説明

反応方法及び反応装置

【課題】気泡の混入を防止し、分析対象物質の検出、定量精度を高めることのできる反応方法及び反応装置を提供する。
【解決手段】第1の流路CH1において分析対象物質を特異的に吸着する吸着反応を行うものであって、第2の流路CH2に分析対象物質を含む液を流す工程と、第2の流路に流れる前記液の一部を、第4の流路CH4に引き込み、該液に含まれる前記分析対象物質に標識物質を結合させて検体液とする工程と、第2の流路に残る前記液の残部を洗浄液として、第2の流路から退避させる工程と、前記検体液を前記第2の流路を経て第1の流路に送液する工程と、前記検体液の後端が第1の流路に流入したことを検出し、該検体液の送液を停止させる工程と、第2の流路から退避させた前記洗浄液を第3の流路に流し、該第1の流路に停止する前記検体液の後端に該洗浄液を合流させる工程と、該洗浄液を第1の流路に送液する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出物質を特異的に吸着する吸着反応を行う反応方法及び反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の分子生物学の進歩により、血液等の生体物質を分析する事により、病気の治療における薬剤投与の効果や副作用の体質による個人差を予知することが可能であることが示されてきており、これを利用して、個人個人にとって最適な治療を施していこうという気運が高まっている。
【0003】
例えば、特定の遺伝子と、特定の治療薬剤の効果や副作用が強く相関することがわかっている場合、この情報を特定の患者の治療に役立てるためには、患者の遺伝子の塩基配列を知る必要がある。内因性遺伝子の変異又は一塩基多型(SNP)に関する情報を得るための遺伝子診断は、そのような変異又は一塩基多型を含む標的核酸の増幅及び検出により行なうことができる。このため、サンプル中の標的核酸を迅速且つ正確に増幅及び検出し得る簡便な方法が求められる。
【0004】
この場合、分析対象物質を特異的に吸着する抗体又は抗原等のタンパク質或いは一本鎖の核酸をプローブに使い、分析対象物質と抗原抗体反応又は核酸ハイブリダイゼーションを行う。そして、分析対象物質には、分析対象物質に特異的に結合する上記のタンパク質や核酸などを担持した酵素等の検知感度の高い標識物質を結合させておき、この標識物質を検出、定量して、分析対象物質の検出、定量を行っている。
【0005】
この種の技術として、単一の流路に複数の液を順次投入し、流路内で抗原抗体反応及び洗浄操作を行う技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。そして、単一の流路に複数の液を順次投入するものにおいて、液の間に気泡が介入することを防止する技術も知られている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に開示された技術は、流路を疎水性とし、そこに、空気抜き用の穴と撥水バルブとを設け、加圧送液することにより液の間の空気を排出するようにしている。
【特許文献1】国際公開03/062823号パンフレット
【特許文献2】特開2006−337221号公報
【特許文献3】特開2007−83191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1、2に開示された技術では、順次投入される液の間に気泡が介入する虞がある。気泡が介入すると、液が流路の一辺のみを伝わって不均一な流れとなり易く、送液が安定しない。また、気泡が混入すると先に流れる液の後端に気液界面が生じ、これが流路の反応部を通過することに起因して非特異的吸着が生じやすくなる。
【0007】
ここで、非特異的吸着とは、本来的に相互作用しない分子に物質が吸着されることをいう。例えば抗原抗体反応において、抗原を分析対象物質とし、反応部に固定された抗体で抗原を特異的に吸着し、吸着された抗原に結合している標識物質を検出、定量して、抗原を検出、定量するところ、標識物質が単独で反応部に吸着されてしまうようなことをいう。
【0008】
上記の特許文献3に開示された技術では、流路が疎水性であり、標識物質を抗原に結合させるために標識物質に担持させた抗体が疎水面に付着し易いため、標識物質の非特異的吸着が増加し、それに起因して分析対象物質の検出、定量精度の低下が懸念される。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、その目的は、気泡の混入を防止し、分析対象物質の検出、定量精度を高めることのできる反応方法及び反応装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 第1の流路において分析対象物質を特異的に吸着する吸着反応を行う反応方法であって、前記第1の流路に接続した第2の流路に前記分析対象物質を含む液を流す工程と、前記第2の流路に流れる前記液の一部を、該第2の流路から分岐した第4の流路に引き込み、該第4の流路において該液に含まれる前記分析対象物質に標識物質を結合させて検体液とする工程と、前記第2の流路に残る前記液の残部を洗浄液として、該洗浄液を前記第2の流路から退避させる工程と、前記検体液を前記第2の流路を経て前記第1の流路に送液する工程と、前記検体液の後端が前記第1の流路に流入したことを検出し、該検体液の送液を停止させる工程と、前記第2の流路から退避させた前記洗浄液を、前記第1の流路に接続する前記第2の流路の接続部に合流した第3の流路に流し、該第1の流路に停止する前記検体液の後端に該洗浄液を合流させる工程と、前記検体液の後端に前記洗浄液が合流した後に該洗浄液を前記第1の流路に送液する工程と、を備える反応方法。
(2) (1)記載の反応方法であって、前記第3の流路が合流した前記第2の流路の前記接続部と前記第4の流路が分岐した該第2の流路の分岐部との間で該第2の流路から分岐して延びる第5の流路に、前記洗浄液を退避させる反応方法。
(3) (2)記載の反応方法であって、前記第3の流路が合流した前記第2の流路の前記接続部と前記第5の流路が分岐した該第2の流路の分岐部とが隣接している反応方法。
【0011】
上記の反応方法によれば、第2の流路に供給される液の一部を第4の流路に引き込み、これを前処理して検体液とし、第2の流路に残る液の残部を洗浄液とするので、マイクロ流体チップに複数の液を供給する手間を省くことができ、作業効率を向上させることができる。その場合に、分離された洗浄液は、第3の流路に退避させておいてもよいし、第5の流路を設け、そこに退避させるようにしてもよい。第5の流路が分岐した第2の流路の分岐部と第3の流路が合流した第2の流路の接続部とが隣接していれば、洗浄液が第5の流路から第3の流路に流れる際に経由する第2の流路の区間長が極力短縮され、第2の流路に残留した検体液の成分が洗浄液に混ざることを抑制することができる。
【0012】
そして、上記の反応方法によれば、第2の流路に流れる検体液の後端が第1の流路に流入した後、検体液の送液を停止させ、第2の流路とは異なる流路であって、第1の流路に接続する第2の流路の接続部に合流した第3の流路に洗浄液を流して、第1の流路に停止する検体液の後端に洗浄液を合流させているので、検体液と洗浄液との間に気泡が介入しない。それにより、送液を安定させることができ、また、第1の流路における非特異的吸着を抑制することができる。
【0013】
(4) (1)〜(3)のいずれか一項記載の反応方法であって、前記第1の流路に、前記第2の流路との接続部から続く区間であって、その断面積aが該第2の流路の断面積Aよりも小さい狭小区間を設け、前記第1の流路の内圧の変化に基づいて、前記検体液の後端が該第1の流路に流入したことを検出する反応方法。
【0014】
上記の反応方法によれば、第2の流路より小さい断面積の狭小区間において作用する毛管力は、第2の流路のそれに比べて大きく、よって、検体液の後端が第2の流路から狭小区間に流入すると、狭小区間の毛管力に勝る程に第1の流路の内圧が減圧されるまで検体液は停止し、その間に反応流路の内圧は徐々に減圧される。そこで、第1の流路の内圧の変化により、検体液の後端が第1の流路に流入したことを検出し、検体液の送液を停止させることができる。
【0015】
(5) (4)記載の反応方法であって、前記狭小区間の断面積aは、前記第2の流路の断面積Aの2/5〜1/300である反応方法。
【0016】
上記の反応方法によれば、狭小区間の毛管力が、第2の流路のそれに比べて比較的大きく、検体液の後端が第1の流路に流入したことを、より確実に検出できる。
【0017】
(6) (1)〜(5)のいずれか一項記載の反応方法であって、前記第2の流路に接続する前記第1の流路の接続部の開口が、該第2の流路の一面にあって該面のエッジから離れた位置にある反応方法。
【0018】
上記の反応方法によれば、液がエッジを伝って容易に第1の流路に流入することを防止して、第2の流路の接続部を液で満たすことができ、より確実に気泡を排除することができる。
【0019】
(7) 第1〜第4の流路、及びこれら第1〜第4の流路の基端部にそれぞれ設けられた第1〜第4のポートを含むマイクロ流体チップと、前記第1〜第4のポートにそれぞれ圧力を作用させ、前記第1〜第4の流路に送液する送液手段と、前記送液手段を駆動する制御手段と、を備え、前記第1の流路及び前記第2の流路は、それらの先端部において互いに接続し、前記第3の流路は、前記第1の流路に接続する前記第2の流路の接続部に合流し、前記第4の流路は、前記第2の流路から分岐しており、前記第1の流路は、分析対象物質を特異的に吸着する吸着反応を行い、前記第4の流路は、前記分析対象物質に標識物質を結合させる前処理を行い、前記制御手段は、前記分析対象物質を含み前記第2の流路に流れる液の一部を前記第4の流路に引き込んで前記前処理が施された検体液とし、該第2の流路に残る前記液の残部を洗浄液として該洗浄液を該第2の流路から退避させた後に、前記検体液を該第2の流路を経て前記第1の流路に送液し、該検体液の後端が該第1の流路に流入したことを検出して、該検体液の送液を停止させると共に該第2の流路から退避させた前記洗浄液を前記第3の流路に流して該洗浄液を該第1の流路に停止する該検体液の後端に合流させ、該検体液の後端に該洗浄液が合流した後に該洗浄液を該第1の流路に送液する反応装置。
(8) (7)記載の反応装置であって、前記マイクロ流体チップは、前記第3の流路が合流した前記第2の流路の前記接続部と前記第4の流路が分岐した該第2の流路の分岐部との間で該第2の流路から分岐して延びる第5の流路をさらに含み、前記制御手段は、前記洗浄液を前記第5の流路に退避させる反応装置。
(9) (8)記載の反応装置であって、前記第3の流路が合流した前記第2の流路の前記接続部と前記第5の流路が分岐した該第2の流路の分岐部とが隣接する反応装置。
【0020】
上記の反応装置によれば、第2の流路に供給される液の一部を第4の流路に引き込み、これを前処理して検体液とし、第2の流路に残る液の残部を洗浄液とするので、マイクロ流体チップに複数の液を供給する手間を省くことができ、作業効率を向上させることができる。その場合に、分離された洗浄液は、第3の流路に退避させておいてもよいし、第5の流路を設け、そこに退避させるようにしてもよい。第5の流路が分岐した第2の流路の分岐部と第3の流路が合流した第2の流路の接続部とが隣接していれば、洗浄液が第5の流路から第3の流路に流れる際に経由する第2の流路の区間長が極力短縮され、第2の流路に残留した検体液の成分が洗浄液に混ざることを抑制することができる。
【0021】
そして、上記の反応装置によれば、第2の流路に流れる検体液の後端が第1の流路に流入した後、検体液の送液を停止させ、第2の流路とは異なる流路であって、第1の流路に接続する第2の流路の接続部に合流した第3の流路に洗浄液を流して、第1の流路に停止する検体液の後端に洗浄液を合流させているので、検体液と洗浄液との間に気泡が介入しない。それにより、送液を安定させることができ、また、第1の流路における非特異的吸着を抑制することができる。
【0022】
(10) (7)〜(9)のいずれか一項記載の反応装置であって、前記第1のポートに作用する圧力を測定する圧力測定手段をさらに備え、前記第1の流路が、前記第2の流路との接続部から続く区間であって、その断面積aが該第2の流路の断面積Aよりも小さい狭小区間を有しており、前記制御手段は、前記圧力測定手段から送出される測定信号に基づいて、前記検体液の後端が前記第1の流路に流入したことを検出する反応装置。
【0023】
上記の反応装置によれば、第2の流路より小さい断面積の狭小区間において作用する毛管力は、第2の流路のそれに比べて大きく、よって、検体液の後端が第2の流路から狭小区間に流入すると、狭小区間の毛管力に勝る程に第1の流路の内圧が減圧されるまで検体液は停止し、その間に反応流路の内圧は徐々に減圧される。そこで、第1の流路の内圧の変化により、検体液の後端が第1の流路に流入したことを検出し、検体液の送液を停止させることができる。
【0024】
(11) (10)記載の反応装置であって、前記狭小区間の断面積aは、前記第2の流路の断面積Aの2/5〜1/300である反応装置。
【0025】
上記の反応装置によれば、狭小区間の毛管力が、第2の流路のそれに比べて比較的大きく、検体液の後端が第1の流路に流入したことを、より確実に検出できる。
【0026】
(12) (7)〜(11)のいずれか一項記載の反応装置であって、前記第2の流路に接続する前記第1の流路の接続部の開口が、該第2の流路の一面にあって該面のエッジから離れた位置にある反応装置。
【0027】
上記の反応装置によれば、液がエッジを伝って容易に第1の流路に流入することを防止して、第2の流路の接続部を液で満たすことができ、より確実に気泡を排除することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、吸着反応を行う第1の流路に順次供給される検体液と洗浄液との間に気泡が介入せず、それにより送液が安定すると共に非特異的吸着が抑制されるので、分析対象物質の検出、定量精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
図1は本発明の実施形態を説明するためのマイクロ流体チップの一例の平面図、図2は図1のマイクロ流体チップを分解して示す平面図、図3は図1のマイクロ流体チップのIII−III線断面図である。
【0031】
図1に示すマイクロ流体チップ101は、第1の流路CH1、第2の流路CH2、第3の流路CH3、及び第4の流路CH4と、これらの流路CH1〜CH4の基端部にそれぞれ設けられた第1のポートPT1、第2のポートPT2、第3のポートPT3、及び第4のポートPT4と、を備えている。各ポートPT1〜PT4には、各流路CH1〜CH4の内圧を制御するようにそれぞれ圧力が作用し、また、必要に応じて、マイクロ流体チップ101に供給される液が投入される。
【0032】
第1の流路CH1及び第2の流路CH2は、それらの先端部CH1a,CH2aにおいて互いに接続している。また、第3の流路CH3は、第1の流路CH1に接続した第2の流路CH2の接続部(先端部)CH2aに合流している。この第1の流路CH1は、第2の流路CH2との接続部(先端部)CH1aから続く区間であって、その断面積aが第2の流路CH2の断面積Aよりも小さい狭小区間CH1bを有している。そして、第4の流路CH4は、第2の流路CH2から分岐して延びている。
【0033】
接続部CH1aの開口4aは、第2の流路CH2の接続部CH2aの底面にあって、該底面を形成するエッジから離れた位置にある(図3参照)。エッジから離れていることで、第2の流路CH2に流れる液が、そのエッジを伝って容易に狭小区間CH1bに流入してしまうことが防止される。それにより、まず第2の流路CH2の接続部CH2aが液で満たされ、その後に狭小区間CH1bに流入する。そこで、第2の流路CH2の接続部CH2aに気泡が残留することが防止される。
【0034】
このマイクロ流体チップ101は、図2及び図3に示すように、複数の層L1〜L5を積層した構造となっている。第1の層L1は基板とされ、その上に積層される第2の層L2には、第1の流路CH1の狭小区間CH1bを構成するための溝2aが、層を貫通して形成されている。第2の層L2が第1の層L1と第3の層L3とで表裏から挟まれて、溝2aの位置に狭小区間CH1bが構成される。
【0035】
第3の層L3の上に積層される第4の層L4には、狭小区間CH1bを除く第1の流路CH1を構成するための溝2b、第2の流路CH2を構成するための溝2c、第3の流路CH3を構成するための溝2d、及び第4の流路CH4を構成するための溝2eが、それぞれ層を貫通して形成されている。第4の層L4が第3の層L3と第5の層L5とで表裏に挟まれて、溝2b〜2eの位置に、狭小区間CH1bを除く第1の流路CH1、第2の流路CH2、第3の流路CH3、第4の流路CH4がそれぞれ構成される。また、第4の層L4には、ポート孔3b〜3eが、各溝2b〜2eの基端部に層を貫通して形成されている。
【0036】
第2の層L2と第4の層L4との間に介在する第3の層L3には、通孔4a,4bがそれぞれ層を貫通して形成されている。第4の層L4の溝2cの先端部(第2の流路CH2の接続部CH2aに相当)と第2の層L2の溝2aの一端部(第1の流路CH1の接続部CH1aに相当)とは上下に重なっており、通孔4aはその間に配置されるようになっている。また、第4の層L4の溝2bの先端部と第2の層L2の溝2aの他端部とは上下に重なっており、通孔4bはその間に配置されるようになっている。通孔4aは、第2の流路に接続する第1の流路CH1の接続部CH1aの開口を構成する。また、通孔4bは、狭小区間CH1b及び該区間を除く第1の流路CH1を繋ぐ。
【0037】
マイクロ流体チップ1の蓋となる第5の層L5には、ポート孔5b〜5eがそれぞれ層を貫通して形成されている。ポート孔5b〜5eは、第4の層L4のポート孔3b〜3eに重なってポートPT1〜PT4をそれぞれ構成し、外部から各ポートPT1〜PT4への接続を提供する。
【0038】
第1の流路CH1の狭小区間CH1bの断面積aは、その接続口CH1bを介して接続する第2の流路CH2の断面積Aよりも小さくなっており、それらの断面積は、各層の厚みによって変えられている。例えば、流路の幅を2mmで一定とし、第2の流路CH2を構成するための溝2cが形成された第4の層L4の厚みが0.5〜3mmとし、狭小区間CH1bを構成するための溝2aが形成された第2の層L2の厚みを0.01〜0.2mmとする。狭小区間CH1bの幅を第2の流路CH2の幅よりも小さくして、狭小区間CH1bの断面積aを第2の流路CH2の断面積Aよりも小さくしてもよい。好ましくは、狭小区間CH1bの断面積aは、第2の流路CH2の断面積Aの2/5〜1/300である。
【0039】
以上の層L1〜L5は、例えばポリスチレンやアクリルなどの合成樹脂製の板で形成することができ、層間に両面粘着シートなどの接着材を適宜介在させて相互に接合されるが、例えば第2の層L2などは、第1の流路CH1の狭小区間CH1bを形成するために比較的厚みが小さくなるので、それ自体を両面粘着シートで形成するようにしてもよい。各層の溝、ポート孔、及び連通孔は、例えばレーザー加工により形成される。
【0040】
尚、第3の層L3において、少なくとも第2の層L2の溝2aに重なる部位には透明な窓部6aが設けられており、また、第4の層L4及び第5の層L5において、同じく第2の層L2の溝2aに重なる部位には、窓孔6b,6cが形成されている。層L1〜L5が順次積層された状態で、窓孔6b,6c及び窓部6aにより検出部6が構成され、第1の流路CH1の狭小区間CH1bは、この検出部6を通して外部より視認可能である。
【0041】
次に、マイクロ流体チップ101の使用例を説明する。図4はマイクロ流体チップを含む反応装置の概略構成を示すブロック図であり、以下に説明するマイクロ流体チップの使用例では、マイクロ流体チップに分析対象物質としての抗原を含む検体液を供給し、マイクロ流体チップの流路内で抗原抗体反応を行って抗原を検出し、定量するものである。
【0042】
図4に示すように、マイクロ流体チップ101の第2のポートPT2には、抗原を含む未処理の検体液が投入される。
【0043】
第1の流路CH1の狭小区間CH1bは、検体液に含まれる抗原を特異的に吸着するプローブとしての抗体が固定され、抗原抗体反応を行う反応部とされている。尚、少なくとも反応部である狭小区間CH1bの表面は、適宜な表面処理が施されて親水性とされている。
【0044】
第4の流路CH4には、抗原に結合する抗体を担持した標識物質としての蛍光微粒子が固定された前処理部CH4aが設けられている。第2の流路CH2に流れる検体液の一部は、第4の流路CH4に引き込まれて前処理部CH4aを流れ、その際に蛍光微粒子が抗原に結合し、処理済の検体液(第1の液)とされる。そして、第4の流路CH4に引き込まれることなく第2の流路CH2に残った未処理の検体液が、洗浄液(第2の液)とされる。
【0045】
反応装置111は、上記のマイクロ流体チップ101と、電磁バルブSV1〜SV4と、空気を作動流体とするポンプ12a,12bと、圧力センサ(圧力測定手段)13と、液位置検出手段14と、蛍光検出手段15と、制御手段16と、を備えている。
【0046】
第1のポートPT1は、ポートパッド(不図示)及び配管を介してポンプ12aに接続されている。そして、ポンプ12aと第1のポートPT1とを接続する配管から分岐した配管には電磁バルブSV1が接続されている。また、第3のポートPT3、及び第4のポートPT4は、それぞれポートパッド(不図示)及び配管を介して並列にポンプ12bに接続されている。ポンプ12bと第3のポートPT3とを接続する配管には電磁バルブSV3が介在し、電磁バルブSV3と第3のポートPT3とを接続する配管から分岐した配管に電磁バルブSV2が接続されている。また、ポンプ12bと第4のポートPT4とを接続する配管には電磁バルブSV4が介在している。尚、第2のポートPT2は、常時、大気開放となっている。
【0047】
圧力センサ13は、ポンプ12aと第1のポートPT1との間に設けられ、第1のポートPT1に作用する圧力、即ち第1の流路CH1の内圧を測定する。
【0048】
液位置検出手段14は、第1〜第4の流路CH1〜CH4の適宜な位置において、その位置に検体液又は洗浄液の先端が到達したことを検出する。検出方法としては、検出位置に光を照射して反射光を検出し、空気と液体との屈折率変化に基づく反射光の光量変化から、液体の有無を判定する方法を例示することができる。
【0049】
図示の例では、液の検出位置として、第4の流路CH4における適宜な位置に第1の検出位置PH1が設けられ、第3の流路CH3において第3のポートPT3側の端部に第2の検出位置PH2が設けられ、第1の流路CH1において狭小区間CH1bから第1のポートPT1側に若干下った位置に第3の検出位置PH3が設けられ、第3の流路CH3において第2の流路CH2に合流する手前の位置に第4の検出位置PH4が設けられ、また、第1の流路CH1において第1のポートPT1の手前の位置に第5の検出位置PH5が設けられている。
【0050】
蛍光検出手段15は、マイクロ流体チップ1の検出部6を通して、反応部である第1の流路CH1の狭小区間CH1bに特定波長の励起光を照射する。狭小区間CH1bにおいて抗原抗体反応により吸着された抗原に結合している蛍光微粒子が励起光を吸収して蛍光を発し、蛍光検出手段15は、この蛍光を検出して抗原を検出し、また、その蛍光強度により抗原を定量する。
【0051】
制御手段16は、検査シーケンスを記憶したROMやCPUなどを有し、圧力センサ13から送出される測定信号、及び液位置検出手段14から送出される検出信号を受け、それらの信号などに基づいて適宜なタイミングでポンプ12a,12b及びバルブSV1〜SV4を駆動して、ポートPT1〜PT4を加圧、減圧、大気開放、密閉する。それにより、流路CH1〜CH4内で検体液及び洗浄液が自在に搬送される。
【0052】
上記の反応装置111を用いた検査シーケンスを説明する。図5〜図8は検査シーケンスの各ステップにおけるマイクロ流体チップの状態を示す平面図、図9は検査シーケンスの制御タイミング及び反応装置の各要素の状態を時間軸に沿って示すタイムチャートである。以下において、図9の制御タイミングV2−1〜V2−12と、図5〜図8の各ステップS2−1〜S2−20を対応させて説明する。
【0053】
マイクロ流体チップ101を用意し(S2−1)、マイクロ流体チップ101の第2のポートPT2に未処理の検体液を投入する(S2−2)。
【0054】
マイクロ流体チップ101を反応装置111にセットし、ポートPT1〜PT4にポートパッドをそれぞれ押し付ける。この時、各ポートパッドは大気開とされ、パッドの押し付けにより検体液が移動することはない。
【0055】
反応装置111のスタートスイッチが押されると(V2−1)、第4のポートPT4が減圧され、検体液が高速(例えば60μL/min)で第2の流路CH2に流れ、そして、検体液の先端側の一部は第4の流路CH4に引き込まれる。
【0056】
第4の流路CH4に引き込まれた検体液の先端が第1の検出位置PH1に到達し、第1の検出位置PH1について液位置検出手段14がON状態になると(S2−3、V2−2)、第4のポートPT4は密閉され、第4の流路CH4に引き込まれた検体液は第4の流路CH4において、また、第2の流路CH2に残った検体液は第2の流路CH2において停止する。第4の流路CH4に引き込まれる検体液の量は、第1の検出位置PH1の位置を調節することにより、任意に設定され得る。
【0057】
第3のポートPT3が減圧され、第2の流路CH2にある検体液は、第4の流路CH4が分岐する第2の流路CH2の分岐部CH2cにおいて第4の流路CH4に引き込まれた検体液から分離され、高速で(例えば60μL/min)で第3の流路CH3に流れる(S2−4〜S2−5)。分離されて第3の流路CH3に流れる検体液は、後の工程で、反応部である第1の流路CH1の狭小区間CH1bを洗浄するための洗浄液とされる。
【0058】
第3の流路CH3に流れる洗浄液の先端が第2の検出位置PH2に到達し、第2の検出位置PH2について液位置検出手段14がON状態となった後(S2−6、V2−3)、所定時間(例えば10秒)第3のポートPT3が減圧され、全ての洗浄液が第3のポートPT3に収容される(S2−7、V2−4)。その後、第3のポートPT3は密閉される。
【0059】
また、第2の検出位置PH2について液位置検出手段14がON状態となった後、所定時間(例えば10秒)第4のポートPT4が減圧され、第4の流路CH4に引き込まれている検体液が、高速(例えば60μL/min)で第4のポートPT4側に送られ、前処理部CH4aに流れる(S2−7、V2−4)。前処理部CH4aに流れた検体液は、前処理部CH4aにおいて蛍光微粒子を抗原に結合させ、処理済の検体液(以下、単に検体液という)とされる。尚、蛍光微粒子の結合が促進されるよう、第4のポートPT4を交互に加減圧して、前処理部CH4a及びその近傍区間において検体液を往復移動させる(S2−8〜S2−9、V2−5)。
【0060】
検体液の往復動作が終了した後(V2−6)、第4のポートPT4が加圧され、また、第1のポートPT1が減圧される。それにより、検体液は、高速(例えば60μ/min)で、第4の流路CH4から第2の流路CH2を経て第1の流路CH1に流れる(S2−10〜S2−12)。
【0061】
検体液の先端が、第1の流路CH1の狭小区間CH1bを通過して第3の検出位置PH3に到達し、第3の検出位置PH3における液位置検出手段14がON状態になると(V2−7)、第1のポートPT1は大気開放となり、検体液がその位置で停止する(S2−13)。この動作により、検体液を所定の位置で精度よく停止させることができる。この時に検体液の後端が第2の流路CH2にあるように、第3の検出位置PH3は設定される。
【0062】
第1のポートPT1が大気開放となって所定時間(例えば0.5秒)経過すると(V2−8)、第1のポートPT1が再び減圧され、検体液は、低速(例えば8μl/min)で第1の流路CH1に流れ、反応部である狭小区間CH1bにおいて所定時間(例えば5分間)抗原抗体反応が行われる(S2−14)。
【0063】
検体液の後端が、第1の流路CH1の狭小区間CH1bに流入すると、検体液が自動的に停止する(S2−15)。これは、狭小区間CH1bの断面積aが、第2の流路CH1の断面積Aよりも小さくなっており、狭小区間CH1bにおいて作用する毛管力が、搬送圧力よりも大きくなるためである。ポンプ12aは継続して吸引し続け、第1の流路CH3は徐々に減圧されるが、搬送圧力が狭小区間CH1bにおいて作用する毛管力よりも大きくなるまで検体液は停止している。
【0064】
そこで、第1の流路CH1の内圧の変動を圧力センサ13で測定することにより、検体液の後端が第1の流路CH1の狭小区間CH1bに流入したことを検出することができる。好ましくは、狭小区間CH1bの断面積aは第2の流路CH2の断面積Aの2/5〜1/300である。これによれば、狭小区間CH1bの毛管力が第2の流路CH2のそれに比べて十分に大きく、検体液の後端が狭小区間CH1bに流入したことを、より確実に検出することができる。
【0065】
第1の流路CH1の内圧が所定圧力(例えば0.3kPa)まで減圧されると(V2−9)、検体液の後端が第1の流路CH1の狭小区間CH1bに流入したとして、第4のポートPT4が減圧され、第3のポートPT3に収容されている洗浄液が高速(例えば60μL/min)で第3の流路CH3に流れる(S2−16)。この時、第1のポートPT1及び第4のポートPT4は同一の圧力となるようにポンプ12a,12bで吸引され、検体液が第1の流路CH1から第2の流路CH2に逆流することはない。
【0066】
検体液が第1の流路CH1で停止している間に、第3の流路CH3に流れる洗浄液の先端が第4の検出位置PH4に到達し、第4の検出位置PH4について液位置検出手段14がON状態になる(S2−17、V2−10)。それから所定時間(例えば3秒)経過すると(V2−11)、洗浄液は、第3の流路CH3が合流する第2の流路CH2の接続部CH2aに到達する。第2の流路CH2は、その接続部CH2aにおいて第1の流路CH1に接続していることから、洗浄液は、気泡の介入なく検体液の後端に合流する(S2−18)。
【0067】
そして、第4のポートPT4が密閉され、第1のポートPT1のみ減圧される。洗浄液が、気泡の介入なく検体液に連なって、低速(例えば8μL/min)で狭小区間CH1bに流れ、反応部である狭小区間CH1bの洗浄が行われる(S2−19)。それにより、未反応の抗原及び蛍光微粒子は狭小区間CH1bから排出される。
【0068】
洗浄液には抗原が含まれているが、それらの抗原には蛍光微粒子が結合していない。よって、洗浄の際に、洗浄液に含まれる抗原が狭小区間CH1bにおいて抗原抗体反応により吸着されたとしても、それらの抗原が蛍光検出手段15によって検出されることはなく、検体液に含まれる抗原の検出、定量に影響を生じない。
【0069】
検体液及び洗浄液の全てが第1の流路CH1において狭小区間CH1bより下流に流れ、液の先端が第5の検出位置PH5に到達し、第5の検出位置PH5について液位置検出手段14がON状態になると(V2−12)、ポンプ12aが停止して液が停止する(S2−20)。また、第1のポートPT1、及び第4のポートPT4が大気開放となる。
【0070】
図10に、反応部における抗原抗体反応を模式的に示す。図10(a)〜(b)に示すように、反応部である第1の流路CH1の狭小区間CH1bに、蛍光微粒子(標識物質)Idが結合している抗原(分析対象物質)Agを含む検体液が流れると、それらの抗原Agは、狭小区間CH1bに固定された抗体(プローブ)Igに特異的に吸着される。尚、一部の抗原Ag´が、狭小区間CH1bに固定された抗体Igに吸着されることなく検体液中に分散している場合もある。また、検体液には、抗原Agに結合することなく単独で存在する蛍光微粒子Idも含まれている。
【0071】
図10(c)に示すように、狭小区間CH1bに洗浄液が流れると、抗体Igに吸着されずに検体液中に分散している抗原Ag´及び検体液中に単独で存在する蛍光微粒子Idは、検体液又は洗浄液に乗って狭小区間CH1bから排出される。ここで、検体液中に単独で存在する蛍光微粒子Idが抗体Igに非特異的に吸着されることがあり、非特異的に吸着された蛍光微粒子Id´は、洗浄によっても狭小区間CH1bに残留する。
【0072】
蛍光検出手段15により、反応部である第1の流路CH1の狭小区間CH1bに存在する蛍光微粒子を検出、定量し、それに基づいて抗原を検出、定量する。洗浄液が、気泡の介入なく洗浄液に連なって、反応部である狭小区間CH1bを流れることで、検体液中で抗原に結合することなく単独で存在する蛍光微粒子が、反応部である狭小区間CH1bにおいて非特異的に吸着されることが抑制される。それにより、抗原の検出・定量の精度が向上する。
【0073】
蛍光検出手段15により、反応部である第1の流路CH1の狭小区間CH1bに存在する蛍光微粒子を検出、定量し、それに基づいて抗原を検出、定量する。洗浄液が、気泡の介入なく洗浄液に連なって反応部である狭小区間CH1bを流れることで、検体液中で抗原に結合することなく単独で存在する蛍光微粒子が、反応部である狭小区間CH1bにおいて非特異的に吸着されることが抑制される。それにより、抗原の検出・定量の精度が向上する。
【0074】
さらに、第2の流路CH2に供給される未処理の検体液の一部を第4の流路CH4の前処理部CH4aに引き込んで処理し、これを処理済の検体液とするとともに、その余の未処理の検体液を洗浄液としているので、マイクロ流体チップ1に複数の液を供給する手間を省くことができ、作業効率が向上する。
【0075】
続いて、図11、及び図12を参照して、マイクロ流体チップの他の例を説明する。
【0076】
図11は本発明の実施形態を説明するためのマイクロ流体チップの他の例の平面図、図12は図11のマイクロ流体チップを分解して示す平面図である。尚、上述したマイクロ流体チップ101と機能的に共通する要素には、同一符号を付し、説明を省略し、又は簡略する。
【0077】
図11に示すマイクロ流体チップ201は、第1の流路CH1、第2の流路CH2、第3の流路CH3、第4の流路CH4、及び第5の流路CH5と、これらの流路CH1〜CH5の基端部にそれぞれ設けられた第1のポートPT1、第2のポートPT2、第3のポートPT3、第4のポートPT4、及び第5のポートPT5と、を備えている。各ポートPT1〜PT5には、各流路CH1〜CH5の内圧を制御するようにそれぞれ圧力が作用し、また、必要に応じて、マイクロ流体チップ201に供給される液が投入される。
【0078】
第1の流路CH1及び第2の流路CH2は、それらの先端部CH1a,CH2aにおいて互いに接続している。また、第3の流路CH3は、第1の流路CH1に接続した第2の流路CH2の接続部(先端部)CH2aに合流している。この第1の流路CH1は、第2の流路CH2との接続部(先端部)CH1aから続く区間であって、その断面積aが第2の流路CH2の断面積Aよりも小さい狭小区間CH1bを有している。そして、第4の流路CH4は、第2の流路CH2から分岐して延びている。
【0079】
第5の流路CH5は、第2の流路CH2において第3の流路CH3が合流した接続部CH2aと第4の流路CH4が分岐した分岐部CH2cとの間で第2の流路CH2から分岐して延びている。この第5の流路CH5には、後述する洗浄液を収容するための収容部CH5aが設けられている。第2の流路CH2において第5の流路CH5が分岐する分岐部CH2dは、第3の流路CH3が合流した接続部CH2aに隣接(極力接近)していることが好ましい。
【0080】
このマイクロ流体チップ201は、図12に示すように、複数の層L1〜L5を積層した構造となっている。第1の層L1は基板とされ、その上に積層される第2の層L2には、第1の流路CH1の狭小区間CH1bを構成するための溝2aが、層を貫通して形成されている。第2の層L2が第1の層L1と第3の層L3とで表裏から挟まれて、溝2aの位置に狭小区間CH1bが構成される。
【0081】
第3の層L3の上に積層される第4の層L4には、狭小区間CH1bを除く第1の流路CH1を構成するための溝2b、第2の流路CH2を構成するための溝2c、第3の流路CH3を構成するための溝2d、第4の流路CH4を構成するための溝2e、及び第5の流路CH5を構成するための溝2fが、それぞれ層を貫通して形成されている。第4の層L4が第3の層L3と第5の層L5とで表裏に挟まれて、溝2b〜2fの位置に、狭小区間CH1bを除く第1の流路CH1、第2の流路CH2、第3の流路CH3、第4の流路CH4、及び第5の流路CH5がそれぞれ構成される。また、第4の層L4には、ポート孔3b〜3fが、各溝2b〜2fの基端部に層を貫通して形成されている。
【0082】
第2の層L2と第4の層L4との間に介在する第3の層L3には、通孔4a,4bがそれぞれ層を貫通して形成されている。第4の層L4の溝2cの先端部(第2の流路CH2の接続部CH2aに相当)と第2の層L2の溝2aの一端部(第1の流路CH1の接続部CH1aに相当)とは上下に重なっており、通孔4aはその間に配置されるようになっている。また、第4の層L4の溝2bの先端部と第2の層L2の溝2aの他端部とは上下に重なっており、通孔4bはその間に配置されるようになっている。通孔4aは、第2の流路に接続する第1の流路CH1の接続部CH1aの開口を構成する。また、通孔4bは、狭小区間CH1b及び該区間を除く第1の流路CH1を繋ぐ。
【0083】
マイクロ流体チップ1の蓋となる第5の層L5には、ポート孔5b〜5fがそれぞれ層を貫通して形成されている。ポート孔5b〜5fは、第4の層L4のポート孔3b〜3fに重なってポートPT1〜PT5をそれぞれ構成し、外部から各ポートPT1〜PT5への接続を提供する。
【0084】
次に、マイクロ流体チップ201の使用例を説明する。図13はマイクロ流体チップを含む反応装置の概略構成を示すブロック図であり、以下に説明するマイクロ流体チップの使用例では、マイクロ流体チップに分析対象物質としての抗原を含む検体液を供給し、マイクロ流体チップの流路内で抗原抗体反応を行って抗原を検出し、定量するものである。
【0085】
図13に示すように、マイクロ流体チップ201の第2のポートPT2には、抗原を含む未処理の検体液が投入される。
【0086】
第1の流路CH1の狭小区間CH1bは、検体液に含まれる抗原を特異的に吸着するプローブとしての抗体が固定され、抗原抗体反応を行う反応部とされている。
【0087】
第4の流路CH4には、抗原に結合する抗体を担持した標識物質としての蛍光微粒子が固定された前処理部CH4aが設けられている。第2の流路CH2に流れる検体液の一部は、第4の流路CH4に引き込まれて前処理部CH4aを流れ、その際に蛍光微粒子が抗原に結合し、処理済の検体液(第1の液)とされる。そして、第4の流路CH4に引き込まれることなく第2の流路CH2に残った未処理の検体液が、洗浄液(第2の液)とされる。
【0088】
反応装置211は、上記のマイクロ流体チップ201と、電磁バルブSV1〜SV5と、空気を作動流体とするポンプ12a,12bと、圧力センサ13と、液位置検出手段14と、蛍光検出手段15と、制御手段16と、を備えている。
【0089】
第1のポートPT1、及び第3のポートPT3は、それぞれポートパッド(不図示)及び配管を介して並列にポンプ12aに接続されている。ポンプ12aと第3のポートPT3とを接続する配管には電磁バルブSV1,SV3が介在し、また、電磁バルブSV2が電磁バルブSV3と並列に電磁バルブSV1に接続されている。第4のポートPT4、及び第5のポートPT5は、それぞれポートパッド(不図示)及び配管を介して並列にポンプ12bに接続されている。ポンプ12bと第4のポートPT4とを接続する配管には電磁バルブSV5が介在し、また、ポンプ12bと第5のポートPT5とを接続する配管には電磁バルブSV4が介在している。尚、第2のポートPT2は、常時、大気開放となっている。
【0090】
圧力センサ13は、ポンプ12aと第1のポートPT1との間に設けられ、第1のポートPT1に作用する圧力、即ち第1の流路CH1の内圧を検出する。
【0091】
液位置検出手段14は、第1〜第5の流路CH1〜CH5の適宜な位置において、その位置に検体液又は洗浄液の先端が到達したことを検出する。
【0092】
図示の例では、液の検出位置として、第4の流路CH4における適宜な位置に第1の検出位置PH1が設けられ、第5の流路CH5において収容部CH5aを第5のポートPT5側に下った位置に第2の検出位置PH2が設けられ、第1の流路CH1において狭小区間CH1bから第1のポートPT1側に若干下った位置に第3の検出位置PH3が設けられ、第3の流路CH3において第2の流路CH2に合流する手前の位置に第4の検出位置PH4が設けられ、また、第1の流路CH1において第1のポートPT1の手前の位置に第5の検出位置PH5が設けられている。
【0093】
制御手段16は、圧力センサ13から送出される測定信号、及び液位置検出手段14から送出される検出信号を受け、それらの信号などに基づいて適宜なタイミングでポンプ12a,12b及びバルブSV1〜SV5の動作を制御して、ポートPT1〜PT5を加圧、減圧、大気開放、密閉する。それにより、流路CH1〜CH5内で検体液及び洗浄液が自在に搬送される。
【0094】
上記の反応装置211を用いた検査シーケンスを説明する。図14〜図17は検査シーケンスの各ステップにおけるマイクロ流体チップの状態を示す平面図、図18は検査シーケンスの制御タイミング及び反応装置の各要素の状態を時間軸に沿って示すタイムチャートである。以下において、図18の制御タイミングV3−1〜V3−11と、図14〜図17の各ステップS3−1〜S3−22を対応させて説明する。
【0095】
マイクロ流体チップ201を用意し(S3−1)、マイクロ流体チップ1の第2のポートPT2に未処理の検体液を投入する(S3−2)。
【0096】
マイクロ流体チップ201を反応装置211にセットし、ポートPT1〜PT5にポートパッドをそれぞれ押し付ける。この時、各ポートパッドは大気開とされ、パッドの押し付けにより検体液が移動することはない。
【0097】
反応装置211のスタートスイッチが押されると(V3−1)、まず第4のポートPT4が減圧され、検体液が高速(例えば60μL/min)で第2の流路CH2に流れ、そして、検体液の先端側の一部は第4の流路CH4に引き込まれる。
【0098】
第4の流路CH4に引き込まれた検体液の先端が、第1の検出位置PH1に到達し、第1の検出位置PH1について液位置検出手段14がON状態になると(S3−3、V3−2)、第4のポートPT4は密閉され、第4の流路CH4に引き込まれた検体液は第4の流路CH4において、また、第2の流路CH2に残った検体液は第2の流路CH2において停止する。第4の流路CH4に引き込まれる検体液の量は、第1の検出位置PH1の位置を調節することにより、任意に設定され得る。
【0099】
第5のポートPT5が減圧され、第2の流路CH2にある検体液は、第4の流路CH4が分岐する第2の流路CH2の分岐部CH2cにおいて第4の流路CH4に引き込まれた検体液から分離されて、高速で(例えば60μL/min)で第5の流路CH5に流れる(S3−4〜S3−5)。分離されて第5の流路CH5に流れる検体液は、後の工程で、反応部である第1の流路CH1の狭小区間CH1bを洗浄するための洗浄液とされる。
【0100】
洗浄液の全てが第5の流路CH5に流入し、収容部CH5aに収容された洗浄液の先端が第2の検出位置PH2に到達し、第2の検出位置PH2について液位置検出手段14がON状態となると(S3−6、V3−3)、第5のポートPT5は密閉される。
【0101】
第2の検出位置PH2について液位置検出手段14がON状態となった後、所定時間(例えば10秒)第4のポートPT4が減圧され、第4の流路CH4に引き込まれている検体液が高速(例えば60μL/min)で第4のポートPT4側に送られ、前処理部CH4aに流れる(S3−7〜S3−8、V3−4)。前処理部CH4aに流れた検体液は、前処理部CH4aにおいて蛍光微粒子を抗原に結合させ、処理済の検体液(以下、単に検体液という)とされる。尚、蛍光微粒子の結合が促進されるよう、第4のポートPT4を交互に加減圧して、前処理部CH4a及びその近傍区間において、検体液を往復移動させている(S3−9〜S3−10、V3−5)。
【0102】
検体液の往復動作が終了した後(V3−6)、第4のポートPT4が加圧され、また、第1のポートPT1が減圧される。それにより、検体液は、高速(例えば60μ/min)で、第4の流路CH4から第2の流路CH2を経て第1の流路CH1に流れる(S3−11〜S3−15)。
【0103】
検体液の先端が、第1の流路CH1の狭小区間CH1bを通過して第3の検出位置PH3に到達し、第3の検出位置PH3における液位置検出手段14がON状態になると(V3−7)、第1のポートPT1及び第4のポートPT4は大気開放となり、検体液がその位置で停止する(S3−16)。この時に検体液の後端が第2の流路CH2にあるように、第3の検出位置PH3は設定される。
【0104】
第1のポートPT1が大気開放となって所定時間(例えば0.5秒)経過すると(V3−8)、第1のポートPT1が再び減圧され、検体液は、低速(例えば8μl/min)で第1の流路CH1に流れ、反応部である狭小区間CH1bにおいて所定時間(例えば5分間)抗原抗体反応が行われる(S3−17)。
【0105】
検体液の後端が、第1の流路CH1の狭小区間CH1bに流入すると、検体液が自動的に停止する(S3−18)。これは、狭小区間CH1bの断面積aが、第2の流路CH2の断面積Aよりも小さくなっており、狭小区間CH1bにおいて作用する毛管力が、搬送圧力よりも大きくなるためである。ポンプ12aは継続して吸引し続け、第1の流路CH1は徐々に減圧されるが、搬送圧力が狭小区間CH1bにおいて作用する毛管力よりも大きくなるまで検体液は停止している。
【0106】
そこで、第1の流路CH1の内圧の変動を圧力センサ13で測定することにより、検体液の後端が第1の流路CH1の狭小区間CH1bに流入したことを検出することができる。
【0107】
第1の流路CH1の内圧が所定圧力(例えば0.3kPa)まで減圧されると(V3−9)、検体液の後端が第1の流路CH1の狭小区間CH1bに流入したとして、第5のポートPT5が加圧される一方で第3のポートPT3が減圧され、第5の流路CH5の収容部CH5aに収容されている洗浄液が高速(例えば60μL/min)で第3の流路CH3に流れる(S3−19)。この時、第1のポートPT1及び第3のポートPT3は同一の圧力となるようにポンプ12aで吸引され、検体液が第1の流路CH1から第2の流路CH2に逆流することはない。
【0108】
洗浄液は、第5の流路CH5から第3の流路CH3に流れる過程で、検体液が流れた第2の流路CH2の一部の区間を経由することになるが、第2の流路CH2において第5の流路CH5が分岐する分岐部CH2dと第3の流路CH3が合流する接続部CH2aとは隣接していることから、その区間長は極短く、よって、該区間に付着した検体液の成分(蛍光微粒子)が洗浄液に混入することが最小限にとどめられる。
【0109】
検体液が第1の流路CH1で停止している間に、洗浄液の先端が第4の検出位置PH4に到達し、第4の検出位置PH4について液位置検出手段14がON状態になる(S3−20、V3−10)。ここで、第4の検出位置PH4が設けられている第3の流路CH3には、それ以前に液が流れておらず、空気と液体との屈折率変化に基づく反射光の光量変化から液体の有無を判定する検出方法において、より確実な検出が可能となる。そして、この時、第3の流路CH3が合流する第2の流路CH2の接続部CH2aは第5の流路CH5から連なる洗浄液で満たされており、第2の流路CH2は、その接続部CH2aにおいて第1の流路CH1に接続していることから、洗浄液は、気泡の介入なく検体液の後端に合流している。
【0110】
第4の検出位置PH4について液位置検出手段14がON状態になった後、第3のポートPT3は密閉され、第1のポートPT1のみ減圧される。洗浄液が、気泡の介入なく検体液に連なって、低速(例えば8μL/min)で狭小区間CH1bに流れ、反応部である狭小区間CH1bの洗浄が行われる(S3−21)。それにより、未反応の抗原及び蛍光微粒子は狭小区間CH1bから排出される。
【0111】
洗浄液には抗原が含まれているが、それらの抗原には蛍光微粒子が結合しておらず、また、前記のとおり第2の流路CH2に残留した検体液の成分(蛍光微粒子)の洗浄液への混入は最小限にとどめられている。よって、洗浄の際に、洗浄液に含まれる抗原が狭小区間CH1bにおいて抗原抗体反応により吸着されたとしても、それらの抗原が蛍光検出手段15によって検出されることはなく、検体液に含まれる抗原の検出、定量に影響を生じない。
【0112】
検体液及び洗浄液の全てが第1の流路CH1において狭小区間CH1bより下流に流れ、液の先端が第5の検出位置PH5に到達し、第5の検出位置PH5について液位置検出手段14がON状態になると(V3−11)、ポンプ12aが停止し、液が停止する(S3−22)。
【0113】
そして、蛍光検出手段15により、反応部である第1の流路CH1の狭小区間CH1bに存在する蛍光微粒子を検出、定量し、それに基づいて抗原を検出、定量する。洗浄液が、気泡の介入なく洗浄液に連なって反応部である狭小区間CH1bを流れることで、検体液中で抗原に結合することなく単独で存在する蛍光微粒子が、反応部である狭小区間CH1bにおいて非特異的に吸着されることが抑制される。それにより、抗原の検出・定量の精度が向上する。
【0114】
さらに、第2の流路CH2に供給される未処理の検体液の一部を第4の流路CH4の前処理部CH4aに引き込んで処理し、これを処理済の検体液とするとともに、その余の未処理の検体液を洗浄液としているので、マイクロ流体チップ1に複数の液を供給する手間を省くことができ、作業効率が向上する。
【実施例】
【0115】
図1〜図3に示す構成のマイクロ流体チップを用い、上述した検査シーケンスを経た後に反応部に存在する標識物質を検出、定量した。
【0116】
マイクロ流体チップは、ポリスチレン製基板の第1の層(100×30×1mm)、両面粘着シートである第2の層(100×30×0.05mm)、アクリル製基板の第3の層(100×30×0.2mm)、表面に両面粘着シートを貼付したアクリル製基板の第4の層(100×30×0.7mm)、アクリル製基板の第5の層(100×30×0.2mm)を順次積層して構成されている。各層には、上述のとおり第1〜第4の流路となる溝、及び第1〜第4のポートとなるポート孔がレーザー加工で形成されている。第1の流路の狭小区間は、幅2mm、深さ0.05mmに形成されており、また、反応部とされている。第1の流路に接続する第2の流路は、幅2mm、深さ0.7mmに形成されている。
【0117】
以上の第1〜第5の層を下記の手順により積層した。
1)第1の層には、前処理として、蒸留水で洗浄を行い、乾燥させた後、UVオゾン処理を行う。
2)第1の層と第2の層を、第2の層がチップの上層となるように積層する。
3)第1の層と第2の層を積層して形成した第1の流路の狭小区間の底面部分に、分析対象物質を特異的に吸着するためのプローブを固定する。その後、非特異的吸着を抑制するためのブロッキング処理、固定されたプローブの活性を維持するためのイムノスタビライザー処理を施す。
4)第3〜第5の層にはそれぞれブロッキング処理を施す。
5)第2の層の上に、さらに第3〜第5の層を順次積層する。
【0118】
分析対象物質をhCG抗原とし、反応部に固定されるプローブには抗hCG抗体を用いた。検体液には、抗hCG抗体を担持したポリスチレン製蛍光微粒子(Yellow Green、φ500nm)を標識物質として含むものを用いた。この検体液には、hCG抗原は含まれておらず、よって、マイクロ流体チップの反応部に存在する蛍光微粒子は、非特異的に吸着されたものである。尚、洗浄液にはPBS−T溶液を用いた。
【0119】
上述した検査シーケンスにて反応を行った場合、即ち、検体液と洗浄液との間に気泡が介入していない場合(実施例)、及び従来手法のように検体液と洗浄液との間に気泡が介入している場合(比較例)について、反応部に非特異的に吸着された蛍光微粒子を定量した。結果を図19に示す。
【0120】
図19に示すとおり、検体液と洗浄液との間に気泡が介入していない場合(実施例)に、蛍光微粒子の非特異的吸着は、検体液と洗浄液との間に気泡が介入している場合(比較例)の1/10以下になっており、よって、分析対象物質の検出・定量の精度が向上する。
【0121】
以上、分析対象物質を抗原とし、これを抗原抗体反応により特異的に吸着して検出、定量するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、分析対象物質を核酸とし、これをハイブリダイゼーションにより特異的に吸着して検出、定量するものにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の実施形態を説明するためのマイクロ流体チップの一例の平面図である。
【図2】図1のマイクロ流体チップを分解して示す平面図である。
【図3】図1のマイクロ流体チップのIII-III線断面図である。
【図4】図1のマイクロ流体チップを含む反応装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図4の反応装置による検査シーケンスの各ステップにおけるマイクロ流体チップの状態を示す平面図である。
【図6】図4の反応装置による検査シーケンスの各ステップにおけるマイクロ流体チップの状態を示す平面図である。
【図7】図4の反応装置による検査シーケンスの各ステップにおけるマイクロ流体チップの状態を示す平面図である。
【図8】図4の反応装置による検査シーケンスの各ステップにおけるマイクロ流体チップの状態を示す平面図である。
【図9】図4の反応装置による検査シーケンスの制御タイミング及び反応装置の各要素の状態を時間軸に沿って示すタイムチャートである。
【図10】反応部における抗原抗体反応を示す模式図である。
【図11】本発明の実施形態を説明するためのマイクロ流体チップの一例の平面図である。
【図12】図11のマイクロ流体チップを分解して示す平面図である。
【図13】図11のマイクロ流体チップを含む反応装置の概略構成を示すブロック図である。
【図14】図13の反応装置による検査シーケンスの各ステップにおけるマイクロ流体チップの状態を示す平面図である。
【図15】図13の反応装置による検査シーケンスの各ステップにおけるマイクロ流体チップの状態を示す平面図である。
【図16】図13の反応装置による検査シーケンスの各ステップにおけるマイクロ流体チップの状態を示す平面図である。
【図17】図13の反応装置による検査シーケンスの各ステップにおけるマイクロ流体チップの状態を示す平面図である。
【図18】図13の反応装置による検査シーケンスの制御タイミング及び反応装置の各要素の状態を時間軸に沿って示すタイムチャートである。
【図19】実施例及び比較例の蛍光微粒子の定量結果を示すグラフである。
【0123】
101,201 マイクロ流体チップ
111,211 反応装置
12a,12b ポンプ(送液手段)
13 圧力センサ(圧力測定手段)
16 制御手段
CH1 第1の流路
CH1a 第2の流路に接続する接続部
CH1b 狭小区間
CH2 第2の流路
CH2a 第1の流路に接続する接続部
CH2c 第4の流路が分岐する分岐部
CH2d 第5の流路が分岐する分岐部
CH3 第3の流路
CH4 第4の流路
CH4a 前処理部
CH5 第5の流路
CH5a 収容部
PT1 第1のポート
PT2 第2のポート
PT3 第3のポート
PT4 第4のポート
PT5 第5のポート
SV1 電磁バルブ(送液手段)
SV2 電磁バルブ(送液手段)
SV3 電磁バルブ(送液手段)
SV4 電磁バルブ(送液手段)
SV5 電磁バルブ(送液手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流路において分析対象物質を特異的に吸着する吸着反応を行う反応方法であって、
前記第1の流路に接続した第2の流路に前記分析対象物質を含む液を流す工程と、
前記第2の流路に流れる前記液の一部を、該第2の流路から分岐した第4の流路に引き込み、該第4の流路において該液に含まれる前記分析対象物質に標識物質を結合させて検体液とする工程と、
前記第2の流路に残る前記液の残部を洗浄液として、該洗浄液を前記第2の流路から退避させる工程と、
前記検体液を前記第2の流路を経て前記第1の流路に送液する工程と、
前記検体液の後端が前記第1の流路に流入したことを検出し、該検体液の送液を停止させる工程と、
前記第2の流路から退避させた前記洗浄液を、前記第1の流路に接続する前記第2の流路の接続部に合流した第3の流路に流し、該第1の流路に停止する前記検体液の後端に該洗浄液を合流させる工程と、
前記検体液の後端に前記洗浄液が合流した後に該洗浄液を前記第1の流路に送液する工程と、
を備える反応方法。
【請求項2】
請求項1記載の反応方法であって、
前記第3の流路が合流した前記第2の流路の前記接続部と前記第4の流路が分岐した該第2の流路の分岐部との間で該第2の流路から分岐して延びる第5の流路に、前記洗浄液を退避させる反応方法。
【請求項3】
請求項2記載の反応方法であって、
前記第3の流路が合流した前記第2の流路の前記接続部と前記第5の流路が分岐した該第2の流路の分岐部とが隣接している反応方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の反応方法であって、
前記第1の流路に、前記第2の流路との接続部から続く区間であって、その断面積aが該第2の流路の断面積Aよりも小さい狭小区間を設け、
前記第1の流路の内圧の変化に基づいて、前記検体液の後端が該第1の流路に流入したことを検出する反応方法。
【請求項5】
請求項4記載の反応方法であって、
前記狭小区間の断面積aは、前記第2の流路の断面積Aの2/5〜1/300である反応方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項記載の反応方法であって、
前記第2の流路に接続する前記第1の流路の接続部の開口が、該第2の流路の一面にあって該面のエッジから離れた位置にある反応方法。
【請求項7】
第1〜第4の流路、及びこれら第1〜第4の流路の基端部にそれぞれ設けられた第1〜第4のポートを含むマイクロ流体チップと、
前記第1〜第4のポートにそれぞれ圧力を作用させ、前記第1〜第4の流路に送液する送液手段と、
前記送液手段を駆動する制御手段と、
を備え、
前記第1の流路及び前記第2の流路は、それらの先端部において互いに接続し、前記第3の流路は、前記第1の流路に接続する前記第2の流路の接続部に合流し、前記第4の流路は、前記第2の流路から分岐しており、
前記第1の流路は、分析対象物質を特異的に吸着する吸着反応を行い、前記第4の流路は、前記分析対象物質に標識物質を結合させる前処理を行い、
前記制御手段は、前記分析対象物質を含み前記第2の流路に流れる液の一部を前記第4の流路に引き込んで前記前処理が施された検体液とし、該第2の流路に残る前記液の残部を洗浄液として該洗浄液を該第2の流路から退避させた後に、前記検体液を該第2の流路を経て前記第1の流路に送液し、該検体液の後端が該第1の流路に流入したことを検出して、該検体液の送液を停止させると共に該第2の流路から退避させた前記洗浄液を前記第3の流路に流して該洗浄液を該第1の流路に停止する該検体液の後端に合流させ、該検体液の後端に該洗浄液が合流した後に該洗浄液を該第1の流路に送液する反応装置。
【請求項8】
請求項7記載の反応装置であって、
前記マイクロ流体チップは、前記第3の流路が合流した前記第2の流路の前記接続部と前記第4の流路が分岐した該第2の流路の分岐部との間で該第2の流路から分岐して延びる第5の流路をさらに含み、
前記制御手段は、前記洗浄液を前記第5の流路に退避させる反応装置。
【請求項9】
請求項8記載の反応装置であって、
前記第3の流路が合流した前記第2の流路の前記接続部と前記第5の流路が分岐した該第2の流路の分岐部とが隣接する反応装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項記載の反応装置であって、
前記第1のポートに作用する圧力を測定する圧力測定手段をさらに備え、
前記第1の流路が、前記第2の流路との接続部から続く区間であって、その断面積aが該第2の流路の断面積Aよりも小さい狭小区間を有しており、
前記制御手段は、前記圧力測定手段から送出される測定信号に基づいて、前記検体液の後端が前記第1の流路に流入したことを検出する反応装置。
【請求項11】
請求項10記載の反応装置であって、
前記狭小区間の断面積aは、前記第2の流路の断面積Aの2/5〜1/300である反応装置。
【請求項12】
請求項7〜請求項11のいずれか一項記載の反応装置であって、
前記第2の流路に接続する前記第1の流路の接続部の開口が、該第2の流路の一面にあって該面のエッジから離れた位置にある反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−85128(P2010−85128A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251876(P2008−251876)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】