説明

収穫した果物を現地で乾燥するための布帛

摩擦係数が約0.15未満であり、縦方向および横方向の両方における引張り強度が約89Nを超え、L色濃度が約40〜約90である不織布を含んでなる、その上で果物を乾燥させるための再使用可能なシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫した果物、特にぶどうを乾燥するのに用いる布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のぶどうの収穫では、手摘みプロセスにおいては別個のシートとして、または機械的な収穫プロセスにおいては連続シートのいずれかとして、ぶどうをレーズンへと乾燥させる基材として、化学的に処理された紙トレーを用いている。材料は、機械的な収穫および乾燥プロセス中に生じる摩耗および引裂き力に耐えるものでなければならない。機械的な収穫プロセスにおいて、未乾燥のぶどうを乾燥のために連続シートに置く。ぶどうをレーズンへと乾燥するには約7〜10日(手摘みについては14〜21日)かかる。乾燥したぶどう(レーズン)を、シートから取り上げる。紙は、一般的に、耐久性を改善するために化学的処理を施されているが、この処理をしても、屋外環境に3〜4週間曝した後、脆くなり、現地から取り除くのが困難となる。さらに、紙の化学処理によって、化学薬品が廃棄流に放出されるため、リサイクルプロセスが困難になる。
【0003】
1回のみの使用後、紙の廃棄は、現在、現地での紙の焼却によっている。カリフォルニアは、米国におけるレーズン/ぶどうの一次生産地である。サンホアキンバレー(San Joaquin Valley)が世界で最大のレーズン生産地である。しかしながら、カリフォルニアは、紙の焼却を実施するのを禁止する法令が進行中である。これは、栽培者にとって多大の費用を必要とするものである。
【0004】
農業フィルムが、機械的な収穫プロセスで試されてきたが、フィルムの剛性が低く、取扱いが難しかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、燃焼による廃棄の必要性をなくすことのできる、レーズンへと乾燥されるぶどうの機械的な収穫に用いることのできる耐久性のある布帛が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ぶどうの機械的な収穫およびぶどうをレーズンへと乾燥する等、平滑な表面、良好な機械的耐久性、UV安定性を必要とし、白色でない基材が好ましい用途に用いることのできる着色布帛である。布帛は、レーズンを取り除いて、現地で巻き取ってから、次のシーズンまで保管することにより、複数の収穫シーズンに用いるように準備することができる。具体的には、本発明は、摩擦係数(COF)が0.15未満であり、縦方向(MD)と横方向(CD)の両方について引張り強度が20lb.(89ニュートン(N))を超える耐久性のある平滑表面の不織布である。さらに、布帛は紫外線(UV)安定化されており、適切な色(L<90)を有している。より好ましくは、約40〜90のLの範囲内の色が好適である。Lは、色を定義するLモデルの一成分として、CIE(国際照明委員会(Commission Internationale de L’Eclairage))により定義された色のルミネセンス(すなわち、色の暗度または明度)成分である。a値は青色−赤色スケールで色を定義し、b値は青色−黄色スケールで色を定義する。L、aおよびb色濃度は、ASTM E308−01に従って測定する。不織布またはシートの色のL値は、不織布の表面温度に影響する。本発明の不織シートを用いる際、使用条件に適切な色を用いることが重要である。例えば、不織シートの表面温度が低すぎる場合には、果物の乾燥時間は長く、乾燥果実の生産者の生産性に影響する。乾燥時間を長くするとまた、雨に曝される危険が増し、収穫高を損なう可能性がある。しかしながら、不織シートの表面温度が高すぎる場合には、果物の過剰に加速された乾燥によってぶどうがカラメル化する結果、生産者の収穫高の損失となる。さらに、布帛はシートの両側のL値を異なるようにして作製することができる。L値が高いと、レーズンがより迅速に乾燥し、L値が低いと、特に熱い乾燥期間中レーズンのカラメル化を最低にする。栽培者は、次の週の天気予報に基づいて、より好適な表面を選択することができる。
【0007】
本発明は主にレーズンのためにぶどうを乾燥することに関するが、本発明は、ベリー、プラム、アプリコットなどの乾燥形態で用いられる果物にも適用可能であるものと考えられる。
【0008】
布帛は、スパンボンドポリエステル、ポリオレフィンまたはポリアミドで作製することができる。スパンボンド製品は平滑ロールカレンダ加工されるのが好ましい。少なくとも2層のスパンボンド層を有する製品を本発明において用いることができ、スパンボンド層は、ポリエステル、好都合にはポリエチレンテレフタレート(PET)の中央コアと、ポリエチレン(PE)またはコポリエステルの外側シース層とを有する二成分繊維で形成される。これらのスパンボンド層およびメルトブローン層を含むSMS(スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド)構造も用いることができる。メルトブローン層は、二成分サイドバイサイドポリエチレン/ポリエステル繊維から形成することができる。
【0009】
フルオロポリマー、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(デラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DE)よりテフゼル(Tefzel)(登録商標)という商品名で入手可能)またはポリフッ化ビニリデン(ペンシルバニア州フィラデルフィアのアトフィナケミカルズ社(Atofina Chemicals,Inc.,Philadelphia,PA)よりカイナー(Kynar)(登録商標)という商品名で入手可能)のシースと、他のポリマー(例えば、PET)のコアとを有する繊維を含有する布帛が望ましいことも分かっている。何らかの理論によるものではないが、ポリオレフィン乾燥トレーで生じる問題である、レーズンがシートに貼りつくのをかかるシートは最小にするものと考えられる。さらに、シース−コア構造は、フッ素系モノマーを含んでなるホモポリマーで作製されたシートより費用効果がある。
【0010】
十分な厚さおよび配向の、または適切にラミネートされたフィルムもまたこの用途に好適である。フィルムは、スパンボンドポリエステル、ポリオレフィンまたはポリアミドで作製することができる。
【0011】
本発明のシート材料は、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I du Pont de Nemours and Company)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))より入手可能なタイベック(TYVEK)(登録商標)などのフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状ポリエチレン繊維を含んでなる布帛であるのが好ましい。
【実施例】
【0012】
本発明の一例は、坪量が54g/mのタイベック(TYVEK)(登録商標)のフラッシュ紡糸布帛である。摩擦係数は0.15未満であった。破断点伸び14%でMD引張り強度は110N、破断点伸び19%でCD引張り強度は131Nであった。剥離強度は1.42Nであった。布帛の色格付けはL=81.7、a=6.02、b=23.0であった。
【0013】
現地試験
以下は、カリフォルニア州フレズノ、サウスメープルアベニュー2822のパルプ、ペーパーおよびフィルム社(Pulp,Paper,And Film,Inc.,2822 South Maple Avenue,Fresno,CA)よりサンバースト(SunBurst)(登録商標)という商品名で市販されている紙である、一般的に用いられているものと反する褐色タイベック(Tyvek)(登録商標)(褐色)と白色タイベック(Tyvek)(登録商標)(白色)の表面温度差を比較するものである。褐色の坪量は68g/m、色はL=76.56、a=9.07およびb=27.42であった。7日間にわたって現地試験を行った。様々なシートの温度を記録し、ぶどうからレーズンへの乾燥を評価した。
【0014】
標準紙の試験中の平均温度は127°Fであった。褐色の試験期間中の平均温度は125°Fであり、紙の温度からのピーク温度差はマイナス6度であった。しかしながら、乾燥時間は、紙と実質的に同じであった。一方、白色の試験期間中の平均温度は120°Fであり、紙の温度からのピーク温度差はマイナス14度であった。このように、白色だと、所望のレベルの乾燥を得るために、さらに3日間程度を必要とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の表面を有する不織布を含んでなる、その上で果物の少なくとも1つの品目を乾燥させるための再使用可能なシートであって、布帛の摩擦係数が約0.15未満であり、縦方向および横方向における引張り強度が約89Nを超え、第1および第2の表面のうち少なくとも1つのL色濃度が約40〜約90である再使用可能なシート。
【請求項2】
第1の表面のL色濃度が約40であり、第2の表面のL色濃度が約88である請求項1に記載の再使用可能なシート。
【請求項3】
布帛が紫外線安定剤を含有する請求項1に記載の再使用可能なシート。
【請求項4】
布帛がフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状フィルムフィブリルシートを含んでなる請求項1に記載の再使用可能なシート。
【請求項5】
布帛が高密度ポリエチレンを含んでなる請求項4に記載の再使用可能なシート。
【請求項6】
布帛が、ポリエステル、ポリオレフィンおよびポリアミドよりなる群から選択されるポリマーを含んでなるカレンダ加工されたスパンボンドシートを含んでなる請求項1に記載の再使用可能なシート。
【請求項7】
布帛が、ポリエステル、ポリオレフィンおよびポリアミドよりなる群から選択されるポリマーを含んでなるフィルムを含んでなる請求項1に記載の再使用可能なシート。
【請求項8】
布帛がカレンダ加工され、スパンボンド二成分シース/コア繊維を含んでなり、繊維のコアがポリエチレンテレフタレートであり、シース層がポリエチレンおよびコポリエステルよりなる群より選択される請求項1に記載の再使用可能なシート。
【請求項9】
a)第1および第2の表面を有する不織布を含んでなる、その上で果物を乾燥させるための再使用可能なシートを提供する工程であって、布帛の摩擦係数が約0.15未満であり、縦方向および横方向における引張り強度が約89Nを超え、第1および第2の表面のうち少なくとも1つのL色濃度が約40〜約90である、工程と、
b)果物を乾燥状態とさせるのに十分な時間にわたって再使用可能なシートに果実の少なくとも1つの品目を配置する工程と、
c)再使用可能なシートから果物の少なくとも1つの品目を除去する工程と、
d)再使用可能なシートを再使用のために準備する工程と
を含んでなる果実の少なくとも1つの品目を乾燥させる方法。
【請求項10】
第1の表面のL色濃度が約40であり、第2の表面のL色濃度が約88である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
布帛がUV安定剤を含有する請求項9に記載の方法。
【請求項12】
布帛がフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状フィルムフィブリルシートを含んでなる請求項9に記載の方法。
【請求項13】
布帛が高密度ポリエチレンを含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
布帛が、ポリエステル、ポリオレフィンおよびポリアミドよりなる群から選択されるポリマーを含んでなるカレンダ加工されたスパンボンドシートを含んでなる請求項9に記載の方法。
【請求項15】
布帛が、ポリエステル、ポリオレフィンおよびポリアミドよりなる群から選択されるポリマーを含んでなるフィルムを含んでなる請求項9に記載の方法。
【請求項16】
布帛がカレンダ加工され、スパンボンド二成分シース/コア繊維を含んでなり、繊維のコアがポリエチレンテレフタレートであり、シース層がポリエチレンおよびコポリエステルよりなる群より選択される請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2008−501367(P2008−501367A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527813(P2007−527813)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/021510
【国際公開番号】WO2006/009863
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】