Δヘイズ(100サイクル):9%
M 2808に対する密着性:非常によい、等級0
透過率(450〜800nm):約93〜95%
防曇:息を吹きかけた時、被覆部分は蒸気で曇らなかったが、未被覆部分は曇った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)5〜15重量部の多孔質シリカナノ粒子、
b)0.5〜6重量部の1種以上の有機可溶性ポリマー樹脂、
c)0.2〜3.0重量部の1種以上のUV架橋性反応性希釈剤、
d)溶剤、
e)0.02〜0.1重量部のUV開始剤系
を含む組成物。
【請求項2】
シリカナノ粒子が有機溶剤中に分散している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリマー樹脂がポリビニル(コ)ポリマーおよびポリアクリル(コ)ポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
屈折率nが1.45未満である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
屈折率nが1.40未満である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
屈折率nが1.35未満である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
a)多孔質シリカナノ粒子が、重量平均粒径d50が10〜50nmである単峰性粒度分布を有する粒子、または、一方の平均粒径d50が1〜10nmであり、他方の平均粒径d50が10〜30nmである2つの区分を有する二峰性粒度分布を有する粒子であり;
b)がポリメチル(メタ)アクリレートであり;
c)がUV架橋性または電子線架橋性の、脂肪族基または脂環式基を有する炭素数30未満のエチレン性不飽和低分子量アクリレートまたはメタクリレートであり;
d)がアルコールであり;および
e)がヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトンまたはジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドである
請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
表面被覆における請求項1〜7のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物を表面に塗布し、UV光を照射することを特徴とする表面の被覆方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物をにより被覆した表面、または請求項9に記載の方法により被覆した表面を有する成形品。
【請求項11】
多孔質シリカナノ粒子、有機可溶性ポリマー樹脂、UV架橋ポリマー樹脂およびUV開始剤を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の表面コーティングを備える透明熱可塑性ポリマーの成形品。
【請求項12】
少なくとも片側に第2層を有する基材層を含む多層生成物であって、第2層が請求項1〜7のいずれかに記載の組成物から製造される生成物。
【請求項13】
基材層が透明熱可塑性ポリマーからなることを特徴とする請求項12に記載の多層生成物。
【請求項14】
透明熱可塑性ポリマーがポリカーボネートである請求項13に記載の多層生成物。

【公表番号】特表2012−517513(P2012−517513A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549465(P2011−549465)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000609
【国際公開番号】WO2010/091802
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】