説明

収差補正用液晶素子、光ピックアップヘッド、光学記録および再生装置

【課題】球面収差と非点収差と接線方向および半径方向のコマ収差とを十分に補正できる収差補正用液晶素子を提供する。
【解決手段】液晶素子8の液晶層を挟む1対の電極32,29のうちの一方の電極32は円状の内周部分とリング状の外周部分とに分割されており、一方の電極32の外周部分は非点収差補正用の電極であり、周方向に並ぶ複数の電極セグメント32j〜32qにさらに分割されており、一方の電極の内周部分はコマ収差補正用の電極であり、周方向に並ぶ複数の電極セグメント32b〜32iを含み、1対の電極のうちの他方の電極29は球面収差補正用の電極であり、同心円状の複数の分割線によって分割された複数の電極セグメント29a〜29eからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収差補正用液晶素子、光ピックアップヘッド、光学記録および再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光記録媒体(光ディスク)への情報の記録および情報の再生を行うために、光ピックアップヘッドを有する光学記録および再生装置が用いられている。具体的には、光ピックアップヘッドから光ビームを光ディスクに照射して、光ディスクによる反射光を受光素子によって受光する構成が採用されている。このような構成では、光ディスクの傾きや光ピックアップに使用される光学部品単体の製造誤差、さらには光ピックアップヘッドの組立誤差等に起因する収差(歪み)が発生し、記録および再生の精度が低下する可能性がある。
【0003】
そこで、特許文献1〜3に、液晶素子を用いて収差を補正する構成が提案されている。具体的には、光源と対物レンズとの間に液晶素子が配置されている。そして、液晶素子により、光ディスクの傾きや光ピックアップヘッドの組立誤差等に起因する収差と逆位相になるように部分的に位相差が発生させられる。この液晶素子による位相差によって収差が補正されて、理想的な波面の光ビームが光ディスクに向かって進行して所望の位置に集光する。この液晶素子は、1対の電極の間に液晶層が挟み込まれた構成であり、各電極は複数の電極セグメントに分割されている。そして、各電極の複数の電極セグメントのうちのいずれかに選択的に通電することによって、液晶素子に部分的に位相差を生じさせることが可能になっている。収差を補正するために液晶素子により位相差を生じさせることができる領域は、電極の分割パターン(電極セグメントの配置パターン)によって決まる。従って、このような構成による収差の補正の性能は、電極の分割パターン(電極セグメントの配置パターン)に左右される。
【0004】
さらに、特許文献4では、1つの液晶素子によって半径方向のコマ収差と非点収差とを補正するために、非点収差補正用の電極セグメントの内側に、半径方向のコマ収差補正用の電極セグメントを設けた構成が提案されている。図10(a)に示すように、一方の電極101は外周部分と内周部分とに分かれている。内周部分は、略直線状に延びる中央の電極セグメント101aと、中央の電極セグメント101aの両側に位置する略半円状の2つの電極セグメント101b,101cとにさらに分割されており、外周部分は8つの電極セグメント101d〜101kにさらに分割されている。図10(b)に示すように、他方の電極102は、略同心円状の5つの電極セグメント102a〜102eにさらに分割されている。一方の電極101の外周部分の電極セグメント101d〜101kが非点収差の補正のために用いられ、内周部分の電極セグメント101a〜101cがコマ収差の補正用(図10(a)に示されている例では半径方向のコマ収差の補正用)に用いられる。そして、他方の電極102が球面収差の補正用に用いられる。なお、本明細書に添付の図面では、その上下方向を接線方向(タンジェンシャル方向)として示し、左右方向を半径方向(ラジアル方向)として示している。
【0005】
特許文献5では、一方の電極を非点収差補正用のパターンとし、他方の電極で接線方向と半径方向の両方のコマ収差を補正する構成が提案されている。図11(a)に示すように、一方の電極103は外周部分と内周部分とに分かれている。内周部分は1つの電極セグメント103aを構成しており、外周部分は8つの電極セグメント103b〜103iにさらに分割されている。図11(b)に概略的に示すように、実質的には、他方の電極104は、中心の電極セグメント104aと、4つに分割された内側の電極セグメント104b〜104eと、中間リング状の電極セグメント104fと、4つに分割された外側の電極セグメント104g〜104jとに分割されている。そして、内側の電極セグメント104b〜104eの分割線と外側の電極セグメント104g〜104jの分割線は同一直線上に位置している。この構成では、一方の電極103の外周部分の電極セグメント103b〜103iが非点収差の補正のために用いられる。他方の電極104は、接線方向のコマ収差の補正用に用いられる電極セグメント104b,104d,104g,104iの組と、半径方向のコマ収差の補正用に用いられる電極セグメント104c,104e,104h,104jの組とに分けられる。
【特許文献1】特許第3538520号公報
【特許文献2】特許第3443226号公報
【特許文献3】特開2005−122828号公報
【特許文献4】特開2007−273045号公報
【特許文献5】特開2007−80432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来技術のうち、特許文献1,2によると、波面収差(主としてコマ収差または球面収差)を補正できると記載されているが、接線方向のコマ収差および半径方向のコマ収差と、球面収差と、非点収差とをそれぞれ精緻に補正することは困難であり、これらの様々の収差を含んだ状態において高精度に補正を行うことはできない。
【0007】
特許文献3に記載されている構成では、複数の電極セグメントのうち、外周部分の非点収差を補正するための電極セグメントと、光束の有効範囲におけるコマ収差の外周部分における分布パターンとが整合せず、非点収差の補正は可能であっても、コマ収差の外周部の補正に関しては十分な収差低減ができない可能性がある。また、球面収差の補正に寄与する制御領域が実質的に2つしかなく、十分な補正が可能であるとはいえない。
【0008】
また、特許文献4に記載の構成(図10(a),10(b)参照)では、一方の方向(図示されている例では半径方向)のコマ収差の補正は可能であるものの、それに直交する方向(図示されている例では接線方向)のコマ収差の補正は行えない。このように、両方向のコマ収差を良好に補正することはできず、性能が不十分である。
【0009】
特許文献5に記載の構成(図11(a),11(b)参照)は、球面収差の補正を行えないものである。また、この構成では、コマ収差の補正用の電極セグメント104b〜104e,104g〜104jが全て、中心角が90度の扇形状である。従って、接線方向のコマ収差の補正領域は、104bおよび104gと104dおよび104iによる合計180度の範囲内に限られる。同様に、半径方向のコマ収差の補正領域は、104cおよび104hと104eおよび104jによる合計180度の範囲内に限られる。すなわち、各方向のそれぞれのコマ収差の補正領域が、中心角が90度×2=180度の範囲に過ぎず、補正できない領域も180度の範囲である。そのため、コマ収差の緻密な補正ができず、補正性能が劣るという欠点がある。
【0010】
そこで本発明の目的は、球面収差と、非点収差と、接線方向および半径方向のコマ収差とを十分に補正することができる収差補正用液晶素子と、それを含む光ピックアップヘッドと、光学記録および再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、光学系内に配置される収差補正用液晶素子において、少なくとも1対の電極によって液晶層を挟んだ構成であり、1対の電極のうちの一方の電極は円状の内周部分とリング状の外周部分とに分割されており、一方の電極の外周部分は非点収差補正用の電極であり、周方向に並ぶ複数の電極セグメントにさらに分割されており、一方の電極の内周部分はコマ収差補正用の電極であり、周方向に並ぶ複数の電極セグメントを含み、1対の電極のうちの他方の電極は球面収差補正用の電極であり、同心円状の複数の分割線によって分割された複数の電極セグメントからなることを特徴とする。この構成によると、球面収差と、非点収差と、接線方向および半径方向のコマ収差との良好な補正が可能である。
【0012】
一方の電極の外周部分の少なくとも一部は非点収差補正用の電極としてもコマ収差補正用の電極としても機能し、一方の電極の外周部分の複数の電極セグメントのうちの一部と、内周部分の複数の電極セグメントの一部とが第1の方向に並んで位置して、第1の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成し、一方の電極の外周部分の複数の電極セグメントのうちの一部と、内周部分の複数の電極セグメントの一部とが第1の方向に直交する第2の方向に並んで位置して、第2の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成するものであってもよい。また、一方の電極の外周部分の少なくとも一部は非点収差補正用の電極としてもコマ収差補正用の電極としても機能し、一方の電極の外周部分の複数の電極セグメントのうちの一部と、内周部分の複数の電極セグメントの一部とが、第1の方向に直交する第2の方向に並んで位置して電極セグメント集合体を構成し、複数の電極セグメント集合体が第1の方向に並んで第1の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成し、一方の電極の外周部分の複数の電極セグメントのうちの一部と、内周部分の複数の電極セグメントの一部とが第1の方向に並んで位置して他の電極セグメント集合体を構成し、複数の前記他の電極セグメント集合体が第2の方向に並んで第2の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成するものであってもよい。これらの構成によると、一方の電極の内周部分のみならず外周部分もコマ収差の補正に利用できるため、コマ収差補正の性能がより向上する。
【0013】
なお、これらの構成の場合、非点収差補正時には、一方の電極の外周部分の複数の電極セグメントに選択的に通電され、第1の方向におけるコマ収差補正時には、第1の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成する(または、第1の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成する電極セグメント集合体をなす)一方の電極の外周部分の電極セグメントおよび内周部分の電極セグメントに選択的に通電され、第2の方向におけるコマ収差補正時には、第2の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成する(または、第2の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成する他の電極セグメント集合体をなす)一方の電極の外周部分の電極セグメントおよび内周部分の電極セグメントに選択的に通電され、球面収差補正時には、他方の電極の複数の電極セグメントに選択的に通電される。
【0014】
一方の電極の外周部分は、放射状に延びる複数の分割線により分割された少なくとも8つの前記電極セグメントからなり、一方の電極の内周部分は、放射状に延びる複数の分割線により分割された少なくとも4つの電極セグメントを含み、外周部分を分割する複数の分割線の一部と、内周部分を分割する複数の分割線の一部とは、同一線上に位置していてもよい。さらに、一方の電極の前記内周部分は、分割線によって3列×3行のマトリクス状の9つの電極セグメントに分割されていてもよい。3列×3行のマトリクス状になっている場合、中心部分の電極セグメントの周囲を取り囲むように8つの電極セグメントが配置された構成になり、互いに直交する2つの方向のコマ収差補正に理由するのに好適である。この電極の内周部分の全域が2つの方向のコマ収差の補正に利用できる。
【0015】
なお、本発明の光ピックアップヘッドは、光源と、光記録媒体に対向して配置される対物レンズと、前記光源と前記対物レンズの間に配置されている、前記した収差補正用液晶素子とを有する。さらに、複数の対物レンズを含む対物レンズユニットを有し、対物レンズユニットは、複数の対物レンズのいずれかを選択的に光記録媒体との対向位置に配置させることができるものであってもよい。
【0016】
そして、本発明の光学記録および再生装置は、前記した光ピックアップヘッドと、光記録媒体を保持して回転させる媒体保持機構とを有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、球面収差と、非点収差と、接線方向および半径方向のコマ収差とを、広い範囲にわたって良好に補正することができる。それによって、光記録媒体の傾きや光学系の組立誤差等に起因してこれらの収差が生じたとしても、高精度の記録および再生を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る光学記録および再生装置の構成を示す概略図である。この光学記録および再生装置は、光記録媒体2にデジタル情報の記録または再生を行うための光ピックアップヘッド1と、光記録媒体2を保持して回転させる媒体保持機構3を有している。
【0020】
光ピックアップヘッド1は、光源として2つの半導体レーザ4,5を有している。半導体レーザ4は、図示しないが、DVD(Digital Versatile Disc)の記録および再生を行うための波長650nmの赤色レーザビームを発光する第1の発光領域と、CD(Compact Disc)の記録および再生を行うための波長780nmの赤外レーザビームを発光する第2の発光領域とを有している。一方、半導体レーザ5は、次世代DVD(ブルーレイディスク(Blu-ray Disc:登録商標)およびHD−DVD(High Definition DVD))の記録および再生を行うための波長405nmの青色レーザビームを発光する。
【0021】
半導体レーザ4と半導体レーザ5は、後述する受光素子6、コリメータレンズ7、および液晶素子8の光軸9上に配置された偏光ビームスプリッタ10,11に向けて、それぞれレーザビームを照射できるように配置されている。半導体レーザ4と偏光ビームスプリッタ10の間には、赤色レーザビームおよび赤外レーザビーム用の半波長板12と回折格子13が配置されており、半導体レーザ5と偏光ビームスプリッタ11の間には、青色レーザビーム用の半波長板14と回折格子15が配置されている。光軸9上には、アナモフィックレンズ16と受光素子6が配置されている。アナモフィックレンズ16は、レーザビームを受光素子6上に結像させるためのものであり、受光素子6は、受光したレーザビームを光電変換して電気信号を出力するものである。
【0022】
光軸9上であって、偏光ビームスプリッタ10,11を間に挟んでアナモフィックレンズ16および受光素子6と反対側に、フロントモニタ用光検出器17、コリメータレンズ7、液晶素子8、および立ち上げミラー18が配置されている。コリメータレンズ7はレーザビームを平行光線束に変換するものである。コリメータレンズ7には、光軸9に平行な方向にコリメータレンズ7を移動させる駆動機構7aが付属している。液晶素子8は、位相差を生じさせて収差を補正するためのものであり、その詳細な構成については後述する。フロントモニタ用光検出器17は、半導体レーザ4,5から出射されたレーザビームの光強度を計測し、このフロントモニタ用光検出器17の出力に基づいて半導体レーザ4,5の出力が調整される。
【0023】
立ち上げミラー18は、レーザビームを反射して、光路を折り曲げるものである。具体的には、立ち上げミラー18は、半導体レーザ4,5から出射されて偏光ビームスプリッタ10,11、コリメータレンズ7、および液晶素子8を通過して来たレーザビームを反射して、光路を折り曲げて光記録媒体2へ向かう方向に立ち上げる。また、立ち上げミラー18は、前記したのと逆に、光記録媒体2からのレーザビームを反射して、光路を折り曲げて、液晶素子8、コリメータレンズ7、偏光ビームスプリッタ11,10、アナモフィックレンズ16を介して、受光素子6に入射させる。
【0024】
立ち上げミラー18と光記録媒体2の間に、4分の1波長板19と対物レンズユニット20が配置されている。実際には、4分の1波長板19と対物レンズユニット20と光記録媒体2は、図1の紙面に垂直な方向に積み重なるように配置されている。
【0025】
対物レンズユニット20は、CD、DVD、およびHD−DVD用の対物レンズ21aと、ブルーレイディスク用の対物レンズ21bとが、レンズホルダ(支持部材)22に搭載された構成である。CD、DVD、およびHD−DVD用の対物レンズ21aと、ブルーレイディスク用の対物レンズ21bとは、各々の光軸が平行になるように横に並べて配置されている。レンズホルダ22は、駆動機構23に駆動されて、シャフト24に沿って上下方向(フォーカス方向)に移動可能であるとともに、CD、DVD、およびHD−DVD用の対物レンズ21aとブルーレイディスク用の対物レンズ21bの光軸に垂直な面内でシャフト24を中心として回転可能である。立ち上げミラー18と光記録媒体2は、4分の1波長板19と、対物レンズユニット20の対物レンズ21aまたは対物レンズ21bとを介して互いに対向する。
【0026】
この光ピックアップヘッド1を用いて、記録媒体2であるCDを再生する場合について説明する。この場合、まず、CD、DVD、およびHD−DVD用の対物レンズ21aが記録媒体2に対向する位置になるようにレンズホルダ22の姿勢を調整する。そして、半導体レーザ4の第2の発光領域から波長780nmの赤外レーザビームを出射する。この赤外レーザビームは、半波長板12および回折格子13を介して偏光ビームスプリッタ10に入射する。偏光ビームスプリッタ10に入射した赤外レーザビームは、偏光ビームスプリッタ10に反射され、偏光ビームスプリッタ11を介してコリメータレンズ7に入射して、コリメータレンズ7により平行光線に変換される。平行光線に変換された赤外レーザビームは、液晶素子8によって位相差を付与され、その位相差によって収差が補正される。さらに、赤外レーザビームは、立ち上げミラー18に入射して反射され、4分の1波長板19によって円偏光に変換される。円偏光に変換された赤外レーザビームは、対物レンズユニット20のCD、DVD、およびHD−DVD用の対物レンズ21aによって、記録媒体(CD)2の所定の位置に集光させられる。
【0027】
このようにして照射された赤外レーザビームの、記録媒体(CD)2による反射光は、CD、DVD、およびHD−DVD用の対物レンズ21aを透過し、4分の1波長板19によって直線偏光に変換され、立ち上げミラー18によって反射される。そしてこの反射光は、液晶素子8、コリメータレンズ7、フロントモニタ用光検出器17、偏光ビームスプリッタ11,10を通過して、アナモフィックレンズ16によって受光素子6上に結像する。受光素子6は、受光した反射光(レーザビーム)を光電変換して電気信号を出力する。図示しない処理回路によってこれらの電気信号が処理されて、記録媒体(CD)2に記録された情報が読み取られる。
【0028】
なお、記録媒体2としてDVDを再生する場合には、半導体レーザ4から出射されるレーザビームが、第2の発光領域からの赤外レーザビームではなく、第1の発光領域からの赤色レーザビームである。それ以外の点に関しては、CDを再生する場合と全く同じであるので説明は省略する。
【0029】
記録媒体2としてHD−DVDを再生する場合には、半導体レーザ4は作動させず、半導体レーザ5から青色レーザビームを出射させる。青色レーザビームは、半波長板14および回折格子15を介して偏光ビームスプリッタ11に入射する。この青色レーザビームは、偏光ビームスプリッタ11に反射され、コリメータレンズ7に入射する。それ以外の点に関しては、CDやDVDを再生する場合と全く同じであるので説明は省略する。
【0030】
記録媒体2としてブルーレイディスクを再生する場合には、対物レンズユニット20のレンズホルダ22を、シャフト24を中心として180度または90度回転させ、ブルーレイディスク用の対物レンズ21bが記録媒体2に対向する位置になるように調整する。このように対物レンズを交換することにより、光記録媒体2の表面からレーザビームを集光させる位置までの深さや対物レンズの開口数NAを変えて、ブルーレイディスクの再生に適した状態にする。それ以外の点に関しては、HD−DVDを再生する場合と全く同じであるので説明は省略する。
【0031】
以上説明した本発明の光学記録および再生装置の光ピックアップヘッド1の、液晶素子8の構成について詳細に説明する。図2に示すように、液晶素子8の基本構成は、ガラス等からなる1対の基板25,26の間に液晶層27が挟まれた構成であり、各基板25,26の内面(対向面)には、電極28,29と配向膜30,31がそれぞれ形成されている。
【0032】
両電極28,29はそれぞれ複数の電極セグメントに分割されている。本発明の第1の実施形態では、一方の電極28は、図3(a)に示すように、リング状の外周部分と円状の内周部分とに分かれている。電極28の内周部分は、電極セグメント28aと、中心部分から放射状に延びる分割線によって分割された、周方向に並ぶ4つの電極セグメント28b〜28eとからなる。電極セグメント28aは、中心部に位置する円状の部分と、中心部から放射状に延びて4つの電極セグメント28b〜28eの分割線となる延長部分と、後述する外周部の電極セグメント28f〜28iおよび28f’〜28i’との境界に位置するリング状の部分とからなる。各電極セグメント28a〜28eはそれぞれ独立して導通され、コマ収差補正用の電極として機能する。
【0033】
この一方の電極28のリング状の外周部分は、放射状に延びる分割線によって、周方向に並ぶ8つの電極セグメント28f〜28iおよび28f’〜28i’に、実質的に均等に分割されている。本実施形態では、外周部分の、互いに対向する電極セグメント同士が組になって導通が制御される。従って、電極28fおよび電極28f’の組、電極28gおよび電極28g’の組、電極28hおよび電極28h’の組、電極28iおよび電極28i’の組の合計4組に分けられ、各組ごとにそれぞれ独立して導通される。この電極28の外周部分は、非点収差補正用の電極として機能する。この電極28の内周部分の分割線(電極セグメント28aの延長部分)は、外周部分の分割線の一部と同一線上に位置している。
【0034】
これに対し、他方の電極29は、図3(b)に示すように同心円状の複数の分割線によって分割された複数の電極セグメント29a〜29eからなる。各電極セグメント29a〜29はそれぞれ独立して導通され、この電極29は球面収差補正用の電極として機能する。
【0035】
これらの電極28,29を用いると、球面収差を補正する場合には、図3(b)に示す電極29の電極セグメント29a〜29eに選択的に通電することによって、液晶層27による位相差を生じさせることができる。このように球面収差に関しては、特許文献4と実質的に同様な補正が可能である。
【0036】
非点収差を補正する場合には、図4(a)に抜粋して示す、電極28の外周部分の電極セグメント28f〜28iおよび28f’〜28i’に選択的に通電することによって、液晶層27による位相差を生じさせることができる。このように非点収差に関しては、特許文献4,5と実質的に同様な補正が可能である。
【0037】
半径方向のコマ収差を補正する場合には、図4(b)に抜粋して示す、電極28の内周部分の電極セグメント28a,28c,28eに選択的に通電することによって、液晶層27による位相差を生じさせることができる。そして、接線方向のコマ収差を補正する場合には、図4(c)に抜粋して示す、電極28の内周部分の電極セグメント28a,28b,28dに選択的に通電することによって、液晶層27による位相差を生じさせることができる。このように、実質的に半径方向に並ぶ電極セグメント28a,28c,28eからなる電極セグメント群を用いることにより、半径方向のコマ収差が補正でき、かつ、実質的に接線方向に並ぶ電極セグメント28a,28b,28dからなる電極セグメント群を用いることにより、接線方向のコマ収差が補正できる。
【0038】
例えば特許文献4の構成では、一方向(例えば半径方向)のみのコマ収差の補正が可能で、他の方向(例えば接線方向)のコマ収差の補正は行えなかった。しかし、本実施形態の構成では、接線方向と半径方向の両方に関してコマ収差の補正が良好に行える。そして、球面収差の補正も非点収差の補正も行える。コマ収差の補正と球面収差の補正と非点収差の補正とが互いに独立して制御できるため、制約を受けることなくそれぞれの収差の補正を自由に行うことができ、良好な結果が得られる。
【0039】
図5には、本発明の液晶素子の電極の第2の実施形態を示している。本実施形態は、前記した第1の実施形態とほぼ同じ電極28,29を有しているが、電極28の外周部分が、全て独立して通電可能な電極セグメント28f〜28mからなり、第1の実施形態のような組を構成していない。この場合、前記した第1の実施形態と同様に、球面収差を補正する場合には、図5(b)に示す電極29の電極セグメント29a〜29eに選択的に通電し、非点収差を補正する場合には、図6(a)に抜粋して示す、電極28の外周部分の電極セグメント28f〜28mに選択的に通電する。こうして、それぞれの通電状態に応じて液晶層27による位相差を生じさせ、球面収差および非点収差を補正する。
【0040】
そして、本実施形態では、コマ収差を補正する場合に、電極28の内周部分の電極セグメント28a〜28eのみならず外周部分の電極セグメント28f〜28mも利用する。すなわち、半径方向のコマ収差を補正する場合には、図6(b)に抜粋して示すように、実質的に半径方向に並んで位置する内周部分の電極セグメント28a,28c,28eと外周部分の電極セグメント28g〜29h,28k〜28lとからなる電極セグメント群を利用する。すなわち、この電極セグメント群を構成する、実質的に半径方向に並んで位置する電極セグメント28a,28c,28e,28g〜28h,28k〜28lに対して選択的に通電することにより、液晶層27による位相差を生じさせ、半径方向のコマ収差を補正することができる。このとき、この電極セグメント群から外れた位置の電極セグメント28b,28d,28f,28i〜28j,28mには通電しない。
【0041】
一方、接線方向のコマ収差を補正する場合には、図6(c)に抜粋して示すように、実質的に接線方向に並んで位置する内周部分の電極セグメント28a,28b,28dと外周部分の電極セグメント28f,28i〜28j,28mとからなる電極セグメント群を利用する。すなわち、この電極セグメント群を構成する、実質的に接線方向に並んで位置する電極セグメント28a,28b,28d,28f,28i〜28j,28mに対して選択的に通電することにより、液晶層27による位相差を生じさせ、接線方向のコマ収差を補正することができる。このとき、この電極セグメント群から外れた位置の電極セグメント28c,28e,28g〜28h,28k〜28lには通電しない。
【0042】
本実施形態によると、第1の実施形態とは異なり、電極28の内周部分のみならず外周部分もコマ収差補正に利用している。これは、外周部分の電極セグメント28f〜28mにそれぞれ独立して通電可能であり、実質的に一方向(半径方向または接線方向)に並んで位置する複数の電極セグメントからなる電極セグメント群を構成することができるからである。その電極セグメント群を構成する電極セグメントのそれぞれに対して選択的に通電することにより、第1の実施形態のように内周部分の電極セグメントのみを利用する場合に比べてはるかにきめ細かく位相差の調整ができ、高精度のコマ収差補正が可能である。
【0043】
図7には、本発明の液晶素子の電極の第3の実施形態を示している。本実施形態の電極29は第1,2の実施形態の電極29と同じ構成であるが、電極32の構成は第1,2の実施形態の電極28と異なっている。本実施形態の電極32の内周部分は、第1,2の実施形態の電極28の内周部分よりも細かく分割されている。すなわち、第1,2の実施形態では電極28の内周部分が、電極セグメント28aと、中心部分から放射状に延びる分割線によって分割された、周方向に並ぶ4つの電極セグメント28b〜28eとからなるのに対し、本実施形態の電極32は、電極セグメント32aと、中心部分から放射状に延びる分割線によって分割された、周方向に並ぶ8つの電極セグメント32b〜32iとからなる。電極セグメント32aは、中心部に位置する円状の部分と、外周部の電極セグメント32j〜32qとの境界に位置するリング状の部分とからなる。そして、電極32の外周部分は、第2の実施形態の電極29の外周部分とほぼ同じ構成であるが、分割線の位置が少しずれている。これは、第1,2の実施形態の電極29の内周部分には4本の分割線があり、それらの分割線の延長線上(および分割線同士の中間位置の延長線上)に外周部分の分割線が位置しているのに対し、本実施形態の電極32の内周部分には8本の分割線があり、それらの分割線の延長線上に外周部分の分割線が位置しているからである。
【0044】
このように、本実施形態では電極32の内周部分がより細かく分割されているため、コマ収差をより高精度に補正することができる。具体的には、半径方向のコマ収差を補正する場合には、図8(b)に抜粋して示すように、実質的に接線方向に並んで位置している内周部分の電極セグメント32a,32b,32fと外周部分の電極セグメント32j,32nとによって、1つの電極セグメント集合体33aが構成されているとみなす。この電極セグメント集合体33aを構成する各電極セグメント32a,32b,32f,32j,32nには全て同じ電位が印加されるようにする。また、実質的に接線方向に並んで位置している内周部分の電極セグメント32c,32d,32eと外周部分の電極セグメント32k,32mとによって、もう1つの電極セグメント集合体33bが構成されているとみなす。この電極セグメント集合体33bを構成する各電極セグメント32c,32d,32e,32k,32mには全て同じ電位が印加されるようにする。さらに、実質的に接線方向に並んで位置している内周部分の電極セグメント32g,32h,32iと外周部分の電極セグメント32o,32qとによって、さらにもう1つの電極セグメント集合体33cが構成されているとみなす。この電極セグメント集合体33cを構成する各電極セグメント32g,32h,32i,32o,32qには全て同じ電位が印加されるようにする。そうすると、外周部分の2つの電極セグメント32l,32pを加えて全ての電極セグメントを用いて、3つの電極セグメント集合体33a〜33cが実質的に半径方向に並んで位置する状態が構成されていると考えられる(図9(a)参照)。要するに、各電極セグメント33a〜33cがそれぞれ単一の電極に相当するとみなすと、接線方向に略直線状に延びる中央の電極(電極セグメント集合体33a)と、その両側にそれぞれ位置している電極(電極セグメント集合体33bおよび電極セグメント集合体33c)とが半径方向に並んで位置する電極セグメント群が構成されていると考えられる。従って、これらの電極セグメント集合体33a〜33cのそれぞれに選択的に通電することにより、半径方向のコマ収差の補正ができる。しかも、各電極セグメント集合体33a〜33cはそれぞれ、電極32の接線方向の全長にわたって延びるものであるため、電極32のほぼ全域を利用して半径方向のコマ収差補正が行える。なお、以上の説明では、各電極セグメント集合体33a〜33cのそれぞれの内部では全て同電位になるように制御しているが、各電極セグメント集合体33a〜33cのそれぞれの内部において、部分的に異なる電位を印加するように制御することもできる。その場合、液晶層27による位相差を非常に細かく制御することができ、補正の精度が向上する。
【0045】
接線方向のコマ収差を補正する場合には、図8(c)に抜粋して示すように、実質的に半径方向に並んで位置している内周部分の電極セグメント32a,32d,32hと外周部分の電極セグメント32l,32pとによって、1つの電極セグメント集合体33dが構成されているとみなす。この電極セグメント集合体33dを構成する各電極セグメント32a,32d,32h,32l,32pには全て同じ電位が印加されるようにする。また、実質的に半径方向に並んで位置している内周部分の電極セグメント32b,32c,32iと外周部分の電極セグメント32k,32qとによって、もう1つの電極セグメント集合体33eが構成されているとみなす。この電極セグメント集合体33eを構成する各電極セグメント32b,32c,32i,32k,32qには全て同じ電位が印加されるようにする。さらに、実質的に半径方向に並んで位置している内周部分の電極セグメント32e,32f,32gと外周部分の電極セグメント32m,32oとによって、さらにもう1つの電極セグメント集合体33fが構成されているとみなす。この電極セグメント集合体33fを構成する各電極セグメント32e,32f,32g,32m,32oには全て同じ電位が印加されるようにする。そうすると、外周部分の2つの電極セグメント32j,32nを加えて全ての電極セグメントを用いて、3つの電極セグメント集合体33d〜33fが実質的に接線方向に並んで位置する状態が構成されていると考えられる(図9(b)参照)。要するに、各電極セグメント33d〜33fがそれぞれ単一の電極に相当するとみなすと、半径方向に略直線状に伸びる中央の電極(電極セグメント集合体33d)と、その両側にそれぞれ位置している電極(電極セグメント集合体33eおよび電極セグメント集合体33f)とが接線方向に並んで位置する電極セグメント群が構成されていると考えられる。従って、これらの電極セグメント集合体33d〜33fのそれぞれに選択的に通電することにより、接線方向のコマ収差の補正ができる。しかも、各電極セグメント集合体33d〜33fはそれぞれ、電極32の半径方向の全長にわたって延びるものであるため、電極32のほぼ全域を利用して接線方向のコマ収差補正が行える。なお、以上の説明では、各電極セグメント集合体33d〜33fのそれぞれの内部では全て同電位になるように制御しているが、各電極セグメント集合体33d〜33fのそれぞれの内部において、部分的に異なる電位を印加するように制御することもできる。その場合、液晶層27による位相差を非常に細かく制御することができ、補正の精度が向上する。なお、接線方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成する電極セグメント集合体33d〜33fを、半径方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成する電極セグメント集合体33a〜33cと区別するために、「他の電極セグメント集合体」と称する場合もある。
【0046】
このように、本実施形態によると、電極32のほぼ全域にわたって、すなわち、少なくとも内周部分では中心角が270度の範囲にわたって、接線方向または半径方向のコマ収差の補正が行える。そのため、第2の実施形態よりもさらに良好なコマ収差の補正を行うことができる。
【0047】
本実施形態において球面収差を補正する場合には、図7(b)に示す電極29の電極セグメント29a〜29eに選択的に通電し、非点収差を補正する場合には、図8(a)に抜粋して示す、電極32の外周部分の電極セグメント32j〜32qに選択的に通電する。これらの方法は、第1,2の実施形態と同様である。
【0048】
なお、本実施形態においては、中心部分に位置する電極セグメント32aの位置から周囲に向かって分割線がほぼ放射状に延びており、それらの分割線が曲線状である。円形の光ビームにおいて発生する波面収差の分布パターンが通常は曲線状であるため、分割線が曲線状であると、各電極セグメント32b〜32iを波面収差の分布パターンに対応させ易く好ましい。また、半径方向の中心線に関しても、接線方向の中心線に関しても、各分割線および各電極セグメント32b〜32iがそれぞれ線対称に配置されていることが、各電極セグメント32b〜32iを波面収差の分布パターンに対応させる上で好ましい。
【0049】
以上説明した各実施形態からわかるように、本発明の液晶素子によると、従来の構成の様々な問題点を解決して、球面収差と、非点収差と、接線方向および半径方向のコマ収差との良好な補正が可能である。従って、この液晶素子を組み込んだ光ピックアップヘッドおよび光学記録および再生装置によると、光ディスクの傾きや光ピックアップヘッドの組立誤差等に起因する収差(歪み)が生じたとしても、高精度の記録および再生を行うことができる。その結果、従来は光学記録および再生装置の機構部分に設けられていた、光ピックアップヘッドと、光記録媒体を保持して回転させる媒体保持機構の互いの基準面との間に生じる傾きを補正する機械的調整手段を用いることなく、その記録再生の性能を最適化することが可能になる。一例としては、光ピックアップヘッドに搭載された半導体メモリ素子に、予め(例えば出荷時に)接線方向のコマ収差および半径方向のコマ収差の最適位置を記録しておき、光ピックアップヘッドを光学記録および再生装置へ搭載する際に、この半導体メモリ素子からデータを読み出して、最適のコマ収差補正が行える電圧値を素子に印加するように制御を行うことができる。このようにすれば、従来は光ピックアップヘッドをメカシャーシに搭載する際に行われていた傾き調整の工程を省略することができるため、メカシャーシの構造を簡略化できる上、工数の短縮化による製造コストの削減を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の光学記録および再生装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す光学記録および再生装置の液晶素子の拡大断面図である。
【図3】(a)は図2に示す液晶素子の第1の実施形態の一方の電極を示す平面図、(b)は他方の電極を示す平面図である。
【図4】(a)は図3に示す液晶素子の電極のうち非点収差の補正に利用される電極セグメントのみを示す概略図、(b)は半径方向のコマ収差の補正に利用される電極セグメントのみを示す概略図、(c)は接線方向のコマ収差の補正に利用される電極セグメントのみを示す概略図である。
【図5】(a)は本発明の液晶素子の第2の実施形態の一方の電極を示す平面図、(b)は他方の電極を示す平面図である。
【図6】(a)は図5に示す液晶素子の電極のうち非点収差の補正に利用される電極セグメントのみを示す概略図、(b)は半径方向のコマ収差の補正に利用される電極セグメントのみを示す概略図、(c)は接線方向のコマ収差の補正に利用される電極セグメントのみを示す概略図である。
【図7】(a)は本発明の液晶素子の第3の実施形態の一方の電極を示す平面図、(b)は他方の電極を示す平面図である。
【図8】(a)は図5に示す液晶素子の電極のうち非点収差の補正に利用される電極セグメントのみを示す概略図、(b)は半径方向のコマ収差の補正に利用される電極セグメントのみを示す概略図、(c)は接線方向のコマ収差の補正に利用される電極セグメントのみを示す概略図である。
【図9】(a)は図8(a)に示す電極セグメントからなる3つの電極セグメント集合体を示す概略図、(b)は図8(b)に示す電極セグメントからなる3つの電極セグメント集合体を示す概略図である。
【図10】(a)は従来の液晶素子の一例における一方の電極を示す平面図、(b)は他方の電極を示す平面図である。
【図11】(a)は従来の液晶素子の他の例における一方の電極を示す平面図、(b)は他方の電極を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 光ピックアップヘッド
2 光記録媒体(光ディスク)
3 媒体保持機構
4,5 半導体レーザ
6 受光素子
7 コリメータレンズ
7a 駆動機構
8 液晶素子
9 光軸
10,11 偏光ビームスプリッタ
12,14 半波長板
13,15 回折格子
16 アナモフィックレンズ
17 フロントモニタ用光検出器
18 立ち上げミラー
19 4分の1波長板
20 対物レンズユニット
21a,21b 対物レンズ
22 レンズホルダ(支持部材)
23 駆動機構
24 シャフト
25,26 基板
27 液晶層
28,29,32 電極
28a〜28m,28f’〜28i’,29a〜29g,32a〜32q 電極セグメント
30,31 配向膜
33a〜33c 電極セグメント集合体
33d〜33f 他の電極セグメント集合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系内に配置される収差補正用液晶素子において、
少なくとも1対の電極によって液晶層を挟んだ構成であり、
前記1対の電極のうちの一方の電極は円状の内周部分とリング状の外周部分とに分割されており、前記一方の電極の前記外周部分は非点収差補正用の電極であり、周方向に並ぶ複数の電極セグメントにさらに分割されており、前記一方の電極の前記内周部分はコマ収差補正用の電極であり、周方向に並ぶ複数の電極セグメントを含み、
前記1対の電極のうちの他方の電極は球面収差補正用の電極であり、同心円状の複数の分割線によって分割された複数の電極セグメントからなる
ことを特徴とする、収差補正用液晶素子。
【請求項2】
前記一方の電極の前記外周部分の少なくとも一部は非点収差補正用の電極としてもコマ収差補正用の電極としても機能し、
前記一方の電極の前記外周部分の複数の前記電極セグメントのうちの一部と、前記内周部分の複数の前記電極セグメントの一部とが第1の方向に並んで位置して、前記第1の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成し、
前記一方の電極の前記外周部分の複数の前記電極セグメントのうちの一部と、前記内周部分の複数の前記電極セグメントの一部とが前記第1の方向に直交する第2の方向に並んで位置して、前記第2の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成している、
請求項1に記載の収差補正用液晶素子。
【請求項3】
非点収差補正時には、前記一方の電極の前記外周部分の複数の前記電極セグメントに選択的に通電され、
前記第1の方向におけるコマ収差補正時には、前記第1の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成する前記一方の電極の前記外周部分の前記電極セグメントおよび前記内周部分の前記電極セグメントに選択的に通電され、
前記第2の方向におけるコマ収差補正時には、前記第2の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成する前記一方の電極の前記外周部分の前記電極セグメントおよび前記内周部分の前記電極セグメントに選択的に通電され、
球面収差補正時には、前記他方の電極の複数の前記電極セグメントに選択的に通電される
請求項2に記載の収差補正用液晶素子。
【請求項4】
前記一方の電極の前記外周部分の少なくとも一部は非点収差補正用の電極としてもコマ収差補正用の電極としても機能し、
前記一方の電極の前記外周部分の複数の前記電極セグメントのうちの一部と、前記内周部分の複数の前記電極セグメントの一部とが、第1の方向に直交する第2の方向に並んで位置して電極セグメント集合体を構成し、複数の前記電極セグメント集合体が前記第1の方向に並んで前記第1の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成し、
前記一方の電極の前記外周部分の複数の前記電極セグメントのうちの一部と、前記内周部分の複数の前記電極セグメントの一部とが前記第1の方向に並んで位置して他の電極セグメント集合体を構成し、複数の前記他の電極セグメント集合体が前記第2の方向に並んで前記第2の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成している、
請求項1に記載の収差補正用液晶素子。
【請求項5】
非点収差補正時には、前記一方の電極の前記外周部分の複数の前記電極セグメントに選択的に通電され、
前記第1の方向におけるコマ収差補正時には、前記第1の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成する前記電極セグメント集合体をなす前記一方の電極の前記外周部分の前記電極セグメントおよび前記内周部分の前記電極セグメントに選択的に通電され、
前記第2の方向におけるコマ収差補正時には、前記第2の方向のコマ収差補正用の電極セグメント群を構成する前記他の電極セグメント集合体をなす前記一方の電極の前記外周部分の前記電極セグメントおよび前記内周部分の前記電極セグメントに選択的に通電され、
球面収差補正時には、前記他方の電極の複数の前記電極セグメントに選択的に通電される
請求項4に記載の収差補正用液晶素子。
【請求項6】
前記一方の電極の前記外周部分は、放射状に延びる複数の分割線により分割された少なくとも8つの前記電極セグメントからなり、
前記一方の電極の前記内周部分は、放射状に延びる複数の分割線により分割された少なくとも4つの前記電極セグメントを含み、
前記外周部分を分割する複数の前記分割線の一部と、前記内周部分を分割する複数の前記分割線の一部とは、同一線上に位置している、
請求項1から5のいずれか1項に記載の収差補正用液晶素子。
【請求項7】
前記一方の電極の前記内周部分は、前記分割線によって3列×3行のマトリクス状の9つの前記電極セグメントに分割されている、請求項6に記載の収差補正用液晶素子。
【請求項8】
光源と、光記録媒体に対向して配置される対物レンズと、前記光源と前記対物レンズの間に配置されている請求項1から7のいずれか1項に記載の収差補正用液晶素子と、を有する光ピックアップヘッド。
【請求項9】
複数の前記対物レンズを含む対物レンズユニットを有し、該対物レンズユニットは、前記複数の対物レンズのいずれかを選択的に前記光記録媒体との対向位置に配置させることができるものである、請求項8に記載の光ピックアップヘッド。
【請求項10】
請求項8または9に記載の光ピックアップヘッドと、前記光記録媒体を保持して回転させる媒体保持機構とを有する、光学記録および再生装置。
【請求項11】
請求項8または9に記載の光ピックアップヘッドを有し、該光ピックアップヘッドと、光記録媒体を保持して回転させる媒体保持機構との間に、それらの基準面に対する傾きを機械的に調整する機構が存在せず、前記光ピックアップヘッドに、該光ピックアップヘッドと前記媒体保持機構の間の傾きを補正可能な収差補正用液晶素子が搭載されている、光学記録および再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−27158(P2010−27158A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188493(P2008−188493)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】