説明

収容体、封印シールとその貼り付け及び封止方法

【課題】封印シールの外観を損なわずに剥離することが困難な収容体と封印シールと、その貼り付け方法及び封止方法を提供すること。
【解決手段】内部に物品が収容される筐体1と、前記筐体に開閉自在に取り付けられた蓋3とを有する樹脂製の収容体であって、前記収容体には前記筐体及び前記蓋をまたぐようにして封印シール4が貼り付けられるシール貼り付け面が備えられ、前記シール貼り付け面には、鋭い先端を有する突起部が複数形成されていることを特徴とする収容体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に物品が収容された収容体の開口を封印する封印シール及び収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ台やパチスロ器等の遊戯装置において、当選確率等を制御するプログラムが格納されたロム(ROM)は、当該遊戯装置内に配置された箱状の回路ボックス内に収容されている。これらの遊戯装置においては、回路ボックスを開封して収容されたROMを当選確率の異なる不正ROMと差し替えるという不正行為を防止するため、回路ボックスの蓋に封印シールが取付けられて封印されている。
【0003】
封印シールとして通常のシールを用いると、外観を損なわずに封印シールをはがして上述の不正行為を行うことが比較的容易であるため、これを困難にするために特殊な加工を施したシールを封印シールとして使用することがある。例えば、特許文献1には、シール基材の破断強度より接着強度のほうが大きくなるよう設計された易破壊性の貼付材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−226784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の貼付材においては、温度によってシール基材の破断強度と接着強度との相対関係が変化する。一般的に粘着材として使用される樹脂材料の強度や粘度は温度の上昇に伴って低下するため、加温手段を用いて基材及び粘着材の温度を上げると、接着強度が低下してシール基材の破断強度より小さくなることがある。この場合、貼付材を破壊せずにはがすことが可能となり不正行為が容易であるという問題がある。
【0006】
また、上述の貼付材に用いられるような粘着剤の多くは有機溶剤に溶解するので、適切な有機溶剤を使用すると痕跡を残さずにはがすことができ、さらに上記の加温による方法も併用することができ、不正行為が可能であるという問題がある。
【0007】
シールをはがすための器具としては、カッター、スクレパー(へら)などが挙げられ、主にシールの粘着材と被接着体の境界面を、被接着体の平面に沿って器具の鋭利な先端を進ませて巧妙にはがす手法が知られている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は封印シールの外観を損なわずに剥離することが困難な収容体と封印シールと、その貼り付け方法及び封止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するための請求項1に係る発明は、内部に物品が収容される筐体と、前記筐体に開閉自在に取り付けられた蓋とを有する樹脂製の収容体であって、前記収容体には前記筐体及び前記蓋をまたぐようにして封印シールが貼り付けられるシール貼り付け面が備えられ、前記シール貼り付け面には、鋭い先端を有する突起部が複数形成されている
ことを特徴とする収容体としたものである。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、基材と、前記基材の第1面に設けられた印刷層と、前記基材の前記第1面と反対側の第2面に設けられた接着層とを有する請求項1に記載の封印シールであって、前記基材は、前記接着層の接着強度以下の力で破断される脆性材料から形成されていることを特徴とする封印シールとしたものである。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記封印シールを、前記封印シールの厚さ方向における全ての層に前記突起部を貫通させて、前記シール貼り付け面の底部に貼り付けることを特徴とする請求項1または2に記載の封印シールの貼り付け方法である。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、前記封印シールを前記シール貼り付け面に貼り付けた後、加熱した発熱体を前記突起形状の先端の延長線方向より押し付け、前記突起部の先端を融解させて、くさび形の形状にすることを特徴とする請求項1または2に記載の封印シールの封止方法である。
【0013】
また、請求項に5に係る発明は、くさび形の形状になった前記突起部の先端平面部に光学的に反射する光学反射層を形成することを特徴とする請求項4に記載の封印シールの封止方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の封印シールによれば、封印シールの外観を損なわずに剥離することが困難な収容体と封印シールと、その貼り付け方法および封止方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のボックス本体(収容体)のカバー部が開いた状態の斜視図である。
【図2】ボックス本体(収容体)のカバー部が閉じた状態の斜視図である。
【図3】ボックス本体(収容体)への貼り付け前の封印シールの断面図である。
【図4】シール貼り付け装置の斜視図である。
【図5】シール貼り付け装置の貼り付けヘッド部、封印シール、ボックス本体(収容体)のシール貼り付け部の位置関係を示す断面図である。
【図6】ボックス本体(収容体)のシール貼り付け部の断面を拡大した図である。
【図7】ボックス本体(収容体)のシール貼り付け部を上面から見た拡大図である。
【図8】図5の破線楕円Aの断面拡大図である。
【図9】シール貼り付け装置の穴あきヘッドを降下させ、シール貼り付け部に封印シールを貼り付けている断面拡大図である。
【図10】ボックス本体(収容体)への貼り付けが完了した状態の封印シールとシール貼り付け部の断面拡大図である。
【図11】シール貼り付け装置の加熱ヘッドを降下させ、シール貼り付け部の突起部先端を融解している断面拡大図である。
【図12】シール貼り付け部の突起部先端の融解が完了した状態の封印シールとシール貼り付け部の断面拡大図である。
【図13】図12の変形例の断面拡大図である。
【図14】シール貼り付け部の突起部先端の平面部に反射体を設けた状態の封シール貼り付け部の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態の封印シール及び収容体について、図1から図14を参照して説明する。
図1に本発明の回路ボックス(収容体)1の蓋3が開いた状態の斜視図を示す。
回路ボックス1の中には、パチンコ台等の遊戯装置を制御するための回路基板2が入っており、この回路基板上には遊技内容(当選確率等)を決定するための図示しないROMが搭載されている。蓋3を閉じることで回路基板2を保護することができる。
回路ボックス(収容体)1の材質としては、透明性を持ち割れにくいプラスチック樹脂が好ましく、例えば塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、スチロール樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
【0017】
図2に蓋3を閉じた状態の斜視図を示す。
蓋3が不正に開かれるのを防ぐために本発明の封印シール4が貼り付けられている。
【0018】
図3は、封印シール4の断面図である。
図3に示すように、封印シール4は、シート状の基材5と、基材5の上面に設けられた印刷層6と、基材6の下面に設けられた接着層7とを備えて構成されている。
【0019】
基材5としては、塑性変形し、さらに破断、破壊される脆性材料からなるものが好ましく、接着層7の接着強度より小さい引張負荷で破壊されるものがより好ましい。
材質としては、例えば、カオリン、炭酸カルシウムなどの充填剤を適量混合して脆質化した脆性塩化ビニル、脆性ポリエステルなどの合成樹脂フィルムや、又は、セルロースアセテート、低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの高結晶性プラスチック素材を溶液成膜により形成したフィルムなどがあげられる。
その他の材質として、UV硬化法合成樹脂又はカオリン、炭酸カルシウムなどの粉体を適量混合したUV硬化型合成樹脂を用い、その樹脂薄膜をUV照射により硬化乾燥させて成膜したフィルムなどがあげられる。
【0020】
印刷層6は文字や画像、格子等の幾何学的形状等を、単独若しくは組み合わされてなる任意の図案を、公知の各種印刷インキを使用してオフセット印刷、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法によって形成することができる。印刷層6は、基材5に外力が加えられると歪み等によって外観が変化するため、不正行為等の痕跡となり、またその視認性を高める機能を有する。
【0021】
接着層7は、封印シール4を封印対象であるボックス本体1に接着するためのものである。接着層7の材料としては、アクリル系粘着材、ポリエステル系粘着材、ウレタン系粘着材等の公知の各種粘着材を採用することができる。
接着層7は、これらの粘着材を上述の公知の各種印刷方法や塗布等の方法で基材5の下面に形成することができ、その厚みは必要に応じて1〜20μm程度の範囲で適宜設定することができる。
【0022】
図4は、シール貼り付け装置8の外観図である。
貼り付けヘッド9は、装置の上下機構によって上下に動き、封印シールの貼り付けの際は封印シールに対して加重を発生させることができる。また貼り付けヘッド9には後述する穴あきヘッド9Aまたは加熱ヘッド9Bの二種類のヘッドが取り付けられる。
【0023】
図5にシール貼り付け装置8の貼り付けヘッド9、封印シール4、ボックス本体1のシール貼り付け部10の位置関係を示す断面図を示す。
図5に示すように、封印シール4がボックス本体1のシール貼り付け部10に仮貼りされた状態で、上昇位置にある貼り付けヘッド9の下部にそのボックス本体1を置き、上下機構を動かし貼り付けヘッド9を下降させ、封印シール4に到達した後、封印シール4に対して加圧する。
【0024】
図6にボックス本体1のシール貼り付け部10の拡大断面図を、また図7にはシール貼
り付け部10を上面から見た拡大図を示す。
シール貼り付け部10の表面には、図6に示すような鋭い先端を持つ突起部1Aが複数形成されており、またこの突起部1Aは図7に示すよう円形の形状であり、その配置は縦横に等間隔に置かれている。
【0025】
図8に図5の破線楕円Aを拡大した図を示す。
封印シール4がシール貼り付け部10の突起部1A上に置かれている状態(仮置き)である。なお、この図を含め図8から図14まで印刷層6は省略して示している。
【0026】
次に、シール貼り付け装置9に図9に示すような穴あきヘッド9Aを取り付け、ヘッドを下降させる。穴あきヘッド9Aの穴は、図に示すように突起部1Aが通る形状になっており、穴あきヘッド9Aを下降させることで、突起部1Aの鋭い先端が脆性材料からなる封印シール4の基材5に突き刺さり貫通し、同時にシール貼り付け部10の底部に接着層7が到達し加圧され封印シール4が貼り付けられる。
穴あきヘッド9Aを上昇させた状態を図10に示す。基材5が塑性変形することで突起部1Aの周囲には隙間がない状態となる。このことで本シールを不正に剥離しようとして基材5を上方へ引張負荷を加えると、基材5が塑性変形し突起部1Aの周囲には隙間ができてしまうことから、突起部1Aの周囲はその痕跡を見つけやすい箇所となる。
【0027】
次に、シール貼り付け装置9に図11に示すような加熱ヘッド9Bを取り付け、ヘッドを下降させる。加熱ヘッド9Bは、ボックス本体1を構成している材料の融解温度まで加熱できる発熱部を備えるヘッドであり、ヘッド面は図に示すような平面形状になっている。
前述の融解温度まで加熱した加熱ヘッド9Bを下降させることで突起部1Aの先端に当て、さらに突起部1Aを熱融解しながら図に示すような形状および封印シール4への食い込み位置まで加圧下降させる。加熱ヘッド9Bを上昇させた状態を図12に示す。突起部1Aの先端はくさび形状になっており、そのままでは封印シール4をはがすことができない状態、すなわち封印シール4を封止したことになる。
【0028】
突起部1Aの熱融解によって変形させた下部をニッパーまたはカッターなどで切断し、封印シール4をはがし、その後切断した突起部1Aの頭部を接着剤などで接着して復元する不正行為も考えられる。この行為の対策として、図14に示すように、全ての突起部1Aの平面部に光学的な反射体11を設けることで不正行為を困難にすることができる。なお、回路ボックス(収容体)は割れにくいプラスチック樹脂を用いているので簡単に突起部1Aの頭部だけを割って取ることはできない。
【0029】
反射体11は、光学的に反射するものであればどのようなものでもよく、例えばメタリック顔料インキ、金属蒸着膜などが上げられる。
次に、反射体11の使い方、判定方法および効果について説明する。電灯などの光源を突起部1Aの平面部に設けられた複数の反射体11に反射させて見ると、それぞれの面の平行度が高精度にかつ瞬時に判定できる。これは人間の目の特性を利用した判定方法である。前述のように切断した突起部1Aの頭部を接着剤などで接着して復元する際、突起部1Aの平面部の平行度を高精度に保った復元を強いられることとなり、切断した全ての頭部に対してこのような作業を行うことは非常に困難であると考える。
【0030】
本封印シールをはがそうとした場合、シール貼り付け部10には突起部1Aがあり従来の被接着体の貼り付け面のように平面ではないために、カッター、スクレパー(へら)などを使って従来のようにシールの粘着材と被接着体の境界面に沿って鋭利な先端を進めることができない構造になっており、剥離できたとしてもその痕跡が封印シールに残りやすい。
【0031】
従って、封印シール4の外観を損なわずにボックス本体1から剥離することは困難であり、剥離できたとしてもその痕跡が封印シールに残りやすい。よって、痕跡を残さずに開封して収容されたROMを入れ替える等の不正行為を行うことが困難で、かつその痕跡が残りやすい回路ボックスを構成することができる。
【0032】
突起部1Aの形状は、本説明では図6、図7に示すような形状としたが、鋭い先端を持つ突起形状で基材5に突き刺さり貫通することができるものであればどのような形状であってもかまわない。また上面から見た配置であるが、本説明では図7に示すような縦横に等間隔の配置としたが、その数量も含めどのような数量、配置であってもかまわない。
【0033】
熱融解による突起部1Aの変形した頭部の位置であるが、図13に示す様にラベルから離れた位置であってもよく、この場合、基材5が塑性変形して突起部1Aの周囲の隙間がない状態がより見やすくなり不正な剥離の痕跡を発見しやすくなる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施することが可能である。
【0035】
上述の実施形態においては、収容体が回路ボックスである例を説明したが、本発明はこれには限定されない。本発明は、内部に収容された物品が不正にすりかえられていない等の信頼性を確保する必要があるものであれば、あらゆる物品の収容体に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…ボックス本体(収容体)
1A… 突起部
2… 回路基板
3… 蓋
4… 封印シール
5… 基材
6… 印刷層
7… 接着層
8… シール貼り付け装置
9… 貼り付けヘッド
9A… 穴あきヘッド
9B… 加熱ヘッド
10… シール貼り付け部
11… 反射体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に物品が収容される筐体と、前記筐体に開閉自在に取り付けられた蓋とを有する樹脂製の収容体であって、
前記収容体には前記筐体及び前記蓋をまたぐようにして封印シールが貼り付けられるシール貼り付け面が備えられ、
前記シール貼り付け面には、鋭い先端を有する突起部が複数形成されていることを特徴とする収容体。
【請求項2】
基材と、前記基材の第1面に設けられた印刷層と、前記基材の前記第1面と反対側の第2面に設けられた接着層とを有する請求項1に記載の封印シールであって、
前記基材は、前記接着層の接着強度以下の力で破断される脆性材料から形成されていることを特徴とする封印シール。
【請求項3】
前記封印シールを、前記封印シールの厚さ方向における全ての層に前記突起部を貫通させて、前記シール貼り付け面の底部に貼り付けることを特徴とする請求項1または2に記載の封印シールの貼り付け方法。
【請求項4】
前記封印シールを前記シール貼り付け面に貼り付けた後、加熱した発熱体を前記突起形状の先端の延長線方向より押し付け、前記突起部の先端を融解させて、くさび形の形状にすることを特徴とする請求項1または2に記載の封印シールの封止方法。
【請求項5】
くさび形の形状になった前記突起部の先端平面部に光学的に反射する光学反射層を形成することを特徴とする請求項4に記載の封印シールの封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−121618(P2011−121618A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281580(P2009−281580)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】