説明

反応炉

【課題】従来よりも平均熱流速を高めることができる高温空気燃焼技術を用いた反応炉を提供することにある。
【解決手段】熱交換型燃焼用空気供給装置5から供給される燃焼用空気を用いて、反応炉内に燃焼ガス流体を流すガス流路11を形成する。ガス流路11の長さが、複数の加熱用バーナ9から噴射されてガス化した燃料が熱交換型燃焼用空気供給装置5を通して炉外に排出される前にガス流路11内で実質的に完全燃焼し得る長さになるように、炉本体1の内部構造を構成する。ガス流路11は、複数の反応管3のすべてと部分的に交差しながら蛇行して流れる蛇行ガス流路部分13を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温空気燃焼技術を用いた反応炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平11−179191号公報(特願平9−357263号)には、複数の反応管における反応効率を向上させる技術が開示されている。この技術では、複数の反応管によりそれぞれ構成された複数の反応管列が横に並べられた炉内の温度を、高温空気燃焼型蓄熱式燃焼装置を用いて上昇させる。
【0003】
また特開2001−152166号公報(特願平11−343624号)には、高温空気燃焼技術を用いた反応炉に関する技術が開示されている。この技術では、燃焼室を大型化することなく、反応管列が配置される炉内の温度場の温度差をできるだけ小さくすることができる。
【0004】
さらに特開2004−257697号公報にも、反応管の割れやコーキングを発生させることなく、反応炉内の温度差を小さくすることができる高温空気燃焼技術を用いた反応炉の燃焼制御技術が示されている。この技術では、最初に高温空気燃焼状態を発生する主たるバーナの他に、隣接する2本以上の反応管の間に形成された空間に反応管が延びる方向に向かって燃料を噴射するように、複数のバーナを配置している。そして燃焼室内の排気ガスを通気性を有する蓄熱体を通して炉外に排出し、蓄熱体の顕熱で高温に加熱した燃焼用空気をバーナに供給する燃焼用空気供給装置を設けている。
【特許文献1】特開平11−179191号公報[図]
【特許文献2】特開2001−152166号公報[図]
【特許文献3】特開2004−257697号公報[図]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高温空気燃焼技術を用いると、反応炉内の温度差をできるだけ小さくすることができる。しかしながら、従来提案されている技術では、反応管下部の管壁温度を上げることなく、反応炉全体の平均熱流速を高めることに限界があった。
【0006】
本発明の目的は、従来よりも反応炉全体の平均熱流速を高めることができる高温空気燃焼技術を用いた反応炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の高温空気燃焼技術を適用する反応炉は、炉壁によって囲まれた燃焼室を内部に有する炉本体と、炉壁の対向する一対の壁部間に設置されて同じ方向に延びるように並設された複数の反応管と、燃焼室内の燃焼ガスを通気性を有する蓄熱手段を通して炉外に排出し且つ蓄熱手段の顕熱で高温に加熱した燃焼用空気を複数の反応管が延びる方向と交差する方向に前記燃焼室内に供給する熱交換型燃焼用空気供給装置とを備えている。そして複数の反応管の間に形成される空間に反応管が延びる方向に向かって燃料を噴射するように一対の壁部の一方の壁部に複数の加熱用バーナを備えている。本発明においては、炉本体の内部構造を、燃焼室内において熱流速を局所的に増加させたい部分を燃焼ガス流体が通過するように構成する。すなわち内部構造によって、燃焼ガス流体を燃焼室内の所望の箇所に局所的に誘導することが可能になり、部分的な熱流速分布の制御を可能にする。すなわち燃焼ガス流体を反応管全体と適当に接触させることを可能にして、反応管の長手方向に沿った熱流速分布を適当なものとすることを可能にする。その結果、反応管下部の管壁温度を必要以上に上げることなく、燃焼室全体の平均熱流速を増加させることができる。
【0008】
特に、燃焼ガス流体を流すガス流路の長さが、複数の加熱用バーナから噴射されてガス化した燃料が熱交換型燃焼用空気供給装置を通して炉外に排出される前にガス流路内で実質的に完全燃焼し得る長さになるように炉本体の内部構造を構成するのが好ましい。このようにすると、燃料を無駄なく反応管の加熱に利用することができるので、伝熱効率すなわち平均熱流速を従来よりも数十%向上させることができる。
【0009】
ここで伝熱効率とは、燃料の燃焼によって得られる供給熱量に対して被加熱物が受熱した熱量の比をいう。また「平均熱流速」とは、反応管単位面積あたりに通過する熱量の平均値と定義される。
【0010】
なお一般的に、複数の反応管は炉本体内の燃焼室を囲む炉壁の対向する一対の炉壁間(例えば底壁と天井壁との間)に直接または支持構造を介して取り付けられている。燃焼用空気は、一般的に蓄熱体の顕熱で800℃以上の高温に加熱される。なお熱交換型燃焼用空気供給装置に、燃焼用空気を加熱するための1以上の燃焼用空気加熱用バーナを設けてもよい。このようにすると燃焼用空気を更に高温まで加熱することができる。熱交換型燃焼用空気供給装置とバーナとが組み合わされた装置は、高温空気燃焼型蓄熱式バーナと呼ばれている。この高温空気燃焼型蓄熱式バーナとしては、例えば特開平11−223335号公報及び特開2000−39138号公報等に示されている周知の連続燃焼式蓄熱バーナシステムを用いることができる。この種の連続燃焼式蓄熱バーナシステムでは、1台のバーナ内部に分割した蓄熱体を有し、一部の蓄熱体に燃焼用空気を供給し、同時に他の部分の蓄熱体は燃焼ガスを吸引して蓄熱を行う。空気供給及び燃焼ガス排出の流路は一定周期で切り換えられ、1台のバーナシステム内部で蓄熱/放熱が繰り返される。高温空気の吐出口は切換と共に周方向に移動する。しかし燃料は1本のバーナから連続的に供給できる。また高温空気燃焼型蓄熱式バーナは、いわゆる交番式蓄熱バーナを用いて構成することもできる。交番式蓄熱バーナは、1つの蓄熱体全体に燃焼用空気と排気ガスとを交互に流して、燃焼用空気を蓄熱体の顕熱で加熱するものである。交番式蓄熱バーナには、大別してバーナの燃焼を連続する連続燃焼タイプと、バーナの燃焼を断続する断続燃焼タイプとがある。連続燃焼タイプのものは、例えば特開平5−256423号公報や特開平6−11121号公報に示されている。また断続燃焼タイプの一例は、特開平1−222102号公報に示されている。
【0011】
特に本発明が対象とする反応炉は、複数の反応管の隣接する2本以上の反応管の間に形成される空間に反応管が延びる方向に向かって燃料を噴射する複数の加熱用バーナを備えている。複数の加熱用バーナを、複数の反応管の集合体の内部に配置すれば、外側に位置する反応管の陰に位置する内側の反応管に対しても加熱用バーナからの熱を加えることができる。そのため、複数の反応管の集合体の内部における温度場をコントロールすることができ、反応炉内の温度差を小さくすることができる。
【0012】
しかしながら複数の加熱用バーナから噴射された燃料を加熱用バーナの近傍ですべて積極的に燃焼させると、複数の加熱用バーナからの熱が温度場内に大きな温度差を生じさせたり、反応管の局部過熱を生じさせる。そこで本発明では、熱交換型燃焼用空気供給装置から供給される燃焼用空気を用いて、反応炉内に燃焼ガス流体を流すガス流路を形成する。そして炉本体の内部構造を、燃焼室内において熱流速を局所的に増加させたい部分を燃焼ガス流体が通過するように構成する。具体的には、ガス流路の長さが、複数の加熱用バーナから噴射されてガス化した燃料が熱交換型燃焼用空気供給装置を通して炉外に排出される前にガス流路内で実質的に完全燃焼し得る長さになるように、炉本体の内部構造を構成する。その結果、反応管に局部加熱を生じさせることなく、燃料をほぼ完全燃焼させることができて、伝熱効率または平均熱流速を高めることができる。
【0013】
なお加熱用バーナとしては、最高ガス温度が500℃以上となる部分燃焼火炎を形成する構造を有しているものを用いるのが好ましい。また加熱用バーナから供給される燃料の量は、加熱用バーナを配置した領域から下流側に位置するガス流路内でも、未燃焼ガスが燃焼する程度に定められている。
【0014】
なお複数の反応管は、隣接する他の反応管との距離が等しくなるように配置し、複数の加熱用バーナを、隣接する複数の反応管との間の距離が等しくなるように配置すると、複数の反応管の内部の温度場をより均一なものに近づけることができる。
【0015】
具体的な本発明の反応炉の一例では、炉本体の内部構造を、内部に環状のガス流路が形成されるように構成する。そして熱交換型燃焼用空気供給装置は、環状の燃焼室内に一方向に向かって燃焼用空気を流し、環状の燃焼室を一方向に流れる前記燃焼ガスを炉外に排出するように配置し、複数の加熱用バーナをガス流路の上流側に配置する。このようにすると簡単な構造で、ガス流路の上流側から下流側に向かって加熱用バーナから出た燃料の未燃焼ガスの燃焼をスムーズに広げることができる。
【0016】
また具体的な本発明の反応炉の他の例では、熱交換型燃焼用空気供給装置を、複数の加熱用バーナが設けられた一方の壁部に沿って燃焼用空気を流すように配置する。そして炉本体の内部構造を、ガス化した燃料が、炉本体の一方の壁部から該一方の壁部と対向する他方の壁部に向かって複数の反応管のすべてと部分的に交差しながら蛇行して流れる蛇行ガス流路部分を含むガス流路を形成するように構成することができる。このようにすると蛇行して流れる蛇行ガス流路部分の上流側から下流側に向かって、加熱用バーナから出た燃料の未燃焼ガスの燃焼が継続し、未燃焼ガスは熱交換型燃焼用空気供給装置に到達するまでに徐々に少なくなる。その結果、反応管への熱束の流入量は、上流側ほど大きくなり、下流側では少なくなる。すなわち反応管の反応流体の入り口側の部分(ガス流路の上流側に位置する反応管の部分:加熱用バーナが設けられている壁部寄りの部分)での反応管への熱束の流入量を大きなものとすることができ、反応管の反応流体の出口側の部分(ガス流路の下流側に位置する反応管の部分:加熱用バーナが設けられている壁部と反対側の壁部寄りの部分)での反応管への熱束の流入量を小さいものとすることができる。このようなことから反応管の長手方向に沿って見た熱束の分布は、反応管の入り口寄りの領域(ガス流路の上流側に位置する領域)でピークを持ち、反応管の出口寄りの領域(ガス流路の下流側に位置する領域)では徐々に熱束が減少する熱束分布パターンになる。このような熱束分布パターンは、従来の高温空気燃焼技術を用いた反応炉では、得ることができなかったものである。なお反応管の長手方向に沿って見た管壁から管内に入る熱束の分布は、加熱用バーナが位置する側の端部から約1/3の範囲内おいてピークが現れるように熱束が増加し、残りの約2/3の範囲内で熱束が減少するように、複数の仕切壁構造物を設置するのが好ましい。このようにすると反応効率と伝熱効率とを共に高めることができる。
【0017】
炉本体の内部に、蛇行ガス流路部分を形成するためには、例えば、加熱用バーナが設けられる一方の壁部から他方の壁部に向かって所定の間隔をあけて複数の仕切壁構造物を蛇行ガス流路部分を形成するように設置する。これら複数の仕切壁構造物には、複数の反応管の少なくとも一部が緩く貫通する複数の貫通孔をそれぞれ形成する。複数の反応管の外壁部には、仕切壁構造物に設けた貫通孔の周囲を囲む仕切壁構造物の一部と接触して仕切壁構造物を支持する支持用構造部を設ける。このようにすると高温になる仕切壁構造物と反応管との間に熱膨張に伴う無理な応力が発生するのを防止して、仕切壁構造物を支持することができる。なお複数の仕切壁構造物は、前述の蛇行して流れる蛇行ガス流路部分を形成できるものであればよく、仕切壁構造物の上下方向に位置する空間を完全に仕切る必要はない。
【0018】
このように仕切壁構造物を設けて、流路を固定化することにより、高温の燃焼ガスを効果的に加熱したい箇所に誘導することが可能になる。また後述する輻射熱放射体や加熱用バーナの効果的な使用により、さらなる局所的な熱流速分布の制御が可能となり、平均熱流速を高めることができる。
【0019】
またガス流路は、蛇行ガス流路部分を通過した燃焼ガスが熱交換型燃焼用空気供給装置に至るまでの連絡用ガス流路を含んでいてもよいのは勿論である。またこの連絡用ガス流路を形成するために、反応炉の燃焼室の内部に燃焼室を仕切る別の仕切壁構造物を配置してもよいのは勿論である。
【0020】
また複数の反応管の間に形成された空間内には、燃焼ガス流体によって加熱されて輻射熱を放射する輻射熱放射体を、複数の反応管が径方向外側から実質的に均等加熱されるように配置してもよい。このような輻射熱放射体を設けると、反応流体の反応を均一に行うことができて反応効率を高めることができる。なお前述のように蛇行ガス流路部分を設ける場合には、前述の約1/3の範囲内にある複数の反応管の間に形成された空間内に、輻射熱放射体を配置すればよい。下流側の約2/3の範囲内にある複数の反応管の間に輻射熱放射体を配置することは必ずしも必要がない。これはすでに上流側の約1/3の範囲内においてある程度必要な反応は終了しているからである。
【0021】
熱交換型燃焼用空気供給装置は、伝熱効率を高め且つ反応効率を高めるためには、燃焼用空気を800℃以上に加熱することが好ましい。また熱交換型燃焼用空気供給装置に燃焼用空気加熱用バーナを設けた場合、燃焼用空気加熱用バーナからの燃焼ガス流体の噴き出し線速度及び燃焼用空気の噴き出し線速度を、30〜150m/秒とし、その上でガス流路内を流れる燃焼ガス流体の線速度が5〜30m/秒になるように、炉本体の内部構造を定めるのが好ましい。このようにすると伝熱効率を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱流速分布を制御できるような燃焼ガス流体の流路を燃焼室内に形成することで、反応管に局部加熱を生じさせることなく、また燃料をほぼ完全燃焼させることができて、伝熱効率または平均熱流速を高めることができる利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明を試験用の改質用反応炉に適用した実施の形態の一例の構成を概略的に示す図である。図1において、符号1で示したものは、内部に燃焼室2を有する炉本体である。炉本体1は、一対の壁部を構成する底壁(炉床)1a及び上壁(炉天井)1bと、幅方向(図1の紙面で見た前後方向)に位置する一対の壁部を構成する側壁(図示せず)と、横方向(図1の紙面で見た左右方向)の一対の壁部を構成する側壁1c及び1dとを備えている。
【0024】
炉本体1の底壁(炉床)1aは、実際には図示しない支持構造部によって支持されている。炉本体1の底壁1aと上壁1bとを貫通するように、複数本の反応管3が配置されている。この実施の形態では、8本の反応管3からなる反応管列と、7本の反応管3からなる反応管列とが、互い違いになるように並設されている。図2にその一部を示すように、隣り合う2本の反応管列で見た場合、各反応管が千鳥状に並ぶように、複数の反応管列は並設されている。図2に見られるように、隣り合う他の反応管との間の距離はほぼ等しくなるように複数の反応管3は配置されている。
【0025】
炉本体1の側壁1dには、上壁1b寄りの位置に熱交換型燃焼用空気供給装置5が取り付けられている。熱交換型燃焼用空気供給装置5は、燃焼室内の燃焼ガスを通気性を有する図示しない蓄熱手段を通して炉外に排出し且つ蓄熱手段の顕熱で高温に加熱した燃焼用空気を複数の反応管が延びる方向と交差する方向に燃焼室内に供給する。なお本実施の形態では、熱交換型燃焼用空気供給装置5として、燃焼用空気を加熱するための複数の燃焼用空気加熱用バーナ7(図3参照)とその近傍に燃焼用空気加熱用の2つの蓄熱体8を設けた連続燃焼式蓄熱バーナと同じ構造のものを用いている。したがって燃焼用空気は、蓄熱対8で加熱されるだけでなく、燃焼用空気加熱用バーナ7からの火炎によっても更に高温(約850℃以上)まで加熱される。なお連続燃焼式蓄熱バーナの構造は、特開平11−223335号公報及び特開2000−39138号公報等に詳細に開示されているので説明は省略する。熱交換型燃焼用空気供給装置5の後方には、ダクト構造体が設けられている。このダクト構造体は、燃焼用空気を供給する図示しない空気ダクトと排気ガスを排出する排気ガスダクトとを備えている。更にこのダクト構造体の後方には、燃焼用空気を空気ダクトに送り込む押し込み送風機と排気ガスを排気ガスダクトから引き出す誘引送風機とが配置されている。なお図1乃至図3においては、燃焼用空気加熱用バーナ7によって加熱された燃焼用空気の流れ及び燃焼ガスの流れを実線または破線の矢印で示している。
【0026】
図3に示すように、本実施の形態の反応炉では、複数本の反応管3中の隣接する2本以上の反応管の間に形成される空間に反応管3の管軸方向に向かって燃料を噴射するように、複数本の加熱用バーナ9(図1参照:図3には図示せず)がそれぞれ配置されている。これらの加熱用バーナ9は、複数の反応管3が設置されている上壁1bの固定領域にそれぞれ固定されている。熱交換型燃焼用空気供給装置5から複数の加熱用バーナ9に供給される空気量は、複数の加熱用バーナ9から供給される燃料流量に対する理論燃料空気量の20%未満にする。そしてこの空気量は、好ましくは15%未満、より好ましくは4〜10%にすることがよい。なお本実施の形態では、熱交換型燃焼用空気供給装置5を、複数の加熱用バーナ9が設けられた上壁1b(一方の壁部)に沿って燃焼用空気を流すように配置している。
【0027】
また炉本体1の内部構造は、燃焼室内において熱流速を局所的に増加させたい部分を燃焼ガス流体が通過するように構成されている。別の見方をすると、燃焼室内に燃焼ガス流体を流すガス流路11の長さが、複数の加熱用バーナ9から噴射されてガス化した燃料が、熱交換型燃焼用空気供給装置5を通して炉外に排出される前にガス流路11内で実質的に完全燃焼し得る長さになるように、炉本体の内部構造が定められている。具体的には、炉本体1の内部構造を、ガス化した燃料が、炉本体1の上壁1bから底壁1aに向かって複数の反応管3のすべてと部分的に交差しながら蛇行して流れる蛇行ガス流路部分13を含むガス流路11を形成するように構成している。すなわちこの例では、炉本体1の内部に、蛇行ガス流路部分13を形成するために、加熱用バーナ9が設けられた上壁1bから底壁1aに向かって所定の間隔をあけて3枚の仕切壁構造物15,17及び19を蛇行ガス流路部分13を形成するように設置している。これら複数の仕切壁構造物には、複数の反応管の少なくとも一部が緩く貫通する複数の貫通孔をそれぞれ形成する。最も上の仕切壁構造物15は、炉本体1の内部に配置された仕切壁部21にその一端(基部)が近接し、また他端(先端)と側壁1cとの間に通路が形成さるように配置されている。そして仕切壁構造物15の残りの2辺は、炉本体1の幅方向(図1の紙面で見た前後方向)に位置する一対の壁部を構成する側壁(図示せず)と近接している。最も下の仕切壁構造物19も仕切壁構造物15と同様に配置されている。中央の仕切壁構造物17は、側壁1cにその一端(基部)が近接し、他端(先端)と仕切壁部21との間に通路が形成されるように配置されている。そして仕切壁構造物17の残りの2辺は、炉本体1の幅方向(図1の紙面で見た前後方向)に位置する一対の壁部を構成する側壁(図示せず)と近接している。仕切壁構造物21と炉本体1の上壁1bとの間、仕切壁部21と炉本体の底壁1aとの間には、ガス流路11の一部を構成する通路23,24が形成されている。そして本実施の形態では、仕切壁構造物21と側壁1dとの間には、蛇行ガス流路部分13を通過した燃焼ガスが熱交換型燃焼用空気供給装置5に至るまでの連絡用ガス流路14が形成されている。
【0028】
本実施の形態では、例えば図4に示すように、複数の貫通孔26が形成された耐熱鋼板25を複数枚並べて仕切壁構造物15〜19を構成している。そして図5に示すように、複数の反応管3の外壁部には、仕切壁構造物15〜19に設けた貫通孔26の周囲を囲む仕切壁構造物15の一部と接触して仕切壁構造物15〜19を支持する支持用構造部27を一体に設けてある。この支持用構造部27は、ピン状の部材を反応管3の表面に溶接により固定することにより構成されている。このような構造を用いると、高温状態において仕切壁構造物15〜19と反応管3との間に熱膨張に伴う無理な応力が発生するのを確実に防止して、仕切壁構造物15〜19を支持することができる。
【0029】
また本実施の形態では、複数の反応管3の間に形成された空間内には、燃焼ガス流体によって加熱されて輻射熱を放射する輻射熱放射体29を、複数の反応管が径方向外側から実質的に均等加熱されるように配置してある。特にこの例では、反応管の上流側(上壁1b)から約1/3の範囲内にある複数の反応管3の間に形成された空間内に、輻射熱放射体29を配置している。この輻射熱放射体29は、金属製のチェーン、パンチングメタル及び金網等の通気性を有する耐熱性材料により構成することができる。なお図2には、輻射放射体29からの固体輻射の様子を矢印で示してある。
【0030】
本実施の形態によれば、蛇行ガス流路部分13の上流側から下流側に向かって、加熱用バーナ9から出た燃料の未燃焼ガスの燃焼が継続し、未燃焼ガスは熱交換型燃焼用空気供給装置5に到達するまでに徐々に少なくなる。その結果、反応管3への熱束の流入量は、上流側ほど大きくなり、下流側では少なくなる。すなわち反応管3の反応流体の入り口側の部分(ガス流路11の上流側に位置する反応管3の部分:加熱用バーナ9が設けられている上壁1b寄りの部分)での反応管3への熱束の流入量を大きなものとすることができる。反応管3の反応流体の出口側の部分(ガス流路11の下流側に位置する反応管3の部分:炉本体1の底壁1a寄りの部分)での反応管3への熱束の流入量を小さいものとすることができる。このようなことから本実施の形態では、反応管3の長手方向に沿って見た熱束(ヒートフラックス)の分布は、反応管3の入り口寄りの領域(ガス流路の上流側に位置する領域)でピークを持ち、反応管の出口寄りの領域(ガス流路の下流側に位置する領域)では徐々に熱束が減少する熱束分布パターンになる。このような熱束分布パターンは、従来の高温空気燃焼技術を用いた反応炉では、得ることができなかったものである。なお反応管3の長手方向に沿って見た管壁から管内に入る熱束の分布は、加熱用バーナ9が位置する側の反応管3の端部から約1/3の範囲内おいてピークが現れるように熱束が増加し、残りの約2/3の範囲内で熱束が減少するように、複数の仕切壁構造物を設置するのが好ましい。このようにすると反応効率と伝熱効率または平均熱流速とを共に高めることができる。ちなみ試験的に反応管3の本数を20本として、反応管3の長さを4mとし、燃焼用空気の導入線速度及び燃焼用空気加熱用バーナ7からの燃焼の噴き出し線速度を100m/秒、炉内部の加熱用バーナ9からの燃料の噴き出し線速度を15m/秒とした場合の熱交換効率は従来と比べて約30%アップすることが試験により確認された。このときの入熱量の上昇は約27%で圧力損失は0.01〜0.02kg/cmであった。
【0031】
なおシミュレーションによると、本実施の形態におけるガス流路11を流れるガスの流れは複雑で、図1乃至図3に示した矢印の方向に燃焼ガスが流れるだけでなく、一部の燃焼ガスは矢印と逆の方向に流れる。特に仕切壁構造物15と仕切壁構造物17との間に形成される空間からは、一部の燃焼ガスが逆方向に流れる。また2つの仕切壁構造物(15〜19)間に形成された空間内を循環する流れも生じることがある。このような複雑なガスの流れがあったとしても、特に本実施の形態から得られる効果に大きな影響はない。
【0032】
また本実施の形態では、熱交換型燃焼用空気供給装置5は、伝熱効率を高め且つ反応効率を高めるために、燃焼用空気を800℃以上に加熱することが好ましい。また熱交換型燃焼用空気供給装置5に燃焼用空気加熱用バーナ7を設けた場合、燃焼用空気加熱用バーナ7からの燃焼ガス流体の噴き出し線速度及び燃焼用空気の噴き出し線速度を、30〜150m/秒とし、その上でガス流路内を流れる燃焼ガス流体の線速度が5〜30m/秒になるように、炉本体の内部構造を定めるのが好ましい。このようにすると伝熱効率または平均熱流速を更に高めることができることが確認されている。
【0033】
図6は、本発明の反応炉の他の実施の形態の構造を概念的に示す図である。この実施の形態では、炉本体1´の内部構造を、内部に環状のガス流路が形成されるように構成している。熱交換型燃焼用空気供給装置5´は、環状の燃焼室内に一方向に向かって燃焼用空気を流し、環状の燃焼室を一方向に流れる燃焼ガスを炉外に排出するように配置されている。複数の加熱用バーナ9´は、ガス流路の上流側に配置されている。また熱交換型燃焼用空気供給装置5´の燃焼用空気の出口と燃焼ガスの入り口との間には、燃焼用空気と燃焼ガスとが混合するのをできるだけ避けるために、仕切壁構造物31´が設置されている。この例では、反応管3´は紙面の前後方向に延びており、加熱用バーナ9´は紙面の後ろ側に向かって火炎を出す。また輻射熱放射体29´は、筒状に形成された金網によって構成されている。本実施の形態でも、簡単な構造で、ガス流路の上流側から下流側に向かって加熱用バーナ9´から出た燃料の未燃焼ガスの燃焼をスムーズに広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を試験用の改質用反応炉に適用した実施の形態の一例の構成を概略的に示す図である。
【図2】反応管の配列と加熱用バーナの配列の関係を示す図である。
【図3】反応管と熱交換型燃焼用空気供給装置の位置関係を示す図である。
【図4】仕切壁構造物を構成するために用いる耐熱鋼板の一例を示す図である。
【図5】仕切壁構造物の支持構造を示す図である。
【図6】本発明の反応炉の他の実施の形態の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 炉本体
1a 底壁
1b 上壁
3 反応管
5 熱交換型燃焼用空気供給装置
7 燃焼用空気加熱用バーナ
8 蓄熱体
9 加熱用バーナ
11 ガス流路
13 蛇行ガス流路部分
15,17,19 仕切壁構造物
29 輻射熱放射体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉壁によって囲まれた燃焼室を内部に有する炉本体と、
前記炉壁の対向する一対の壁部間に設置されて同じ方向に延びるように並設された複数の反応管と、
前記燃焼室内の燃焼ガスを通気性を有する蓄熱手段を通して炉外に排出し且つ前記蓄熱手段の顕熱で高温に加熱した燃焼用空気を前記複数の反応管が延びる方向と交差する方向に前記燃焼室内に供給する熱交換型燃焼用空気供給装置と、
前記複数の反応管の間に形成される空間に前記反応管が延びる方向に向かって燃料を噴射するように前記一対の壁部の一方の壁部に設けられた複数の加熱用バーナとを備え、
前記炉本体の内部構造は、前記燃焼室内において熱流速を局所的に増加させたい部分を燃焼ガス流体が通過するように構成されていることを特徴とする反応炉。
【請求項2】
前記燃焼ガス流体を流すガス流路の長さが、前記複数の加熱用バーナから噴射されてガス化した前記燃料が前記熱交換型燃焼用空気供給装置を通して炉外に排出される前に前記ガス流路内で実質的に完全燃焼し得る長さになるように前記内部構造が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の反応炉。
【請求項3】
前記熱交換型燃焼用空気供給装置には、前記燃焼用空気を加熱するための1以上の燃焼用空気加熱用バーナが設けられている請求項1または2に記載の反応炉。
【請求項4】
前記熱交換型燃焼用空気供給装置は、前記複数の加熱用バーナが設けられた前記一方の壁部に沿って前記燃焼用空気を流すように配置され、
前記炉本体の内部構造は、ガス化した前記燃料が、前記一方の壁部から該一方の壁部と対向する他方の壁部に向かって前記複数の反応管のすべてと部分的に交差しながら蛇行して流れる蛇行ガス流路部分を含むように前記ガス流路を形成するように構成されている請求項1,2または3に記載の反応炉。
【請求項5】
前記炉本体の内部構造は、内部に環状の前記ガス流路が形成されるように構成され、
前記熱交換型燃焼用空気供給装置は、前記環状の燃焼室内に一方向に向かって前記燃焼用空気を流し、前記環状の燃焼室を前記一方向に流れる前記燃焼ガスを炉外に排出するように配置されており、
前記複数の加熱用バーナは前記ガス流路の上流側に配置されている請求項1,2または3に記載の反応炉。
【請求項6】
前記複数の反応管の間に形成された前記空間内には、前記燃焼ガス流体によって加熱されて輻射熱を放射する輻射熱放射体が前記複数の反応管が径方向外側から実質的に均等加熱されるように配置されている請求項1,2または3に記載の反応炉。
【請求項7】
前記炉本体の内部には、蛇行して流れる前記ガス流路を形成するように、前記一方の壁部から前記他方の壁部に向かって所定の間隔をあけて配置された複数の仕切壁構造物が設置されており、
前記複数の仕切壁構造物には前記複数の反応管の少なくとも一部が緩く貫通する複数の貫通孔がそれぞれ形成されており、
前記複数の反応管の外壁部には前記貫通孔の周囲を囲む前記仕切壁構造物の一部と接触して前記仕切壁構造物を支持する支持用構造部が設けられている請求項4に記載の反応炉。
【請求項8】
前記熱交換型燃焼用空気供給装置が、前記燃焼用空気を800℃以上に加熱することを特徴とする請求項3に記載の反応炉。
【請求項9】
前記反応管の長手方向に沿って見た管壁から管内に入る熱束の分布が、前記加熱用バーナが位置する側の端部から約1/3の範囲内おいてピークが現れるように前記熱束が増加し、残りの約2/3の範囲内で前記熱束が減少するように、前記複数の仕切壁構造物が設置されている請求項7に記載の反応炉。
【請求項10】
前記炉本体の内部には、蛇行して流れる前記蛇行ガス流路部分を含む前記ガス流路を形成するように、前記一方の壁部から前記他方の壁部に向かって所定の間隔をあけて配置された複数の仕切壁構造物が設置され、
前記複数の仕切壁構造物には前記複数の反応管の少なくとも一部が緩く貫通する複数の貫通孔がそれぞれ形成され、
前記複数の反応管の外壁部には前記貫通孔の周囲を囲む前記仕切壁構造物の一部と接触して前記仕切壁構造物を支持する支持用構造部が設けられ
前記約1/3の範囲内にある前記複数の反応管の間に形成された前記空間内には、前記燃焼ガス流体によって加熱されて輻射熱を放射する輻射熱放射体が前記複数の反応管が径方向外側から実質的に均等加熱されるように配置されている請求項2に記載の反応炉。
【請求項11】
前記熱交換型燃焼用空気供給装置に設けられた前記燃焼用空気加熱用バーナからの燃焼ガス流体の噴き出し線速度及び前記燃焼用空気の噴き出し線速度が30〜150m/秒であり、
前記ガス流路内を流れる前記燃焼ガス流体の線速度が5〜30m/秒になるように、前記炉本体の前記内部構造が定められている請求項4,7または10に記載の反応炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−132849(P2006−132849A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322857(P2004−322857)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【出願人】(000229748)日本ファーネス工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】