説明

収納ケース

【課題】引出し位置において実質的な大きな開口部分を確保できるのみならず、重い物を収納した際の大きな荷重をも確実に支持することができる収納ケースを得る。
【解決手段】収納ケース10の前面パネル14は、ケース本体12に対し上下にスライド移動可能であり、しかも、前面パネル14がスライド下端位置に達し床面Fに当接した状態では、ケース本体12の荷重が、巻掛け部20及びロープ16及び巻掛け部22を介して前面パネル14に伝達されて、ケース本体12の荷重を床面F上で支持できる。したがって、重いものがケース本体12内に収納された場合であっても、この大きな荷重を確実に支持することができ、ケース本体12が不要に撓んだりガタ付くことが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に適用される収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、例えばインストルメントパネルに引出し式の収納ケース(物入れ、トレイ)が設けられたものがある。この種の収納ケースは、一般的に、ケースがガイドレール等によってスライド可能に設けられており、通常は車両前方側に押し込まれた収納位置に格納されている。さらに、乗員が必要に応じて手前側の引出位置に引き出すことで、ケース内が大きく開放露出して、物入れとして使用することができるようになっている。
【0003】
ところで、このような収納ケースは、使用の際の利便性を考慮すると、引出位置に引き出された状態ではケースの実質的な開口部分が大きいほうがよい。このため、引出し位置でケース(トレイ)の実質的な開口部分を大きく確保できるように工夫したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記特許文献に提案された収納トレイでは、トレイに設けられた摺動ピンがガイドレールに形成されたガイド溝に入り込んで支持されており、トレイを引き出すと、このトレイが斜め下方へせり出す構成である。このため、トレイの引出し位置では、トレイの実質的な開口部分が大きくなって、使用時の利便性が向上する。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に示す如き従来の収納ケース(トレイ)では、ガイド溝に入り込んだ摺動ピンによってトレイの全荷重を支持する構成であるため、換言すれば、トレイを引き出した状態における支持構成が所謂「片持ち支持」であるため、重たい物を収納した状態で引き出すと、トレイが不要に撓んだりガタ付いてしまう。
【0006】
したがって、収納ケース(トレイ)が不要に撓んだりガタ付かないように所定の強度や剛性を確保するためには、ガイドレールや摺動ピンを大型化したり高強度な材料を使用する必要が生じ、部材重量が増加したりコスト高になる問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2007−331693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、引出し位置において実質的な大きな開口部分を確保できるのみならず、重い物を収納した際の大きな荷重をも確実に支持することができる収納ケースを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明の収納ケースは、設置箇所の基台に対し収納位置と引出位置との間で前後にスライド移動可能に設けられたケース本体と、前記ケース本体の手前側後端部に設けられ、前記ケース本体の引出し状態で前記ケース本体に対し上下にスライド移動可能とされ、スライド下端位置では前記基台に当接して前記ケース本体の荷重を支持する前面パネルと、を備えている。
【0010】
請求項1記載の収納ケースでは、通常は設置箇所の基台部分にケース本体が押し込まれて収納された収納位置となっており、使用に際しては、ケース本体を前面パネルと共に手前側に引き出して使用する。このケース本体の引出し状態においては、前面パネルがケース本体に対し上下にスライド移動可能でありこの前面パネルを下方へスライド移動させることで、ケース本体内が大きく露出して実質的に大きな開口部分が確保される。したがって、物を出し入れする利便性が向上する。
【0011】
しかも、このケース本体の引出し状態では、前面パネルがスライド下端位置となることで該前面パネルが基台に当接し、ケース本体の荷重が支持される。すなわち、ケース本体の手前側後端部が前面パネルによって実質的に支持される。したがって、重いものがケース本体内に収納された場合であっても、この大きな荷重を確実に支持することができ、ケース本体が不要に撓んだりガタ付くことが防止される。
【0012】
このように、請求項1記載の収納ケースでは、引出し位置において実質的な大きな開口部分を確保できるのみならず、重い物を収納した際の大きな荷重をも確実に支持することができる。
【0013】
請求項2に係る発明の収納ケースは、請求項1記載の収納ケースにおいて、前記基台と前記前面パネルとを連結し、前記ケース本体の前記前後スライド移動に連動して前記前面パネルを前記上下スライド移動させるスライド連動機構を有する、ことを特徴としている。
【0014】
請求項2記載の収納ケースでは、ケース本体を前面パネルと共に前後スライド移動させると、スライド連動機構の作動により、ケース本体の前後スライド移動に連動して前面パネルが上下スライド移動される。すなわち、使用に際してケース本体を手前側に引き出すと、これに連動して前面パネルが下方へスライド移動され、ケース本体内が大きく露出して実質的に大きな開口部分が確保される。したがって、物を出し入れする利便性が向上する。
【0015】
ケース本体を最も手前側に引き出すと、前面パネルがスライド下端位置となることで該前面パネルが基台に当接し、ケース本体の荷重が支持される。すなわち、ケース本体の手前側後端部が前面パネルによって実質的に支持される。したがって、重いものがケース本体内に収納された場合であっても、この大きな荷重を確実に支持することができ、ケース本体が不要に撓んだりガタ付くことが防止される。
【0016】
このように、請求項2記載の収納ケースでは、引出し位置において実質的な大きな開口部分を確保できるのみならず、重い物を収納した際の大きな荷重をも確実に支持することができ、しかも、スライド連動機構の作動によりケース本体の前後スライド移動に連動して前面パネルが上下スライド移動されるため、操作性が大幅に向上する。
【0017】
なお、スライド連動機構としては、ロープ、ワイヤ、あるいはベルト等の可撓性長尺体、リンク機構、ギヤ機構、モータ機構、等によって構成することができる。
【0018】
請求項3に係る発明の収納ケースは、請求項2記載の収納ケースにおいて、前記スライド連動機構は、一端が前記基台に連結され他端が前記前面パネルに連結されて配索され張力によって前記連動させる可撓性長尺体と、前記連動時における前記可撓性長尺体の配索長さを吸収調整する配索調整部と、を有する、ことを特徴としている。
【0019】
請求項3記載の収納ケースでは、スライド連動機構は可撓性長尺体及び配索調整部を有しており、スライド連動機構の作動時には、ケース本体を前面パネルと共に前後スライド移動させると、ケース本体の前後スライド移動力が可撓性長尺体を介して前面パネルに伝達され、ケース本体の前後スライド移動に連動して前面パネルが上下スライド移動される。しかもこの際には、ケース本体及び前面パネルの移動に伴う可撓性長尺体の配索が、配索調整部によって調整され(例えば、可撓性長尺体の弛みが吸収され)、可撓性長尺体による移動力の伝達はスムーズに行われる。
【0020】
このように、請求項3記載の収納ケースでは、ケース本体の前後スライド移動に連動して前面パネルを上下スライド移動させるスライド連動機構を、可撓性長尺体及び配索調整部による簡単な構成で実現することができる。
【0021】
請求項4に係る発明の収納ケースは、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の収納ケースにおいて、前記ケース本体の前記前後スライド移動を補助する前後スライド補助手段を有することを特徴としている。
【0022】
請求項4記載の収納ケースでは、ケース本体を前面パネルと共に手前側に引き出して使用する際に、前後スライド補助手段によってケース本体の前後スライド移動が補助される。したがって、より一層スムーズにケース本体を操作することができ、操作性がより一層向上する。
【0023】
なお、前後スライド補助手段としては、例えば、一端がケース本体に係止され他端が基台に係止された「ゼンマイばね」によって構成することができる。
【0024】
請求項5に係る発明の収納ケースは、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の収納ケースにおいて、前記前面パネルの前記上下スライド移動を補助する上下スライド補助手段を有することを特徴としている。
【0025】
請求項5記載の収納ケースでは、前面パネルをケース本体と共に手前側に引き出して使用する際に、上下スライド補助手段によって前面パネルの上下スライド移動が補助される。したがって、より一層スムーズに前面パネルを操作することができ、操作性がより一層向上する。
【0026】
なお、上下スライド補助手段としては、例えば、一端がケース本体に係止され他端が前面パネルに係止された「ゼンマイばね」によって構成することができる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明の収納ケースは、引出し位置において実質的な大きな開口部分を確保できて物を出し入れする利便性が向上するのみならず、重い物を収納した際の大きな荷重をも確実に支持することができるという優れた効果を有している。
【0028】
請求項2に係る発明の収納ケースは、請求項1に係る発明の収納ケースが有する優れた効果に加えて、スライド連動機構の作動により操作性が大幅に向上するという優れた効果を有している。
【0029】
請求項3に係る発明の収納ケースは、請求項2に係る発明の収納ケースが有する優れた効果に加えて、スライド連動機構を可撓性長尺体及び配索調整部による簡単な構成で実現することができるという優れた効果を有している。
【0030】
請求項4に係る発明の収納ケースは、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の収納ケースが有する優れた効果に加えて、前後スライド補助手段によってケース本体の前後スライド移動がより一層スムーズになり、操作性がより一層向上するという優れた効果を有している。
【0031】
請求項5に係る発明の収納ケースは、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の収納ケースが有する優れた効果に加えて、上下スライド補助手段によって前面パネルの上下スライド移動がより一層スムーズになり、操作性がより一層向上するという優れた効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図1乃至図6を用いて、本発明の各実施形態について説明する。なお、各図においては、説明上、各部品を全て実線にて示してある。
【0033】
図1(A)には、本発明の第1実施形態に係る収納ケース10の「収納位置」における構成が概略的な側面図にて示されており、図1(B)には、この収納ケース10の「収納位置」における構成が概略的な正面図(中心線CLを境に略左半分)にて示されている。また、図2(A)には、収納ケース10の「引出位置」における構成が概略的な側面図にて示されており、図2(B)には、収納ケース10の「引出位置」における構成が概略的な正面図(中心線CLを境に略左半分)にて示されている。
【0034】
収納ケース10は、車両のインストルメントパネルに設置されている。すなわち、設置箇所の基台Dは手前側(図1(A)及び図2(A)の右方側)に開口する腔孔状に設けられており、この基台Dの腔孔内に収納ケース10が配置されている。
【0035】
収納ケース10は、ケース本体12及び前面パネル14を備えている。ケース本体12は箱状に形成されており、基台Dに対し「収納位置」(図1(A)及び図1(B)図示状態)と「引出位置」(図2(A)及び図2(B)図示状態)との間で前後にスライド移動可能に設けられている。
【0036】
一方、収納ケース10の前面パネル14は、基台Dの腔孔の開口に対応した大きさに形成されており、ケース本体12の手前側後端部に設けられてケース本体12と一体的に前後スライド移動する。これにより、ケース本体12及び前面パネル14が基台Dに対して「収納位置」では、前面パネル14が基台Dの腔孔の開口を閉鎖できる。
【0037】
またここで、前面パネル14は、ケース本体12に対し、上下にスライド移動可能とされている。すなわち、ケース本体12を引出した状態で前面パネル14はケース本体12に対し上下にスライド移動可能であり、しかも、スライド下端位置では基台Dの床面Fに当接するように各部の寸法が設定されている。なおこの場合、前面パネル14のスライド下端位置において床面Fとの間に僅かな隙間(例えば、2〜3mm)があっても、上からの荷重によって各部の弾性範囲内の「反り」で床面Fに当接するようにしてもよい。以下の説明においては、前記何れの態様も「床面Fに当接する」と記載して説明する。前面パネル14が下方にスライド移動してスライド下端位置に達し床面Fに当接した状態では、この前面パネル14が後述するロープ16と共働してケース本体12の荷重を支持できる構成となっている。
【0038】
また、収納ケース10は、スライド連動機構を構成する可撓性長尺体としてのロープ16を備えている。ロープ16は、一端が基台Dの固定点18に連結されており、中間部分が、ケース本体12に設けられた巻掛け部20に巻き掛けられた後に、さらに、前面パネル14に設けられた巻掛け部22に巻き掛けられて前面パネル14の中央内部に達している。
【0039】
前面パネル14の中央内部には、スライド連動機構を構成する配索調整部24が設けられている。配索調整部24は、前面パネル14内に収容配置されており、巻付け回転体26及び捻りコイルスプリング28を有している。巻付け回転体26は、例えば中空円筒形のパイプ状に形成されており、支軸30によって回転自在に支持されている。また、支軸30には捻りコイルスプリング28が巻装されており、常に巻付け回転体26を一定方向に付勢している。この巻付け回転体26内に、前述したロープ16の中間部分が挿通されて配索されている。
【0040】
さらに、巻付け回転体26内に配索されたロープ16の他端側は、前面パネル14及びケース本体12の反対側において前述した配索状態と同様に配索された後に、基台Dに連結されている。すなわち、ロープ16は、左右対称の配索状態とされた連続した1本で構成されている。
【0041】
以上の構成により、ケース本体12の前後スライド移動がロープ16の張力によって前面パネル14に伝達され、ケース本体12の前後スライド移動に連動して前面パネル14が上下スライド移動されるようになっており、さらにこの際にロープ16に生じる配索長さの変動(弛み)を、巻付け回転体26が追従して回転することで吸収調整するようになっている。またしかも、前面パネル14が下方にスライド移動してスライド下端位置に達し床面Fに当接した状態では、ケース本体12の荷重が、巻掛け部20及びロープ16及び巻掛け部22を介して前面パネル14に伝達されて、ケース本体12の荷重を床面F上で支持できる構成となっている。
【0042】
以下に、本第1実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0043】
上記構成の収納ケース10においては、通常はインストルメントパネルの基台Dにケース本体12が押し込まれて収納された「収納位置」となっており、前面パネル14は基台Dの腔孔の開口を閉鎖している(図1(A)及び図1(B)図示状態)。
【0044】
収納ケース10の使用に際しては、ケース本体12を前面パネル14と共に手前側に引き出して使用する。ケース本体12を前面パネル14と共に前後スライド移動させると、スライド連動機構の作動により、ケース本体12の前後スライド移動に連動して前面パネル14が上下スライド移動される。すなわち、ケース本体12を手前側に引き出すと、ケース本体12の前後スライド移動がロープ16の張力によって前面パネル14に伝達され、ケース本体12の前後スライド移動に連動して前面パネル14が、図2(A)に矢印Xにて示す移動軌跡を通って、前後スライド移動しながら上下スライド移動されて(手前側に引き出されながら下方へ降下し)「引出位置」となる(図2(A)及び図2(B)図示状態)。さらにこの際には、ロープ16に生じる配索長さの変動(弛み)は、巻付け回転体26が追従して回転することで吸収調整され、ロープ16による移動力の伝達はスムーズに行われる。
【0045】
ケース本体12の「引出位置」では、前面パネル14が下方へスライド移動されてケース本体12内が大きく露出して実質的に大きな開口部分が確保される。したがって、物を出し入れする利便性が向上する。
【0046】
ケース本体12を最も手前側に引き出すと、前面パネル14がスライド下端位置となることでこの前面パネル14が基台Dの床面Fに当接する(図2(A)及び図2(B)図示状態)。この前面パネル14がスライド下端位置に達し床面Fに当接した状態では、ケース本体12の荷重が巻掛け部20及びロープ16及び巻掛け部22を介して前面パネル14に伝達されて、ケース本体12の荷重が床面F上で支持される。すなわち、ケース本体12の手前側後端部が前面パネル14によって実質的に支持された状態となる。したがって、重いものがケース本体12内に収納された場合であっても、この大きな荷重を確実に支持することができ、ケース本体12が不要に撓んだりガタ付くことが防止される。
【0047】
またさらに、例えば床面Fに所謂「用品マット」等が敷かれているような場合であっても、当該「用品マット」の上面高さに応じて前面パネル14が移動して当該「用品マット」上に当接して、同様に荷重を支持することができる。この場合、前面パネル14の下方へのスライド移動量が「用品マット」の厚さに応じて減少することになり、すなわちケース本体12の引出し量が多少減少することになるが、実質的な使用に影響は無く、利便性が損なわれることは無い。このように、収納ケース10は、床面F上の他の部材に影響され難く、適用の範囲も拡大する。
【0048】
以上説明した如く、本第1実施形態に係る収納ケース10では、引出し位置においてケース本体12の実質的な大きな開口部分を確保できるのみならず、重い物を収納した際の大きな荷重をも確実に支持することができ、しかも、スライド連動機構の作動によりケース本体12の前後スライド移動に連動して前面パネル14が上下スライド移動されるため、操作性が大幅に向上する。またさらに、ケース本体12の前後スライド移動に連動して前面パネル14を上下スライド移動させるスライド連動機構を、可撓性長尺体(ロープ16)及び配索調整部24による簡単な構成で実現することができる。
【0049】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
【0050】
なお、前記第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0051】
図3(A)には、本発明の第2実施形態に係る収納ケース40の「収納位置」における構成が概略的な側面図にて示されており、図3(B)には、この収納ケース40の「収納位置」における構成が概略的な正面図(中心線CLを境に略左半分)にて示されている。また、図4(A)には、収納ケース40の「引出位置」における構成が概略的な側面図にて示されており、図4(B)には、収納ケース40の「引出位置」における構成が概略的な正面図(中心線CLを境に略左半分)にて示されている。
【0052】
収納ケース40は、前述した第1実施形態に係る収納ケース10と基本的に同一の構成とされているが、さらに、ケース本体12の前後スライド移動を補助する前後スライド補助手段としてのゼンマイばね42を備えている。ゼンマイばね42は、一端がケース本体12に係止されると共に、他端が係止点44にて基台Dに係止されており、常にケース本体12を引出し方向(図3(A)及び図4(A)の右方向)へ付勢している。さらに、収納ケース40は、前面パネル14の上下スライド移動を補助する上下スライド補助手段としてのゼンマイばね46を備えている。ゼンマイばね46は、一端がケース本体12に係止されると共に、他端が係止点48にて前面パネル14に係止されており、常に前面パネル14を上方向(図3(A)及び図4(A)の上方向)へ付勢している。
【0053】
さらに、収納ケース40は、ロックボタン50を備えている。ロックボタン50は、前面パネル14の上端縁に対応して基台Dの腔孔の開口上部に設けられており、ロック操作または解除操作することで前面パネル14を係止または開放することができる。
【0054】
以下に、本第2実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0055】
上記構成の収納ケース40においては、通常はインストルメントパネルの基台Dにケース本体12が押し込まれて収納された「収納位置」となっており、前面パネル14は基台Dの腔孔の開口を閉鎖している。さらに、ロックボタン50は前面パネル14に係合して開閉動作をロックしている(図3(A)及び図3(B)図示状態)。
【0056】
収納ケース40の使用に際しては、ロックボタン50を解除操作して前面パネル14を開放し、ケース本体12を前面パネル14と共に手前側に引き出して使用する。
【0057】
ケース本体12を前面パネル14と共に前後スライド移動させると、前述した第1実施形態に係る収納ケース10と同様に、スライド連動機構(ロープ16等)の作動により、ケース本体12の前後スライド移動に連動して前面パネル14が上下スライド移動される。
【0058】
この収納ケース40においても、ケース本体12の「引出位置」では、前面パネル14が下方へスライド移動されてケース本体12内が大きく露出して実質的に大きな開口部分が確保される。したがって、物を出し入れする利便性が向上する。
【0059】
また、ケース本体12を最も手前側に引き出すと、前面パネル14がスライド下端位置となることでこの前面パネル14が基台Dの床面Fに当接する(図4(A)及び図4(B)図示状態)。これにより、前述した第1実施形態に係る収納ケース10と同様に、ケース本体12の手前側後端部が前面パネル14によって実質的に支持された状態となり、重いものがケース本体12内に収納された場合であっても、この大きな荷重を確実に支持することができ、ケース本体12が不要に撓んだりガタ付くことが防止される。
【0060】
さらにここで、この収納ケース40では、ケース本体12を前面パネル14と共に引き出して使用する際には、ケース本体12がゼンマイばね42によって引出し方向へ付勢されてケース本体12の前後スライド移動が補助されるため、より一層スムーズにケース本体12を操作することができ、操作性がより一層向上する。また一方、ケース本体12を前面パネル14と共に奥側に押し戻して収納する際には、前面パネル14がゼンマイばね46によって上方向に付勢されて前面パネル14の上下スライド移動が補助されるため、より一層スムーズに前面パネル14を操作することができ、同様に操作性がより一層向上する。
【0061】
以上説明した如く、本第2実施形態に係る収納ケース40では、引出し位置においてケース本体12の実質的な大きな開口部分を確保できるのみならず、重い物を収納した際の大きな荷重をも確実に支持することができ、しかも、スライド連動機構の作動によりケース本体12の前後スライド移動に連動して前面パネル14が上下スライド移動されるため、操作性が大幅に向上する。
【0062】
またしかも、ゼンマイばね42及びゼンマイばね46によってケース本体12の前後スライド移動及び前面パネル14の上下スライド移動がより一層スムーズになり、操作性がより一層向上する。
【0063】
次に、図5(A)には、本発明の第3実施形態に係る収納ケース60の「収納位置」における構成が概略的な側面図にて示されており、図5(B)には、この収納ケース60の「収納位置」における構成が概略的な正面図(中心線CLを境に略左半分)にて示されている。また、図6(A)には、収納ケース60の「引出位置」における構成が概略的な側面図にて示されており、図6(B)には、収納ケース60の「引出位置」における構成が概略的な正面図(中心線CLを境に略左半分)にて示されている。
【0064】
収納ケース60、前述した第1実施形態に係る収納ケース10と基本的に同じ構成であるが、第1実施形態における前面パネル14の中央内部に配置されたスライド連動機構を構成する配索調整部24に代えて、配索調整部62が設けられている。この配索調整部62は、ケース本体12下方の基台Dに設けられており、配索調整部24と同様にロープ16に生じる配索長さの変動(弛み)を、ロープ16の固定点64の側において吸収調整するようになっている。
【0065】
以下に、本第3実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0066】
上記構成の収納ケース60においても、通常はインストルメントパネルの基台Dにケース本体12が押し込まれて収納された「収納位置」となっており、前面パネル14は基台Dの腔孔の開口を閉鎖している(図5(A)及び図5(B)図示状態)。
【0067】
収納ケース60の使用に際しては、ケース本体12を前面パネル14と共に手前側に引き出して使用する。ケース本体12を前面パネル14と共に前後スライド移動させると、前述した第1実施形態に係る収納ケース10と同様に、スライド連動機構(ロープ16等)の作動により、ケース本体12の前後スライド移動に連動して前面パネル14が上下スライド移動される。さらにこの際には、ロープ16に生じる配索長さの変動(弛み)は、配索調整部62によって固定点64の側で吸収調整され、ロープ16による移動力の伝達はスムーズに行われる。
【0068】
この収納ケース40においても、ケース本体12の「引出位置」では、前面パネル14が下方へスライド移動されてケース本体12内が大きく露出して実質的に大きな開口部分が確保される。したがって、物を出し入れする利便性が向上する。
【0069】
また、ケース本体12を最も手前側に引き出すと、前面パネル14がスライド下端位置となることでこの前面パネル14が基台Dの床面Fに当接する(図6(A)及び図6(B)図示状態)。これにより、前述した第1実施形態に係る収納ケース10と同様に、ケース本体12の手前側後端部が前面パネル14によって実質的に支持された状態となり、重いものがケース本体12内に収納された場合であっても、この大きな荷重を確実に支持することができ、ケース本体12が不要に撓んだりガタ付くことが防止される。
【0070】
なお、前述した第1実施形態乃至第3実施形態においては、スライド連動機構を構成する可撓性長尺体として、ロープ16を適用した構成として説明したが、可撓性長尺体としてはこれに限るものではなく、他の同等部材、例えば「ワイヤ」、「糸」や「紐」あるいは「ベルト」等を適用して構成してもよい。この場合であっても、前記各実施形態におけるロープ16と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
また、例えば可撓性長尺体として幅広の帯状の「ベルト」を適用して構成した場合に、ケース本体12及び前面パネル14の幅方向中央部分に単一(1本)の「ベルト」を設けるように構成することもできる。
【0072】
またさらに、前述した第1実施形態乃至第3実施形態においては、スライド連動機構として、可撓性長尺体(ロープ16)と配索調整部24を適用した構成として説明したが、スライド連動機構としてはこれに限るものではなく、他の同等手段、例えば、リンク機構、ギヤ機構、モータ機構、等によってスライド連動機構を構成してもよい。
【0073】
さらに、前記各実施形態におけるスライド連動機構に代えて、手動式の構成としてもよい。すなわち、ケース本体12に対し前面パネル14をスライド移動可能でかつ所定位置で手動ロックできるように構成することができる。この場合であっても、前面パネル14が基台Dの床面Fに当接した状態で前面パネル14を手動ロックすれば、前述した各実施形態に係る収納ケース10等と同様に、ケース本体12の手前側後端部が前面パネル14によって実質的に支持された状態となり、重いものがケース本体12内に収納された場合であっても、この大きな荷重を確実に支持することができ、ケース本体12が不要に撓んだりガタ付くことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態に係る収納ケースの「収納位置」における構成を示す概略的な側面図であり、(B)はこの収納ケースの「収納位置」における構成を示す概略的な正面図である。
【図2】(A)は本発明の第1実施形態に係る収納ケースの「引出位置」における構成を示す概略的な側面図であり、(B)はこの収納ケースの「引出位置」における構成を示す概略的な正面図である。
【図3】(A)は本発明の第2実施形態に係る収納ケースの「収納位置」における構成を示す概略的な側面図であり、(B)はこの収納ケースの「収納位置」における構成を示す概略的な正面図である。
【図4】(A)は本発明の第2実施形態に係る収納ケースの「引出位置」における構成を示す概略的な側面図であり、(B)はこの収納ケースの「引出位置」における構成を示す概略的な正面図である。
【図5】(A)は本発明の第3実施形態に係る収納ケースの「収納位置」における構成を示す概略的な側面図であり、(B)はこの収納ケースの「収納位置」における構成を示す概略的な正面図である。
【図6】(A)は本発明の第3実施形態に係る収納ケースの「引出位置」における構成を示す概略的な側面図であり、(B)はこの収納ケースの「引出位置」における構成を示す概略的な正面図である。
【符号の説明】
【0075】
10 収納ケース
12 ケース本体
14 前面パネル
16 ロープ(可撓性長尺体、スライド連動機構)
24 配索調整部(スライド連動機構)
26 巻付け回転体
28 捻りコイルスプリング
40 収納ケース
42 ゼンマイばね(前後スライド補助手段)
46 ゼンマイばね(上下スライド補助手段)
60 収納ケース
62 配索調整部
D 基台
F 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置箇所の基台に対し収納位置と引出位置との間で前後にスライド移動可能に設けられたケース本体と、
前記ケース本体の手前側後端部に設けられ、前記ケース本体の引出し状態で前記ケース本体に対し上下にスライド移動可能とされ、スライド下端位置では前記基台に当接して前記ケース本体の荷重を支持する前面パネルと、
を備えた収納ケース。
【請求項2】
前記基台と前記前面パネルとを連結し、前記ケース本体の前記前後スライド移動に連動して前記前面パネルを前記上下スライド移動させるスライド連動機構を有する、
ことを特徴と請求項1記載の収納ケース。
【請求項3】
前記スライド連動機構は、一端が前記基台に連結され他端が前記前面パネルに連結されて配索され張力によって前記連動させる可撓性長尺体と、前記連動時における前記可撓性長尺体の配索長さを吸収調整する配索調整部と、を有する、
ことを特徴と請求項2記載の収納ケース。
【請求項4】
前記ケース本体の前記前後スライド移動を補助する前後スライド補助手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の収納ケース。
【請求項5】
前記前面パネルの前記上下スライド移動を補助する上下スライド補助手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の収納ケース。

【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−234457(P2009−234457A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84290(P2008−84290)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】